(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-24
(45)【発行日】2025-07-02
(54)【発明の名称】電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/095 20060101AFI20250625BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20250625BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20250625BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
B32B15/095
C09J175/04
C09J11/06
C08G18/76
(21)【出願番号】P 2023537531
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2021019204
(87)【国際公開番号】W WO2022139328
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179816
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハ, ボンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ, ドンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ノ, テヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ギョンリョル
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-042756(JP,A)
【文献】国際公開第2011/070865(WO,A1)
【文献】特開平02-003487(JP,A)
【文献】特開2019-077818(JP,A)
【文献】特開2001-294838(JP,A)
【文献】特表2016-524000(JP,A)
【文献】特開昭56-057867(JP,A)
【文献】特開2013-095759(JP,A)
【文献】特開平11-181397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0096983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 18/00- 18/87、 71/00- 71/04
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板基材;および
前記電磁鋼板の基材上に位置するボンディングコーティング層を含み、
前記ボンディングコーティング層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、
前記接着樹脂は下記化学式
7、化学式
8またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタン
であることを特徴とする電磁鋼板。
[化学式7]
[化学式8]
前記化学式7または化学式8において、
R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、
Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、
R
11
は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、
nは1~10のいずれか一つの整数であり、
mは1以上である。
【請求項2】
複数の電磁鋼板および
前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層を含み、
前記融着層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、
前記接着樹脂は下記化学式
7、化学式
8またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンであることを特徴とする電磁鋼板積層体。
[化学式7]
[化学式8]
前記化学式7または化学式8において、
R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、
Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、
R
11
は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、
nは1~10のいずれか一つの整数であり、
mは1以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法に関する。具体的には、本発明の一実施形態はウレタン樹脂を含む電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は圧延板上のすべての方向に磁気的特性が均一な鋼板であって、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器などに広く使用されている。
電磁鋼板は打ち抜き加工後の磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA)を実施しなければならないものと、応力除去焼鈍による磁気的特性効果よりも熱処理によるコスト損失が大きい場合に応力除去焼鈍を省略する二つの形態に区分することができる。
絶縁被膜はモータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器など積層体の仕上げ製造工程でコートされる被膜であって、通常渦電流の発生を抑制させる電気的特性が求められる。その他にも連続打ち抜き加工性、耐粘着性および表面密着性などが求められる。連続打ち抜き加工性とは、所定の形状に打ち抜き加工した後に多数を積層して鉄心にする際、金型の摩耗を抑制する能力を意味する。耐粘着性とは、鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させる応力除去焼鈍過程後の鉄心鋼板間の密着しない能力を意味する。
このような基本的な特性のほか、コーティング溶液の優れた塗布作業性および配合後の長時間使用が可能な溶液安定性なども求められる。このような絶縁被膜は電磁鋼板積層体として製造するためには溶接、クランピング、インターロッキングなど別途の締結方法を用いなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が目的とするところは、溶接、クランピング、インターロッキングなど従来の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供することであり、具体的には、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させた電磁鋼板接着コーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のボンディング組成物は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂は下記化学式1、化学式2またはその組み合わせであるモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンである。
【0005】
【0006】
【0007】
前記化学式1において、
R1~R10は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、R3およびR8が同時にイソシアネートである場合は除外され、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、nは1~10のいずれか一つの整数である。
【0008】
前記化学式2において、R11~R16は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、イソシアネート基または置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネート基であり、R11~R16の少なくとも二つはイソシアネートまたは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネートである。
【0009】
前記化学式1において、R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、R3およびR8が同時にイソシアネートである場合は除外され、R1およびR10が同時にイソシアネートである場合がさらに除外される。
前記化学式1において、R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、R1~R5のいずれか一つおよびR6~R10のいずれか一つがLを中心に対称的に同時にイソシアネートであることをさらに除く。
前記化学式1で表されるモノマーは下記化学式3で表されるものである。
【0010】
【0011】
前記化学式3において、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基である。
前記Lはメチレン基である。
前記化学式2で表されるモノマーは下記化学式4で表されるものである。
【0012】
【0013】
前記化学式4において、R11は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり得る。
【0014】
本発明の電磁鋼板は、電磁鋼板基材および前記電磁鋼板の基材上に位置するボンディングコーティング層を含み、前記ボンディングコーティング層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂は下記化学式5、化学式6またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンを含む。
【0015】
【0016】
【0017】
前記化学式5または化学式6において、Lまたはアミド官能基(CONH)はベンゼン環の任意の炭素に結合し、ベンゼン環のうちLまたはアミド官能基が結合されていない炭素は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、nは1~10のいずれか一つの整数であり、mは1以上である。
前記接着樹脂は、下記化学式7、化学式8またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンである。
【0018】
【0019】
【0020】
前記化学式7または化学式8において、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、R11は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、nは1~10のいずれか一つの整数であり、mは1以上である。
【0021】
本発明の電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板;および前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層を含み、前記融着層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂は下記化学式5、化学式6またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンである。
【0022】
【0023】
【0024】
前記化学式5または化学式6において、Lまたはアミド官能基(CONH)はベンゼン環の任意の炭素に結合し、ベンゼン環のうちLまたはアミド官能基が結合されていない炭素は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、nは1~10のいずれか一つの整数であり、mは1以上である。
前記接着樹脂は、下記化学式7、化学式8またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンである。
【0025】
【0026】
【0027】
前記化学式7または化学式8において、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、R11は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、nは1~10のいずれか一つの整数であり、mは1以上である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させることができる。
また、溶接、クランピング、インターロッキングなど従来の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着することができる。
さらに、塗膜密着性、剥離特性および耐ATF特性にいずれも優れる電磁鋼板接着コーティング組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限られない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと称することができる。
ここで使用される専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分の「上に」または「の上に」あるという場合、これは他の部分のすぐ上にまたは上にあるか、その間に他の部分が介在し得る。逆にある部分が他の部分の「すぐ上に」あるという場合、その間に他の部分が介在しない。
別に定義していないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在の開示された内容に合う意味を有すると追加解析され、定義されない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈されない。
【0030】
本明細書における「置換」とは、別段の定義がない限り、化合物のうち少なくとも一つの水素がC1~C30アルキル基;C1~C10アルコキシ基;シラン基;アルキルシラン基;アルコキシシラン基;エチレンオキシル基で置換されたことを意味する。
本明細書における「ヘテロ」とは、別段の定義がない限り、N、O、SおよびPからなる群より選ばれる原子を意味する。
前記アルキル基はC1~C20のアルキル基であり得、具体的にはC1~C6の低級アルキル基、C7~C10の中級アルキル基、C11~C20の高級アルキル基であり得る。
例えば、C1~C4アルキル基はアルキル鎖に1~4個の炭素原子が存在するものを意味し、これはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選ばれるものを示す。
典型的なアルキル基にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。
【0031】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施例に限られない。
本発明は電磁鋼板用ボンディング組成物を提供する。本発明の記載のうち接着コーティング組成物もボンディング組成物を示すために使用される用語である。また、本発明のボンディング組成物は、2個以上の鋼板の面を接着させる組成物であり、その用途については特に制限しないが、例えば電磁鋼板のセルフボンディングを提供するための電磁鋼板用セルフボンディング組成物であり得る。
本発明の一実施形態の電磁鋼板用ボンディング組成物は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含み得、前記接着樹脂は下記化学式1、化学式2またはその組み合わせであるモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり得る。
【0032】
【0033】
【0034】
前記化学式1において、
R1~R10は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、R3およびR8が同時にイソシアネートである場合は除外され、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、nは1~10のいずれか一つの整数である。
【0035】
前記化学式2において、
R11~R16は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、イソシアネート基または置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネート基であり、R11~R16の少なくとも二つはイソシアネートまたは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネートである。
【0036】
前記化学式1で表されるモノマーは、R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、R3およびR8が同時にイソシアネートである場合は除外され、R1およびR10が同時にイソシアネートである場合がさらに除外され得る。
前記化学式1で表されるモノマーは、R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、R1~R5のいずれか一つおよびR6~R10のいずれか一つがLを中心に対称的に同時にイソシアネートであることをさらに除くことができる。
具体的には、前記化学式1で表されるモノマーは下記化学式3で表されるものであり得る。
【0037】
【0038】
前記化学式3において、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり得る。
具体的には、前記化学式1または3において、Lはメチレン基であり得る。
具体的には、前記化学式2で表されるモノマーは下記化学式4で表されるものであり得る。
【0039】
【0040】
前記化学式4において、R11は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり得る。
より具体的には、前記化学式1、2、3、または4で表示されるモノマーは、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,2’-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネートからなる群より選ばれた1種以上であり得る。
前記ポリオールは化学式9のポリオールであり得る。
【0041】
[化学式9]
前記化学式9において、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり得る。
【0042】
前記ポリオールは数平均分子量が400~1000g/molであり得る。また、前記ポリオールはポリ(プロピレングリコール)であり得る。
【0043】
ポリウレタン樹脂の含有量が電磁鋼板用ボンディング組成物の全体重量に対して98重量%以上であり得る。本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は組成物に含まれる樹脂成分以外のボンディング添加剤の含有量を最小化し、樹脂成分の含有量を最大化することによって、優れた鋼板接着力を示すことができる。
前記ボンディング添加剤は一般的なボンディング組成物に使用されるものであれば、制限はないが、例えば、カップリング剤、湿潤剤、硬化剤、硬化触媒などが含まれ得る。
【0044】
具体的には、カップリング剤としてはシランカップリング剤が含まれ得、より具体的には、ビニル系シランカップリング剤およびメタクリルオキシ系シランカップリング剤のうち1種以上が含まれ得る。ビニル系シランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン(Vinyl trimethoxy silane)、ビニルトリエトキシシラン(Vinyl triethoxy silane)などが挙げられる。メタクリルオキシ系シランカップリング剤としては3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(3-Methacryloxypropyl methyldimethoxysilane)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-Methacryloxpropyl trimethoxysilane)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(3-Methacyloxypropyl methyldiethoxysilane)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(3-Methacryloxpropyl triethoxysilane)が挙げられる。
【0045】
具体的には、湿潤剤としてはシリコン系湿潤剤が含まれ得る。シリコン系湿潤(Wetting)添加剤の例としてはポリエーテル改質されたポリジメチルシロキサン(Polyether-modified polydimethylsiloxane)が挙げられる。湿潤剤は電磁鋼板と融着層の界面接着力を強化させるために電磁鋼板用ボンディング組成物に添加され得る。
具体的には、硬化剤としては脂肪族アミン系、芳香族アミン系、アミノアミン系、またはイミダゾール系を含み得る。より具体的には、ジシアンジアミド系硬化剤が含まれ得る。
具体的には、硬化触媒としてはイミダゾール系硬化触媒が含まれ得る。
【0046】
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、ポリウレタン樹脂100重量部に対してカップリング剤を0.10~1.00重量部さらに含み得る。具体的には、カップリング剤を0.40~0.60重量部さらに含み得る。架橋剤を過度に少なく含む場合は、電磁鋼板と融着層の界面接着力の強化効果が十分に得られない。架橋剤を過度に多く含む場合は架橋剤間の反応によって接着コーティング組成物内に沈殿物が発生し得る。
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、ポリウレタン樹脂100重量部に対して硬化剤を0.50~2.50重量部さらに含み得る。具体的には硬化剤を0.90~1.10重量部さらに含み得る。硬化剤は接着コーティング層表面の反応性を調節する役割をする。硬化剤が過度に少なく含まれる場合は、融着層の硬化反応が低下し、融着層表面の粘着性(sticky)が劣る問題が発生し得る。逆に硬化剤が過度に多く添加される場合には低温融着後の締結力が劣る。
【0047】
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、ポリウレタン樹脂100重量部に対して湿潤剤を0.05~0.50重量部さらに含み得る。具体的には湿潤剤を0.09~0.11重量部さらに含み得る。
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、ポリウレタン樹脂100重量部に対して硬化触媒を0.10~1.00重量部さらに含み得る。具体的には硬化触媒を0.40~0.60重量部さらに含み得る。
本発明のポリウレタン樹脂は数平均分子量が3,000~20,000g/molであり得る。
【0048】
本発明の電磁鋼板は、電磁鋼板基材および前記電磁鋼板の基材上に位置するボンディングコーティング層を含み、前記ボンディングコーティング層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、接着樹脂は下記化学式5、化学式6またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンを含むポリウレタンである。
【0049】
【0050】
[化学式6]
前記化学式5または化学式6において、Lまたはアミド官能基(CONH)はベンゼン環の任意の炭素に結合し、ベンゼン環のうちLまたはアミド官能基が結合されていない炭素は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、nは1~10のいずれか一つの整数であり、mは1以上である。具体的にはmはポリウレタンに含まれる繰り返し単位体の個数であり、目的とするポリウレタン分子量によって異なるようにすることができる。
【0051】
前記化学式5の繰り返し単位体は、化学式1のモノマーとポリオールの重合反応によって生成されることができ、化学式2のモノマーとポリオールの重合反応によって生成されることができる。
具体的には、前記ボンディングコーティング層に含まれる接着樹脂は、下記化学式7、化学式8またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンである。
【0052】
【0053】
【0054】
前記化学式7または化学式8において、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、R11は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、nは1~10のいずれか一つの整数であり、mは1以上である。具体的にはmはポリウレタンに含まれる繰り返し単位体の個数であり、目的とするポリウレタン分子量によって異なるようにすることができる。
【0055】
前記化学式7の繰り返し単位体は、化学式3のモノマーとポリオールの重合反応によって生成されることができ、化学式8の繰り返し単位体は化学式4のモノマーとポリオールの重合反応によって生成されることができる。
【0056】
前記電磁鋼板の基材上に位置するボンディングコーティング層は前述した電磁鋼板用ボンディング組成物から由来したものであり得る。ボンディングコーティング層のより具体的な特徴に係る説明は、前記ボンディング組成物に詳しく作成されているので、その説明をもってこれに代える。
【0057】
本発明の電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板および前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層;を含み、前記融着層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、接着樹脂は下記化学式5、化学式6またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンを含み得る。
【0058】
【0059】
【0060】
前記化学式5または化学式6において、
Lまたはアミド官能基(CONH)はベンゼン環の任意の炭素に結合し、ベンゼン環のうちLまたはアミド官能基が結合されていない炭素は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、nは1~10のいずれか一つの整数であり、mは1以上である。
【0061】
具体的には、mはポリウレタンに含まれる繰り返し単位体の個数であり、目的とするポリウレタン分子量によって異なるようにすることができる。
具体的には、前記融着層に含まれる接着樹脂は、下記化学式7、化学式8またはこれらの組み合わせで表される繰り返し単位体を含むポリウレタンを含み得る。
【0062】
【0063】
【0064】
前記化学式7または化学式8において、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、R11は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり、nは1~10のいずれか一つの整数であり、mは1以上である
【0065】
。
具体的には、mはポリウレタンに含まれる繰り返し単位体の個数であり、目的とするポリウレタン分子量によって異なるようにすることができる。
前記積層体の間に位置するボンディングコーティング層は前述した電磁鋼板用ボンディング組成物から由来したものであり得る。ボンディングコーティング層のより具体的な特徴に係る説明は、前記ボンディング組成物に詳しく作成されているので、その説明をもって代える。
【0066】
前記電磁鋼板積層体の融着層の厚さは0.1~10μmであり得る。融着層の厚さが薄すぎると、接着力が急激に低下し得、厚すぎるとコーティング巻き取り後に粘着性による問題が発生し得る。より具体的には融着層の厚さは5~7μmであり得る。
前記電磁鋼板積層体の融着層内にカップリング剤、湿潤剤、硬化触媒、硬化剤などは残存し得る。
【0067】
本発明の電磁鋼板積層体の製造方法は、電磁鋼板の一面または両面に接着コーティング組成物を塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階および接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し熱融着して融着層を形成する段階を含み得る。
以下、各段階別に詳細に説明する。
先に、接着コーティング組成物を準備する。接着コーティング組成物については前述したので、重複する説明は省略する。
次に、接着コーティング組成物を電磁鋼板の表面にコートした後、硬化させて接着コーティング層を形成する。この段階は接着コーティング組成物の硬化のために板温を基準として150~250℃の温度範囲で行われる。
接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層20を形成する。熱融着段階により接着コーティング層内の高分子成分が熱融着して、融着層を形成する。
【0068】
熱融着段階は150~250℃の温度、0.05~5.0Mpaの圧力および0.1~120分の加圧条件で熱融着する。前記条件はそれぞれ独立して満たしてもよく、2以上の条件を同時に満たしてもよい。このように熱融着段階での温度、圧力、時間条件を調節することによって、電磁鋼板の間に、ギャップや、有機物相なしに、密に熱融着することができる。
前記イソシアネートモノマーにおける置換基のさらなる限定は、前記電磁鋼板用ボンディング組成物で説明した内容と同様であるため、電磁鋼板および電磁鋼板積層体そして製造方法での説明は省略する。
【0069】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例だけであり、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実験例
無方向性電磁鋼板(50×50mm、0.35mmt)を供試片として準備した。接着コーティング溶液をバーコータ(Bar Coater)およびロールコータ(Roll Coater)を用いてそれぞれ準備された供試片の上部と下部に一定の厚さで塗布し、板温を基準として150~200℃で20秒間硬化した後、空気中でゆっくり冷却させて、接着コーティング層を形成した。
接着コーティング溶液としては表1および表2組成のボンディング溶液を使用した。表1はウレタン樹脂の単独使用であり、表2はエポキシ樹脂の単独使用またはエポキシとウレタンを混合した樹脂使用を開示した。ボンディング樹脂以外の接着コーティング溶液組成はボンディング樹脂100重量部を基準としてシランカップリング剤0.5重量部、シリコン系湿潤剤(wetting agent)0.1重量部、ジシアンジアミド系硬化剤1重量部およびイミダゾール系硬化触媒0.5重量部を含む。
【0070】
表1のMDIは、Methylene Diphenyl Diisocyanate、TDIはToluene Diisocyanateを意味し、PPGはポリ(プロピレングリコール)(水分子量425g/mol)である。
エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型のエポキシ樹脂で、数平均分子量が10,000g/molであり、水酸価が10mgKOH/gのものを使用した。
接着コーティング層がコートされた電磁鋼板を高さ20mmで積層した後、0.5MPaの力で加圧して160℃、10分間熱融着した。熱融着後の融着層の厚さは約6μmであった。熱融着した融着体を溶液の種類別に評価した。評価項目としては剥離接着力(T-peel,N/mm)および耐ATF特性を評価して下記表1および2に示した。
【0071】
それぞれの測定方法は次のとおりである。
剥離接着力(T-peel,N/mm):剥離法(T-Peel off)測定のための試験片の規格はISO11339に準じて製作した。25×200mm試験片二枚を25×150mm2の面積で接着した後、未接着部位を90度に曲げてT状の引張試験片を製作した。剥離法(T-Peeloff)で製作された試片を上部/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引っ張りながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を用いて測定した。この時、剪断法の場合、測定された値は積層されたサンプルの界面のうち最小接合力を有する界面が脱落する地点を測定した。加熱装置により試験片の温度を60℃に維持した後に接着力を測定した。
【0072】
耐ATF特性の評価法:駆動モータを自動車に使用する場合、高速で長時間回転すると多くの熱が発生し、これを冷却するためにATF (Automotive Transmission Fluid、自動車ミッションオイル)を使用する。そのため、長期間使用時の接着信頼度を確保するためには高温のATFに含浸された状態で積層コイルの接着力が維持されることが重要である。したがって、耐ATF特性を評価した。前記製造された積層コイルを150℃温度のATFに500時間含浸した後に剪断接着力をテストした。
【0073】
前記耐ATF特性を測定するための剪断接着力は剪断法(Shear Strength)で測定した。剪断法測定のための試験片の規格はISO4587に準じて製作した。25×100mm試験片二枚を12.5×25mm2の面積で接着し、前記条件で熱融着して剪断法試験片を製作した。
剪断法で製作された試片を上部/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引っ張りながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を用いて測定した。この時、剪断法の場合、測定された値は積層されたサンプルの界面のうち最小接合力を有する界面が脱落する地点を測定した。
【0074】
【0075】
【0076】
前記表1、2の結果から、ポリウレタンのみをボンディング樹脂として含む実施例がT-peel特性および耐AFT特性においていずれも優れることが確認できた。特に、表2の結果から、エポキシの単独使用だけでなくエポキシにウレタンを混合した場合でも、T-peel特性(剥離特性)が劣ることが確認できた。
【0077】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。