(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】配達支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20240101AFI20250626BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20250626BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
G06Q10/08
G01C21/34
G08G1/0968 B
(21)【出願番号】P 2020205634
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗脇 悠一
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240316(JP,A)
【文献】特開2020-142923(JP,A)
【文献】特開2004-307210(JP,A)
【文献】特許第6341492(JP,B1)
【文献】特開2013-211007(JP,A)
【文献】特開2004-004021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
G01C 21/34
G08G 1/0968
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配達先への配達順序と、前記配達順序に従って複数の前記配達先に順に向かう経路と、を含む配達計画を取得する配達計画取得部と、
配達車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記配達計画の実行開始トリガを取得した場合に、交通情報を取得し、前記配達順序に従って複数の前記配達先に順に向かう経路を、前記配達車両の現在位置と前記交通情報に基づいて再探索する経路探索部と、
を備え、
前記配達計画の実行開始トリガは、前記配達計画の実行日において、前記配達計画が実行開始されたことを示す事象として予め決められた事象であ
り、
前記経路探索部においては、
前記配達順序に従って前記配達車両の現在位置から前記配達先に順に向かう場合の前記配達先への到着予定時間帯に対応する交通情報を用いて再探索が行われ、
前記配達計画の実行開始トリガの取得時刻から当初の到着予定時刻までの時間が閾値以内の前記配達先に向かう経路については現況の交通情報が再探索に用いられ、
前記配達計画の実行開始トリガの取得時刻から当初の到着予定時刻までの時間が前記閾値より大きい前記配達先に向かう経路については前記配達順序が1つ前の前記配達先への再探索後の到着予定時間帯における推定交通情報が再探索に用いられる、
配達支援システム。
【請求項2】
前記配達車両の現在位置を取得し、かつ、交通情報を取得した場合に、再探索が行われる、
請求項1に記載の配達支援システム。
【請求項3】
前記配達計画は、前記配達先への第1到着予定時刻を含み、
前記再探索によって得られた前記配達先への第2到着予定時刻と前記第1到着予定時刻とのずれを示す情報を前記配達先に通知する通知部をさらに備える、
請求項1~請求項2のいずれか一項に記載の配達支援システム。
【請求項4】
前記第2到着予定時刻が前記第1到着予定時刻とずれている場合、前記配達計画の進捗が通知される、
請求項3に記載の配達支援システム。
【請求項5】
前記第2到着予定時刻が前記第1到着予定時刻とずれている場合、ずれが生じた原因が通知される、
請求項3または請求項4に記載の配達支援システム。
【請求項6】
前記第2到着予定時刻は定期的に取得され、
前回通知された前記第2到着予定時刻から既定時間以上の変化があった場合に、ずれを示す情報が通知される、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の配達支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配達支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貨物輸送のための商用車等の運行管理において、運行計画と実際の運行とに許容範囲を超えるずれが生じているか否かをチェックポイント毎に判定し、ずれが生じている場合にルートや所要時間を再計算することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンビニエンスストア等の店舗に商品を配送する場合、店舗側は、配送された商品に関する作業の準備のために、商品の到着予定時刻を実際にずれが生じる前に知りたいという要望がある。また、配達車両の運転者においても、走行予定の経路上で渋滞や規制が生じておりその影響で実際に店舗への到着が予定より遅れてから再探索が実施されるよりも、渋滞や規制の影響を受ける前に別の経路を選択したいという要望がある。しかし、従来の技術の場合、運行計画と実際の運行との間に許容範囲を超えるずれが生じなければ再探索が実施されない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、配達計画の実行を開始する際の状況に応じた経路を取得できる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、配達支援システムは、複数の配達先への配達順序と、配達順序に従って複数の配達先に順に向かう経路と、を含む配達計画を取得する配達計画取得部と、配達車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、配達計画の実行開始トリガを取得した場合に、配達順序に従って複数の配達先に順に向かう経路を、配達車両の現在位置に基づいて再探索する経路探索部と、を備える。
【0006】
配達計画の実行開始時の経路探索に関連する状況と、配達計画作成時の経路探索に関連する状況とが異なりうる。この配達支援システムは、配達計画の実行開始トリガを取得すると、配達順序に従って配達先に順に向かう経路を再探索する。そのため、この配達支援システムによれば、再探索によって、配達計画にて規定された経路と異なる経路であって、配達計画の実行を開始する際の状況に応じた経路を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】配達支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2Aは配達計画の例を示す図であり、
図2Bは配達順序の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)全体構成:
(1-1)店舗端末の構成:
(1-2)配達実行者端末の構成:
(1-3)配達支援システムの構成:
(2)配達支援処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)全体構成:
図1は、本発明にかかる配達支援システム10の構成を示すブロック図である。本実施形態において配達支援システム10は、店舗端末200,配達実行者端末300,交通情報管理サーバ400と協働する。本実施形態において配達支援システム10は、店舗端末200,配達実行者端末300,交通情報管理サーバ400と通信を行うことができる。
【0010】
本実施形態において、配達実行者は、出発地点である配達拠点において配達車両に配達先である店舗に配達する荷物(店舗で販売する商品)を積み込み、配達車両を店舗まで運転し、当該店舗に商品を配達する。本実施形態において、配達実行者は複数人存在し、配達車両も複数台存在し得るが、以下においては、主に、一人の配達実行者および一台の配達車両に着目して説明を行う。
【0011】
図2Aは、配達計画の一例を示す図である。本実施形態において、配達計画には、配達順序と、配達順序に従って配送先に順に向かう経路と、当該経路を移動する場合の移動所要時間と、配達先への到着予定時刻と、配達先における荷役時間と、配達先に配達すべき荷物とが含まれる。なお、
図2Aにおいて、配達すべき荷物の図示は省略されている。
【0012】
本実施形態においては出発地点Sと最終目的地が同一であり、これらの地点は配達車両に荷物を積み込む拠点である。
図2Aに示す例において、配達実行者は、出発地点Sから配達先の店舗である,S
A,S
B,S
C,S
D,S
E,S
F,S
G,S
H、さらに最終目的地(出発地点S)という順で配達車両を移動させる。すなわち、配達順序は、早い順にS
A,S
B,S
C,S
D,S
E,S
F,S
G,S
Hである。
【0013】
経路は、出発地点Sから各店舗を配達順序に従って移動し、最後に最終目的地に戻る際の経路を示している。すなわち、本実施形態においては、交差点をノードとし、ノード間の道路区間をリンクとして示す地図情報に基づいて、出発地点Sから各店舗を順に経由し、最終目的地に到達する経路が探索される。
【0014】
探索の結果、得られた経路は、例えば、ノードの順列で示される。なお、経路の定義は種々の定義であってよく、リンクの順列等であってもよい。第1到達予定時刻は、経路に基づいて決定される。すなわち、本実施形態においては、リンクが示す道路区間の属性毎に各道路区間を走行する車両の平均車速が決められている。そして、道路区間の距離を当該平均車速で除することにより、道路区間の移動に要する期間を特定することができる。
【0015】
そこで、経路に沿ってノード間の道路区間を走行する際の距離が特定され、当該距離と平均車速とに基づいて道路区間毎の移動所要期間が特定され、累積されることで地点間の移動に要する移動所要期間が特定される。出発地点Sを出発する出発時刻は予め決められており、出発地点Sから1番目の配達先である店舗SAまでの移動に要する期間が出発時刻に加えられることにより、店舗SAへの第1到達予定時刻が特定される。店舗SAからの出発時刻は、店舗SAへの到達予定時刻(第1到着予定時刻)に対して店舗SAの荷役期間が加えられて得られる時刻である。以上の処理が各配達先について実行されると、各店舗への第1到着予定時刻が特定される。
【0016】
さらに、配達先の店舗のそれぞれには、荷役期間が対応づけられている。荷役期間は、荷役に要する期間、すなわち、配達車両が配達先の店舗に到達してから出発までに要する期間であり、各配達先における荷物の量や作業のしやすさ(駐車場と配達先との距離等)等に基づいて予め決められた値である。荷役期間は、例えば直接的に時間の長さで表現されてもよいし、配達先への到着予定時刻と配達先からの出発予定時刻とを示すことにより間接的に表現されてもよい。
【0017】
図2Bは、
図2Aに示す例についての各店舗の位置と、配達順序に従って配達先の店舗に順に向かう経路とを示す図である。
図2Bにおいて、経路は矢印によって模式的に示されている(実際の経路は道路区間の集合であるためより複雑な形状である)。
本実施形態において、以上のような配達計画が、後述する配達支援システム10で予め作成される。
【0018】
(1-1)店舗端末の構成:
店舗端末200は、上述の配達計画における配達先の各店舗において利用される端末である。店舗端末200は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部(不図示)と、他の装置と通信を行うための通信部(不図示)を備えている。また、店舗端末200は、店舗における作業者に対して各種の情報を提供し、当該作業者の入力を受け付けるためのユーザI/F部(不図示)を備えている。
【0019】
店舗端末200は、ROM等に記録された図示しないプログラムを実行可能である。当該プログラムには、配達支援システム10から通知される情報を表示するためのプログラムが含まれる。店舗端末200において当該プログラムが実行されることにより、店舗の作業者は、ユーザI/F部を利用して、配達車両によって自店舗に荷物が配達される当初の予定時刻(第1到着予定時刻)や最新の予定時刻(第2到着予定時刻)等を閲覧することができる。
【0020】
(1-2)配達実行者端末の構成:
配達実行者端末300は、配達実行者のそれぞれが使用する端末であり、本実施形態においては配達車両に搭載されている。なお、配達支援システム10の態様は限定されず、配達実行者が携帯するタブレット端末等であってもよい。配達実行者端末300は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部310を備えている。また、配達実行者端末300は、ユーザI/F部320と、GNSS受信部330と、車速センサ331と、ジャイロセンサ332と、通信部340と、記録媒体350と、計時部(不図示)を備えている。
【0021】
ユーザI/F部320は、配達実行者に対して各種の情報を提供するとともに、配達実行者による操作を入力するためのタッチパネルディスプレイや、案内音声等を出力するスピーカ等を備えている。通信部340は、配達支援システム10と情報の授受を行う回路を備えている。制御部310は、通信部340を介して配達支援システム10と通信を行うことができる。
【0022】
GNSS受信部330は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置であり、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して配達車両の現在位置を算出するための信号を出力する。制御部310は、この信号を取得して配達車両の現在位置を取得する。車速センサ331は、配達車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部310は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ332は、配達車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、配達車両の向きに対応した信号を出力する。制御部310は、この信号を取得して配達車両の進行方向を取得する。車速センサ331およびジャイロセンサ332等は、配達車両の走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、配達車両の出発位置と走行軌跡とに基づいて現在位置が特定され、当該出発位置と走行軌跡とに基づいて特定された配達車両の現在位置がGNSS受信部330の出力信号に基づいて補正される。
【0023】
記録媒体350には配達計画350aと地図情報350bとが記録される。配達計画350aは、配達支援システム10が生成した配達計画と同一である。すなわち、配達支援システム10で生成された配達計画は、配達実行者端末300に送信されて保存される。記録媒体350に保存された配達計画350aは、当該記録媒体350を備える配達実行者端末300が搭載された配達車両についての配達計画である。配達計画350aは、配達計画を案内するために利用される。
【0024】
地図情報350bは、ノードデータ,形状補間点データ,リンクデータ,道路やその周辺に存在する地物の位置等を示すデータ等を含んでいる。リンクデータにはリンクデータが示す道路区間に関する各種情報(例えば、道路属性等)が対応づけられている。また、地物を示すデータには、地物の属性(施設の種類等)を示す情報が対応づけられている。本実施形態においては、これらの地物が配達先の店舗となり得る。
【0025】
制御部310は、記録媒体350やROMに記憶された計画案内プログラム311を実行可能である。計画案内プログラム311を実行することにより、制御部310は、地図上に走行予定経路を表示させることによって配達計画を案内する。具体的には、制御部310は、GNSS受信部330、車速センサ331、ジャイロセンサ332の出力信号に基づいて現在位置を取得する。また現在位置を取得した日時を計時部から取得する。また、制御部310は、地図情報350bに基づいて、現在位置を含む地図をユーザI/F部320の出力部に表示させる。また、制御部310は、配達車両の現在位置および現在時刻を配達車両の識別情報とともに、通信部340を介して配達支援システム10に送信する。なお計時部は現在日時を出力する回路である。計時部がカウントする現在日時はGNSS受信部330が受信した信号に基づいて補正される。
【0026】
さらに、制御部310は、配達計画350aを参照し、表示されている地図に含まれる走行予定経路を強調表示する(例えば、走行予定経路としての道路区間を他の道路区間と異なる色で表示する等)。また、制御部310は、配達計画350aを参照し、各店舗への到着予定時刻や荷役期間、各店舗にて配達すべき荷物を案内する。配達実行者は、案内された経路に従って配達車両を移動させることにより、決められた配達順序に従って配達先に順に向かい、荷物を配達することができる。なお、配達計画の実行開始後、配達支援システム10から再探索の結果得られた最新の走行予定経路や店舗への到着予定時刻(第2到着予定時刻)が送信される。そのため、配達実行者は、最新の走行予定経路に従って配達車両を移動させることができる。
【0027】
(1-3)配達支援システムの構成:
上述した配達計画は、配達支援システム10が備える図示しないVRP(Vehicle Routing Problem)エンジンによって配達計画問題を解くことにより、配達実行日より以前に予め作成され、記録媒体30に記録される(配達計画30a)。配達実行者は配達計画に従って行動するが、配達支援システムの運用過程においては、予め作成された配達計画通りに配達を行えなくなる場合がある。例えば、予期しない交通事情や、荷役作業の遅れ等によって計画よりも送れること等があり得る。そこで、本実施形態においては、配達計画の実行開始時や実行中に、配達先の店舗に順に向かう経路を再探索するために、配達支援システム10が構成される。
【0028】
配達支援システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20を備えている。また、配達支援システム10は、記録媒体30と通信部40と図示しない計時部を備えている。通信部40は、店舗端末200、配達実行者端末300、交通情報管理サーバ400と情報の授受を行う回路を備えている。制御部20は、通信部40を介して配達支援システム10と通信を行うことができる。
【0029】
以上の構成により、制御部20が、配達支援プログラム21を実行することにより、制御部20は、配達計画取得部21a、現在位置取得部21b、経路探索部21c、通知部21dとして機能する。配達計画取得部21aの機能により、制御部20は、複数の配達先への配達順序と、当該配達順序に従って複数の配達先に順に向かう経路と、を含む配達計画を取得する。すなわち、制御部20は、記録媒体30に記録された配達計画30aを取得する。
【0030】
なお、配達計画30aは、配達車両毎に定義されており、配達計画を実行すべき配達車両の識別情報が対応づけられている。配達計画30aが取得されると、制御部20は、配達計画30aに含まれる識別情報に基づいて配達計画を実行すべき配達車両を特定する。そして、制御部20は、通信部40を介して、配達計画を実行すべき配達車両に対して、当該配達車両で実行すべき計画を示す配達計画30aを送信する。配達実行者端末300においては、通信部340を介して当該配達計画30aを取得し、記録媒体350に対して配達計画350aとして記録する。
【0031】
現在位置取得部21bの機能により、制御部20は、配達車両の現在位置を取得する。本実施形態において、配達実行者端末300において配達計画の実行開始トリガが検知されると、配達計画実行中の間、定期的に、配達実行者端末300から配達車両の現在位置および時刻が、車両に識別情報とともに送信されるように構成されている。制御部20は、配達車両から送信された車両の識別情報と現在位置および時刻を取得すると、識別情報に対応付けて現在位置および時刻を記録媒体30に記録する。従って、車両の識別情報に対応付けて記録された位置および時刻は、識別情報が示す配達車両の移動履歴である。この移動履歴は、配達計画に対する進捗や、計画に対するずれの原因等を特定するために用いられる。
【0032】
経路探索部21cの機能により、制御部20は、配達計画の実行開始トリガを取得した場合に、配達順序に従って複数の前記配達先に順に向かう経路を、配達車両の現在位置に基づいて再探索する。本実施形態において、配達実行者が配達実行者端末300において計画案内プログラム311にログインしたことを検知したことを実行開始トリガとする。本実施形態において、配達実行者は、配達計画の実行日において配達業務を開始(すなわち配達計画の実行を開始)する際に計画案内プログラム311にログインするようにルール化されている。
【0033】
ところで、配達計画に規定された走行予定経路で渋滞が発生していると、配達計画の策定段階で想定されていた道路区間の属性毎の平均車速よりも遅い車速で移動する必要が生じる。このような場合に、現在実施中の配達計画に従うと、各店舗の到着予定時刻に到着できないなどといった状況になり得る。そこで、本実施形態において、制御部20は、交通情報を収集する。
【0034】
交通情報管理サーバ400は、プローブ車両から収集した移動履歴等に基づいて、任意の道路区間における現況の交通情報を生成し、保持している。交通情報には、渋滞度(例えば、空き、混雑、渋滞の3段階)や規制情報等が含まれる。また、交通情報管理サーバ400は、現況の交通情報に基づいて、任意時間経過後の時間帯(到着予定時間帯)における推定交通情報を生成することができる。推定交通情報は、例えば、エリア内に含まれる各道路区間の現況の交通情報と、任意時間経過後の時間帯と、を入力し、任意時間後の各道路区間の交通情報を出力する機械学習モデルを用いて取得可能である。交通情報管理サーバ400は、配達支援システム10からの要求に応じて、任意の道路区間の現況の交通情報や、当該道路区間の任意時間経過後の時間帯の推定交通情報を配達支援システム10に送信することができる。
【0035】
制御部20は、配達計画30aを参照し、配達開始トリガを検知した配達車両について、各配達先の店舗の到着予定時刻(第1到着予定時刻)を取得する。制御部20は、配達計画の実行開始トリガの取得した場合の時刻を計時部から取得し、実行開始トリガの取得時刻から第1到着予定時刻までの時間が閾値T
1以内の配達先店舗を特定し、当該店舗を含む既定範囲のエリアA1に含まれる道路区間を特定する。
図2Bの例において、例えば閾値T
1以内の店舗がS
AとS
Bであるとして説明を続ける。この場合、制御部20は、出発地点Sと店舗S
Aと店舗S
Bとを含むエリアA1を設定し、エリアA1内に位置する道路区間を特定する。
【0036】
制御部20は、通信部40を介して当該道路区間についての現況の交通情報の送信要求を出力する。この結果、交通情報管理サーバ400は、当該道路区間の現況の交通情報を送信し、制御部20は、通信部40を介して当該交通情報を取得する。制御部20は、取得した現況の交通情報に応じて、各道路区間の移動所要時間を設定する。具体的には例えば、道路区間の距離を渋滞度に応じた平均車速で除することにより道路区間の移動所要時間が算出される。そして、制御部20は、出発地点Sから店舗SAに向かう経路と、店舗SAから店舗SBに向かう経路を再探索する。現況の交通情報を加味した再探索が行われるため、配達計画30aにて規定されている経路とは異なる経路が再探索の結果として取得されうる。また、配達計画30aにて規定されている移動所要時間より増減した移動所要時間が算出されうる。
【0037】
制御部20は、再探索の結果得られた経路を構成する各道路区間の移動所要時間を加算することで、出発地点Sから店舗SAまでの経路の移動所要時間と、店舗SAから店舗SBまでの経路の移動所要時間を算出する。制御部20は、実行開始トリガの取得時刻に、出発地点Sから店舗SAまでの移動所要時間を加算し、店舗SAへの到着予定時刻(第2到着予定時刻)を算出する。さらに、制御部20は、配達計画30aを参照し、店舗SAでの荷役期間の長さを取得し、店舗SAへの第2到着時刻と、店舗SAでの荷役期間と、店舗SAから店舗SBまでの移動所要時間とを加算することで、店舗SBへの第2到着予定時刻を算出する。
【0038】
続いて、制御部20は、店舗SBと次の店舗SCとを含む既定範囲のエリアA2に位置する道路区間を特定し、店舗SBへの第2到着予定時刻を含む時間帯(到着予定時間帯)における当該道路区間の推定交通情報を、交通情報管理サーバ400から取得する。制御部20は、取得した推定交通情報に応じて、各道路区間の移動所要時間を算出する。そして、制御部20は、店舗SBから店舗SCに向かう経路を再探索する。現況の交通情報に基づいて推定された推定交通情報を加味して再探索が行われるため、配達計画30aにて規定されている経路とは異なる経路が取得されうる。また、店舗SBから店舗SCへの移動所要時間についても配達計画30aにて規定された時間と異なる時間が算出されうる。制御部20は、配達計画30aを参照し、店舗SBでの荷役期間の長さを取得し、店舗SBへの第2到着時刻と、店舗SBでの荷役期間と、店舗SBから店舗SCまでの移動所要時間とを加算することで、店舗SCへの第2到着予定時刻を算出する。以降、同様にして、制御部20は、店舗SD、SE、SF、SG、SHへの第2到着予定時刻を算出する。
【0039】
通知部21dの機能により、制御部20は、再探索によって得られた配達先への第2到着予定時刻の第1到着予定時刻とのずれを示す情報を配達先に通知する。本実施形態においては、第1到着予定時刻と第2到着予定時刻の両方を通知することにより、第2到着予定時刻の第1到着予定時刻とのずれを示す情報を表現する構成を採用する。制御部20は、配達計画30aを参照し、各店舗への第1到着予定時刻を取得する。制御部20は、各店舗に対して、当該店舗への第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とを、通信部40を介して送信する。この結果、各店舗における店舗端末200のユーザI/F部に第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とが表示される。また、本実施形態において、制御部20は、配達実行者端末300に、再探索された経路と第2到着予定時刻を送信する。その結果、配達実行者は現況の交通情報や、現況交通情報に基づいて推定された推定交通情報に基づいて再探索された経路に従って配達車両を移動させることができる。
【0040】
さらに、通知部21dの機能により、制御部20は、第2到着予定時刻が第1到着予定時刻とずれている場合、配達計画の進捗を通知する。本実施形態において、制御部20は、第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とのずれ(差分)が閾値以上である場合に、配達計画の進捗を通知する。具体的に、制御部20は、配達車両の移動履歴と配達計画とを参照し、配達実行者が配達車両で移動中であるか荷役作業中であるかを特定する。移動中である場合、制御部20は移動中の区間を特定し、荷役作業中である場合は、作業中の店舗を特定する。この結果、配達車両がまだ到着していない店舗を特定することができる。そして、制御部20は、通信部40を介して、配達計画に含まれる各店舗の店舗端末200に、配達計画の進捗を送信する。店舗端末200は配達計画の進捗を受信すると、ユーザI/F部に表示する。その結果、店舗の作業者は、配達計画の進捗を認識することができる。なお、進捗が送信されるのは、配達計画に含まれる店舗のうち、全店舗でもよいし、配達車両がまだ到着していない店舗に限定されてもよい。
【0041】
また、通知部21dの機能により、制御部20は、第2到着予定時刻が第1到着予定時刻とずれている場合、ずれが生じた原因を通知する。本実施形態において、制御部20は、第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とのずれ(差分)が閾値以上である場合に、ずれが生じた原因を通知する。具体的に、制御部20は、配達車両の移動履歴と配達計画とに基づいて、ずれが生じた原因を特定する。例えばある店舗から次の店舗に移動する際の実際の移動所要時間が配達計画で規定された予定の移動所要時間を超えている場合、これらの店舗間の移動に予定より多くの時間を要したことを制御部20は、原因として特定する。また例えば、ある店舗への実際の到着時刻から出発時刻までの時間から求められる当該店舗での荷役期間の長さが、配達計画における当該店舗における荷役期間の長さを超えている場合、制御部20は、この店舗での荷役作業が予定よりも多くの時間を要したことを原因として特定する。そして、制御部20は、通信部40を介して、配達計画に含まれる各店舗の店舗端末200に、ずれが生じた原因を示す情報を送信する。店舗端末200はずれの原因を受信すると、ユーザI/F部に表示する。その結果、店舗の作業者は、ずれが生じた原因を認識することができる。なお、ずれが生じた原因を示す情報が送信されるのは、配達計画に含まれる店舗のうち、全店舗でもよいし、配達車両がまだ到着していない店舗に限定されてもよい。また、ずれを示す情報やずれの原因は、配達実行者端末300にも通知されてよい。
【0042】
以上のように、本実施形態の配達支援システム10は、配達計画の実行開始トリガを取得すると、配達順序に従って配達先に順に向かう経路を再探索することができる。そのため、配達支援システム10によれば、再探索によって、配達計画の実行を開始する際の状況に応じた経路を取得できる。また、実際にずれが生じる前に、店舗の作業者は、今後ずれが生じうることを認識することが可能である。また、配達実行者においても、走行予定の経路上で渋滞や規制の影響で実際に店舗への到着が予定より遅れてしまう前に、再探索によって取得された経路に従って配達車両を移動させることができる。そのため渋滞や規制の影響を受ける可能性が低い経路を走行することが可能であり、店舗への実際の到着時刻が第1到着予定時刻と大幅に異なる時刻となることを防止できうる。
【0043】
なお、経路探索部21cの機能により、配達計画の実行を開始した後も、配達計画の実行中は、制御部20は、第2到着予定時刻を定期的に取得する。そして、前回店舗端末200に通知した第2到着予定時刻と今回取得した第2到着予定時刻との間に既定時間以上の変化があった場合に、制御部20は、第1到着予定時刻と今回取得した第2到着予定時刻とのずれを示す情報を店舗端末200に送信する。このように、本実施形態においては、配達計画の実行中、最新の交通情報と、配達計画についての最新の進捗状況に基づいて、定期的に経路の再探索が行われ、第2到着予定時刻が取得される。そのため、店舗の作業者は、計画に実際にずれが生じる前に、今後ずれが生じうることを認識することが可能である。また、配達実行者においても、走行予定の経路上で渋滞や規制の影響で実際に店舗への到着が予定より遅れてしまう前に、再探索によって取得された経路に従って配達車両を移動させることができる。
【0044】
(2)配達支援処理:
次に、配達支援システム10の制御部20が実行する配達支援処理を、
図3を参照しながら説明する。配達支援処理は、制御部20が、配達計画の実行開始トリガを取得した場合に実行される。具体的には、配達実行者端末300において計画案内プログラム311に対するログインを検知した場合に開始される。配達支援処理が開始されると、制御部20は、通知部21dの機能により、配達計画を配達実行者端末300に送信する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、ログイン元の配達実行者端末300に対して、当該端末に対応付けられた配達計画を、通信部40を介して送信する。この結果、配達実行者端末300は、配達計画350aを、記録媒体350に記録する。
【0045】
続いて、制御部20は、経路探索部21cの機能により、交通情報を取得し、配達車両の現在位置から配達順序に従って配達先の店舗に順に向かう経路を再探索する(ステップS105)。制御部20は、配達車両の最新の位置を配達車両から取得し、交通情報管理サーバ400から最新の交通情報を取得した場合に、再探索を行う。制御部20は、再探索の結果、配達順序に従って各店舗に移動するための経路と、各店舗への第2到着予定時刻を取得することができる。
【0046】
続いて、制御部20は、通知部21dの機能により、再探索により得られた経路と第2到着予定時刻を配達車両に通知する(ステップS110)。従って、配達実行者は、再探索により得られた最新の経路の案内に従って配達車両を移動させることができる。続いて、制御部20は、通知部21dの機能により、初回であるか否かを判定する(ステップS115)。すなわち、ステップS110における再探索が、実行開始トリガを受けて配達支援処理を開始してから初めての再探索であったか否かが判定される。
【0047】
ステップS115において初回であると判定された場合、制御部20は、通知部21dの機能により、店舗端末200にずれを示す情報を通知する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とを通知する。第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とにずれが生じているか否かに関わらず、ずれを示す情報として、本実施形態においては第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とが通知される。また、本実施形態において、第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とのずれが閾値を超える場合、制御部20は、ずれが生じた原因と、配達計画に対する進捗を店舗端末200に通知する。
【0048】
ステップS115において、初回であると判定されなかった場合、制御部20は、通知部21dの機能により、前回の第2到着予定時刻と今回の第2到着時刻とに既定時間以上の変化が有るか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、前回店舗端末200に通知した第2到着予定時刻と今回取得した第2到着予定時刻との間に既定時間以上の変化があるか否かが判定される。ステップS120で既定時間以上の変化が有ると判定された場合、制御部20はステップS125を実行する。
【0049】
ステップS120において既定時間以上の変化が有ると判定されなかった場合、または、ステップS125を実行後、制御部20は、配達が完了したか否かを判定する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、配達車両の移動履歴から配達車両が配達計画の最終目的地に到達したか否かを判定する。ステップS130において、配達が完了したと判定されなかった場合、制御部20は、ステップS105の処理に戻る。ステップS130において配達が完了したと判定された場合、制御部20は、配達支援処理を終了する。
【0050】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、配達支援システム10を構成する配達計画取得部21a、現在位置取得部21b、経路探索部21c、通知部21dの少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していてもよい。配達支援システム10の一部がクラウドサーバで実現されてもよい。配達支援システム10は、車載機で実現されてもよいし、携帯型の端末で実現されてもよい。また、上述の実施形態の一部の構成が省略される構成や、処理順序が変動する構成も想定しうる。
【0051】
配達計画は、複数の配達先への配達順序と、配達順序に従って複数の配達先に順に向かう経路とを含んでいれば良い。上記実施形態で示した配達計画は一例に過ぎない。例えば、
図2Aの少なくとも一部の情報が店舗端末200で生成され、残りの情報が配達支援システム10で生成されてもよい。また、配達計画には、配達(荷卸)の他にも荷積の計画も含まれていてもよい。
【0052】
配達計画における経路には、配達先以外の位置に関する経路が含まれていてもよい。例えば、拠点から最初の順序の配達先までの経路や、最後の配達先から拠点までの経路が含まれていてもよい。なお、最後の荷役地点の後に最初の荷役地点に行くような巡回経路が想定されてもよい。
【0053】
経路探索部においては、配達順序に従って複数の配達先に順に向かう経路を、配達車両の現在位置に基づいて再探索することができればよい。経路探索は、ダイクストラ法等の公知のアルゴリズムを用いて行われて良い。配達計画の実行開始トリガは、配達計画の実行日において、配達計画が実行開始されたことを示す事象であるとして予め決められたものであればよく、この他にも種々の構成を採用してよい。例えば、配達実行者によるログインを検知し、配達車両の現在位置を取得し、かつ、交通情報管理サーバから最新の交通情報を取得したことを実行開始トリガとしてもよい。また例えば、配達計画の実行開始ボタンが予め設けてあり当該ボタンを配達実行者がタッチ操作したことを実行開始トリガとしてもよいし、配達車両が配達計画の実行日における実行開始時刻に拠点から移動を開始したことを実行開始トリガとしてもよい。
【0054】
通知部は、再探索によって得られた前記配達先への第2到着予定時刻と第1到着予定時刻とのずれ(差分)を示す情報を前記配達先に通知することができればよい。従って第1到着予定時刻との差分時間(例えば10分遅れ等)を、ずれを示す情報として通知し、配達先においても差分時間が案内される構成であってもよい。この場合、例えば「0分」は当初の予定通りに到着予定であることを示しており、例えば「+5分」は到着が予定より5分遅れる見込みであることを示している。もちろん、上記実施形態のように、第1到着予定時刻と第2到着予定時刻の両方が配達先において案内されることにより、配達先の作業者は、当初の予定と、当該予定とのずれとを明確に認識することができる。なお、第1到着予定時刻と第2到着予定時刻とのずれは、第2到着予定時刻が第1到着予定時刻よりも遅れることに限定されず、第2到着予定時刻が第1到着予定時刻よりも早まることも含む。
【0055】
第2到着予定時刻が第1到着予定時刻とずれている場合、ずれが生じた原因を取得することにより、取得した原因を、配達計画の見直しや配達実行者の実績評価等に用いることもできる。
【0056】
さらに、本発明のように、配達計画の実行開始トリガを取得した場合に、配達順序に従って複数の配達先に順に向かう経路を、配達車両の現在位置に基づいて再探索する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…配達支援システム、20…制御部、21…配達支援プログラム、21a…配達計画取得部、21b…現在位置取得部、21c…経路探索部、21d…通知部、30…記録媒体、30a…配達計画、40…通信部、200…店舗端末、300…配達実行者端末、310…制御部、311…計画案内プログラム、320…ユーザI/F部、330…GNSS受信部、331…車速センサ、332…ジャイロセンサ、340…通信部、350…記録媒体、350a…配達計画、350b…地図情報、400…交通情報管理サーバ