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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-24
(45)【発行日】2025-07-02
(54)【発明の名称】使用済み脱硝触媒の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/92 20060101AFI20250625BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20250625BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20250625BHJP
   B01J 38/48 20060101ALI20250625BHJP
   B01J 38/60 20060101ALI20250625BHJP
   B01J 38/64 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
B01J23/92 A
B01D53/96 500
B01J23/30 A
B01J23/92 A ZAB
B01J38/48 A
B01J38/60
B01J38/64
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018141835
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020015029
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】兼田 慎平
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】原 賢一
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-094534(JP,U)
【文献】特開2000-037635(JP,A)
【文献】特開昭64-080444(JP,A)
【文献】特開2016-203066(JP,A)
【文献】特開2010-247125(JP,A)
【文献】特開2012-152672(JP,A)
【文献】特開2011-131122(JP,A)
【文献】特開2005-074408(JP,A)
【文献】特開昭49-012646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
B01D53/86-53/90,53/94-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バブリングによる洗浄液の撹拌、
使用済み脱硝触媒からの触媒毒の除去、
洗浄液からの触媒毒の除去、および
洗浄液からの触媒毒の除去が行われた洗浄液の、使用済み脱硝触媒からの触媒毒の除去にての再利用
を行うことを含み、
バブリングによる洗浄液の撹拌は、洗浄液に流れを生じさせ、
使用済み脱硝触媒からの触媒毒の除去は、流れる洗浄液を使用済み脱硝触媒に接触させ、使用済み脱硝触媒に付着していた触媒毒を洗浄液に溶解させることからなり、
洗浄液からの触媒毒の除去は、上記撹拌によって流れる洗浄液を吸着剤含有成形体に接触させ、使用済み脱硝触媒からの触媒毒の除去において洗浄液に溶解させられた触媒毒を吸着剤含有成形体に吸着させることからなり、
吸着剤含有成形体は、酸化チタンを含む成形体またはゼオライトを含む成形体であり且つ上記撹拌が生じさせた洗浄液の流れによって動かないように固定床内に納まっており、
使用済み脱硝触媒は、ハニカム、プレートまたはコルゲートボードの形状を成しており且つ吸着剤含有成形体から区分けされている、
使用済み脱硝触媒の再生方法。
【請求項2】
触媒毒が、ヒ素である、請求項1に記載の使用済み脱硝触媒の再生方法。
【請求項3】
洗浄液が、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液または酸化マンガン懸濁液である、請求項1または2に記載の使用済み脱硝触媒の再生方法。
【請求項4】
吸着剤含有成形体の形が、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、サドル、スルザーパッキング、ビーズ、ペレット、バー、プレート、またはシリンダである、請求項1~3のいずれかひとつに記載の使用済み脱硝触媒の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済み脱硝触媒の再生方法に関する。より詳細に、本発明は、洗浄液の寿命を延ばし、洗浄液を繰り返し使用することによって、使用済み脱硝触媒を安価に再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み脱硝触媒を再生して、脱硝装置において再利用することが、検討されている。しかし、使用済み脱硝触媒の再生に要する費用が、新品の脱硝触媒の製造に要する費用に比べて、低くなければ、再生された脱硝触媒の産業的な価値は低いと言わざるを得ない。これまでに様々な使用済み脱硝触媒の再生方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、酸化チタンを主成分とする使用済み脱硝触媒を、酸化チタン粒子を分散させたスラリと接触させた後、液切り、引き続き乾燥処理することを特徴とする使用済み脱硝触媒の再生方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、酸化チタンを主成分とする使用済み脱硝触媒を、示性式WmZnO2n・NH2O(Z=Si+Al、N=不定、W= Ca、Ba、Sr)で示されるゼオライトを分散させたスラリと接触させた後、液切り、引き続き乾燥することを特徴とする使用済み脱硝触媒の再生方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-247125号公報
【文献】特開2012-152672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、洗浄液の寿命を延ばし、洗浄液を繰り返し使用することによって、使用済み脱硝触媒を安価に再生する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0008】
〔1〕 使用済み脱硝触媒と洗浄液を接触させて使用済み脱硝触媒から触媒毒を洗浄液に溶解させて除去し、
触媒毒が溶解された前記洗浄液を固定床内に納まる吸着剤含有成形体に接触させ触媒毒を吸着剤含有成形体に吸着させて洗浄液から触媒毒を除去し、
次いで、触媒毒が除去された前記洗浄液を使用済み脱硝触媒から触媒毒を溶解させて除去することに再利用することを含む、
使用済み脱硝触媒の再生方法。
【0009】
〔2〕 触媒毒が、ヒ素である、〔1〕に記載の使用済み脱硝触媒の再生方法。
〔3〕 吸着剤含有成形体が、酸化チタンを含む成形体またはゼオライトを含む成形体である、〔1〕または〔2〕に記載の使用済み脱硝触媒の再生方法。
〔4〕 洗浄液が、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液または酸化マンガン懸濁液である、〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の使用済み脱硝触媒の再生方法。
【0010】
〔5〕 吸着剤含有成形体の形が、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、サドル、スルザーパッキング、ビーズ、ペレット、バー、プレート、またはシリンダである、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載の使用済み脱硝触媒の再生方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の再生方法は、(A)除去した触媒毒または触媒毒を吸着した吸着剤が脱硝触媒に付着し難いので、使用済み脱硝触媒の再生のために洗浄液を繰り返し使用しても、再生効率が低下し難い、(B)吸着剤含有成形体を洗浄液から容易に分離できる、(C)吸着剤含有成形体に触媒毒が濃縮されて集められるので、触媒毒の吸着された吸着剤含有成形体の廃棄処理は、触媒毒が溶解された洗浄液の廃棄処理に比べて、費用が安価である、などの効果を奏する。その結果、再生触媒を安価に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図2】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図3】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図4】バブリングによって固定床内を陰圧にして洗浄液を吸い込む構造を示す図である。
図5】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図6】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図7】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図8】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図9】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図10】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図11】本発明に用いられる装置の一例を示す図である。
図12】洗浄液中のAs23濃度の推移を示す図である。
図13】洗浄液のAs23除去能(触媒中のAs23残存率)の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の使用済み脱硝触媒の再生方法は、(1)使用済み脱硝触媒と洗浄液を接触させて使用済み脱硝触媒から触媒毒を洗浄液に溶解させて除去し、(2)触媒毒が溶解された前記洗浄液を固定床内に納まる吸着剤含有成形体に接触させ触媒毒を吸着剤含有成形体に吸着させて洗浄液から触媒毒を除去し、(3)次いで、触媒毒が除去された前記洗浄液を使用済み脱硝触媒から触媒毒を溶解させて除去することに再利用することを含む。
【0014】
本発明の再生方法の対象となる脱硝触媒は、脱硝装置において使用したものであれば特に限定されない。脱硝触媒は、例えば、ハニカム、プレート、コルゲートボードなどの形状を成していることができる。脱硝触媒の活性成分としては、チタンの酸化物、モリブデンおよび/またはタングステンの酸化物、ならびにバナジウムの酸化物を含有して成るもの(チタン系触媒); CuやFeなどの金属が担持されたゼオライトなどのアルミノケイ酸塩を主に含有して成るもの(ゼオライト系触媒); チタン系触媒とゼオライト系触媒とを混合して成るものなどを挙げることができる。これらのうちチタン系触媒が好ましい。
【0015】
チタン系触媒の例としては、Ti-V-W触媒、Ti-V-Mo触媒、Ti-V-W-Mo触媒等を挙げることができる。
Ti元素に対するV元素の割合は、V25/TiO2の重量百分率として、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。Ti元素に対するMo元素および/またはW元素の割合は、(MoO3+WO3)/TiO2の重量百分率として、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0016】
触媒の調製において、チタンの酸化物の原料として、酸化チタン粉末または酸化チタン前駆物質を用いることができる。酸化チタン前駆物質としては、酸化チタンスラリ、酸化チタンゾル;硫酸チタン、四塩化チタン、チタン酸塩、チタンアルコキシドなどを挙げることができる。本発明においては、チタンの酸化物の原料として、アナターゼ型酸化チタンを形成するものが好ましく用いられる。
バナジウムの酸化物の原料として、五酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸バナジル等のバナジウム化合物を用いることができる。
タングステンの酸化物の原料として、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン、塩化タングステン等を用いることができる。
モリブデンの酸化物の原料として、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデンなどを用いることができる。
【0017】
本発明に用いられる脱硝触媒には、助触媒または添加物として、Pの酸化物、Sの酸化物、Alの酸化物(例えば、アルミナ)、Siの酸化物(例えば、ガラス繊維)、Zrの酸化物(例えば、ジルコニア)、石膏(例えば、二水石膏など)、ゼオライトなどが含まれていてもよい。これらは、粉末、ゾル、スラリ、繊維などの形態で、触媒調製時に用いることができる。
【0018】
使用済み脱硝触媒に付着している触媒毒としては、ヒ素、リン、アルカリ成分などを挙げることができる。本発明の再生方法は、ヒ素の付着した使用済み脱硝触媒に好適である。
【0019】
本発明に用いられる洗浄液としては、例えば、水(好ましくは軟水)、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、酸化マンガン懸濁液などを挙げることができる。これらのうち、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液が好ましく、酸性水溶液がより好ましい。酸性水溶液としては、シュウ酸、クエン酸などの有機酸の水溶液、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸の水溶液、塩酸、フッ化水素酸などのハロゲン化水素の水溶液などを挙げることができる。アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、アンモニア水、アミンの水溶液などを挙げることができる。
【0020】
使用済み脱硝触媒と洗浄液を接触させる方法は特に限定されない。例えば、噴霧法、噴射法、浸漬法などを挙げることができる。これらのうち浸漬法が好ましい。使用済み脱硝触媒1をカゴ7に収納して、洗浄液2に浸漬してもよい。使用済み脱硝触媒と洗浄液との接触は、2段階にて行うことができる。第一段階において、使用済み脱硝触媒と水などからなる洗浄液とを接触させる。第一段階においては、灰などが主に除去される。第二段階において、使用済み脱硝触媒と酸性水溶液などからなる洗浄液とを接触させる。第二段階においては、ヒ素などの触媒毒が主に除去される。
【0021】
本発明に用いられる吸着剤含有成形体は、ヒ素などの触媒毒を吸着する物質を含有する成形体、好ましくは酸化チタンを含む成形体またはゼオライトを含む成形体である。吸着剤含有成形体は、固液接触の効率の良い形にすることができる。吸着剤含有成形体の形としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、サドル、スルザーパッキング、ビーズ、ペレット、バー、プレート、シリンダ(円筒)などを挙げることができる。吸着剤含有成形体は、その大きさが、好ましくは目開き0.84mmの篩上物、より好ましくは目開き2mmの篩上物である。吸着剤含有成形体の大きさの上限は固定床内に納まる限り特に制限されない。
プレート状吸着剤含有成形体は、吸着剤そのものを板状に成形してなるものであってもよいし、吸着剤を板状基材に付着させて成るものであってもよい。板状基材としては、メタルラス、パンチングメタルなどの金属基材、セラミック基材、ガラス繊維などの繊維からなる織布基材または不織布基材などからなるものを挙げることができる。シリンダ状吸着剤含有成形体は、吸着剤そのものを円筒状に成形してなるものであってもよいし、吸着剤を円筒状基材に付着させて成るものであってもよい。円筒状基材としては、セラミック基材などからなるものを挙げることができる。
【0022】
固定床は、吸着剤含有成形体が洗浄液の流れによって動かないようにしたものであれば、その形態によって特に制限されない。例えば、吸着剤含有成形体が通り抜けない程度の目開きをした、目皿、網、不織布、織布などで仕切られたところに吸着剤含有成形体を収納する構造、塔や槽に吸着剤含有成形体を充填する構造、洗浄液の流れによって動かない程度の重さを有する吸着剤含有成形体を槽の底部に沈めてなる構造などを挙げることができる。また、本発明においては、固定床として、複数枚のプレート状吸着剤含有成形体を板面間に隙間を開けて枠内に納めてユニット化したもの、複数本のシリンダ状吸着剤成形体を束ねてユニット化したものなどを用いることができる。
【0023】
固定床は、洗浄液と吸着剤含有成形体とを接触させることができる限り、その設置場所によって制限されない。固定床の設置場所としては、例えば、洗浄槽の中の底部(図1~4)、洗浄槽の中の壁際(図6~8)、洗浄槽の外(図9~11)などを挙げることができる。接触時間は、触媒中の触媒毒の減少度合いに応じて設定することができる。
【0024】
脱硝触媒表面および吸着剤含有成形体表面の境膜を薄くするために、洗浄液を撹拌することが好ましい。撹拌は、撹拌機によって行ってもよいし、空気などの気体を送り込んで行ってもよい。洗浄液を撹拌したときに吸着剤含有成形体が動かないようにすることが好ましい。
【0025】
洗浄液と吸着剤含有成形体との接触効率を高めることができる装置の例を以下に示す。
【0026】
図1に示す装置は、洗浄槽の中の底部に吸着剤含有成形体(ビーズ)3を敷き詰めてなる固定床4を設置し、その上にバブリングパイプ6を配置して空気5を供給し、バブリングによって洗浄液2を撹拌できるようになっている。使用済み脱硝触媒1を吊ラグ8の付いたカゴ7に収納し、カゴ7ごと、洗浄液2に浸漬することができる。
【0027】
図2に示す装置は、洗浄槽の中の底部に吸着剤含有成形体(プレート)3'を板面間に隙間を開けて平積みしてなる固定床4を設置し、その上にバブリングパイプ6を配置して空気5を供給し、バブリングによって洗浄液2を撹拌できるようになっている。使用済み脱硝触媒1を吊ラグ8の付いたカゴ7に収納し、カゴ7ごと、洗浄液2に浸漬することができる。
【0028】
図3に示す装置は、洗浄槽の中の底部に吸着剤含有成形体(プレート)3'を板面間に隙間を開けて縦置きに深いカゴ7に収納してなる固定床4を設置し、その下にバブリングパイプ6を配置して空気5を供給し、バブリングによって洗浄液2を撹拌できるようになっている。使用済み脱硝触媒1を浅いカゴ7に収納し、カゴ7ごと、洗浄液2に浸漬することができる。触媒が再生されたときに、浅いカゴ7を引き上げることによって再生触媒を取り出すことができる。また、吸着剤含有成形体(プレート)3'の吸着能が低下したときに、深いカゴ7を引き上げることによって使用済み吸着剤含有成形体(プレート)3'を取り出すことができる。
【0029】
図4に示す装置は、洗浄槽の中の底部に吸着剤含有成形体(ビーズ)3を充填してなる固定床4を設置し、その下にバブルノズル機構9を具備したバブリングパイプ6を配置して空気5を供給する。図5に示すようなバブルノズル機構9を、固定床4を貫通するように設置し、これによるバブリングによって固定床内が陰圧になり、洗浄液2が固定床内に吸い込まれるようにすることができる。
【0030】
図6に示す装置は、洗浄槽の中の壁際に吸着剤含有成形体(ビーズ)3を充填してなる固定床4を設置している。堰7'によって使用済み脱硝触媒を浸漬する領域と、固定床4の領域とに区切っている。中央部において洗浄液をバブリングによって上昇させ、壁際において洗浄液を下降させる構造を有している。図7に示す装置は、吸着剤含有成形体(プレート)3'を板面間に隙間を開けて縦置きに収納してなる固定床4を設置している以外は図6に示す装置と同じである。図8に示す装置は、吸着剤含有成形体(シリンダ)3”を束ねて縦置きに収納してなる固定床4を設置している以外は図6に示す装置と同じである。
【0031】
また、図9に示す装置は、吸着剤含有成形体(ビーズ)3を充填してなる固定床4を洗浄槽の外に設置し、洗浄液をポンプで循環させる構造を有している。図10に示す装置は、吸着剤含有成形体(プレート)3'を板面間に隙間を開けて縦置きに収納してなる固定床4を設置している以外は図9に示す装置と同じである。図11に示す装置は、吸着剤含有成形体(シリンダ)3”を束ねて縦置きに収納してなる固定床4を設置している以外は図9に示す装置と同じである。図10または図11に示す装置では固定床4の圧力損失が図9に示す装置よりも低いので、低い動力のポンプであっても洗浄液の循環を行うことができる。
【0032】
洗浄液に接触させた後の脱硝触媒は、液切りし、乾燥または焼成することができる。洗浄液に接触させた後の脱硝触媒、またはその後乾燥もしくは焼成された脱硝触媒は、活性成分が所定量を下回っていることがある。そのようなときは、活性成分を補充することができる。活性成分の補充は、例えば、硫酸バナジル(別名:オキシ硫酸バナジウム(IV))やメタバナジン酸アンモニウムなどのバナジウム化合物、タングステン酸アンモニウムまたはモリブデン酸アンモニウムなどのタングステンまたはモリブデン化合物などの溶液を含浸させ、液切りし、乾燥または焼成する。焼成は、好ましくは200~400℃の温度にて行う。
【0033】
一般に、洗浄液は、触媒毒除去能が所定のレベルを維持している間は繰り返し使用することができる。触媒毒除去能が所定のレベル以下になったときに、新しい洗浄液を注ぎ足すかまたは交換する。交換によって発生する使用済み洗浄液は廃棄処理される。
本発明においては、吸着剤含有成形体によって触媒毒が洗浄液から除去される。触媒毒が除去された洗浄液は、従来の洗浄液に比べて触媒毒除去能が高いので、より多くの使用済み脱硝触媒の再生に繰り返して使用することができる。その結果、使用済み洗浄液の廃棄量が従来よりも減る。触媒毒を吸着した吸着剤含有成形体の廃棄処理は、触媒毒の溶解している使用済み洗浄液の廃棄処理に比べて、安価である。それらのことによって使用済み脱硝触媒の再生にかかる費用を大幅に減らすことができる。
【0034】
次に、実施例と比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。
【0035】
実施例
図1に示すような洗浄槽を用意した。洗浄液(シュウ酸5%の水溶液)100mlを、洗浄槽に溜めた。二酸化チタンの顆粒(目開き2mm篩上物)を洗浄液に10重量%添加し、バルリングパイプの下に敷き詰めた。
再生処理:洗浄液の温度を60℃に調整した。使用済み脱硝触媒(As23含有量0.79重量%、脱硝率43.5%)1枚を洗浄槽に浸漬した。空気を送り込みバブリングによって洗浄液を撹拌した。二酸化チタンの顆粒は撹拌によっても動かなかった。なお、使用済み脱硝触媒は、SUS430製メタルラス基板に、チタン、タングステン及びバナジウムの酸化物を主成分とする触媒成分(Ti/W/V原子比=96/5/1)を塗布させてなる100mm×100mmの板状を成すものである。浸漬開始から1時間後に、脱硝触媒を取り出した。液切りし、350℃で乾燥させて、再生脱硝触媒を得た。
【0036】
洗浄液を取り替えずに別の使用済み脱硝触媒(As23含有量0.79重量%、脱硝率43.5%)の再生処理をさらに9回行った。各再生処理終了時に洗浄液中のAs23濃度を測定した。結果を図12に示す。10回の再生処理で得られた再生脱硝触媒10枚の脱硝率およびAs23含有量をそれぞれ測定した。平均脱硝率は56.5%であった。洗浄前の触媒中のAs23含有量に対する再生処理後の触媒中のAs23含有量の比(As23残存率)を算出した。結果を図13に示す。図13中の「Ave.」は平均値を表す。
【0037】
比較例
二酸化チタンの顆粒(目開き2mm篩上物)を洗浄液に添加しなかった以外は実施例と同じ方法で再生処理を7回行った。各再生処理終了時に洗浄液中のAs23濃度を測定した。結果を図12に示す。7回の再生処理で得られた再生脱硝触媒7枚の脱硝率およびAs23含有量をそれぞれ測定した。平均脱硝率は52.3%であった。洗浄前の触媒中のAs23含有量に対する再生処理後の触媒中のAs23含有量の比(As23残存率)を算出した。結果を図13に示す。
【0038】
図12に示すように、比較例においては洗浄液のAs23濃度が使用回数の増加に伴って高くなるが、実施例においては使用回数が増加しても洗浄液のAs23濃度が高くても200ppm程度である。また、図13に示すように比較例においては5回目辺りから触媒中のAs23残存率が下がり難いが、実施例においては10回目まで触媒中のAs23残存率が低い。
これらのことから、本発明の方法によると、再生処理によって洗い出された触媒毒が洗浄液中に多く残らないので、次の再生処理において洗浄液から脱硝触媒に触媒毒が戻るということが生じ難い。また、本発明の方法によると、同じ洗浄液使用回数でも脱硝触媒に残るヒ素が少ない、すなわち触媒除去能が高く維持され、再生触媒の平均脱硝率が高い。
【符号の説明】
【0039】
1:使用済み脱硝触媒
2:洗浄液
3:吸着剤含有成形体(ビーズ)
3’:吸着剤含有成形体(プレート)
3”:吸着剤含有成形体(シリンダ)
4:固定床
5:空気
6:バブリングパイプ
7:カゴ
7’:堰
7”:目皿
8:吊りラグ
9:バブルノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13