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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20250624BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20250624BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20250624BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20250624BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20250624BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/31
A61K8/39
A61K8/81
A61K8/86
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020533550
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2019029721
(87)【国際公開番号】W WO2020027076
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018142359
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】松原 惇高
(72)【発明者】
【氏名】尾島 晃司郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一明
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】野田 定文
【審判官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100258号公報(JP,A)
【文献】特開2010-254677号公報(JP,A)
【文献】特開2011-148716号公報(JP,A)
【文献】特開2012-214448号公報(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098747(WO,A1)
【文献】特開2012-111723号公報(JP,A)
【文献】特開2012-1500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)0.1~5質量%の炭素数14~22の高級アルコールから選択される少なくとも1種;
(B)0.1~1質量%の親水性の非イオン性界面活性剤;
(C)20~35質量%の油分;及び
(D)0.7~1.2質量%の水溶性増粘剤を含有する水中油型乳化化粧料であって、
前記(B)親水性の非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレン(2~50)アルキルエーテルからなり、
前記(C)油分が、化粧料全量に対して2~4質量%の(C1)固形油分と、(C2)液状油分とを含み、
前記(C2)液状油分がスクワランを含み、
前記(D)水溶性増粘剤におけるポリビニルアルコールの配合量が0.3質量%以下であり、
アニオン性界面活性剤を含まないことを特徴とする化粧料。
【請求項2】
前記(C1)固形油分が、マイクロクリスタリンワックスである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(D)水溶性増粘剤が、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーからなる、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記(C2)液状油分が、非揮発性炭化水素油及び揮発性炭化水素油を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記揮発性炭化水素油がイソドデカンを含む、請求項4に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。より詳細には、適度な硬さがあり、塗布した際のフィット感に優れ、肌のうるおいやハリ感を実現できる、特に目元用に使用するのに適した水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
人の顔等の皮膚は、加齢、乾燥、紫外線等の外部刺激により、ハリや弾力を失い、たるみやしわを生じることが知られている。これらの肌トラブルをケアするには保湿することが有効であり、保湿剤を配合した保湿クリーム等の皮膚外用剤等によって、しわやたるみを防ぎ、うるおいのある若々しい肌の状態を維持又は改善することが従来から行われていた。
【0003】
皮膚にハリ感を付与する皮膚外用剤には、ポリビニルアルコールを代表例とする皮膜剤が配合されており、同時に配合する他の成分や配合量を調整することによって、べたつきの抑制や保存安定性の向上等が図られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献2には、ハリ感を付与できる水中油型乳化組成物において、配合した塩型美白剤の経時安定性を改善したことが開示されている(特許文献2)。
【0005】
顔の中でも目の周囲(目元)は、他の部分より皮膚が薄く、毛細血管が透けて見えるため血流が滞ると暗くみえる「くま」となりやすい、また、まばたきによる皮膚の動きも激しいので、メラニン量が増加したり乾燥が促進されたりする。その結果、ハリを失いやすく、しわやたるみも生じやすい上、それらは目立つ傾向がある。
【0006】
目元の皮膚は感覚が敏感であるため、従来の皮膜剤を配合した皮膚外用剤では、皮膚のツッパリ感を生じて不快感を与える場合があった。特許文献3では、目元用に特化された化粧料を開示し、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性モノマーの共重合体、アセチル化ヒアルロン酸及び多価アルコールを配合することにより、皮膚のハリの低下、しわやたるみの発生を改善しながら、つっぱり感を生じないとされている。
【0007】
しかしながら、前記の特許文献1~3に記載されたような従来の化粧料(外用剤)は、粘度が低く肌へのフィット感に欠ける場合があった。特に目元に適用する化粧料においては、適度な硬さを付与することにより肌へのフィット感等の使用感を向上することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-148716号公報
【文献】特開2012-031088号公報
【文献】特開2005-068073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、塗布時はなめらかさを保持しつつ、皮膚にハリ感やしっとり感(うるおい)を与え、なおかつ肌へのフィット感等の使用感に優れた化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、高級アルコール及び親水性非イオン性界面活性剤を含有する水中油型乳化化粧料において、油分中に所定量の固形油分を配合し、水相中には所定量の水溶性増粘剤を配合して所定値以上の粘度とすることにより、肌に弾力やハリ感をもたらす効果があり、塗布時は柔らかくなめらかな感触でありながら、肌へのフィット感に優れ、しっとりした感触を与えながらつっぱり感を生じない化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、
(A)炭素数14~22の高級アルコールから選択される少なくとも1種;
(B)親水性の非イオン性界面活性剤;
(C)油分;及び
(D)0.5~1.5質量%の水溶性増粘剤を含有する水中油型乳化化粧料であって、
前記(C)油分が、化粧料全量に対して1~5質量%の(C1)固形油分と、(C2)液状油分とを含み、
化粧料の硬度(針8φ、25℃)が5~19であることを特徴とする化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水中油型乳化化粧料によれば、肌に弾力やハリ感をもたらす効果があり、塗布時は柔らかくなめらかな感触でありながら、肌へのフィット感に優れ、肌に弾力やハリ感及びしっとりした感触を与えながらつっぱり感を生じない。また、塩型の美白薬剤を配合しても、その経時安定性に優れ、優れた美白効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水中油型乳化化粧料(以下、単に「乳化化粧料」とも称する)は、(A)炭素数14~22の高級アルコールから選択される少なくとも1種;(B)親水性の非イオン性界面活性剤;(C)油分;及び(D)水溶性増粘剤を含有する。
以下に各成分について詳述する。
【0014】
本発明の乳化化粧料における成分(A)は、炭素数14~22の高級アルコールである。具体例としては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールなどを挙げることができる。これらの高級アルコールの1種又は2種以上が用いられる。
特に、直鎖状の飽和アルキル基を有するものが好ましく、中でも、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコールから選択される1種以上が含まれていることが好ましい。
【0015】
本発明の乳化化粧料における、高級アルコール(成分A)の配合量は、通常は0.01~10質量%、好ましくは0.05~8質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。
【0016】
本発明の乳化化粧料における成分(B)は、親水性の非イオン性界面活性剤である。本明細書における「親水性」とは親水性基と親油性基との相対的な強さによって決まるHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)の値が8以上、好ましくは10以上ものを意味するものとする。
【0017】
本発明における親水性の非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択するのが好ましく、特に、直鎖状の飽和アルキル鎖とポリオキシエチレン鎖とがエーテル結合により結合した構造を有するものが好ましい。
【0018】
本発明において使用される親水性の非イオン性界面活性剤(成分B)としては、ポリオキシアルキレン鎖の平均モル数が2~50、好ましくは10~30のもの、すなわち、ポリオキシエチレン(2~50)アルキルエーテル、好ましくはポリオキシエチレン(10~30)アルキルエーテルが挙げられる。
【0019】
具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(11)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(30)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(30)ベヘニルエーテル等が挙げられ、これらの中でも、ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテルが特に好ましく使用される。
【0020】
本発明の乳化化粧料における、親水性のポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量は、通常は0.01~10質量%、好ましくは0.05~8質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。
【0021】
本発明の乳化化粧料における(C)油分は、(C1)固形油分及び(C2)液状油分を含有する。
(C1)固形油分とは、常温(25℃)常圧(1気圧(9.8×10Pa))で流動性を示さない固体状であり、例えば、融点が約100℃以上の油分と定義することができる。
固形油分の具体例としては、パラフィンワックス(直鎖炭化水素)、マイクロクリスタリンワックス(分岐飽和炭化水素)、セレシンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素ワックス、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ヒマシ油などの固体油脂、酢酸ステアリン酸スクロース、エチレングリコール脂肪酸(C18~30)エステルなどの極性ワックス、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラロウ、コメヌカロウ(ライスワックス)、ゲイロウ、ホホバ油、ヌカロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、ポリオキシエチレン(以下「POE」と略記する)ラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどのロウ類、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸などの高級脂肪酸、 (アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、アクリレーツ/アクリル酸ベヘニル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、アルキルメチコン、アルキルジメチコン、アルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオンサン、ステアロキシトリメチルシランなどのシリコーンワックス等が挙げられる。これらの中でも、炭化水素ワックスが好ましく、マイクロクリスタリンワックスが特に好ましい。但し、(A)成分に該当する固形の高級アルコールは(C1)固形油分には含まれない。
【0022】
本発明の乳化化粧料は、(C)油分中に(C1)固形油分を含むことを必須としており、それによって化粧料の適度な硬さを維持している。
(C1)固形油分の配合量は、化粧料全量に対して1~5質量%、好ましくは1.5~4.5質量%、より好ましくは2~4質量%である。
【0023】
本発明における(C2)液状油分とは、常温(25℃)常圧(1気圧(9.8×10Pa))で流動性を有する液体状であり、例えば、融点が25℃以下の油分と定義することができる。液状油分は、その性質に基づいて、非揮発性油と揮発性油とに分類される。
【0024】
本明細書における非揮発性液状油は、常温(25℃)常圧(1気圧(9.8×10Pa))で揮発性を示さない(例えば、常圧での沸点が約200℃以上の油分が該当する)液状油分を意味し、例えば、炭化水素油、植物油等の液状油脂、エステル油、高分子量のポリオキシアルキレングリコール、シリコーン油等が含まれる。
【0025】
非揮発性液状油の具体例としては、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、肝油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等の液状油脂;オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等のイソオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。非揮発性シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン(6cs)、メチルポリシロキサン(20cs)、メチルポリシロキサン(100cs)、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0026】
本発明の化粧料に配合される揮発性油には、揮発性炭化水素油及び揮発性シリコーン油が含まれる。
揮発性炭化水素油は、従来から化粧料等に使用されている常温(25℃)常圧(1気圧(9.8×10Pa))で揮発性を有する炭化水素油(例えば、沸点が200℃未満の炭化水素)であれば特に限定されない。具体例としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等を挙げることができる。
【0027】
揮発性シリコーン油は、従来から化粧料等に使用されている常温(25℃)常圧(1気圧(9.8×10Pa))で揮発性を有するシリコーン油(例えば、沸点が200℃未満のシリコーン油)であり、揮発性の直鎖状シリコーン油(揮発性ジメチコン)及び揮発性の環状シリコーン油(揮発性シクロジメチコン)が含まれる。
【0028】
揮発性ジメチコンとしては、デカメチルテトラシロキサン等の低粘度(例えば、30℃における粘度が100~500mPa・s程度の)ジメチルポリシロキサンを用いることができ、市販品としては、KF-96L-1.5cs、KF-96L-2cs(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。揮発性シクロジメチコンとしては、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0029】
本発明の乳化化粧料では、少なくとも1種の非揮発性炭化水素油及び少なくとも1種の揮発性炭化水素油を組み合わせて配合するのが好ましい。中でも、非揮発性炭化水素油としてスクワラン、揮発性炭化水素油としてイソドデカンを選択するのが好ましい。このような態様とすることにより、化粧料を塗布するときの使用感触を更に向上させることができる。
【0030】
また、本発明の乳化化粧料における(C)油分は、一般的には前記の(C1)固形油分又は(C2)液状油分に分類されない他の油分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合してもよい。他の油分の例としては、(C3)半固形油分及び(C4)油性紫外線吸収剤が挙げられる。
【0031】
(C3)半固形油分は、常温(25℃)常圧(1気圧(9.8×104Pa))で若干の流動性を示すが、(C2)液状油分には該当しない油、(例えば、融点が約100℃未満かつ沸点が200℃以上の油)である。例えば、ワセリン、水添パーム油、パーム核油、マカデミアナッツ油フィトステリル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット等が挙げることができる。
【0032】
(C4)油性紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、アミルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジ-p-メトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニルベンゾフェノン-2-カルボキシレート等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0033】
本発明の乳化化粧料における(C)油分の配合量は、特に限定されないが、(C1)固形油分及び(C2)液状油分、任意に(C3)半固形油分及び(C4)油性紫外線吸収剤の合計で、化粧料全量に対して、好ましくは10~40質量%、好ましくは15~38質量%、より好ましくは20~35質量%である。
【0034】
本発明の乳化化粧料にあっては、前記(A)高級アルコール、(B)親水性の非イオン性界面活性剤、(C2)液状油分が外相の水とともに、いわゆるα-ゲル構造を形成することにより安定な乳化を維持していると考えられる。
【0035】
本発明の乳化化粧料における(D)水溶性増粘剤は、化粧料に通常使用可能な水溶性増粘剤である。
具体例として、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミドなどのアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸などの無機系水溶性高分子、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー等が挙げられる。本発明の乳化化粧料は、ハリ感を与えるとされているポリビニルアルコールを含まなくてもよく、含む場合の配合量は0.3質量%以下である。
【0036】
前記に加えて、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)などの植物系高分子;デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンなどの動物系高分子;デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン系高分子等;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末などのセルロース系高分子等;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子等が例示できる。
【0037】
本発明においては、(D)水溶性増粘剤として、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーを用いるのが、適度な硬さを付与する点から特にこの好ましい。
【0038】
本発明の乳化化粧料における(D)水溶性増粘剤の配合量は0.5~1.5質量%の範囲内であり、好ましくは0.6~1.3質量%、より好ましくは0.7~1.2質量%である。水溶性増粘剤(D成分)の配合量が0.5質量%に満たないと適度な硬さが実現できず、1.5質量%を超えて配合するとべたつきを生じることがある。
【0039】
本発明の乳化化粧料は、その硬度(レオメーター、針8φ、25℃)が5~19、好ましくは8~19であることを特徴としている。硬度を前記のように調整することにより、塗布した際のフィット感に優れたものとなる。
【0040】
本発明者らは、乳化化粧料を塗布した際のフィット感が、以下の方法で測定した平均振動エネルギーと相関することを見出した。
【0041】
・平均振動エネルギーの測定方法
被験者の一方の手の人差し指の爪がある側に、3軸加速度センサ(例えば、株式会社テック技販製、型式:A3AX)を装着する。他方の手の前腕内側の肌に、化粧料を20μL滴下して広げる。広がった化粧料の表面(2cm×6cmの領域)に前記人指し指を接触させながら、0.1~0.5Nの力を加えたまま、前記人差し指の指先を1往復/1秒の速さで移動させる。前記の動作を、化粧料を滴下して広げた直後(0秒)から60秒間続け、その間の振動を前記の3軸加速度センサにより検出する。次いで、3軸加速度センサで検出された振動データを短時間フーリエ変換することにより、各秒、各周波数における振動エネルギーを算出する。
【0042】
前記の方法で得られた平均振動エネルギーと化粧料(基剤)のフィット感との相関を検討したところ、平均振動エネルギーが以下の条件のいずれか1つ、好ましくは2つ以上を満たす化粧料のフィット感が特に優れることが判明した。
(1)化粧料を滴下して広げた後20秒~60秒における80~90Hzの周波数範囲において、3.75×10-6より大きく5.31×10-6以下、好ましくは3.80×10-6以上かつ5.31×10-6以下。
(2)化粧料を滴下して広げた後40秒~60秒における10~20Hzの周波数範囲において、6.21×10-5より大きく9.14×10-5以下、好ましくは6.25×10-5以上かつ9.14×10-5以下。
(3)化粧料を滴下して広げた直後(0秒)~30秒における150~200Hzの周波数範囲において、8×10-7より大きく2×10-6以下。
(4)化粧料を滴下して広げた直後(0秒)~30秒における300~500Hzの周波数範囲において、3.4×10-7より大きく1.5×10-6以下。
(5)化粧料を滴下して広げた後30秒~60秒における150~300Hzの周波数範囲において、1.41×10-6より大きく2.2×10-6以下。
【0043】
前記の条件の中で、条件(1)と条件(2)の両方を満たす化粧料とするのが、優れたフィット感という観点で特に好ましい。
従って、後述する請求項1に記載した配合成分、配合量、及び硬度の要件を満たすように乳化化粧料を調製し、調製した乳化化粧料について前述の方法に準じて平均振動エネルギーを測定し、平均振動エネルギーが上記(1)及び(2)の条件を満たす化粧料を選択することにより、フィット感に特に優れた本発明の乳化化粧料を得ることができる。
【0044】
本発明の乳化化粧料には、上記成分以外に、通常化粧品や医薬部外品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、保湿剤、粉末成分、美白剤などの各種薬剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0045】
保湿剤としては、例えば、多価アルコール、ヒアルロン酸及びその誘導体、トレハロース等の糖アルコール、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、尿素、ジグリセリンエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0046】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0047】
粉末成分としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、金雲母、合成雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、窒化ホウ素等の無機粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ポリメチルシルセスキオキサン粉末、セルロース粉末等の有機粉末、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、群青、紺青等の無機顔料、酸化チタンコーティッドマイカ、酸化チタンコーティッドオキシ塩化ビスマス、着色酸化チタンコーティッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料、アルミニウムパウダー等の金属粉末顔料、赤色201号、赤色202号、橙色203号、黄色205号、黄色401号、青色404号等の有機顔料、赤色3号、黄色4号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキ等の有機顔料、クロロフィル、β-カロチン等の天然色素等が挙げられる。合成樹脂エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン等が挙げられる。
【0048】
各種薬剤としては、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンA及びその誘導体、アルコキシサリチル酸及びその誘導体、アルブチン、コウジ酸等の他の美白剤が挙げられる。
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤などが挙げられる。
【0049】
本発明の水中油型乳化化粧料は、乳液、クリーム、美容液、ファンデーション、化粧下地等の形態で提供することができ、特に限定されるものではない。本発明の乳化化粧料は、適度な硬さを有するため、アイクリーム等の目元用化粧料に特に適している。
【実施例
【0050】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
【0051】
(試験例1~4)
下記表1に示す処方で水中油型乳化化粧料を調製した。次いで、調製した各水中油型乳化化粧料の特性評価を行った。評価方法は以下の通りである。
【0052】
<平均振動エネルギーによるフィット感の測定>
・測定方法
各例の乳化化粧料を用いて、前記段落0041に記載した方法に準じて平均振動エネルギーを測定した。そして、(1)化粧料を滴下して広げた後20秒~60秒における80~90Hzの周波数範囲、及び、(2)化粧料を滴下して広げた後40秒~60秒における10~20Hzの周波数範囲における平均振動エネルギーを算出した。結果を表1に記載する。
【0053】
<官能試験>
評価方法を以下に示す。
専門パネル20名により、肌へ適用後のべたつきのなさを評価した。
A(良好):優れていると評価したパネルが15名以上
B(やや不良):優れていると評価したパネルが8名以上14名以下
C(不良):優れていると評価したパネルが7名以下
評価項目は、フィット感、しっとり感、ハリ感、浸透感、べたつきのなさ、クリームのなめらかさ及びやわらかさとした。
【0054】
【表1】
【0055】
上記の表1に示した結果から、化粧料(基剤)がフィット感を示す平均振動エネルギーの値は以下の範囲内にあることが示された。
(1)化粧料を滴下して広げた後20秒~60秒における80~90Hzの周波数範囲において、3.75×10-6より大きく5.31×10-6以下;及び
(2)化粧料を滴下して広げた後40秒~60秒における10~20Hzの周波数範囲において、6.21×10-5より大きく9.41×10-5以下。
【0056】
以下、さらに本発明の他の実施例を示す。
なお、以下の表2に示す組成の水中油型乳化化粧料(実施例)についても前記と同様の特性評価を行ったところ、いずれも優れた結果が得られた。
【0057】
【表2】