IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-円筒形電池 図1
  • 特許-円筒形電池 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/152 20210101AFI20250624BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/559 20210101ALI20250624BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20250624BHJP
【FI】
H01M50/152
H01M50/107
H01M50/167
H01M50/545
H01M50/559
H01M50/342 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022512010
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012179
(87)【国際公開番号】W WO2021200440
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2020062247
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 匠
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525793(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157750(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/026527(WO,A1)
【文献】特開2011-249168(JP,A)
【文献】特開2020-021676(JP,A)
【文献】特開平10-092397(JP,A)
【文献】特開2005-108584(JP,A)
【文献】国際公開第2019/120225(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とがセパレータを介して巻回された電極体と、電解質と、前記電極体及び前記電解質を収容する有底円筒状の外装缶と、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口板と、を有する円筒形電池であって、
前記封口板は、前記外装缶の開口部にかしめ固定されるフランジ部と、前記フランジ部よりも径方向内側に形成される端子部と、前記フランジ部と前記端子部とを接続する薄肉部と、を有し、
前記薄肉部は、前記封口板の径方向内側から外側に向かって上方へ傾斜するように形成され、前記端子部の外周面および前記フランジ部の内周面をそれぞれ上下方向に上部、中央部及び下部に3等分したとき、前記端子部の外周面の下部のみと前記フランジ部の内周面の上部のみとを接続するように形成される、
円筒形電池。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒形電池であって、
前記薄肉部は、前記封口板の径方向内側から外側に向かって先細り状となるように形成される、
円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形電池は、電極体及び電解質を収容する有底円筒状の外装缶と、外装缶の開口部を塞ぐ封口体とを有する(例えば、特許文献1)。上記円筒形電池の封口体は、外部端子板と内部端子板とが絶縁板を介して積層されて構成される。
【0003】
封口体には、板状部材(以下、封口板)のみから構成されるものもある。このような封口板は、上記円筒形電池の封口体と比較して部品点数を削減することができるため、製造コストを削減することができる。また、上記円筒形電池の封口体と比較して厚みを小さくすることができるため、外装缶の内容積を大きくすることができ、エネルギー密度の高い電池を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/157749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、封口板には、電池に異常が発生して内圧が上昇したときに破断する薄肉部が形成されるが、この薄肉部が、封口板を外装缶の開口部にかしめ固定する際に、変形して封口板の上面位置が変動する場合がある。この結果、封口板を備える円筒形電池の全高がばらつくおそれもある。
【0006】
本開示の目的は、封口板のかしめ時に封口板の変形を抑制することができる円筒形電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である円筒形電池は、正極板と負極板とがセパレータを介して巻回された電極体と、電解質と、電極体及び電解質を収容する有底円筒状の外装缶と、外装缶の開口部を塞ぐ封口板と、を有する円筒形電池であって、封口板は、外装缶の開口部にかしめ固定されるフランジ部と、フランジ部よりも径方向内側に形成される端子部と、フランジ部と端子部とを接続する薄肉部と、を有し、薄肉部は、封口板の径方向内側から外側に向かって上方へ傾斜するように形成され、端子部の外周面の中央部から下方とフランジ部の内周面の中央部から上方とを接続するように形成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、封口板のかしめ時に封口板の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の一例である円筒形電池の断面図である。
図2図2は、実施形態の一例である封口板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本開示の実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料及び個数は例示であって、円筒形電池の仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1を用いて、実施形態の一例である円筒形電池10について説明する。図1は、円筒形電池10の断面図である。
【0012】
図1に示すように、円筒形電池10は、電極体14と、電解質と、電極体14及び電解質を収容する外装缶20と、外装缶20の開口部を塞ぐ封口板30とを有する。電極体14は、正極板11と、負極板12と、セパレータ13とを含み、正極板11と負極板12とがセパレータ13を介して渦巻き状に巻回された構造を有する。また、以下では、説明の便宜上、円筒形電池10の封口板30側(外装缶20の開口部側)を上、外装缶20の底面部20A側を下とする。
【0013】
正極板11は、正極芯体と、当該芯体の少なくとも一方の面に形成された正極合剤層とを有する。正極芯体には、アルミニウム、アルミニウム合金等、正極板11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質、アセチレンブラック等の導電剤、及びポリフッ化ビニリデン等の結着剤を含み、正極芯体の両面に形成されることが好ましい。正極活物質には、例えばリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。正極板11は、正極芯体上に正極活物質、導電剤、及び結着剤等を含む正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、塗膜を圧縮して正極合剤層を芯体の両面に形成することにより製造できる。
【0014】
負極板12は、負極芯体と、当該芯体の少なくとも一方の面に形成された負極合剤層とを有する。負極芯体には、銅、銅合金等の負極板12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質、及びスチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の結着剤を含み、負極芯体の両面に形成されることが好ましい。負極活物質には、例えば黒鉛、シリコン含有化合物等が用いられる。負極板12は、負極芯体上に負極活物質、結着剤等を含む負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、塗膜を圧縮して負極合剤層を芯体の両面に形成することにより製造できる。
【0015】
電解質には、例えば非水電解質が用いられる。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、エステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。電解質の種類は特に限定されず、水系電解質であってもよい。
【0016】
円筒形電池10は、電極体14の上下にそれぞれ配置された絶縁板15,16を有する。図1に示す例では、正極板11に接続された正極リード17が絶縁板15の貫通孔を通って封口板30側に延び、負極板12に接続された負極リード18が絶縁板16の外側を通って外装缶20の底面部20A側に延びている。正極リード17は封口板30の端子部32の底面に溶接等で接続され、封口板30が正極外部端子となる。負極リード18は外装缶20の底面部20Aの内面に溶接等で接続され、外装缶20が負極外部端子となる。
【0017】
円筒形電池10は、上述したように、外装缶20と、外装缶20の開口部を塞ぐ封口板30とを有する。外装缶20は、底面部20Aと側面部20Bとを含む、有底円筒状の金属製容器である。底面部20Aは円板状を呈し、側面部20Bは底面部20Aの外周縁に沿って円筒状に形成される。封口板30は、外装缶20の開口部にガスケット21を介してかしめ固定される。
【0018】
より詳細には、封口板30は、外装缶20の溝入れ部20Cによって支持され、外装缶20のかしめ部20Dによってかしめ固定される。溝入れ部20Cは、外装缶20の開口部近傍において側面部20Bの一部が内側に張り出して、外装缶20の周方向に沿って環状に形成される。かしめ部20Dは、開口端部において外装缶20の周方向に沿って環状に形成される。
【0019】
図2を用いて、封口板30について説明する。図2は、封口板30の断面図である。
【0020】
封口板30は、上述したように外装缶20の開口部を塞ぐ部材である。封口板30は、平面視において略円板状に形成され、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金の板材のプレス加工により作製される。封口板30は、円筒形電池10の異常時に円筒形電池10の内圧が上昇すると円筒形電池10の内部のガスを排気する機能を有する。
【0021】
図2に示すように、封口板30は、外装缶20の開口部にかしめ固定されるフランジ部31と、フランジ部31よりも径方向内側に形成される端子部32と、フランジ部31と端子部32とを接続する薄肉部33とを有する。
【0022】
フランジ部31は、外装缶20の溝入れ部20Cによって支持され、外装缶20のかしめ部20Dによってかしめ固定される部分である。フランジ部31は、略環状に形成される。フランジ部31の内周面31Aには、薄肉部33の外端部33Bが接続される。以下では、フランジ部31の内周面31Aを上下方向に3等分したときのそれぞれの部分を上部、中央部及び下部とする。内周面31Aの上部は、少なくとも内周面31Aの上端を含む。
【0023】
端子部32は、正極リード17が接合される部分であって正極内部端子となる。複数の円筒形電池10が組電池として構成される際に円筒形電池10同士を接続するために、端子部32及びフランジ部31のいずれかの上面にリード板を接合することができる。端子部32は、略円板状に形成される。端子部32の外周面32Aには、薄肉部33の内端部33Aが接続される。以下では、端子部32の外周面32Aを上下方向に3等分したときのそれぞれの部分を上部、中央部及び下部とする。外周面32Aの下部は、少なくとも外周面32Aの下端を含む。
【0024】
薄肉部33は、円筒形電池10の内圧が上昇した場合に破断する部分である。また、薄肉部33は、上述したように端子部32とフランジ部31とを接続する部分である。薄肉部33は、略環状に形成される。
【0025】
薄肉部33は、封口板30の径方向内側から外側に向かって上方へ傾斜するように形成される。例えば、薄肉部33の上面及び底面が共に径方向内側から外側に向かって上方へ傾斜するように形成される。また、薄肉部33の上面の傾斜角度は、薄肉部33の底面の傾斜角度よりも小さくなるように形成されることが好ましい。
【0026】
薄肉部は、封口板の径方向の内側から外側に向かって先細り状となるように形成される。例えば、薄肉部33では、外端部33Bの厚み(上下方向の長さ)が内端部33Aよりも小さくなるように形成される。また、薄肉部33では、外端部33Bの厚みが最小となるように形成されることが好ましい。
【0027】
円筒形電池10の内圧が上昇した場合には、封口板30がガスの圧力によって上方に押圧され、薄肉部33が径方向内側から外側に向かって上方へ傾斜した状態から下方へ傾斜する状態に反転し、薄肉部33の外端部33Bが破断してガスの排出口が形成される。
【0028】
薄肉部33では、内端部33Aが端子部32の外周面32Aの中央部から下方(中央部及び下部)と接続され、外端部33Bがフランジ部31の内周面31Aの中央部から上方(中央部及び上部)と接続される。ここで、外周面32Aの中央部から下方と接続されるとは、外周面32Aの中央部から下方の部分の少なくとも一部に接続されることであって、内周面31Aの中央部から上方と接続されるとは、内周面31Aの中央部から上方の部分の少なくとも一部に接続されることである。
【0029】
より好ましくは、薄肉部33では、内端部33Aが端子部32の外周面32Aの下部と接続され、薄肉部33の下面が端子部32の下面に連続するように形成される。また、薄肉部33では、外端部33Bがフランジ部31の内周面31Aの上部と接続され、薄肉部33の上面がフランジ部31の上面に連続するように形成される。
【0030】
円筒形電池10によれば、封口板30のかしめ時に封口板30の変形を抑制することができる。より詳細には、封口板30のかしめ時に薄肉部33の変形量を抑制することできるため、端子部32の上下位置の変動を抑制することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【0032】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0033】
<実施例1>
[封口板の作製]
アルミニウムの板材をプレス加工して封口板を作製した。封口板において、外装缶の開口部にかしめ固定される略環状のフランジ部を形成し、フランジ部よりも径方向内側に略円板状の端子部を形成し、端子部とフランジ部とを接続する薄肉部を形成した。薄肉部は、封口板の径方向内側から外側に向かって上方へ傾斜するように形成した。薄肉部は、端子部の外周面の下部とフランジ部の内周面の上部とを接続するように形成した。
【0034】
[電池ケースの作製]
鉄鋼板にニッケルメッキが施された有底円筒状の外装缶を塑性加工して、円周状の溝入れ部を形成した。外装缶の開口部をガスケットが挿入された封口板を用いてかしめ加工して封止して、電極体及び電解質を有さない空の電池ケースを作製した。
【0035】
<実施例2>
封口板の薄肉部を端子部の外周面の下部とフランジ部の内周面の中央部とを接続するように形成した以外は実施例1に係る電池ケースと同様として電池ケースを作製した。
【0036】
<比較例1>
封口板の薄肉部を端子部の外周面の下部とフランジ部の内周面の下部とを接続するように形成した以外は実施例1に係る電池ケースと同様として電池ケースを作製した。
【0037】
<比較例2>
封口板の薄肉部を端子部の外周面の中央部とフランジ部の内周面の中央部とを接続するように形成した以外は実施例1に係る電池ケースと同様として電池ケースを作製した。
【0038】
<比較例3>
封口板の薄肉部を端子部の外周面の上部とフランジ部の内周面の上部とを接続するように形成した以外は実施例1に係る電池ケースと同様として電池ケースを作製した。
【0039】
[封口板の断面観察]
上記のように作製した電池ケースのうち封口板をエポキシ樹脂へ埋め込み、当該エポキシ樹脂の硬化後に封口板の断面が現れるように切断し、封口板の断面を観察した。表1に薄肉部の形状及び接続位置とともに結果をまとめて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1では、薄肉部の変形量がほとんど無く、端子部の上下位置の変動もほとんど無かった。実施例2では、薄肉部が傾斜から水平になるように少し変形し、端子部の上下位置が少しに上方へ移動した。比較例1、3では、薄肉部が傾斜から水平になるように変形し、端子部の上下位置が大きく上方へ移動した。比較例2では、薄肉部が大きく変形し、端子部の上下位置が大きく移動した。
【0042】
以上の結果から、薄肉部が、封口板の径方向内側から外側に向かって上方へ傾斜するとともに、端子部の外周面の中央部から下方とフランジ部の内周面の中央部から上方に接続されることが好ましいことがわかる。さらに、実施例1の薄肉部の変形抑制効果が顕著なことから、薄肉部が端子部の外周面の下部とフランジ部の内周面の上部に接続されることがより好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0043】
10 円筒形電池、11 正極板、12 負極板、13 セパレータ、14 電極体、15 絶縁板、16 絶縁板、17 正極リード、18 負極リード、20 外装缶、20A 底面部、20B 側面部、20C 溝入れ部、20D かしめ部、21 ガスケット、30 封口板、31 フランジ部、31A 内周面、32 端子部、32A 外周面、33 薄肉部、33A 内端部、33B 外端部
図1
図2