(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】減感印刷検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20250626BHJP
B41M 5/128 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
B41M5/128
(21)【出願番号】P 2021156897
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】593022076
【氏名又は名称】佐川印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 浩之
(72)【発明者】
【氏名】奥田 光司
【審査官】西岡 貴央
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-324108(JP,A)
【文献】特開2012-026908(JP,A)
【文献】特開2009-186328(JP,A)
【文献】特開2010-210572(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111222412(CN,A)
【文献】特開2016-206691(JP,A)
【文献】特開2009-005218(JP,A)
【文献】特開2006-303645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)それぞれ予め伝票用紙種別コードが付された複数種類の感圧複写伝票用紙と、複数種類の減感版を準備し、
(2)正しい前記減感版を用いて正確に減感印刷した前記感圧複写伝票用紙を参照用感圧複写伝票用紙とし、前記参照用感圧複写伝票用紙の前記伝票用紙種別コードを読み取り、前記参照用感圧複写伝票用紙を発色処理して前記参照用感圧複写伝票用紙中の減感インキ塗布領域以外の領域を発色させ、
(3)前記発色処理した参照用感圧複写伝票用紙をカメラによって撮影し、
(4)前記参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像において、前記参照用感圧複写伝票用紙の1つの特徴部分の形状を前記伝票用紙種別コードに関係づけて登録するとともに、前記グレースケール画像内にX-Y座標系を設定して、前記特徴部分の中心を前記X-Y座標系の原点に一致させるとともに、前記特徴部分の主軸を前記X-Y座標系の一方の座標軸に一致させ、
(5)前記参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中に
複数の矩形状の検査窓
であってそれぞれが少なくとも1つの前記減感インキ塗布領域を含むものを設定し、
複数の前記検査窓の位置、高さおよび幅を検査窓データとして前記伝票用紙種別コードに関係づけて登録し、
(6)前記参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像における前記検査窓毎に、前記検査窓内の前記減感インキ塗布領域をそれ以外の領域から峻別し得る輝度の閾値を設定し、前記閾値を前記検査窓に関係づけて登録するとともに、前記検査窓内の画像部分を参照画像部分として前記検査窓に関係づけて登録し、
(7)検査すべき前記感圧複写伝票用紙および前記減感版の組み合わせを用いて減感印刷することにより製造した被検査感圧複写伝票用紙の前記伝票
用紙種別コードを読み取り、前記被検査感圧複写伝票用紙を前記発色処理して前記被検査感圧複写伝票用紙中の減感インキ塗布領域以外の領域を発色させ、
(8)前記発色処理した被検査感圧複写伝票用紙を前記カメラによって撮影し、
(9)前記登録した特徴部分の形状のうち前記伝票用紙種別コードに対応する前記特徴部分の形状に基づいて、前記被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中の前記特徴部分を検出し、前記グレースケール画像内にX-Y座標系を設定して、前記検出した特徴部分の中心を前記X-Y座標系の原点に一致させるとともに、前記検出した特徴部分の主軸を前記X-Y座標系の前記一方の座標軸に一致させ、
(10)前記被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中に、前記登録した検査窓データのうちの前記伝票用紙種別コードに対応する前記検査窓データに基づいて
複数の前記検査窓を設定し、前記検査窓毎に、前記登録した閾値のうち前記伝票用紙種別コードに対応する前記閾値に基づいて、前記検査窓内の画像部分および前記登録した参照画像部分のうち前記伝票用紙種別コードに対応する前記参照画像部分をそれぞれ二値化し、前記検査窓内の前記減感インキ塗布領域と前記参照画像部分中の対応する前記減感インキ塗布領域との差分をとり、前記差分が予め設定した許容範囲内にあるときは、前記被検査感圧複写伝票用紙の前記減感印刷が正常に行われたものと判定することを特徴とする減感印刷検査方法。
【請求項2】
前記ステップ(10)において、前記検査窓を設定した後であって、前記検査窓毎に前記検査窓内の画像部分および前記対応する参照画像部分をそれぞれ二値化する前に、前記対応する参照画像部分と前記検査窓内の画像部分とのパターンマッチングを行うことによって、前記検査窓内の画像部分が前記対応する参照画像部分に最も一致するように前記検査窓内の画像部分の位置のズレを補正することを特徴とする請求項1に記載の減感印刷検査方法。
【請求項3】
前記特徴部分は、予め前記感圧複写伝票用紙の所定の前記減感インキ塗布領域に印刷された一定の桁数の伝票問い合わせ番号からなり、前記特徴部分の中心が、前記伝票問い合わせ番号のOCRによる読取り時に前記伝票問い合わせ番号の文字列によって画定される矩形状ブロックの中心であり、前記特徴部分の主軸が、前記矩形状ブロックの中心を通り前記矩形状ブロックの長辺に平行にのびる中心軸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の減感印刷検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧複写式伝票の製造工程において、感圧複写伝票用紙の減感印刷が正常に行われたか否かを検査する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感圧複写式伝票は、少なくとも1枚の感圧記録紙(以下、「感圧複写伝票用紙」と呼ぶ。)を含む複数枚の伝票用紙から構成され、各伝票用紙の表面には、通常の印刷用インキを用いて伝票が所定の様式で印刷されている。
【0003】
感圧複写伝票用紙は、通常、紙面の全体が複写範囲となっており、そのため、感圧複写伝票用紙中に複写を必要としない領域がある場合、感圧複写伝票用紙の当該領域に減感インキ(透明な特殊インキ)が印刷される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
この印刷工程は、通常「減感印刷」と呼ばれ、減感印刷には減感版が使用されるが、感圧複写伝票用紙の種別毎に異なる減感版が準備される。
そして、感圧複写伝票用紙の種別に対応した減感版を用いて減感印刷がなされる。
【0005】
ところで、感圧複写伝票用紙の種別に対応していない減感版が使用されると、減感印刷が感圧複写伝票用紙の誤った位置に行われるが、この場合には、複写が不要な領域に記入された文字や数字が複写され、また複写が必要な領域に記入された文字や数字が複写されず、伝票としての機能が全く発揮されない。
【0006】
また、感圧複写伝票用紙と減感版の組み合わせが正しい場合であっても、印刷のムラやズレが生じると、減感インキが、複写が必要な領域まではみ出し、あるいは複写が不要な領域の一部にしか塗布されず、伝票としての機能が正しく発揮されない。
【0007】
そのため、感圧複写式伝票の製造工程では、減感印刷が正常に行われたか否かが検査される。
従来、この検査においては、まず、正確に減感印刷がされた感圧複写伝票用紙が減感インキチェック剤によって発色処理され、感圧複写伝票用紙の減感インキ塗布領域以外の領域が青色に発色せしめられたものが参照用伝票用紙として予め作製され、感圧複写伝票用紙の種別毎に保管される。
【0008】
そして、検査すべき感圧複写伝票用紙と減感版との組み合わせを用いて減感印刷することにより製造された被検査感圧複写伝票用紙が、同様にして減感インキチェック剤によって発色処理され、作業者の目視によって、発色処理後の被検査感圧複写伝票用紙が同じ種別の参照用伝票用紙と比較対照され、両者の間で減感インキ塗布領域の位置、形状およびサイズが互いに所定の許容範囲内で一致すれば、減感印刷が正常に行われたものと判定される。
【0009】
しかしながら、このような作業者の目視での検査は非効率的であり、また、作業者の不注意によって検査ミスが発生しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第2729617号公報
【文献】特開2016-176889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、感圧複写伝票用紙の減感印刷が正常に行われたか否かを的確かつ効率的に検査できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、(1)それぞれ予め伝票用紙種別コードが付された複数種類の感圧複写伝票用紙と、複数種類の減感版を準備し、(2)正しい前記減感版を用いて正確に減感印刷した前記感圧複写伝票用紙を参照用感圧複写伝票用紙とし、前記参照用感圧複写伝票用紙の前記伝票用紙種別コードを読み取り、前記参照用感圧複写伝票用紙を発色処理して前記参照用感圧複写伝票用紙中の減感インキ塗布領域以外の領域を発色させ、(3)前記発色処理した参照用感圧複写伝票用紙をカメラによって撮影し、(4)前記参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像において、前記参照用感圧複写伝票用紙の1つの特徴部分の形状を前記伝票用紙種別コードに関係づけて登録するとともに、前記グレースケール画像内にX-Y座標系を設定して、前記特徴部分の中心を前記X-Y座標系の原点に一致させるとともに、前記特徴部分の主軸を前記X-Y座標系の一方の座標軸に一致させ、(5)前記参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中に少なくとも1つの前記減感インキ塗布領域を含む少なくとも1つの矩形状の検査窓を設定し、前記検査窓の位置、高さおよび幅を検査窓データとして前記伝票用紙種別コードに関係づけて登録し、(6)前記参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像における前記検査窓毎に、前記検査窓内の前記減感インキ塗布領域をそれ以外の領域から峻別し得る輝度の閾値を設定し、前記閾値を前記検査窓に関係づけて登録するとともに、前記検査窓内の画像部分を参照画像部分として前記検査窓に関係づけて登録し、(7)検査すべき前記感圧複写伝票用紙および前記減感版の組み合わせを用いて減感印刷することにより製造した被検査感圧複写伝票用紙の前記伝票種別コードを読み取り、前記被検査感圧複写伝票用紙を前記発色処理して前記被検査感圧複写伝票用紙中の減感インキ塗布領域以外の領域を発色させ、(8)前記発色処理した被検査感圧複写伝票用紙を前記カメラによって撮影し、(9)前記登録した特徴部分の形状のうち前記伝票用紙種別コードに対応する前記特徴部分の形状に基づいて、前記被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中の前記特徴部分を検出し、前記グレースケール画像内にX-Y座標系を設定して、前記検出した特徴部分の中心を前記X-Y座標系の原点に一致させるとともに、前記検出した特徴部分の主軸を前記X-Y座標系の前記一方の座標軸に一致させ、(10)前記被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中に、前記登録した検査窓データのうちの前記伝票用紙種別コードに対応する前記検査窓データに基づいて前記検査窓を設定し、前記検査窓毎に、前記登録した閾値のうち前記伝票用紙種別コードに対応する前記閾値に基づいて、前記検査窓内の画像部分および前記登録した参照画像部分のうち前記伝票用紙種別コードに対応する前記参照画像部分をそれぞれ二値化し、前記検査窓内の前記減感インキ塗布領域と前記参照画像部分中の対応する前記減感インキ塗布領域との差分をとり、前記差分が予め設定した許容範囲内にあるときは、前記被検査感圧複写伝票用紙の前記減感印刷が正常に行われたものと判定することを特徴とする減感印刷検査方法が提供される。
【0013】
本発明の好ましい実施例によれば、前記ステップ(10)において、前記検査窓を設定した後であって、前記検査窓毎に前記検査窓内の画像部分および前記対応する参照画像部分をそれぞれ二値化する前に、前記対応する参照画像部分と前記検査窓内の画像部分とのパターンマッチングを行うことによって、前記検査窓内の画像部分が前記対応する参照画像部分に最も一致するように前記検査窓内の画像部分の位置のズレを補正する。
【0014】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記特徴部分は、予め前記感圧複写伝票用紙の所定の前記減感インキ塗布領域に印刷された一定の桁数の伝票問い合わせ番号からなり、前記特徴部分の中心が、前記伝票問い合わせ番号のOCRによる読取り時に前記伝票問い合わせ番号の文字列によって画定される矩形状ブロックの中心であり、前記特徴部分の主軸が、前記矩形状ブロックの中心を通り前記矩形状ブロックの長辺に平行にのびる中心軸である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数種類の参照用感圧複写伝票用紙を準備し、各参照用感圧複写伝票用紙を発色処理して減感インキ塗布領域以外の領域を発色させた後、カメラで撮影し、各参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中に検査窓を設定し、検査窓内の画像部分を参照画像部分として参照画像部分中の減感インキ塗布領域とそれ以外の領域を峻別する輝度の閾値とともに登録しておく。
【0016】
そして、被検査感圧複写伝票用紙を発色処理した後、カメラで撮影し、被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中に対応する参照用感圧複写伝票用紙と共通の検査窓を設定し、検査窓内の画像部分および対応する参照画像部分をそれぞれ二値化し、対応する減感インキ塗布領域同士の差分をとり、差分が予め設定した許容範囲内にあるときは、被検査感圧複写伝票用紙の減感印刷が正常に行われたものと判定する。
【0017】
こうして、本発明によれば、作業者の目視によらずに、カメラで撮影した被検査感圧複写伝票用紙の画像および参照用感圧複写伝票用紙の画像を画像処理し、2つの画像中の互いに対応する減感インキ塗布領域同士の差分をとることで検査を行うので、的確かつ効率的な検査が行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の1実施例による減感印刷検査方法のフロー図である。
【
図2】参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像を表示したディスプレイ画面を示した図である。
【
図3】(A)は、OCRによる伝票問い合わせ番号の読取り時の状態を示した図であり、(B)は、参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中にX-Y座標系を設定した状態を示した図であり、(C)は、減感インキ塗布領域内に検査除外領域を設定した状態を示した図である。
【
図4】
図2のディスプレイ画面上において検査窓を設定した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の1実施例による減感印刷検査方法のフロー図である。
【0020】
図1を参照して、本発明によれば、まず、それぞれ予め伝票用紙種別コードが付された複数種類の感圧複写伝票用紙と、複数種類の減感版を準備する(
図1のS1)。
【0021】
この実施例では、伝票用紙種別コードは、感圧複写伝票用紙の伝票印刷面外側の余白部分に文字列の形態で印刷されているが、文字列の代わりにバーコードによって表されていてもよい。
【0022】
また、この実施例では、感圧複写伝票用紙は紙面の全体が複写範囲となっている。そして、感圧複写伝票用紙中に複写を必要としない領域がある場合は、感圧複写伝票用紙の当該領域に減感版および減感インキを用いて減感印刷を行う。
【0023】
本発明によれば、次に、正しい減感版を用いて正確に(印刷のムラやズレを生じることなく)減感印刷した感圧複写伝票用紙を参照用感圧複写伝票用紙とし、参照用感圧複写伝票用紙の伝票用紙種別コードを読み取り、参照用感圧複写伝票用紙を発色処理して参照用感圧複写伝票用紙中の減感インキ塗布領域以外の領域を発色させる(
図1のS2)。
【0024】
この実施例では、参照用感圧複写伝票用紙の伝票用紙種別コードの読み取りは目視によって行うが、伝票用紙種別コードがバーコードによって表されている場合にはバーコードリーダーによって行う。
【0025】
発色処理は、参照用感圧複写伝票用紙に減感インキチェック剤を塗布することによって行う。発色処理によって、参照用感圧複写伝票用紙中の減感インキ塗布領域以外の領域は青色に発色するが、減感インキ塗布領域は発色しない(白色のままである)。
【0026】
本発明によれば、次に、発色処理した参照用感圧複写伝票用紙をカメラによって撮影する(
図1のS3)。
カメラとしては、カラーカメラおよびモノクロカメラのいずれを使用してもよい。
なお、この実施例では、撮影に際し、感圧複写式伝票用紙を定位置に位置決めするための手段を備えた伝票用紙載置台を準備し、載置台の上方の定位置にカメラを設けるとともに、感圧複写伝票用紙の表面に均一に光を照射するための適当な照明装置を設けて、撮影すべき感圧複写伝票用紙とカメラとの位置関係を常に一定に維持しつつ、できる限り鮮明な画像が得られるようにした。
【0027】
本発明によれば、さらに、得られた参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像(ビットマップ画像)において、参照用感圧複写伝票用紙の1つの特徴部分の形状を伝票用紙種別コードに関係づけて登録するとともに、このグレースケール画像内にX-Y座標系を設定して、特徴部分の中心をX-Y座標系の原点に一致させるとともに、特徴部分の主軸をX-Y座標の一方の座標軸に一致させる(
図1のS4)。
【0028】
この場合、撮影にカラーカメラを使用したときは、得られたカラー画像をグレースケール画像に変換する。
図2には、参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像を表示したディスプレイ画面を示した。
図2において、斜線で描かれた部分は発色処理によって発色した領域1を示し、白色の部分は減感インキ塗布領域2~5を示している。
【0029】
図2を参照して、特徴部分は、この実施例では、予め感圧複写伝票用紙の所定の欄(減感インキ塗布領域2)に印刷された一定の桁数(この実施例では、12桁)の伝票問い合わせ番号(感圧複写伝票用紙の識別番号)6からなっている。
そして、特徴部分(伝票問い合わせ番号6)の検出をOCR(光学的文字認識)によって行うが、
図3(A)および(B)に示すように、このOCRによる読取り時に伝票問い合わせ番号6の文字列によって画定される矩形状ブロック7の形状(矩形)が特徴部分の形状となり、この矩形状ブロック7の中心Cが特徴部分の中心であり、特徴部分の主軸は、矩形状ブロック7の中心Cを通って矩形状ブロック7の長辺に平行にのびる中心軸Mである。
【0030】
さらに、この実施例では、X-Y座標系を、参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像をディスプレイに表示したときの画面左上が座標原点となり、画面の水平方向および垂直方向がそれぞれX軸およびY軸となるように設定し、そして、
図3(B)に示すように、矩形状ブロック7の主軸MをX-Y座標系のX軸に一致させる。
【0031】
なお、特徴部分はこの実施例に限定されず、発色処理した感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中において位置合わせの目印になり得る当該感圧複写伝票用紙に固有の適当な画像部分を特徴部分とすることができる。
【0032】
本発明によれば、さらに、
図4に示すように、参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中に少なくとも1つの減感インキ塗布領域2~5を含む少なくとも1つの矩形状の検査窓8~10を設定し、検査窓8~10の位置(検査窓8~10の四隅および中心のうちの少なくとも1点の位置)、高さおよび幅を検査窓データとして伝票用紙種別コードに関係づけて登録する(
図1のS5)。
【0033】
この場合、複数の検査窓が部分的に重なり合っていてもよいし、1つの検査窓の範囲内に別の検査窓が位置していてもよい。また、1つの減感インキ塗布領域が複数の検査窓に含まれていてもよい。
【0034】
次に、参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像における検査窓8~10毎に、検査窓内の減感インキ塗布領域2~5をそれ以外の領域(発色した領域)1から峻別し得る輝度の閾値を設定し、閾値を検査窓8~10に関係づけて登録するとともに、検査窓8~10内の画像部分を参照画像部分11~13として検査窓8~10に関係づけて登録する(
図1のS6)。
【0035】
本発明によれば、また、減感インキ塗布領域2~5内に予め印刷された文字列および図形等が存在する場合には、それらの文字列および図形等を取り囲む矩形状領域を検査除外領域として、その位置、高さおよび幅を登録する。
この実施例では、減感インキ塗布領域2内に伝票問い合わせ番号6が存在するので、
図3(C)に示すように、伝票問い合わせ番号6を矩形状に取り囲む領域を検査除外領域14として、その位置(検査除外領域14の四隅および中心のうちの少なくとも1点の位置)、高さおよび幅を登録する。
【0036】
検査除外領域を登録するのは、後段の過程(後述する)で、画像の二値化によって画像中の減感インキ塗布領域とそれ以外の領域を峻別する際に、減感インキ塗布領域内に生じるノイズ部分(減感インキ塗布領域以外の領域として検出される部分)を除去するためである。
【0037】
本発明によれば、その後、検査すべき感圧複写伝票用紙および減感版の組み合わせを用いて減感印刷することによって製造した被検査感圧複写伝票用紙の伝票種別コードを読み取り、被検査感圧複写伝票用紙を前と同様に発色処理して被検査感圧複写伝票用紙中の減感インキ塗布領域以外の領域を発色させる(
図1のS7)。
【0038】
本発明によれば、さらに、発色処理した被検査感圧複写伝票用紙をカメラによって撮影し(
図1のS8)、登録した特徴部分の形状のうちの伝票用紙種別コードに対応する特徴部分の形状に基づいて、被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中の特徴部分を検出し、当該グレースケール画像内にX-Y座標系を設定して、検出した特徴部分の中心をX-Y座標系の原点に一致させるとともに、検出した特徴部分の主軸をX-Y座標系のX軸に一致させる(
図1のS9)。
【0039】
この実施例では、参照用感圧複写伝票用紙の場合と同様に、被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中の伝票問い合わせ番号をOCRによって読み取り、当該伝票問い合わせ番号に係る矩形状ブロックを検出する。
【0040】
また、この実施例では、参照用感圧複写伝票用紙の場合と同様に、X-Y座標系を、被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像をディスプレイに表示したときの画面左上が座標原点となり、画面の水平方向および垂直方向がそれぞれX軸およびY軸となるように設定する。そして、検出した矩形状ブロックの中心をX-Y座標系の原点に一致させるとともに、検出した矩形状ブロックの主軸をX-Y座標系のX軸に一致させる。
【0041】
次に、被検査感圧複写伝票用紙のグレースケール画像中に、登録した検査窓データのうちの伝票用紙種別コードに対応する検査窓データに基づいて検査窓を設定し、検査窓毎に、登録した閾値のうちの伝票用紙種別コードに対応する閾値に基づいて、検査窓内の画像部分および登録した参照画像部分のうちの伝票用紙種別コードに対応する参照画像部分をそれぞれ二値化し、検査窓内の減感インキ塗布領域と参照画像部分中の対応する減感インキ塗布領域との差分をとり、差分が予め設定した許容範囲内にあるときは、被検査感圧複写伝票の減感印刷が正常に行われたものと判定する(
図1のS10)。
【0042】
この場合、検査窓内の画像部分および対応する参照画像部分のそれぞれの二値化後、検査窓内の減感インキ塗布領域と参照画像部分中の対応する減感インキ塗布領域との差分をとる前に、必要に応じて、二値化した検査窓内の画像部分および二値化した参照画像部分のそれぞれについて、ノイズを除去して検査精度を上げるために、オープニング処理の後クロージング処理を行い、また、検査除外領域14を設定しているときは、当該領域を画像中から除去する処理を行う。
【0043】
また、検査窓を設定した後であって、検査窓毎に検査窓内の画像部分および対応する参照画像部分をそれぞれ二値化する前に、必要に応じて、参照画像部分と検査窓内の画像部分とのパターンマッチング(この実施例では、相関ベースマッチング(正規化相互相関モデル)を採用する)を行うことによって、検査窓内の画像部分が参照画像部分に最も一致するように検査窓内の画像部分の位置のズレを補正する。
【0044】
それによって、被検査感圧複写伝票用紙が撓んだ状態あるいは歪んだ状態でカメラ撮影され、特徴部分に基づいた被検査感圧複写伝票用紙および参照用感圧複写伝票用紙のグレースケール画像同士の位置合わせだけでは、検査窓内の減感インキ塗布領域および参照画像部分中の対応する減感インキ塗布領域間でとった差分の精度が十分でない場合でも、極めて正確に差分をとることが可能になる。
【0045】
また、差分の許容範囲は、検査窓内の減感インキ塗布領域のエッジ部分が、参照画像部分中の対応する減感インキ塗布領域のエッジ部分を基準にその内外側のどの程度の距離範囲内にあれば実用上問題ないかを、例えば、0.1mm単位の数値範囲で表したものである。
【0046】
こうして、本発明によれば、作業者の目視によらずに、カメラで撮影した被検査感圧複写伝票用紙の画像および参照用感圧複写伝票用紙の画像を画像処理し、2つの画像中の互いに対応する減感インキ塗布領域同士の差分をとることで検査を行うので、的確かつ効率的な検査が行える。
【符号の説明】
【0047】
1 発色処理によって発色した領域
2~5 減感インキ塗布領域
6 伝票問い合わせ番号(感圧複写伝票用紙の識別番号)
7 矩形状ブロック
8~10 検査窓
11~13 参照画像部分
14 検査除外領域
C 中心
M 主軸