(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】押輪、管継手および管の接合方法
(51)【国際特許分類】
F16L 21/04 20060101AFI20250626BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
F16L21/04
F16L21/08 B
(21)【出願番号】P 2021143578
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】小丸 維斗
(72)【発明者】
【氏名】小田 圭太
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-002091(JP,A)
【文献】特開2021-067282(JP,A)
【文献】特開昭48-021815(JP,A)
【文献】特開昭55-107178(JP,A)
【文献】特開昭59-217090(JP,A)
【文献】特開2017-180472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/04
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿し口が受口に挿入され
るとともに、シール部材が挿し口の外周と受口の内周との間に挿入される管継手に用いられ、
挿し口に外嵌されて受口の開口端面に外側から対向し且つ複数本の締結具により受口に連結されてシール部材を受口の奥側へ押し込む押輪であって、
環状の押輪本体に、シール部材を押圧する押圧面と、締結具が挿通される複数の締結具挿通孔と、受口の開口端面に接触する第1接触部とが形成され、
押輪本体の内周にテーパー面
と、テーパー面よりも押圧面に近い側においてテーパー面と接続されるストレート面とが全周にわたり形成され、
テーパー面は
、押圧面に近い側から反対の遠い側ほど拡径
する円錐状の円周面であり、
ストレート面は、一定の内径を有して押輪の軸心方向に延びる円筒状の円周面であり、
挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心を他方の管軸心に対して傾斜させた状態で、挿し口が受口に挿入されて挿し口の外周が押輪の内周に当接する場合、挿し口の外周はテーパー面とストレート面とが接続される境界部分に当接することを特徴とする押輪。
【請求項2】
第1接触部とは別で且つ受口の開口端面に接触する第2接触部が押輪本体に形成され、
第1接触部は径方向において締結具挿通孔よりも外側に位置する凸部であり、
第2接触部は、径方向において締結具挿通孔よりも内側に位置しているとともに、押圧面の周囲を取り囲むように形成された凸部であり、
第2接触部の径方向内側に、シール部材の端部が嵌入可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の押輪。
【請求項3】
挿し口の管軸心と受口の管軸心との傾斜角度が、所定の角度であり、
押輪のテーパー面は、押輪の軸心に対して前記所定の角度以上の角度で傾斜するとともに、テーパー面における、受口の開口端面から遠い側の端部の直径が、押圧面における、押輪の径方向外側の端部の直径よりも小であることを特徴とする請求項
1に記載の押輪。
【請求項4】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の押輪を備えた管継手であって、
挿し口が受口に挿入された状態で、挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心が他方の管軸心に対して傾斜しており、
シール部材が挿し口の外周と受口の内周との間に挿入され、
押輪が、挿し口に外嵌されて受口の開口端面に外側から対向し、且つ、複数本の締結具によって受口に連結され、
押輪の押圧面がシール部材に当接し、
締結具が押輪の締結具挿通孔に挿通されていることを特徴とする管継手。
【請求項5】
上記請求項1から請求項
2のいずれか1項に記載の押輪を用いた管の接合方法であって、
挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心を他方の管軸心に対して傾斜させた状態で、挿し口を受口に挿入し、
締結具を押輪の締結具挿通孔に挿通して締め込むことにより、押輪を受口に連結するとともにシール部材を挿し口の外周と受口の内周との間に挿入することを特徴とする管の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受口と挿し口を有する管継手に用いられる押輪、および押輪を備えた管継手、ならびに押輪を用いた管の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手としては、例えば
図16に示すように、一方の管111の挿し口112が他方の管113の受口114に挿入され、ゴム製のシール部材115が挿し口112の外周と受口114の内周との間に挿入され、押輪116が、挿し口112に外嵌されて受口114の開口端面117に外側から対向し、且つ、複数本のボルト118およびナット119によって受口114に連結されているものがある。
【0003】
押輪116は、円環状の押輪本体116aと、シール部材115に当接してシール部材115を押圧する押圧面120と、受口114の開口端面117に当接する当接部121,122と、ボルト118が挿通される複数のボルト挿通孔123とを有している。押圧面120と当接部121,122とは、押輪本体116aの同じ側(受口114に対向する側)に設けられている。また、当接部121,122が受口114の開口端面117に当接することにより、押圧面120から受口114の開口端面117までの間隔が所定間隔に保たれる。
【0004】
ボルト118は押輪116のボルト挿通孔123に挿通され、ナット119を締め付けることにより、押輪116の押圧面120がシール部材115に当接してシール部材115を挿し口112の外周と受口114の内周との間に押し込む。
【0005】
尚、上記のような押輪116および管継手110は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の従来形式では、
図17に示すように複数本の管111,113同士を接合して湾曲した管路124を形成する場合、
図18に示すように一方の管111の管軸心111aを他方の管113の管軸心113aに対して傾斜させた状態で、これら管111,113同士を接合する。
【0008】
この際、
図18に示すように、一方の管111の外周が押輪116の内周116bと押圧面120の反対側の面126とのコーナー部128に当接すると、他方の管113の管軸心113aに対する一方の管111の管軸心111aの傾斜角度αをこれ以上大きくすることは難しかった。尚、押輪116の内周116bの径(内径)を大きくすると上記傾斜角度αを大きくすることが可能であるが、この場合、押輪116の内周116bと一方の管111の外周との隙間125(
図16参照)も拡大するため、シール部材115が押輪116の押圧面120から隙間125に入り込み、シール部材115を十分に挿し口112の外周と受口114の内周との間に挿入できない虞がある。
【0009】
本発明は、管同士を傾斜させて接合する際の傾斜角度を大きくすることができるとともに、シール部材を十分に挿し口の外周と受口の内周との間に挿入することが可能な押輪、管継手および管の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本第1発明は、挿し口が受口に挿入されるとともに、シール部材が挿し口の外周と受口の内周との間に挿入される管継手に用いられ、
挿し口に外嵌されて受口の開口端面に外側から対向し且つ複数本の締結具により受口に連結されてシール部材を受口の奥側へ押し込む押輪であって、
環状の押輪本体に、シール部材を押圧する押圧面と、締結具が挿通される複数の締結具挿通孔と、受口の開口端面に接触する第1接触部とが形成され、
押輪本体の内周にテーパー面と、テーパー面よりも押圧面に近い側においてテーパー面と接続されるストレート面とが全周にわたり形成され、
テーパー面は、押圧面に近い側から反対の遠い側ほど拡径する円錐状の円周面であり、
ストレート面は、一定の内径を有して押輪の軸心方向に延びる円筒状の円周面であり、
挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心を他方の管軸心に対して傾斜させた状態で、挿し口が受口に挿入されて挿し口の外周が押輪の内周に当接する場合、挿し口の外周はテーパー面とストレート面とが接続される境界部分に当接するものである。
【0011】
これによると、一方の管の挿し口の管軸心を他方の管の受口の管軸心に対して傾斜させた状態で挿し口を受口に挿入し、締結具を押輪の締結具挿通孔に挿通して締め込むことにより、押輪を受口に連結するとともにシール部材を挿し口の外周と受口の内周との間に挿入して、一方の管と他方の管とを接合することができる。
【0012】
この際、押輪本体の内周にテーパー面が形成されているため、一方の管の外周が押輪の内周に当接する場合の当接箇所は、押輪の内周と押圧面の反対側の面とのコーナー部よりも、押圧面に近い箇所になる。これにより、一方の管の外周が押輪の内周に当接したときの他方の管の管軸心に対する一方の管の管軸心の傾斜角度を大きくすることが可能であり、複数本の管同士を傾斜させて接合し、湾曲した管路を形成する場合、管の本数を減らすことができる。また、一方の管の挿し口の管軸心を他方の管の受口の管軸心に対して傾斜させた状態で挿し口を受口に挿入し、一方の管と他方の管とを接合した際、一方の管の外周は、押輪の押圧面の内周縁に当接せず、押輪の内周におけるストレート面とテーパー面との境界部分に当接する。これにより、押輪の押圧面の内周縁が損傷するのを防止でき、シール部材を、押輪の押圧面で、十分に挿し口の外周と受口の内周との間に挿入することができる。
【0013】
また、傾斜角度を大きくするために押輪の内径を大きくする必要は無いので、押輪の内周と一方の管の外周との隙間は拡大せず、シール部材が押輪の押圧面から隙間に入り込むのを抑制することができる。これにより、シール部材を十分に挿し口の外周と受口の内周との間に挿入することができる。
【0014】
本第2発明における押輪は、第1接触部とは別で且つ受口の開口端面に接触する第2接触部が押輪本体に形成され、
第1接触部は径方向において締結具挿通孔よりも外側に位置する凸部であり、
第2接触部は、径方向において締結具挿通孔よりも内側に位置しているとともに、押圧面の周囲を取り囲むように形成された凸部であり、
第2接触部の径方向内側に、シール部材の端部が嵌入可能な凹部が形成されているものである。
【0015】
これによると、押輪の第1および第2接触部が受口の開口端面に接触することにより、押圧面から受口の開口端面までの間隔が所定間隔に保たれる。また、押輪がシール部材を挿し口の外周と受口の内周との間に押し込む際、シール部材の端部が押輪の凹部に嵌入されているため、シール部材の端部は径方向において位置ずれせずに押輪に固定される。これにより、シール部材を確実に挿し口の外周と受口の内周との間に挿入することができる。
【0018】
本第4発明は、上記第1発明から第3発明のいずれか1項に記載の押輪を備えた管継手であって、
挿し口が受口に挿入された状態で、挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心が他方の管軸心に対して傾斜しており、
シール部材が挿し口の外周と受口の内周との間に挿入され、
押輪が、挿し口に外嵌されて受口の開口端面に外側から対向し、且つ、複数本の締結具によって受口に連結され、
押輪の押圧面がシール部材に当接し、
締結具が押輪の締結具挿通孔に挿通されているものである。
【0019】
本第5発明は、上記第1発明から第3発明のいずれか1項に記載の押輪を用いた管の接合方法であって、
挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心を他方の管軸心に対して傾斜させた状態で、挿し口を受口に挿入し、
締結具を押輪の締結具挿通孔に挿通して締め込むことにより、押輪を受口に連結するとともにシール部材を挿し口の外周と受口の内周との間に挿入するものである。
【0020】
これによると、シール部材を挿し口の外周と受口の内周との間に挿入する前に、挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心を他方の管軸心に対して傾斜させた状態で挿し口を受口に挿入するため、挿し口を受口に対して傾斜させる際に要する力が低減される。
【0021】
上記のような管の接合方法ではなく、例えば、先ず、挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心を他方の管軸心に対して傾斜させずに一直線にした状態で挿し口を受口に挿入し、次に、シール部材を挿し口の外周と受口の内周との間に挿入し、その後、挿し口と受口とのいずれか一方の管軸心を他方の管軸心に対して傾斜させた場合、シール部材に抵抗して挿し口と受口とのいずれか一方を他方に対し傾斜させるため、挿し口と受口とのいずれか一方を他方に対し傾斜させる際に要する力が増大するといった問題がある。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によると、管同士を傾斜させて接合する際の傾斜角度を大きくすることができるとともに、シール部材を十分に挿し口の外周と受口の内周との間に挿入することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における管継手の断面図である。
【
図8】同、管継手の管同士を接合する接合方法を示す断面図であり、押輪でゴム輪を挿し口と受口との間に押し込んでいる様子を示す。
【
図9】本発明の第2の実施の形態における管継手の断面図である。
【
図13】同、管継手の押輪の正面側の斜視図である。
【
図14】同、管継手の押輪の背面側の斜視図である。
【
図15】地面に形成された溝の内部で管継手の管同士を接合する接合作業の様子を示す概略図である。
【
図16】従来の管継手の断面図であり、管同士が一直線状に接合されている様子を示す。
【
図17】同、複数の管を接合して形成された湾曲した管路の図である。
【
図18】同、管継手の断面図であり、管同士が傾斜した状態で接合されている様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、
図1,
図2に示すように、1は鋳鉄製の管2,4同士を接合する管継手であり、一方の管2の端部に設けられた挿し口3が他方の管4の端部に設けられた受口5に挿入されている。挿し口3の外周と受口5の内周との間には、円環状のゴム輪7(シール部材の一例)が挿入され配置されている。
【0026】
受口5の内周で且つゴム輪7よりも受口5の奥方にはロックリング溝9が全周にわたり形成されている。ロックリング溝9には、周方向一つ割りのロックリング10が装備されている。
【0027】
挿し口3は、その先端部外周に、受口5の奥側からロックリング10に係合可能な突部11を全周にわたり有している。
【0028】
また、挿し口3には、周方向一つ割りのバックアップリング13が外嵌されてロックリング10に隣接している。
【0029】
受口5は先端にフランジ部5aを有している。フランジ部5aには複数のボルト孔12が形成されている。例えば、
図3では、8個のボルト孔12が均等な角度に振り分けられてフランジ部5aに形成されている。
【0030】
挿し口3には、ゴム輪7を受口5の奥側へ押し込む押輪14が外嵌されて受口5の開口端面15に外側から対向している。押輪14は、円環状の押輪本体14aを有しており、複数(例えば8本)のT頭ボルト16(締結具の一例)およびナット17(締結具の一例)により受口5に連結されている。
図4~
図6に示すように、押輪本体14aは、その外周部に、径方向外側へ突出する複数の突出部14bを備えている。
【0031】
押輪本体14aには、ゴム輪7を押圧する押圧面19と、T頭ボルト16が挿通される複数個(例えば8個)のボルト挿通孔21(締結具挿通孔の一例)と、受口5の開口端面15に接触する第1および第2接触部24,25とが設けられている。尚、押輪本体14aの突出部14bはボルト挿通孔21に対応するように形成されている。
【0032】
第1接触部24は、複数設けられており、押輪14の径方向Dにおいて各ボルト挿通孔21よりも外側に位置する凸部である。
【0033】
また、第2接触部25は、押輪14の径方向Dにおいて各ボルト挿通孔21よりも内側に位置しているとともに、押圧面19の周囲を取り囲むように円環状に形成された凸部である。第2接触部25の径方向Dにおける内側には、ゴム輪7の端部が嵌入可能な凹部27が形成されている。
【0034】
押輪本体14aの内周14cには、テーパー面29とストレート面30とがそれぞれ全周にわたり形成されている。テーパー面29は、押圧面19に近い側から反対の遠い側ほど拡径し、押圧面19とは反対側の面32に達している。
【0035】
ストレート面30は、一定の内径dを有し、他方の管4の管軸心4aに対して平行であり且つ管軸方向Eに所定の幅Wで形成されており、テーパー面29よりも押圧面19に近い側に位置しているとともに、押圧面19に達している。
【0036】
以下に、押輪14を用いた管2,4の接合方法を説明する。
【0037】
先ず、押輪14とゴム輪7とバックアップリング13とを一方の管2の挿し口3に外嵌し、他方の管4の受口5のロックリング溝9にロックリング10を装着し、拡径器(図示省略)を用いてロックリング10を拡径しておく。
【0038】
その後、一方の管2の管軸心2aを他方の管4の管軸心4aに対して傾斜させた状態で、挿し口3を受口5に挿入する。この際、ロックリング10が拡径されているため、挿し口3の突部11がロックリング10の内周を受口5の開口端面15の側から奥側へ通過する。
【0039】
その後、拡径器(図示省略)を取り外すことにより、ロックリング10が縮径して挿し口3の外周に抱き付く。
【0040】
次に、
図8に示すように、バックアップリング13を、管軸方向Eへ移動して受口5の内部に挿入し、ロックリング10に隣接させる。さらに、ゴム輪7を管軸方向Eへ移動して受口5の開口端面15の手前に位置させる。
【0041】
その後、T頭ボルト16を受口5のボルト孔12と押輪14のボルト挿通孔21に挿通し、ナット17をT頭ボルト16に螺合して、押輪14の第1および第2接触部24,25が受口5の開口端面15に当接するまでナット17を締め込む。
【0042】
これにより、
図1,
図2に示すように、押輪14が受口5に連結されるとともに、押輪14の押圧面19がゴム輪7を押圧して挿し口3の外周と受口5の内周との間に挿入し、一方の管2の管軸心2aが他方の管4の管軸心4aに対して傾斜した状態で、一方の管2と他方の管4とが接合される。
【0043】
以下、上記構成および接合方法における作用を以下に説明する。
【0044】
図2に示すように、押輪14の第1および第2接触部24,25が受口5の開口端面15に接触することにより、押圧面19から受口5の開口端面15までの間隔が所定間隔に保たれる。また、押輪14がゴム輪7を挿し口3の外周と受口5の内周との間に押し込む際、ゴム輪7の端部が押輪14の凹部27(
図6,
図7参照)に嵌入されているため、ゴム輪7の端部は径方向Dにおいて位置ずれせずに押輪14に固定される。これにより、ゴム輪7を確実に挿し口3の外周と受口5の内周との間に挿入することができる。
【0045】
また、
図1,
図2,
図6,
図7に示すように、押輪本体14aの内周14cにテーパー面29とストレート面30とが形成されているため、一方の管2の外周が押輪14の内周14cに当接する場合、一方の管2の外周はテーパー面29とストレート面30との境界部分36に当接する。この境界部分36は、押輪14の内周14cと押圧面19の反対側の面32とのコーナー部37よりも、押圧面19に近い箇所である。このため、一方の管2の外周が押輪14の内周14cに当接したときの他方の管4の管軸心4aに対する一方の管2の管軸心2aの傾斜角度α(
図1参照)を大きくすることが可能であり、これにより、複数本の管同士を傾斜させて接合し、湾曲した管路(
図17参照)を形成する場合、管の本数を減らすことができる。
【0046】
さらに、上記のように傾斜角度α(
図1参照)を大きくすることができるため、地震等で管路が屈曲した際にも、一方の管2と他方の管4とは大きな傾斜角度αで屈曲可能であり、これにより、押輪14にかかる荷重を小さくすることができる。
【0047】
また、一方の管2の外周は、押輪14の押圧面19の内周縁19a(
図6,
図7参照)に当接せず、上記境界部分36に当接するので、押圧面19の内周縁19aが損傷するのを防止できる。これにより、ゴム輪7を、押輪14の押圧面19で、十分に挿し口3の外周と受口5の内周との間に挿入することができる。
【0048】
また、傾斜角度αを大きくするために押輪14の内径d(すなわちストレート面30の内径d)を大きくする必要は無いので、押輪14の内周14cのストレート面30と一方の管2の外周との隙間34(
図1参照)は拡大せず、ゴム輪7が押輪14の押圧面19から隙間34に入り込むのを抑制することができる。これにより、ゴム輪7を十分に挿し口3の外周と受口5の内周との間に挿入することができる。
【0049】
また、上記のような管の接合方法によると、
図8に示すように、ゴム輪7を挿し口3の外周と受口5の内周との間に挿入する前に、一方の管2の管軸心2aを他方の管4の管軸心4aに対して傾斜させた状態で、挿し口3を受口5に挿入するため、挿し口3を受口5に対して傾斜させる際に要する力が低減される。
【0050】
尚、上記のような管の接合方法ではなく、例えば、先ず、一方の管2の管軸心2aを他方の管4の管軸心4aに対して傾斜させずに一直線にした状態で挿し口3を受口5に挿入し、次に、ゴム輪7を挿し口3の外周と受口5の内周との間に挿入し、その後、一方の管2の管軸心2aを他方の管4の管軸心4aに対して傾斜させた場合、ゴム輪7に抵抗して挿し口3(一方の管2)を受口5(他方の管4)に対し傾斜させるので、挿し口3を受口5に対し傾斜させる際に要する力が増大するといった問題がある。
【0051】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、
図10~
図14に示すように、押輪本体14aは均等間隔領域59と拡大間隔領域60とを有している。均等間隔領域59において、周方向Aにおけるボルト挿通孔21間の間隔が均等な間隔S1に保たれている。拡大間隔領域60において、隣り合ういずれか2個のボルト挿通孔21間の間隔S2が上記均等な間隔S1よりも拡大している。
【0052】
例えば、
図10,
図11では、受口5のフランジ部5aのボルト孔12の個数(8個)よりも1個少ない7個のボルト挿通孔21が押輪本体14aに形成され、均等間隔領域59における各ボルト挿通孔21の振り分け角度B1は45°であり、拡大間隔領域60における両ボルト挿通孔21の振り分け角度B2は90°である。
【0053】
押輪本体14aの押圧面19とは反対側の面32には、円弧形状の補強部材62が設けられている。この補強部材62は、拡大間隔領域60において隣り合う2個のボルト挿通孔21間にわたって設けられており、
図12に示すように押輪本体14aのストレート面30よりも径方向Dにおける外側に位置している。
【0054】
図9~
図11に示すように、押輪14は、拡大間隔領域60が一方の管2の真下に位置するように、受口5に連結されている。尚、
図15に示すように、管2,4同士は地面64を掘削して形成された溝65の内部で接合され、この際、溝65の底部66が管2,4の接合作業の妨げになる障害物となる。すなわち、押輪14は、拡大間隔領域60を溝65の底部66(障害物の一例)が存在する側に位置させた状態で、複数のT頭ボルト16およびナット17によって受口5に連結されている。
【0055】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0056】
先述した第1の実施の形態と同様に、押輪14の内周14cにテーパー面29が形成されているため、一方の管2の外周が押輪14の内周14cに当接したときの他方の管4の管軸心4aに対する一方の管2の管軸心2aの傾斜角度αを大きくすることが可能である。
【0057】
また、傾斜角度αを大きくするために押輪14の内径dを大きくする必要は無いので、押輪14のストレート面30と一方の管2の外周との隙間34は拡大せず、ゴム輪7が押輪14の押圧面19から隙間34に入り込むのを抑制することができる。
【0058】
また、
図10,
図11,
図15に示すように、押輪14の拡大間隔領域60が一方の管2の真下に位置しているため、拡大間隔領域60のボルト挿通孔21は、一方の管2の真下に存在せず、一方の管2の真下よりも押輪14の周方向Aに振り分けられた位置に存在する。これにより、拡大間隔領域60のボルト挿通孔21と溝65の底部66との間隔Hが拡大するため、押輪14と溝65の底部66との間の作業スペースが狭くても、管2,4を接合する際の作業性を向上させることができる。
【0059】
また、押輪14の拡大間隔領域60は補強部材62によって十分な剛性に保たれているため、ゴム輪7の反力が押輪14に作用しても、押輪14の拡大間隔領域60が反力により撓むのを防止することができる。さらに、押輪14の拡大間隔領域60のボルト挿通孔21と受口5のボルト孔12とにT頭ボルト16を挿通してナット17で締め込んだ際、拡大間隔領域60における2個のボルト挿通孔21間に高い応力が発生しても、拡大間隔領域60が変形し或いは損傷するのを防止することができる。
【0060】
上記第2の実施の形態では、
図10,
図11に示すように、押輪14に7個のボルト挿通孔21を形成しているが、7個に限定されるものではなく、例えば、4の倍数から1を差し引いた個数(11個或いは15個等)であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 管継手
2a 管軸心
3 挿し口
4a 管軸心
5 受口
7 ゴム輪(シール部材)
14 押輪
14a 押輪本体
14c 押輪本体の内周
15 開口端面
16 ボルト(締結具)
17 ナット(締結具)
19 押圧面
21 ボルト挿通孔(締結具挿通孔)
24 第1接触部
25 第2接触部
27 凹部
29 テーパー面
30 ストレート面
32 反対側の面
D 径方向
d 一定の内径
E 管軸方向
W 所定の幅