(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】検出システムおよび検出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20250624BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20250624BHJP
G01N 21/21 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
G06T1/00 400F
G01N21/17 A
G01N21/21 Z
(21)【出願番号】P 2020076164
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2023-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2024-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】深津 公良
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 孝
【合議体】
【審判長】伊藤 隆夫
【審判官】高橋 宣博
【審判官】樫本 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-51921(JP,A)
【文献】特開平5-168610(JP,A)
【文献】特表2017-507340(JP,A)
【文献】特開2001-319233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0140463(US,A1)
【文献】国際公開第2015/114797(WO,A1)
【文献】特開2000-352697(JP,A)
【文献】紙谷卓之 外2名、「濃淡画像マッチングによる個人識別における信頼性向上」、電子情報通信学会技術研究報告、1997年、Vol.96、No.492、p.47-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06V 40/12 - 40/13
A61B 5/1172
G01N 21/00 - 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光面を有する偏光子と、
前記偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光を受光する少なくとも二つの赤外線検出素子を有する赤外線センサと、を備える撮像装置と、
照明装置と、
を備え、
前記照明装置は、
前記赤外線検出素子の検出対象の波長帯の光を、人体の残留物の付着面に対して所定の角度で照射可能に構成され、
前記撮像装置は、
前記照明装置から照射された光のうち、人体の前記残留物によって反射された
s偏光を、前記付着面に対して斜め方向から受光可能に構成される、
検出システム。
【請求項2】
前記偏光子は、
前記赤外線センサの撮影軸を中心として回転可能である請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記撮像装置は、前記残留物のフレネル反射像を撮影する、請求項1または2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記所定の角度は、前記付着面に対してブリュースター角である、請求項1または2に記載の検出システム。
【請求項5】
前記照明装置は、
前記赤外線検出素子の検出対象の波長帯の光を出射する光源と、
前記光源から出射された光のうち特定方向の偏光面を有する直線偏光を選択的に通過させる照明側偏光子と、を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項6】
前記撮像装置に対して撮像制御をするとともに、前記偏光子に対して回転制御をする検出装置を備え、
前記検出装置は、
前記撮像装置を用いて撮像された画像データから人体に由来する前記残留物を検出し、
検出された前記残留物に関する検出結果を出力する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項7】
前記検出装置は、
前記赤外線センサを用いて撮像された前記画像データから前記残留物によって形成される照合対象紋様を検出し、
検出された前記照合対象紋様から特徴点を抽出し、
指紋照合に用いられる複数の人物の対照用紋様が格納されたデータベースを検索し、
前記照合対象紋様の特徴点との一致度の高い特徴点を有する前記対照用紋様を検出し、
前記照合対象紋様に関する照合結果を出力する、請求項6に記載の検出システム。
【請求項8】
前記検出装置は、
前記照合対象紋様を検出した場合、前記偏光子を回転させて前記偏光子の偏光方向を調整することによって、前記照合対象紋様が鮮明に撮影される前記偏光方向を特定する請求項7に記載の検出システム。
【請求項9】
偏光面を有する偏光子と、前記偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光を受光する少なくとも二つの赤外線検出素子を有する赤外線センサと、を備える撮像装置と、照明装置と、を備える検出システムにおける検出方法であって、
前記照明装置が、
前記赤外線検出素子の検出対象の波長帯の光を、人体の残留物の付着面に対して所定の角度で照射可能に配置され、
前記撮像装置が、
前記照明装置から照射された光のうち、人体の残留物によって反射された
s偏光を、前記付着面に対して斜め方向から受光可能に配置され、
コンピュータが、
前記撮像装置に対して撮像制御をし、
前記撮像装置によって撮像された画像データから指紋を検出し、
検出された前記指紋に関する検出結果を出力する検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に由来する残留物の撮影に用いられる撮像装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
人体が触れた対象物には、人体に由来する残留物(付着物とも呼ぶ)が付着する。例えば、人が指先や手で触れた対象物には、その人の指紋や掌紋等の紋様が付着する。対象物に付着した指紋等の残留物は、視認しづらく、証拠として保存することが難しい。
【0003】
犯罪現場などにおいて、残留指紋を証拠として保存するには、可視カメラで撮影したときに、明瞭に記録されやすくする必要があり、その代表的な方法として、アルミ粉末法やニンヒドリン法などの方法が用いられる。アルミ粉末法では、シリカやタルク、カオリンなどを混ぜたアルミニウムの微粉末を対象物に振りかけて指紋を検出する。ニンヒドリン法では、ニンヒドリン試薬をアセトン等に溶かした薬品を指紋に吹き付けた際に、指紋に含まれるアミノ酸とニンヒドリンが反応して赤紫色になる化学反応を利用して指紋を検出する。
【0004】
アルミ粉末法やニンヒドリン法のように、指紋に粉末や液体をかける方法には、いくつかの問題点があった。例えば、アルミ粉末法は、対象物に微粉末をかけるため、対象物やその周辺が汚れてしまう。例えば、ニンヒドリン法は、指紋自体や、指紋が付着した対象物が損傷を受けやすいため、広範囲に亘って指紋があるような場合には適用しづらかった。
【0005】
特許文献1には、指紋を形成する皮脂などによる吸収率が特異的に高い波長域の光を検出用光に用いて撮像することで、指紋の顕在像を得る指紋の検出方法が開示されている。特許文献1の手法では、皮脂によって特異的に吸収される2850カイザーを中心とする狭い波長域の検出用光を用いて第1の像データを撮影する。ここで、カイザーは、センチメートル当たりの波数に相当する。例えば、2850カイザーの波長は、約3.5マイクロメートルに相当する。また、特許文献1の手法では、検出用光とは異なる波長域の基準用光を用いて第2の像データを撮影する。そして、特許文献1の手法では、第1の像データと第2の像データを比較し、視認できない指紋を顕在化する。特許文献1の手法によれば、対象物やその周辺を汚さずに、非破壊で指紋を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラスや金属などの平坦な面に付着した指紋を撮影する場合、皮脂の表面における正反射の像が主に撮影される。皮脂成分の正反射像は、特有の吸収を利用した像ではないため、狭い検出光の効果が得られない。そのため、特許文献1の手法では、ガラスや金属などの平坦な面を撮影する場合、検出用光を用いて撮影された第1の像データと、基準用光を用いて撮影された第2の像データとの差異が小さくなるため、鮮明な指紋を撮影することは難しかった。また、特許文献1の手法では、指紋が付着した対象物による反射等の影響によって、鮮明な指紋を取得することが難しかった。
【0008】
本発明の目的は、人体に由来する残留物を非破壊で鮮明に撮影できる撮像装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の撮像装置は、偏光面を有する偏光子と、偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光を受光する少なくとも二つの赤外線検出素子を有する赤外線センサと、を備える。
【0010】
本発明の一態様の検出方法は、偏光面を有する偏光子と、偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光を受光する少なくとも二つの赤外線検出素子を有する赤外線センサと、を備える撮像装置を用いた検出方法であって、コンピュータが、撮像装置に対して撮像制御をし、撮像装置によって撮像された画像データから指紋を検出し、検出された指紋に関する検出結果を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人体に由来する残留物を非破壊で鮮明に撮影できる撮像装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る撮像装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図2】人体に由来する残留物と脂肪酸エステル化合物の赤外線吸収スペクトルの一例である。
【
図3】第1の実施形態に係る撮像装置を用いて残留物を検出する一例について説明するための概念図である。
【
図4】第1の実施形態に係る撮像装置の偏光子の偏光方向に応じて検出される指紋の検出状態の一例を示す概念図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例1の撮像装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図6】第1の実施形態の変形例2の撮像装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図7】第2の実施形態に係る検出システムの構成の一例を示す概念図である。
【
図8】第2の実施形態に係る変形例1の検出システムの構成の一例を示す概念図である。
【
図9】第3の実施形態に係る検出システムの構成の一例を示す概念図である。
【
図10】第3の実施形態に係る検出システムの撮像装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図11】第3の実施形態に係る検出システムの検出装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図12】第3の実施形態に係る検出システムの検出装置の検出結果の表示例を示す概念図である。
【
図13】第3の実施形態に係る検出システムの検出装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図14】第4の実施形態に係る検出システムの構成の一例を示す概念図である。
【
図15】第4の実施形態に係る検出システムの検出装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図16】第4の実施形態に係る検出システムの検出装置の照合結果の表示例を示す概念図である。
【
図17】第4の実施形態に係る検出システムの検出装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図18】第5の実施形態に係る撮像装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図19】各実施形態に係る検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態の撮像装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の撮像装置は、人体に由来する残留物(付着物とも呼ぶ)を検出するための画像を撮像する。本実施形態の撮像装置によって撮像された画像は、人体に由来する残留物の検出に利用される。例えば、本実施形態の撮像装置は、人体に由来する残留物によって反射/散乱された赤外光を受光する。以下においては、人体に由来する残留物として、指紋を一例に挙げて説明する。例えば、人体に由来する残留物は、掌紋や足紋(足底紋)、趾紋、耳紋、鼻紋、唇紋などのように指紋以外の痕跡であってもよい。以下において、指紋や掌紋、足紋(足底紋)、趾紋、耳紋、鼻紋、唇紋、額紋、顎紋などの人体に由来する痕跡のことを紋様とも呼ぶ。なお、本実施形態における検出対象は、指紋や掌紋、足紋(足底紋)、趾紋、耳紋、鼻紋、唇紋、額紋、顎紋に限定されない。例えば、人体に由来する残留物は、血液などの体液であってもよい。例えば、本実施形態の撮像装置によって撮像された画像に基づく検出対象は、人体の接触に由来する残留物等に含まれる成分に限らず、赤外線の波長等を制御して検出できるものであれば限定を加えない。
【0015】
(構成)
図1は、本実施形態の撮像装置10の構成の一例を示す概念図である。撮像装置10は、赤外線センサ11、偏光子12、レンズ13、および冷却器14を備える。本実施形態においては、撮影対象の範囲(撮影対象範囲とも呼ぶ)が十分に明るいものとする。また、撮像装置10は、赤外線センサ11によって出力される電気信号を画像データに変換したり、変換後の画像データを出力したりする制御部(図示しない)を有する。本実施形態において、画像データは、少なくとも二つの画素分のデータを含む。
【0016】
赤外線センサ11は、赤外領域の波長帯の光を検出するセンサである。赤外線センサ11は、赤外領域の波長帯の光を受光する少なくとも二つの赤外線検出素子を有する。赤外線検出素子が二つあれば、異なる赤外線検出素子における受光の有無に応じて、残留物の有無を検出できる。例えば、赤外線センサ11は、複数の赤外線検出素子が配列された一次元または二次元センサで構成される。例えば、人体に由来する残留物の検知を目的とする場合、赤外線センサ11は、二つの赤外線検出素子で構成してもよい。また、人体の接触に由来する紋様等を検出対象とする場合、赤外線センサ11は、二次元センサとして構成する方がよい。
【0017】
赤外線センサ11は、偏光子12およびレンズ13を介して入射する赤外領域の波長帯の光を受光して電気信号に変換する。赤外線センサ11は、変換後の電気信号を出力する。例えば、赤外線センサ11は、制御部(図示しない)による制御に応じて、電気信号を出力する。赤外線センサ11から出力された電気信号は、制御部によって画像データに変換される。この画像データは、検出装置や、外部システム、外部装置等において、人体に由来する残留物を検出するための画像に変換され、表示装置等に表示することができる。例えば、赤外線センサ11によって出力された電気信号に基づく画像は、指紋等の紋様の検出や照合に用いられる。
【0018】
例えば、赤外線センサ11は、冷却型の赤外線検出素子を有するセンサである。例えば、赤外線センサ11は、量子型の赤外線検出素子を有する。例えば、赤外線センサ11は、テルル化カドミウム水銀(HgCdTe)や、アンチモン化インジウム(InSb)、ヒ化ガリウム(GaAs)、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)などのセンサ材料を含む赤外線検出素子を有する。例えば、赤外線センサ11は、ヒ化インジウム(InAs)とアンチモン化ガリウム(GaSb)を積層させたタイプ2超格子を含む量子井戸型の赤外線検出素子を有する。例えば、赤外線センサ11は、プラチナシリコン(PtSi)やゲルマニウムシリコン(GeSi)などのセンサ材料を含む赤外線検出素子を有する。なお、赤外線センサ11は、指紋等の人体に由来する残留物を検出できれば、冷却を必要としない量子型ではなくてもよいが、この波長帯では、冷却を必要とする量子型のほうが高感度であり、使われることが多い。赤外線センサ11を構成する赤外線検出素子は、検出対象の波長帯において感度の高い材料を含むものを選択すればよい。例えば、赤外線センサ11を構成する赤外線検出素子は、近赤外領域から中赤外領域(1~5マイクロメートル)の波長領域の赤外線に感度があることが好ましい。
【0019】
例えば、赤外線センサ11は、赤外領域の波長帯の光を透過する窓を有する封止部材によって真空封止される。例えば、封止部材に設けられる窓の部分には、後述するレンズ13と同様の材質のものを用いることができる。
【0020】
例えば、指紋などの人体の残留物は、水分や脂肪分、ダスト等の混合物である。脂肪分(皮脂)の主成分は、脂肪酸エステル化合物である。
図2は、脂肪酸エステル化合物の赤外線吸収スペクトルの一例(破線)である。
図2には、指紋等の人体に由来する残留物の赤外線吸収スペクトルの一例(実線)も併せて図示する。脂肪酸エステル化合物は、3.5マイクロメートルを含む波長帯(一点鎖線の枠内)に赤外線吸収特性を有する。そのため、赤外線センサ11としては、3.5マイクロメートルを含む波長帯に感度がある赤外線検出素子を含む二次元センサを用いることが好ましい。なお、脂肪酸エステル化合物以外の物質の赤外線吸収特性を利用して指紋等の残留物を検出する場合は、検出対象の物質による赤外線吸収特性の高い波長帯に感度がある赤外線検出素子を含むセンサを用いることが望ましい。
【0021】
例えば、人体に由来する残留物が形成する指紋等の紋様を検出する場合、赤外線センサ11は、そのような紋様を識別可能な画素数を有することが好ましい。例えば、指紋を検出する場合、赤外線センサ11の解像度は、少なくとも320×256ピクセルの画素数がある二次元センサによって構成することが好ましい。さらに、赤外線センサ11の解像度は、640×480ピクセル以上の画素数があることがより好ましい。赤外線センサ11の解像度は、検出対象の大きさや形状、状態等に応じて決定することが望ましい。
【0022】
偏光子12は、偏光面を有する。偏光子12は、特定方向の偏光面を有する直線偏光を選択的に通過させる。偏光子12は、赤外線センサ11の受光面側に配置される。偏光子12は、赤外線センサ11に含まれる全ての赤外線検出素子に対向して設置される。偏光子12は、入射する光の偏光方向を一方向にそろえる。偏光子12によって偏光方向がそろえられた光は、赤外線センサ11の受光面に入射される。
【0023】
例えば、偏光子12は、直線偏光を選択的に通過させる偏光子が枠内に固定された構造を有する。例えば、偏光子12の枠は、円形や楕円形、正方形、矩形、多角形などの任意の形状である。ただし、撮像装置10の筐体の内部に偏光子12を収納する場合、偏光子12の枠は、限られた空間で回転させる都合上、円形のように点対称な形状であることが好ましい。例えば、赤外線センサ11を封止部材によって真空封止する場合、封止部材の窓の部分に偏光子12の機能を追加してもよい。その場合、封止部材の窓の部分と偏光子12を一体化してもよい。
【0024】
偏光子12は、赤外線センサ11の撮影軸Pを中心軸として回転可能に設置される。偏光子12は、撮影軸Pを中心軸として回転される。例えば、偏光子12は、図示しない回転部材を介して、撮像装置10の外側から回転できる構造とする。例えば、撮像装置10を使用する作業者は、偏光子12を手動で回転させる。例えば、偏光子12は、制御装置(図示しない)の回転制御に応じて回転するように構成してもよい。
【0025】
レンズ13は、検出対象の波長帯の赤外線を集束可能なレンズである。レンズ13は、検出対象の波長帯の赤外線を赤外線センサ11の受光面に集束させる。例えば、レンズ13には、ゲルマニウム(Ge)や、シリコン(Si)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、サファイヤ(Al2O3)等の材料のレンズを用いることができる。例えば、レンズ13には、フッ化バリウム(BaF2)やフッ化カルシウム(CaF2)、フッ化リチウム(LiF)、カルコゲナイドガラス等の材料のレンズを用いることができる。レンズ13には、検出対象の波長帯の赤外線を集束可能なものを用いればよい。例えば、レンズ13は、オートフォーカス機能を搭載していることが好ましい。
【0026】
冷却器14は、赤外線センサ11を冷却する機器である。
図1においては、赤外線センサ11と冷却器14を接触させている。量子型の赤外線センサでは、暗電流等による雑音の影響を除くため冷却器14が必要である。例えば、冷却器14は、60~250ケルビン程度の温度範囲内になるように赤外線センサ11を冷却する。なお、赤外線センサ11を冷却する必要がない場合は、冷却器14を省略してもよい。例えば、冷却器14には、スターリング機構を有する冷却器、またはペルチエ効果を利用した電子冷却素子を用いる。
【0027】
図3は、撮像装置10を用いて、対象物100に付着した指紋110を検出する一例を示す概念図である。まず、指紋があると推定される対象物100に撮影軸Pを合わせて撮像装置10を配置する。このとき、撮像装置10は、治具などの固定された状態や、作業者が持った状態で撮影方向が設定される。そして、撮像装置10は、作業者の操作に応じて、撮影方向が設定された状態で、指紋110があると推定される対象物100を撮影する。対象物100に指紋110が付着していれば、偏光子12の偏光方向に応じた指紋110を含む画像が撮影される。例えば、作業者は、偏光子12を回転させて、指紋110が鮮明になるように調整する。例えば、撮像装置10には、赤外線センサ撮像装置10によって撮像された画像を表示させる表示部を併設してもよい。表示部を撮像装置10に併設すれば、撮像装置10を使用する作業者が、偏光子12を回転させた際の画像を確認しやすくなる。
【0028】
赤外領域の波長帯に吸収特性がある媒体に対して斜めに入射する光の反射率は、その光に含まれるs波とp波とで反射率が異なる。例えば、プラスチックやガラスなどのように赤外線を全反射しない媒体と、グリセリン酸エステルなどの有機物成分を主成分とする指紋とでは、赤外線の複素屈折率が異なる。撮像装置10を使用する作業者は、偏光子12を回転させることによって、媒体よりも指紋110の反射を強調できる偏向方向の光が赤外線センサ11によって受光されるように偏光子12を調整できる。
【0029】
図4は、偏光子12の偏光方向に応じて検出される指紋の検出状態の一例を示す概念図である。偏光方向Aの場合は、指紋110によって反射された偏光の大部分は、偏光子12によって遮蔽される。そのため、偏光方向Aの場合、指紋110は鮮明には検出されない。一方、偏光方向Bの場合は、指紋110によって反射された偏光の大部分が、偏光子12を通過する。そのため、偏光方向Bの場合、指紋110が鮮明に検出される。
【0030】
〔変形例〕
ここで、本実施形態の撮像装置10の変形例について例示する。以下の変形例は、一例であって、本実施形態の撮像装置10の変形例を限定するものではない。
【0031】
図5は、変形例1の撮像装置10-1の構成の一例を示す概念図である。撮像装置10-1は、
図1の撮像装置10のレンズ13の外側に偏光子12を設置する構成である。変形例1のように、レンズ13の外側に偏光子12を設置すれば、撮像装置10-1を使用する作業者が、偏光子12を手動で回転しやすくなる。
【0032】
図6は、変形例2の撮像装置10-2の構成の一例を示す概念図である。撮像装置10-2は、
図1の撮像装置10のレンズ13の外側にフィルタ15を配置する構成である。フィルタ15は、検出対象の波長帯の光を選択的に通過させるフィルタである。例えば、人体が付着したことに由来する脂肪酸エステル化合物などの残留物を検出する場合、フィルタ15には、3.5マイクロメートルを含む波長帯の赤外線を選択的に通過させるフィルタを用いればよい。検出対象の残留物に由来する波長帯の光を選択的に通過させるフィルタを用いれば、検出対象の残留物を選択的に検出できる。なお、残留物の種類によって、検出対象の波長帯が異なるため、検出対象の波長帯に応じて、フィルタ15を交換可能にしておくことが好ましい。例えば、フィルタ15は、光学特性の異なる複数のフィルタを組み合わせたものであってもよい。変形例2によれば、検出対象の波長帯の光を選択的に通過させるフィルタ15を用いることによって、指紋等の残留物に由来する波長帯の光を選択的に受光できるので、検出対象の指紋等をより鮮明に検出できる。
【0033】
以上のように、本実施形態の撮像装置は、偏光面を有する偏光子と、偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光受光する少なくとも二つの赤外線検出素子を有する赤外線センサと、を備える。本実施形態によれば、偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光を検出することによって、人体に由来する残留物を非破壊で鮮明に撮影できる。
【0034】
本実施形態の一態様において、偏光子は、赤外線センサの撮影軸を中心として回転可能である。本実施形態の一態様において、赤外線検出素子は、1~5マイクロメートルの波長帯の光に感度を有する。本実施形態の一態様において、赤外線センサの受光面側に配置され、3.5マイクロメートルを含む波長帯の光を選択的に通過させるフィルタを備える。
【0035】
本実施形態の撮像装置を使用する作業者は、偏光子を回転させながら、残留物が付着していると推定される対象物を撮影する。赤外領域の波長帯に吸収特性がある媒体に対して斜めに入射する光の反射率は、その光に含まれるs波とp波とで反射率が異なる。例えば、プラスチックやガラスなどのように赤外線を全反射しない媒体と、グリセリン酸エステルなどの有機物成分を主成分とする指紋とでは、赤外線の複素屈折率が異なる。本実施形態では、偏光子を回転させることによって、媒体よりも指紋の反射を強調できる偏向角に偏光子を調整する。その結果、本実施形態によれば、指紋等の残留物を非破壊で鮮明に撮影できる。
【0036】
例えば、ガラスなどの平坦な面に付着した指紋は、可視光でも検出できる。一方、木やプラスチックなどの平坦ではない面に付着した指紋は、可視光では検出できない。平坦ではない面で反射された光には、正反射と拡散反射が混在する。拡散反射は、可視光では検出できない。本実施形態の手法では、赤外領域の波長帯の光を用いて拡散反射も受光できるため、人体に由来する残留物を鮮明に検出できる。
【0037】
本実施形態の手法は、残留物の付着の有無を判定する用途にも適用できる。例えば、本実施形態の手法を用いれば、残留物を鮮明に検出できる画像と、残留物を検出できない画像との差分を取れば、残留物をより鮮明に検出できる。また、本実施形態の手法は、指紋に限らず、掌紋や足紋などの検知にも適用できる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る検出システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の検出システムは、指紋等の人体に由来する残留物を検出しやすくするための照明装置を備える。本実施形態では、撮像装置の偏光子の偏光方向と、照明装置の偏光子の偏光方向とのなす相対角度によって、残留物の見やすさが変化する現象を利用する。
【0039】
図7は、本実施形態の検出システム2の構成の一例を示す概念図である。検出システム2は、撮像装置20と照明装置25を備える。
図7は、撮像装置20を用いて、対象物200に付着した指紋210を検出する例である。
図7の例では、照明装置25から出射された偏光271の反射光を撮像装置20によって検出する。
【0040】
一般に、指紋等の残留物は、非常に薄いため、赤外線の吸収量が少ない。そのため、ガラスや金属などの平坦な面に付着した指紋等の残留物を撮影すると、想定したよりも残留物の吸収に伴う像を検出しにくい場合がある。そのため、フレネル反射像を積極的に活用する設定にしたほうが鮮明な像が得られやすくなる。フレネル反射像が見えるのは、ガラスやプラスチック媒体の表面の屈折率と、指紋等の残留物の屈折率とが異なることで、ブリュースタ角が異なるためである。そのため、照明装置25から出射された光は、残留物の付着面に対してブリュースタ角で照射されることが好ましい。指紋等の残留物が付着した面に対してブリュースタ角で偏光を照射すれば、p偏光は反射されないため、s偏光のみを撮像装置20に導ける。照明装置25から出射された光が非偏光であっても、ブリュースタ角で光を照射すれば、完全な偏光になる。
【0041】
撮像装置20は、赤外線センサ21および偏光子22を少なくとも有する。照明装置25は、光源26と偏光子27を有する。撮像装置20は、第1の実施形態の撮像装置10と同様である。そのため、以下においては、撮像装置10については説明を簡略化し、照明装置25に焦点を当てて説明する。
【0042】
光源26は、人体に由来する残留物を検出しやすくするための照明である。例えば、光源26は、1~5マイクロメートルを含む波長領域の赤外線(近赤外~中赤外)を出射する。例えば、光源26には、シリコンカーバイド(SiC)やニクロム(NiCr)のように、セ氏100~1000度の温度範囲の低温で動作する白熱電球のフィラメントを用いることができる。例えば、そのようなフィラメントをセ氏1000度前後で動作させれば、1~5マイクロメートルを含む波長領域の赤外線をワット級の出力で出射できる。なお、光源26に用いられるフィラメントは、検出対象の波長帯の赤外線を出射できれば、シリコンカーバイド(SiC)やニクロム(NiCr)に限定されない。例えば、ミリワット級の出力で十分であれば、光源26として発光ダイオードを用いてもよい。
【0043】
偏光子27(照明側偏光子とも呼ぶ)は、特定の方向の直線偏光を選択的に通過させる素子である。偏光子27は、光源26から出射された光を直線偏光に偏光する。偏光子27を通過した偏光は、人体に由来する残留物があると推定される対象物200に向けて照射される。
【0044】
〔変形例〕
ここで、本実施形態の検出システム2の変形例について例示する。以下の変形例は、一例であって、本実施形態の検出システム2の変形例を限定するものではない。
【0045】
図8は、本実施形態の変形例1の検出システム2-1の構成の一例を示す概念図である。検出システム2-1は、
図7の検出システム2に含まれる撮像装置20と照明装置25を単一の筐体の内部に収納する例である。検出システム2-1では、照明装置25から出射される偏光271の出射軸と、撮像装置20の撮影軸とを非平行にする。本変形例では、照明装置25から出射される偏光271の出射軸と、撮像装置20の撮影軸とが固定されるので、対象物200の表面で反射された偏光271の反射光が撮像装置20に入射する方向(撮影方向)が一定になる。そのため、本変形例によれば、安定した検出が可能になる。また、本変形例によれば、撮像装置20と照明装置25とを一体化できるので、作業者が、検出システム2-1を持ち運びやすくなる。
【0046】
以上のように、本実施形態の検出システムは、撮像装置と照明装置を備える。照明装置は、撮像装置に含まれる赤外線検出素子の検出対象の波長帯の光を出射する。本実施形態の一態様において、照明装置は、赤外線検出素子の検出対象の波長帯の光を出射する光源と、光源から出射された光のうち特定方向の偏光面を有する直線偏光を選択的に通過させる照明側偏光子と、を有する。
【0047】
本実施形態の検出システムは、検出対象の残留物が付着していると推定される対象物を照明装置によって照らすことができる。そのため、本実施形態の検出システムによれば、外光が不十分な暗い作業環境においても、人体に由来する残留物を非破壊で鮮明に検出できる。
【0048】
一般的な赤外線カメラと一般的な赤外線ランプとを組み合わせて撮影すると、赤外線カメラには、赤外線ランプの反射像などの外部環境が写り込みやすくなる。本実施形態では、撮像装置に組み込まれた偏光子の偏光方向を回しながら、指紋等の残留物を撮影する。本実施形態では、偏光子の偏光方向を適切な角度に調整することによって、偏光子が無い場合よりも鮮明な指紋像を撮影できる。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る検出システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の検出システムは、撮像装置によって出力された画像データを用いて指紋を検出する検出装置を備える。
【0050】
図9は、本実施形態の検出システム3の構成の一例を示す概念図である。検出システム3は、撮像装置30、照明装置35、および検出装置330を備える。
図9は、撮像装置30を用いて、対象物300に付着した指紋310を検出する例である。
図9の例では、照明装置35から出射された偏光371の反射光を撮像装置30によって検出する。
【0051】
撮像装置30は、赤外線センサ31および偏光子32を少なくとも有する。照明装置35は、光源36と偏光子37を有する。撮像装置30は、第1の実施形態の撮像装置10と同様である。また、照明装置35は、第2の実施形態の撮像装置20と同様である。以下においては、撮像装置30および照明装置35については説明を簡略化し、検出装置330に焦点を当てて説明する。
【0052】
検出装置330は、撮像装置30に接続される。検出装置330は、撮像装置30に有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。また、検出装置330は、ネットワーク経由(図示しない)で撮像装置30に接続されてもよい。検出装置330は、専用のサーバ装置や端末装置として構成されてもよいし、汎用のサーバ装置や端末装置にインストールされたソフトウェアによって実現されてもよい。
【0053】
検出装置330は、撮像装置30の撮像制御と、偏光子32の回転制御とを行う。検出装置330は、撮像装置30を撮像制御し、撮影対象範囲を撮像装置30に撮影させる。検出装置330は、撮像装置30によって撮影された撮影対象範囲の画像から指紋に由来する部分を検出する。例えば、検出装置330は、撮影対象範囲の画像から特徴を抽出し、その特徴が抽出された範囲の大きさや形状、その範囲に含まれる線の状態や密度などによって、その特徴が指紋に由来するか判定する。指紋に由来する特徴が検出されなかった場合、検出装置330は、偏光子32を回転制御し、赤外線センサ31に入射される偏光の偏光方向を変更する。
【0054】
例えば、検出装置330は、指紋に由来する特徴を検出すると、偏光子32を回転制御し、指紋が鮮明に検出される偏光方向を特定する。検出装置330は、指紋が鮮明に検出される偏光方向を特定すると、その偏光方向で撮影された画像データを用いて、指紋を検出するための画像(指紋画像とも呼ぶ)を生成する。検出装置330の機能のうち、偏光子37を回転制御する機能、指紋画像を生成する機能は、赤外線カメラの本体に統合してもよい。例えば、ネットワーク経由で指紋照合するシステムと統合することによって、検出装置330をポータブルに使用することができる。
【0055】
検出装置330は、検出された指紋に関する検出結果を出力する。例えば、検出装置330は、指紋310が最も鮮明に撮影された偏光方向の指紋画像を出力する。指紋画像は、指紋を用いた照合等に使用される。なお、検出装置330は、指紋を特定できれば、指紋310が最も鮮明に撮影されたわけではない画像を指紋画像として出力してもよい。検出装置330から出力された指紋画像は、表示装置(図示しない)に出力されてもよい、指紋画像を用いて指紋照合等を行うシステムに出力されてもよい。
【0056】
〔撮像装置〕
次に、撮像装置30の構成の一例について図面を参照しながら説明する。
図10は、撮像装置30の構成の一例を示す概念図である。撮像装置30は、赤外線センサ31、偏光子32、およびレンズ33に加えて、回転部材320を備える。なお、撮像装置30は、赤外線センサ31を冷却するための冷却器を含んでもよい。
【0057】
回転部材320は、偏光子32を回転させる部材である。例えば、回転部材320は、円形の偏光子32の外周に形成された歯にかみ合わせて、偏光子32を回転させる歯車によって実現できる。偏光子32を歯車によって実現する場合、歯車の中心を回転軸とし、モータ(図示しない)の回転を制御することによって、偏光子32を回転させることができる。回転部材320は、検出装置330の回転制御に応じて回転する。回転部材320が回転することによって、偏光子32が回転し、赤外線センサ31に入射される偏光の偏光方向が変更される。なお、回転部材320の構造や形状は、偏光子32を回転させることができれば、特に限定を加えない。また、回転部材320の駆動方法は、偏光子32を回転させることができれば、モータに限定されない。
【0058】
撮像装置30の偏光子32の偏光方向と、照明装置35の偏光子37の偏光方向とのなす角度が直交すると、指紋310は検出されない。一方、撮像装置30の偏光子32の偏光方向と、照明装置35の偏光子37の偏光方向とのなす角度が0度または45度の場合、指紋310が検出されやすくなる。照明装置35の偏光子37の偏光方向とのなす角度が0度(45度)の画像と90度の画像との差分を取ると、指紋310はより検出されやすくなる。そのため、検出装置330は、照明装置35の偏光子37の偏光方向とのなす角度が0度(45度)の画像と90度の画像との差分から指紋310を検出するようにしてもよい。
【0059】
〔検出装置〕
図11は、検出装置330の構成の一例を示すブロック図である。検出装置330は、偏光方向制御部331、撮像制御部332、画像処理部333、および検出部334を有する。
【0060】
偏光方向制御部331は、検出部334の指示に応じて、回転部材320の回転制御をする。偏光方向制御部331の回転制御に応じて回転部材320が回転することによって、偏光子32が回転する。また、偏光方向制御部331は、偏光子32の回転を微調整する指示に応じて、細かい回転角で時計回りや半時計回りに偏光子32を回転させるように構成してもよい。
【0061】
撮像制御部332は、撮像装置30の撮像制御をする。撮像制御部332は、撮像制御に応じて撮像された画像データを画像処理部333に出力する。
【0062】
画像処理部333は、撮像制御部332から画像データを取得する。画像処理部333は、取得された画像データに画像処理を加えて、特徴量を検出するための検出用データ(指紋画像とも呼ぶ)を生成する。例えば、画像処理部333は、画像データに対して、暗電流補正や補間演算、色空間変換、ガンマ補正、収差の補正、ノイズリダクション、画像圧縮などの画像処理のうち少なくともいずれかを行う。なお、画像処理部333による画像処理は、ここであげた限りではない。また、画像処理の必要がなければ、画像処理部333を省略してもよい。画像処理部333は、生成された検出用データを検出部344に出力する。
【0063】
検出部334は、画像処理部333から検出用データを取得する。検出部334は、取得した検出用データから指紋を検出する。検出部334は、検出された指紋に関する検出結果を出力する。また、検出部334は、より鮮明な指紋の画像を得るために、偏光子32の回転を微調整する指示を偏光方向制御部331に出力してもよい。
【0064】
図12は、検出装置330によって検出された指紋310の画像(指紋画像311)を表示装置340に表示させる例である。例えば、作業者は、表示装置340に表示された指紋画像311と、図示しないデータベース等に格納された指紋画像(対照用指紋データとも呼ぶ)とを比較し、指紋を照合する。例えば、表示装置340には、指紋画像311ではなく、その指紋画像311の抽出元の指紋310が検出された時刻や場所、状況などを表示させてもよい。例えば、表示装置340には、指紋画像311の抽出元の指紋310が検出された時刻や場所、状況などを指紋画像311と同時に表示させてもよい。
【0065】
(動作)
次に、検出装置330の動作について図面を参照しながら説明する。
図13は、検出装置330の動作について説明するためのフローチャートである。
図13においては、検出装置330を動作の主体として説明する。
【0066】
図13において、まず。検出装置330は、撮像装置30を撮像制御し、指紋310が付着していると推定される範囲を撮像装置30に撮像させる(ステップS31)。
【0067】
次に、検出装置330は、撮影された画像データを画像処理し、検出用データを生成する(ステップS32)。
【0068】
検出装置330は、検出用データから指紋が検出された場合(ステップS33でYes)、その指紋に関する検出結果を出力する(ステップS35)。
【0069】
一方、検出用データから指紋が検出されなかった場合(ステップS33でNo)、検出装置330は、偏光子32を回転制御して偏光方向を変更する(ステップS34)。ステップS34の後は、ステップS31に戻る。
【0070】
以上のように、本実施形態の検出システムは、撮像装置、照明装置、および検出装置を備える。検出装置は、撮像装置赤外線センサに対して撮像制御をするとともに、撮像装置に含まれる偏光子に対して回転制御をする。検出装置は、赤外線センサ撮像装置によって撮像された画像データから人体に由来する残留物を検出し、検出された残留物に関する検出結果を出力する。本実施形態の一態様において、検出装置は、照合対象指紋を検出した場合、偏光子を回転させて偏光子の偏光方向を調整することによって、照合対象指紋が鮮明に撮影される偏光方向を特定する。
【0071】
本実施形態によれば、撮像装置によって撮影された画像から人体に由来する残留物を検出できる。本実施形態によれば、検出装置が撮像装置や照明装置を制御することによって、人体に由来する残留物を自動的に検出することも可能になる。
【0072】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る検出システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の検出システムは、複数の人物の指紋が格納されたデータベースを検索して、撮像装置によって撮影された画像から検出された指紋を照合する検出装置を備える。
【0073】
図14は、本実施形態の検出システム4の構成の一例を示す概念図である。検出システム4は、撮像装置40、照明装置45、検出装置430、およびデータベース450を備える。データベース450には、指紋照合に用いられる複数の人物の指紋データ(対照用指紋データともよぶ)が格納される。
図14は、撮像装置40を用いて、対象物400に付着した指紋410を検出する例である。
図14の例では、照明装置45から出射された偏光471の反射光を撮像装置40によって検出する。
【0074】
撮像装置40は、赤外線センサ41および偏光子42を少なくとも有する。照明装置45は、光源46と偏光子47を有する。撮像装置40は、第1の実施形態の撮像装置10と同様である。また、照明装置45は、第2の実施形態の撮像装置20と同様である。以下においては、撮像装置40および照明装置45については説明を簡略化し、検出装置430に焦点を当てて説明する。
【0075】
検出装置430は、撮像装置40に接続される。検出装置430は、撮像装置40に有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。また、検出装置430は、ネットワーク経由(図示しない)で撮像装置40に接続されてもよい。検出装置430は、専用のサーバ装置や端末装置として構成されてもよいし、汎用のサーバ装置や端末装置にインストールされたソフトウェアによって実現されてもよい。また、検出装置430は、撮像装置40に統合してもよい。例えば、偏光子42の回転制御等の機能は撮像装置40に統合し、指紋照合や画像解析などの機能はクラウド経由でデータベース450にアクセスして行う利用形態を想定できる。そのような場合、検出装置430は、情報処理機能や通信機能を有する専用の携帯端末の形態や、ノートパソコンやスマートフォン等の汎用の携帯端末にインストールされたソフトウェアの形態で実現される。
【0076】
検出装置430は、撮像装置40の撮像制御と、偏光子42の回転制御とを行う。検出装置430は、撮像装置40を撮像制御し、撮影対象範囲を撮像装置40に撮影させる。検出装置430は、撮像装置40によって撮影された撮影対象範囲の画像から指紋に由来する部分を検出する。例えば、検出装置430は、撮影対象範囲の画像から特徴を抽出し、その特徴が抽出された範囲の大きさや形状、その範囲に含まれる線の状態や密度などによって、その特徴が指紋に由来するか判定する。指紋に由来する特徴が検出されなかった場合、検出装置430は、偏光子42を回転制御し、赤外線センサ41に入射される偏光の偏光方向を変更する。
【0077】
例えば、検出装置430は、指紋に由来する特徴を検出すると、偏光子42を回転制御し、指紋が鮮明に検出される偏光方向を特定する。検出装置430は、指紋が鮮明に検出される偏光方向を特定すると、その偏光方向で撮影された画像データを用いて、指紋を検出するための画像(指紋画像とも呼ぶ)を生成する。
【0078】
検出装置430は、指紋画像から指紋(照合対象指紋とも呼ぶ)を検出すると、その照合対象指紋から特徴点を抽出する。検出装置430は、データベース450を検索し、照合対象指紋の特徴点との一致度の高い特徴点を有する対照用指紋を検出する。検出装置430は、照合対象指紋に関する照合結果を出力する。
【0079】
〔検出装置〕
図15は、検出装置430の構成の一例を示すブロック図である。検出装置430は、偏光方向制御部431、撮像制御部432、画像処理部433、検出部434、特徴点抽出部435、および照合部436を有する。偏光方向制御部431、撮像制御部432、画像処理部433、および検出部434は、第3の実施形態の検出装置330に含まれる構成と同様である。そのため、以下においては、第3の実施形態の検出装置330に含まれない特徴点抽出部435および照合部436に焦点を当てて説明する。
【0080】
特徴点抽出部435は、検出部434によって検出された指紋(照合対象指紋とも呼ぶ)を取得する。特徴点抽出部435は、取得した照合対象指紋から特徴点を抽出する。特徴点抽出部435は、抽出された特徴点を照合部436に出力する。例えば、特徴点抽出部435は、隆線の開始点、島形の線(島形線)、独立した短い隆線(短い隆線)、隆線の終止点、隆線が繋がる接合点、隆線が分裂した分岐点、その他の点などの位置を特徴点として抽出する。
【0081】
照合部436は、特徴点抽出部435によって抽出された特徴点を取得する。照合部436は、データベース450を検索し、照合対象指紋の特徴点との一致度の高い特徴点を有する対照用指紋を検出する。照合部436は、照合対象指紋に関する照合結果を出力する。例えば、照合部436は、照合によって検出された対照用指紋に対応付けられた個人の名前などの識別情報や、個人情報を照合結果として出力する。
【0082】
また、照合部436は、検出部434から照合対象指紋を取得し、その照合対象指紋との一致度の高い対照用指紋をデータベース450から検索してもよい。そして、照合部436は、検索された対照用指紋の特徴点と、照合対象指紋の特徴点とを比較し、予め設定された照合判定基準を満たす場合、照合されたと判定してもよい。例えば、照合部436は、照合された照合用指紋と、対照用指紋の特徴点を比較し、一致度を計算する。例えば、照合部436は、複数の特徴点を比較し、一致する特徴点の割合(一致度)を計算する。また、照合部436は、隆線の形状や、隆線にある汗腺孔の形や間隔/位置などに基づいて照合してもよい。
【0083】
図16は、検出装置430による照合結果を表示装置440の画面に表示させる例である。
図16の例では、照合によって検出された対照用指紋に対応付けられた個人の名前(AAA)を、照合結果として表示装置440の画面に表示させる。作業者は、表示装置440の画面に表示された照合結果を参照することによって、照合対象指紋の人物を認識できる。
【0084】
(動作)
次に、検出装置430の動作について図面を参照しながら説明する。
図17は、検出装置430の動作について説明するためのフローチャートである。
図17においては、検出装置430を動作の主体として説明する。
【0085】
図17において、まず。検出装置430は、撮像装置40を撮像制御し、指紋410が付着していると推定される範囲を撮像させる(ステップS41)。
【0086】
次に、検出装置430は、撮影された画像データを画像処理し、検出用データを生成する(ステップS42)。
【0087】
検出装置430は、検出用データから指紋が検出された場合(ステップS43でYes)、その指紋から特徴点を抽出する(ステップS45)。
【0088】
一方、検出用データから指紋が検出されなかった場合(ステップS43でNo)、検出装置430は、偏光子42を回転制御して偏光方向を変更する(ステップS44)。ステップS44の後は、ステップS41に戻る。
【0089】
ステップS45の次に、検出装置430は、データベース450を検索し、照合対象指紋の特徴点との一致度の高い特徴点を有する対照用指紋を検出する指紋照合を行う(ステップS46)。
【0090】
そして、検出装置430は、照合結果を出力する(ステップS47)。
【0091】
以上のように、本実施形態の検出システムは、撮像装置、照明装置、および検出装置を備える。撮像装置に含まれる赤外線センサは、人体に由来する残留物が形成する紋様を識別可能な画素数を有する。検出装置は、撮像装置によって撮像された画像データから残留物によって形成される照合対象紋様を検出し、検出された照合対象紋様から特徴点を抽出する。本実施形態の検出装置は、紋様照合に用いられる複数の人物の対照用紋様が格納されたデータベースを検索し、照合対象紋様の特徴点との一致度の高い特徴点を有する対照用紋様を検出する。本実施形態の検出装置は、照合対象紋様に関する照合結果を出力する。
【0092】
本実施形態の検出システムの照合結果は、紋様照合によって人を識別するシステムに適用できる。また、本実施形態の検出システムの照合結果は、識別された紋様を辿って追跡するサービスなどにも適用できる。
【0093】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る撮像装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の撮像装置は、第1~第4の実施形態の撮像装置を簡略化した構成である。
【0094】
図18は、本実施形態の撮像装置50の構成の一例を示すブロック図である。撮像装置50は、赤外線センサ51および偏光子52を備える。偏光子52は、偏光面を有する。赤外線センサ51は、偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光を受光する少なくとも二つの赤外線検出素子を有する。
【0095】
以上のように、本実施形態の撮像装置は、偏光面を有する偏光子と、偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光を受光する少なくとも二つの赤外線検出素子を有する赤外線センサと、を備える。本実施形態によれば、偏光子を通過した赤外領域の波長帯の光を検出することによって、人体に由来する残留物を非破壊で鮮明に撮影できる。
【0096】
(ハードウェア)
ここで、本発明の各実施形態に係る検出装置の処理を実行するハードウェア構成について、
図19の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、
図19の情報処理装置90は、各実施形態の検出装置の処理を実行するための構成例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0097】
図19のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図19においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0098】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを主記憶装置92に展開し、展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る検出装置による処理を実行する。
【0099】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置92として構成・追加してもよい。
【0100】
補助記憶装置93は、種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって構成される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0101】
入出力インターフェース95は、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0102】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続するように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成とすればよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0103】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0104】
以上が、本発明の各実施形態に係る検出装置を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、
図19のハードウェア構成は、各実施形態に係る検出装置の演算処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る検出装置に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録した記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。また、記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体や、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現してもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0105】
各実施形態の検出装置の構成要素は、任意に組み合わせることができる。また、各実施形態の検出装置の構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよいし、回路によって実現してもよい。
【0106】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0107】
2、3、4 検出システム
10、20、30、40 撮像装置
11、21、31、41、51 赤外線センサ
12、22、32、42、52 偏光子
13、33 レンズ
14 冷却器
15 フィルタ
25、35、45 照明装置
26、36、46 光源
27、37、47 偏光子
50 撮像装置
320 回転部材
330、430 検出装置
331、431 偏光方向制御部
332、432 撮像制御部
333、433 画像処理部
334、434 検出部
340、440 表示装置
435 特徴点抽出部
436 照合部
450 データベース