(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-24
(45)【発行日】2025-07-02
(54)【発明の名称】電池収容トレイ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/289 20210101AFI20250625BHJP
H01M 50/256 20210101ALI20250625BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20250625BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20250625BHJP
B65D 85/88 20060101ALI20250625BHJP
B65D 77/02 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/256 101
H01M50/291
H01M50/213
B65D85/88
B65D77/02 C
(21)【出願番号】P 2022526859
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2021017973
(87)【国際公開番号】W WO2021241216
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2020092057
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 輝男
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-277054(JP,A)
【文献】特開平10-106520(JP,A)
【文献】国際公開第2019/083177(WO,A1)
【文献】特開2009-193692(JP,A)
【文献】特開2019-061958(JP,A)
【文献】特開2013-196810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
B65D 85/88
B65D 77/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが電池を収容すると共に互いに間隔をおいて配置される、複数の収容部を備える電池収容トレイであって、
前記各収容部は、高さ方向の前記電池の挿入側から見たときに円環形状を有する挿入側円環部で画定される挿入口を有し、
前記挿入側円環部の外周面をそれに隣り合う前記挿入側円環部の外周面に連結する挿入側連結部を有し、
複数の前記挿入側円環部が複数の前記挿入側連結部で連結されて一体となって
おり、
前記各収容部は、前記高さ方向の前記挿入口側とは反対側に円環形状を有すると共に前記電池を支持する受け側円環部を有し、
前記受け側円環部の外周面をそれに隣り合う前記受け側円環部の外周面に連結する受け側連結部を有し、
複数の前記受け側円環部が複数の前記受け側連結部で連結されて一体となっており、
前記受け側連結部の延在方向が、前記挿入側連結部の延在方向に対して傾斜している、電池収容トレイ。
【請求項2】
前記複数の挿入側連結部が、格子状に配置され、
高さ方向の前記電池の挿入側から見たときに、前記各挿入側連結部が、前記挿入側円環部の中心と、その挿入側円環部に隣り合う前記挿入側円環部の中心とを結ぶ線分上に位置する、請求項1に記載の電池収容トレイ。
【請求項3】
前記収容部において、前記電池の側面を覆う側壁が前記収容部の内側スペースと前記収容部の外側ス
ペースを連通させる切欠きを有する、請求項1又は2に記載の電池収容トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池収容トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池収容トレイとしては、特許文献1に記載されているものがある。この電池収容トレイは、複数の電池収容部を備えており、各電池収容部は、高さ方向の電池挿入側から見たときに矩形の形状を有する挿入口を画定する側壁を有する。この電池収容トレイでは、隣接する2つの電池収容部の夫々が互いに共有する共有側壁を有し、該2つの電池収容部は共有側壁で区切られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池の高容量化に伴って電池重量が増大している。したがって、材料の使用量を大きく増加させずに、電池収容トレイの強度を増大させることができると好ましい。
【0005】
よって、本開示の目的は、材料の使用量を低減し易く、強度を向上させ易い電池収容トレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る電池収容トレイは、それぞれが電池を収容すると共に互いに間隔をおいて配置される、複数の収容部を備える電池収容トレイであって、各収容部は、高さ方向の電池の挿入側から見たときに円環形状を有する挿入側円環部で画定される挿入口を有し、挿入側円環部の外周面をそれに隣り合う挿入側円環部の外周面に連結する挿入側連結部を有し、複数の挿入側円環部が複数の挿入側連結部で連結されて一体となっている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電池収容トレイによれば、材料の使用量を低減し易く、強度も向上させ易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の電池収容トレイを高さ方向の電池挿入側の斜め上方から見たときの斜視図である。
【
図2】
図2は、電池収容トレイの電池収容構造の一部を電池挿入側の斜め上方から見たときの斜視図である。
【
図3】
図3は、電池収容トレイを高さ方向の電池挿入側から見たときの複数の挿入側円環部と複数の挿入側連結部とが構成する挿入側格子構造を示す模式平面図である。
【
図4】
図4は、電池収容構造の一部の電池受け側を電池受け側の斜め下方から見たときの斜視図である。
【
図5】
図5は、電池収容トレイを高さ方向の電池受け側から見たときに複数の受け側円環部と複数の受け側連結部とが構成する受け側格子構造を示す模式平面図である。
【
図6】
図6は、電池収容構造の一部を高さ方向の電池挿入側から見たときの平面図である。
【
図7】
図7は、1つの収容部を高さ方向の電池挿入側の斜め上側から見たときの斜視図である。
【
図10】
図10は、切欠きを有さない変形例の収容部の模式形状を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す収容部の射出成形による形成方法について説明する模式図であり、
図10にCで示す平面で切断したときの収容部の形成途中における第1及び第2金型の模式断面図である。
【
図12】
図12は、切欠きを含む他の変形例の収容部の模式形状を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す収容部の射出成形による形成方法について説明する模式図であり、
図12にDで示す平面で切断したときの収容部の形成途中における第1及び第2金型の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本明細書で、「略」という文言を用いた場合、「大雑把に言って」という文言と同じ意味合いで用いており、「略~」という要件は、人がだいたい~のように見えれば満たされる。例を挙げれば、略円形という要件は、人がだいたい円形に見えれば満たされる。また、以下の説明では、説明の便宜上、高さ方向の電池挿入側を高さ方向の上側、上方と表現することがあり、高さ方向の電池受け側を高さ方向の下側、下方と表現することがある。また、以下で詳細に説明するが、電池収容トレイ1は、マトリクス状に配置される収容部31を有する。以下の説明において、X方向は、マトリクス状に配置される収容部31の行方向であり、Y方向は、マトリクス状に配置される収容部31の列方向であり、Z方向は、電池収容トレイ1の高さ方向である。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。なお、本開示の電池収容トレイは、円筒形電池の搬送に用いられると好ましいが、角形電池の搬送に用いられてもよい。
【0010】
図1は、本開示の電池収容トレイ1を高さ方向の電池挿入側の斜め上方(Z方向の斜め上方)から見たときの斜視図である。なお、
図1では、電池収容構造30の側方の構造が分かり易いように、枠体10で囲まれた領域内に配置される電池収容構造30の一部のみを図示しているが、実際には、電池収容構造30は、枠体10で囲まれた領域内に隙間なく配置される。電池収容トレイ1は、樹脂材料、又は金属材料で形成される。
【0011】
図1に示すように、電池収容トレイ1は、一体の枠体10と、電池収容構造30を備える。Z方向から見たとき、枠体10は、矩形の外縁10aと矩形の内縁10bとを有し、外縁10aの中心は、内縁10bの中心と一致し、外縁10aは、内縁10bの外側に位置する。枠体10は、Z方向に延在する。枠体10は、X方向に間隔をおいて略平行に配置される一対の第1平板部11a,11bと、Y方向に間隔をおいて略平行に配置される一対の第2平板部11c,11dを有する。第1平板部11a,11bは、Y方向とZ方向とを含む平面上に広がり、第2平板部11c,11dは、X方向とZ方向とを含む平面上に広がる。第1平板部11a,11bは、第2平板部11c,11dに直交する。第1平板部11a,11bのY方向の端部は、第2平板部11c,11dのX方向の端部に繋がっている。
【0012】
電池収容構造30は、枠体10と一体に形成され、例えば、射出成形で一体に成形される。電池収容構造30は、枠体10に囲まれた領域内に配置される。電池収容構造30は、互いに間隔をおいてマトリクス状に配置される複数の同一の収容部31を有する。なお、
図1に示す例では、マトリクスの行間長さが列間長さと一致するが、マトリクスの行間長さは列間長さと一致しなくてもよい。又は、本開示の電池収容トレイでは、複数の収容部は、マトリクス状に配置されなくてもよく、例えば千鳥配置されてもよい。
【0013】
収容部31には、図示しない電池が収容される。電池収容構造30が、枠体10に囲まれた領域内に配置されるため、複数の収容部31に収容された複数の電池は、側方が全周に亘って枠体10で被覆される。よって、外部からの衝撃を枠体10で受け止めることができるため、搬送中に枠体10内の電池が損傷することを抑制できる。更には、本実施形態のように、電池収容構造30が四角枠の枠体10を有すれば、人が枠体10を把持し易いため、人が電池収容トレイ1を搬送させ易い。
【0014】
図2は、電池収容トレイ1の電池収容構造30の一部をZ方向の斜め上方から見たときの斜視図である。また、
図3は、電池収容トレイ1を高さ方向の電池挿入側(Z方向上側)から見たときに複数の挿入側円環部32と複数の挿入側連結部33とが構成する挿入側格子構造35を示す模式平面図である。
【0015】
図2及び
図3に示すように、各収容部31は、Z方向の電池挿入側から見たときに円環形状を有する挿入側円環部32で画定される挿入口36を有する。また、電池収容構造30は、複数の挿入側円環部32の外周面をそれに隣り合う挿入側円環部32の外周面に連結する挿入側連結部33を更に備える。複数の挿入側円環部32は、複数の挿入側連結部33で連結されて一体となっている。複数の挿入側連結部33は、マトリクス状に配置される収容部31の行方向(X方向)に延在する複数の第1挿入側連結部33aと、列方向(Y方向)に延在する複数の第2挿入側連結部33bを含む。
【0016】
図3に示すように、複数の第1挿入側連結部33aと複数の第2挿入側連結部33bは、格子状に配置される。Z方向の電池挿入側から見たときに、各挿入側連結部33は、挿入側円環部32の中心と、その挿入側円環部32に隣り合う挿入側円環部32の中心とを結ぶ線分上に位置する。詳しくは、Z方向の電池挿入側から見たときに、各第1挿入側連結部33aは、挿入側円環部32の中心と、その挿入側円環部32にX方向に隣り合う挿入側円環部32の中心とを結ぶ線分上に位置し、X方向に延在する。また、Z方向の電池挿入側から見たときに、各第2挿入側連結部33bは、挿入側円環部32の中心と、その挿入側円環部32にY方向に隣り合う挿入側円環部32の中心とを結ぶ線分上に位置し、Y方向に延在する。
【0017】
図3に示すように、枠体10においてX方向に延在する内面13aに沿って配置される収容部31の挿入側円環部32aの外周面は、枠体10の内面13aに第1挿入側枠体連結部18aで連結され、枠体10に接続される。第1挿入側枠体連結部18aは、Z方向から見たときに、Y方向に延在し、挿入側円環部32aの中心からY方向に延在する直線上に位置している。枠体10においてY方向に延在する内面13bに沿って配置される収容部31の挿入側円環部32bの外周面は、枠体10の内面13bに第2挿入側枠体連結部18bで連結され、枠体10に接続される。第2挿入側枠体連結部18bは、Z方向から見たときに、X方向に延在し、挿入側円環部32aの中心からX方向に延在する直線上に位置している。このように、複数の第1挿入側枠体連結部18aと複数の第2挿入側枠体連結部18bを用いて挿入側格子構造35を枠体10に接続することで、挿入側格子構造35を枠体10に接続する接続構造の強度を高くしている。
【0018】
図4は、電池収容構造30の一部の電池受け側をZ方向の斜め下方から見たときの斜視図である。また、
図5は、電池収容トレイ1を高さ方向の電池受け側(Z方向下側)から見たときに複数の受け側円環部42と複数の受け側連結部43とが構成する受け側格子構造45を示す模式平面図である。
【0019】
図4及び
図5に示すように、各収容部31は、Z方向の挿入口側とは反対側に円環形状を有する受け側円環部42を有し、受け側円環部42は、収容される電池の直径より小さな内径を有する略円形の受け側開口46を画定し、収容される電池を支持する。また、電池収容構造30は、複数の受け側円環部42の外周面をそれに隣り合う受け側円環部42の外周面に連結する受け側連結部43を更に備える。複数の受け側円環部42が複数の受け側連結部43で連結されて一体となっている。
【0020】
図5に示すように、受け側円環部42は、その受け側円環部42の隣の行に存在すると共にその受け側円環部42の隣の列に存在する受け側円環部42に受け側連結部43で連結される。複数の受け側円環部42のうちで枠体10の内面に沿うように配置される枠側の受け側円環部42a以外の各受け側円環部42は、4つの受け側連結部43で4つの受け側円環部42に連結される。
【0021】
複数の受け側連結部43は、Z方向の受け側(Z方向下側)から見たときの時計回り側を正とするときに、X方向に45°傾斜する方向に延在する複数の第1受け側連結部43aと、X方向に(-45°)傾斜する方向に延在する複数の第2受け側連結部43bを有する。その結果、受け側連結部43は、挿入側連結部33(
図3参照)に45°の角度をなして傾斜する。各受け側連結部43は、それが連結する2つの受け側円環部42の中心同士を結ぶ線分上に位置する。
【0022】
枠体10側に位置する各受け側円環部42aの外周面は、第1受け側枠体連結部19aと第2受け側枠体連結部19bで枠体10の内面に接続される。Z方向の受け側(Z方向下側)から見たとき、第1受け側枠体連結部19aは、X方向に45°傾斜する方向に延在し、第2受け側枠体連結部19bは、X方向に(-45°)傾斜する方向に延在する。第1受け側枠体連結部19a及び第2受け側枠体連結部19bの夫々の延長線は、それが枠体10に連結する受け側円環部42aの中心を通過する。複数の第1受け側枠体連結部19aと複数の第2受け側枠体連結部19bを用いて受け側格子構造45を枠体10に接続することで、受け側格子構造45を枠体10に接続する接続構造の強度を高くしている。
【0023】
図6は、電池収容構造30の一部をZ方向の電池挿入側から見たときの平面図である。
図6に示すように、Z方向から見たときの平面図において、挿入側円環部32の中心は、受け側円環部42の中心に一致している。また、挿入側円環部32が画定する挿入口36の面積が、受け側円環部42が画定する受け側開口46の面積よりも大きくなっており、高さ方向から見たときの平面図において受け側開口46の全てが視認できるようになっている。本実施形態では、Z方向から見たときの平面図において、挿入口36及び受け側開口46の夫々が、略円形の形状を有している。しかし、Z方向から見たときの平面図において、受け側円環部が画定する開口は、略円形の形状を有していなくてもよく、例えば、矩形等の形状であってもよい。Z方向から見たときの平面図において、第1受け側連結部43aと第2受け側連結部43bは、4つの収容部31で囲まれた領域の中心で交差し、互いに接続される。第1受け側連結部43aと第2受け側連結部43bを接続することで、受け側格子構造45の剛性を高くしている。
【0024】
図7は、1つの収容部31をZ方向の電池挿入側の斜め上側から見たときの斜視図である。また、
図8は、
図6のA-A線断面図であり、
図9は、
図6のB-B線断面図である。
図7に示すように、収容部31は、Z方向に延在して挿入側円環部32と受け側円環部42を連結すると共に、収容した電池の側面を覆うことで該側面を支持する側壁52を備える。側壁52は、収容部31の内側スペースと収容部31の外側ス
ペースを連通させる4つの切欠き62を有する。挿入側円環部32の周方向に関して、4つの切欠き62は、周方向に隣り合う受け側連結部43の間に位置する。切欠き62は、挿入側円環部32の径方向の両側に開口すると共にZ方向の下側に開口している。
【0025】
図7及び
図8に示すように、側壁52は、挿入側円環部32の下側端部からZ方向下側に延在する高さ方向延在部52aと、高さ方向延在部52aのZ方向下側の端部の内面から径方向の内側に延在して受け側連結部43の外周面に繋がる径方向延在部52bを有する。この径方向延在部52bを設けることで、切欠き62がZ方向下側に開口する構造が可能になり、以下で詳細に説明するように、切欠き62を有する収容部31を射出成形で容易に形成することができるようになる。
【0026】
収容部31に切欠き62を設けることで、成形に使用する材料の使用量を低減でき、製作コストを削減できる。また、トレイ重量を軽量化できるので、搬送への負担も軽減できる。また、電池収容トレイ1に収容された電池を速やかに昇温又は冷却することができる。
【0027】
図7及び
図9に示すように、高さ方向延在部52aの内面の内径は、Z方向下側に行くにしたがって僅かに小さくなっている。また、
図7に示すように、収容部31は、その内面に挿入側円環部32のZ方向上側の端から高さ方向延在部52aのZ方向下側の端までZ方向に延在すると共に径方向内側に突出する1以上の凸状突出部72を有してもよい。1以上の凸状突出部72を設けることで、収容部31の剛性を高くすることができ、収容部31の損傷を抑制することができる。
【0028】
次に、
図10~
図13を用いて、切欠き62を含む収容部31の射出成形による形成方法について説明する。
図10は、切欠きを有さない変形例の収容部131の模式形状を示す斜視図である。また、
図11は、収容部131の射出成形による形成方法について説明する模式図であり、
図10にCで示す平面で切断したときの収容部131の形成途中における第1及び第2金型190,195の模式断面図である。また、
図12は、切欠き262を含む他の変形例の収容部231の模式形状を示す斜視図である。また、
図13は、収容部231の射出成形による形成方法について説明する模式図であり、
図12にDで示す平面で切断したときの収容部231の形成途中における第1及び第2金型290,295の模式断面図である。なお、実際には、収容部131,231の穴168,268の開口形状は、略円形でなければならないが、模式図である
図10及び
図12では、穴168,268の開口形状を矩形で表している。
【0029】
図11に示す有底の穴168を有する収容部131を射出成形で形成する場合、先ず、
図11(a)に示すように、収容部131の形状に対応する形状の凹部141を有する第1金型190の凹部141を、蓋形状の第2金型195で塞いで凹部141を密封スペースにした上で、その密封スペースに流動性を有する材料を射出して硬化させる。その後、
図11(b)に示すように、第1金型190と第2金型195を矢印Eで示す方向に引き離すことで、収容部131を取り出すことができる。
【0030】
これに対し、
図12に示す収容部231、すなわち、有底の穴268に加えて、その穴268に連通する切欠き262を側壁に有する収容部231を、射出成形で形成する場合、先ず、
図13(a)に示すように、収容部231から切欠き262の部分を除いた形状に対応する形状の凹部241を有する第1金型
290と、第1金型
290に噛み合った状態で切欠き262の形状に対応する突出部235を有して、第1金型
290に噛み合った状態で収容部231の形状に対応する形状の密封スペースを形成する第2金型
295とを噛合わせる。そして、その状態で、密封スペースに流動性を有する材料を射出して硬化させる。その後、
図13(b)に示すように、第1金型290と第2金型295を矢印Fで示す方向に引き離すことで、収容部231を取り出すことができる。
【0031】
[実施例の電池収容トレイ]
実施例の電池収容トレイとして、電池収容トレイ1と同一の形状を有し、材料として、ポリフェニレンエーテル(PPE)を主材料とする樹脂材料を採用した電池収容トレイを用いた。
【0032】
[参考例の電池収容トレイ]
参考例の電池収容トレイとして、
図14及び
図15に示す形状の電池収容トレイ301を採用した。すなわち、電池収容トレイ301は、電池を収容する収容部331が、高さ方向の電池挿入側から見たときに略矩形の形状を有する挿入口336を画定する側壁352を有する。また、電池収容トレイ301は、隣接する2つの収容部331の夫々が互いに共有する共有側壁352aを有し、該2つの収容部331が共有側壁352aで区切られている。電池収容トレイ301は、実施例の電池収容トレイと同様に、ポリフェニレンエーテル(PPE)を主材料とする樹脂材料で形成した。
【0033】
[落錘試験]
所定の高さから1.0Kgの重りを電池収容トレイに向けて落下させて、電池収容トレイの破壊の有無を確認する落錘試験を行った。落錘試験は、参考例及び実施例のそれぞれで2つのサンプルについて行った。試験結果を表1に示す。表1には、破損無しを○で、破損有りを×で示した。
【0034】
【0035】
上記表1に示すように、参考例の電池収容トレイでは、2つのサンプルの電池挿入側が0.3mまで破損しなかった。一方、実施例の電池収容トレイでは、2つのサンプルの電池挿入側が0.5mまで破損しなかった。すなわち、参考例の電池収容トレイは、1.0[Kg]×9.8[m/s2]×0.3[m]=2.94[J]の力学的エネルギーを有する衝撃を耐えることができたのに対して、実施例の電池収容トレイは、1.0[Kg]×9.8[m/s2]×0.5[m]=4.90[J]と参考例の約1.67倍の力学的エネルギーを有する衝撃に耐えることができた。このように、実施例の電池収容トレイは、参考例の電池収容トレイに比べて格段に大きな強度を有することが確認された。
【0036】
[本開示の電池収容トレイの構成と、その作用効果]
以上、本開示の電池収容トレイ1は、それぞれが電池を収容すると共に互いに間隔をおいて配置される、複数の収容部31を備える。また、各収容部31は、Z方向の電池の挿入側から見たときに円環形状を有する挿入側円環部32で画定される挿入口36を有する。また、電池収容トレイ1は、挿入側円環部32の外周面をそれに隣り合う挿入側円環部32の外周面に連結する挿入側連結部33を有し、複数の挿入側円環部32が複数の挿入側連結部33で連結されて一体となっている。
【0037】
したがって、電池収容トレイ1が上記実施例の電池収容トレイと同一の電池挿入側の構造を有するので、平面視において収容部が四角の挿入口を有して、隣接する収容部が共通の側壁で区切られるような電池収容トレイと比較して、電池収容トレイの電池挿入側の構造(挿入側格子構造35)の強度を大きくすることができ、ひいては、電池収容トレイの強度も大きくすることができる。
【0038】
また、電池挿入側の構造が、複数の挿入側円環部32を複数の挿入側連結部33で連結して一体にする格子構造となっているので、隣り合う挿入側円環部32の間の全てに材料を充填する場合との比較で、電池収容トレイの電池挿入側の構造を軽量化できる。
【0039】
よって、材料の使用量を低減し易く、強度を向上させ易い電池収容トレイ1を実現でき、互いに相反する特性、すなわち、電池収容トレイ1の強度の向上と、電池収容トレイ1の材料の使用量の低減の両方を共に実現させることができる。
【0040】
また、挿入側円環部32で画定される挿入口36の平面視における形状が円形になるので、電池挿入時に電池が収容部31に引っ掛かることを抑制でき、電池収容トレイ1が電池挿入時に破損しにくくなる。
【0041】
[採用すると好ましい電池収容トレイの構成と、その作用効果]
複数の挿入側連結部33は、格子状に配置されてもよい。そして、Z方向の電池の挿入側から見たときに、各挿入側連結部33が挿入側円環部32の中心と、その挿入側円環部32に隣り合う挿入側円環部32の中心とを結ぶ線分上に位置してもよい。
【0042】
上記の構成によれば、電池収容トレイの電池挿入側の挿入側格子構造35におけるXY平面での質量密度をXY平面上の位置に拠らず均一な値に近づけることができる。したがって、電池収容トレイの電池挿入側の構造のXY平面での存在箇所における強度差を小さくでき、その結果、電池収容トレイ1の強度を更に大きくできる。
【0043】
各収容部31は、Z方向の挿入口側とは反対側に円環形状を有すると共に電池を支持する受け側円環部42を有してもよい。また、受け側円環部42の外周面をそれに隣り合う受け側円環部42の外周面に連結する受け側連結部43を有してもよい。また、複数の受け側円環部42が複数の受け側連結部43で連結されて一体となっていてもよい。そして、受け側連結部43の延在方向が、挿入側連結部33の延在方向に対して傾斜してもよい。
【0044】
上記の構成によれば、受け側連結部43の延在方向が、挿入側連結部33の延在方向に対して傾斜しているので、電池収容トレイ1のZ方向の電池挿入側の構造においてXY平面内における大きな衝撃に耐えることができる方向と、電池収容トレイ1のZ方向の電池受け側の構造においてXY平面内における大きな衝撃に耐えることができる方向とを異ならせることができる。更には、Z方向から見たときに、挿入側連結部33において受け側連結部43に重ならない部分を大きくでき、特に、上記実施形態のように、挿入側連結部33の延在方向が受け側連結部43の延在方向に45°をなして傾斜する場合、Z方向から見たときに、挿入側連結部33を受け側連結部43に全く重ならないようにできる。よって、電池収容トレイ1をZ方向からの衝撃にも強い構造にすることができる。
【0045】
したがって、電池収容トレイ1が、いずれの方向からの衝撃を受けても破損しにくくなり、電池収容トレイ1の強度を更に大きくすることができ、特に、挿入側連結部33の延在方向が受け側連結部43の延在方向に45°をなして傾斜する場合、電池収容トレイ1の強度を格段に大きくすることができる。また、電池収容トレイ1が、Z方向の電池受け側にも、格子構造を有することになるので、電池収容トレイ1におけるZ方向の電池受け側の軽量化も実現できる。よって、電池収容トレイ1の強度を更に大きくすることができ、電池収容トレイ1の更なる軽量化も実現できる。
【0046】
更に、X方向又はY方向を電池収容トレイ1の搬送方向に一致させて電池収容トレイ1を搬送させる場合、受け側連結部43が搬送ローラに引っ掛かりにくくなり、電池収容トレイ1を円滑に搬送させることができる。
【0047】
収容部31において、電池の側面を覆う側壁52が収容部31の内側スペースと収容部31の外側スペースを連通させる切欠き62を有してもよい。
【0048】
上記の構成によれば、成形に使用する材料を低減でき、製作コストを削減できる。また、トレイ重量を軽量化できるので、搬送への負担も軽減できる。また、電池収容トレイ1に収容された電池を速やかに昇温又は冷却することができる。
【0049】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、挿入側連結部33の延在方向が受け側連結部43の延在方向に45°をなして傾斜して、Z方向から見たときに、挿入側連結部33が受け側連結部43に全く重ならない場合について説明した。しかし、本開示の電池収容トレイは、挿入側連結部の延在方向が受け側連結部の延在方向に45°以外の角度をなして傾斜して、Z方向から見たときに、挿入側連結部が受け側連結部に全く重ならない構造を有してもよい。
【0051】
又は、複数の挿入側連結部が、少なくとも1つの受け側連結部の延在方向と略平行に延在する挿入側連結部を含む構成でもよい。又は、Z方向から見たときに、複数の挿入側連結部がいずれかの受け側連結部に重なる挿入側連結部を含む構成でもよい。又は、収容部の受け側が格子構造でなくて、収容部の電池受け部が底板を有する構造でもよい。
【0052】
異なる2つの挿入側連結部33の間を連結する連結部が存在しない場合について説明した。しかし、異なる2つの挿入側連結部33の間を連結する1以上の補強連結部が存在してもよい。
【0053】
複数の収容部31が、Z方向から見たとき行間と列間が等しいマトリクス状に配置される場合について説明した。しかし、上述のように、複数の収容部は、Z方向から見たとき千鳥配置されてもよく、挿入側連結部が、受け側連結部に45°以外の角度で傾斜し、例えば、30°程度の角度で傾斜するようにしてもよい。また、収容部31が側方に切欠き62を有する場合について説明したが、収容部は、側方に切欠きを有さなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 電池収容トレイ、 10 枠体、 30 電池収容構造、 31,231 収容部、 32,32a,32b 挿入側円環部、 33 挿入側連結部、 33a 第1挿入側連結部、 33b 第2挿入側連結部、 35 挿入側格子構造、 36 挿入口、 42,42a,42b 受け側円環部、 43 受け側連結部、 43a 第1受け側連結部、 43b 第2受け側連結部、 45 受け側格子構造、 46 受け側開口、 52 側壁、 52a 高さ方向延在部、 52b 径方向延在部、 62,262 切欠き、 72 凸状突出部、 131 収容部、 190,290 第1金型、 195,295 第2金型。