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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-24
(45)【発行日】2025-07-02
(54)【発明の名称】演算処理装置、演算処理方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/023 20120101AFI20250625BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20250625BHJP
【FI】
B60W50/023
B60W60/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024510784
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015426
(87)【国際公開番号】W WO2023187979
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】塩見 恵史
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181591(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/188120(WO,A1)
【文献】特開2020-47059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/023
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された複数のセンシング機器に接続される演算処理装置において、
前記複数のセンシング機器を制御する演算を行うマイコンと、
第一の演算処理プログラムと、第二の演算処理プログラムとが格納されたメモリと、を備え、
前記第一の演算処理プログラムは、前記センシング機器および前記マイコンの故障に対して冗長化されていないものであって、
前記第二の演算処理プログラムは、前記センシング機器または前記マイコンの故障に対して冗長化されたものであって、
前記マイコンは、前記車両の走行環境または制御状態に応じて、前記第一の演算処理プログラムまたは前記第二の演算処理プログラムのうち、前記マイコン上で動かす演算処理プログラムを切り替えるプログラム切り替え部を有することを特徴とする演算処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算処理装置において、
前記センシング機器はステレオカメラであって、
前記第一の演算処理プログラムは、ステレオ視用の画像処理コンフィギュレーションであって、
前記第二の演算処理プログラムは、単眼視用の画像処理コンフィギュレーションであることを特徴とする演算処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の演算処理装置において、
前記車両は、前記センシング機器でのセンシング結果を用いて、所定のレベルで自動制御されるものであって、
前記プログラム切り替え部は、前記レベルに応じて、前記第一の演算処理プログラムまたは前記第二の演算処理プログラムのうち、前記マイコン上で動かす演算処理プログラムを切り替えることを特徴とする演算処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の演算処理装置において、
前記所定のレベルでの自動制御は、ドライバの監視および運転操作によらず、システムの監視による自動運転制御であることを特徴とする演算処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の演算処理装置において、
前記車両の走行環境を判断する周辺状況判断部を有し、
前記プログラム切り替え部は、前記周辺状況判断部の判断結果に基づいて、前記第一の演算処理プログラムまたは前記第二の演算処理プログラムのうち、前記マイコン上で動かす演算処理プログラムを切り替えることを特徴とする演算処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の演算処理装置において、
前記周辺状況判断部は、地図データに基づいて、前記車両が一般道路または高速道路のいずれを走行しているかを判断し、
前記プログラム切り替え部は、前記車両が一般道路を走行しているときは前記第一の演算処理プログラムを動作させ、前記車両が高速道路を走行しているときは前記第二の演算処理プログラムを動作させることを特徴とする演算処理装置。
【請求項7】
車両に搭載された複数のセンシング機器を制御する演算処理方法において、
(a)車両の走行環境または制御状態に基づいて、当該車両が一般道路または高速道路のいずれを走行しているかを判断するステップと、
(b)前記(a)ステップでの判断結果に応じて、前記センシング機器およびマイコンの故障に対して冗長化されていない第一の演算処理プログラムまたは前記センシング機器または前記マイコンの故障に対して冗長化された第二の演算処理プログラムのいずれかを選択するステップと、
(c)前記(b)ステップで選択した演算処理プログラムに基づいて、前記マイコン上で動かす演算処理プログラムを書き換えるステップと、
を有することを特徴とする演算処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の演算処理方法において、
前記センシング機器はステレオカメラであって、
前記第一の演算処理プログラムは、ステレオ視用の画像処理コンフィギュレーションであって、
前記第二の演算処理プログラムは、単眼視用の画像処理コンフィギュレーションであることを特徴とする演算処理方法。
【請求項9】
請求項7に記載の演算処理方法において、
前記車両は、前記センシング機器でのセンシング結果を用いて、所定のレベルで自動制御されるものであって、
前記(b)ステップにおいて、前記レベルに応じて、前記第一の演算処理プログラムまたは前記第二の演算処理プログラムのいずれかを選択することを特徴とする演算処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の演算処理方法において、
前記所定のレベルでの自動制御は、ドライバの監視および運転操作によらず、システムの監視による自動運転制御であることを特徴とする演算処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器を制御するための演算処理を行う演算処理装置の構成とその制御に係り、特に、ステレオカメラの演算処理装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車載外界認識装置(車載カメラ)のセンシング結果によって車両を制御する運転支援機能の開発が進んでおり、前方障害物に対する緊急ブレーキ制御や先行車追従機能など、アクセル・ブレーキ操作及びハンドル操作の部分的な自動化制御が実用化されている。また、システムがすべての運転操作を行い、ドライバによる運転操作及び走行環境の監視を想定しない自動運転制御の開発も進んでいる。
【0003】
ドライバによる運転操作及び走行環境の監視を想定している場合、故障時にはシステムを停止しドライバへ故障を通知するフェールセーフを行うが、ドライバによる運転操作及び走行環境の監視を想定しない場合、故障時にも安全に制御を行うフェールオペレーションを行う必要がある。
【0004】
カメラによる前方センシングを行う車載外界認識装置を例に挙げると、カメラの撮像部と画像処理部をそれぞれ2個ずつ搭載することで冗長化し、片方の撮像部または画像処理部が故障した場合には、もう片方の正常な撮像部と画像処理部によって外界認識し、車両制御を続行することで故障時にも安全を確保する方法がある。このような冗長化の方法では、正常時の機能は同一であるにも関わらず、ハードウェアの増加によるコスト増と消費電力が増加してしまうという問題がある。
【0005】
こうした問題の改善のため、例えば特許文献1に記載されているように、2個の撮像部と、ステレオ画像処理部と単眼画像処理部の両方を備えて、正常時には2個の撮像部からの画像によってステレオ画像処理を行い、故障によりステレオ画像処理ができない場合は、単眼画像処理に切り替える例がある。この方法によって、フェールオペレーションを達成するとともに、正常時はステレオ画像処理をすることで外界認識性能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-47059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両が一般道路を走行する際には、周囲を走行する他車との車間距離が比較的近く、路肩を走行する自転車や駐停車中の車など障害物が存在する場合も多いため、ステレオ画像処理による高い外界認識性能が求められるとともに、車載外界認識装置に故障が発生した場合には、車載外界認識装置の機能を停止し、ドライバへ故障を通知するフェールセーフを行う必要がある。
【0008】
一方、車両が高速道路を走行する際には、他車との車間距離が比較的離れている場合が多く、周辺の障害物も少ないため、車載外界認識装置の故障した部分の機能を停止し、正常な部分の機能を活かして部分的な自動運転制御あるいは運転支援を継続するフェールオペレーションが求められている。
【0009】
これらの条件を両立させるためには、上記特許文献1のように2個の撮像部と、ステレオ画像処理部と単眼画像処理部の両方を備える構成や、撮像部と単眼画像処理部をそれぞれ2個ずつ搭載する冗長化した構成が考えられる。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、ステレオ画像処理と単眼画像処理を並行して動かすため、高性能なマイコンが必要となり、消費電力も増加してしまう。
【0011】
また、撮像部と単眼画像処理部をそれぞれ2個ずつ搭載する冗長化した構成では、上述したように、正常時の機能は同一であるにも関わらず、コスト及び消費電力が増加してしまう。
【0012】
そこで、本発明の目的は、コスト及び消費電力の増加を抑えつつ、状況に応じて、画像処理部の設定を切り替え可能な演算処理装置及び演算処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、車両に搭載された複数のセンシング機器に接続される演算処理装置において、前記複数のセンシング機器を制御する演算を行うマイコンと、第一の演算処理プログラムと、第二の演算処理プログラムとが格納されたメモリと、を備え、前記第一の演算処理プログラムは、前記センシング機器および前記マイコンの故障に対して冗長化されていないものであって、前記第二の演算処理プログラムは、前記センシング機器または前記マイコンの故障に対して冗長化されたものであって、前記マイコンは、前記車両の走行環境または制御状態に応じて、前記第一の演算処理プログラムまたは前記第二の演算処理プログラムのうち、前記マイコン上で動かす演算処理プログラムを切り替えるプログラム切り替え部を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、車両に搭載された複数のセンシング機器を制御する演算処理方法において、(a)車両の走行環境または制御状態に基づいて、当該車両が一般道路または高速道路のいずれを走行しているかを判断するステップと、(b)前記(a)ステップでの判断結果に応じて、前記センシング機器およびマイコンの故障に対して冗長化されていない第一の演算処理プログラムまたは前記センシング機器または前記マイコンの故障に対して冗長化された第二の演算処理プログラムのいずれかを選択するステップと、(c)前記(b)ステップで選択した演算処理プログラムに基づいて、前記マイコン上で動かす演算処理プログラムを書き換えるステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コスト及び消費電力の増加を抑えつつ、状況に応じて、画像処理部の設定を切り替え可能な演算処理装置及び演算処理方法を実現することができる。
【0016】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1に係る車載外界認識装置の概略構成を示す図である。
図2図1の車載外界認識装置の一般道路での動作を概念的に示す図である。
図3図1の車載外界認識装置の一般道路での動作を示すフローチャートである。
図4図1の車載外界認識装置の高速道路での動作を概念的に示す図である。
図5図1の車載外界認識装置の高速道路での動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施例2に係る車載外界認識装置の概略構成を示す図である。
図7図6の車載外界認識装置の自動運転制御不可判断時の動作を概念的に示す図である。
図8図6の車載外界認識装置の自動運転制御不可判断時の動作を示すフローチャートである。
図9図6の車載外界認識装置の自動運転制御可能判断時の動作を概念的に示す図である。
図10図6の車載外界認識装置の自動運転制御可能判断時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0019】
また、以下の各実施例では、車載器を制御するための演算処理を行う演算処理装置について、車載外界認識装置(車載カメラ)を例に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1から図5を参照して、本発明の実施例1に係る車載外界認識装置について説明する。図1は、本実施例の車載外界認識装置の概略構成を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例の車載外界認識装置は、主要な構成として、ステレオカメラ101と、地図データユニット105とを備えている。ステレオカメラ101と地図データユニット105は、CAN(Controller Area Network)やOTA(Over The Air)などの車載ネットワークにより接続されており、地図データユニット105からステレオカメラ101へ周辺状況が通知される。
【0022】
ステレオカメラ101は、外界を認識し画像データを得る撮像素子102a,102bと、画像データを元に演算を行い車両制御に必要な情報を得る画像処理マイコン103と、画像処理マイコン103の画像処理設定が格納されたメモリ104を備えている。
【0023】
地図データユニット105は、周辺状況を含む走行環境の情報をステレオカメラ101に伝える。
【0024】
画像処理マイコン103は、画像処理のための演算論理を持ち動的リコンフィギュレーションによる論理の再構築が可能な画像処理部201と、地図データユニット105の情報を受け取り、画像処理部201の設定を決定するモード指示部202を備えている。
【0025】
なお、「コンフィギュレーション」とは、機器やソフトウェアの動作や構成などについて利用者が指定・変更できる設定項目、環境設定を意味する。また、本明細書において「動的リコンフィギュレーション」とは、画像処理を行うマイコンがシステムを起動しながら一部演算論理を書き換える処理を意味する。
【0026】
メモリ104は、画像処理部201に書き込むステレオ画像処理設定301と単眼画像処理冗長化設定302を備えている。
【0027】
本実施例では、地図データユニット105から取得した周辺状況に基づいた画像処理部201の切り替え処理及び故障検出時の処理について説明する。
【0028】
本実施例の車両制御は、一般道路では前方障害物に対する緊急ブレーキ制御、先行車追従機能、レーンキープアシストのような部分的な自動化制御を行う。高速道路または高速道路上での一部条件では、上記の部分的な自動化制御に加えて、ドライバによる運転操作及び走行環境の監視を必要としない、すべての運転操作を自動化した制御を行う。すべての運転操作を自動化した制御を行っている間は、ドライバはナビ操作など運転操作以外の操作が許される。
【0029】
これらは、すべて車両に搭載されたカメラやレーダなどの外界を認識するセンシング機器からの出力に基づいて、車両の制御の一部または全部を行うものである。上記のように、部分的な自動化制御(運転支援ともいう)から完全な自動化制御まで、車両の自動制御のレベルには様々なレベルが存在する。
【0030】
本発明における車両は、完全な手動運転(すなわち非自動化制御)モード以外に、少なくとも一つまたは複数のレベルの所定の自動化制御モード(運転支援も含む)で制御されるものとする。
【0031】
なお、本発明では、国や業界団体によって決められた自動運転レベルだけでなく、これらを総称して「所定のレベル」の自動制御としている。
【0032】
この自動化制御モードのONまたはOFFは、外界の環境に応じて自動的に設定されてもよいし、運転者が選択的に設定してもよい。また、当該車両において自動化制御モードのレベルが複数選択可能である場合には、このレベルの設定も同様に外界の環境または運転者の選択によって設定され得る。
【0033】
図2を用いて、本実施例の車載外界認識装置の一般道路での動作について説明する。図2は、図1の車載外界認識装置の一般道路での動作を概念的に示す図である。
【0034】
図2に示すように、地図データユニット105から一般道路の情報をモード指示部202が受信した場合、メモリ104からステレオ画像処理設定301を読み出し、画像処理部201を書き換える。
【0035】
ステレオ画像処理設定301に書き換えられた画像処理部201は、ステレオ画像処理部204と、撮像素子102a,102b及びステレオ画像処理部204のいずれかの故障を検出できるステレオ画像処理時故障検出部203とを有することとなる。
【0036】
画像処理部201にステレオ画像処理設定301が書き込まれた場合、部分的な自動化制御のみを使用可能であり、すべての運転操作を自動化した制御は使用できない。
【0037】
ステレオ画像処理時故障検出部203が故障検出した場合、ステレオカメラ101のシステムを停止し、車両へ故障を通知するフェールセーフの動作を行う。すべての運転操作を自動化した制御ではないため、フェールセーフの動作で安全を確保できる。
【0038】
図3を用いて、上記の動作を説明する。図3は、図1の車載外界認識装置の一般道路での動作を示すフローチャートである。
【0039】
ステップS101において、車載外界認識装置の動作が開始すると、先ず、ステップS102において、地図データユニット105がモード指示部202へ一般道路判定を通知する。
【0040】
次に、ステップS103において、モード指示部202がメモリ104のステレオ画像処理設定301を読出し、画像処理部201を書き換える。
【0041】
続いて、ステップS104において、撮像素子102a,102b及びステレオ画像処理部204での故障の有無を判定する。
【0042】
撮像素子102a,102b及びステレオ画像処理部204のいずれかの故障を検出した場合、ステップS106に進み、ステレオカメラ101の機能を停止し、車両へ故障を通知し、処理を終了する(ステップS107)。
【0043】
一方、撮像素子102a,102b及びステレオ画像処理部204のいずれも故障していないと判定した場合は、ステップS105に進み、部分的な自動化制御を行うとともに、ステップS104に戻り、ステップS104以降の処理を繰り返す。
【0044】
図4を用いて、本実施例の車載外界認識装置の高速道路での動作について説明する。図4は、図1の車載外界認識装置の高速道路での動作を概念的に示す図である。
【0045】
図4に示すように、地図データユニット105から高速道路の情報をモード指示部202が受信した場合、メモリ104から単眼画像処理冗長化設定302を読み出し、画像処理部201を書き換える。
【0046】
単眼画像処理冗長化設定302に書き換えられた画像処理部201は、単眼画像処理部206a,206bと、撮像素子102a,102b及び単眼画像処理部206a,206bのいずれかの故障を検出できる単眼画像処理時故障検出部205とを有することとなる。
【0047】
画像処理部201に単眼画像処理冗長化設定302が書き込まれた場合、すべての運転操作を自動化した制御を使用可能とする。
【0048】
単眼画像処理時故障検出部205が撮像素子102aまたは単眼画像処理部206aの故障を検出した場合は、正常な単眼画像処理206bの結果を元に車両制御を続行し、また、撮像素子102bまたは単眼画像処理部206bの故障を検出した場合は、正常な単眼画像処理206aの結果を元に車両制御を続行することによってフェールオペレーションを達成することができる。
【0049】
図5を用いて、上記の動作を説明する。図5は、図1の車載外界認識装置の高速道路での動作を示すフローチャートである。
【0050】
ステップS201において、車載外界認識装置の動作が開始すると、先ず、ステップS202において、地図データユニット105がモード指示部202へ高速道路判定を通知する。
【0051】
次に、ステップS203において、モード指示部202がメモリ104の単眼画像処理冗長化設定302を読出し、画像処理部201を書き換える。
【0052】
続いて、ステップS204において、撮像素子102a,102b及び単眼画像処理部206a,206bでの故障の有無を判定する。
【0053】
撮像素子102aまたは単眼画像処理部206aのいずれかの故障を検出した場合、ステップS205に進み、単眼画像処理部206bの結果を元に制御を行い、処理を終了する(ステップS208)。
【0054】
また、撮像素子102bまたは単眼画像処理部206bのいずれかの故障を検出した場合、ステップS206に進み、単眼画像処理部206aの結果を元に制御を行い、処理を終了する(ステップS208)。
【0055】
一方、撮像素子102a,102b及び単眼画像処理部206a,206bのいずれも故障していないと判定した場合は、ステップS207に進み、すべての運転操作を自動化した制御を行うとともに、ステップS204に戻り、ステップS204以降の処理を繰り返す。
【0056】
以上説明したように、本実施例の車載外界認識装置を制御するための演算処理を行う演算処理装置は、車両に搭載された複数のセンシング機器(撮像素子102a,102b)に接続される演算処理装置であり、複数のセンシング機器(撮像素子102a,102b)を制御する演算を行う画像処理マイコン103と、第一の演算処理プログラム(ステレオ画像処理設定301)と、第二の演算処理プログラム(単眼画像処理冗長化設定302)とが格納されたメモリ104を備えている。
【0057】
第一の演算処理プログラム(ステレオ画像処理設定301)は、センシング機器(撮像素子102a,102b)および画像処理マイコン103の故障に対して冗長化されていない。すなわち、センシング機器(撮像素子102a,102b)または画像処理マイコン103のいずれかが故障した場合、ステレオ画像処理を実行することができない。
【0058】
また、第二の演算処理プログラム(単眼画像処理冗長化設定302)は、センシング機器(撮像素子102a,102b)または画像処理マイコン103の故障に対して冗長化されている。すなわち、撮像素子102aまたは単眼画像処理部206aのいずれかが故障した場合は、撮像素子102b及び単眼画像処理部206bにより単眼画像処理を実行する。一方、撮像素子102bまたは単眼画像処理部206bのいずれかが故障した場合は、撮像素子102a及び単眼画像処理部206aにより単眼画像処理を実行する。
【0059】
また、画像処理マイコン103は、地図データユニット105から取得した車両の走行環境情報に応じて、第一の演算処理プログラム(ステレオ画像処理設定301)または第二の演算処理プログラム(単眼画像処理冗長化設定302)のうち、画像処理マイコン103上で動かす演算処理プログラムを切り替えるプログラム切り替え部(モード指示部202)を有する。
【0060】
第一の演算処理プログラム(ステレオ画像処理設定301)は、ステレオ視用の画像処理コンフィギュレーションであり、第二の演算処理プログラム(単眼画像処理冗長化設定302)は、単眼視用の画像処理コンフィギュレーションである。
【0061】
また、車両は、センシング機器(撮像素子102a,102b)でのセンシング結果を用いて、所定の自動化制御レベルで自動制御され、プログラム切り替え部(モード指示部202)は、所定の自動化制御レベルに応じて、第一の演算処理プログラム(ステレオ画像処理設定301)または第二の演算処理プログラム(単眼画像処理冗長化設定302)のうち、画像処理マイコン103上で動かす演算処理プログラムを切り替える。
【0062】
本発明によれば、画像処理を行うマイコンはシステムを起動しながら一部演算論理を書き換える動的リコンフィギュレーションが可能で、周辺状況に応じて画像処理部の設定を書き換える。画像処理部はステレオ画像処理と単眼画像処理を同時に両方動かすことはなく、必ずどちらか片方のみを動かすため、特許文献1のようにステレオ画像処理と単眼画像処理の両方を行う場合と比べてマイコンの処理負荷を減らすことができる。よって、マイコンのコスト低減と消費電力低下による周辺部品のコスト低減に繋がる。
【0063】
また、冗長化していないステレオ画像処理での故障検知時にはフェールセーフの動作を行うことができ、冗長化された単眼画像処理での故障検知時にはフェールオペレーションを行うことができる。
【実施例2】
【0064】
図6から図10を参照して、本発明の実施例2に係る車載外界認識装置について説明する。
【0065】
実施例1では、地図データユニット105から取得した情報に基づいて、モード指示部202によりステレオ画像処理設定301または単眼画像処理冗長化設定302のいずれかを選択する例を説明した。これに対し、本実施例では、車両通信線を介して取得したステレオカメラ101以外の他外界認識センサの情報に基づいて、運転制御モードを選択する例を説明する。
【0066】
図6は、本実施例の車載外界認識装置の概略構成を示す図である。
【0067】
図6に示すように、本実施例の車載外界認識装置は、主要な構成として、ステレオカメラ101と、セントラルユニット106と、車両通信線108を介してセントラルユニット106と接続された他外界認識センサ107とを備えている。他外界認識センサ107は、ミリ波レーダやソナーセンサといったステレオカメラ101以外の外界認識センサである。
【0068】
ステレオカメラ101とセントラルユニット106と他外界認識センサ107は、実施例1と同様に、CANやOTAなどの車載ネットワークにより接続されており、相互に情報を送受信することができる。車両通信線108は車載ネットワークの一部である。
【0069】
セントラルユニット106は、ステレオカメラ101及び他外界認識センサ107の検知結果を受信することによって周辺状況を判断する周辺状況判断部401を備えている。その他の構成は、基本的に実施例1(図1)と同様である。
【0070】
本実施例では、周辺状況判断部401の判断によってシステムによる制御のみで安全に制御可能か否かを判断し、すべての運転操作を自動化した制御の使用可否を決定する。
【0071】
図7を用いて、本実施例の車載外界認識装置の一般道路での動作について説明する。図7は、図6の車載外界認識装置の自動運転制御不可判断時の動作を概念的に示す図である。
【0072】
図7に示すように、周辺状況判断部401が自動運転制御不可と判断し、モード指示部202に通知された場合は、部分的な自動化制御のみを使用可能とする。
【0073】
画像処理部201の切り替え方法及び故障検出時の処理は、実施例1(図2)の一般道路の場合と同じである。
【0074】
図8を用いて、上記の動作を説明する。図8は、図6の車載外界認識装置の自動運転制御不可判断時の動作を示すフローチャートである。
【0075】
ステップS301において、車載外界認識装置の動作が開始すると、先ず、ステップS302において、周辺状況判断部401が周囲状況を判断し、自動運転制御不可の判断をモード指示部202に通知する。
【0076】
次に、ステップS303において、モード指示部202がメモリ104のステレオ画像処理設定301を読出し、画像処理部201を書き換える。
【0077】
続いて、ステップS304において、撮像素子102a,102b及びステレオ画像処理部204での故障の有無を判定する。
【0078】
撮像素子102a,102b及びステレオ画像処理部204のいずれかの故障を検出した場合、ステップS306に進み、ステレオカメラ101の機能を停止し、車両へ故障を通知し、処理を終了する(ステップS307)。
【0079】
一方、撮像素子102a,102b及びステレオ画像処理部204のいずれも故障していないと判定した場合は、ステップS305に進み、部分的な自動化制御を行うとともに、ステップS304に戻り、ステップS304以降の処理を繰り返す。
【0080】
図9を用いて、本実施例の車載外界認識装置の高速道路での動作について説明する。図9は、図6の車載外界認識装置の自動運転制御可能判断時の動作を概念的に示す図である。
【0081】
図9に示すように、周辺状況判断部401が、ドライバによる運転操作及び走行環境の監視をせずにシステムによる車両制御のみで安全に走行可能な状況であると判断し、モード指示部202に通知された場合は、すべての運転操作を自動化した制御を使用可能とする。
【0082】
画像処理部201の切り替え方法及び故障検出時の処理は、実施例1(図4)の高速道路の場合と同じである。
【0083】
図10を用いて、上記の動作を説明する。図10は、図6の車載外界認識装置の自動運転制御可能判断時の動作を示すフローチャートである。
【0084】
ステップS401において、車載外界認識装置の動作が開始すると、先ず、ステップS402において、周辺状況判断部401が周囲状況を判断し、自動運転制御可能の判断をモード指示部202に通知する。
【0085】
次に、ステップS403において、モード指示部202がメモリ104の単眼画像処理冗長化設定302を読出し、画像処理部201を書き換える。
【0086】
続いて、ステップS404において、撮像素子102a,102b及び単眼画像処理部206a,206bでの故障の有無を判定する。
【0087】
撮像素子102aまたは単眼画像処理部206aのいずれかの故障を検出した場合、ステップS405に進み、単眼画像処理部206bの結果を元に制御を行い、処理を終了する(ステップS408)。
【0088】
また、撮像素子102bまたは単眼画像処理部206bのいずれかの故障を検出した場合、ステップS406に進み、単眼画像処理部206aの結果を元に制御を行い、処理を終了する(ステップS408)。
【0089】
一方、撮像素子102a,102b及び単眼画像処理部206a,206bのいずれも故障していないと判定した場合は、ステップS407に進み、すべての運転操作を自動化した制御を行うとともに、ステップS404に戻り、ステップS404以降の処理を繰り返す。
【0090】
以上説明したように、本実施例の車載外界認識装置を制御するための演算処理を行う演算処理装置では、画像処理マイコン103は、ステレオカメラ101以外の他外界認識センサ107から取得した車両の走行環境情報や制御状態情報に応じて、第一の演算処理プログラム(ステレオ画像処理設定301)または第二の演算処理プログラム(単眼画像処理冗長化設定302)のうち、画像処理マイコン103上で動かす演算処理プログラムを切り替える。
【0091】
セントラルユニット106は、車両の走行環境を判断する周辺状況判断部401を有しており、プログラム切り替え部(モード指示部202)は、周辺状況判断部401の判断結果に基づいて、第一の演算処理プログラム(ステレオ画像処理設定301)または第二の演算処理プログラム(単眼画像処理冗長化設定302)のうち、画像処理マイコン103上で動かす演算処理プログラムを切り替える。
【0092】
なお、周辺状況判断部401が、実施例1(図1)の地図データユニット105から取得した地図データに基づいて、車両が一般道路または高速道路のいずれを走行しているかを判断し、プログラム切り替え部(モード指示部202)が、車両が一般道路を走行しているときは第一の演算処理プログラム(ステレオ画像処理設定301)を動作させ、車両が高速道路を走行しているときは第二の演算処理プログラム(単眼画像処理冗長化設定302)を動作させるように制御することも可能である。
【0093】
つまり、カメラやレーダなどによるセンシング結果や地図データの情報を元に周辺状況を判断して、画像処理設定を切り替える。周辺状況から判断して自動運転制御ができない状況では、画像処理部をステレオ画像処理に書き換え、自動運転制御が可能な状況では、単眼画像処理の設定に書き換える。
【0094】
実施例1と同様に、本実施例により、特許文献1のようにステレオ画像処理と単眼画像処理をどちらも行う場合に比べてマイコンの処理量を抑えることができる。
【0095】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
101…ステレオカメラ、102a,102b…撮像素子、103…画像処理マイコン、104…メモリ、105…地図データユニット、106…セントラルユニット、107…他外界認識センサ、108…車両通信線、201…画像処理部、202…モード指示部、203…ステレオ画像処理時故障検出部、204…ステレオ画像処理部、205…単眼画像処理時故障検出部、206a,206b…単眼画像処理部、301…ステレオ画像処理設定、302…単眼画像処理冗長化設定、401…周辺状況判断部。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10