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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-24
(45)【発行日】2025-07-02
(54)【発明の名称】同軸フラットケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20250625BHJP
   H01B 11/00 20060101ALI20250625BHJP
   H01B 11/20 20060101ALI20250625BHJP
   H01R 12/51 20110101ALI20250625BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B11/00 G
H01B11/20
H01R12/51
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020076536
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021174644
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
【審判番号】
【審判請求日】2024-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】323004813
【氏名又は名称】株式会社TOTOKU
(74)【代理人】
【識別番号】110003904
【氏名又は名称】弁理士法人MTI特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 順盟
(72)【発明者】
【氏名】中山 毅安
(72)【発明者】
【氏名】山崎 哲
(72)【発明者】
【氏名】今村 博人
【合議体】
【審判長】吉田 美彦
【審判官】山崎 慎一
【審判官】脇岡 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-280772号公報(JP,A)
【文献】特開2013-247117号公報(JP,A)
【文献】特開2019-67518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01R 12/51
H01B 11/00
H01B 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に間隔を空けて並べて配された複数本の同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルの端末部以外の中間部の少なくとも端末部の片面又は両面から貼り合わされて該少なくとも端末部を一体化する樹脂テープとを有し、前記同軸ケーブルそれぞれが端末加工されて基板又はコネクタに半田接続される同軸フラットケーブルにおいて、前記複数本の同軸ケーブルのそれぞれの間に、隣り合う前記同軸ケーブルに接した形態で配置されて前記間隔を確保する金属部材が配され、前記金属部材は、同軸ケーブルの長手方向において、少なくとも同軸構造となる部分に配され、該金属部材は該同軸ケーブルの外部導体とともに前記基板又はコネクタの共通GNDに半田接続される、ことを特徴とする同軸フラットケーブル。
【請求項2】
前記同軸ケーブルは、中心導体と、該中心導体の外周に設けられた絶縁体と、該絶縁体の外周に設けられた外部導体と、該外部導体の外周に設けられた外被体とを少なくとも備える、請求項1に記載の同軸フラットケーブル。
【請求項3】
前記金属部材は、前記中心導体の外周の前記絶縁体が設けられた部分に少なくとも配置され、その先端が前記中心導体の先端と前記外部導体の剥離部又は剥離予定部の先端側との間に位置するように配置される、請求項2に記載の同軸フラットケーブル。
【請求項4】
前記金属部材が金属線である場合、該金属線の外径をD1とし、前記同軸ケーブルの外径をD2としたときD1/D2が0.5~1.5の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の同軸フラットケーブル。
【請求項5】
前記樹脂テープは、(a)前記同軸ケーブルの前記中間部を両面から挟んで一体化するカバーテープ、(b)前記同軸ケーブルの前記中間部の端末部に設けられる補強テープ、又は、(c)前記同軸ケーブルの前記中間部を両面から挟んで一体化するカバーテープと、前記同軸ケーブルの前記中間部の端末部で前記カバーテープの片面に貼り合わされる補強テープ、である、請求項1~4のいずれか1項に記載の同軸フラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸フラットケーブルに関し、さらに詳しくは、液晶テレビやサーバ等の電子機器内又は電子機器間で用いられ、インピーダンスの変動を抑制でき、同軸ケーブルを均一なピッチとして基板への接続を容易とした同軸フラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットケーブルは、加工性及び可撓性に優れ、電子機器の内部配線材や外部配線材として広く用いられている。特に高周波信号の伝搬に好適なフラットケーブルとして、複数の同軸ケーブルを利用した同軸フラットケーブルが提案されている。例えば、特許文献1には、中心導体径が大きく、且つ仕上がり外径が小さく、安定した高周波特性を示す同軸フラットケーブルが提案されている。この同軸フラットケーブルは、所定の間隔で並列に配された複数本の同軸ケーブルと、複数本の同軸ケーブルの少なくとも端末部を片面又は両面から一体化する固定テープとを有する同軸フラットケーブルにおいて、同軸ケーブルは、中心導体と、中心導体の外周に設けられた、長手方向に連続する空隙部を有する誘電体層と、誘電体層の外周に設けられた外部導体と、外部導体の外周に設けられた絶縁層とを少なくとも備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-67518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の同軸フラットケーブルは、各同軸ケーブルを端末加工して基板やコネクタ等に接続される。同軸ケーブルの端末加工は、外被体を剥がして外部導体を露出させ、さらにその外部導体と絶縁体を剥がして中心導体を露出させる。露出させた外部導体と中心導体は、それぞれに対応した基板電極にはんだ付けされる。このとき、外部導体が剥離された部分はインピーダンスの不整合が発生し、伝送特性が悪くなるという問題がある。
【0005】
また、同軸ケーブルは、基板電極のピッチに合わせて配置するが、そのピッチが同軸ケーブルの外径よりも大きいことが多く、同軸ケーブル間に適当な隙間を設けた同軸フラットケーブルを製造する必要がある。しかし、各同軸ケーブルは円形でずれやすく、基板電極に安定してはんだ付け可能なように同軸ケーブル間の隙間を所定の間隔に保つのが難しい。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、インピーダンスの変動を抑制でき、同軸ケーブ間を所定の間隔に保って基板への接続を容易とした同軸フラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る同軸フラットケーブルは、幅方向に間隔を空けて並べて配された複数本の同軸ケーブルと、前記複数本の同軸ケーブルの少なくとも端末部の片面又は両面から貼り合わされて該端末部を一体化する樹脂テープとを有し、前記複数本の同軸ケーブルそれぞれが端末加工されて基板又はコネクタに半田接続される同軸フラットケーブルにおいて、隣り合う前記同軸ケーブル間の少なくとも該同軸ケーブルの同軸構造となる部分に金属部材が配され、該金属部材は該同軸ケーブルとともに前記基板又はコネクタに半田接続される、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、金属部材が隣り合う同軸ケーブル間であって少なくとも同軸ケーブルの同軸構造となる部分に配されているので、外部導体のない同軸構造部(絶縁体が露出した部分)には少なくとも配置される。そして、そうした金属部材は同軸ケーブルとともに基板又はコネクタに半田接続されているので、同軸ケーブルの外部導体と共通GNDとしてつながっている。そのため、絶縁体が露出した部分でのインピーダンスの変動を抑制することができる。さらに、金属部材が隣り合う同軸ケーブル間に配されているので、同軸ケーブル間を所定の間隔に保つことができる。
【0009】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記同軸ケーブルは、中心導体と、該中心導体の外周に設けられた絶縁体と、該絶縁体の外周に設けられた外部導体と、該外部導体の外周に設けられた外被体とを少なくとも備える。
【0010】
この発明によれば、金属部材が配置される同軸構造部は、端末加工した後に同軸構造ではなくなる中心導体の露出部分には任意に配置されるが、外部導体が剥離された絶縁体の露出部分には必ず配置される。その結果、少なくとも絶縁体が露出した部分でのインピーダンスの変動を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記金属部材は、その先端が前記中心導体の先端と前記外部導体の剥離部又は剥離予定部の先端側との間に位置するように配置される。
【0012】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記金属部材が金属線である場合、該金属線の外径をD1とし、前記同軸ケーブルの外径をD2としたとき、D1/D2が0.5~1.5の範囲内である。
【0013】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記樹脂テープは、(a)前記複数本の同軸ケーブル全体を両面から挟んで一体化するカバーテープ、(b)前記複数本の同軸ケーブルの端末部に設けられる補強テープ、又は、(c)前記複数本の同軸ケーブル全体を両面から挟んで一体化するカバーテープと、前記複数本の同軸ケーブルの端末部で前記カバーテープの片面に貼り合わされる補強テープ、である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インピーダンスの変動を抑制でき、同軸ケーブル間を所定の間隔に保って基板への接続を容易とした同軸フラットケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る同軸フラットケーブルの一例を示す斜視図である。
図2】本発明に係る同軸フラットケーブルの他の一例を示す斜視図である。
図3】本発明に係る同軸フラットケーブルの他の一例を示す斜視図である。
図4】同軸フラットケーブルの断面図であり、(A)は図1の同軸フラットケーブルであり、(B)は図2の同軸フラットケーブルであり、(C)は図3の同軸フラットケーブルである。
図5】同軸フラットケーブルを構成する同軸ケーブルの断面図であり、(A)は中実絶縁体の例であり、(B)は中空絶縁体の例である。
図6】端末加工した後の同軸フラットケーブルの一例を示す平面図である。
図7図6の同軸フラットケーブルを基板にはんだ付けした後の一例を示す平面図(A)と、側面図(B)である。
図8】端末加工した後の同軸フラットケーブルの他の一例を示す平面図である。
図9図8の同軸フラットケーブルを基板にはんだ付けした後の一例を示す平面図(A)と、側面図(B)である。
図10】端末加工した後の従来の同軸フラットケーブルの例を示す平面図である。
図11図10の同軸フラットケーブルを基板にはんだ付けした後の例を示す平面図(A)と、側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る同軸フラットケーブルの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
【0017】
本発明に係る同軸フラットケーブル20は、図1図6に示すように、幅方向Xに間隔を空けて並べて配された複数本の同軸ケーブル10と、それら同軸ケーブル10の少なくとも端末部21を片面又は両面から一体化する樹脂テープ11とを有し、前記複数本の同軸ケーブル10それぞれが端末加工されて基板30等に半田接続される同軸フラットケーブル20において、隣り合う同軸ケーブル間の少なくとも該同軸ケーブル10の同軸構造となる部分に金属部材7が配され、その金属部材7は同軸ケーブル10とともに基板30等に半田接続される、ことに特徴がある。
【0018】
この同軸フラットケーブル20は、金属部材7が隣り合う同軸ケーブル間であって少なくとも同軸ケーブル10の同軸構造となる部分に配されているので、外部導体3のない同軸構造部(絶縁体2が露出した部分)には少なくとも配置される。そして、そうした金属部材7は同軸ケーブル10とともに基板30又はコネクタに半田接続されているので、同軸ケーブル10の外部導体3と共通GND(GND部材は図示していない。)としてつながっている。そのため、絶縁体2が露出した部分でのインピーダンスの変動を抑制することができる。さらに、金属部材7が隣り合う同軸ケーブル間に配されているので、同軸ケーブル間を所定の間隔に保つことができる。
【0019】
以下、同軸フラットケーブルの各構成要素を説明する。
【0020】
<同軸ケーブル>
同軸ケーブル10は、同軸フラットケーブル20を構成するものであり、図1図3に示すように、幅方向Xに間隔を空けて複数本並べて配されている。同軸ケーブル10は、図5に示すように、中心導体1と、中心導体1の外周に設けられた絶縁体2と、絶縁体2の外周に設けられた外部導体3と、外部導体3の外周に設けられた外被体4とを少なくとも備えている。そして、同軸ケーブル10は、図6図9に示すように、端末部21を端末加工した後、露出した中心導体1及び外部導体3が基板30又はコネクタの電極31,32に半田接続される。
【0021】
(中心導体)
中心導体1は、図5(A)(B)に示すように、同軸ケーブル10の長手方向Yに延びる1本の素線で構成されるもの、又は複数本の素線を撚り合わせて構成されるものである。素線は、良導電性金属からなるものであればその種類は特に限定されないが、銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線、銅アルミニウム複合線等の良導電性の金属導体、又はそれらの表面にめっき層が施されたものを好ましく挙げることができる。高周波用の観点からは、銅線、銅合金線が特に好ましい。めっき層としては、はんだめっき層、錫めっき層、金めっき層、銀めっき層、ニッケルめっき層等が好ましい。素線の断面形状も特に限定されないが、断面形状が円形又は略円形であってもよいし、角形形状であってもよい。
【0022】
中心導体1の断面形状も特に限定されない。円形(楕円形を含む。)であってもよいし矩形等であってもよいが、円形であることが好ましい。中心導体1の外径は、電気抵抗(交流抵抗、導体抵抗)が小さくなるように、できるだけ大きいことが望ましいが、同軸ケーブル10の最終外径を細径化するためには、例えば0.1~0.4mm程度の範囲内を挙げることができる。なお、個々の同軸ケーブル10は、中心導体1の外径の2.5倍以上10倍以下の範囲内であることが好ましい。中心導体1の表面には、必要に応じて絶縁被膜(図示しない)が設けられていてもよい。絶縁被膜の種類と厚さは特に限定されないが、例えばはんだ付け時に良好に分解するものが好ましく、熱硬化性ポリウレタン被膜等を好ましく挙げることができる。
【0023】
(絶縁体)
絶縁体2は、図5に示すように、中心導体1の外周に、長手方向に連続して設けられている低誘電率の絶縁層である。絶縁体2の材料は特に限定されず、要求されるインピーダンス特性に応じて任意に選択されるが、例えばPFA(ε2.1)、ETFE(ε2.5)、FEP(ε2.1)等、誘電率が2.0~2.5の低誘電率のフッ素系樹脂が好ましく、なかでも、PFA樹脂が好ましい。なお、絶縁体2の材料に着色剤を含有させてもよい。絶縁体2の厚さも特に限定されず、要求されるインピーダンス特性に応じて任意に選択されるが、例えば0.15~1.5mm程度の範囲内とすることが好ましい。絶縁体2の形成方法は特に限定されないが、中実構造、中空構造、発泡構造のいずれも押し出しで容易に形成できる。
【0024】
絶縁体2は、図5(A)に示す中実構造であってもよいし、図5(B)に示す中空構造であってもよいし、図示しない発泡構造であってもよい。なお、中空構造は、構造体内部に空隙部2Aを有し、例えばその空隙部2Aを、内環状部2B、外環状部2C及び連結部2Dで囲む断面形態等とすることができる。中空構造や発泡構造とした場合、絶縁体2の材料密度が小さくなり、絶縁体2を柔らかくすることができるという付加的効果がある。空隙部2Aは、絶縁体2の中に連続して設けられているが、その形態は、丸形でも矩形でもよく特に限定されない。こうした中空構造の絶縁体2は、側圧強度に優れるので、同軸ケーブル10及び同軸フラットケーブル20の製造時や同軸フラットケーブル20の配線作業時等に潰れにくく、高周波特性を安定なものとすることができる。なお、中空構造の絶縁体2は、押出ダイを走行する中心導体1の外周に樹脂押出しして成形することができる。内環状部2B、外環状部2C及び連結部2Dのそれぞれの厚さは特に限定されないが、例えば0.01mm~0.05mm程度の範囲内であり、形成された中空構造の絶縁体2の外径は、例えば0.4mm~1.0mm程度の範囲内とすることができる。
【0025】
(外部導体)
外部導体3は、絶縁体2の外周に設けられており、細線を編組としたものや横巻きしたものであってもよいし、金属層付絶縁テープ(例えば銅層付きのポリエチレンテレフタレートフィルム等)であってもよいし、それらの両方を組み合わせたものであってもよい。図5の例では、絶縁体2の外周に細線横巻3Aを設け、さらにそれを覆うように金属層付き絶縁テープ3Bを設けているが、こうした構成に限定されない。外部導体3の厚さは特に限定されないが、例えば0.01mm~0.15mm程度の範囲内である。
【0026】
(外被体)
外被体4は、外部導体3の外周に設けられており、絶縁性があればその材質は特に限定されない。好ましくは、図5に例示するように、片面に接着剤層4Bを設けた絶縁テープ4Aを螺旋巻きして構成することができるが、この形態に限定されない。接着剤層4Bとしては、同軸ケーブル10に適用されている種々のものを使用することができ、例えばポリエステル系の熱可塑性接着性樹脂等を好ましく挙げることができ、絶縁テープ4Aとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルムを好ましく挙げることができる。特に、後述する樹脂テープ11との接着性の良い材料を選択することが好ましく、例えば樹脂テープ11を構成する接着剤層がポリエステル系熱可塑性接着剤層である場合は、外被体4もポリエステルフィルムであることが好ましい。片面に接着剤層4Bを設けた絶縁テープ4Aの全体厚さは、0.03mm以上0.1mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0027】
(その他)
同軸フラットケーブル20には、必要に応じて、シールド層(図示しない)が設けられていてもよい。シールド層は、例えば図1等の樹脂テープ11の上に設けられる。シールド層としては、金属箔と、その金属箔の一方の面に設けられた導電性接着剤層とで少なくとも構成されたテープを例示することができるが、シールド機能を発揮できれば層構成は特に限定されない。また、シールド層は、中心導体とシールド層との間の静電容量や外部インダクタンスを均一に保つように作用させることもでき、この部分でのインピーダンスのミスマッチを生じないようにすることができる。
【0028】
<金属部材>
金属部材7は、図1図4に示すように、同軸フラットケーブル20を構成する必須の部材である。同軸ケーブル10は、幅方向Xに間隔を空けて複数本並べて配されているが、その「間隔」が金属部材7によって確保されている。すなわち、同軸ケーブル10と同軸ケーブル10との間に金属部材7が幅方向Xに並んで配置されていることにより、同軸ケーブル10が間隔を空けて設けられることになる。「間隔を空けて」とは、図1図2及び図4(A)(B)に示すように、同軸ケーブル10それぞれの間に金属部材(金属線)7を介して並べて配されている場合、及び、図3及び図4(C)に示すように、2本の同軸ケーブル10,10は密着したペア線10aであり、そのペア線10a、10a同士の間に金属部材(金属線)7を介して並べて配されている場合の両方を含む意味である。金属部材7を介して間隔を空けた箇所があればそれ以外の構成であってもよく、例えば、幅方向Xの一方の側から、ペア線10a、金属部材7、同軸ケーブル10、金属部材7、ペア線10a、金属部材7、・・、のように、同軸ケーブル10の単線とペア線が含まれた同軸フラットケーブル20であってもよい。なお、金属部材7は、図4(A)に示すように、上下のカバーテープ11aの中間に位置していてもよいし、図4(B)(C)に示すように、下側の補強テープ11b又はカバーテープ11aに接していてもよい。こうして配置された金属部材7は、同軸ケーブ間を所定の間隔に保って基板30等への接続を容易とすることができる。
【0029】
金属部材7は、図1図3に示すように、金属線である。金属線の断面形状は特に限定されないが、図4に示すように、円形の丸線であることが好ましい。断面円形の金属線の外径をD1とし、同軸ケーブル10の外径をD2としたとき、D1/D2が0.5~1.5の範囲内であること好ましい。この範囲とすることにより、樹脂テープ11に同軸ケーブル10と金属線が接着して固定できる。一方、D1/D2が1/2未満では、金属線が樹脂テープ11に接着できず、同軸ケーブル間の間隔が安定しなくなることがあり、D1/D2が1.5を超えると、樹脂テープ11と同軸ケーブル10が接着せず、必要な密着力が得られなくなることがある。
【0030】
金属部材7は、長手方向Yにおいては、図6及び図8に示すように、隣り合う同軸ケーブル間の少なくとも同軸構造となる部分に配されている。「同軸構造」とは中心導体1だけでは同軸構造とは言わないので、「金属部材7が少なくとも同軸構造となる部分に配されている」とは、中心導体1の外周に絶縁体2が設けられた部分には必ず配置されていることを意味する。したがって、同軸ケーブル10の中間部22は全て含まれ、端末部21においては、図6及び図8に示すように、端末加工によって外部導体3が露出した部分と絶縁体2が露出した部分には必ず金属部材7が配置されている。また、図8に示すように、同軸構造ではない中心導体1だけの部分に金属部材7を配置するのは必須ではないが、任意に配置してもよい。すなわち、金属部材7の先端7aは、端末加工後の露出した中心導体1の先端1aと、端末加工後の露出した絶縁体2の先端剥離部又は剥離予定部の先端側3aとの間に位置するように配置される。
【0031】
このように、金属部材7を、外部導体3のない同軸構造部(同軸構造となる部分)に少なくとも配置し、しかも同軸ケーブル10の外部導体3とともに基板30又はコネクタに半田接続する。こうすることにより、図7及び図9に示すように、金属部材7は同軸ケーブル10の外部導体3と共通GND(GND部材は図示していない。)としてつながっている。そのため、絶縁体2が露出した部分でのインピーダンスの変動を抑制することができる。
【0032】
金属部材7は、同軸ケーブル10の長手方向Yに延びる1本の金属線であってもよいし、又は複数本の素線を撚り合わせて構成される撚線であってもよい。撚線の場合は、素線がほつれて外径が変動しないことが望ましく、例えばはんだ付け可能な融着層付き絶縁層で被覆された細線を撚り合わせた後に融着させてほつれないようにしたものとすることが好ましい。素線は、良導電性金属からなるものであればその種類は特に限定されないが、銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線、銅アルミニウム複合線等の良導電性の金属導体、又はそれらの表面にめっき層が施されたものを好ましく挙げることができる。めっき層としては、はんだめっき層、錫めっき層、金めっき層、銀めっき層、ニッケルめっき層等が好ましい。金属部材7の表面には、必要に応じてはんだ付け可能な絶縁被膜(図示しない)が設けられていてもよい。はんだ付け可能な絶縁被膜としたのは、図9及び図11に示すように、同軸ケーブル10mの外部導体3と共にはんだ付けするためである。はんだ付け可能な絶縁被膜の種類と厚さは特に限定されないが、例えばはんだ付け時に良好に分解するものが好ましく、熱硬化性ポリウレタン被膜等を好ましく挙げることができる。絶縁被膜を設ける場合の金属部材7の外径は、絶縁被膜の厚さも含まれる。
【0033】
こうして構成された同軸ケーブル10の外径は、上記のように、0.1~0.4mm程度の範囲内とすることが好ましく、中心導体1の外径の2.5倍以上10倍以下の範囲内であることが好ましい。
【0034】
<樹脂テープ>
樹脂テープ11は、同軸フラットケーブル20を構成するものであり、図1図4に示すように、幅方向Xに間隔を空けて並べて配された複数本の同軸ケーブル10の少なくとも端末部21を片面又は両面から貼り合わされて該端末部21を一体化するものである。樹脂テープ11として、図1に示すカバーテープ11a、図2に示す補強テープ11b、図3に示すカバーテープ11aと補強テープ11bとの貼り合わせ、を例示することができるが、これらに限定されない。「少なくとも」とは、端末部21には樹脂テープ11(11a,11b,11a及び11b)が必ず設けられているが、端末部以外の中間部22にも樹脂テープ11(11a)が設けられていてもよいことを意味する。なお、「両面」とは、図4(A)(C)に示すように、幅方向Xに間隔を空けて並べて配された複数本の同軸ケーブル10の上下面のことであり、「片面」とは、図4(B)に示すように、幅方向Xに間隔を空けて並べて配された複数本の同軸ケーブル10の一方の面(例えば下面)のことである。
【0035】
(ア)図1及び図4(A)に示す樹脂テープ11は、複数本の同軸ケーブル全体を両面から挟んで一体化するカバーテープ11aである。カバーテープ11aは、図1等に示すように、複数本の同軸ケーブル10の長手方向Yの全てに貼り合わされていることが好ましいが、長手方向Yの両側の端末部21のみに貼り合わされて中間部22を非一体部分としてもよい。非一体部分は、中間部22が容易に変形でき、電子機器内の配線時における自由度を向上させることができる。なお、図1等の例では2枚のカバーテープ11aで両面から挟んで貼り合わせて一体化しているが、1枚のカバーテープ11aを折り返して両面から挟んで貼り合わせて一体化したものであってもよい。
【0036】
(イ)図2及び図4(B)に示す樹脂テープ11は、複数本の同軸ケーブル10の端末部21に設けられる補強テープで11bある。補強テープ11bは、図2等に示すように、複数本の同軸ケーブル10の長手方向Yの端末部21のみに設けられており、中間部22は非一体部分となっている。非一体部分は、中間部22が容易に変形でき、電子機器内の配線時における自由度を向上させることができる。なお、補強テープ11bの長手方向Yの長さは、例えば、5~20mm程度とすることが好ましい。
【0037】
(ウ)図3及び図4(C)に示す樹脂テープ11は、複数本の同軸ケーブル全体を両面から挟んで一体化するカバーテープ11aと、複数本の同軸ケーブル10の端末部21でカバーテープ11aの片面に貼り合わされる補強テープ11bとで構成されている。カバーテープ11aと補強テープ11bは、(ア)と(イ)で説明した構成と同じである。
【0038】
(ア)~(ウ)について、上記したカバーテープ11aと補強テープ11bは、通常、基材と接着剤層とで構成されている。カバーテープ11aについて、基材は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムを好ましく用いることができる。基材の厚さは、0.025mm~0.1mm程度の範囲内のものが任意に選択される。接着剤層も特に限定されないが、貼り合わせ対象の外被体4に接着性よく貼り合わせることができる材質であることが望ましく、例えばポリエステル系熱可塑性接着性樹脂層等を好ましく挙げることができる。接着剤層の厚さは、0.02mm~0.035mm程度の範囲内のものが任意に選択される。
【0039】
補強テープ11bについても、基材は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリカーボネートフィルムを好ましく用いることができる。これらの基材は寸法安定性にも優れており、コネクタへの接続時に加わる嵌合力等によっても、また温度が変化したり時間が経過したりした場合であっても、寸法変化が生じ難いという利点がある。基材の厚さは、0.025mm~0.3mm程度の範囲内のものが任意に選択される。接着剤層も特に限定されないが、貼り合わせ対象の外被体4に接着性よく貼り合わせることができる材質であることが望ましく、例えばポリエステル系熱可塑性接着性樹脂層等を好ましく挙げることができる。接着剤層の厚さは、0.02mm~0.05mm程度の範囲内のものが任意に選択される。
【0040】
カバーテープ11a及び補強テープ11bによる貼り合わせは、図3及び図4(C)に示すように、上記したカバーテープ11aと補強テープ11bの組み合わせであるので、ここではその説明を省略する。
【実施例
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
[同軸ケーブルの作製]
同軸ケーブル10は、中心導体1として、直径0.08mmの銀めっき軟銅線を7本撚りしたAWG32(外径約0.24mm)を用いた。絶縁体2は、中空構造体用ダイスニップルにて350℃でPFA樹脂(デュポン社製)を押出しして、図8(B)に示すように、空隙部2Aが内環状部2B、外環状部2C及び連結部2Dで囲まれた断面形態の中空構造体を形成した。この中空構造体において、内環状部2Bの厚さは0.05mm、外環状部2Cの厚さは0.05mm、連結部2Dの厚さは0.05mmであり、中空構造体(絶縁体2)の外径は0.60mmであり、空隙部2Aの空隙率は絶縁体全体(中空構造体全体)の面積に対して30%であった。誘電率εは約1.6であった。
【0043】
外部導体3は、直径0.05mmの錫めっき軟銅線38本を用い、横巻きシールド機を用いて12mmピッチで絶縁体2の外周に巻き付けて横巻の細線横巻3Aとした。さらに、厚さ0.008mmの銅層が形成された厚さ0.004mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(金属層付き絶縁テープ3B)を幅2.5mmに切断し、テープ巻き機を用いて銅層を横巻の細線横巻3A側にして1/3.5ラップで巻き付けた。次に、厚さ0.001mmのポリエステル熱可塑性樹脂(接着剤層4B)が片面に設けられた厚さ0.004mmのポリエステルテープ(絶縁テープ4A)を幅3.0mmに切断し、テープ巻き機を用いて接着剤層4Bを外部導体側にして1/3ラップで巻き付けた。
【0044】
[同軸フラットケーブル]
(実施例1)
得られた同軸ケーブル10を16本準備し、各同軸ケーブル10間には、図1及び図4(A)に示すように、金属部材7として直径0.5mmの銅線を介して並べて配列した後、図1に示すようにカバーテープ11aで両面から全面を貼り合わせて一体化し、図4(A)に示す同軸フラットケーブル20とした。カバーテープ11aは、厚さ0.035mmのポリエステル熱可塑性樹脂(接着剤層)が片面に設けられた厚さ0.025mmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材を幅25mmに切断したものを用いた。同軸フラットケーブル20を所定長さに切断し、端末部21を図6に示すように加工し、中心導体1、絶縁体2、外部導体3をそれぞれ露出させた。なお、金属部材7の長手方向Yは、図6に示すように、その先端7aが中心導体1の先端1aと同じになる長さで配置した。
【0045】
得られた同軸フラットケーブル20を、図9に示すように、基板30に取り付けた。取り付けは、中心導体1を半田接続部41にはんだ付けし、外部導体3及び金属部材7を半田接続部42にはんだ付けした。
【0046】
(実施例2)
得られた同軸ケーブル10を16本準備し、各同軸ケーブル10間には、図2及び図4(B)に示すように、金属部材7として直径0.5mmの銅線を介して並べて配列した後、補強テープ11bを端末部21側の片面に貼り合わせて一体化し、図4(B)に示す同軸フラットケーブル20とした。補強テープ11bは、厚さ0.042mmのポリエステル熱可塑性樹脂(接着剤層)が片面に設けられた厚さ0.125mmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材を幅方向Xが25mmで長手方向Yが10mmに切断したものを用いた。同軸フラットケーブル20を所定長さに切断し、端末部21を図8に示すように加工し、中心導体1、絶縁体2、外部導体3をそれぞれ露出させた。なお、金属部材7の長手方向Yは、図8に示すように、その先端7aが絶縁体2の先端2aと同じになる長さで配置した。
【0047】
得られた同軸フラットケーブル20を、図9に示すように、基板30に取り付けた。取り付けは、中心導体1を半田接続部41にはんだ付けし、外部導体3及び金属部材7を半田接続部42にはんだ付けした。
【0048】
(実施例3)
得られた同軸ケーブル10を16本準備し、図3及び図4(C)に示すように、同軸ケーブル10を2本ずつのペア線10aとし、そのペア線10a間には、金属部材7として直径0.5mmの銅線を介して並べて配列し。その後、図3に示すように、カバーテープ11aで両面から全面を貼り合わせて一体化し、さらにカバーテープ11aの片面の端末部21に補強テープ11bを貼り合わせて、図4(C)に示す同軸フラットケーブル20とした。用いたカバーテープ11aと補強テープ11bは、それぞれ実施例1と実施例2と同じものを用いた。同軸フラットケーブル20を所定長さに切断し、端末部21を図6図8と同様に加工し、中心導体1、絶縁体2、外部導体3をそれぞれ露出させた。なお、金属部材7の長手方向Yは、図6と同様、その先端7aが中心導体1の先端1aと同じになる長さで配置した。
【0049】
得られた同軸フラットケーブル20を、図6と同様、基板30に取り付けた。取り付けは、中心導体1を半田接続部41にはんだ付けし、外部導体3及び金属部材7を半田接続部42にはんだ付けした。
【0050】
(比較例1)
得られた同軸ケーブル10を16本準備し、各同軸ケーブル10は、図10に示すように、一定間隔を空けて並べて配列した後、カバーテープ11aで両面から全面を貼り合わせて一体化し、同軸フラットケーブル20とした。カバーテープ11aは、実施例1と同じものを用いた。同軸フラットケーブル20を所定長さに切断し、端末部21を図10に示すように加工し、中心導体1、絶縁体2、外部導体3をそれぞれ露出させた。
【0051】
得られた同軸フラットケーブル20を、図11に示すように、基板30に取り付けた。取り付けは、中心導体1を半田接続部41にはんだ付けし、外部導体3を半田接続部42にはんだ付けした。
【符号の説明】
【0052】
1 中心導体
1a 中心導体先端部
2 絶縁体
2a 絶縁体先端部
2A 空隙部
2B 内環状部
2C 外環状部
2D 連結部
2E 空隙部
3 外部導体
3a 外部導体先端部
3A 細線横巻
3B 金属層付絶縁テープ
4 外被体
4A 絶縁テープ
4B 接着剤層
7 金属部材
7a 金属部材先端
9 インピーダンス不整合部分
10 同軸ケーブル
10a ペア線
11 樹脂テープ
11a カバーテープ
11b 補強テープ
20 同軸フラットケーブル
21 端末部
22 中間部
30 基板
31 電極
32 電極
41 中心導体の半田接続部
42 外部導体の半田接続部
X 幅方向
Y 長手方向


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11