(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-24
(45)【発行日】2025-07-02
(54)【発明の名称】バイオチップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/414 20060101AFI20250625BHJP
【FI】
G01N27/414 301U
G01N27/414 301V
G01N27/414 301Y
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024050277
(22)【出願日】2024-03-26
【審査請求日】2024-03-26
(32)【優先日】2023-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】524115969
【氏名又は名称】漢磊科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】EPISIL TECHNOLOGIES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】許 文廷
(72)【発明者】
【氏名】劉 徳權
(72)【発明者】
【氏名】李 國瑜
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-046260(JP,A)
【文献】特開2012-073104(JP,A)
【文献】特開2008-128803(JP,A)
【文献】特開2021-099330(JP,A)
【文献】特表2022-540297(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225660(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
G01N 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検液中の生体物質を検出するように構成されたバイオチップであって、
基板と、
前記基板上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層上に配置され、反応領域を有する半導体層と、
前記半導体層上に配置され、
前記半導体層の前記反応領域を露出させる第1の開口部を有する誘電層と、
前記誘電層上に配置され、
それぞれ前記半導体層に電気的に接続されたソース及びドレインと、
前記第1の開口部、前記ソース、及び前記ドレインを取り囲む壁構造と、
を含む金属層と、
前記金属層上に配置され、平坦部、突出部、第2の開口部、及び第3の開口部を有する保護層と、
を備え、
前記平坦部は、前記第2の開口部を取り囲んで画定し、前記突出部は、前記壁構造に対応して配置され、前記突出部は、前記第3の開口部を取り囲んで画定し、
前記第2の開口部は、前記第3の開口部と前記第1の開口部を接続して、前記反応領域を露出させる、
バイオチップ。
【請求項2】
前記ソース、前記ドレイン、及び前記壁構造は互いに分離され、前記ソース及び前記ドレインは、前記壁構造から電気的に絶縁される、
請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項3】
前記バイオチップの立体図では、前記壁構造は、前記第1の開口部を完全には取り囲まない、
請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項4】
前記バイオチップの立体図では、前記壁構造は、前記第1の開口部を完全に取り囲む、
請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項5】
前記壁構造と前記ソースの間の最小距離は、0.1マイクロメートルから5マイクロメートルである、
請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項6】
前記バイオチップの立体図では、前記第3の開口部は前記第2の開口部よりも大きい、
請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項7】
前記突出部は、前記第1の開口部及び前記第2の開口部を完全に取り囲む、
請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項8】
被検液は第1の開口内に配置され、被検液の上面は、突出部の上面と平坦部の上面との間に位置する、
請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項9】
前記金属層は、ソース拡張パッド及びドレイン拡張パッドをさらに備え、
前記バイオチップは、
前記絶縁層上にそれぞれ配置された第1の転送パッド及び第2の転送パッドと、をさらに備え、
前記ソースは、前記第1の転送パッドを介して前記ソース拡張パッドに電気的に接続され、前記ドレインは、前記第2の転送パッドを介して前記ドレイン拡張パッドに電気的に接続される、
請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項10】
被検液中の生体物質を検出するように構成されたバイオチップの製造方法であって、
基板を提供することと、
前記基板上に絶縁層を形成することと、
前記絶縁層上に反応領域を有する半導体層を形成することと、
前記半導体層の前記反応領域を露出させる第1の開口部を有する誘電層を半導体層上に形成することと、
それぞれ前記半導体層に電気的に接続されたソース及びドレインと、
前記第1の開口部、前記ソース、及び前記ドレインを取り囲む壁構造と、
を備える金属層を前記誘電層上に形成することと、
平坦部、突出部、第2の開口部、及び第3の開口部を有する保護層を前記金属層上に形成することと、
を備え、
前記平坦部は、前記第2の開口部を取り囲んで画定し、前記突出部は、前記壁構造に対応して配置され、前記突出部は、前記第3の開口部を取り囲んで画定し、
前記第2の開口部は、前記第3の開口部と前記第1の開口部を接続して、前記反応領域を露出させる、
バイオチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ及びその製造方法に関し、特に、バイオチップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なバイオチップでは、通常、反応領域の大きさによって被検液を入れることができる空間が制限されるため、被検液の量が多くなったり、被検液の添加を誤ったりすると、被検液がオーバーフローする問題が発生しやすくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、被検液のオーバーフローの問題を回避し、多量の被検液に対応できるバイオチップ及びその製造方法を提供する。これにより、バイオチップ内に複数の反応領域が配置されている場合、反応領域をそれぞれ異なる種類の生体物質の検出に利用することができ、異なる反応領域間での被検液のオーバーフローによるクロスコンタミネーションの問題を心配する必要がなく、したがって、複数の生体物質を同時に検出する効果を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のバイオチップは、被検液中の生体物質を検出するように構成されて良い。バイオチップは、基板、絶縁層、半導体層、誘電層、金属層、及び保護層を含む。絶縁層は、基板上に配置される。半導体層は、絶縁層上に配置され、反応領域を有する。誘電体層は、半導体層上に配置され、第1の開口部を有する。金属層は、誘電体層上に配置され、ソース、ドレイン、及び壁構造を含む。ソース及びドレインは、それぞれ半導体層に電気的に接続される。壁構造は、第1の開口部、ソース及びドレインを取り囲む。保護層は、金属層上に配置され、平坦部、突出部、第2の開口部、及び第3の開口部を有する。平坦部は、第2の開口部を取り囲んで画定する。突出部は、壁構造に対応して配置され、突出部は、第3の開口部を取り囲んで画定する。第2の開口部は、第3の開口部と第1の開口部を接続して反応領域を露出させる。
【0005】
本発明の一実施形態において、ソース、ドレイン及び壁構造は互いに分離され、ソース及びドレインは壁構造から電気的に絶縁される。
【0006】
本発明の一実施形態において、バイオチップの立体図では、壁構造は第1の開口部を完全には取り囲まない。
【0007】
本発明の一実施形態において、バイオチップの立体図では、壁構造は、第1の開口部を完全に取り囲む。
【0008】
本発明の一実施形態において、壁構造と線源の間の最小距離は、0.1マイクロメートルから5マイクロメートルである。
【0009】
本発明の一実施形態において、バイオチップの立体図では、第3の開口部は第2の開口部よりも大きい。
【0010】
本発明の一実施形態において、突出部は、第1の開口部及び第2の開口部を完全に取り囲む。
【0011】
本発明の一実施形態において、被検液は第1の開口部内に配置され、被検液の上面は突出部の上面と平坦部の上面との間に位置する。
【0012】
本発明の一実施形態において、金属層は、ソース拡張パッド及びドレイン拡張パッドをさらに備え、バイオチップは、第1の転送パッド及び第2の転送パッドをさらに備える。第1の転送パッド及び第2の転送パッドは、絶縁層上にそれぞれ配置される。ソースは、第1の転送パッドを介してソース拡張パッドに電気的に接続され、ドレインは、第2の転送パッドを介してドレイン拡張パッドに電気的に接続される。
【0013】
本発明のバイオチップの製造方法は、以下を含む。基板が提供される。基板上に絶縁層が形成される。絶縁層上に半導体層が形成される。半導体層は反応領域を有する。半導体層上に誘電体層が形成される。誘電体層は第1の開口部を有する。誘電体層上に金属層が形成される。金属層は、ソース、ドレイン、及び壁構造を含む。ソース及びドレインはそれぞれ半導体層に電気的に接続され、壁構造は、第1の開口部、ソース及びドレインを取り囲む。金属層上に保護層が形成される。保護層は、平坦部、突出部、第2の開口部及び第3の開口部を有する。平坦部は、第2の開口部を取り囲んで画定する。突出部は、壁構造に対応して配置され、突出部は、第3の開口部を取り囲んで画定する。第2の開口部は、第3の開口部と第1の開口部を接続して、反応領域を露出させる。
【発明の効果】
【0014】
以上に基づいて、本発明に係るバイオチップ及びその製造方法では、壁構造を設定することにより、保護層の形成と同時に突出部を形成することができるため、工程を簡略化する効果がある。突出部が第1の開口部を囲む閉パターンであって良いため、被検液が第3の開口部内に限定され、第3の開口部の外に被検液がオーバーフローするのを防ぐことができる。一般的なバイオチップと比較して、本発明のバイオチップは、第3の開口部の設定により、被検液を保持できるバイオチップの体積を増加させることができるため、被検液のオーバーフローを回避し、大量の被検液に対応し、バイオチップの動作裕度や利便性を向上させることができる。このようにして、本発明のバイオチップに複数の反応領域が配置されている場合、反応領域をそれぞれ異なる種類の生体物質の検出に利用でき、異なる反応領域間での被検液のオーバーフローによるクロスコンタミネーションの問題を心配する必要がなく、したがって、複数の生体物質を同時に検出する効果を達成することができる。
【0015】
前述の内容をより理解しやすくするために、図面を参照していくつかの実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明の例示的な実施形態を示し、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【
図1】本発明の一実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
【
図5】
図4のバイオチップの切断線I‐I’に沿った概略断面図である。
【
図6】
図4のバイオチップの切断線II‐II’に沿った概略断面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
【
図9】本発明の別の実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
【
図10】本発明の別の実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
【
図11】
図10のバイオチップの切断線III‐III’に沿った概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から
図4は、本発明の一実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
図5は、
図4のバイオチップの切断線I‐I’に沿った概略断面図である。
図6は、
図4のバイオチップの切断線II‐II’に沿った概略断面図である。図面を明確にし、図示を容易にするために、
図4では、バイオチップ100内の半導体層120、金属層140、及び被検液200を省略している。
【0018】
まず、
図4~
図6を参照すると、本実施形態のバイオチップ100は、基板110、絶縁層IL、半導体層120、誘電層130、金属層140、及び保護層150を含んで良い。半導体層120は、絶縁層IL上に配置され、反応領域121を有する。誘電層130は、半導体層120上に配置され、第1の開口部O1を有する。金属層140は、誘電層130上に配置され、ソースSD1、ドレインSD2、及び壁構造141を含む。ソースSD1及びドレインSD2は、それぞれ半導体層120に電気的に接続される。壁構造141は、第1の開口部O1、ソースSD1、及びドレインSD2を取り囲む。保護層150は、金属層140上に配置され、平坦部151、突出部152、第2の開口部O2、及び第3の開口部O3を有する。平坦部151は、第2の開口部O2を囲んで画定する。突出部152は、壁構造141に対応して配置され、突出部152は、第3の開口部O3を取り囲んで画定する。第2の開口部O2は、第3の開口部O3と第1の開口部O1を接続し、反応領域121を露出させる。また、本実施形態のバイオチップ100は、被検液200中の生体物質210を検出するように構成されても良い。
【0019】
次に、本実施形態のバイオチップ100の製造方法について説明する。本実施形態のバイオチップ100の製造方法は、以下の工程を含んで良い。
【0020】
まず、
図1を参照すると、基板110が提供される。本実施形態において、基板110はシリコン基板又はシリコンウェハであって良い。例えば、基板110はP型シリコン基板であって良いが、これに限定されるものではない。
【0021】
次に、
図1を参照すると、基板110上に絶縁層ILが形成される。本実施形態において、絶縁層ILは、例えば、ゲート酸化層であるが、これに限定されるものではない。
【0022】
次に、
図1を参照すると、絶縁層IL上に半導体層120が形成される。本実施形態において、半導体層120は、反応領域121、ソース領域122、及びドレイン領域123を有する。反応領域121は、ソース領域122とドレイン領域123との間に位置する。本実施形態において、半導体層120の材料は、ポリシリコン又は他の適切な半導体材料を含んで良いが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、半導体層120は、トランジスタ構造におけるチャネルと見なすことができる。したがって、半導体層120の閾値電圧を超えると、チャネルが開き、電流が流れることができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、被検液200中の生体物質210を特異的に(specificity)識別して結合させるために、半導体層120の反応領域121上に識別部(図示せず)が設けられても良い。具体的には、識別部の一端は、反応領域121に接続されて固定されて良く、識別部の他端は、生体物質210を認識して結合するために使用されても良い。識別部は、化学分子であっても生体分子であっても良い。例えば、識別部は、抗体、抗原、核酸、炭水化物、又はそれらの組み合わせであっても良いが、識別部が生体物質210を特異的に認識して結合できる限り、これに限定されるものではない。
【0024】
次に、
図2を参照すると、半導体層120上に誘電体層130が形成される。誘電体層130は、第1の開口部O1、開口部131、及び開口部132を有する。第1の開口部O1は、反応領域121と絶縁層ILの一部を露出させることができ、第1の開口部O1は側壁O11を有する。開口部131は、ソース領域122の一部を露出させることができ、開口部132は、ドレイン領域123の一部を露出させることができる。
【0025】
次に、
図3を参照すると、誘電体層130上に金属層140が形成される。本実施形態において、金属層140は、誘電体層130の一部を覆い、誘電体層130の別の部分を露出させることができる。金属層140は、ソースSD1、ドレインSD2、及び壁構造141を含んで良い。ソースSD1は、誘電体層130上及び開口部131内に配置されて良く、ドレインSD2は、誘電体層130上及び開口部131内に配置されて良い。これにより、ソースSD1及びドレインSD2は、それぞれ半導体層120のソース領域122及びドレイン領域123に電気的に接続されることができる。ソースSD1、ドレインSD2及び壁構造141は同層上に配置され、ソースSD1、ドレインSD2及び壁構造141は互いに物理的に分離される。ソースSD1及びドレインSD2は、壁構造141から電気的に絶縁される。
【0026】
本実施形態において、バイオチップ100の立体図において、壁構造141は、第1の開口部O1、ソースSD1、及びドレインSD2を取り囲んで良く、壁構造141は、第1の開口部O1を完全には取り囲まなくても良い。具体的には、本実施形態において、壁構造141は、第1の部分1411及び第2の部分1412を含んで良い。第1の部分1411は、端点P1及びP2を有し、第2の部分1412は、端点P3及びP4を有する。端点P1とソースSD1との間、端点P3とソースSD1との間、端点P2とドレインSD2との間、及び端点P4とドレインSD2との間には、最小距離G1がある。最小距離G1は、例えば、0.1マイクロメートル(μm)から5マイクロメートルであって良く、最小距離G1は、後続に形成される保護層150によって突出部152の一部として充填され積層されて良いが、これに限定されるものではない。最小距離G1が0.1マイクロメートル未満である場合、壁構造141とソースSD1(又はドレインSD2)との間の短絡又はブリッジ接続のおそれがある。最小距離G1が5μmを超えると、後に形成される保護層が間隙を埋めることができず、環状突出部152に切り欠きが生じるおそれがある。例えば、保護層150の厚さT1が1マイクロメートルである場合、最小距離G1は1.2マイクロメートルであり、その後に形成される保護層150は最小距離G1を埋めることができる。また、本実施形態において、第1の部分1411及び第2の部分1412の外形形状はU字状であるが、これに限定されるものではない。
【0027】
次に、
図4~
図6を参照すると、金属層140上に保護層150が形成される。本実施形態において、保護層150は、平坦部151、突出部152、第2の開口部O2、及び第3の開口部O3を有する。平坦部151は、金属層140によって露出された誘電体層130の他の部分を覆って良く、平坦部151は、金属層140に隣接して配置されて良い。平坦部151は、第2の開口部O2を取り囲んで画定する。平坦部151は、誘電体層130とは反対側を向く上面1511を有する。本実施形態において、保護層150の厚さT1は、例えば、1マイクロメートルから3マイクロメートルであって良いが、これに限定されるものではない。
【0028】
第2の開口部O2は、第3の開口部O3と第1の開口部O1を接続して、反応領域121を露出させても良い。第2の開口部O2は、基板110の法線方向Zにおいて第1の開口部O1に対応して重なっても良い。第2の開口部O2は、側壁O21を有する。第2の開口部O2の側壁O21は、第1の開口部O1の側壁O11と実質的に面一であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0029】
突出部152は、金属層140及び平坦部151上に配置され、突出部152は、基板110の法線方向Zにおいて壁構造141、ソースSD1、及びドレインSD2に対応して重なるように配置されても良い。突出部152は、第3の開口部O3を取り囲んで画定して良く、突出部152は、第3の開口部O3を形成するように配置されて良い。突出部152は、第1の開口部O1及び第2の開口部O2を完全に取り囲んで良い。突出部152は、金属層140とは反対側を向く上面1521を有する。基板110の法線方向Zにおいて、突出部152の上面1521は、平坦部151の上面1511より高くても良い。
【0030】
いくつかの実施形態において、突出部152は、保護層150が金属の上面142(すなわち、誘電体層130とは反対側の金属層140の表面)から金属層140から離れる方向に突出した連続的な三次元構造とみなすことができる。層140は、金属層140から離れる方向に連続しており、連続している。いくつかの実施形態では、バイオチップ100の上面図において、突出部152の形状は、被検液200の流出を防止するために、閉じた切欠のない環状とみなすことができる。
【0031】
第3の開口部O3は、第2の開口部O2に接続されて良く、第3の開口部O3は、基板110の法線方向Zにおいて第2の開口部O2に対応して重なっても良い。第3の開口部O3は、側壁O31を有する。第3の開口部O3の側壁O31は、第2の開口部O2の側壁O21と面一ではない。さらに、バイオチップ100の立体図において、第3の開口部O3は、第1の開口部O1、第2の開口部O2及び反応領域121より大きくても良い。
【0032】
次に、
図5及び
図6を参照すると、被検液200は、生体物質210及び液体220を含んで良い。被検液200は、例えば、血清などの体液を含んで良く、生体物質210は、例えば、微生物又は生体分子を含んで良いが、これに限定されるものではない。微生物としては、例えば、細菌、ウイルス、又はそれらの組み合わせが挙げられ、生体分子としては、例えば、核酸(デオキシリボ核酸、リボ核酸、又はそれらの組み合わせを含む)、ヌクレオチド、タンパク質、炭水化物、脂質、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本実施形態において、被検液200は、第1の開口部O1、第2の開口部O2、及び第3の開口部O3に配置されて良く、被検液200の上面200aは、第3の開口部O3内の平坦部151の上面1511を覆っても良い。基板110の法線方向Zにおいて、被検液200の上面200aは、平坦部151の上面1511よりも高くても良く、被検液200の上面200aは、突出部152の上面1521と平坦部151の上面1511との間にあっても良い。
【0034】
本実施形態では、壁構造141の設定により、保護層150の形成と同時に突出部152を形成することができるため、第3の開口部O3を形成するために使用される突出部152を製造するために追加の工程を必要とせず、工程を簡略化する効果がある。
【0035】
本実施形態では、壁構造141が第1の開口部O1、ソースSD1、及びドレインSD2を取り囲むことができるため、壁構造141の上部に設置される突出部152は、第1の開口部O1を取り囲む閉パターン(例えば、閉じた長方形)であって良く、これにより、
図5及び
図6に示されるように、被検液200が第3の開口部O3内に限定され、被検液200が第3の開口部O3の外にオーバーフローすることが防止される。例えば、第1の開口部O1に添加された被検液200が第2の開口部O2を超えた場合(又は、第1の開口部O1に添加された被検液200の上面200aが平坦部151の上面1511よりも高い場合)、突出部152の設定により、被検液200が第3の開口部O3内に限定され、被検液200がオーバーフローするのを防止することができ、これにより、被検液が別の隣接する反応領域にオーバーフローして、別の生体物質の結果に干渉するのを避けることができる。したがって、本実施形態のバイオチップ100は、第3の開口部O3の設定により、一般的なバイオチップと比較して、被検液200を保持できるバイオチップ100の体積を増加させることができ、これにより、より多量の被検液200に対応でき、バイオチップ100の動作裕度や利便性を向上させることができる。このようにして、本実施形態のバイオチップ100では、異なる生体物質を同時に検出するために、複数の反応領域を配置することができ、異なる反応領域間での被検液のオーバーフローによるクロスコンタミネーションの問題を心配する必要がなく, したがって、複数の生体物質を同時に検出する効果を達成することができる。
【0036】
他の実施形態を説明のために以下に列挙する。なお、以下の実施形態では、前述の実施形態の符号及び一部の内容を引き続き使用し、同一又は類似の構成要素を示すために同じ符号を使用し、同じ技術的内容の説明を省略することに留意されたい。省略された部分の説明については、前述の実施形態を参照することができ、以下の実施形態では繰り返さない。
【0037】
図7から
図10は、本発明の別の実施形態に係るバイオチップの製造方法の概略立体図である。
図11は、
図10のバイオチップの切断線III‐III’に沿った概略断面図である。図面を明確にし、図示を容易にするために、
図10では、バイオチップ100a内の半導体層120、第1の転送パッド120a、第2の転送パッド120b、金属層140a、及び被検液200を省略している。
【0038】
図1から
図6及び
図7から
図11を併せて参照すると、本実施形態のバイオチップ100aは、
図1から
図6のバイオチップ100と類似しているため、
図1から
図6の実施形態と同じ又は類似する本実施形態の構成要素は、同じ材料又は方法を使用して実行することができる。したがって、2つの実施形態における同一及び同様の説明は以下では繰り返さず、主に2つの実施形態間の相違点に焦点を当てる。
【0039】
具体的には、本実施形態のバイオチップ100aの製造方法は、以下の工程を含んで良い。
【0040】
まず、
図7を参照すると、基板110が提供され、絶縁層IL上に半導体層120、第1の転送パッド120a、及び第2の転送パッド120bが形成される。半導体層120、第1の転送パッド120a、及び第2の転送パッド120bは同層に配置され、半導体層120、第1の転送パッド120a、及び第2の転送パッド120bは互いに物理的に分離される。本実施形態において、第1の転送パッド120a及び第2の転送パッド120bの材料は、ポリシリコン又は他の適切な半導体材料を含んで良いが、これに限定されるものではない。
【0041】
次に、
図8を参照すると、半導体層120、第1の転送パッド120a、及び第2の転送パッド120b上に誘電体層130aが形成される。誘電体層130aは、第1の開口部O1、開口部131、開口部132、開口部133、開口部134、開口部135、及び開口部136を有する。開口部133と開口部134は、それぞれ第1の転送パッド120aの別の部分を露出させることができ、開口部135と開口部136はそれぞれ第2の転送パッド120bの別の部分を露出させることができる。
【0042】
次に、
図9を参照すると、誘電体層130a上に金属層140aが形成される。本実施形態において、金属層140aは、ソースSD1、ドレインSD2、壁構造141a、ソース拡張パッドSD1a、及びドレイン拡張パッドSD1aを含んで良い。ソースSD1は、誘電体層130a上と開口部134及び131内に配置されて良く、これによりソースSD1は、第1の転送パッド120aと半導体層120のソース領域122にそれぞれ電気的に接続されることができる。ソース拡張パッドSD1aは、誘電体層130a上及び開口部133内に配置されるため、ソース拡張パッドSD1aは、第1の転送パッド120aと電気的に接続されることができる。ドレインSD2は、誘電体層130a上と開口部132及び135内に配置されて良く、これにより、ドレインSD2は、ドレイン領域123及び半導体層120の第2の転送パッド120bにそれぞれ電気的に接続されることができる。ドレイン拡張パッドSD2aは、誘電体層130a上及び開口部136内に配置されて良く、これにより、ドレイン拡張パッドSD2aは、第2の転送パッド120bに電気的に接続されることができる。つまり、ソースSD1は、第1の転送パッド120aを介してソース拡張パッドSD1aに電気的に接続されることができ、ドレインSD2は、第2の転送パッド120bを介してドレイン拡張パッドSD2aに電気的に接続されることができる。
【0043】
本実施形態では、バイオチップ100の立体図において、壁構造141aは、第1の開口部O1を完全に取り囲んで良い。壁構造141aとソースSD1との間、壁構造141aとソース拡張パッドSD1aとの間、壁構造141aとドレインSD2との間、及び壁構造141aとドレイン拡張パッドSD2aとの間には、最小距離G2がある。最小距離G2は、例えば、0マイクロメートルより大きくて良いが、これに限定されるものではない。さらに、本実施形態において、壁構造141aの外形形状は長方形であるが、これに限定されるものではない。
【0044】
次に、
図10及び
図11を参照すると、金属層140a上に保護層150が形成される。本実施形態において、保護層150は、平坦部151、突出部152a、第2の開口部O2、及び第3の開口部O3を有する。突出部152aは、基板110の法線方向Zにおいて壁構造141a、ソースSD1、ドレインSD2、ソース拡張パッドSD1a、及びドレイン拡張パッドSD2aに対応して配置されて良い。突出部152aは、第3の開口部O3を取り囲んで画定して良く、突出部152aは、第3の開口部O3を形成するように配置されて良い。突出部152aは、第1の開口部O1及び第2の開口部O2を完全に取り囲んで良い。
【0045】
本実施形態のバイオチップ100aでは、壁構造141aが切り欠きのない閉じた環状構造であるため、壁構造141a上に形成される保護層150の突出部152aも、切り欠きのない閉じた環状構造となることが保証される。
【0046】
本実施形態のバイオチップ100aでは、ソースSD1及びドレインSD2は、それぞれ第1の転送パッド120aと第2の転送パッド120bの設定を通じて信号を送受信する必要があるため、信号強度が減衰する。これに対し、
図1から
図6に示したバイオチップ100のソースSD1及びドレインSD2は、転送パッドの設定を通じて信号を送受信する必要がないため、信号減衰のおそれを回避できる。
【0047】
まとめると、本発明に係るバイオチップ及びその製造方法では、壁構造を設定することにより、保護層の形成と同時に突出部を形成することができるため、工程を簡略化する効果がある。突出部が第1の開口部を取り囲む閉パターンであって良いため、被検液が第3の開口部内に限定され、第3の開口部の外に被検液が溢れ出るのを防ぐことができる。一般的なバイオチップと比較して、本発明のバイオチップは、第3の開口部の設定により、被検液を保持できるバイオチップの体積を増加させることができるため、被検液のオーバーフローを回避し、大量の被検液に対応し、バイオチップの動作裕度や利便性を向上させることができる。このようにして、本発明のバイオチップに複数の反応領域が配置されている場合、反応領域をそれぞれ異なる種類の生体物質の検出に利用でき、異なる反応領域間での被検液のオーバーフローによるクロスコンタミネーションの問題を心配する必要がなく、したがって、複数の生体物質を同時に検出する効果を達成することができる。
【0048】
本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、開示された実施形態に対してさまざまな修正及び変形を行うことができることは、当業者には明らかである。上記を考慮して、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある限り、修正及び変形を包含することが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のバイオチップ及びその製造方法は、被検液のオーバーフローの問題を回避し、多量の被検液に対応しながら、複数の生体物質を同時に検出することができる。
【符号の説明】
【0050】
100: バイオチップ
110: 基板
120: 半導体層
121: 反応領域
130: 誘電層
140: 金属層
141: 壁構造
142, 1511, 1521, 200a: 上面
150: 保護層
151: 平坦部
152: 突出部
200: 被検液
210: 生体物質
220: 液体
IL: 絶縁層
O1: 第1の開口部
O11, O21, O31: 側壁
O2: 第2の開口部
O3: 第3の開口部
T1: 厚さ
Z: 法線方向