(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】物流シミュレータ装置、操業計画作成方法、プログラム及び製鉄所の操業方法
(51)【国際特許分類】
B65G 63/00 20060101AFI20250624BHJP
G06Q 10/087 20230101ALI20250624BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
B65G63/00 A
G06Q10/087
C21B5/00 301
(21)【出願番号】P 2025514490
(86)(22)【出願日】2024-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2024046030
【審査請求日】2025-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2024000271
(32)【優先日】2024-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】熊野 徹
(72)【発明者】
【氏名】山元 隼
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-118069(JP,A)
【文献】特開2006-178756(JP,A)
【文献】特開2002-23823(JP,A)
【文献】特開2008-135007(JP,A)
【文献】特開平9-134341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 63/00
C21B 5/00
G06Q 10/087
G06Q 50/04
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を次工程に搬送する物流を模擬する物流シミュレータ装置であって、
設備リスト、入荷計画、在庫情報、材料加工計画、設備能力、シミュレーションの開始日時と終了日時及び単位時間を取得する入力情報取得モジュールと、
前記シミュレーションの開始日時と終了日時及び前記単位時間に従って、シミュレーションを実行するコントローラモジュールと、
前記設備リスト及び前記設備能力に基づいて、シミュレーションにおける設備要素のそれぞれを接続し、搬送可能なルートを検索するルートモジュールと、
離散時間毎に取得した在庫トレンド及びジョブ実績を出力するシミュレーション結果出力モジュールと、を備え、
オンオフ制御が用意されたオプションとして、入荷間口モジュール、入荷ロット在庫管理モジュール、加工材料在庫置場モジュール、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール、加工設備在庫置場モジュール、加工設備槽型在庫置場モジュール及び加工設備モジュール、を備え、
前記入荷間口モジュールは、前記設備リスト及び前記入荷計画に従って、加工材料の入荷間口と入荷ロットをそれぞれ1つ以上生成し、
前記入荷ロット在庫管理モジュールは、1種類以上の加工材料について加工材料在庫置場への受入ジョブを生成し、
前記加工材料在庫置場モジュールは、前記設備リストに従って、1つ以上の前記加工材料在庫置場を生成し、
前記加工材料在庫置場内在庫管理モジュールは、前記在庫情報に基づいて、前記加工材料在庫置場内の1つにつき1つ以上の加工材料在庫置場槽を銘柄毎に生成し、前記加工材料在庫置場槽の在庫を増減し、
前記加工設備在庫置場モジュールは、前記設備リストに基づいて、2つ以上の加工設備在庫置場を生成し、前記材料加工計画に基づいて、前記加工設備在庫置場の在庫を増減し、
前記加工設備槽型在庫置場モジュールは、前記設備リストに基づいて、複数の槽の集合体である1つ以上の加工設備槽型倉庫を生成し、前記加工設備槽型倉庫の在庫を消費又は増加させ、
前記加工設備モジュールは、前記設備リストに基づいて、加工設備を生成し、前記材料加工計画に従って、シミュレーションにおいて前記加工設備で材料を加工する、物流シミュレータ装置。
【請求項2】
前記オンオフ制御は、前記入力情報取得モジュールが取得する入力データに基づいて設定されて、前記設備要素を自動的に設定可能とする、請求項1に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項3】
前記入荷ロット在庫管理モジュールは、前記入荷計画が与えられない場合に、あらかじめ定められたルールに基づいて入荷ロットを生成する、請求項1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項4】
前記2つ以上の加工設備在庫置場はベッドの組であって、他方のベッドが取り切られたら、積み付けられたベッドから切出しが行われて、空いたベッドで積み付けが開始される、請求項
1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項5】
前記加工材料在庫置場内在庫管理モジュールは、ジョブの実行中に前記加工材料在庫置場槽の在庫が満杯又は不足となった場合に、前記ジョブを中断し、あらかじめ定められたルールに従って別の加工材料在庫置場槽を選んで前記ジョブを再開する、請求項
1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項6】
前記入力情報取得モジュールは、設備停止計画を取得し、
前記コントローラモジュールは、前記設備停止計画に基づいて、シミュレータ離散時間が設備停止の時刻となれば該当する設備を停止させる、請求項
1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項7】
前記入荷ロット在庫管理モジュールは、あらかじめ定められたルールに従って受入場所を選択する、請求項3に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項8】
銘柄区分の粒度は、前記入力情報取得モジュールが取得する入力データに基づいて設定される、請求項
1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項9】
前記加工材料在庫置場内在庫管理モジュールは、前記加工材料在庫置場に銘柄毎の擬似的な槽を備えていると扱って、前記コントローラモジュールから送られてくる払出ジョブに従って在庫を切出し、受入ジョブに従って在庫を補充して管理する、請求項
1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項10】
前記コントローラモジュールは、実行中のジョブを停止して別のルートへ振り替えれば待機中のジョブを同時実行できる場合に、前記実行中のジョブを前記別のルートへ振り替える処理を実行する、請求項
1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項11】
請求項
1又は2に記載の物流シミュレータ装置からシミュレーション結果を取得することと、
前記シミュレーション結果からシミュレーションが異常終了したと判定する場合に、前記物流シミュレータ装置に、前記シミュレーション結果に基づいて修正した操業計画を取得させて、再びシミュレーションを実行させることと、を含む、操業計画作成方法。
【請求項12】
コンピュータを、材料を次工程に搬送する物流を模擬する物流シミュレータ装置として機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、
設備リスト、入荷計画、在庫情報、材料加工計画、設備能力、シミュレーションの開始日時と終了日時及び単位時間を取得する入力情報取得モジュールと、
前記シミュレーションの開始日時と終了日時及び前記単位時間に従って、シミュレーションを実行するコントローラモジュールと、
前記設備リスト及び前記設備能力に基づいて、シミュレーションにおける設備要素のそれぞれを接続し、搬送可能なルートを検索するルートモジュールと、
離散時間毎に取得した在庫トレンド及びジョブ実績を出力するシミュレーション結果出力モジュールと、
オンオフ制御が用意されたオプションとして、入荷間口モジュール、入荷ロット在庫管理モジュール、加工材料在庫置場モジュール、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール、加工設備在庫置場モジュール、加工設備槽型在庫置場モジュール及び加工設備モジュール、として機能させて、
前記入荷間口モジュールは、前記設備リスト及び前記入荷計画に従って、加工材料の入荷間口と入荷ロットをそれぞれ1つ以上生成し、
前記入荷ロット在庫管理モジュールは、1種類以上の加工材料について加工材料在庫置場への受入ジョブを生成し、
前記加工材料在庫置場モジュールは、前記設備リストに従って、1つ以上の前記加工材料在庫置場を生成し、
前記加工材料在庫置場内在庫管理モジュールは、前記在庫情報に基づいて、前記加工材料在庫置場内の1つにつき1つ以上の加工材料在庫置場槽を銘柄毎に生成し、前記加工材料在庫置場槽の在庫を増減し、
前記加工設備在庫置場モジュールは、前記設備リストに基づいて、2つ以上の加工設備在庫置場を生成し、前記材料加工計画に基づいて、前記加工設備在庫置場の在庫を増減し、
前記加工設備槽型在庫置場モジュールは、前記設備リストに基づいて、複数の槽の集合体である1つ以上の加工設備槽型倉庫を生成し、前記加工設備槽型倉庫の在庫を消費又は増加させ、
前記加工設備モジュールは、前記設備リストに基づいて、加工設備を生成し、前記材料加工計画に従って、シミュレーションにおいて前記加工設備で材料を加工する、プログラム。
【請求項13】
前記次工程は、高炉に装入される原料を配合する工程であって、
請求項11に記載の操業計画作成方法において、前記シミュレーション結果からシミュレーションが正常終了したと判定する場合の前記操業計画である最適化操業計画を取得することと、
前記最適化操業計画に基づいて前記原料を搬送することと、を含む、製鉄所の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物流シミュレータ装置、操業計画作成方法、プログラム及び製鉄所の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工材料などの搬送操業において、操業計画、設備能力などを入力とし、シミュレーションを実施した結果を操業へ反映することで効率化を図る技術の開発がなされている。
【0003】
例えば特許文献1は、製造プラントにおける各機器の動作、被加工物の動き、プロセス現象をシミュレーションするシミュレーションプログラムを作成する際の設計者の負担を軽減するシミュレーションプログラム生成装置を開示する。また、特許文献2は、原材料を次工程に送る物流を物流シミュレータ装置によって再現・可視化し、在庫トレンドなどを表示し、操業の可否を判断することで計画のブラッシュアップ・操業の改善が可能であることを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6468000号公報
【文献】特開2023-118069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の手法は特定の物理現象を備えた加工プロセスのシミュレーションを対象としており、プロセス間の加工材料の搬送及び移動を考慮する物流の観点が欠落している。特許文献2の手法は加工材料の物流を対象とするが、多種多様なレイアウト及び前提条件に対応する場合に、それぞれに合わせて改変が必要である。
【0006】
以上の問題を解決すべくなされた本開示の目的は、多種多様なレイアウト及び前提条件に対応できる物流シミュレータ装置、操業計画作成方法、プログラム及び効率化を実現可能な製鉄所の操業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係る物流シミュレータ装置は、
材料を次工程に搬送する物流を模擬する物流シミュレータ装置であって、
設備リスト、入荷計画、在庫情報、材料加工計画、設備能力、シミュレーションの開始日時と終了日時及び単位時間を取得する入力情報取得モジュールと、
前記シミュレーションの開始日時と終了日時及び前記単位時間に従って、シミュレーションを実行するコントローラモジュールと、
前記設備リスト及び前記設備能力に基づいて、シミュレーションにおける設備要素のそれぞれを接続し、搬送可能なルートを検索するルートモジュールと、
離散時間毎に取得した在庫トレンド及びジョブ実績を出力するシミュレーション結果出力モジュールと、を備え、
オンオフ制御が用意されたオプションとして、入荷間口モジュール、入荷ロット在庫管理モジュール、加工材料在庫置場モジュール、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール、加工設備在庫置場モジュール、加工設備槽型在庫置場モジュール及び加工設備モジュール、を備え、
前記入荷間口モジュールは、前記設備リスト及び前記入荷計画に従って、加工材料の入荷間口と入荷ロットをそれぞれ1つ以上生成し、
前記入荷ロット在庫管理モジュールは、1種類以上の加工材料について加工材料在庫置場への受入ジョブを生成し、
前記加工材料在庫置場モジュールは、前記設備リストに従って、1つ以上の前記加工材料在庫置場を生成し、
前記加工材料在庫置場内在庫管理モジュールは、前記在庫情報に基づいて、前記加工材料在庫置場内の1つにつき1つ以上の加工材料在庫置場槽を銘柄毎に生成し、前記加工材料在庫置場槽の在庫を増減し、
前記加工設備在庫置場モジュールは、前記設備リストに基づいて、2つ以上の加工設備在庫置場を生成し、前記材料加工計画に基づいて、前記加工設備在庫置場の在庫を増減し、
前記加工設備槽型在庫置場モジュールは、前記設備リストに基づいて、複数の槽の集合体である1つ以上の加工設備槽型倉庫を生成し、前記加工設備槽型倉庫の在庫を消費又は増加させ、
前記加工設備モジュールは、前記設備リストに基づいて、加工設備を生成し、前記材料加工計画に従って、シミュレーションにおいて前記加工設備で材料を加工する。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記オンオフ制御は、前記入力情報取得モジュールが取得する入力データに基づいて設定されて、前記設備要素を自動的に設定可能とする。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記入荷ロット在庫管理モジュールは、前記入荷計画が与えられない場合に、あらかじめ定められたルールに基づいて入荷ロットを生成する。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記2つ以上の加工設備在庫置場はベッドの組であって、他方のベッドが取り切られたら、積み付けられたベッドから切出しが行われて、空いたベッドで積み付けが開始される。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記加工材料在庫置場内在庫管理モジュールは、ジョブの実行中に前記加工材料在庫置場槽の在庫が満杯又は不足となった場合に、前記ジョブを中断し、あらかじめ定められたルールに従って別の加工材料在庫置場槽を選んで前記ジョブを再開する。
【0012】
(6)本開示の一実施形態として、(1)から(5)のいずれかにおいて、
前記入力情報取得モジュールは、設備停止計画を取得し、
前記コントローラモジュールは、前記設備停止計画に基づいて、シミュレータ離散時間が設備停止の時刻となれば該当する設備を停止させる。
【0013】
(7)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記入荷ロット在庫管理モジュールは、あらかじめ定められたルールに従って受入場所を選択する。
【0014】
(8)本開示の一実施形態として、(1)から(7)のいずれかにおいて、
銘柄区分の粒度は、前記入力情報取得モジュールが取得する入力データに基づいて設定される。
【0015】
(9)本開示の一実施形態として、(1)から(8)のいずれかにおいて、
前記加工材料在庫置場内在庫管理モジュールは、前記加工材料在庫置場に銘柄毎の擬似的な槽を備えていると扱って、前記コントローラモジュールから送られてくる払出ジョブに従って在庫を切出し、受入ジョブに従って在庫を補充して管理する。
【0016】
(10)本開示の一実施形態として、(1)から(9)のいずれかにおいて、
前記コントローラモジュールは、実行中のジョブを停止して別のルートへ振り替えれば待機中のジョブを同時実行できる場合に、前記実行中のジョブを前記別のルートへ振り替える処理を実行する。
【0017】
(11)本開示の一実施形態に係る操業計画作成方法は、
(1)から(10)のいずれかの物流シミュレータ装置からシミュレーション結果を取得することと、
前記シミュレーション結果からシミュレーションが異常終了したと判定する場合に、前記物流シミュレータ装置に、前記シミュレーション結果に基づいて修正した操業計画を取得させて、再びシミュレーションを実行させることと、を含む。
【0018】
(12)本開示の一実施形態に係るプログラムは、
コンピュータを、材料を次工程に搬送する物流を模擬する物流シミュレータ装置として機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、
設備リスト、入荷計画、在庫情報、材料加工計画、設備能力、シミュレーションの開始日時と終了日時及び単位時間を取得する入力情報取得モジュールと、
前記シミュレーションの開始日時と終了日時及び前記単位時間に従って、シミュレーションを実行するコントローラモジュールと、
前記設備リスト及び前記設備能力に基づいて、シミュレーションにおける設備要素のそれぞれを接続し、搬送可能なルートを検索するルートモジュールと、
離散時間毎に取得した在庫トレンド及びジョブ実績を出力するシミュレーション結果出力モジュールと、
オンオフ制御が用意されたオプションとして、入荷間口モジュール、入荷ロット在庫管理モジュール、加工材料在庫置場モジュール、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール、加工設備在庫置場モジュール、加工設備槽型在庫置場モジュール及び加工設備モジュール、として機能させて、
前記入荷間口モジュールは、前記設備リスト及び前記入荷計画に従って、加工材料の入荷間口と入荷ロットをそれぞれ1つ以上生成し、
前記入荷ロット在庫管理モジュールは、1種類以上の加工材料について加工材料在庫置場への受入ジョブを生成し、
前記加工材料在庫置場モジュールは、前記設備リストに従って、1つ以上の前記加工材料在庫置場を生成し、
前記加工材料在庫置場内在庫管理モジュールは、前記在庫情報に基づいて、前記加工材料在庫置場内の1つにつき1つ以上の加工材料在庫置場槽を銘柄毎に生成し、前記加工材料在庫置場槽の在庫を増減し、
前記加工設備在庫置場モジュールは、前記設備リストに基づいて、2つ以上の加工設備在庫置場を生成し、前記材料加工計画に基づいて、前記加工設備在庫置場の在庫を増減し、
前記加工設備槽型在庫置場モジュールは、前記設備リストに基づいて、複数の槽の集合体である1つ以上の加工設備槽型倉庫を生成し、前記加工設備槽型倉庫の在庫を消費又は増加させ、
前記加工設備モジュールは、前記設備リストに基づいて、加工設備を生成し、前記材料加工計画に従って、シミュレーションにおいて前記加工設備で材料を加工する。
【0019】
(13)本開示の一実施形態に係る製鉄所の操業方法は、
前記次工程は、高炉に装入される原料を配合する工程であって、
(11)の操業計画作成方法において、前記シミュレーション結果からシミュレーションが正常終了したと判定する場合の前記操業計画である最適化操業計画を取得することと、
前記最適化操業計画に基づいて前記原料を搬送することと、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、多種多様なレイアウト及び前提条件に対応できる物流シミュレータ装置、操業計画作成方法、プログラム及び効率化を実現可能な製鉄所の操業方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、高炉に装入される鉄鉱石及び原料炭の物流フローを示す概略図である。
【
図2】
図2は、上位システムとの関係を含む物流シミュレータ装置の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、物流シミュレータ装置のシミュレーション実行部の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例の物流シミュレーション対象のレイアウトの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る物流シミュレータ装置、操業計画作成方法、プログラム及び製鉄所の操業方法が説明される。
【0023】
本実施形態に係る物流シミュレータ装置は材料(加工材料)を次工程に搬送する物流を模擬する。物流シミュレータ装置が対象とする物流は限定されないが、本実施形態において、製鉄所の操業の一部として行われる、原料ヤード102(
図1参照)における鉄鉱石及び原料炭の物流の例が説明される。鉄鋼業では酸化鉄である鉄鉱石をコークスとともに高炉107(
図1参照)に装入して還元し、その後精錬して鋼を作る。高炉107内での円滑な還元反応促進及びトラブル回避のため、製造する焼結鉱及びコークスにはある程度の強度と品位が必要で、多数の異なる鉄鉱石及び原料炭を配合する必要がある。
図1は鉄鉱石及び原料炭の物流フローを示す。
【0024】
鉄鉱石及び原料炭はバース101から原料ヤード102に受け入れられ、銘柄毎に山状に保管される。原料ヤード102は在庫置き場の一例である。受け入れられた鉄鉱石及び原料炭は、次工程であるベディングヤード103及び配合槽104に払い出されて、所定の品位となるように配合される。配合槽104は、焼結機105に備えられて鉄鉱石を貯める貯鉱槽、コークス炉106に備えられて原料炭を貯める貯炭槽及び高炉107に備えられる高炉槽を含む。ベディングヤード103では、2組ずつのベッドと呼ばれる山状に銘柄を重ね合わせることで配合する。ベッドの片方が積み付け中の時は他方が焼結機105又はコークス炉106に向けて切出し中であり、切出しが完了する前に積み付け中のベッドを完成させ、切り替えることで連続的な焼結機105又はコークス炉106への切出しを実現している。配合槽104は、1槽で140m3程度の鉄鉱石又は原料炭を貯蔵可能なサイロ状の槽を多数備える。多数の槽に様々な銘柄を補充し、切出しながら出側のベルトコンベア上で配合することができる。焼結機105は配合後の粉状の鉄鉱石を焼き固めて焼結鉱を生成する。コークス炉106は原料炭からコークスを製造する。高炉107はベディングヤード103から送られてくる塊鉱石、焼結機105から送られてくる焼結鉱、原料ヤード102から送られてくる処理鉱及び副原料を、コークス炉106から送られてくるコークスによって還元して銑鉄を製造する。鉄鉱石及び原料炭の物流操業では、下工程の焼結機105、コークス炉106及び高炉107の生産を止めないことが最優先であるため、原料ヤード102から次工程への払出操業の合間にバース101から原料ヤード102への受入操業が随時実施される。本実施形態に係る物流シミュレータ装置は、バース101から原料ヤード102に受け入れられてベディングヤード103及び配合槽104に払い出され、焼結機105又はコークス炉106を経て高炉107に至るまでの鉄鉱石及び原料炭の物流を対象とする。ここで、本実施形態において、ベディングヤード103及び配合槽104が混在する鉄鉱石及び原料炭の物流ラインが対象とされるが、ベディングヤード103又は配合槽104だけを含む物流ラインであってよい。
【0025】
図2は、上位システムとの関係を含む物流シミュレータ装置の概略構成を示す図である。物流シミュレータ装置は、初期設定部201と、シミュレーション実行部202と、シミュレーション終了部203と、を備える。上位システムは、各プロセスのデータ出力部204と、プロセスコンピュータ205と、ビジネスコンピュータ206と、を備える。物流シミュレータ装置の初期設定部201は、シミュレーションに必要なデータ、初期パラメータ等の準備を行う。シミュレーション実行部202はシミュレーションを実行する。シミュレーション終了部203は、シミュレーション結果をプロセスコンピュータ205へ送信する。シミュレーションに必要なデータは、ビジネスコンピュータ206及び各プロセスのデータ出力部204より取得されて、プロセスコンピュータ205を介して、初期設定部201へ送られる。ここで、シミュレーションに必要なデータは、物流シミュレータ装置のユーザによって編集可能であってよい。
【0026】
図3は、物流シミュレータ装置のシミュレーション実行部202の構成例を示す図である。また、
図3における矢印及び線はデータの流れ及び送受信があることを示す。シミュレーション実行部202は、入力情報取得モジュール301、コントローラモジュール309、ルートモジュール310及びシミュレーション結果出力モジュール311を備える。また、シミュレーション実行部202は、入荷間口モジュール302、入荷ロット在庫管理モジュール303、加工材料在庫置場モジュール304、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305、加工設備在庫置場モジュール306、加工設備槽型在庫置場モジュール307及び加工設備モジュール308の少なくとも1つを備えてよい。つまり、シミュレーション実行部202は、後述するオンオフ制御が用意されたオプションとして、入荷間口モジュール302、入荷ロット在庫管理モジュール303、加工材料在庫置場モジュール304、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305、加工設備在庫置場モジュール306、加工設備槽型在庫置場モジュール307及び加工設備モジュール308、を備える。ここで、モジュール(module)は、容易に追加又は交換ができるように構成される、物流シミュレータ装置がシミュレートする機器又は設備の機能を有する構成部品である。本実施形態において、モジュールはプログラムモジュールであって、入力変数、出力変数、シミュレートする機器又は設備の機能の処理が定められている。
【0027】
入力情報取得モジュール301は、シミュレーションに必要な設備リスト、入荷計画、在庫情報、材料加工計画、設備能力、シミュレーションの開始日時と終了日時及び単位時間を取得する。単位時間は、シミュレーションにおけるステップ時間である。シミュレーション実行部202は、シミュレーションの開始日時にシミュレーションを開始する。また、入力情報取得モジュール301は、設備停止計画を取得してよい。
【0028】
入荷間口モジュール302は、入力情報取得モジュール301によって取得された設備リスト及び入荷計画に従って、加工材料の入荷間口(すなわちバース101)と入荷ロット(すなわち原料船)をそれぞれ1つ以上生成する。入荷間口モジュール302は、バース101に空きがある場合に、待機している原料船を入港して占有させて、原料船内の加工材料が無くなったら占有していたバース101を開放する。
【0029】
入荷ロット在庫管理モジュール303は、入荷間口モジュール302で生成される原料船が積載している1種類以上の加工材料について原料ヤード102への受入ジョブを生成する。入荷ロット在庫管理モジュール303は、生成した受入ジョブをコントローラモジュール309へ出力する。また、入荷ロット在庫管理モジュール303は、受入ジョブを実施中の加工材料について、原料船の積み荷量を管理する。ここで、ジョブ(job)は操業における作業を意味し、タスクと言い換えることも可能である。ジョブは、受入ジョブ、払出ジョブ及び緊急ジョブを含む。
【0030】
加工材料在庫置場モジュール304は、入力情報取得モジュール301によって取得された設備リストに従って、1つ以上の加工材料在庫置場(すなわち原料ヤード102)を生成する。また、加工材料在庫置場モジュール304は、入力情報取得モジュール301によって取得された在庫情報に基づいて、加工材料在庫置場の初期在庫、最大在庫量を設定する。
【0031】
加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305は、入力情報取得モジュール301によって取得された在庫情報に基づいて、原料ヤード102の1つにつき1つ以上の加工材料在庫置場槽を銘柄毎に擬似的に生成する。つまり、加工材料在庫置場槽は、加工材料在庫置場の擬似的な槽であって、銘柄毎に生成される。また、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305は、コントローラモジュール309から送られてくる原料ヤード102への受入ジョブ、下工程への払出ジョブを受け取り、加工材料在庫置場槽の在庫を増減して管理する。
【0032】
加工設備在庫置場モジュール306は、入力情報取得モジュール301によって取得された設備リストに基づいて、2つ以上の加工設備在庫置場(すなわちベディングヤード103)を生成する。また、加工設備在庫置場モジュール306は、入力情報取得モジュール301によって取得された在庫情報に従って、2つ以上のベディングヤード103の初期在庫を設定する。2つ以上のベディングヤード103のうち少なくとも1つは積み付け中となる。加工設備在庫置場モジュール306は、入力情報取得モジュール301によって取得された材料加工計画に従って、払出ジョブを生成し、生成した払出ジョブをコントローラモジュール309へ出力する。ベディングヤード103への払出ジョブの実行中に、加工設備在庫置場モジュール306は、ベディングヤード103の在庫を増加させる。また、その他のベディングヤード103のうち少なくとも1つは切出し中となる。加工設備在庫置場モジュール306は、入力情報取得モジュール301によって取得された材料加工計画又は加工設備モジュール308で生成された加工設備の材料加工計画に従って、ベディングヤード103の在庫を増減する。
【0033】
加工設備槽型在庫置場モジュール307は、入力情報取得モジュール301によって取得された設備リストに基づいて、複数の槽の集合体である1つ以上の加工設備槽型倉庫(すなわち配合槽104)を生成する。加工設備槽型在庫置場モジュール307は、入力情報取得モジュール301によって取得された在庫情報に従って、全ての配合槽104の最大在庫及び初期在庫を設定する。また、加工設備槽型在庫置場モジュール307は、入力情報取得モジュール301によって取得された材料加工計画又は加工設備モジュール308で生成された加工設備の材料加工計画に従って、配合槽104の在庫を消費する。ここで、加工設備槽型在庫置場モジュール307は、配合槽104の在庫が予め定められた閾値を下回った場合に、原料ヤード102から配合槽104への適切な量の払出ジョブを生成する。加工設備槽型在庫置場モジュール307は、生成した払出ジョブをコントローラモジュール309へ出力する。配合槽104への払出ジョブの実行中に、加工設備槽型在庫置場モジュール307は、配合槽104の在庫を増加させる。
【0034】
加工設備モジュール308は、入力情報取得モジュール301によって取得された設備リストに基づいて、加工設備(すなわち焼結機105、コークス炉106、高炉107のうち少なくとも1つ以上)を生成する。加工設備モジュール308は、入力情報取得モジュール301によって取得された材料加工計画に従って、シミュレーションにおいて加工設備で材料を加工し、焼結鉱、コークス又は銑鉄を生成する。加工設備の属性は設備リストで指定される。
【0035】
コントローラモジュール309は、入力情報取得モジュール301によって取得されたシミュレーションの開始日時と終了日時及び単位時間に従って、シミュレーションを実行する。詳細に述べると、コントローラモジュール309は、入荷ロット在庫管理モジュール303によって生成された受入ジョブと、加工設備在庫置場モジュール306及び加工設備槽型在庫置場モジュール307によって生成された払出ジョブと、取得する。コントローラモジュール309は、受入ジョブと払出ジョブを、それぞれ発生した離散時間毎に管理し、それぞれのジョブが実行可能なルートをルートモジュール310で生成された接続関係から検索する。つまり、コントローラモジュール309は、ルートモジュール310を利用して材料を搬送可能なルートを検索する。コントローラモジュール309は、検索された複数のルート候補からあらかじめ設定したロジックに基づきルートを選択し、選択したルートでシミュレーションを実行する。ここで、ルートの選択ロジックは、例えば乱数に従ったランダム選択でよいし、原料ヤード102のうち古い山から使用する手法であってよいし、在庫が少ない加工材料在庫置場槽から使用する手法であってよい。
【0036】
ルートモジュール310は、入力情報取得モジュール301によって取得された設備リスト及び設備能力に基づいて、シミュレーションにおける設備要素のそれぞれを接続し、搬送可能なルートを検索し、さらに設備要素のそれぞれの移動能力等を設定する。設備要素は、バース101、原料ヤード102、ベディングヤード103、配合槽104、焼結機105、コークス炉106、高炉107、ベルトコンベア、移動機及び重機ダンプを含む。
【0037】
シミュレーション結果出力モジュール311は、離散時間毎に取得した在庫トレンド及びジョブ実績などを出力する。ここで、離散時間は、入力情報取得モジュール301によって取得されたシミュレーションの開始日時と終了日時及び単位時間に基づいて定められる。ジョブ実績は、期限日時までに終了できたジョブを意味する。
【0038】
ここで、シミュレーション終了部203は、あらかじめ定められたシミュレーションの終了条件を満たしているかを確認し、終了条件を満たした場合に、更新後の受入計画及び払出計画でのシミュレーションを終了する。シミュレーション終了部203は、終了条件を満たしていなければ、単位時間を1だけ進めて、シミュレーション実行部202の処理に戻ってシミュレーションを継続させる。
【0039】
本実施形態において、物流シミュレータ装置はコンピュータで構成されて、プログラムによってコンピュータのプロセッサが各モジュールとして機能する。物流シミュレータ装置を構成するモジュールの一部は、入力情報取得モジュール301が取得する入力データに含まれる設備リストに従って使用又は不使用が選択されるオプションとなっている。このような構成によって、多種多様なレイアウト及び前提条件に対応することができる。具体的には、入荷間口モジュール302、入荷ロット在庫管理モジュール303、加工材料在庫置場モジュール304、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305、加工設備在庫置場モジュール306、加工設備槽型在庫置場モジュール307、加工設備モジュール308がオプションである。これらのモジュールには、それぞれオンオフ制御が用意されており、例えば「1」が設定されてオンであれば使用され、「0」が設定されてオフであれば使用されない(表9参照)。オンオフ制御は、入力情報取得モジュール301が取得する入力データに基づいて設定されて、設備要素を自動的に設定可能とする。例えば入荷間口モジュール302、入荷ロット在庫管理モジュール303、加工材料在庫置場モジュール304、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305がオフの場合に、原料ヤード102の在庫を無限として扱い、原料ヤード102以降の払出操業に集中したシミュレーションが可能になる。また、例えば加工設備モジュール308でコークス炉106をオフにして、オンにした焼結機105及び高炉107のみを物流フローへ加え、鉄鉱石の物流にフォーカスしたシミュレーションが可能になる。また、例えばベディングヤード103の有無、配合槽104の有無などを設備リストにおいて指定するだけで、対象とする製鉄所の構成に合わせた設定が可能になる。また、モジュールのオンオフ制御によって、設備リストが変更となった場合のソフトウェア改造(コーディング)の手間がなくなるという効果が生じる。
【0040】
以下に、
図1の鉄鉱石及び原料炭の物流フローを例に、物流シミュレータ装置で行われる処理の詳細が説明される。入荷の原料船は表1のようなデータで与えられる。
【0041】
【0042】
行方向を受入ジョブとして定義し、同一の船の受入ジョブは入港日時になるとコントローラモジュール309によって実行可能のトリガ(例えば「1」)が設定される。また、入荷の原料船が表1のようなデータ(すなわち入荷計画)として与えられない場合に、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305によって、あらかじめ定められたルールに基づいて入荷ロットが生成される。あらかじめ定められたルールは、例えばある銘柄在庫が閾値を下回った場合に、その銘柄を積載した原料船をランダムに生成するものであってよい。受入場所については入荷ロット在庫管理モジュール303によって、あらかじめ定められたルールに従って選択される。例えば複数の原料ヤード102に受入れの銘柄の置き場がある場合に、原料ヤード102の最大容量の比率に従って分割して受け入れてよい。また、受入場所が受け入れ可能な場所の候補の中からランダムに選択されてよい。受入ジョブの1ロットの荷役量は、原料船のハッチのサイズに応じて決定することが好ましい。また、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305は、ジョブの実行中に加工材料在庫置場槽の在庫が満杯又は不足となった場合に、ジョブを中断し、あらかじめ定められたルールに従って別の加工材料在庫置場槽を選んでジョブを再開してよい。
【0043】
加工設備槽型在庫置場モジュール307は、表2のような設備に関する入力データで定義される。
【0044】
【0045】
複数の設備に付随する配合槽104は、入力データで設定可能であり、例えばユーザが設備の位置関係をコーディングする必要がない。配合槽104は、設備レイアウト及び設備情報に従って下工程となる複数の設備と接続され、それらの加工能率と銘柄の配合率の積に従って在庫が切出される。加工設備槽型在庫置場モジュール307は、在庫が切出されて入力データで設定される補充閾値を下回る場合に、その槽への払出ジョブを生成してコントローラモジュール309へ送るロジックを採用してよい。
【0046】
ベディングヤード103では複数の銘柄が地層状に積みつけられてブレンドされる。ここで、ベディングヤード103への払出ジョブの生成を複数ロットに対して入力データで指定すると、細かい指定が必要となって入力データが煩雑となり、細かい指定を省略するとユーザの想定通りに複数の銘柄の積み付けがされないおそれがある。加工設備在庫置場モジュール306は、ベディングヤード103の生成において、表3の入力データに従って擬似的な槽を定義する。
【0047】
【0048】
加工設備在庫置場モジュール306は、加工設備槽型在庫置場モジュール307と同様に、目的地と指定されている加工設備の加工能率と銘柄の配合率の積に従って在庫を切出す。加工設備在庫置場モジュール306は、補充閾値を下回った場合に、擬似的な槽への払出ジョブを生成するロジックを用いることができ、現実の操業と同様に異なる銘柄を順番に積載した状態をシミュレートすることができる。ここで、擬似的な槽の最大容量の設定に制限はないが、ベディングヤード103が野積み配合であることから現実の配合槽104への払出しより多くなるため、現実の配合槽104より多く設定してよい。また、擬似的な槽の初期在庫は0に設定してよい。ベディングヤード103の構成を仮想的に多数の槽に様々な銘柄を補充されていると扱うことによって、配合槽104と同様に扱うことが可能である。すなわち、ベディングヤード103と配合槽104とはシミュレーション上で共通の設備要素として扱うことが可能である。このことによって、加工設備在庫置場モジュール306は、さらに効率的に在庫の増減の管理及び払出計画の作成を実行することができる。
【0049】
また、ベディングヤード103はベッドの組で構成され、一方が積み付けられて配合中に、他方が下工程の加工設備へ切出し中である。他方のベッドが取り切られたら、積み付けられたベッドから切出しが行われて、空いたベッドで積み付けが開始される。このようなベッドの切替毎に配合率及び予定積み量を変更することが可能である。例えば表4の同じベッド番号で示されるデータのように、積み量、銘柄、配合率などが変更されてよい。ここで、切出し中のベッドを取り切るまでに次のベッドが完成しなければ、異常終了としてシミュレーションを終了してよい。
【0050】
【0051】
コントローラモジュール309は、表5のように各モジュールより送られてくる受入ジョブと払出ジョブを実施優先順に並べる。コントローラモジュール309は、緊急性の高いジョブを割込みで最上位にリストアップしたリストを作成してよい。また、実施したジョブはリストより削除される。
【0052】
【0053】
表5の実施優先順は、最優先を「1」として、ジョブの優先順位を示す。起票日時は、ジョブの生成された日時を示し、受入ジョブであれば船入港時に生成される。リストでは実施優先順にジョブが並べられる。実施優先順は起票日時の先後と関係なく設定される。つまり、起票日時が先でも実施優先順が先になるとは限らない。ジョブにおける搬送元と搬送先はそれぞれFromとToの欄で示されている。実施の項目は、行で示されるジョブについて、「Done」が終了済みであること、「On progress」が実施中であること、「Wait」が待機中であることを示す。実施の項目のその他の記載については後述する。緊急の項目は、「1」が緊急ジョブであることを示す。ここで、作業量は、受入ジョブであれば入力データで与えられているため、具体的な数値が記載されている。これに対して、払出ジョブであれば、払出し先(例えば配合槽104)が満槽になるまでの作業量が記入されることになるが、払出し先では補充中も切出しが行われ得るため、作業量が特定されず、具体的な数値が記載されていない。
【0054】
コントローラモジュール309は、同時に実行可能なジョブを、並行して実行する。コントローラモジュール309は、緊急のジョブを最優先で実行し、払出ジョブを受入ジョブより優先する。また、コントローラモジュール309は、既に実行中のジョブと競合するため実行不可であるジョブを待機させる。表5の例において、上から7番目のジョブは、緊急ジョブ(上から4番目のジョブ)に割り込まれて停止しており、実施の欄が「Interrupted」と示されている。また、表5の例において、上から3番目のジョブは、同じ銘柄を同じ場所に払出す緊急ジョブが発生したため、実行前にリストより削除され、実施の欄が「Delete」と示されている。ここで、コントローラモジュール309は、実行中のジョブを停止して別のルートへ振り替えれば待機中のジョブを同時実行できる場合に、実行中のジョブを別のルートへ振り替える処理を実行して、効率的な操業を実現させてよい。
【0055】
ここで、銘柄区分の粒度を入力データで設定することが可能である。例えば銘柄A、銘柄Bといった特定の銘柄を原材料の配合に指定することができる。また例えば南米鉱X(銘柄A及び銘柄Bが該当)、豪州鉱Y(銘柄a及び銘柄bが該当)といった上位の銘柄区分で配合を設定することが可能である。鉄鉱石及び原料炭の物流操業では、最小区分単位の銘柄名が変更されることが度々ある。そのため、従来シミュレーションにおいてデータの編集が煩雑であったが、本開示の物流シミュレータ装置によれば入力データの設定によって柔軟に対応可能である。
【0056】
加工在庫置場の初期在庫は表6のようにヤード毎、銘柄毎に与えられる。加工材料在庫置場内在庫管理モジュール305は、原料ヤード102内に銘柄毎の擬似的な槽を備えていると扱って、コントローラモジュール309から送られてくる払出ジョブに従って在庫を切出し、受入ジョブに従って在庫を補充して管理する。
【0057】
【0058】
コントローラモジュール309は、表7のように設備停止計画が入力データで与えられている場合に、設備停止計画に基づいて、シミュレータ離散時間が設備停止の時刻となれば該当する設備を停止させる。ルートモジュール310は、例えばベルトコンベア、スタックリクレーマ(移動機の一例)など、搬送又は移動に関わる機器が停止する場合に、停止する機器を通るルートを除いて、搬送可能なルートを検索してよい。メンテナンス等によって停止する予定の設備要素を含むルートを除いて、搬送可能なルートを検索することが可能になる。コントローラモジュール309は、停止する設備を利用しないと払出し又は受け入れができない銘柄がある場合に、異常終了としてシミュレーションを終了してよい。
【0059】
【0060】
表7において「BC201」は1つのベルトコンベアである。「SR2」は1つのスタックリクレーマである。「UL1」は1つの船である。
【0061】
図4は、実施例の物流シミュレーション対象のレイアウトの概略図である。上記の表1~表7で例示された入力データに加えて、表8~表10に例示される設備リスト、入力データに含まれるマスターによるモジュールのオンオフ制御、設備能力などが用いられる。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
表8において「UL1」は1つの船である。「BC101」は1つのベルトコンベアである。「SR1」は1つのスタックリクレーマである。表9は上記のように、オンオフの項目が「1」が設定されれば使用され、「0」が設定されれば使用されないことを示す。例えば「Coke Oven」が「0」であり、シミュレーションにおいてコークス炉106は「無い」と設定される。このように、入力データの編集のみで、バース101、荷役機器の数、ヤード数、ベッド数、焼結機105と高炉107の基数、コークス炉106の有無、ベッドと焼結機105、高炉107の対応関係、各設備の稼働状況と生産能力等が設定される。また、
図4に従って、機器の競合関係を入力データに含めることが可能である。
【0066】
再び
図2を参照すると、シミュレーション終了部203は、あらかじめ設定した終了条件に達するとシミュレーションを終了する。終了条件は、例えば入力情報取得モジュール301によって取得されたシミュレーションの終了日時に達したとき、ベディングヤード103又は配合槽104で在庫量が不足したとき、を含んでよい。シミュレーションを終了するときに、シミュレーション結果が出力される。シミュレーション結果は、正常終了か異常終了かを示すフラグ、受入ジョブ実績、払出ジョブ実績などを含んでよい。ここで、正常終了は、在庫量の不足などを生じずに材料を搬送してシミュレーションが終了したことである。一方、異常終了は、例えば在庫量の不足の発生、終了日時で終了しなかった払出ジョブがあったなどの異常を伴って、シミュレーションが終了したことである。また、シミュレーション結果として、トレンド情報が出力されてよい。トレンド情報は、例えばベディングヤード103の在庫量の変化、配合槽104の在庫量の変化を含んでよい。
【0067】
シミュレーションが終了するまで、在庫トレンドの情報などが出力されてよい。例えばシミュレーションが異常終了した場合であっても、上位システムにおいて、在庫トレンドの情報などを見ながらアラートの内容を確認し、操業計画、在庫置き場計画などの入力データを修正することができる。ここで、操業計画には、入力情報取得モジュール301により取得される材料加工計画が含まれる。材料加工計画には、本実施形態において、焼結鉱、コークス又は高炉107により生産される銑鉄の生産量と配合の計画が含まれる。材料加工計画は、製鉄所における鉄鋼製品製造計画を実現するための鉄源供給量及びその内訳を定めるものである。操業計画は、鉄鋼製品製造計画まで考慮してよい。また、操業計画は、入荷計画を含めてよい。修正した入力データを用いた再度のシミュレーションでは、良好な結果となることが期待される。また、物流シミュレータ装置は、良好な結果が得られた場合(シミュレーションが正常終了した場合)における操業計画を、関連するシミュレーションデータと共に、プロセスコンピュータ205を通じて上位システムに送信することもできる。
【0068】
例えば物流シミュレータ装置からシミュレーション結果を取得することを含む、操業計画作成方法が実行されてよい。操業計画作成方法は、シミュレーション結果からシミュレーションが異常終了したと判定する場合に、物流シミュレータ装置に、シミュレーション結果に基づいて修正した操業計画を取得させて、再びシミュレーションを実行させることと、を含んでよい。例えば操業計画作成方法は上位システムで行われてよい。また、操業計画作成方法において、シミュレーション結果からシミュレーションが正常終了したと判定する場合の操業計画である最適化操業計画を取得することと、最適化操業計画に基づいて原料を搬送することと、を含む、製鉄所の操業方法が実行されてよい。具体的には、製鉄所の操業方法は、各原料の搬送を制御する制御機器に対して、プロセスコンピュータ205を経由して搬送量などを指示して制御することを含んでよい。ここで、搬送される原料は、次工程において配合され、高炉107に装入される原料であって、本実施形態の鉄鉱石及び原料炭も含まれるが、鉄鉱石及び原料炭に限定されるものでない。例えば配合される原料は副原料も含み、このような副原料についても本実施形態の考え方が適用できる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る物流シミュレータ装置、操業計画作成方法及びプログラムは、モジュールの組み合わせと入力データの編集のみで様々なシミュレーションを表現可能なため、多種多様なレイアウト及び前提条件に対応できる。また、従来技術と比べて、物流シミュレータ装置又はプログラムの開発工期を大幅に短縮することができる。また、このようなシミュレーションが正常終了した場合における操業計画に従うことによって、効率的な製鉄所の操業方法が可能になる。また、各原料銘柄の在庫が適切に管理されることで、常に一定品質の原料を供給することが可能となり、高品質な鉄鋼材料の製造に寄与できる。
【0070】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラムを記録した記憶媒体(例えば非一時的な記録媒体(non-transitory computer-readable recording medium))としても実現し得る。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0071】
101 バース
102 原料ヤード
103 ベディングヤード
104 配合槽
105 焼結機
106 コークス炉
107 高炉
201 初期設定部
202 シミュレーション実行部
203 シミュレーション終了部
204 各プロセスのデータ出力部
205 プロセスコンピュータ
206 ビジネスコンピュータ
301 入力情報取得モジュール
302 入荷間口モジュール
303 入荷ロット在庫管理モジュール
304 加工材料在庫置場モジュール
305 加工材料在庫置場内在庫管理モジュール
306 加工設備在庫置場モジュール
307 加工設備槽型在庫置場モジュール
308 加工設備モジュール
309 コントローラモジュール
310 ルートモジュール
311 シミュレーション結果出力モジュール
【要約】
物流シミュレータ装置は、入力情報取得モジュール(301)と、シミュレーションを実行するコントローラモジュール(309)と、搬送可能なルートを検索するルートモジュール(310)と、離散時間毎に取得した在庫トレンド及びジョブ実績を出力するシミュレーション結果出力モジュール(311)と、を備え、オンオフ制御が用意されたオプションとして、入荷間口モジュール(302)、入荷ロット在庫管理モジュール(303)、加工材料在庫置場モジュール(304)、加工材料在庫置場内在庫管理モジュール(305)、加工設備在庫置場モジュール(306)、加工設備槽型在庫置場モジュール(307)及び加工設備モジュール(308)、を備える。