(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】エアバッグ装置及びガス発生装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/26 20110101AFI20250626BHJP
【FI】
B60R21/26
(21)【出願番号】P 2021135929
(22)【出願日】2021-08-23
【審査請求日】2024-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 健二
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-156737(JP,A)
【文献】特開昭51-051838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0228013(US,A1)
【文献】特開2017-074850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火装置、前記点火装置によって点火され燃焼ガスを発生させるガス発生剤、並びに前記点火装置及び前記ガス発生剤を収容し、ガス排出孔が設けられたハウジングを備えるガス発生器と、
前記ハウジングの外側を覆い、前記ガス排出孔からの前記燃焼ガスの排出方向に位置する遮蔽位置と、前記ガス排出孔からの前記燃焼ガスの排出方向に位置しない非遮蔽位置とへ移動し得る遮蔽部材と、
前記ハウジングと前記遮蔽部材との間に配置され、
前記遮蔽部材を前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置へ向かう方向に付勢する部材であり、前記遮蔽部材が受ける外力の大きさに応じて前記遮蔽部材を前記遮蔽位置又は前記非遮蔽位置に位置させる
ことが可能な弾性部材と、
前記ガス発生器の前記ガス排出孔を介して前記ハウジングの内部と連通するように配置され、前記遮蔽部材及び前記弾性部材を収容するエアバッグ袋体と、
を備えるエアバッグ装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記遮蔽部材が外力を受けない状態において伸長し、前記遮蔽部材を前記非遮蔽位置に位置させる
請求項1記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、上面と、底面と、前記上面及び前記底面を接続し、複数の前記ガス排出孔が設けられる側面とを有し、
前記遮蔽部材は、前記ハウジングの前記上面を覆う上部と、当該上部の周縁から前記底面側へ向かって前記側面の周囲に延在する周壁部とを有し、
前記遮蔽部材は、前記遮蔽位置において、少なくとも一部の前記ガス排出孔からの前記燃焼ガスの排出方向を遮る
請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材の前記側面は、フィルタを含む
請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記ガス排出孔は、前記側面において前記上面の側に設けられた第1のガス排出孔と、前記側面において前記第1のガス排出孔よりも前記底面の側に設けられた第2のガス排出孔とを含み、
前記遮蔽部材は、
前記遮蔽位置において、前記第1のガス排出孔と対向し、
前記非遮蔽位置において、前記第1のガス排出孔と対向しない
請求項3又は4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ガス排出孔は、それぞれ閉塞部材によって閉塞されており、
前記第1のガス排出孔を閉塞する閉塞部材を開裂させるために要する圧力は、前記第2のガス排出孔を閉塞する閉塞部材を開裂させるために要する圧力よりも高い
請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記遮蔽部材の前記上面は、孔を有しない平板状である
請求項3から6の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材の前記上面は、前記ガス発生器の前記上面と相似な形状である、
請求項3から7の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
平面視において、前記遮蔽部材は、前記ガス発生器よりも大きい円形であり、前記遮蔽部材又は前記ガス発生器は、前記遮蔽部材と前記ガス発生器との間に間隙を形成するスペーサ部を備える
請求項8に記載のエアバッグ装置。
【請求項10】
前記ガス発生器との間に前記遮蔽部材を挟むように設けられ、前記遮蔽部材の移動方向をガイドすると共に前記遮蔽部材の移動範囲を規制するガイド部をさらに備える
請求項1から9の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項11】
前記ガイド部は、前記遮蔽部材と前記エアバッグ袋体との間に設けられ、前記燃焼ガスが通過し得る複数の孔を有する多孔部材である
請求項10に記載のエアバッグ装置。
【請求項12】
前記ガス発生器及びエアバッグ袋体と接続されるベースプレートをさらに備え、
前記エアバッグ袋体及びベースプレートの少なくとも一方に、前記エアバッグ袋体の内部圧力が所定の閾値を超えた場合に前記燃焼ガスの一部を排出させる、前記エアバッグ袋体の内圧に応じて開閉可能な可変ベントを有する、
請求項1から11の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項13】
点火装置、前記点火装置によって点火され燃焼ガスを発生させるガス発生剤、並びに前記点火装置及び前記ガス発生剤を収容し、ガス排出孔が設けられたハウジングと、
前記ハウジングの外側を覆い、前記ガス排出孔からの前記燃焼ガスの排出方向に位置する遮蔽位置と、前記ガス排出孔からの前記燃焼ガスの排出方向に位置しない非遮蔽位置とへ移動し得る遮蔽部材と、
前記ハウジングと前記遮蔽部材との間に配置され、前記遮蔽部材を前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置へ向かう方向に付勢する部材であり、前記遮蔽部材が受ける外力の大きさに応じて前記遮蔽部材を前記遮蔽位置又は前記非遮蔽位置に位置させることが可能な弾性部材と、
を備えるガス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス発生器とエアバッグが収容されたモジュールケースと制御回路を備えるエアバッグ装置が提案されていた(例えば特許文献1)。ガス発生器は開口面積の異なる複数のガス排出口等を有し、モジュールケースは周方向に移動可能なクーラントを有している。そして、制御回路の指示により、ガス排出口等とクーラントの位置が調節され、エアバッグ内に流入するガス温度が調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御回路を用いてガス排出口等とクーラントとの位置関係を調節する場合、構成が複雑になると共に小型化が難しいという問題があった。
【0005】
本開示の技術は、簡易な構成によりエアバッグの内圧を調整可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エアバッグ装置は、点火装置、点火装置によって点火され燃焼ガスを生成するガス発生剤、並びに点火装置及びガス発生剤を収容し、ガス排出孔が設けられたハウジングを備えるガス発生器と、ハウジングの外側を覆い、ガス排出孔からの燃焼ガスの排出方向に位置する遮蔽位置と、ガス排出孔からのガスの排出方向に位置しない非遮蔽位置とへ移動し得る遮蔽部材と、ハウジングと遮蔽部材との間に配置され、遮蔽部材が受ける外力の大きさに応じて遮蔽部材を遮蔽位置又は非遮蔽位置に位置させるように遮蔽部材に対して付勢する弾性部材と、ガス発生器のガス排出孔を介してハウジングの内部と連通するように配置され、遮蔽部材及び弾性部材を収容するエアバッグ袋体とを備える。
【0007】
遮蔽部材が、ガス排出孔からの燃焼ガスの排出方向に位置する遮蔽位置と、ガス排出孔からのガスの排出方向に位置しない非遮蔽位置とへ移動し得るため、遮蔽位置においては遮蔽部材が燃焼ガスの温度を低下させ得る。また、弾性部材が、遮蔽部材が受ける外力の大きさに応じて遮蔽部材を遮蔽位置又は非遮蔽位置に位置させるため、エアバッグの内圧によって遮蔽部材を遮蔽位置へ移動させ得る。よって、エアバッグの内圧が所定の基準を超える場合に遮蔽部材を遮蔽位置へ移動させ、燃焼ガスの温度を低下させることができる。また、燃焼ガスの温度を低下させることにより、エアバッグの内圧の過剰な上昇を抑えることができる。すなわち、簡易な構成によりエアバッグの内圧を調整可能となる。
【0008】
また、弾性部材は、遮蔽部材が外力を受けない状態において伸長し、遮蔽部材を非遮蔽位置に位置させるようにしてもよい。弾性部材は、例えばコイルバネや板バネであってもよい。
【0009】
また、ハウジングは、上面と、底面と、上面及び底面を接続し、複数のガス排出孔が設けられる側面とを有し、遮蔽部材は、ハウジングの上面を覆う上部と、当該上部の周縁か
ら底面側へ向かって側面の周囲に延在する周壁部とを有し、遮蔽部材は、遮蔽位置において、少なくとも一部のガス排出孔からの燃焼ガスの排出方向を遮るようにしてもよい。
【0010】
また、遮蔽部材の側面は、フィルタを含むようにしてもよい。このようにすれば、燃焼ガスの冷却効率が向上する。
【0011】
また、複数のガス排出孔は、側面において上面の側に設けられた第1のガス排出孔と、側面において第1ガス排出孔よりも底面の側に設けられた第2のガス排出孔とを含み、遮蔽部材は、遮蔽位置において、第1のガス排出孔と対向し、非遮蔽位置において、第1のガス排出孔と対向しないようにしてもよい。
【0012】
また、複数のガス排出孔は、それぞれ閉塞部材によって閉塞されており、第1のガス排出孔を閉塞する閉塞部材を開裂させるために要する圧力は、第2のガス排出孔を閉塞する閉塞部材を開裂させるために要する圧力よりも高いようにしてもよい。
【0013】
また、遮蔽部材の上面は、孔を有しない平板状であってもよい。仮にガス発生器の上面にガス排出孔を設ける場合、当該ガス排出孔から排出される燃焼ガスは、遮蔽位置又は非遮蔽位置に関わらず遮蔽部材に衝突すると共に、遮蔽部材を上方に押し上げる。側面にガス排出孔を設け、上面にはガス排出孔を設けないようにすれば、有底筒状の遮蔽部材4を上部シェル211の上部に被せる構成において、エアバッグ袋体3の内圧に応じた遮蔽部材4の位置の変更を容易に制御できるようになる。
【0014】
また、遮蔽部材の上面は、ガス発生器の上面と相似な形状であってもよい。このようにすれば、ガス発生器に遮蔽部材を重ねる構成において、エアバッグ全体をコンパクトに形成し得る。また、平面視において、遮蔽部材は、ガス発生器よりも大きな円形であり、遮蔽部材又はガス発生器は、遮蔽部材とガス発生器との間に間隙を形成するスペーサ部を備えるようにしてもよい。このようにすれば、遮蔽部材は、ガス発生器との間隙を適切に保ちつつ、遮蔽位置と非遮蔽位置との間を移動できるようになる。
【0015】
また、ガス発生器との間に遮蔽部材を挟むように設けられ、遮蔽部材の移動方向をガイドすると共に遮蔽部材の移動範囲を規制するガイド部をさらに備えるようにしてもよい。
【0016】
ガイド部は、遮蔽部材とエアバッグ袋体との間に設けられ、燃焼ガスが通過し得る複数の孔を有する多孔部材であってもよい。
【0017】
ガス発生器及びエアバッグ袋体と接続されるベースプレートをさらに備え、エアバッグ袋体及びベースプレートの少なくとも一方に、エアバッグ袋体の内部圧力が所定の閾値を超えた場合に燃焼ガスの一部を排出させる、開閉可能な可変ベントを有するものであってもよい。このようにしても、エアバッグの内圧の過剰な上昇を抑えることができる。すなわち、簡易な構成によりエアバッグの内圧を調整可能となる。
【0018】
課題を解決するための手段に記載の内容は、本開示の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、簡易な構成によりエアバッグの内圧を調整可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るエアバッグの一例を示す軸方向の概略断面図である。
【
図2】
図2は、遮蔽部材の位置を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、弾性部材の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第3の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、第4の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、ベースプレート、ガス発生器及び遮蔽部材の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第5の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、第6の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、第7の実施形態に係るエアバッグの膨張時の動作を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第8の実施形態に係るエアバッグの膨張時の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0022】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係るエアバッグの一例を示す軸方向の概略断面図である。エアバッグ1は、例えば自動車のステアリングホイールやダッシュボードに組み込まれる。
図1のエアバッグ1は、ガス発生器2と、エアバッグ袋体3と、遮蔽部材4と、弾性部材5と、ベースプレート6とを含み、ガス発生器2及びエアバッグ袋体3は、ベースプレート6に接続されている。なお、
図1に矢印で上下方向を示すように、便宜上、ガス発生器2を基準としてエアバッグ袋体3が膨張する方向を上として説明する。
【0023】
<ガス発生器>
ガス発生器2は、外部から供給される電流により点火され、その内部に備えるガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを排出する。
図1に例示するガス発生器2は、点火器22を1つ備えるシングルタイプの装置であるが、このような例に限らず、所謂デュアルタイプの装置など、既存のガス発生器を用いることができる。
【0024】
図1のガス発生器2は、ハウジング21と、点火器22と、フィルタ23と、第1ガス
発生剤24とを備える。ガス発生器2は、ハウジング21内に配置された点火器本体221を作動させることでハウジング21の内部に充填された第1ガス発生剤24を燃焼させ、燃焼ガスを排出する。
【0025】
ハウジング21は、夫々が有底筒状に形成された金属製の上部シェル211及び下部シェル212が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺筒状に形成されている。但し、上部シェル211及び下部シェル212の構成についてはこれに限定されず、公知のものを適宜使用できる。
【0026】
上部シェル211は、筒状の上筒部2112と、上筒部2112の上端を閉塞する天板部2111と、上筒部2112の下端部から径方向の外側に延在するフランジ状の接合部
2113とを有する。また、下部シェル212は、筒状の下筒部2122と、下筒部2122の下端を閉塞する底板部2121と、下筒部2122の上端部から径方向の外側に延在するフランジ状の接合部2123とを有する。上部シェル211の接合部2113と下部シェル212の接合部2123とが重ね合わされて溶接等によって接合されることで、ハウジング21が形成されている。また、上部シェル211は、ベースプレート6に設けられた保持孔61に挿入され、接合部2113又は接合部2123とベースプレート6の保持孔61の周縁部とが例えば溶接される。なお、ベースプレート6に設けられる保持孔61は、上筒部2112の外径よりも大きく、接合部2113よりも径が小さい開口である。
【0027】
また、上部シェル211の上筒部2112には、ハウジング21の内外を連通する第1ガス排出孔2114及び第2ガス排出孔2115がそれぞれ周方向に沿って複数並んで形成されている。
図1に示すように、第1ガス排出孔2114は、第2ガス排出孔2115よりも上方に設けられている。また、
図1の例では、第1ガス排出孔2114の1つあたりの開口面積は、第2ガス排出孔2115の1つ当たりの開口面積よりも小さいが、このような例には限定されない。ガス発生器2の作動前において、第1ガス排出孔2114及び第2ガス排出孔2115は、シールテープ等の閉塞部材(図示せず)により閉塞されている。シールテープは、厚さが例えば50~100μm程度の非透湿性を有する部材である。なお、上下方向に3段以上に位置が異なるガス排出孔を備えていてもよい。また、天板部2111にもガス排出孔を設けるようにしてもよい。
【0028】
また、ハウジング21の下部シェル212には、点火器22が接続されている。点火器22は、点火電流により着火する点火器本体221と、点火器本体221を支持する点火器保持部222と、点火器本体221及び点火器保持部222の間に介装される固定部223と、点火器本体221の燃焼生成物によって着火する第2ガス発生剤224と、第2ガス発生剤224等を収容するケース225とを含む。
【0029】
点火器本体221は、点火薬を収容して封止された金属製のカップ体と、外部から電流の供給を受けるための一対の導電ピンとを有する。点火器本体221は、一対の導電ピンに供給される着火電流により作動することでカップ体内の点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物をカップ体の外部に放出させる。
【0030】
点火器保持部222は、例えば点火器本体221の側方を支持する金属製カラーである。すなわち、点火器保持部222は、筒状に形成された金属製の部材である。また、点火器保持部222は、その内側に点火器本体221を保持する。なお、点火器本体221や固定部223の周方向の回転を抑制するために、固定部223と接触する点火器保持部222の内周面には凹凸が設けられていてもよく、また、導電ピンが貫通する孔の形状は、断面視において内周面が多角形や楕円形等の正円以外の形状であってもよい。また、点火器保持部222は、例えばガス発生器2のハウジング21に対して溶接等によって固定されるものであってもよい。なお、点火器保持部222は、底板部2121と一体となって形成されていてもよい。すなわち、ハウジング21の下部シェル212の一部によって金属製の点火器保持部222が形成されていてもよい。この場合、点火器保持部222は、底板部2121からハウジング21の内部である上方に突出するように設けられる。
【0031】
固定部223は、点火器本体221と点火器保持部222との間に射出成形にて介装され、点火器保持部222に対して点火器本体221を固定する樹脂製の部材である。固定部223は、カップ体の少なくとも一部が固定部223から露出した状態となるように、点火器本体221の側方の周囲を覆う。また、固定部223は、点火器保持部222の内側と係合することで、点火器保持部222に対して点火器本体221を固定する。ただし、固定部223によってカップ体の全体がオーバーモールドされていてもよい。すなわち
、カップ体の全体が樹脂に覆われた状態であってもよい。また、固定部223は、点火器保持部222の内側に、一対の導電ピンに外部電源からの電力を供給するコネクタ(図示せず)を挿入可能なコネクタ挿入空間226を形成していてもよい。固定部223は、一対の導電ピンの下端がコネクタ挿入空間226に露出するように、一対の導電ピンの一部を覆い、保持している。そして、固定部223によって、一対の導電ピン同士の絶縁性が保たれる。なお、点火器本体221と点火器保持部222との固定や、点火器保持部222とハウジングとの接続関係は、公知の様々な技術を使用できる。また、固定部223の材料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を好適に利用することができる。
【0032】
ケース225は、点火器22の上部を取り囲むようにして点火器保持部222から上方に向かって延びる有底筒状の部材である。すなわち、ケース225は、一端(上端)が閉塞され他端(下端)が開口した筒状に形成されている。また、ケース225は、他端がフランジ状に形成され、例えば全周溶接により点火器保持部222と接続されていてもよい。ケース225と点火器保持部222との間には、第2ガス発生剤224が収容される内部空間である燃焼室227が形成される。第2ガス発生剤224は、点火器本体221の作動により燃焼し、燃焼ガス等を発生させる。また、ケース225の側面には、燃焼室227と外部空間とを連通する連通孔228が複数設けられている。連通孔228は、点火器22が作動する前の状態においては、シールテープ等の閉塞部材(図示せず)により閉塞される。また、点火器22が作動すると燃焼ガスの圧力によりシールテープが開裂し、連通孔228から燃焼室227の外部へ燃焼ガスが排出される。また、連通孔228はケース225の側面ではなく、天面に形成されていてもよい。
【0033】
第1ガス発生剤24及び第2ガス発生剤224は、種類、形状、寸法等が同一のガス発生剤であってもよいし、これらの少なくとも一部が異なるガス発生剤であってもよい。第1ガス発生剤24及び第2ガス発生剤224は、燃焼することにより燃焼ガスなどの燃焼生成物を生成する。第1ガス発生剤24及び第2ガス発生剤224の個々の形状は、例えば単孔円柱状のものを用いることができるが、これには限定されない。
【0034】
フィルタ23は、エキスパンドメタル、パンチングメタル、メタルラス、平織金網、畳織金網等のようなシート状の多孔板を円筒状に巻き上げたものであってもよい。フィルタ23は、上端部が上部シェル211の天板部2111に支持され、下端部が下部シェル212の底板部2121に支持された状態で、点火器22と第1ガス排出孔2114及び第2ガス排出孔2115との間に配置される。これにより、点火器22とフィルタ23との間には、燃焼室25が形成される。燃焼室25には、点火器22の作動により燃焼する第1ガス発生剤24が充填される。第1ガス発生剤24は、点火器22の作動により燃焼した第2ガス発生剤224の燃焼ガスによって着火され、燃焼ガス等を生成する。フィルタ23は、燃焼ガスが通過可能に構成されており、燃焼室25の燃焼ガスは、フィルタ23を通過することで冷却されると共に、フィルタ23は、燃焼ガスの燃焼残渣を捕集することで燃焼ガスを濾過する。
【0035】
<エアバッグ袋体>
エアバッグ袋体3は、その内部にガス発生器2が排出する燃焼ガスを含むことで、例えば略球状に膨張する袋状の部材である。
図1においては、エアバッグ袋体3は膨張前の畳まれた状態を模式的に表している。エアバッグ袋体3は、下部に、例えば円形に開口したガス流入口31を備え、ガス流入口31の周縁には、複数の取付孔32が形成されている。取付孔32には例えばボルト62が挿入され、ボルト62によってエアバッグ袋体3はベースプレート6に接続される。なお、ベースプレート6の保持孔61の周縁部には、ボルト穴63が形成されている。すなわち、エアバッグ袋体3は、ベースプレート6を介してガス発生器2に接続されている。そして、ガス発生器2のガス排出孔(第1ガス排出孔
2114及び第2ガス排出孔2115)は、エアバッグ袋体3の内部に向かって開口している。換言すれば、エアバッグ袋体3は、ガス発生器2の第1ガス排出孔2114及び第2ガス排出孔2115を介してガス発生器2の内部と連通するように配置されている。また、エアバッグ袋体3とガス発生器2との間には、遮蔽部材4及び弾性部材5が収容されている。
【0036】
<遮蔽部材>
遮蔽部材4は、有底筒状の部材である。すなわち、遮蔽部材4は筒底部41と、側周部42とを有する。また、遮蔽部材4は、エアバッグ袋体3の内部に収容され、ガス発生器2のハウジング21の上部を覆う。具体的には、遮蔽部材4は、上部シェル211の天板部2111と、上筒部2112の一部を覆っている。なお、ガス発生器2の上部シェル211と遮蔽部材4との間には間隙が形成されるように、上部シェル211の外径よりも遮蔽部材4の内径の方が大きい。遮蔽部材4は、弾性部材5を介してハウジング21と接続されている。弾性部材5は、例えば金属製のコイルばね等の弾性を有する部材である。弾性部材5は、ガス発生器2に対して遮蔽部材4の位置を変更可能に保持する。例えば、弾性部材5は、外力を受けない状態において、エアバッグ袋体3が膨張する方向である上方に向かって伸長することにより遮蔽部材4に対して付勢する。また、遮蔽部材4が受ける外力の大きさに応じて遮蔽部材4の位置は上下方向に移動する。
【0037】
遮蔽部材4は、エアバッグ1の動作時においては、エアバッグ袋体3の内圧に応じて、第1ガス排出孔2114からの燃焼ガスの排出方向に位置する遮蔽位置と、第1ガス排出孔2114からの燃焼ガスの排出方向に位置しない非遮蔽位置とへ移動し得る。
図2は、遮蔽部材4の位置を説明するための図である。
図2においては、ハウジング21及び遮蔽部材4のみを示している。
図2の(A)は、非遮蔽位置に位置する遮蔽部材4の一例を示す側面図である。
図2の(B)は、遮蔽位置に位置する遮蔽部材4の一例を示す側面図である。非遮蔽位置は、弾性部材5により遮蔽部材4が上方に押し上げられ、第1ガス排出孔2114からの燃焼ガスの排出方向を遮蔽部材4が遮らない位置である。換言すれば、非遮蔽位置においては、遮蔽部材4の内側は、第1のガス排出孔と対向しない。
図2の(A)に示すように、非遮蔽位置においては第1ガス排出孔2114が遮蔽部材4によって覆われていない。遮蔽位置は、エアバッグ袋体3の内圧により遮蔽部材4が押し下げられ、第1ガス排出孔2114からの燃焼ガスの排出方向を遮蔽部材4が遮る位置である。換言すれば、遮蔽位置においては、遮蔽部材4の内側は、第1のガス排出孔と対向している。
図2の(B)に示すように、遮蔽位置においては第1ガス排出孔2114が遮蔽部材4によって覆われている。なお、遮蔽部材4(側周部42)の上下方向の大きさは、遮蔽部材4が最も下方に押し下げられた状態においても第2ガス排出孔2115からのガス排出方向に位置しない程度の大きさになっている。また、遮蔽位置においても、ガス発生器2と遮蔽部材4との間には間隙を有するため、第1ガス排出孔2114から排出される燃焼ガスは、遮蔽部材4に衝突した後に遮蔽部材4の内側を通ってエアバッグ袋体3の内部へ移動する。このとき、燃焼ガスの温度は、遮蔽部材4と接することで低下する。なお、遮蔽部材4は、熱伝導率が高いことが好ましい。遮蔽部材4の材質は、アルミニウムや銅などの金属や、セラミック、グラファイト等であってもよい。なお、遮蔽部材4の内側には、突起等の凹凸を有していてもよい。遮蔽部材4の表面積を大きくすることにより、燃焼ガスと接触し得る面積が増え、冷却効果を高めることができる。また、遮蔽部材4は、フィルタを含むものであってもよい。例えば、遮蔽部材4は、側周部42の内側に上述したフィルタ23をさらに備えていてもよいし、側周部42がフィルタ23と同じ材質で形成されていてもよい。このようにすれば、燃焼ガスの冷却効率が向上する。
【0038】
<効果>
一般的に、車両の衝突時にエアバッグが過剰に膨張した場合、乗員を適切に拘束することができず、乗員に衝撃を与えてしまうことがある。逆にエアバッグの膨張が十分でない
場合も、乗員を適切に拘束することができない。
【0039】
エアバッグの内圧は、単位時間に排出される燃焼ガスの物質量(モル数)に応じて変化する。例えば、ガス発生剤の燃焼における反応速度は、ガス発生器2が設置された環境温度に応じて変化する。すなわち、周囲の温度が高くなれば、ガス発生剤の燃焼速度も上昇する。また、図示していないデュアルタイプのガス発生器においては、点火器とガス発生剤とを収容する燃焼室が2つ設けられ、一方のみを作動させるモード、2つを同時に作動させるモード、又は2つを時間差で作動させるモードで動作し得る。このような動作モードの違いによっても、単位時間あたりに排出される燃焼ガスの物理量は変化する。
【0040】
遮蔽部材4及び弾性部材5は、エアバッグ袋体3の内圧が設計された閾値を超える場合には、圧力によって遮蔽部材4が遮蔽位置に移動するように設計されている。また、遮蔽部材4が遮蔽位置に位置するとき、第1ガス排出孔2114から排出される燃焼ガスは、遮蔽部材4に衝突してその温度が低下する。これにより、作動時の環境温度の違いによるガス発生器2の出力の差を小さく抑えることができる。すなわち、エアバッグ袋体3の内圧が所定の閾値を超える場合には、遮蔽部材4が遮蔽位置へ移動して燃焼ガスを冷却することにより、エアバッグ袋体3内部の圧力上昇が抑制される。よって、エアバッグ袋体3が過剰に膨張することが抑制される。一方、エアバッグ袋体3の内圧が設計された閾値以下である場合には、遮蔽部材4は非遮蔽位置に位置する。このとき、エアバッグ袋体3の内部に排出される燃焼ガスの温度は低下しない。したがって、エアバッグ1の遮蔽部材4によれば、エアバッグ袋体3の過剰な膨張や膨張の不足の発生を抑制することができる。また、遮蔽部材4は、エアバッグ袋体3の内圧によって移動させられるため、エアバッグ1は、遮蔽部材4を駆動させるための複雑な構成を必要としない。すなわち、簡易な構成によりエアバッグの内圧を調整可能とすることができる。
【0041】
なお、
図1及び
図2に示したように、個々の開口面積は、第1ガス排出孔2114よりも第2ガス排出孔2115の方を大きくしてもよい。例えば同一の厚さのシールテープによりガス排出孔を閉塞させる場合、開口面積が大きい第2ガス排出孔2115のシールテープが先に開裂する。すなわち、第1ガス排出孔2114を閉塞するシールテープを開裂させるために要する圧力は、第2ガス排出孔2115を閉塞するシールテープを開裂させるために要する圧力よりも高い。このようにすれば、先に第2ガス排出孔2115が開口し、速やかにエアバッグ袋体3の膨張を開始させることができる。また、例えば環境温度が高く単位時間当たりに生成される燃焼ガスの量が比較的多い場合には、第1ガス排出孔2114も続けて開口する。さらにエアバッグ袋体3の内圧が所定の基準を超えて上昇したときは、エアバッグ袋体3の内部の圧力上昇で遮蔽位置へ移動する遮蔽部材4によって燃焼ガスが冷却され、エアバッグ袋体3の内圧がさらに高まることを抑制できる。一方、単位時間当たりに生成される燃焼ガスの量が比較的少ない場合には、燃焼が十分に進行してガス発生器2の内圧が十分に高くなるまで、第1ガス排出孔2114は開口しない。また第1ガス排出孔2114は開口したとしても、エアバッグ袋体3の圧力が所定値以下では遮蔽部材4が遮蔽位置に移動しない。よって、燃焼ガスを過剰に冷却することはない。
【0042】
また、仮に天板部2111にガス排出孔を設ける場合、遮蔽部材4の筒底部41は、中央部分に穴を1つ設けたドーナツ状とし、天板部2111のガス排出孔からの燃焼ガスが中心部に向かって排出されるようにする。この場合遮蔽部材4が非遮蔽位置(筒底部41が天板部2111から離れているとき)では燃焼ガスは遮蔽部材にほぼ衝突せず、遮蔽部材4が遮蔽位置(筒底部41が天板部2111に近接する位置)では燃焼ガスは遮蔽部材に衝突する。一方、
図1に示すように、上筒部2112のみにガス排出孔を設け、天板部2111にはガス排出孔を設けないようにすれば、有底筒状の遮蔽部材4を上部シェル211の上部に被せる構成において、エアバッグ袋体3の内圧に応じた遮蔽部材4の位置の変更を容易に制御できるようになる。
【0043】
遮蔽部材4とガス発生器2とは、平面視において相似な形状であってもよい。このようにすれば、ガス発生器2の上部に遮蔽部材4を重ねる構成において無駄な空間を生じさせることがなく、エアバッグ1全体を小型化し得る。
【0044】
<実施形態2>
図3は、第2の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
図4は、弾性部材の一例を示す斜視図である。なお、本実施形態においては、上述した実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係る弾性部材5Aは、平板状のベース部51と、複数の板ばね52とを含む。板ばねの数は特に限定されないが、例えば3つである。板ばね52は、例えば金属のベース部51にコ字状のスリットを形成し、スリットにより外縁が画定される舌片部を上方に向けて立ち上げて形成される。立ち上げられた舌片部は、例えば縦断面が円弧状などの曲面を構成するものであってもよい。また、ベース部51は、例えば平面視において円形であってもよい。ベース部51は、ガス発生器2の上側に溶接などにより接続され得る。
【0046】
このような弾性部材5Aによっても、遮蔽部材4が受ける外力の大きさに応じて遮蔽部材4を遮蔽位置又は非遮蔽位置に位置させるように遮蔽部材4に対して付勢することができる。
【0047】
<実施形態3>
図5は、第3の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。なお、本実施形態においても、上述した実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図5の例では、エアバッグ袋体3の内部であって、遮蔽部材4の外側に、燃焼ガスが通過し得る複数の孔を有する多孔部材7をさらに備える。多孔部材7は、有底筒状の部材であり、筒底部71と、側周部72と、側周部72の下端に設けられ径方向の外側に延在するフランジ部73とを備える。側周部72は例えば平面視(図示せず)においては円形であり、側周部72の直径は、遮蔽部材4の側周部42の直径よりも大きい。フランジ部73には、ベースプレート6のボルト穴63と対応する位置に貫通孔である取付孔74が設けられている。取付孔74には例えばボルト62が挿入され、多孔部材7はエアバッグ袋体3と共にボルト62によってベースプレート6に固定される。複数の孔は、少なくとも筒底部71及び側周部72に設けられ、ガス発生器2が生成する燃焼ガスは側周部72に設けられた孔を通過してエアバッグ袋体3の内部へ排出される。また、多孔部材7の内外における気体の圧力は略同一であり、エアバッグ袋体3の内圧が上昇すると、遮蔽部材4は下方に押し下げられる。
【0049】
また、多孔部材7の側周部72の高さは、非遮蔽位置への遮蔽部材4の移動を妨げないようになっている。例えば遮蔽部材4が非遮蔽位置にあるとき、遮蔽部材4の側周部42の高さよりも、第1ガス排出孔2114から多孔部材7の筒底部71までの距離の方が大きくなっている。よって、遮蔽部材4が多孔部材7の筒底部71の内側に接する状態において、遮蔽部材4の側周部42は、第1ガス排出孔2114と対向しない。また、遮蔽部材4の側周部42の高さは、上部シェル211の天板部2111から多孔部材7の筒底部71までの距離よりも大きい。よって、遮蔽部材4の側周部42は、ガス発生器2の上部シェル211の上筒部2112と、多孔部材7の側周部72との間から外れることがない。また、遮蔽部材4の側周部42は、ガス発生器2の上部シェル211の上筒部2112と、多孔部材7の側周部72との間に沿ってガイドされ、遮蔽位置と非遮蔽位置とに移動
する。このように、多孔部材7は、ガス発生器2との間に遮蔽部材4の側周部42を挟んで配置され、遮蔽部材4の移動方向をガイドすると共に遮蔽部材4の移動範囲を規制するガイド部として機能する。また、エアバッグ1の作動前においてエアバッグ袋体3を折りたたんだ状態であっても、遮蔽部材4がエアバッグ袋体3と干渉することがない。よって、エアバッグ1の作動前において、遮蔽部材4は、非遮蔽位置を維持することができる。また、エアバッグ1の作動時においては、エアバッグ袋体3の内部に燃焼ガスをスムーズに供給することができ、エアバッグ袋体3の展開を迅速に行うことができる。
【0050】
<実施形態4>
図6は、第4の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
図7は、ベースプレート、ガス発生器及び遮蔽部材の一例を示す斜視図である。なお、本実施形態においても、上述した実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、遮蔽部材4は側周部42の下方の端部に設けられ、径方向の外側へ突出するフランジ部43を有する。また、ベースプレート6は、保持孔61の周縁部に、上方に延在する支持部64と、支持部64の先端に設けられ保持孔61の径方向の内側へ突出するフック65とを有する。支持部64は、ベースプレート6に対し溶接等により接続されるものであってもよい。本実施形態においては、遮蔽部材4が下方へ向かう所定の大きさ以上の外力を受けない状態において、フランジ部43とフック65とが係合し、遮蔽部材4はガス発生器2及びベースプレート6から外れないようになっている。
【0052】
本実施形態に係る支持部64及びフック65も、ガス発生器2との間に遮蔽部材4の側周部42を挟んで配置され、遮蔽部材4の移動方向をガイドすると共に遮蔽部材4の移動範囲を規制するガイド部として機能する。
【0053】
<実施形態5>
図8は、第5の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
図9は、台座の一例を示す斜視図である。なお、本実施形態においても、上述した実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、コイルばねである弾性部材5は、台座53を介してガス発生器2と接続されている。
図9に示すように、台座53は、ガス発生器2と例えば溶接により接続される接続部531と、斜め上方に立ち上がる脚部532と、弾性部材5と接続される平面部533とを有する。接続部531及び脚部532は、長方形の平面部533の四隅にそれぞれ形成されている。例えば、弾性部材5は、樹脂製のコイルばねであり、その一方が平面部533にねじ等を利用して固定されるようにしてもよい。また、弾性部材5の他方は、遮蔽部材4にねじ等を利用して固定されるようにしてもよい。
【0055】
一般的に、ガス発生器2の作動時には内部のフィルタ23に蓄積される熱がハウジング21に伝達される。本実施形態では、台座53によって弾性部材5とガス発生器2との間に間隙を設け、弾性部材5に熱が伝わりにくくしている。また、弾性部材5の材質は、所定の耐熱性を有するシリコン樹脂やポリイミド樹脂であってもよい。
【0056】
<実施形態6>
図10は、第6の実施形態に係るエアバッグの一例を示す概略断面図である。
図11は、ガス発生器及び遮蔽部材の、
図10におけるA-A断面図である。なお、本実施形態においても、上述した実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0057】
本実施形態においては、遮蔽部材4の側周部42は、その内側に向かって突出するスペーサ部44を備える。スペーサ部44は、周方向の一部に設けられる。
図11の例では3つのスペーサ部44が周方向に等間隔に設けられているが、スペーサ部44の数や位置は、図示した例には限定されない。また、側周部42の内周に沿って、スペーサ部44の間には間隙を有し、遮蔽部材4とガス発生器2との間には燃焼ガスの流路が形成される。スペーサ部44は、ガス発生器2の側面に向かって突出しているが、ガス発生器2の側面と接していなくてもよい。また、スペーサ部44は、遮蔽部材4の側周部42を外側から内側に向かって変形させることにより形成するようにしてもよい。スペーサ部44を3つ以上、例えば略等間隔に設けることにより、燃焼ガスの流路の断面形状に偏りがなくなると共に、エアバッグ1の作動した場合であって遮蔽部材4が遮蔽位置へ移動したときにガス発生器2と遮蔽部材4との間から周囲へ排出される燃焼ガスの量に偏りがなくなり、エアバッグ袋体3がその周囲に均等に膨張する。なお、遮蔽部材4でなく、ガス発生器2がその外側に突出するようにスペーサ部を備えるようにしてもよい。
【0058】
<実施形態7>
図12は、第7の実施形態に係るエアバッグの膨張時の動作を説明するための図である。なお、本実施形態においても、上述した実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0059】
本実施形態に係るエアバッグ袋体3は、ガス流入口31と反対側に、エアバッグ袋体3の内圧によって開閉可能な可変ベントを備える。可変ベントは、エアバッグ袋体3に開口された排気口を閉塞部材33によって覆う。閉塞部材33は、伸縮性を有する糸などの縫合部材によってエアバッグ袋体3に接続されている。
図12の(A)は、エアバッグ袋体3の内圧が所定の閾値以下の状態を示す。
図12の(A)においては、可変ベントの閉塞部材33は排気口を閉塞している。
図12の(B)は、エアバッグ袋体3の内圧が所定の閾値を超える状態を示す。
図12の(B)においては、エアバッグ袋体3の内圧により縫合部材34が伸長し、排気口が開いている。このような可変ベントによっても、エアバッグ1の内圧をさらに調整可能となる。なお、一般的に、エアバッグ袋体3には、内部の燃焼ガスを徐々に排出するためのベント孔(図示せず)が設けられる。本実施形態においては、このようなベント孔に加え、可変ベントがエアバッグ袋体3に設けられる。
【0060】
<実施形態8>
図13は、第8の実施形態に係るエアバッグの膨張時の動作を説明するための図である。なお、本実施形態においても、上述した実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0061】
本実施形態に係るベースプレート6は、エアバッグ袋体3の内圧によって開閉可能な可変ベントを備える。本実施形態に係る可変ベントは、ベースプレート6に設けられた排気口68と、ベースプレート6の下方からコイルばね67等により付勢されたゴムパッキン66と、ゴムパッキン66の上方に接続される可動部材69とを備える。可動部材69は、排気口68を上下方向に貫通可能に配置され、ゴムパッキン66の可動範囲は上下方向に制限されている。
図13の(A)は、エアバッグ袋体3の内圧が所定の閾値以下の状態を示す。
図13の(A)においては、可変ベントのコイルばね67によって付勢されたゴムパッキン66は、排気口68を閉塞している。
図13の(B)は、エアバッグ袋体3の内圧が所定の閾値を超える状態を示す。
図13の(B)においては、エアバッグ袋体3の内圧によりコイルばね67に抗してゴムパッキン66は押し下げられ、排気口68が開いている。このような可変ベントによっても、エアバッグ1の内圧を調整可能となる。
【0062】
<その他>
以上、本開示に係る点火器組立体及びガス発生器の実施形態について説明したが、本明
細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他の特徴と組み合わせることができる。例えば、実施形態1、2又は5に記載した遮蔽部材及び弾性部材に対して、実施形態3及び4に示したガイド部、実施形態6に示したスペーサ部、並びに実施形態10及び11に示した可変ベントのうち、少なくとも1以上を組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0063】
1:エアバッグ
2:ガス発生器
21:ハウジング
211:上部シェル
2114:第1ガス排出孔
2115:第2ガス排出孔
212:下部シェル
22:点火器
23:フィルタ
24:第1ガス発生剤
25:燃焼室
3:エアバッグ袋体
31:ガス流入口
32:取付孔
33、34:可変ベント
4:遮蔽部材
41:筒底部
42:側周部
43:フランジ部
44:スペーサ部
5、5A:弾性部材
51:ベース部
53:台座
531:接続部
532:脚部
533:平面部
6:ベースプレート
61:保持孔
62:ボルト
63:ボルト穴
64:支持部
65:フック
66~69:可変ベント
7:多孔部材
71:筒底部
72:側周部
73:フランジ部
74:取付孔