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特許7700983蓄電デバイス及びその製造方法、並びに、蓄電デバイス用外装材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】蓄電デバイス及びその製造方法、並びに、蓄電デバイス用外装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/131 20210101AFI20250624BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/164 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/16 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/171 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20250624BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/105
H01M50/15
H01M50/121
H01M50/119
H01M50/164
H01M50/16
H01M50/171
H01M50/129
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025525129
(86)(22)【出願日】2025-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2025001473
【審査請求日】2025-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2024006433
(32)【優先日】2024-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024006434
(32)【優先日】2024-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】島田 信哉
(72)【発明者】
【氏名】金澤 早陽子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 恵美子
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/058453(WO,A1)
【文献】特開2011-243385(JP,A)
【文献】特表2023-518998(JP,A)
【文献】特開2017-73238(JP,A)
【文献】特開2022-123686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスであって、
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体と、を有し、
前記外装フィルムは、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が前記蓋体と熱融着されている位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である、
蓄電デバイス。
【請求項2】
前記バリア層は、ステンレス鋼、鋼板、又はアルミニウム合金により形成されている、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記蓋体は、蓋本体、および、前記蓋本体と前記外装フィルムとを接合する被覆体と、を有し、
前記被覆体は、樹脂を含む、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に接着層をさらに備える、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記バリア層の前記熱融着性樹脂層側とは反対側に基材層をさらに備える、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記基材層と前記バリア層との間に接着剤層をさらに備える、請求項5に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記外装フィルムは、ヤング率が6000MPa以上である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
蓄電デバイスの製造方法であって、
前記蓄電デバイスは、
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体と、を有し、
前記外装フィルムは、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が前記蓋体と熱融着されている位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記電極体を前記外装体で封止する工程を含む、
蓄電デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス及びその製造方法、並びに、蓄電デバイス用外装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて、電極や電解質などの蓄電デバイス素子を封止するために外装材が不可欠な部材になっている。従来、外装フィルムとして金属製の外装材が多用されていた。
【0003】
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の外装フィルムでは、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る外装フィルムとして、基材層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、特許文献2は、蓄電デバイスの一例を開示している。この蓄電デバイスは、電極体と、電極体を封止する外装体と、を備える。外装体は、電極体を包む外装フィルムと、外装フィルムと接合される蓋体と、を備える。この蓄電デバイスは、例えば、筒状に構成された外装フィルムの内部に電極体が収容され、筒状の外装フィルムの開口部が蓋体によって閉じられることによって製造される。蓋体の側面と外装フィルムとは、例えば、熱融着されることによって接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-287971号公報
【文献】特開2022-123686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されたような、電極体を包む外装フィルム(蓄電デバイス用外装材)と、外装フィルムと接合される蓋体と、を備える外装体は、例えば大型の蓄電デバイスの外装体として有用である。
【0008】
このような外装体は、外装フィルム(蓄電デバイス用外装材)と蓋体との封止部(接合部)を有する。本開示の発明者らが検討したところ、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、外装フィルム(蓄電デバイス用外装材)の当該封止部について、ひび割れが発生するという新規な問題点が見出された。
【0009】
このような状況下、本開示は、電極体を包む外装フィルム(蓄電デバイス用外装材)と蓋体とを備える外装体を利用した蓄電デバイスにおいて、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、外装フィルムの蓋体との封止部にひび割れが発生することが抑制された、蓄電デバイスを提供することを主な目的とする。
【0010】
また、本開示は、電極体を包む蓄電デバイス用外装材と蓋体とを備える外装体を利用した蓄電デバイスにおいて、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、蓄電デバイス用外装材の蓋体との封止部にひび割れが発生することが抑制された、蓄電デバイス用外装材を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、電極体と、電極体を封止する外装体と、を備える蓄電デバイスにおいて、外装体は、電極体を包む外装フィルムと、外装フィルムとともに電極体を封止する蓋体と、を有し、外装フィルムは、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成し、後述する、バリア層の、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であることにより、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、外装フィルムの蓋体との封止部にひび割れが発生することが抑制されることを見出した。
【0012】
本開示は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
蓄電デバイスであって、
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体と、を有し、
前記外装フィルムは、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が前記蓋体と熱融着されている位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である、
蓄電デバイス。
【0013】
さらに、本開示の発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材において、後述する、バリア層の、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であることにより、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、蓄電デバイス用外装材の蓋体との封止部にひび割れが発生することが抑制されることを見出した。
【0014】
本開示は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明も提供する。
少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材であって、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記蓄電デバイス用外装材の前記熱融着性樹脂層と、ポリプロピレン板とを、前記熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件で熱融着させた位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記蓄電デバイス用外装材の前記熱融着性樹脂層と、前記ポリプロピレン板とを熱融着させていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である、
蓄電デバイス用外装材。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、電極体を包む外装フィルムと蓋体とを備える外装体を利用した蓄電デバイスにおいて、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、外装フィルムの蓋体との封止部にひび割れが発生する(より具体的には、バリア層にひび割れが発生する)ことが抑制された、蓄電デバイスを提供することができる。また、本開示によれば、当該蓄電デバイスの製造方法を提供することもできる。
【0016】
また、本開示によれば、電極体を包む蓄電デバイス用外装材と蓋体とを備える外装体を利用した蓄電デバイスにおいて、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、蓄電デバイス用外装材の蓋体との封止部にひび割れが発生する(より具体的には、バリア層にひび割れが発生する)ことが抑制された、蓄電デバイス用外装材を提供することもできる。また、本開示によれば、当該蓄電デバイス用外装材の製造方法、及び当該蓄電デバイス用外装材を利用した蓄電デバイスを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の蓄電デバイスの一例を示す斜視図である。
図2図1のA-A線に沿う断面図である。
図3】本開示の蓋体の一例を示す模式図である。
図4】本開示の外装フィルムの断面構造の一例を示す模式図である。
図5】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図6】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図7】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図8】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図9】本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する方法を説明するための模式図である。
図10】本開示の蓄電デバイス用外装材を利用した本開示の蓄電デバイスの一例を示す斜視図である。
図11図10のA-A線に沿う断面図である。
図12】本開示の蓋体の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の蓄電デバイスにおいて、外装フィルムは、電極体と、電極体を封止する外装体とを備える。外装体は、電極体を包む外装フィルムと、外装フィルム(蓄電デバイス用外装材)とともに電極体を封止する蓋体とを有する。外装フィルムは、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されている。バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上である。エリア平均結晶粒径R1(μm)は、外装フィルムの熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されている位置において、バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層の表面から垂直方向(すなわち、バリア層の表面に対して垂直方向)にバリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である。エリア平均結晶粒径R2(μm)は、外装フィルムの熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置において、バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層の表面から垂直方向にバリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である。本開示の蓄電デバイスは、当該構成を備えていることにより、外装フィルムの蓋体との封止部にひび割れが発生することが抑制される。
【0019】
また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記蓄電デバイス用外装材の前記熱融着性樹脂層と、ポリプロピレン板とを、前記熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件で熱融着させた位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、エリア平均結晶粒径R2(μm)は、蓄電デバイス用外装材の前記熱融着性樹脂層と、前記ポリプロピレン板とを熱融着させていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であることを特徴とする。本開示の蓄電デバイス用外装材によれば、当該構成を備えていることにより、蓄電デバイス用外装材の蓋体との封止部にひび割れが発生することが抑制される。
【0020】
以下、本開示の蓄電デバイス及び外装フィルム(以下、蓄電デバイス用外装材ともいう)について詳述する。なお、本開示において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、別個に記載された、上限値と上限値、上限値と下限値、又は下限値と下限値を組み合わせて、それぞれ、数値範囲としてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0021】
なお、外装フィルム及び蓄電デバイス用外装材において、後述のバリア層52及びバリア層3については、それぞれ、通常、その製造過程におけるMD(Machine Direction)とTD(Transverse Direction)を判別することができる。例えば、バリア層52及びバリア層3が、それぞれ、アルミニウム合金箔やステンレス鋼箔等の金属箔により構成されている場合、金属箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、金属箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、金属箔の表面を観察することによって、金属箔の圧延方向を把握することができる。また、積層体の製造過程においては、通常、積層体のMDと、金属箔のRDとが一致するため、積層体の金属箔の表面を観察し、金属箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMDを特定することができる。また、積層体のTDは、積層体のMDとは垂直方向であるため、積層体のTDについても特定することができる。
【0022】
また、アルミニウム合金箔やステンレス鋼箔等の金属箔の圧延痕により外装フィルムのMDが特定できない場合は、次の方法により特定することができる。外装フィルムのMDの確認方法として、外装フィルムの熱融着性樹脂層の断面を電子顕微鏡で観察し海島構造を確認する方法がある。当該方法においては、熱融着性樹脂層の厚み方向に対して垂直な方向の島の形状の径の平均が最大であった断面と平行な方向を、MDと判断することができる。具体的には、熱融着性樹脂層の長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面に対して垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ、電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面において、それぞれ、個々の島の形状を観察する。個々の島の形状について、熱融着性樹脂層の厚み方向に対して垂直方向の最左端と、当該垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を径yとする。各断面において、島の形状の当該径yが大きい順に上位20個の径yの平均を算出する。島の形状の当該径yの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。
【0023】
<1-1.蓄電デバイスの構成>
図1は、蓄電デバイス10を模式的に示す斜視図である。図2は、図1のA-A線に沿う断面図である。図3は、蓋体60の一例を示す模式図である。図4は、図1の蓄電デバイス10が備える外装フィルム50の積層構成の一例を示す断面図である。なお、図1から図3おいて、矢印z方向(z1方向とz2方向)は蓄電デバイス10の厚み方向を示し、矢印x方向(x1方向とx2方向)は蓄電デバイス10の幅方向を示し、矢印y方向(y1方向とy2方向)は、蓄電デバイス10の奥行方向を示す。矢印x、y、zの各々が示す方向は、以後の各図においても共通である。
【0024】
蓄電デバイス10は、電極体20と、電極端子30と、外装体40と、を備える。電極体20は、例えば、リチウムイオン電池、キャパシタ、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、または、コンデンサー等の蓄電部材を構成する電極(正極および負極)ならびに、セパレータ等を含む。本開示において、電極体20の形状は、例えば、略直方体である。なお、「略直方体」とは、完全な直方体の他に、例えば、外面の一部の形状を修正することによって直方体とみなせるような立体を含む。電極体20の形状は、例えば、円柱または多角柱であってもよい。
【0025】
図1,2の蓄電デバイス10は、2つの電極端子30を備える。電極端子30は、電極体20における電力の入出力に用いられる金属端子である。電極端子30の一方の端部は、電極体20に含まれる電極(正極または負極)に電気的に接続される。電極端子30の他方の端部は、例えば、外装体40の端縁から外側に突出する。なお、電極端子30は、電極体20の電力の入出力が可能であればよく、例えば、外装体40から突出していなくてもよい。後述する蓋体60が例えば、導電性材料を含んで構成される場合、蓋体60が電極端子30の機能を兼ねる場合があり、この場合、電極端子としての機能を有する蓋体60は、外装体40から突出してもよく、突出していなくてもよい。
【0026】
電極端子30を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、または、銅等である。例えば、電極体20がリチウムイオン電池である場合、正極に接続される電極端子30は、通常、アルミニウム等によって構成され、負極に接続される電極端子30は、通常、銅、ニッケル等によって構成される。なお、電極体20の最外層は、必ずしも電極である必要はなく、例えば、保護テープまたはセパレータであってもよい。電極体20の外郭形状は、例えば、直方体である。
【0027】
外装体40は、電極体20を封止する。外装体40は、外装フィルム50および蓋体60を備える。外装フィルム50は、電極体20を包む。図1,2では、外装フィルム50は、電極体20に巻き付けられる。蓋体60は、y方向における電極体20の側方に配置される。別の例では、y方向の両端部に開口部が形成されるように筒状に構成された外装フィルム50の内部に電極体20を収容し、開口部を蓋体60によって閉じてもよい。さらに別の例では、開口部が形成されるように筒状に構成された外装フィルム50の内部に蓋体60と接続された状態の電極体20を収容し、開口部を蓋体60によって閉じてもよい。
【0028】
外装体40は、外装フィルム50により形成された一対の主面と一対の側面を有する。図1,2において、当該一対の主面は、実質的に同じ大きさである。また、当該一対の側面は、実質的に同じ大きさである。当該一対の主面は、それぞれ、当該一対の側面よりも面積が大きい。一対の蓋体60は、一対の開口部を閉じるように電極体20の側方にそれぞれ配置される。なお、本開示において、主面及び側面は、外装体40の面のうち、蓋体60を除いて構成される面である。
【0029】
例えば、冷間成形を通じて外装フィルム50に電極体20を収容する収容部(窪み)を形成する方法がある。しかし、このような方法によって深い収容部を形成することは必ずしも容易ではない。冷間成形によって収納部(窪み)を深く(たとえば成形深さ15mm)形成しようとすると外装フィルム50にピンホールまたはクラックが発生し、電池性能の低下を招く可能性が高くなる。一方、外装体40は、外装フィルム50を電極体20に巻き付けることによって電極体20を封止しているため、電極体20の厚みに拘わらず容易に電極体20を封止することができる。なお、蓄電デバイス10の体積エネルギー密度を向上させるべく電極体20と外装フィルム50との間のデッドスペースを削減するためには、外装フィルム50が電極体20の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。また、全固体電池においては、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされている観点からも電極体20と外装フィルム50との間の空間を無くすことが必要とされるため、外装フィルム50が電極体20の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。外装フィルム50を電極体20に巻き付ける場合、1枚の外装フィルム50のみを巻き付けてもよいし、複数枚の外装フィルム50を巻き付けてもよい。また、外装フィルム50の互いに向き合う面同士が熱融着されている態様の他、外装フィルム50の外面と内面とが熱融着されている態様も好ましい。
【0030】
図4に示されるように、外装フィルム50は、少なくとも、バリア層52および熱融着性樹脂層53を有する積層体(ラミネートフィルム)である。外装フィルム50に含まれる各層の詳細については、後述する。
【0031】
蓋体60は、例えば、円柱、角柱、直方体、または、立方体等の任意の形状であってもよく、例えば、樹脂材料を含んで構成される。ここで、「樹脂材料を含んで構成される」とは、蓋体60を構成する材料の全体を100質量%としたときに、樹脂材料の含有率が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であることをいうものとする。すなわち、蓋体60を構成する材料は、樹脂材料に加え、樹脂材料以外の材料を含有することができる。
【0032】
樹脂の具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、及びフェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、樹脂材料は、これらの樹脂の混合物であってもよいし、共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。樹脂材料は、これらの中でも、ポリエステル、ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂であることが好ましく、ポリオレフィンがより好ましい。樹脂材料が樹脂である場合、蓋体60は、どのような成形方法で成形されてもよい。
【0033】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。樹脂材料は、これらの中でも、耐熱性及び耐圧性を高める観点から、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0034】
また、ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。樹脂材料は、これらの中でも、熱融着性及び耐電解液性に優れることから、ポリプロピレンが好ましい。
【0035】
上記樹脂材料としての樹脂は、必要に応じてフィラーを含有してもよい。フィラーの具体例としては、ガラスビーズ、グラファイト、ガラス繊維、及びカーボン繊維等が挙げられる。樹脂材料としての樹脂が上記フィラーを含有することにより、蓋体60の温度変化に対する変形耐性を向上させることができる。
【0036】
蓋体60を構成する材料に含まれる樹脂材料のメルトマスフローレート(測定温度230℃)は、1g/10min~100g/10minの範囲に含まれることが好ましく、1g/10min~80g/10minの範囲に含まれることが好ましく、1g/10min~60g/10minの範囲に含まれることが好ましく、5g/10min~100g/10minの範囲に含まれることが好ましく、5g/10min~80g/10minの範囲に含まれることが好ましく、5g/10min~60g/10minの範囲に含まれることがさらに好ましい。メルトマスフローレートは、JIS K7210-1:2014に基づいて測定される。
【0037】
蓋体60は、導電性材料を含んで構成されてもよい。「導電性材料を含んで構成される」とは、蓋体60を構成する材料の全体を100質量%としたときに、導電性材料の含有率が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であることをいうものとする。すなわち、蓋体60を構成する材料は、導電性材料に加え、導電性材料以外の材料を含有することができる。
【0038】
蓋体60を構成する導電性材料は、例えば、金属材料である。蓋体60を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、銅、または、銅合金である。例えば、電極体20がリチウムイオン電池である場合、正極に接続される蓋体60は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成されることが好ましい。負極に接続される蓋体60は、ニッケル、銅、または、銅合金によって構成されることが好ましい。負極に接続される蓋体60を構成する材料は、銅にニッケルめっきを施したものとしてもよい。蓋体60を構成する材料は、金属材料のリサイクル材を含んでいてもよい。蓋体60が導電性材料を含んで構成される場合、蓋体60が電極端子30としての機能を兼ねるため、蓄電デバイス10は、電極端子30を省略することもできる。
【0039】
蓋体60は、蓋本体61の少なくとも一部が被覆体62によって被覆された構成であってもよい。図3の蓋体60においては、蓋本体61の周囲(厚み部分の周囲)が、被覆体62で覆われている。蓋体60は、被覆体62を介して外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と接合されてもよい。被覆体62は、樹脂材料を含んで構成されることが好ましい。蓋体60は、蓋本体61、および、蓋本体61と外装フィルム50とを接合する被覆体62と、を有し、被覆体62は、樹脂(樹脂材料)を含む構成とすることができる。被覆体62に関する「樹脂材料を含んで構成される」ことの定義は、蓋体60の場合と同様である。
【0040】
蓋体60が導電性材料を含んで構成される場合、蓋本体61が導電性材料により構成され、蓋本体61の少なくとも一部は、被覆体62によって被覆されてもよい。
【0041】
蓋体60が導電性材料を含んで構成される場合、蓋体60は、被覆体に代えて接着性フィルムを介して外装フィルム50と接合されてもよい。接着性フィルムは、外装フィルム50と蓋体60とを接着できるフィルムであれば、任意に選択可能である。接着性フィルムは、少なくとも熱融着性樹脂層、耐熱性基材層、および、熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムであることが好ましい。接着性フィルムの熱融着性樹脂層に関する諸元は、熱融着性樹脂層53に関する諸元を適用できる。接着性フィルムの両側の熱融着性樹脂層を構成する材料は、同種の材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよく、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53を構成する材料、および、蓋体60を構成する材料に合わせて適宜選択される。接着性フィルムのうちの蓋体60と接着される側の熱融着性樹脂層を構成する材料は、好ましくは、無水マレイン酸等の酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。接着性フィルムのうちの外装フィルム50と接着される側の熱融着性樹脂層は、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53を構成する材料と同種の材料を用いることが好ましい。
【0042】
耐熱性基材層としては、耐熱性樹脂によって構成されるフィルムであればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン(登録商標)、ポリアセタール環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の無延伸または延伸フィルムを用いることができる。なお、ポリエチレンテレフタレートは安価で強度が強く、特に好ましい。
【0043】
接着性フィルムは、粘着性を有していることが好ましい。接着性フィルムが外装フィルム50と蓋体60との間に配置された状態で後述する第2封止部80を形成するときに、蓋体60および外装フィルム50に対する接着性フィルムの位置がずれにくい。接着性フィルムの熱融着性樹脂層に粘着性付与樹脂を含有させることによって、接着性フィルムに粘着性を付与することができる。粘着性付与樹脂としては、アモルファスポリオレフィンが挙げられる。アモルファスポリオレフィンとしては、例えば、アモルファスポリプロピレン、または、アモルファスプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。熱融着性樹脂を構成する母材に対する粘着性付与樹脂の含有量は、10~20重量%以下であることが好ましい。
【0044】
蓋体60は、蓄電デバイスの内側(電極体20側)に位置する第1主面と、蓄電デバイスの外側に位置する第2主面と、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と熱融着される4つの側面を備える。第1主面は、電極体20と面する。第2主面は、第1主面と反対側の面である。
【0045】
蓋体60が円柱、角柱、直方体、または、立方体等である場合、蓄電デバイス10が重ねて配置された場合であっても、外装体40が変形することが抑制されるように、蓋体60は、厚み方向(y方向)において、ある程度の厚さを有していることが好ましい。別の観点では、蓋体60が円柱、角柱、直方体、または、立方体等である場合、第2封止部80を形成する際に、蓋体60の蓋接合部と外装フィルム50とを好適に接合できるように、蓋体60は、厚み方向(y方向)において、ある程度の厚さを有していることが好ましい。蓋体60の厚み方向(y方向)の厚さ(第1主面と第2主面のy方向における距離)の最小値は、例えば、1.0mmであり、3.0mmがより好ましく、4.0mmがさらに好ましい。蓋体60のy方向の厚さの最大値は、例えば、20mmであり、15.0mmが好ましく、10.0mmがより好ましく、8.0mmがさらに好ましく、7.0mmがさらに好ましい。蓋体60のy方向の厚さの最大値は、10mm以上であってもよい。蓋体60を構成する材料の厚さの好ましい範囲は、1.0mm~20.0mm、1.0mm~15.0mm、1.0mm~10.0mm、1.0mm~8.0mm、1.0mm~7.0mm、3.0mm~20.0mm、3.0mm~15.0mm、3.0mm~10.0mm、3.0mm~8.0mm、3.0mm~7.0mm、4.0mm~20.0mm、4.0mm~15.0mm、4.0mm~10.0mm、4.0mm~8.0mm、4.0mm~7.0mmである。本開示において、蓋体60が円柱、角柱、直方体、または、立方体等と表現される場合、蓋体60がJIS(日本工業規格)の[包装用語]規格によって規定されるフィルムのみによって構成される態様は含まれない。なお、蓋体60の厚さは、蓋体60の部位によって異なっていてもよい。蓋体60の厚さが部位によって異なる場合、蓋体60の厚さは、最も厚い部分の厚さである。
【0046】
図1,2において、蓋体60には、電極端子30が挿入される貫通孔が形成されている。貫通孔は、蓋体の第1主面及び第2主面を貫通する。電極体20が収納された状態で電極端子30は、蓋体60に形成される貫通孔を通って外装体40の外部に突出する。蓋体60の貫通孔と電極端子30との僅かな隙間は、例えば、樹脂によって埋められる。なお、蓄電デバイス10において、電極端子30が外部に突出する位置は、任意に選択可能である。例えば、電極端子30は、外装体40が有する6面のうちいずれかの面に形成された孔から外部に突出していてもよい。この場合には、外装体40と電極端子30との間の僅かな隙間が、例えば、樹脂によって埋められる。電極端子30は、蓋体60と外装フィルム50との間から突出していてもよく、後述する第1封止部70から突出していてもよい。蓄電デバイス10においては、蓋体60と電極端子30とが別体として設けられているが、蓋体60と電極端子30とは一体的に形成されていてもよい。なお、電極端子30が外装体40の端縁から突出しない場合、蓋体60には、貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0047】
図1,2では、電極体20の周囲に外装フィルム50が巻き付けられた状態で、外装フィルム50の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層53)同士がヒートシールされることによって、第1封止部70が形成されている。
【0048】
第1封止部70は、外装フィルム50の熱融着性樹脂層同士がヒートシールされることによって形成される。第1封止部70は、外装体40の長手方向に延びる。外装体40において、第1封止部70が形成される位置は、任意に選択可能である。図1に示されるように、第1封止部70の根本は、外装体40の主面と側面との境界の辺上に位置することが好ましい。第1封止部70の根本は、外装体40の任意の面上に位置していてもよい。図1では、第1封止部70は、平面視において、電極体20よりも外側に張り出している。第1封止部70は、例えば、外装体40の側面に向けて折り畳まれていてもよく、主面に向けて折り畳まれていてもよい。
【0049】
外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と蓋体60の蓋接合部(外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と蓋体60とが接する部分)とが、例えば、ヒートシールによって接合されることによって、第2封止部80が形成される。外装フィルム50と蓋体60とは、溶接等の任意の方法でも接合することができる。
【0050】
<1-2.蓄電デバイスの物性>
本開示の蓄電デバイスにおいて、外装フィルム50のバリア層52は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であることを特徴としている。
【0051】
ここで、バリア層52のエリア平均結晶粒径R1(μm)は、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53が蓋体60と熱融着されている位置(第2封止部80の位置)において、バリア層52の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層52の表面から垂直方向(すなわち、バリア層の表面に対して垂直方向)にバリア層52を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である。
【0052】
また、バリア層52のエリア平均結晶粒径R2(μm)は、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53が熱融着されていない位置において、バリア層52の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層52の表面から垂直方向にバリア層52を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である。
【0053】
本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、当該比(R1/R2)は、好ましくは約55%以上、より好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上であり、また、好ましくは約150%以下、より好ましくは約140%以下、さらに好ましくは約130%以下であり、好ましい範囲としては、55~150%程度、55~140%程度、55~130%程度、60~150%程度、60~140%程度、60~130%程度、70~150%程度、70~140%程度、70~130%程度が挙げられる。
【0054】
バリア層52のエリア平均結晶粒径R1(μm)及びエリア平均結晶粒径R2(μm)は、以下の方法により測定される値である。
【0055】
<バリア層のエリア平均結晶粒径R1,R2の測定>
蓄電デバイスについて、外装フィルムの熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されている位置(シール部(第2封止部))のバリア層と、外装フィルムの熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置(非シール部)のバリア層を取得し、それぞれ、EBSD法による結晶解析を行って、バリア層のエリア平均結晶粒径R1,R2を測定する。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0056】
各バリア層の圧延方向とは垂直方向の断面について、EBSD法による結晶解析を行い、バリア層のエリア平均結晶粒径を測定する。測定条件の詳細は、以下の通りである。エリア平均結晶粒径は、[(測定領域-CI値0.1以下の領域)/結晶の数]で算出された面積を円に仮定した時の直径であり、EBSD法による結晶解析で取得される画像を複数枚連結して、約5000μm2以上とした測定領域に含まれる結晶のエリア平均結晶粒径である。また、結晶粒径は、結晶の形状を円と仮定し、当該測定領域に含まれる結晶について測定した値である。結晶粒径の標準偏差は、CI値0.1以下の領域を除去後、EBSD法による結晶解析で取得される画像を複数枚連結して、約5000μm2以上とした測定領域(バリア層の厚み方向の全体を測定領域とする)に含まれる結晶の結晶粒径(結晶面積を円に仮定した時の直径)の分布から算出する。なお、バリア層のエリア平均結晶粒径R2は、エリア平均結晶粒径R1の測定箇所から3cm離れた箇所について測定する。
【0057】
(測定装置)
ショットキー電界放出走査電子顕微鏡に、EBSD検出器を搭載した装置を用いる。
【0058】
(前処理)
前処理として、バリア層を、圧延方向(RD)とは垂直方向に切断して、断面を得る。バリア層の圧延方向は、バリア層の光沢面を金属顕微鏡で観察し、線状の圧延痕が伸びる方向である。具体的な手順としては、まず、試料とするバリア層を、トリミング用カミソリで5mm(圧延方向とは垂直方向)×10mm(圧延方向)に切り出した後、樹脂に包埋させる。次に、トリミング用カミソリを用い、バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層の表面から垂直方向に、バリア層を樹脂と共に切断して、バリア層の断面を露出させる。次に、ミクロトームを用いて、得られた断面をトリミングする。このトリミングにおいては、断面形状の機械的歪みを低減するため、包埋した樹脂とともに、当該断面に対して垂直方向に1mm程度、ミクロトームで切り進める。次に、イオンミリング装置を用い、飛び出し幅50μm、電圧6kV、4時間の条件で、当該断面に対して垂直方向にブロードアルゴンビームを照射して、測定断面を作製する。これは、前工程で発生している機械的な結晶構造への破壊が最小限になるよう、精密にバリア層の断面を露出させる作業である。なお、本開示において、アルミニウム合金箔を切断する際の「垂直方向」は、実体顕微鏡下で確認して行うため、10°程度の誤差を含み得る。すなわち、圧延方向に垂直方向とは、圧延方向に80~100°、表面から垂直方向とは、表面に対して80~100°を許容範囲とする。
【0059】
(SEM条件)
EBSD法に用いた走査型電子顕微鏡(SEM)の条件は、以下の通りである。
観察倍率:2000倍(撮影時の観察倍率標準は、Polaroid545とする)
加速電圧:15kV
ワーキングディスタンス:15mm
試料傾斜角度:70°
【0060】
(EBSD条件)
EBSD法による結晶解析の条件は、以下の通りである。
ステップサイズ:150nm
解析条件:
株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIM(Ver.7.3)を使用して、以下の解析を実施する。
画像を複数枚連結し、測定領域は約5000μm2以上とする。測定領域の上限については、例えば、約30000μm2以下とする。このとき、バリア層の厚み方向の中心から両端側までを測定領域とし、断面に樹脂が付着している部分や、耐酸性皮膜が存在している部分については、測定領域から除外する。
CI値は0.1以上、粒界条件は0.5度以上、最小グレインサイズは3ステップ以上とする。
画像を連結後、極点図を確認する。
極点図の中心が10°以上ずれている場合は、対称性が整うように結晶データを回転させる。なお、その際の参考とする極点図は、XRDでサンプル表面より測定する。またEBSDで表面より極点図を得る場合には、サンプル表面の機械的な結晶構造の影響を取り除くため、サンプル表面の機械研磨、平面ミリング、電界研磨などを実施した後に、広範囲測定を実施する。その後、表面方向より得られた極点図は、目的試料の断面より得られた極点図と同じ方位から得たものと同じになるように90°回転させる。この極点図を参考にする。
株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIM(Ver.7.3)にて定義される信頼性指数(Confidence Index:CI値)CI値が0.1以下のデータは排除して解析を実施する。これにより、試料表裏に存在する前処理に使用した樹脂や、断面に存在している粒界や、アモルファスに基づくデータを排除することができる。
【0061】
バリア層52のエリア平均結晶粒径R1(μm)及びエリア平均結晶粒径R2(μm)は、それぞれ、バリア層52を構成する素材、バリア層52の厚み、蓋体60の素材等によって調整することができる。さらに、バリア層52のエリア平均結晶粒径R1(μm)については、外装フィルム50と蓋体60をヒートシールして第2封止部80を形成する際のシール条件(温度、圧力、時間)によっても調整することができる。
【0062】
例えば、バリア層52のヤング率を高める(すなわち、外装フィルム50のヤング率を高める)ことで、バリア層52のエリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)を高めることができる。バリア層52の好ましいヤング率については、後述する。例えば、バリア層52の厚みを大きくすること、高強度の金属を使用することなどが有効である。
【0063】
また、例えばバリア層52がアルミニウム合金箔により形成されている場合、JIS規格の8000番台のアルミニウム合金組成であれば、アルミニウム地金にSiを微量添加することで強度を高めることができる。また、JIS規格の5000番台のアルミニウム合金組成であれば、Mgをアルミニウムに固溶することで、固溶強化によって軟質箔の強度を高めることができる。
【0064】
バリア層52を形成する金属の結晶粒を微細化させることも、前記の比(R1/R2)を高めるために有効である。例えば、JIS規格の8000番台、5000番台のアルミニウム合金組成の場合、鋳造時にAL-Fe系金属間化合物として晶出し、それが核となって結晶粒が微細化する。また、異周速圧延(互いに周速が異なるロールで圧延する方法)を採用すると、圧延材は通常の圧延変形に加えて板厚全体にせん断変形を受ける。その結果、結晶回転が促進され亜粒界から大角粒界への変化が促進されて微細結晶粒が生成する。この方法は冷間加工でも効果があるが、温間加工のほうが効果は大きい。さらに、アルミニウム合金箔の熱間圧延の圧延パス数を増やすこと、最終冷間圧延率を高くすることも有効である。中間焼鈍後から最終厚さまでの最終冷間圧延率が高い程(例えば80%以上)、アルミニウム合金箔に蓄積されるひずみ量が多くなり最終焼鈍後の再結晶粒が微細化される。
【0065】
アルミニウム箔の圧延条件については、圧延率、加熱温度、加熱時間などの条件を調整する。例えば、アルミニウム金属又はアルミニウム合金鋳塊を500~600℃程度で1~2時間程度均質化処理する工程、熱間圧延する工程、冷間圧延する工程、300~450℃程度で1~10時間程度保持する中間焼鈍の工程、中間焼鈍後から最終圧延までの圧延率を80%以上、より好ましくは90%以上で実施する冷間圧延工程、250~400℃程度で30~100時間程度保持する最終焼鈍工程を含む方法が挙げられるが、結晶粒を微細化させる条件は、これに限らない。
【0066】
さらに、バリア層52の線膨張係数を蓋体60(蓋本体61又は被覆体62)に使用される材料の線膨張係数に近づけることも有効である。
【0067】
<1-3.蓄電デバイスの製造方法>
本開示の蓄電デバイスは、本開示の電極体20、電極端子30、外装フィルム50、及び蓋体60を組み立てることで製造することができる。これらの組み立ては、例えば、公知の方法を採用することができる。本開示の蓄電デバイスの具体例を以下に示す。
【0068】
電極端子30が接合された一対の蓋体60を電極体20に対して配置し、電極端子30と電極体20とを電気的に接続する。なお、電極体20と電気的に接続された電極端子30に対して、蓋体60を接合してもよい。
【0069】
次に、電極体20および蓋体60を外装フィルム50によって包む。規制手段によって電極体20および蓋体60の移動を規制しつつ、外装フィルム50にテンションが作用した状態で外装フィルム50を電極体20および蓋体60に巻き付ける。規制手段は、例えば、電極体20および蓋体60が嵌め込まれる溝である。規制手段は、電極体20および蓋体60が移動しないように、電極体20および蓋体60に外力を作用させる装置であってもよい。規制手段は、外装フィルム50が引っ張られる方向と反対方向の力を電極体20および蓋体60に作用させる装置であってもよい。なお、規制手段は、外装フィルム50のしわを取り除くために、外装フィルム50が引っ張られている状態において、外装フィルム50上を走行するローラーを含んでいてもよい。
【0070】
次に、電極体20を外装体40で封止する工程を行う。具体的には、互いに対向する、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53同士を熱融着させて第1封止部70を形成する工程と、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と蓋体60の側面とを熱融着させて第2封止部80を形成する工程を行う。これらの工程の順序は特に制限されないが、例えば第2封止部80を形成してから、第1封止部70を形成する。第1封止部70及び第2封止部80の形成は、ヒートシールバーなどを用いて、熱融着性樹脂層53を熱融着させることで行うことができる。
【0071】
<2-1.外装フィルム(蓄電デバイス用外装材)の積層構造及び物性>
本開示の外装フィルム(蓄電デバイス用外装材)50は、例えば図4に示すように、バリア層52及び熱融着性樹脂層53を備える積層体から構成されている。外装フィルム50において、バリア層52が最外層側になり、熱融着性樹脂層53は最内層になる。外装フィルム50と蓄電デバイス素子(電極体20、電極端子30など)を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、蓋体60と共に、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53同士を対向させた状態で端部を熱融着させることによって形成された空間に、電極体20が収容される。本開示の外装フィルム50を構成する積層体において、バリア層52を基準とし、バリア層52よりも熱融着性樹脂層53側が内側であり、反対側が外側である。
【0072】
外装フィルム50は、例えば図4に示すように、バリア層52の外側に、必要に応じて基材層51を有していてもよい。また、外装フィルム50は、例えば図4に示すように、基材層51とバリア層52との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着剤層54を有していてもよい。また、例えば図4に示すように、バリア層52と熱融着性樹脂層53との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着層55を有していてもよい。また、図4に示すように、基材層51の外側(熱融着性樹脂層53側とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層(図示を省略する)などが設けられていてもよい。
【0073】
外装フィルム50を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、例えば約250μm以下、好ましくは約190μm以下、約180μm以下、約155μm以下、約120μm以下が挙げられる。また、外装フィルム50を構成する積層体の厚みとしては、電極体20を保護するという外装フィルムの機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上が挙げられる。また、外装フィルム50を構成する積層体の好ましい範囲については、例えば、35~250μm程度、35~190μm程度、35~180μm程度、35~155μm程度、35~120μm程度、45~250μm程度、45~190μm程度、45~180μm程度、45~155μm程度、45~120μm程度、60~250μm程度、60~190μm程度、60~180μm程度、60~155μm程度、60~120μm程度が挙げられ、特に蓄電デバイスを軽量薄膜化する場合には60~155μm程度が好ましく、外装フィルムを電極体へ巻き付けるときの追従性を向上させる場合には155~190μm程度が好ましい。
【0074】
外装フィルム50において、外装フィルム50を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、必要に応じて設けられる基材層51、必要に応じて設けられる接着剤層54、バリア層52、必要に応じて設けられる接着層55、熱融着性樹脂層53、及び必要に応じて設けられる表面被覆層の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。具体例としては、本開示の外装フィルム50が、基材層51、接着剤層54、バリア層52、接着層55、及び熱融着性樹脂層53を含む場合、外装フィルム50を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。また、本開示の外装フィルム50が、基材層51、接着剤層54、バリア層52、及び熱融着性樹脂層53を含む積層体である場合にも、外装フィルム50を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上とすることができる。
【0075】
本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、外装フィルム50のヤング率は、好ましくは6000MPa以上、より好ましくは8000MPa以上、さらに好ましくは10000MPa以上であり、また、好ましくは40000MPa以下、より好ましくは35000MPa以下、さらに好ましくは30000MPa以下であり、好ましい範囲としては、6000~40000MPa程度、6000~35000MPa程度、6000~30000MPa程度、8000~40000MPa程度、8000~35000MPa程度、8000~30000MPa程度、10000~40000MPa程度、10000~35000MPa程度、10000~30000MPa程度が挙げられる。本開示において、外装フィルムのヤング率は、以下の方法により測定される値である。
【0076】
<外装フィルムのヤング率の測定>
JIS K6251:2017の規定に準拠し、以下の測定条件で外装フィルムのTDの方向のS-Sカーブを取得し、S-Sカーブの傾きの最大値からヤング率(MPa)を算出した。
(測定条件)
引張試験機を用いる。
試験片の形状:ダンベル7号
試験片の幅:2mm
試験片の長さ:35mm
試験片の厚み:厚み計で測定する
標線間距離:20mm
引張速度:50mm/min
試験環境:23±5℃、50±30%RH
測定回数:3回の平均値
【0077】
外装フィルム50のヤング率を高める方法としては、例えば、前述のようにしてバリア層52のヤング率を高めることが有効である。
【0078】
<2-2.外装フィルムを構成する各層>
[基材層51]
本開示において、基材層51は、外装フィルムの基材としての機能を発揮させることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。基材層51は、外装フィルムの外層側に位置する。
【0079】
基材層51を形成する素材については、基材としての機能、すなわち少なくとも絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されない。基材層51は、例えば樹脂を用いて形成することができ、樹脂には後述の添加剤が含まれていてもよい。
【0080】
基材層51が樹脂により形成されている場合、基材層51は、例えば、樹脂フィルムにより形成することができる。基材層51を樹脂フィルムにより形成する場合、基材層51をバリア層52などと積層して本開示の外装フィルム50を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを基材層51として用いてもよい。また、基材層51を形成する樹脂を、押出成形や塗布などによってバリア層52などの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された基材層51としてもよい。樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などが挙げられる。
【0081】
基材層51を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、基材層51を形成する樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。
【0082】
基材層51は、これらの樹脂を主成分として含んでいることが好ましく、ポリエステル又はポリアミドを主成分として含んでいることがより好ましい。ここで、主成分とは、基材層51に含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、基材層51がポリエステル又はポリアミドを主成分として含むとは、基材層51に含まれる樹脂成分のうち、ポリエステル又はポリアミドの含有率が、それぞれ、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0083】
基材層51を形成する樹脂としては、これらの中でも、好ましくはポリエステル、ポリアミドが挙げられる。
【0084】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミドPACM6(ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンアジパミド)等の脂環式ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’-ジフェニルメタン-ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等のポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0086】
基材層51は、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエステルフィルム、及び延伸ポリアミドフィルム、及び延伸ポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。
【0087】
基材層51は、単層であってもよいし、2層以上により構成されていてもよい。基材層51が2層以上により構成されている場合、基材層51は、樹脂フィルムを接着剤などで積層させた積層体であってもよいし、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体であってもよい。また、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体を、未延伸のまま基材層51としてもよいし、一軸延伸または二軸延伸して基材層51としてもよい。
【0088】
基材層51において、2層以上の樹脂フィルムの積層体の具体例としては、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとの積層体、2層以上のナイロンフィルムの積層体、2層以上のポリエステルフィルムの積層体などが挙げられ、好ましくは、延伸ナイロンフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの積層体、2層以上の延伸ナイロンフィルムの積層体、2層以上の延伸ポリエステルフィルムの積層体が好ましい。例えば、基材層51が2層の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムとポリエステル樹脂フィルムの積層体、ポリアミド樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体、またはポリエステル樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムの積層体、ナイロンフィルムとナイロンフィルムの積層体、またはポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体がより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、基材層51が2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムが基材層51の最外層に位置することが好ましい。ポリエステル樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体において、ポリエステル樹脂フィルムの厚みの好ましい範囲としては、2~33μm程度、2~28μm程度、2~23μm程度、2~18μm程度、2~11μm程度、2~8μm程度、10~33μm程度、10~28μm程度、10~23μm程度、10~18μm程度、10~11μm程度、18~33μm程度、18~28μm程度、18~23μm程度、また、ポリアミド樹脂フィルムの厚みの好ましい範囲としては、2~33μm程度、2~28μm程度、2~23μm程度、2~18μm程度、2~11μm程度、2~8μm程度、10~33μm程度、10~28μm程度、10~23μm程度、10~18μm程度、10~11μm程度、18~33μm程度、18~28μm程度、18~23μm程度が挙げられる。
【0089】
基材層51が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、2層以上の樹脂フィルムは、接着剤を介して積層させてもよい。好ましい接着剤については、後述の接着剤層54で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着剤としてポリウレタン接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着剤の厚みとしては、例えば2~5μm程度が挙げられる。また、樹脂フィルムにアンカーコート層を形成し積層させても良い。アンカーコート層は、後述の接着剤層54で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。このとき、アンカーコート層の厚みとしては、例えば0.01~1.0μm程度が挙げられる。
【0090】
また、基材層51の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0091】
本開示において、外装フィルムの追従性を高める観点からは、基材層51の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0092】
基材層51の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、例えば約3mg/m2以上、好ましくは約4mg/m2以上、約5mg/m2以上が挙げられる。また、基材層51の表面に存在する滑剤量としては、例えば約15mg/m2以下、好ましくは約14mg/m2以下、約10mg/m2以下が挙げられる。また、基材層51の表面に存在する滑剤量の好ましい範囲としては、3~15mg/m2程度、3~14mg/m2程度、3~10mg/m2程度、4~15mg/m2程度、4~14mg/m2程度、4~10mg/m2程度、5~15mg/m2程度、5~14mg/m2程度、5~10mg/m2程度が挙げられる。
【0093】
基材層51の表面に存在する滑剤は、基材層51を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層51の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0094】
基材層51の厚みについては、基材としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約3μm以上、好ましくは約10μm以上が挙げられる。また、基材層51の厚みとしては、例えば約50μm以下、好ましくは約35μm以下、約11μm以下、約8μm以下が挙げられる。また、基材層51の厚みの好ましい範囲としては、3~50μm程度、3~35μm程度、3~11μm程度、3~8μm程度、10~50μm程度、10~35μm程度が挙げられ、特に蓄電デバイスを軽量薄膜化する場合には3~35μm程度、3~11μm程度、3~8μm程度が好ましく、追従性を向上させる場合には35~50μm程度が好ましい。基材層51が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、各層を構成している樹脂フィルムの厚みとしては、特に制限されないが、それぞれ、例えば約2μm以上、好ましくは約10μm以上、約18μm以上が挙げられる。また、各層を構成している樹脂フィルムの厚みとしては、例えば約33μm以下、好ましくは約28μm以下、約23μm以下、約18μm以下、約11μm以下、約8μm以下が挙げられる。また、各層を構成している樹脂フィルムの厚みの好ましい範囲としては、2~33μm程度、2~28μm程度、2~23μm程度、2~18μm程度、2~11μm程度、2~8μm程度、10~33μm程度、10~28μm程度、10~23μm程度、10~18μm程度、10~11μm程度、18~33μm程度、18~28μm程度、18~23μm程度が挙げられる。
【0095】
[接着剤層54]
本開示の外装フィルムにおいて、接着剤層54は、基材層51とバリア層52との接着性を高めることを目的として、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
【0096】
接着剤層54は、基材層51とバリア層52とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層54の形成に使用される接着剤は限定されないが、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、2液硬化型接着剤(2液性接着剤)であってもよく、1液硬化型接着剤(1液性接着剤)であってもよく、硬化反応を伴わない樹脂でもよい。また、接着剤層54は単層であってもよいし、多層であってもよい。
【0097】
接着剤に含まれる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;ポリエーテル;ポリウレタン;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;セルロース;(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン接着剤が挙げられる。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。
【0098】
ポリウレタン接着剤としては、例えば、ポリオール化合物を含有する第1剤と、イソシアネート化合物を含有する第2剤とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを第1剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを第2剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリウレタン接着剤としては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物と、イソシアネート化合物とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリウレタン接着剤としては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物と、ポリオール化合物とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリウレタン接着剤としては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物を、空気中などの水分と反応させることによって硬化させたポリウレタン接着剤が挙げられる。ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。第2剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族のイソシアネート系化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化XDI(H6XDI)、水素化MDI(H12MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。また、これらのジイソシアネートの1種類又は2種類以上からの多官能イソシアネート変性体等が挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物として多量体(例えば三量体)を使用することもできる。このような多量体には、アダクト体、ビウレット体、ヌレート体等が挙げられる。接着剤層54がポリウレタン接着剤により形成されていることで外装フィルムに優れた電解液耐性が付与され、側面に電解液が付着しても基材層51が剥がれることが抑制される。
【0099】
また、接着剤層54は、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層54が着色剤を含んでいることにより、外装フィルムを着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0100】
顔料の種類は、接着剤層54の接着性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン-ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
【0101】
着色剤の中でも、例えば外装フィルムの外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。また、蓄電デバイスから発生する熱を放熱する観点より、マイカを用いることが好ましい。
【0102】
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.05~5μm程度、好ましくは0.08~2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
【0103】
接着剤層54における顔料の含有量としては、外装フィルムが着色されれば特に制限されず、例えば5~60質量%程度、好ましくは10~40質量%が挙げられる。
【0104】
接着剤層54の厚みは、基材層51とバリア層52とを接着できれば、特に制限されないが、例えば、約1μm以上、約2μm以上である。また、接着剤層54の厚みは、例えば、約10μm以下、約5μm以下である。また、接着剤層54の厚みの好ましい範囲については、1~10μm程度、1~5μm程度、2~10μm程度、2~5μm程度が挙げられる。
【0105】
[着色層]
着色層は、基材層51とバリア層52との間に必要に応じて設けられる層である(図示を省略する)。接着剤層54を有する場合には、基材層51と接着剤層54との間、接着剤層54とバリア層52との間に着色層を設けてもよい。また、基材層51の外側に着色層を設けてもよい。着色層を設けることにより、外装フィルムを着色することができる。
【0106】
着色層は、例えば、着色剤を含むインキを基材層51の表面、またはバリア層52の表面に塗布することにより形成することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0107】
着色層に含まれる着色剤の具体例としては、[接着剤層54]の欄で例示したものと同じものが例示される。
【0108】
[バリア層52]
外装フィルムにおいて、バリア層52は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。
【0109】
バリア層52としては、例えば、バリア性を有する金属箔、蒸着膜、樹脂層などが挙げられる。蒸着膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜などが挙げられ、樹脂層としてはポリ塩化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類やテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類やフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などのフッ素含有樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、バリア層52としては、これらの蒸着膜及び樹脂層の少なくとも1層を設けた樹脂フィルムなども挙げられる。バリア層52は、複数層設けてもよい。バリア層52は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層52を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鋼(ステンレス鋼を含む)、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニオブ、鉄が挙げられ、これらの中でも好ましくはアルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、鋼板などが挙げられ、金属箔として用いる場合は、アルミニウム合金箔、及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0110】
バリア層52において、前述した金属材料により構成された層は、金属材料のリサイクル材を含んでいてもよい。金属材料のリサイクル材としては、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、又は鋼板のリサイクル材が挙げられる。これらのリサイクル材は、それぞれ、公知の方法で入手できる。アルミニウム合金のリサイクル材は、例えば、国際公開第2022/092231号に記載の製造方法によって入手できる。バリア層52は、リサイクル材のみによって構成されてもよいし、リサイクル材とバージン材との混合材料によって構成されてもよい。なお、金属材料のリサイクル材とは、いわゆる市中で使用された各種製品や、製造工程から出る廃棄物などを回収・単離・精製などを行って再利用可能な状態にした金属材料をいう。また、金属材料のバージン材とは、金属の天然資源(原材料)から精錬された新品の金属材料であって、リサイクル材でないものをいう。
【0111】
アルミニウム合金箔は、外装フィルムを電極体へ巻き付けるときの追従性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より追従性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1~9.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた追従性を有する外装フィルムを得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装フィルムを得ることができる。軟質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、又はJIS H4000:2014 A8079P-Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。また必要に応じて、ケイ素、マグネシウム、銅、マンガンなどが添加されていてもよい。また軟質化は焼鈍処理などで行うことができる。
【0112】
外装フィルム50の機械強度を向上させる観点からは、アルミニウム合金箔は、例えば加工硬化済みのアルミニウム合金などにより構成された硬質アルミニウム合金箔であることがより好ましい。硬質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H-H18、JIS H4160:1994 A8079H-H18、JIS H4000:2014 A8021P-H14、又はJIS H4000:2014 A8079P-H14で規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。外装フィルム50の機械強度を向上させる観点からは、アルミニウム合金箔は、マグネシウムを含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。マグネシウムを含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、マグネシウムの含有量は、0.2~5.6質量%であることが好ましく、0.2~3.0質量%であることがより好ましい。マグネシウムを含むアルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4000:2017 A5005P-O、JIS H4000:2017 A5050P-O、JISH4000:2017 A5052P-Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。また、外装フィルム50の機械強度を向上させる観点からは、アルミニウム合金箔は、マンガンを含むアルミニウム合金箔であっても好ましい。マンガンを含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、マンガンの含有量は、0.3~1.5質量%であることが好ましく、1.0~1.5質量%であることがより好ましい。マンガンを含むアルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4000:2017 A3003P-O、JIS H4000:2017 A3103P-O、JISH4000:2017 A3004P-O、JISH4000:2017 A3104P-Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。
【0113】
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに追従性に優れた外装フィルムを提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
【0114】
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
【0115】
バリア層52の厚みは、金属箔の場合、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、例えば9~200μm程度が挙げられる。バリア層52の厚みは、好ましくは約200μm以下、より好ましくは約150μm以下、さらに好ましくは約120μm以下、さらにより好ましくは約100μm以下であり、特に好ましくは約90μm以下である。また、バリア層52の厚みは、好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上である。また、バリア層52の厚みの好ましい範囲としては、9~200μm程度、9~150μm程度、9~120μm程度、9~100μm程度、9~90μm程度、10~200μm程度、10~150μm程度、10~120μm程度、10~100μm程度、10~90μm程度、、20~200μm程度、20~150μm程度、20~120μm程度、20~100μm程度、、20~90μm程度、25~200μm程度、25~150μm程度、25~120μm程度、25~100μm程度、25~90μm程度、が挙げられる。バリア層52がアルミニウム合金箔により構成されている場合、外装フィルム50に高追従性及び高剛性を付与する観点からは、バリア層52の厚みは、好ましくは約40μm以上、より好ましくは約60μm以上、さらに好ましくは約70μm以上、さらに好ましくは約80μm以上であり、また、好ましくは約200μm以下、より好ましくは約150μm以下、さらに好ましくは約120μm以下、さらに好ましくは約100μm以下でありさらにより好ましくは約90μm以下であり、、好ましい範囲としては、40~200μm程度、40~150μm程度、40~120μm程度、40~100μm程度、40~90μm程度、60~200μm程度、60~150μm程度、60~120μm程度、60~100μm程度、、60~90μm程度、70~200μm程度、70~150μm程度、70~120μm程度、70~100μm程度、70~90μm程度、80~200μm程度、80~150μm程度、80~120μm程度、80~100μm程度、80~90μm程度である。外装フィルム50が高追従性を備えることにより、蓄電デバイスの高容量化に寄与し得る。また、蓄電デバイスが高容量化されると、蓄電デバイスの重量が増加するが、外装フィルム50の剛性が高められることにより、蓄電デバイスの高い密封性に寄与できる。また、特に、バリア層52がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔の厚みは、好ましくは約80μm以下、より好ましくは約70μm以下、さらに好ましくは約65μm以下、さらに好ましくは約60μm以下、特に好ましくは約50μm以下である。また、ステンレス鋼箔の厚みは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上である。また、ステンレス鋼箔の厚みの好ましい範囲としては、10~80μm程度、10~70μm程度、10~65μm程度、10~60μm程度、10~50μm程度、15~80μm程度、15~70μm程度、15~65μm程度、15~60μm程度、15~50μm程度が挙げられる。
【0116】
また、バリア層52が金属箔の場合は、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも基材層と反対側の面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。バリア層52は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、ニッケルやクロムなどのメッキ処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をバリア層の表面に行い、バリア層に耐腐食性(例えば耐酸性、耐アルカリ性など)を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜は、具体的には、バリア層の耐酸性を向上させる皮膜(耐酸性皮膜)、バリア層の耐アルカリ性を向上させる皮膜(耐アルカリ性皮膜)などを意味している。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行ってもよいし、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。また、1層だけではなく多層化することもできる。さらに、これらの処理のうち、熱水変成処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、バリア層52が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてバリア層52とする。
【0117】
耐腐食性皮膜は、外装フィルムの成形時において、バリア層(例えば、アルミニウム合金箔)と基材層との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、バリア層表面の溶解、腐食、特にバリア層がアルミニウム合金箔である場合にバリア層表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、バリア層表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層とバリア層とのデラミネーション防止、成形時の基材層とバリア層とのデラミネーション防止の効果を示す。
【0118】
化成処理によって形成される耐腐食性皮膜としては、種々のものが知られており、主には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物、及び希土類酸化物のうち少なくとも1種を含む耐腐食性皮膜などが挙げられる。リン酸塩、クロム酸塩を用いた化成処理としては、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸-クロム酸塩処理、クロム酸塩処理などが挙げられ、これらの処理に用いるクロム化合物としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどが挙げられる。また、これらの処理に用いるリン化合物としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などが挙げられる。また、クロメート処理としてはエッチングクロメート処理、電解クロメート処理、塗布型クロメート処理などが挙げられ、塗布型クロメート処理が好ましい。この塗布型クロメート処理は、バリア層(例えばアルミニウム合金箔)の少なくとも内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後、脱脂処理面にリン酸Cr(クロム)塩、リン酸Ti(チタン)塩、リン酸Zr(ジルコニウム)塩、リン酸Zn(亜鉛)塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液、または、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液、あるいは、これらと合成樹脂などとの混合物からなる処理液をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法等の周知の塗工法で塗工し、乾燥する処理である。処理液は例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。また、このとき用いる樹脂成分としては、フェノール系樹脂やアクリル系樹脂などの高分子などが挙げられ、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。本開示において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0119】
【化1】
【0120】
【化2】
【0121】
【化3】
【0122】
【化4】
【0123】
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万程度であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。アミノ化フェノール重合体は、例えば、フェノール化合物又はナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して上記一般式(1)又は一般式(3)で表される繰返し単位からなる重合体を製造し、次いでホルムアルデヒド及びアミン(R12NH)を用いて官能基(-CH2NR12)を上記で得られた重合体に導入することにより、製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0124】
耐腐食性皮膜の他の例としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理によって形成される薄膜が挙げられる。コーティング剤には、さらにリン酸またはリン酸塩、ポリマーを架橋させる架橋剤を含んでもよい。希土類元素酸化物ゾルには、液体分散媒中に希土類元素酸化物の微粒子(例えば、平均粒径100nm以下の粒子)が分散されている。希土類元素酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジウム、酸化ランタン等が挙げられ、密着性をより向上させる観点から酸化セリウムが好ましい。耐腐食性皮膜に含まれる希土類元素酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。希土類元素酸化物ゾルの液体分散媒としては、例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノ化フェノールなどが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、あるいは(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記リン酸またはリン酸塩が、縮合リン酸または縮合リン酸塩であることが好ましい。
【0125】
耐腐食性皮膜の一例としては、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをバリア層の表面に塗布し、150℃以上で焼付け処理を行うことにより形成したものが挙げられる。
【0126】
耐腐食性皮膜は、必要に応じて、さらにカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも一方を積層した積層構造としてもよい。カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーとしては、上述したものが挙げられる。
【0127】
なお、耐腐食性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。
【0128】
化成処理においてバリア層52の表面に形成させる耐腐食性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、塗布型クロメート処理を行う場合であれば、バリア層52の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で例えば0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、リン化合物がリン換算で例えば0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が例えば1.0~200mg程度、好ましくは5.0~150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
【0129】
耐腐食性皮膜の厚みとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層や熱融着性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm~20μm程度、より好ましくは1nm~100nm程度、さらに好ましくは1nm~50nm程度が挙げられる。なお、耐腐食性皮膜の厚みは、透過電子顕微鏡による観察、または、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐腐食性皮膜の組成の分析により、例えば、CeとPとOからなる2次イオン(例えば、Ce2PO4 +、CePO4 -などの少なくとも1種)や、例えば、CrとPとOからなる2次イオン(例えば、CrPO2 +、CrPO4 -などの少なくとも1種)に由来するピークが検出される。
【0130】
化成処理は、耐腐食性皮膜の形成に使用される化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。また、脱脂処理にフッ素含有化合物を無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、このような場合には脱脂処理だけを行ってもよい。
【0131】
[熱融着性樹脂層53]
本開示の外装フィルムにおいて、熱融着性樹脂層53は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着して電極体20を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
【0132】
熱融着性樹脂層53を構成している樹脂については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。熱融着性樹脂層53を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。また、熱融着性樹脂層53を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。熱融着性樹脂層53が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0133】
熱融着性樹脂層53は、ポリオレフィン骨格を含む樹脂を主成分として含んでいることが好ましく、ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、熱融着性樹脂層53に含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、熱融着性樹脂層53がポリプロピレンを主成分として含むとは、熱融着性樹脂層53に含まれる樹脂成分のうち、ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0134】
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0135】
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0136】
また、ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィンであってもよい。酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
【0137】
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
【0138】
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0139】
熱融着性樹脂層53は、1種の樹脂単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層53は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。
【0140】
熱融着性樹脂層53をバリア層52や接着層55などと積層して本開示の外装フィルム50を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを熱融着性樹脂層53として用いてもよい。また、熱融着性樹脂層53を形成する熱融着性樹脂を、押出成形や塗布などによってバリア層52や接着層55などの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された熱融着性樹脂層53としてもよい。
【0141】
また、熱融着性樹脂層53は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層53が滑剤を含む場合、外装フィルムを電極体へ巻き付けるときの追従性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができる。
【0142】
滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。滑剤の具体例としては、基材層51で例示したものが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0143】
本開示において、外装フィルムを電極体へ巻き付けるときの追従性を高める観点からは、熱融着性樹脂層53の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0144】
熱融着性樹脂層53の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、外装フィルムの追従性を高める観点からは、好ましくは約1mg/m2以上、より好ましくは約3mg/m2以上、さらに好ましくは約5mg/m2以上、さらに好ましくは約10mg/m2以上、さらに好ましくは約15mg/m2以上であり、また、好ましくは約50mg/m2以下、さらに好ましくは約40mg/m2以下であり、好ましい範囲としては、1~50mg/m2程度、1~40mg/m2程度、3~50mg/m2程度、3~40mg/m2程度、5~50mg/m2程度、5~40mg/m2程度、10~50mg/m2程度、10~40mg/m2程度、15~50mg/m2程度、15~40mg/m2程度が挙げられる。
【0145】
熱融着性樹脂層53の内部に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、外装フィルムの追従性を高める観点からは、好ましくは約100ppm以上、より好ましくは約300ppm以上、さらに好ましくは約500ppm以上であり、また、好ましくは約3000ppm以下、より好ましくは約2000ppm以下であり、好ましい範囲としては、100~3000ppm程度、100~2000ppm程度、300~3000ppm程度、300~2000ppm程度、500~3000ppm程度、500~2000ppm程度が挙げられる。熱融着性樹脂層53の内部に滑剤が2種類以上存在する場合、上記の滑剤量は合計滑剤量である。また、熱融着性樹脂層53の内部に滑剤が2種類以上存在する場合、1種類目の滑剤の存在量は、特に制限されないが、外装フィルムの追従性を高める観点からは、好ましくは約100ppm以上、より好ましくは約300ppm以上、さらに好ましくは約500ppm以上であり、また、好ましくは約3000ppm以下、より好ましくは約2000ppm以下であり、好ましい範囲としては、100~3000ppm程度、100~2000ppm程度、300~3000ppm程度、300~2000ppm程度、500~3000ppm程度、500~2000ppm程度が挙げられる。2種類目の滑剤の存在量は、特に制限されないが、外装フィルムの追従性を高める観点からは、好ましくは約50ppm以上、より好ましくは約100ppm以上、さらに好ましくは約200ppm以上であり、また、好ましくは約1500ppm以下、より好ましくは約1000ppm以下であり、好ましい範囲としては、50~1500ppm程度、50~1000ppm程度、100~1500ppm程度、100~1000ppm程度、200~1500ppm程度、200~1000ppm程度が挙げられる。
【0146】
熱融着性樹脂層53の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層53を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層53の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0147】
また、熱融着性樹脂層53の厚みとしては、熱融着性樹脂層同士が熱融着して電極体を密封する機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~85μm程度が挙げられる。なお、例えば、後述の接着層55の厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層53の厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~45μm程度が挙げられ、例えば後述の接着層55の厚みが10μm未満である場合や接着層55が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層53の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35~85μm程度が挙げられる。
【0148】
[接着層55]
本開示の外装フィルムにおいて、接着層55は、バリア層52(又は耐腐食性皮膜)と熱融着性樹脂層53を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
【0149】
接着層55は、バリア層52と熱融着性樹脂層53とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層55の形成に使用される樹脂としては、例えば接着剤層54で例示した接着剤と同様のものが使用できる。
【0150】
また、接着層55と熱融着性樹脂層53とを強固に接着する観点から、接着層55の形成に使用される樹脂としてはポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましく、前述の熱融着性樹脂層53で例示したポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。一方、バリア層52と接着層55とを強固に接着する観点から、接着層55は酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性成分としては、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸やこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられるが、変性のし易さや汎用性などの点から無水マレイン酸が最も好ましい。また、外装フィルムの耐熱性の観点からは、オレフィン成分はポリプロピレン系樹脂であることが好ましく、接着層55は無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含むことが最も好ましい。
【0151】
接着層55の形成に使用される樹脂としてはポリオレフィン骨格を含んでいる場合、接着層55は、ポリオレフィン骨格を含む樹脂を主成分として含んでいることが好ましく、酸変性ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、酸変性ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、接着層55に含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、接着層55が酸変性ポリプロピレンを主成分として含むとは、接着層55に含まれる樹脂成分のうち、酸変性ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0152】
接着層55を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層55を構成している樹脂が酸変性ポリオレフィンを含むことは、例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0153】
さらに、外装フィルムの耐熱性や耐内容物性などの耐久性や、厚みを薄くしつつ追従性を担保する観点からは、接着層55は酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
【0154】
また、接着層55は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層55は、ポリウレタン、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリウレタン及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばエポキシ基と無水マレイン酸基の反応により生成するエステル樹脂、オキサゾリン基と無水マレイン酸基の反応で生成するアミドエステル樹脂が好ましい。なお、接着層55に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
【0155】
また、バリア層52と接着層55との密着性をより高める観点から、接着層55は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C-O-C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。接着層55がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
【0156】
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、バリア層52と接着層55との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
【0157】
接着層55における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層55を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層52と接着層55との密着性を効果的に高めることができる。
【0158】
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
【0159】
接着層55における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層55を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層52と接着層55との密着性を効果的に高めることができる。
【0160】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50~2000程度、より好ましくは100~1000程度、さらに好ましくは200~800程度が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
【0161】
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型グリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0162】
接着層55における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層55を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層52と接着層55との密着性を効果的に高めることができる。
【0163】
ポリウレタンとしては、特に制限されず、公知のポリウレタンを使用することができる。接着層55は、例えば、2液硬化型ポリウレタンの硬化物であってもよい。
【0164】
接着層55における、ポリウレタンの割合としては、接着層55を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層52と接着層55との密着性を効果的に高めることができる。
【0165】
なお、接着層55が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
【0166】
接着層55には、カルボジイミド基を有する改質剤が含まれていてもよい。
【0167】
本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、接着層55は、酸変性ポリプロピレンとエラストマーを含み、さらにブロックポリプロピレン及びホモポリプロピレンの少なくとも一方を含む、樹脂組成物により形成されていることが好ましい。当該樹脂組成物は、ランダムポリプロピレン、ポリエチレンなどをさらに含んでいても良い。なお、接着層55は、バリア層52との密着性、耐熱性を高める観点から、ホモポリプロピレンが酸変性されたもの(すなわち、酸変性ホモポリプロピレン)であることが好ましい。
【0168】
本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、接着層55を形成する当該樹脂組成物において、酸変性ポリプロピレンの含有率は、好ましくは約5質量%以上、より好ましくは約10質量%以上、さらに好ましくは約15質量%以上であり、また、好ましくは約90質量%以下、より好ましくは約80質量%以下、さらに好ましくは約70質量%以下であり、好ましい範囲としては、5~90質量%程度、5~80質量%程度、5~70質量%程度、10~90質量%程度、10~80質量%程度、10~70質量%程度、15~90質量%程度、15~80質量%程度、15~70質量%程度などが挙げられる。
【0169】
本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、接着層55を形成する当該樹脂組成物において、エラストマーの含有率は、好ましくは約25質量%以上、より好ましくは約30質量%以上、さらに好ましくは約35質量%以上であり、また、好ましくは約60質量%以下、より好ましくは約55質量%以下、さらに好ましくは約50質量%以下であり、好ましい範囲としては、25~60質量%程度、25~55質量%程度、25~50質量%程度、30~60質量%程度、30~55質量%程度、30~50質量%程度、35~60質量%程度、35~55質量%程度、35~50質量%程度などが挙げられる。
【0170】
本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、接着層55を形成する当該樹脂組成物に含まれるエラストマーとしては、好ましくは2元系共重合体、3元系共重合体が挙げられる。また、エラストマーは、好ましくはプロピレン系エラストマーである。プロピレ系エラストマーとしては、例えば、2元系共重合体、3元系共重合体などが挙げられる。2元系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体エラストマー、プロピレン-ブテン共重合体エラストマー、3元系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体エラストマーなどが挙げられる。エラストマーの中でも、2元系共重合体として、プロピレン-エチレン共重合体エラストマー、3元系共重合体としては、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体エラストマーが好ましい。
【0171】
本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、接着層55を形成する当該樹脂組成物において、ブロックポリプロピレンの含有率は、好ましくは約30質量%以上、より好ましくは約35質量%以上、さらに好ましくは約40質量%以上であり、また、好ましくは約95質量%以下、より好ましくは約90質量%以下、さらに好ましくは約85質量%以下である。好ましい範囲としては、30~95質量%程度、30~90質量%程度、30~85質量%程度、35~95質量%程度、35~90質量%程度、35~85質量%程度、40~95質量%程度、40~90質量%程度、40~85質量%程度などが挙げられる。
【0172】
また、本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、接着層55を形成する当該樹脂組成物において、ホモポリプロピレンの含有率は、好ましくは約20質量%以上、より好ましくは約25質量%以上、さらに好ましくは約30質量%以上であり、また、好ましくは約80質量%以下、より好ましくは約75質量%以下、さらに好ましくは約70質量%以下であり、好ましい範囲としては、20~80質量%程度、20~75質量%程度、20~70質量%程度、25~80質量%程度、25~75質量%程度、25~70質量%程度、30~80質量%程度、30~75質量%程度、30~70質量%程度などが挙げられる。
【0173】
本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、接着層55を形成する当該樹脂組成物において、ランダムポリプロピレンの含有率は、好ましくは約0質量%以上、より好ましくは約1質量%以上、さらに好ましくは約2質量%以上であり、また、好ましくは約30質量%以下、より好ましくは約25質量%以下、さらに好ましくは約20質量%以下である。好ましい範囲としては、0~30質量%程度、0~25質量%程度、0~20質量%程度、1~30質量%程度、1~25質量%程度、1~20質量%程度、2~30質量%程度、2~25質量%程度、2~20質量%程度などが挙げられる。
【0174】
本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、接着層55を形成する当該樹脂組成物において、ポリエチレンの含有率は、例えば約0質量%以上、好ましくは約1質量%以上、より好ましくは約2質量%以上、さらに好ましくは約3質量%以上であり、また、好ましくは約30質量%以下、より好ましくは約25質量%以下、さらに好ましくは約20質量%以下であり、好ましい範囲としては、0~30質量%程度、0~25質量%程度、0~20質量%程度、1~30質量%程度、1~25質量%程度、1~20質量%程度、2~30質量%程度、2~25質量%程度、2~20質量%程度、3~30質量%程度、3~25質量%程度、3~20質量%程度などが挙げられる。
【0175】
本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、当該樹脂組成物の具体的な組成としては、例えば、酸変性ポリプロピレンの含有率が約5質量%以上(より好ましくは約10質量%以上、さらに好ましくは約15質量%以上であり、また、好ましくは約90質量%以下、より好ましくは約80質量%以下、さらに好ましくは約70質量%以下であり、好ましい範囲としては、5~90質量%程度、5~80質量%程度、5~70質量%程度、10~90質量%程度、10~80質量%程度、10~70質量%程度、15~90質量%程度、15~80質量%程度、15~70質量%程度など)であり、エラストマーの含有率が約25質量%以上(より好ましくは約30質量%以上、さらに好ましくは約35質量%以上であり、また、好ましくは約60質量%以下、より好ましくは約55質量%以下、さらに好ましくは約50質量%以下であり、好ましい範囲としては、25~60質量%程度、25~55質量%程度、25~50質量%程度、30~60質量%程度、30~55質量%程度、30~50質量%程度、35~60質量%程度、35~55質量%程度35~50質量%程度など)であり、ブロックポリプロピレンの含有率が約30質量%以上(より好ましくは約35質量%以上、さらに好ましくは約40質量%以上であり、また、好ましくは約95質量%以下、より好ましくは約90質量%以下、さらに好ましくは約85質量%以下である。好ましい範囲としては、30~95質量%程度、30~90質量%程度、30~85質量%程度、35~95質量%程度、35~90質量%程度、35~85質量%程度、40~95質量%程度、40~90質量%程度、40~85質量%程度)などであり、ホモポリプロピレンの含有率が約20質量%以上(より好ましくは約25質量%以上、さらに好ましくは約30質量%以上であり、また、好ましくは約80質量%以下、より好ましくは約75質量%以下、さらに好ましくは約70質量%以下であり、好ましい範囲としては、20~80質量%程度、20~75質量%程度、20~70質量%程度、25~80質量%程度、25~75質量%程度、25~70質量%程度、30~80質量%程度、30~75質量%程度、30~70質量%程度など)であり、ランダムポリプロピレンの含有率が約0質量%以上(より好ましくは約1質量%以上、さらに好ましくは約2質量%以上であり、また、好ましくは約30質量%以下、より好ましくは約25質量%以下、さらに好ましくは約20質量%以下である。好ましい範囲としては、0~30質量%程度、0~25質量%程度、0~20質量%程度、1~30質量%程度、1~25質量%程度、1~20質量%程度、2~30質量%程度、2~25質量%程度、2~20質量%程度)などであり、ポリエチレンの含有率が例えば約0質量%以上(好ましくは約1質量%以上、より好ましくは約2質量%以上、さらに好ましくは約3質量%以上であり、また、好ましくは約30質量%以下、より好ましくは約25質量%以下、さらに好ましくは約20質量%以下であり、好ましい範囲としては、0~30質量%程度、0~25質量%程度、0~20質量%程度、1~30質量%程度、1~25質量%程度、1~20質量%程度、2~30質量%程度、2~25質量%程度、2~20質量%程度、3~30質量%程度、3~25質量%程度、3~20質量%程度)などである。当該樹脂組成物は、樹脂(後述する滑剤等の添加剤は含まない)として、酸変性ポリプロピレンとエラストマーを含み、さらにブロックポリプロピレン及びホモポリプロピレンの少なくとも一方のみを含む樹脂組成物により形成されていることも好ましい。
【0176】
接着層55をバリア層52や熱融着性樹脂層53などと積層して本開示の外装フィルム50を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを接着層55として用いてもよい。また、接着層55を形成する熱融着性樹脂を、押出成形や塗布などによってバリア層52や熱融着性樹脂層53などの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された接着層55としてもよい。
【0177】
接着層55の厚さは、好ましくは、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約5μm以下である。また、接着層55の厚さは、好ましくは、約0.1μm以上、約0.5μm以上である。また、接着層55の厚さの範囲としては、好ましくは、0.1~50μm程度、0.1~40μm程度、0.1~30μm程度、0.1~20μm程度、0.1~5μm程度、0.5~50μm程度、0.5~40μm程度、0.5~30μm程度、0.5~20μm程度、0.5~5μm程度が挙げられる。より具体的には、接着剤層54で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合は、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層53で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。なお、接着層55が接着剤層54で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、例えば、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層55を形成することができる。また、熱融着性樹脂層53で例示した樹脂を用いる場合、例えば、熱融着性樹脂層53と接着層55との押出成形により形成することができる。
【0178】
[表面被覆層]
本開示の外装フィルムは、意匠性、耐電解液性、耐傷性、追従性などの向上の少なくとも1つを目的として、必要に応じて、バリア層52の上、必要に応じて設けられる基材層51の上(基材層51のバリア層52とは反対側)などに、表面被覆層を備えていてもよい。表面被覆層は、外装フィルムを用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、外装フィルムの最外層側に位置する層である。
【0179】
表面被覆層は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。樹脂は、好ましくは硬化性樹脂である。すなわち、表面被覆層は、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から構成されていることが好ましい。
【0180】
表面被覆層を形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも2液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0181】
2液硬化型ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール化合物を含有する第1剤と、イソシアネート化合物を含有する第2剤とを含むポリウレタンが挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを第1剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを第2剤とした二液硬化型のポリウレタンが挙げられる。また、ポリウレタンとしては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物と、イソシアネート化合物とを含むポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンとしては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物と、ポリオール化合物とを含むポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンとしては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物を、空気中などの水分と反応させることによって硬化させたポリウレタンが挙げられる。ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。第2剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族のイソシアネート系化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化XDI(H6XDI)、水素化MDI(H12MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。また、これらのジイソシアネートの1種類又は2種類以上からの多官能イソシアネート変性体等が挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物として多量体(例えば三量体)を使用することもできる。このような多量体には、アダクト体、ビウレット体、ヌレート体等が挙げられる。なお、脂肪族イソシアネート系化合物とは脂肪族基を有し芳香環を有さないイソシアネートを指し、脂環式イソシアネート系化合物とは脂環式炭化水素基を有するイソシアネートを指し、芳香族イソシアネート系化合物とは芳香環を有するイソシアネートを指す。表面被覆層がポリウレタンにより形成されていることで外装フィルムに優れた電解液耐性が付与される。
【0182】
表面被覆層は、表面被覆層の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定化剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、平均粒子径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
【0183】
添加剤は、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、鱗片状などが挙げられる。
【0184】
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、蓄電デバイスからの放熱の観点から、好ましくはマイカが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0185】
表面被覆層を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層を形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層に添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
【0186】
本開示において、外装フィルムを電極体へ巻き付けるときの追従性を高める観点からは、表面被覆層の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0187】
表面被覆層の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、例えば約3mg/m2以上、好ましくは約4mg/m2以上、約5mg/m2以上が挙げられる。また、表面被覆層の表面に存在する滑剤量としては、例えば約15mg/m2以下、好ましくは約14mg/m2以下、約10mg/m2以下が挙げられる。また、表面被覆層の表面に存在する滑剤量の好ましい範囲としては、3~15mg/m2程度、3~14mg/m2程度、3~10mg/m2程度、4~15mg/m2程度、4~14mg/m2程度、4~10mg/m2程度、5~15mg/m2程度、5~14mg/m2程度、5~10mg/m2程度が挙げられる。
【0188】
表面被覆層の表面に存在する滑剤は、表面被覆層を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、表面被覆層の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0189】
表面被覆層の厚みとしては、表面被覆層としての上記の機能を発揮すれば特に制限されず、例えば0.5~10μm程度、好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
【0190】
<2-3.外装フィルムの製造方法>
外装フィルムの製造方法については、本開示の外装フィルムが備える各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、バリア層52及び熱融着性樹脂層53を積層する工程を備える方法が挙げられる。
【0191】
本開示の外装フィルムの製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層51、接着剤層54、バリア層52が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層51上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層52に接着剤層54の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布、乾燥した後に、当該バリア層52又は基材層51を積層させて接着剤層54を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
【0192】
次いで、積層体Aのバリア層52上に、熱融着性樹脂層53を積層させる。バリア層52上に熱融着性樹脂層53を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層52上に、熱融着性樹脂層53をサーマルラミネート法、押出ラミネート法などの方法により積層すればよい。また、バリア層52と熱融着性樹脂層53の間に接着層55を設ける場合には、接着層55と熱融着性樹脂層53は、例えば、(1)押出ラミネート法、(2)サーマルラミネート法、(3)サンドイッチラミネート法、(4)ドライラミネート法などにより積層することができる。(1)押出ラミネート法としては、例えば、積層体Aのバリア層52上に、接着層55及び熱融着性樹脂層53を押出しすることにより積層する方法(共押出ラミネート法、タンデムラミネート法)などが挙げられる。また、(2)サーマルラミネート法としては、例えば、別途、接着層55と熱融着性樹脂層53が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層52上に積層する方法や、積層体Aのバリア層52上に接着層55が積層した積層体を形成し、これを熱融着性樹脂層53と積層する方法などが挙げられる。また、(3)サンドイッチラミネート法としては、例えば、積層体Aのバリア層52と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層53との間に、溶融させた接着層55を流し込みながら、接着層55を介して積層体Aと熱融着性樹脂層53を貼り合せる方法などが挙げられる。また、(4)ドライラミネート法としては、例えば、積層体Aのバリア層52上に、接着層55を形成させるための接着剤を溶液コーティングし、乾燥させる方法や、さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層55上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層53を積層する方法などが挙げられる。
【0193】
表面被覆層を設ける場合には、基材層51のバリア層52とは反対側の表面に、表面被覆層を積層する。表面被覆層は、例えば表面被覆層を形成する上記の樹脂を基材層51の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層51の表面にバリア層52を積層する工程と、基材層51の表面に表面被覆層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層51の表面に表面被覆層を形成した後、基材層51の表面被覆層とは反対側の表面にバリア層52を形成してもよい。
【0194】
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層/必要に応じて設けられる基材層51/必要に応じて設けられる接着剤層54/バリア層52/必要に応じて設けられる接着層55/熱融着性樹脂層53をこの順に備える積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層54及び接着層55の接着性を強固にするために、さらに、加熱処理に供してもよい。
【0195】
外装フィルムにおいて、積層体を構成する各層には、必要に応じて、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施すことにより加工適性を向上させてもよい。例えば、基材層51のバリア層52とは反対側の表面にコロナ処理を施すことにより、基材層51表面へのインクの印刷適性を向上させることができる。
【0196】
<3-1.蓄電デバイス用外装材の積層構造及び物性>
本開示の蓄電デバイス用外装材50は、前述した外装フィルム50に対応しており、各層についても共通する。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体において、基材層1、接着剤層2、バリア層3、接着層5、熱融着性樹脂層4、及び表面被覆層6は、それぞれ、前述した外装フィルム50を構成する積層体の基材層51、接着剤層54、バリア層52、接着層55、熱融着性樹脂層53、表面被覆層に対応している。
【0197】
本開示の蓄電デバイス用外装材50は、外装フィルム50と同じく、例えば図5に示すように、バリア層3及び熱融着性樹脂層4を備える積層体から構成されている。蓄電デバイス用外装材50において、バリア層3が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。例えば、図10,11に示されるように、蓄電デバイス用外装材50と蓄電デバイス素子(電極体20、電極端子30など)を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、蓋体60と共に、蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で端部を熱融着させることによって形成された空間に、電極体20が収容される。本開示の蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体において、バリア層3を基準とし、バリア層3よりも熱融着性樹脂層4側が内側であり、反対側が外側である。
【0198】
蓄電デバイス用外装材50は、例えば図5から図8に示すように、バリア層3の外側に、必要に応じて基材層1を有していてもよい。また、蓄電デバイス用外装材50は、例えば図6から図8に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着剤層2を有していてもよい。また、例えば図7及び図8に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着層5を有していてもよい。また、図8に示すように、基材層1の外側(熱融着性樹脂層4側とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6などが設けられていてもよい。
【0199】
蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、例えば約250μm以下、好ましくは約190μm以下、約180μm以下、約155μm以下、約120μm以下が挙げられる。また、蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体の厚みとしては、電極体20を保護するという蓄電デバイス用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上が挙げられる。また、蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体の好ましい範囲については、例えば、35~250μm程度、35~190μm程度、35~180μm程度、35~155μm程度、35~120μm程度、45~250μm程度、45~190μm程度、45~180μm程度、45~155μm程度、45~120μm程度、60~250μm程度、60~190μm程度、60~180μm程度、60~155μm程度、60~120μm程度が挙げられ、特に蓄電デバイスを軽量薄膜化する場合には60~155μm程度が好ましく、追従性を向上させる場合には155~190μm程度が好ましい。
【0200】
蓄電デバイス用外装材50において、蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、必要に応じて設けられる基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2、バリア層3、必要に応じて設けられる接着層5、熱融着性樹脂層4、及び必要に応じて設けられる表面被覆層6の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。具体例としては、本開示の蓄電デバイス用外装材50が、基材層1、接着剤層2、バリア層3、接着層5、及び熱融着性樹脂層4を含む場合、蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。また、本開示の蓄電デバイス用外装材50が、基材層1、接着剤層2、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4を含む積層体である場合にも、蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上とすることができる。
【0201】
本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、蓄電デバイス用外装材50のヤング率は、好ましくは6000MPa以上、より好ましくは8000MPa以上、さらに好ましくは10000MPa以上であり、また、好ましくは40000MPa以下、より好ましくは35000MPa以下、さらに好ましくは30000MPa以下であり、好ましい範囲としては、6000~40000MPa程度、6000~35000MPa程度、6000~30000MPa程度、8000~40000MPa程度、8000~35000MPa程度、8000~30000MPa程度、10000~40000MPa程度、10000~35000MPa程度、10000~30000MPa程度が挙げられる。本開示において、蓄電デバイス用外装材のヤング率は、以下の方法により測定される値である。
【0202】
<蓄電デバイス用外装材のヤング率の測定>
JIS K6251:2017の規定に準拠し、以下の測定条件で接着性フィルムのTDの方向のS-Sカーブを取得し、S-Sカーブの傾きの最大値からヤング率(MPa)を算出した。
(測定条件)
引張試験機を用いる。
試験片の形状:ダンベル7号
試験片の幅:2mm
試験片の長さ:35mm
試験片の厚み:厚み計で測定する
標線間距離:20mm
引張速度:50mm/min
試験環境:23±5℃、50±30%RH
測定回数:3回の平均値
【0203】
蓄電デバイス用外装材50のヤング率を高める方法としては、外装フィルム50について説明したとおり、バリア層3のヤング率を高めることが有効である。
【0204】
<3-2.蓄電デバイス用外装材を構成する各層>
前記の通り、本開示の蓄電デバイス用外装材50を構成する積層体において、基材層1、接着剤層2、バリア層3、接着層5、熱融着性樹脂層4、及び表面被覆層6は、それぞれ、前述した外装フィルム50を構成する積層体の基材層51、接着剤層54、バリア層52、接着層55、熱融着性樹脂層53、表面被覆層に対応している。このため、基材層1、接着剤層2、バリア層3、接着層5、熱融着性樹脂層4、及び表面被覆層6の説明は、前述した外装フィルム50を構成する積層体の基材層51、接着剤層54、バリア層52、接着層55、熱融着性樹脂層53、表面被覆層の説明と共通しており、重複する説明を省略する。
【0205】
本開示の蓄電デバイス用外装材において、蓄電デバイス用外装材50のバリア層3は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であることを特徴としている。
【0206】
ここで、バリア層3のエリア平均結晶粒径R1(μm)は、蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4とポリプロピレン板とを、前記熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件で熱融着させた位置において、バリア層3の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層3の表面から垂直方向にバリア層3を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である。なお、ポリプロピレン板は、外装体を構成する蓋体を想定したものである。また、熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件は、例えば、熱融着時の温度を160~240℃程度、面圧を0.2~1.5MPa程度、熱融着の時間を1~12秒程度とすることで調整される。
【0207】
また、バリア層3のエリア平均結晶粒径R2(μm)は、蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4が前記ポリプロピレン板と熱融着されていない位置において、バリア層3の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層3の表面から垂直方向にバリア層3を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である。
【0208】
本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、当該比(R1/R2)は、好ましくは約55%以上、より好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上であり、また、好ましくは約150%以下、より好ましくは約140%以下、さらに好ましくは約130%以下であり、好ましい範囲としては、55~150%程度、55~140%程度、55~130%程度、60~150%程度、60~140%程度、60~130%程度、70~150%程度、70~140%程度、70~130%程度が挙げられる。
【0209】
バリア層3のエリア平均結晶粒径R1(μm)及びエリア平均結晶粒径R2(μm)は、以下の方法により測定される値である。なお、蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を取得(例えば、走行済みの自動車などに搭載されている蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を取得)して、バリア層3のエリア平均結晶粒径R1(μm)及びエリア平均結晶粒径R2(μm)を測定する場合には、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層が熱融着されていない部分からサンプルを取得して、下記の測定を行う。
【0210】
<バリア層のエリア平均結晶粒径R1,R2の測定>
蓄電デバイスについて、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層とポリプロピレン板(蓋体を想定したもの)とを、前記熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件で熱融着させた位置のバリア層と、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置(非シール部)のバリア層を取得する。この熱融着条件は、「(熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されている位置の熱融着性樹脂層の厚み)/(熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されていない位置の熱融着性樹脂層の厚み)」の割合が20~80%となるように条件を設定したものである。具体的には、蓄電デバイス用外装材を、MD360mm×TD160mmのサイズの矩形状に裁断する。一方、外装体の蓋体として、直方体状(長さ100mm×幅30mm×厚み5mm)のポリプロピレン製の蓋体(ポリプロピレン板)を用意する。さらに、模擬的な電極体として、直方体状(長さ140mm×幅98mm×厚み28mm)のアルミニウム製のブロックを用意する。次に、図1の模式図に示すように、電極体の長さ方向の両側に蓋体を配置し、これを蓄電デバイス用外装材で包み、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層同士が対向する位置(第1封止部70)と、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層と蓋体とが接触する位置(第2封止部80)を、それぞれ、ヒートシールバーを用いて熱シールし、模擬的な蓄電デバイスを得る。なお、模擬的な蓄電デバイスには、図1に示すような電極端子は設けていない。蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層同士が対向する位置(第1封止部70)におけるシール幅は10mmとする。また、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層と蓋体とが接触する位置(第2封止部80)におけるシール幅は、蓋体の厚み(10mm)とする。また、第2封止部80の熱シール条件(温度、面圧、時間)は、それぞれ、熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件とする。次に、得られた模擬的な蓄電デバイスのバリア層について、EBSD法による結晶解析を行って、バリア層のエリア平均結晶粒径R1,R2を測定する。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0211】
各バリア層の圧延方向とは垂直方向の断面について、EBSD法による結晶解析を行い、バリア層のエリア平均結晶粒径を測定する。測定条件の詳細は、以下の通りである。エリア平均結晶粒径は、[(測定領域-CI値0.1以下の領域)/結晶の数]で算出された面積を円に仮定した時の直径であり、EBSD法による結晶解析で取得される画像を複数枚連結して、約5000μm2以上とした測定領域に含まれる結晶のエリア平均結晶粒径である。また、最大結晶粒径は、結晶の形状を円と仮定し、当該測定領域に含まれる結晶のうち、最大のものについて測定した値である。結晶粒径の標準偏差は、CI値0.1以下の領域を除去後、EBSD法による結晶解析で取得される画像を複数枚連結して、約5000μm2以上とした測定領域(バリア層の厚み方向の全体を測定領域とする)に含まれる結晶の結晶粒径(結晶面積を円に仮定した時の直径)の分布から算出する。なお、バリア層のエリア平均結晶粒径R2は、エリア平均結晶粒径R1の測定箇所から3cm離れた箇所について測定する。
【0212】
(測定装置)
ショットキー電界放出走査電子顕微鏡に、EBSD検出器を搭載した装置を用いる。
【0213】
(前処理)
前処理として、バリア層を、圧延方向(RD)とは垂直方向に切断して、断面を得る。バリア層の圧延方向は、バリア層の光沢面を金属顕微鏡で観察し、線状の圧延痕が伸びる方向である。具体的な手順としては、まず、試料とするバリア層を、トリミング用カミソリで5mm(圧延方向とは垂直方向)×10mm(圧延方向)に切り出した後、樹脂に包埋させる。次に、トリミング用カミソリを用い、バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層の表面から垂直方向に、バリア層を樹脂と共に切断して、バリア層の断面を露出させる。次に、ミクロトームを用いて、得られた断面をトリミングする。このトリミングにおいては、断面形状の機械的歪みを低減するため、包埋した樹脂とともに、当該断面に対して垂直方向に1mm程度、ミクロトームで切り進める。次に、イオンミリング装置を用い、飛び出し幅50μm、電圧6kV、4時間の条件で、当該断面に対して垂直方向にブロードアルゴンビームを照射して、測定断面を作製する。これは、前工程で発生している機械的な結晶構造への破壊が最小限になるよう、精密にバリア層の断面を露出させる作業である。なお、本開示において、アルミニウム合金箔を切断する際の「垂直方向」は、実体顕微鏡下で確認して行うため、10°程度の誤差を含み得る。すなわち、圧延方向に垂直方向とは、圧延方向に80~100°、表面から垂直方向とは、表面に対して80~100°を許容範囲とする。
【0214】
(SEM条件)
EBSD法に用いた走査型電子顕微鏡(SEM)の条件は、以下の通りである。
観察倍率:2000倍(撮影時の観察倍率標準は、Polaroid545とする)
加速電圧:15kV
ワーキングディスタンス:15mm
試料傾斜角度:70°
【0215】
(EBSD条件)
EBSD法による結晶解析の条件は、以下の通りである。
ステップサイズ:150nm
解析条件:
株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIM(Ver.7.3)を使用して、以下の解析を実施する。
画像を複数枚連結し、測定領域は約5000μm2以上とする。測定領域の上限については、例えば、約30000μm2以下とする。このとき、バリア層の厚み方向の中心から両端側までを測定領域とし、断面に樹脂が付着している部分や、耐酸性皮膜が存在している部分については、測定領域から除外する。
CI値は0.1以上、粒界条件は0.5度以上、最小グレインサイズは3ステップ以上とする。
画像を連結後、極点図を確認する。
極点図の中心が10°以上ずれている場合は、対称性が整うように結晶データを回転させる。なお、その際の参考とする極点図は、XRDでサンプル表面より測定する。またEBSDで表面より極点図を得る場合には、サンプル表面の機械的な結晶構造の影響を取り除くため、サンプル表面の機械研磨、平面ミリング、電界研磨などを実施した後に、広範囲測定を実施する。その後、表面方向より得られた極点図は、目的試料の断面より得られた極点図と同じ方位から得たものと同じになるように90°回転させる。この極点図を参考にする。
株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIM(Ver.7.3)にて定義される信頼性指数(Confidence Index:CI値)CI値が0.1以下のデータは排除して解析を実施する。これにより、試料表裏に存在する前処理に使用した樹脂や、断面に存在している粒界や、アモルファスに基づくデータを排除することができる。
【0216】
バリア層3のエリア平均結晶粒径R1(μm)及びエリア平均結晶粒径R2(μm)は、それぞれ、バリア層3を構成する素材、バリア層3の厚み等によって調整することができる。
【0217】
例えば、バリア層3のヤング率を高める(すなわち、蓄電デバイス用外装材50のヤング率を高める)ことで、バリア層3のエリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)を高めることができる。バリア層3の好ましいヤング率については、後述する。例えば、バリア層3の厚みを大きくすること、高強度の金属を使用することなどが有効である。
【0218】
また、例えばバリア層3がアルミニウム合金箔により形成されている場合、JIS規格の8000番台のアルミニウム合金組成であれば、アルミニウム地金にSiを微量添加することで強度を高めることができる。また、JIS規格の5000番台のアルミニウム合金組成であれば、Mgをアルミニウムに固溶することで、固溶強化によって軟質箔の強度を高めることができる。
【0219】
バリア層3を形成する金属の結晶粒を微細化させることも、前記の比(R1/R2)を高めるために有効である。例えば、JIS規格の8000番台、5000番台のアルミニウム合金組成の場合、鋳造時にAL-Fe系金属間化合物として晶出し、それが核となって結晶粒が微細化する。また、異周速圧延(互いに周速が異なるロールで圧延する方法)を採用すると、圧延材は通常の圧延変形に加えて板厚全体にせん断変形を受ける。その結果、結晶回転が促進され亜粒界から大角粒界への変化が促進されて微細結晶粒が生成する。この方法は冷間加工でも効果があるが、温間加工のほうが効果は大きい。さらに、アルミニウム合金箔の熱間圧延の圧延パス数を増やすこと、最終冷間圧延率を高くすることも有効である。中間焼鈍後から最終厚さまでの最終冷間圧延率が高い程(例えば80%以上)、アルミニウム合金箔に蓄積されるひずみ量が多くなり最終焼鈍後の再結晶粒が微細化される。
【0220】
アルミニウム箔の圧延条件については、圧延率、加熱温度、加熱時間などの条件を調整する。例えば、アルミニウム金属又はアルミニウム合金鋳塊を500~600℃程度で1~2時間程度均質化処理する工程、熱間圧延する工程、冷間圧延する工程、300~450℃程度で1~10時間程度保持する中間焼鈍の工程、中間焼鈍後から最終圧延までの圧延率を80%以上、より好ましくは90%以上で実施する冷間圧延工程、250~400℃程度で30~100時間程度保持する最終焼鈍工程を含む方法が挙げられるが、結晶粒を微細化させる条件は、これに限らない。
【0221】
<3-3.蓄電デバイス用外装材の製造方法>
前記の通り、本開示の蓄電デバイス用外装材50は、外装フィルム50に対応するため、その製造方法についても共通することから、説明を省略する。
【0222】
<3-4.蓄電デバイス用外装材の用途>
本開示の蓄電デバイス用外装材は、正極、負極、電解質等の蓄電デバイス素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を収容して、蓄電デバイスとすることができる。換言すれば、本開示の蓄電デバイス用外装材によって蓄電デバイス素子を包むことによって、蓄電デバイスとすることができる。
【0223】
例えば、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を、本開示の蓄電デバイス用外装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子を外側に突出させた状態で、蓄電デバイス素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材を使用した蓄電デバイスが提供される。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する場合、本開示の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂部分が内側(蓄電デバイス素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。2つの蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた蓄電デバイス用外装材の周縁部を熱融着して包装体を形成してもよく、また、図9に示す例のように、1つの蓄電デバイス用外装材を折り返して重ね合わせ、周縁部を熱融着して包装体を形成してもよい。折り返して重ね合わせる場合は、図9に示す例のように、折り返した辺以外の辺を熱融着して三方シールにより包装体を形成してもよいし、フランジ部が形成できるように折り返して四方シールしてもよい。なお、蓄電デバイス用外装材の最内層および最外層が熱融着性樹脂層である場合、最内層の熱融着性樹脂層と、最外層の熱融着性樹脂層とを熱融着することによって、包装体を形成してもよい。また、蓄電デバイス用外装材の互いに向き合う面同士が熱融着されている態様の他、蓄電デバイス用外装材の外面と内面とが熱融着されている態様も好ましい。
【0224】
また、蓄電デバイス用外装材には、蓄電デバイス素子を収容するための凹部が、深絞り成形または張出成形によって形成されてもよい。図9に示す例のように、一方の蓄電デバイス用外装材には凹部を設けて他方の蓄電デバイス用外装材には凹部を設けなくてもよいし、他方の蓄電デバイス用外装材にも凹部を設けてもよい。
【0225】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電極体を包む蓄電デバイス用外装材と蓋体とを備える外装体を利用した蓄電デバイスにおいて、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、蓄電デバイス用外装材の蓋体との封止部にひび割れが発生することが抑制されるものである。したがって、蓄電デバイス素子は、蓄電デバイス用外装材に加えて、蓋体によって封止されてもよい。すなわち、蓄電デバイス用外装材および蓋体は、蓄電デバイス素子を密封する外装体(蓄電デバイス用の外装体)を構成する。例えば、筒状に構成された蓄電デバイス用外装材の内部に蓄電デバイス素子を収容し、開口部を蓋体によって閉じてもよい。別の例では、開口部が形成されるように筒状に構成された蓄電デバイス用外装材の内部に蓋体と接続された状態の蓄電デバイス素子を収容し、開口部を蓋体によって閉じてもよい。蓋体と、蓄電デバイス用外装材とは、任意の手段で接合されることが好ましい。蓄電デバイスの体積エネルギー密度を向上させるべく蓄電デバイス素子と蓄電デバイス用外装材との間のデッドスペースを削減する観点から、蓄電デバイス用外装材は、蓄電デバイス素子および蓋体に巻き付けられることが好ましい。蓄電デバイス用外装材を蓄電デバイス素子および蓋体に巻き付ける場合、1枚の蓄電デバイス用外装材のみを巻き付けてもよいし、複数枚の蓄電デバイス用外装材を巻き付けてもよい。
【0226】
前記の通り、蓋体は、例えば、樹脂成形品、金属成形品、蓄電デバイス用外装材、およびこれらの組み合わせなどで形成できる。本開示において、蓋体が樹脂成形品と表現される場合、蓋体は、JIS(日本工業規格)の[包装用語]規格によって規定されるフィルムのみによって構成される態様は含まれない。蓋体が金属成形品である場合、蓋体が金属端子としての機能を兼ねるため、金属端子を省略することもできる。蓋体は、樹脂材料および導電性材料を含んで構成されてもよい。
【0227】
以下に、蓄電デバイスが、電極体と、電極体を封止する外装体と、を備え、外装体は、電極体を包む本開示の蓄電デバイス用外装材と、蓄電デバイス用外装材とともに電極体を封止する蓋体とを有する蓄電デバイスである場合について、具体的に説明する。
【0228】
図1と同じく、図10は、蓄電デバイス10を模式的に示す斜視図である。図11は、図1のA-A線に沿う断面図である。なお、図10から図12において、矢印z方向(z1方向とz2方向)は蓄電デバイス10の厚み方向を示し、矢印x方向(x1方向とx2方向)は蓄電デバイス10の幅方向を示し、矢印y方向(y1方向とy2方向)は、蓄電デバイス10の奥行方向を示す。矢印x、y、zの各々が示す方向は、以後の各図においても共通である。
【0229】
前記の通り、蓄電デバイス10は、電極体20と、電極端子30と、外装体40と、を備える。電極体20は、例えば、リチウムイオン電池、キャパシタ、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、または、コンデンサー等の蓄電部材を構成する電極(正極および負極)ならびに、セパレータ等を含む。本開示において、電極体20の形状は、例えば、略直方体である。なお、「略直方体」とは、完全な直方体の他に、例えば、外面の一部の形状を修正することによって直方体とみなせるような立体を含む。電極体20の形状は、例えば、円柱または多角柱であってもよい。
【0230】
図1,2と同じく、図10,11の蓄電デバイス10は、2つの電極端子30を備える。電極端子30は、電極体20における電力の入出力に用いられる金属端子である。電極端子30の一方の端部は、電極体20に含まれる電極(正極または負極)に電気的に接続される。電極端子30の他方の端部は、例えば、外装体40の端縁から外側に突出する。なお、電極端子30は、電極体20の電力の入出力が可能であればよく、例えば、外装体40から突出していなくてもよい。後述する蓋体60が例えば、導電性材料を含んで構成される場合、蓋体60が電極端子30の機能を兼ねる場合があり、この場合、電極端子としての機能を有する蓋体60は、外装体40から突出してもよく、突出していなくてもよい。
【0231】
前記の通り、電極端子30を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、または、銅等である。例えば、電極体20がリチウムイオン電池である場合、正極に接続される電極端子30は、通常、アルミニウム等によって構成され、負極に接続される電極端子30は、通常、銅、ニッケル等によって構成される。なお、電極体20の最外層は、必ずしも電極である必要はなく、例えば、保護テープまたはセパレータであってもよい。電極体20の外郭形状は、例えば、直方体である。
【0232】
前記の通り、外装体40は、電極体20を封止する。外装体40は、蓄電デバイス用外装材50および蓋体60を備える。蓄電デバイス用外装材50は、電極体20を包む。図1,2と同じく、図10,11では、蓄電デバイス用外装材50は、電極体20に巻き付けられる。蓋体60は、y方向における電極体20の側方に配置される。別の例では、y方向の両端部に開口部が形成されるように筒状に構成された蓄電デバイス用外装材50の内部に電極体20を収容し、開口部を蓋体60によって閉じてもよい。さらに別の例では、開口部が形成されるように筒状に構成された蓄電デバイス用外装材50の内部に蓋体60と接続された状態の電極体20を収容し、開口部を蓋体60によって閉じてもよい。
【0233】
前記の通り、外装体40は、蓄電デバイス用外装材50により形成された一対の主面と一対の側面を有する。図1,2と同じく、図10,11において、当該一対の主面は、実質的に同じ大きさである。また、当該一対の側面は、実質的に同じ大きさである。当該一対の主面は、それぞれ、当該一対の側面よりも面積が大きい。一対の蓋体60は、一対の開口部を閉じるように電極体20の側方にそれぞれ配置される。なお、本開示において、主面及び側面は、外装体40の面のうち、蓋体60を除いて構成される面である。
【0234】
前記の通り、例えば、冷間成形を通じて蓄電デバイス用外装材50に電極体20を収容する収容部(窪み)を形成する方法がある。しかし、このような方法によって深い収容部を形成することは必ずしも容易ではない。冷間成形によって収納部(窪み)を深く(たとえば成形深さ15mm)形成しようとすると蓄電デバイス用外装材50にピンホールまたはクラックが発生し、電池性能の低下を招く可能性が高くなる。一方、外装体40は、蓄電デバイス用外装材50を電極体20に巻き付けることによって電極体20を封止しているため、電極体20の厚みに拘わらず容易に電極体20を封止することができる。なお、蓄電デバイス10の体積エネルギー密度を向上させるべく電極体20と蓄電デバイス用外装材50との間のデッドスペースを削減するためには、蓄電デバイス用外装材50が電極体20の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。また、全固体電池においては、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされている観点からも電極体20と蓄電デバイス用外装材50との間の空間を無くすことが必要とされるため、蓄電デバイス用外装材50が電極体20の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。
【0235】
蓄電デバイス用外装材50は、少なくとも、バリア層3および熱融着性樹脂層4を有する積層体(ラミネートフィルム)である。蓄電デバイス用外装材50に含まれる各層の詳細については、前述の通りである。
【0236】
前述の通り、蓋体60は、例えば、円柱、角柱、直方体、または、立方体等の任意の形状であってもよく、例えば、樹脂材料を含んで構成される。ここで、「樹脂材料を含んで構成される」とは、蓋体60を構成する材料の全体を100質量%としたときに、樹脂材料の含有率が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であることをいうものとする。すなわち、蓋体60を構成する材料は、樹脂材料に加え、樹脂材料以外の材料を含有することができる。
【0237】
蓋体60において、樹脂の具体例は、前述の通りである。
【0238】
また、前記の通り、上記樹脂材料としての樹脂は、必要に応じてフィラーを含有してもよい。フィラーの具体例は、前述の通りである。
【0239】
前記の通り、蓋体60を構成する材料に含まれる樹脂材料のメルトマスフローレート(測定温度230℃)は、1g/10min~100g/10minの範囲に含まれることが好ましく、1g/10min~80g/10minの範囲に含まれることが好ましく、1g/10min~60g/10minの範囲に含まれることが好ましく、5g/10min~100g/10minの範囲に含まれることが好ましく、5g/10min~80g/10minの範囲に含まれることが好ましく、5g/10min~60g/10minの範囲に含まれることがさらに好ましい。メルトマスフローレートは、JIS K7210-1:2014に基づいて測定される。
【0240】
前記の通り、蓋体60は、導電性材料を含んで構成されてもよい。「導電性材料を含んで構成される」とは、蓋体60を構成する材料の全体を100質量%としたときに、導電性材料の含有率が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であることをいうものとする。すなわち、蓋体60を構成する材料は、導電性材料に加え、導電性材料以外の材料を含有することができる。
【0241】
前記の通り、蓋体60を構成する導電性材料は、例えば、金属材料である。蓋体60を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、銅、または、銅合金である。例えば、電極体20がリチウムイオン電池である場合、正極に接続される蓋体60は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成されることが好ましい。負極に接続される蓋体60は、ニッケル、銅、または、銅合金によって構成されることが好ましい。負極に接続される蓋体60を構成する材料は、銅にニッケルめっきを施したものとしてもよい。蓋体60を構成する材料は、金属材料のリサイクル材を含んでいてもよい。蓋体60が導電性材料を含んで構成される場合、蓋体60が電極端子30としての機能を兼ねるため、蓄電デバイス10は、電極端子30を省略することもできる。
【0242】
前記の通り、蓋体60は、蓋本体61の少なくとも一部が被覆体62によって被覆された構成であってもよい。図12の蓋体60においては、蓋本体61の周囲(厚み部分の周囲)が、被覆体62で覆われている。蓋体60は、被覆体62を介して蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4と接合されてもよい。被覆体62は、樹脂材料を含んで構成されることが好ましい。蓋体60は、蓋本体61、および、蓋本体61と蓄電デバイス用外装材50とを接合する被覆体62と、を有し、被覆体62は、樹脂(樹脂材料)を含む構成とすることができる。被覆体62に関する「樹脂材料を含んで構成される」ことの定義は、蓋体60の場合と同様である。
【0243】
前記の通り、蓋体60が導電性材料を含んで構成される場合、蓋本体61が導電性材料により構成され、蓋本体61の少なくとも一部は、被覆体62によって被覆されてもよい。
【0244】
前記の通り、蓋体60が導電性材料を含んで構成される場合、蓋体60は、被覆体に代えて接着性フィルムを介して蓄電デバイス用外装材50と接合されてもよい。接着性フィルムは、蓄電デバイス用外装材50と蓋体60とを接着できるフィルムであれば、任意に選択可能である。接着性フィルムは、少なくとも熱融着性樹脂層、耐熱性基材層、および、熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムであることが好ましい。接着性フィルムの熱融着性樹脂層に関する諸元は、熱融着性樹脂層4に関する諸元を適用できる。接着性フィルムの両側の熱融着性樹脂層を構成する材料は、同種の材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよく、蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4を構成する材料、および、蓋体60を構成する材料に合わせて適宜選択される。接着性フィルムのうちの蓋体60と接着される側の熱融着性樹脂層を構成する材料は、好ましくは、無水マレイン酸等の酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。接着性フィルムのうちの蓄電デバイス用外装材50と接着される側の熱融着性樹脂層は、蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4を構成する材料と同種の材料を用いることが好ましい。
【0245】
前記の通り、耐熱性基材層としては、耐熱性樹脂によって構成されるフィルムであればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン(登録商標)、ポリアセタール環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の無延伸または延伸フィルムを用いることができる。なお、ポリエチレンテレフタレートは安価で強度が強く、特に好ましい。
【0246】
前記の通り、接着性フィルムは、粘着性を有していることが好ましい。接着性フィルムが蓄電デバイス用外装材50と蓋体60との間に配置された状態で後述する第2封止部80を形成するときに、蓋体60および蓄電デバイス用外装材50に対する接着性フィルムの位置がずれにくい。接着性フィルムの熱融着性樹脂層に粘着性付与樹脂を含有させることによって、接着性フィルムに粘着性を付与することができる。粘着性付与樹脂としては、アモルファスポリオレフィンが挙げられる。アモルファスポリオレフィンとしては、例えば、アモルファスポリプロピレン、または、アモルファスプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。熱融着性樹脂を構成する母材に対する粘着性付与樹脂の含有量は、10~20重量%以下であることが好ましい。
【0247】
前記の通り、蓋体60は、蓄電デバイスの内側(電極体20側)に位置する第1主面と、蓄電デバイスの外側に位置する第2主面と、蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4と熱融着される4つの側面を備える。第1主面は、電極体20と面する。第2主面は、第1主面と反対側の面である。
【0248】
前記の通り、蓋体60が円柱、角柱、直方体、または、立方体等である場合、蓄電デバイス10が重ねて配置された場合であっても、外装体40が変形することが抑制されるように、蓋体60は、厚み方向(y方向)において、ある程度の厚さを有していることが好ましい。別の観点では、蓋体60が円柱、角柱、直方体、または、立方体等である場合、第2封止部80を形成する際に、蓋体60の蓋接合部と外装フィルム50とを好適に接合できるように、蓋体60は、厚み方向(y方向)において、ある程度の厚さを有していることが好ましい。蓋体60の厚み方向(y方向)の厚さ(第1主面と第2主面のy方向における距離)の最小値は、例えば、1.0mmであり、3.0mmがより好ましく、4.0mmがさらに好ましい。蓋体60のy方向の厚さの最大値は、例えば、20mmであり、、15.0mmが好ましく、10.0mmがより好ましく、8.0mmがさらに好ましく、7.0mmがさらに好ましい。蓋体60のy方向の厚さの最大値は、10mm以上であってもよい。蓋体60を構成する材料の厚さの好ましい範囲は、1.0mm~20.0mm、1.0mm~15.0mm、1.0mm~10.0mm、1.0mm~8.0mm、1.0mm~7.0mm、3.0mm~20.0mm、3.0mm~15.0mm、3.0mm~10.0mm、3.0mm~8.0mm、3.0mm~7.0mm、4.0mm~20.0mm、4.0mm~15.0mm、4.0mm~10.0mm、4.0mm~8.0mm、4.0mm~7.0mmである。本開示において、蓋体60が円柱、角柱、直方体、または、立方体等と表現される場合、蓋体60がJIS(日本工業規格)の[包装用語]規格によって規定されるフィルムのみによって構成される態様は含まれない。なお、蓋体60の厚さは、蓋体60の部位によって異なっていてもよい。蓋体60の厚さが部位によって異なる場合、蓋体60の厚さは、最も厚い部分の厚さである。
【0249】
図1,2と同じく、図10,11において、蓋体60には、電極端子30が挿入される貫通孔が形成されている。貫通孔は、蓋体の第1主面及び第2主面を貫通する。電極体20が収納された状態で電極端子30は、蓋体60に形成される貫通孔を通って外装体40の外部に突出する。蓋体60の貫通孔と電極端子30との僅かな隙間は、例えば、樹脂によって埋められる。なお、蓄電デバイス10において、電極端子30が外部に突出する位置は、任意に選択可能である。例えば、電極端子30は、外装体40が有する6面のうちいずれかの面に形成された孔から外部に突出していてもよい。この場合には、外装体40と電極端子30との間の僅かな隙間が、例えば、樹脂によって埋められる。電極端子30は、蓋体60と蓄電デバイス用外装材50との間から突出していてもよく、後述する第1封止部70から突出していてもよい。蓄電デバイス10においては、蓋体60と電極端子30とが別体として設けられているが、蓋体60と電極端子30とは一体的に形成されていてもよい。なお、電極端子30が外装体40の端縁から突出しない場合、蓋体60には、貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0250】
図1,2と同じく、図10,11では、電極体20の周囲に蓄電デバイス用外装材50が巻き付けられた状態で、蓄電デバイス用外装材50の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層4)同士がヒートシールされることによって、第1封止部70が形成されている。
【0251】
前記の通り、第1封止部70は、蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層同士がヒートシールされることによって形成される。第1封止部70は、外装体40の長手方向に延びる。外装体40において、第1封止部70が形成される位置は、任意に選択可能である。図1と同じく、図10に示されるように、第1封止部70の根本は、外装体40の主面と側面との境界の辺上に位置することが好ましい。第1封止部70の根本は、外装体40の任意の面上に位置していてもよい。図1と同じく、図10では、第1封止部70は、平面視において、電極体20よりも外側に張り出している。第1封止部70は、例えば、外装体40の側面に向けて折り畳まれていてもよく、主面に向けて折り畳まれていてもよい。
【0252】
前記の通り、蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4と蓋体60の蓋接合部(蓄電デバイス用外装材50の熱融着性樹脂層4と蓋体60とが接する部分)とが、例えば、ヒートシールによって接合されることによって、第2封止部80が形成される。蓄電デバイス用外装材50と蓋体60とは、溶接等の任意の方法で接合することができる。
【0253】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池に使用される。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【実施例
【0254】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
【0255】
<外装フィルムの製造方法>
比較例1A
基材層として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)と延伸ナイロン(ONy)フィルム(厚さ15μm)とが、接着剤層(2液硬化型ウレタン接着剤で形成し、硬化後の厚さは3μm)で接着された積層体を準備した。また、バリア層として、アルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8079H-O(厚さ40μm))を用意した。アルミニウム箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
【0256】
次に、2液硬化型ウレタン接着剤を用い、ドライラミネート法により、基材層とバリア層とを接着剤層(厚さ3μm)で接着し、基材層/接着剤層/バリア層が順に積層された積層体を作製した。
【0257】
次に、上記で得られた各積層体のバリア層の上に、接着層(厚さ40μm)を形成する無水マレイン酸変性ポリプロピレンと、熱融着性樹脂層(厚さ40μm)を形成するランダムポリプロピレンとを共押出しすることにより、バリア層の上に接着層/熱融着性樹脂層とを積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる外装フィルムを得た。
【0258】
比較例2A
バリア層として、アルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8079H-O(厚さ60μm))を用いたこと以外は、比較例1Aと同様にして、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる外装フィルムを得た。
【0259】
実施例1A
バリア層として、アルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8079H-O(厚さ80μm))を用いたこと以外は、比較例1Aと同様にして、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる外装フィルムを得た。
【0260】
実施例2A
バリア層として、ステンレス鋼箔(JIS G4303 SUS304(厚さ60μm))を用いたこと以外は、比較例1Aと同様にして、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる外装フィルムを得た。
【0261】
実施例3A
外装フィルムとしては、比較例1Aと同じものを用いた。後述する冷熱衝撃試験において、模擬的な蓄電デバイスに使用する外装体の、蓋体の材質が比較例1Aとは異なる。
【0262】
実施例4A
外装フィルムとしては、比較例1Aと同じものを用いた。後述する冷熱衝撃試験において、模擬的な蓄電デバイスに使用する外装体の、蓋体の材質が比較例1A及び実施例3Aとは異なる。
【0263】
<バリア層のエリア平均結晶粒径R1,R2の測定>
後述の<冷熱衝撃試験>にて製造した模擬的な蓄電デバイスと同様にして、模擬的な蓄電デバイスを製造した。次に、模擬的な蓄電デバイスについて、外装フィルムの熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されている位置(シール部(第2封止部))のバリア層と、外装フィルムの熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置(非シール部)のバリア層を取得し、それぞれ、EBSD法による結晶解析を行って、バリア層のエリア平均結晶粒径R1,R2を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0264】
各バリア層の圧延方向とは垂直方向の断面について、EBSD法による結晶解析を行い、バリア層のエリア平均結晶粒径を測定した。測定条件の詳細は、以下の通りである。測定結果を表1Aに示す。エリア平均結晶粒径は、[(測定領域-CI値0.1以下の領域)/結晶の数]で算出された面積を円に仮定した時の直径であり、EBSD法による結晶解析で取得される画像を複数枚連結して、約5000μm2以上とした測定領域に含まれる結晶のエリア平均結晶粒径である。また、結晶粒径は、結晶の形状を円と仮定し、当該測定領域に含まれる結晶について測定した値である。結晶粒径の標準偏差は、CI値0.1以下の領域を除去後、EBSD法による結晶解析で取得される画像を複数枚連結して、約5000μm2以上とした測定領域(バリア層の厚み方向の全体を測定領域とする)に含まれる結晶の結晶粒径(結晶面積を円に仮定した時の直径)の分布から算出した。なお、バリア層のエリア平均結晶粒径R2は、エリア平均結晶粒径R1の測定箇所から3cm離れた箇所について測定した。
【0265】
(測定装置)
ショットキー電界放出走査電子顕微鏡に、EBSD検出器(株式会社TSLソリューションズ製)を搭載した装置を用いた。
【0266】
(前処理)
前処理として、バリア層を、圧延方向(RD)とは垂直方向に切断して、断面を得る。バリア層の圧延方向は、バリア層の光沢面を金属顕微鏡で観察し、線状の圧延痕が伸びる方向である。具体的な手順としては、まず、試料とするバリア層を、トリミング用カミソリで5mm(圧延方向とは垂直方向)×10mm(圧延方向)に切り出した後、樹脂に包埋させた。次に、トリミング用カミソリを用い、バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層の表面から垂直方向に、バリア層を樹脂と共に切断して、バリア層の断面を露出させた。次に、ミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製のウルトラミクロトーム)を用いて、得られた断面をトリミングする。このトリミングにおいては、断面形状の機械的歪みを低減するため、包埋した樹脂とともに、当該断面に対して垂直方向に1mm程度、ミクロトームで切り進めた。次に、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、飛び出し幅50μm、電圧6kV、4時間の条件で、当該断面に対して垂直方向にブロードアルゴンビームを照射して、測定断面を作製した。これは、前工程で発生している機械的な結晶構造への破壊が最小限になるよう、精密にバリア層の断面を露出させる作業である。なお、本開示において、アルミニウム合金箔を切断する際の「垂直方向」は、実体顕微鏡下で確認して行うため、10°程度の誤差を含み得る。すなわち、圧延方向に垂直方向とは、圧延方向に80~100°、表面から垂直方向とは、表面に対して80~100°を許容範囲とする。
【0267】
(SEM条件)
EBSD法に用いた走査型電子顕微鏡(SEM)の条件は、以下の通りである。
観察倍率:2000倍(撮影時の観察倍率標準は、Polaroid545とする)
加速電圧:15kV
ワーキングディスタンス:15mm
試料傾斜角度:70°
【0268】
(EBSD条件)
EBSD法による結晶解析の条件は、以下の通りである。
ステップサイズ:150nm
解析条件:
株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIM(Ver.7.3)を使用して、以下の解析を実施した。
画像を複数枚連結し、測定領域は約5000μm2以上とした。このとき、バリア層の厚み方向の中心から両端側までを測定領域とし、断面に樹脂が付着している部分や、耐酸性皮膜が存在している部分については、測定領域から除外した。
CI値は0.1以上、粒界条件は0.5度以上、最小グレインサイズは3ステップ以上とした。
画像を連結後、極点図を確認した。
極点図の中心が10°以上ずれている場合は、対称性が整うように結晶データを回転させる。なお、その際の参考とする極点図は、XRDでサンプル表面より測定する。またEBSDで表面より極点図を得る場合には、サンプル表面の機械的な結晶構造の影響を取り除くため、サンプル表面の機械研磨、平面ミリング、電界研磨などを実施した後に、広範囲測定を実施する。その後、表面方向より得られた極点図は、目的試料の断面より得られた極点図と同じ方位から得たものと同じになるように90°回転させる。この極点図を参考にする。
株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIM(Ver.7.3)にて定義される信頼性指数(Confidence Index:CI値)CI値が0.1以下のデータは排除して解析を実施した。これにより、試料表裏に存在する前処理に使用した樹脂や、断面に存在している粒界や、アモルファスに基づくデータを排除することができる。
【0269】
<外装フィルムのヤング率の測定>
以下の方法により、外装フィルムのヤング率を測定した。結果を表1Aに示す。
JIS K6251:2017の規定に準拠し、以下の測定条件で外装フィルムのTDの方向のS-Sカーブを取得し、S-Sカーブの傾きの最大値からヤング率(MPa)を算出した。
(測定条件)
引張試験機(島津オートグラフAG-X Plus)を用いる。
試験片の形状:ダンベル7号
試験片の幅:2mm
試験片の長さ:35mm
試験片の厚み:厚み計で測定する
標線間距離:20mm
引張速度:50mm/min
試験環境:23±5℃、50±30%RH
測定回数:3回の平均値
【0270】
<冷熱衝撃試験>
各実施例及び比較例で製造した外装フィルムを、それぞれ、MD360mm×TD160mmのサイズの矩形状に裁断した。一方、外装体の蓋体として、比較例1A-2A及び実施例1A-2Aでは、直方体状(長さ100mm×幅30mm×厚み5mm)のポリプロピレン製の蓋体を用意した。実施例3Aでは、直方体状(長さ98mm×幅28mm×厚み5mm)のアルミニウム製の蓋本体の周囲(厚み部分の周囲)が、ポリプロピレン(PP)製の被覆体で覆われている蓋体(長さ100mm×幅30mm×厚み5mm)を用意した。実施例4Aでは、直方体状(長さ98mm×幅28mm×厚み5mm)のアルミニウム製の蓋本体の周囲(厚み部分の周囲)が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)製の被覆体で覆われている蓋体(長さ100mm×幅30mm×厚み5mm)を用意した。さらに、模擬的な電極体として、直方体状(長さ140mm×幅98mm×厚み28mm)のアルミニウム製のブロックを用意した。
【0271】
次に、図1の模式図に示すように、電極体の長さ方向の両側に蓋体を配置し、これを外装フィルムで包み、外装フィルムの熱融着性樹脂層同士が対向する位置(第1封止部70)と、外装フィルムの熱融着性樹脂層と蓋体とが接触する位置(第2封止部80)を、それぞれ、ヒートシールバーを用いて熱シールし、模擬的な蓄電デバイスを得た。なお、模擬的な蓄電デバイスには、図1に示すような電極端子は設けていない。外装フィルムの熱融着性樹脂層同士が対向する位置(第1封止部70)におけるシール幅は10mmとした。また、外装フィルムの熱融着性樹脂層と蓋体とが接触する位置(第2封止部80)におけるシール幅は、蓋体の厚み(5mm)とした。また、第2封止部80の熱シール条件(温度、面圧、時間)については、比較例1Aは180℃、0.60MPa、3秒間、比較例2A及び実施例1A-3Aは、それぞれ、180℃、1.20MPa、5秒間、実施例4Aは180℃、0.60MPa、7秒間とした。いずれも、「(熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されている位置の熱融着性樹脂層の厚み)/(熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されていない位置の熱融着性樹脂層の厚み)」の割合が20~80%となるように条件を設定した。なお、熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件は、例えば、熱融着時の温度を160~240℃程度、面圧を0.2~1.5MPa程度、熱融着の時間を1~12秒程度とすることで調整できる。
【0272】
得られた模擬的な蓄電デバイスについて、それぞれ、-30℃環境で30分間静置、次に、80℃環境で30分間静置することを1サイクルとし、これを800サイクル繰り返して、冷熱衝撃試験を行い、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、外装フィルムの蓋体との封止部(外装フィルムの表層)にひび割れが発生することが抑制されるか否かを評価した。結果を表1Aに示す。
【0273】
表1Aに示された熱衝撃試験結果において、比較例1A-2Aの蓄電デバイスには、外装フィルムの蓋体との封止部にひび割れが発生していた。一方、実施例1Aの蓄電デバイスには、外装フィルムの蓋体との封止部に微細なひび割れが発生していたが、外装フィルムの蓋体との封止部にひび割れの発生は抑制されていたと評価できるものであった。実施例2A-4Aの蓄電デバイスには、それぞれ、外装フィルムの蓋体との封止部にひび割れが発生しておらず、外装フィルムの蓋体との封止部にひび割れの発生が特に良好に抑制されていたと評価できるものであった。微細なひび割れとは、前記封止部をSEM観察した場合に、バリア層に空隙が観察されない程度のひび割れであるのに対して、比較例1A-2Aで観察されたひび割れは、前記封止部をSEM観察した場合に、バリア層に空隙が観察される程度のひび割れであった。SEM観察の条件は、観察倍率:1000倍、加速電圧:5kV、ワーキングディスタンス:10mmである。
【0274】
【表1A】
【0275】
表1A中のPETはポリエチレンテレフタレートフィルム、DLはドライラミネート法によって形成された接着剤層、ONyは延伸ナイロンフィルム、ALはアルミニウム合金箔、SUSはステンレス鋼箔、PPaは無水マレイン酸変性ポリプロピレン層、PPはポリプロピレン層である。また、ヤング率、エリア平均結晶粒径R1,R2、R1/R2の値は、それぞれ、表1Aに記載の数値から一桁小さい測定値を四捨五入して算出した値である。
【0276】
<蓄電デバイス用外装材の製造>
比較例1B
基材層として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)と延伸ナイロン(ONy)フィルム(厚さ15μm)とが、接着剤層(2液硬化型ウレタン接着剤で形成し、硬化後の厚さは3μm)で接着された積層体を準備した。また、バリア層として、アルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8079H-O(厚さ60μm))を用意した。アルミニウム箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
【0277】
次に、2液硬化型ウレタン接着剤を用い、ドライラミネート法により、基材層とバリア層とを接着剤層(厚さ3μm)で接着し、基材層/接着剤層/バリア層が順に積層された積層体を作製した。
【0278】
次に、上記で得られた各積層体のバリア層の上に、接着層(厚さ40μm)を形成する無水マレイン酸変性ポリプロピレンと、熱融着性樹脂層(厚さ40μm)を形成するランダムポリプロピレンとを共押出しすることにより、バリア層の上に接着層/熱融着性樹脂層とを積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる蓄電デバイス用外装材を得た。
【0279】
実施例1B
バリア層として、アルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8079H-O(厚さ80μm))を用いたこと以外は、比較例1Bと同様にして、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる蓄電デバイス用外装材を得た。
【0280】
実施例2B
バリア層として、ステンレス鋼箔(JIS G4303 SUS304(厚さ60μm))を用いたこと以外は、比較例1Bと同様にして、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる蓄電デバイス用外装材を得た。
【0281】
<バリア層のエリア平均結晶粒径R1,R2の測定>
後述の<冷熱衝撃試験>にて製造した模擬的な蓄電デバイスと同様にして、模擬的な蓄電デバイスを製造した。次に、模擬的な蓄電デバイスについて、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層がポリプロピレン板(ポリプロピレン製の蓋体)と熱融着されている位置(シール部(第2封止部))のバリア層と、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置(非シール部)のバリア層を取得し、それぞれ、EBSD法による結晶解析を行って、バリア層のエリア平均結晶粒径R1,R2を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0282】
各バリア層の圧延方向とは垂直方向の断面について、EBSD法による結晶解析を行い、バリア層のエリア平均結晶粒径を測定した。測定条件の詳細は、以下の通りである。測定結果を表1Bに示す。エリア平均結晶粒径は、[(測定領域-CI値0.1以下の領域)/結晶の数]で算出された面積を円に仮定した時の直径であり、EBSD法による結晶解析で取得される画像を複数枚連結して、約5000μm2以上とした測定領域に含まれる結晶のエリア平均結晶粒径である。また、最大結晶粒径は、結晶の形状を円と仮定し、当該測定領域に含まれる結晶のうち、最大のものについて測定した値である。結晶粒径の標準偏差は、CI値0.1以下の領域を除去後、EBSD法による結晶解析で取得される画像を複数枚連結して、約5000μm2以上とした測定領域に含まれる結晶の結晶粒径(結晶面積を円に仮定した時の直径)の分布から算出した。
【0283】
(測定装置)
ショットキー電界放出走査電子顕微鏡に、EBSD検出器(株式会社TSLソリューションズ製)を搭載した装置を用いた。
【0284】
(前処理)
前処理として、バリア層を、圧延方向(RD)とは垂直方向に切断して、断面を得る。バリア層の圧延方向は、バリア層の光沢面を金属顕微鏡で観察し、線状の圧延痕が伸びる方向である。具体的な手順としては、まず、試料とするバリア層を、トリミング用カミソリで5mm(圧延方向とは垂直方向)×10mm(圧延方向)に切り出した後、樹脂に包埋させた。次に、トリミング用カミソリを用い、バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、バリア層の表面から垂直方向に、バリア層を樹脂と共に切断して、バリア層の断面を露出させた。次に、ミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製のウルトラミクロトーム)を用いて、得られた断面をトリミングする。このトリミングにおいては、断面形状の機械的歪みを低減するため、包埋した樹脂とともに、当該断面に対して垂直方向に1mm程度、ミクロトームで切り進めた。次に、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、飛び出し幅50μm、電圧6kV、4時間の条件で、当該断面に対して垂直方向にブロードアルゴンビームを照射して、測定断面を作製した。これは、前工程で発生している機械的な結晶構造への破壊が最小限になるよう、精密にバリア層の断面を露出させる作業である。なお、本開示において、アルミニウム合金箔を切断する際の「垂直方向」は、実体顕微鏡下で確認して行うため、10°程度の誤差を含み得る。すなわち、圧延方向に垂直方向とは、圧延方向に80~100°、表面から垂直方向とは、表面に対して80~100°を許容範囲とする。
【0285】
(SEM条件)
EBSD法に用いた走査型電子顕微鏡(SEM)の条件は、以下の通りである。
観察倍率:2000倍(撮影時の観察倍率標準は、Polaroid545とする)
加速電圧:15kV
ワーキングディスタンス:15mm
試料傾斜角度:70°
【0286】
(EBSD条件)
EBSD法による結晶解析の条件は、以下の通りである。
ステップサイズ:150nm
解析条件:
株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIM(Ver.7.3)を使用して、以下の解析を実施した。
画像を複数枚連結し、測定領域は約5000μm2以上とした。このとき、バリア層の厚み方向の中心から両端側までを測定領域とし、断面に樹脂が付着している部分や、耐酸性皮膜が存在している部分については、測定領域から除外した。
CI値は0.1以上、粒界条件は0.5度以上、最小グレインサイズは3ステップ以上とした。
画像を連結後、極点図を確認した。
極点図の中心が10°以上ずれている場合は、対称性が整うように結晶データを回転させる。なお、その際の参考とする極点図は、XRDでサンプル表面より測定する。またEBSDで表面より極点図を得る場合には、サンプル表面の機械的な結晶構造の影響を取り除くため、サンプル表面の機械研磨、平面ミリング、電界研磨などを実施した後に、広範囲測定を実施する。その後、表面方向より得られた極点図は、目的試料の断面より得られた極点図と同じ方位から得たものと同じになるように90°回転させる。この極点図を参考にする。
株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIM(Ver.7.3)にて定義される信頼性指数(Confidence Index:CI値)CI値が0.1以下のデータは排除して解析を実施した。これにより、試料表裏に存在する前処理に使用した樹脂や、断面に存在している粒界や、アモルファスに基づくデータを排除することができる。
【0287】
<蓄電デバイス用外装材のヤング率の測定>
以下の方法により、蓄電デバイス用外装材のヤング率を測定した。結果を表1Bに示す。
JIS K6251:2017の規定に準拠し、以下の測定条件で接着性フィルムのTDの方向のS-Sカーブを取得し、S-Sカーブの傾きの最大値からヤング率(MPa)を算出した。
(測定条件)
引張試験機(島津オートグラフAG-X Plus)を用いる。
試験片の形状:ダンベル7号
試験片の幅:2mm
試験片の長さ:35mm
試験片の厚み:厚み計で測定する
標線間距離:20mm
引張速度:50mm/min
試験環境:23±5℃、50±30%RH
測定回数:3回の平均値
【0288】
<冷熱衝撃試験>
各実施例及び比較例で製造した蓄電デバイス用外装材を、それぞれ、MD360mm×TD160mmのサイズの矩形状に裁断した。一方、外装体の蓋体として、直方体状(長さ100mm×幅30mm×厚み5mm)のポリプロピレン製の蓋体(ポリプロピレン板)を用意した。さらに、模擬的な電極体として、直方体状(長さ140mm×幅98mm×厚み28mm)のアルミニウム製のブロックを用意した。
【0289】
次に、図1の模式図に示すように、電極体の長さ方向の両側に蓋体を配置し、これを蓄電デバイス用外装材で包み、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層同士が対向する位置(第1封止部70)と、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層と蓋体とが接触する位置(第2封止部80)を、それぞれ、ヒートシールバーを用いて熱シールし、模擬的な蓄電デバイスを得た。なお、模擬的な蓄電デバイスには、図1に示すような電極端子は設けていない。蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層同士が対向する位置(第1封止部70)におけるシール幅は10mmとした。また、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層と蓋体とが接触する位置(第2封止部80)におけるシール幅は、蓋体の厚み(5mm)とした。また、第2封止部80の熱シール条件(温度、面圧、時間)は、それぞれ、180℃、1.20MPa、5秒間とした。この熱シール条件は、「(熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されている位置の熱融着性樹脂層の厚み)/(熱融着性樹脂層が蓋体と熱融着されていない位置の熱融着性樹脂層の厚み)」の割合が20~80%となるように条件を設定したものである。
【0290】
得られた模擬的な蓄電デバイスについて、それぞれ、-30℃環境で30分間静置、次に、80℃環境で30分間静置することを1サイクルとし、これを800サイクル繰り返して、冷熱衝撃試験を行い、蓄電デバイスが高温及び低温の温度変化に繰り返し晒された場合に、蓄電デバイス用外装材と蓋体との封止部(蓄電デバイス用外装材の表層)にひび割れが発生することが抑制されるか否かを評価した。結果を表1Bに示す。
【0291】
表1Bに示された熱衝撃試験結果において、比較例1Bの蓄電デバイスには、蓄電デバイス用外装材と蓋体との封止部にひび割れが発生していた。一方、実施例1Bの蓄電デバイスには、蓄電デバイス用外装材と蓋体との封止部に微細なひび割れが発生していたが、蓄電デバイス用外装材と蓋体との封止部にひび割れの発生は抑制されていたと評価できるものであった。実施例2Bの蓄電デバイスには、蓄電デバイス用外装材と蓋体との封止部にひび割れが発生しておらず、蓄電デバイス用外装材と蓋体との封止部にひび割れの発生が特に良好に抑制されていたと評価できるものであった。微細なひび割れとは、前記封止部をSEM観察した場合に、バリア層に空隙が観察されない程度のひび割れであるのに対して、比較例1Bで観察されたひび割れは、前記封止部をSEM観察した場合に、バリア層に空隙が観察される程度のひび割れであった。SEM観察の条件は、観察倍率:1000倍、加速電圧:5kV、ワーキングディスタンス:10mmである。
【0292】
【表1B】
【0293】
表1B中のPETはポリエチレンテレフタレートフィルム、DLはドライラミネート法によって形成された接着剤層、ONyは延伸ナイロンフィルム、ALはアルミニウム合金箔、SUSはステンレス鋼箔、PPaは無水マレイン酸変性ポリプロピレン層、PPはポリプロピレン層である。また、ヤング率、エリア平均結晶粒径R1,R2、R1/R2の値は、それぞれ、表1Bに記載の数値から一桁小さい測定値を四捨五入して算出した値である。
【0294】
以上の通り、本開示は、以下に示す態様の発明を提供する。
項1A. 蓄電デバイスであって、
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体と、を有し、
前記外装フィルムは、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が前記蓋体と熱融着されている位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である、
蓄電デバイス。
項2A. 前記バリア層は、ステンレス鋼、鋼板、又はアルミニウム合金により形成されている、項1Aに記載の蓄電デバイス。
項3A. 前記蓋体は、蓋本体、および、前記蓋本体と前記外装フィルムとを接合する被覆体と、を有し、
前記被覆体は、樹脂を含む、項1A又は2Aに記載の蓄電デバイス。
項4A. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に接着層をさらに備える、項1A~3Aのいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
項5A. 前記バリア層の前記熱融着性樹脂層側とは反対側に基材層をさらに備える、項1A~4Aのいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
項6A. 前記基材層と前記バリア層との間に接着剤層をさらに備える、項5Aに記載の蓄電デバイス。
項7A. 前記外装フィルムは、ヤング率が6000MPa以上である、項1A~6Aのいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
項8A. 蓄電デバイスの製造方法であって、
前記蓄電デバイスは、
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体と、を有し、
前記外装フィルムは、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が前記蓋体と熱融着されている位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記電極体を前記外装体で封止する工程を含む、
蓄電デバイスの製造方法。
【0295】
また、以上の通り、本開示は、以下に示す態様の発明を提供する。
項1B. 少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材であって、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記蓄電デバイス用外装材の前記熱融着性樹脂層と、ポリプロピレン板とを、前記熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件で熱融着させた位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記蓄電デバイス用外装材の前記熱融着性樹脂層と、前記ポリプロピレン板とを熱融着させていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である、
蓄電デバイス用外装材。
項2B. 前記バリア層は、ステンレス鋼、鋼板、又はアルミニウム合金により形成されている、項1Bに記載の蓄電デバイス用外装材。
項3B. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に接着層をさらに備える、項1B又は2Bに記載の蓄電デバイス用外装材。
項4B. 前記バリア層の前記熱融着性樹脂層側とは反対側に基材層をさらに備える、項1B~3Bのいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項5B. 前記基材層と前記バリア層との間に接着剤層をさらに備える、項4Bに記載の蓄電デバイス用外装材。
項6B. 前記蓄電デバイス用外装材は、ヤング率が6000MPa以上である、項1B~5Bのいずれか1項記載の蓄電デバイス用外装材。
項7B. 蓄電デバイス用外装材の製造方法であって、
少なくとも、バリア層と、熱融着性樹脂層とが積層された積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記蓄電デバイス用外装材の前記熱融着性樹脂層と、ポリプロピレン板とを、前記熱融着性樹脂層の厚みが20%以上80%以下になる条件で熱融着させた位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記蓄電デバイス用外装材の前記熱融着性樹脂層と、前記ポリプロピレン板とを熱融着させていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である、
蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項8B. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1B~6Bのいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0296】
1 基材層
2 接着剤層
3 バリア層
4 熱融着性樹脂層
5 接着層
6 表面被覆層
10 蓄電デバイス
20 電極体
30 電極端子
40 外装体
50 外装フィルム(蓄電デバイス用外装材)
51 基材層
52 バリア層
53 熱融着性樹脂層
54 接着剤層
55 接着層
60 蓋体
61 蓋本体
62 被覆体
70 第1封止部
80 第2封止部
【要約】
蓄電デバイスであって、
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体と、を有し、
前記外装フィルムは、少なくとも、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、エリア平均結晶粒径R2(μm)に対する、エリア平均結晶粒径R1(μm)の比(R1/R2)が、55%以上であり、
前記エリア平均結晶粒径R1(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が前記蓋体と熱融着されている位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)であり、
前記エリア平均結晶粒径R2(μm)は、前記外装フィルムの前記熱融着性樹脂層が熱融着されていない位置において、前記バリア層の圧延方向とは垂直方向であって、前記バリア層の表面から垂直方向に前記バリア層を切断して得られた断面について、EBSD法による結晶解析を行うことで取得される、エリア平均結晶粒径(μm)である、
蓄電デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12