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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】成形触媒およびハロゲンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/50 20240101AFI20250626BHJP
   C01B 7/04 20060101ALI20250626BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20250626BHJP
   B01J 35/40 20240101ALI20250626BHJP
【FI】
B01J35/50 351A
C01B7/04 A
B01J21/06 M
B01J35/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021514636
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2021003003
(87)【国際公開番号】W WO2021199633
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020066236
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三上 祐輔
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102909085(CN,A)
【文献】特開2010-052976(JP,A)
【文献】特開平01-228940(JP,A)
【文献】特開2005-144322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 7/04
B01J 8/02-8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化水素を酸素によって酸化するための、円柱形状である触媒を角取りして得られた成形触媒であって、下記式(1):
0.818≦WAV/W0.865 (1)
(式(1)において、WAVは下記式(2)より求められ、Wは下記式(3)により求められ、
AV=Wtot/n (2)
=(VAV・ρ)/(1+V・ρ) (3)
式(2)中、
totは、任意に選んだn個の成形触媒の総重量を表し、
式(3)中、
AVは、任意に選んだn個の成形触媒のそれぞれの長径(L)を高さとし短径(D)を直径とする個々の仮想円柱について求められる体積の平均を表し、
ρは成形触媒の真密度を表し、
は成形触媒の単位重量当たりの細孔容積を表す)を満たし、
長径(L)が1mm以上10mm以下であり、
短径(D)が5mm以下である、
成形触媒。
【請求項2】
多管式反応器用である、請求項1に記載の成形触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形触媒を用いてハロゲンを得ることを含む、ハロゲンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形触媒およびハロゲンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒が充填された複数の反応管を備え、反応管に反応原料を供給して生成物を製造するための装置として、固定床多管式反応器が知られている。例えば、特許文献1には、固定床多管式反応器により、塩化水素を酸化して塩素を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-052976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、固定床多管式反応器の反応管に充填する触媒として、円柱形状などに成形された成形触媒を用いている。
円柱形状に成形された成形触媒を、反応管に充填する場合、充填状態にバラツキが生じることがある。すなわち、多管式反応器の複数の反応管の間で、成形触媒が密に充填される反応管と、成形触媒が粗に充填される反応管とが生じることがある。また、反応管に充填された成形触媒を交換する際、交換ごとに反応管に充填される成形触媒の粗密の程度が異なる場合がある。反応管に充填される成形触媒の、このような充填状態のバラツキは、多管式反応器のみならず、単管の反応器においても生じることがある。
成形触媒の、このような充填状態のバラツキは、反応原料が流れやすい反応管と、流れにくい反応管を生じさせ、反応原料と成形触媒との接触時間にムラが生じて、その結果、触媒活性や反応の選択率などについて、多管式反応器の反応管の間で差が生じたり、または単管の反応器の触媒を交換する度に変動が生じることがある。
【0005】
したがって、反応管に充填する際に、充填状態のバラツキの程度を低減できる、成形触媒;当該成形触媒を用いたハロゲンの製造方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、成形触媒の平均重量(WAV)の、成形触媒から求められる仮想円柱重量(W)に対する比率(WAV/W、値Aともいう。)を所定の範囲とすることにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0007】
[1] 下記式(1)を満たす、成形触媒:
0.800≦WAV/W≦0.875 (1)
式(1)において、WAVは下記式(2)より求められ、Wは下記式(3)により求められ、
AV=Wtot/n (2)
=(VAV・ρ)/(1+V・ρ) (3)
式(2)中、
totは、任意に選んだn個の成形触媒の総重量を表し、
式(3)中、
AVは、任意に選んだn個の成形触媒のそれぞれの長径(L)を高さとし短径(D)を直径とする個々の仮想円柱について求められる体積の平均を表し、
ρは成形触媒の真密度を表し、
は成形触媒の単位重量当たりの細孔容積を表す。
[2] 多管式反応器用である、[1]に記載の成形触媒。
[3] ハロゲン化水素を酸素によって酸化するための[1]または[2]に記載の成形触媒。
[4] [1]~[3]のいずれか一項に記載の成形触媒を用いてハロゲンを得ることを含む、ハロゲンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反応管に充填する際に、充填状態のバラツキの程度を低減できる、成形触媒;当該成形触媒を用いたハロゲンの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、固定床多管式反応器の一例を模式的を示す概略図である。
図2図2は、実施例および比較例の値Aと見かけ比重のバラツキとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態および例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態および例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲およびその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
[1.成形触媒]
[1.1.成形触媒が満たす条件]
本発明の一実施形態に係る成形触媒は、下記式(1)を満たす。成形触媒が、下記式(1)を満たすことにより、成形触媒を反応管に充填する際の充填状態のバラツキが低減される。充填状態のバラツキは、実施例に記載された方法により、見かけ比重のバラツキを評価することにより、評価できる。
【0012】
0.800≦WAV/W≦0.875 (1)
AV/Wは、成形触媒の平均重量(WAV)の、成形触媒の仮想円柱重量(W)に対する比率である。本明細書において、比率WAV/Wを、値Aとして説明する場合がある。値Aは、円柱の成形触媒が有する角がとれている程度を示す指標であり、値Aが小さいほど、円柱の成形触媒の角が取れて円柱よりも寸法が小さくなっていることを示す。
値Aは、例えば、円柱形状に成形された触媒の角をとる程度を調整して成形触媒を製造することにより調整できる。例えば円柱形状に成形された触媒を、ノンバブリングニーダーなどのニーダーにより、適切な時間処理することにより、値Aを調整できる。例えば、ニーダーによる処理時間を長くすると、値Aはより小さくなる傾向がある。ニーダーによる処理時間を短くすると、値Aはより大きくなる傾向がある。
【0013】
ここで、WAVは、下記式(2)により求められる。
AV=Wtot/n (2)
式(2)において、Wtotは、任意に選んだn個の成形触媒の総重量を表す。したがって、WAVは、任意に選んだn個の成形触媒の平均重量を意味する。
【0014】
は、下記式(3)により求められる。
=(VAV・ρ)/(1+V・ρ) (3)
式(3)において、VAVは、任意に選んだn個の成形触媒のそれぞれの長径(L)を高さとし短径(D)を直径とする個々の仮想円柱について求められる体積の平均を表す。ρは成形触媒の真密度を表す。Vは成形触媒の単位重量当たりの細孔容積を表す。
は、任意に選んだn個の成形触媒から想定されるn個の仮想円柱の平均体積と同じ体積を有する円柱触媒の重量である。
式(3)は、以下の式から導出される。
(VAV-V・W)・ρ=W
【0015】
本実施形態の成形触媒は、略円柱形状を有しており、円柱形状の角を落とした形状を有している。成形触媒の短径(D)とは、略円柱形状の高さ方向(軸方向)に対して、垂直な断面における、成形触媒の最大直径を意味する。
【0016】
成形触媒の長径(L)とは、略円柱形状の高さ方向(軸方向)において、成形触媒の最も長い径を意味する。
【0017】
成形触媒の長径(L)および短径(D)の測定には、従来公知のノギスやデジマティックインジケーターなどを用いることができる。測定は任意に抽出したn個(通常、nは50個以上)の試料について行う。
【0018】
仮想円柱とは、成形触媒の長径(L)を高さとし、短径(D)を底面の直径として想定される円柱である。
AVは、任意に選んだ個々の成形触媒の長径(L)を高さとし短径(D)を直径として求められる個々の仮想円柱の平均体積である。
【0019】
成形触媒の真密度とは、成形触媒の重量を、真の体積(成形触媒の見かけ上の体積から細孔の体積を除いた体積)で除して得られる密度である。
成形触媒の真密度(ρ)は、液相置換法または気相置換法により測定することができる。具体的には、実施例に記載された条件による液相置換法により測定することができる。
【0020】
成形触媒の、単位重量当たりの細孔容積(Vp)は、細孔容積測定装置(例、MICROMERITICS社製「オートポアIII9420」)により測定できる。
【0021】
[1.2.成形触媒の大きさ]
成形触媒の大きさについては特に制限されるものではないが、触媒活性をより大きくすることにより、反応をより促進させる観点から、通常、成形触媒の短径(D)は5mm以下であることが好ましい。一方、充填層での圧力損失を低減する観点から、本発明において用いられる成形触媒は適度な大きさであることが好ましく、通常、その短径(D)は1mm以上であることが好ましい。
成形触媒の長径(L)は、通常、1mm以上10mm以下であり、好ましくは3mm以上7mm以下である。
【0022】
[1.3.成形触媒の成形方法]
本発明の成形触媒を製造する方法の例としては、円柱形状の触媒を形成し、その後、円柱形状の角部分を取る方法が挙げられる。
円柱形状の触媒の形成方法の例としては、押出成形や打錠成形による方法が挙げられる。押出成形の場合には、押出し物を適当な長さに切断して使用してよい。ここで得られる円柱形状の触媒は角部分を有している。円柱形状の角部分とは、円柱の底面と側面で形成される角部分である。
次いで、円柱形状の触媒に対して、回転機器等を用いて角部分を取る処理(角取りともいう。)を施す。
触媒の角取りは、例えば、ノンバブリングニーダー(日本精機製作所製、NBK-1)を用いて任意の時間、回転数で処理することにより行うことができる。ノンバブリングニーダーの運転時間は、製造効率および角取り効果の観点から、好ましくは10分以上150分以下の時間範囲であり、より好ましくは50分以上130分以下の時間範囲である。ノンバブリングニーダーの回転数としては、触媒強度の保持と角取り効果の観点から、好ましくは100回転/分以上2000回転/分以下の範囲であり、より好ましくは200回転/分以上1000回転/分以下である。
【0023】
[1.4.成形触媒を形成する触媒材料]
成形触媒は、任意の触媒材料から形成されていてよい。本発明の成形触媒へ成形される触媒材料は、触媒活性成分のみからなる材料であってもよく、触媒活性成分と、これを担持する担体とを含む材料であってもよい。
【0024】
(触媒材料の例(1))
触媒材料に含まれうる触媒活性成分の例としては、特に制限されないが、(1)気相酸化法により、塩化水素を酸素で酸化して塩素を製造するための公知の触媒活性成分(例、銅元素、クロム元素、ルテニウム元素などの元素を含む触媒活性成分)が挙げられる。
【0025】
銅元素を含む触媒の例としては、Deacon触媒(塩化銅と塩化カリウムとを含みさらに種々の化合物を含む触媒)が挙げられる。
クロム元素を含む触媒の例としては、酸化クロムを含む触媒(例えば、特開昭61-136902号公報、特開昭61-275104号公報、特開昭62-113701号公報、特開昭62-270405号公報などに記載される触媒)が挙げられる。
ルテニウム元素を含む触媒の例としては、酸化ルテニウムを含む触媒(例えば、特開平9-67103号公報、特開平10-338502号公報、特開2000-281314号公報、特開2002-79093号公報、特開2002-292279号公報などに記載される触媒)が挙げられる。
【0026】
一実施形態において、成形触媒へ成形される触媒材料としては、ルテニウム元素を含む触媒が好ましく、酸化ルテニウムを含む触媒がより好ましい。ここで、酸化ルテニウムとしては、酸化数が+4である二酸化ルテニウム(RuO)、他の酸化数を有する酸化ルテニウムが存在する。触媒は、酸化ルテニウムとして、種々の酸化数を有する、種々の形態である酸化ルテニウムを含んでいてもよい。酸化ルテニウムを含む触媒は、酸化数が+4である二酸化ルテニウム(RuO)を含むことが好ましい。
【0027】
触媒は、実質的に酸化ルテニウムのみからなる触媒であってもよく、酸化ルテニウムと、これを担持する担体とを含む、担持酸化ルテニウム触媒であってもよい。酸化ルテニウムの含有量が比較的少量であっても、高い活性を得られるので、担持酸化ルテニウム触媒がさらに好ましい。
【0028】
担持酸化ルテニウム触媒の製造方法の例としては、ルテニウム化合物を担体に担持させた後、酸素含有ガスの雰囲気下で焼成することにより触媒を得る方法が挙げられる。
【0029】
担体の例としては、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、およびニオブからなる群より選択される元素の酸化物(複合酸化物でありうる。)、活性炭などの担体の、1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。担体としては、これらの中でも、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウムからなる群より選択される1種以上が好ましく、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンがより好ましい。
【0030】
担持酸化ルテニウム触媒における酸化ルテニウム/担体の重量比は、特に限定されないが、好ましくは0.1/99.9~20/80、より好ましくは0.5/99.5~15/85である。かかる重量比は、前記担持酸化ルテニウム触媒の製造において、ルテニウム化合物と担体の使用割合を調整することにより調整しうる。前記重量比が、前記下限値以上であることで、触媒活性を充分なものとでき、一方、前記上限値以下であることで、触媒コストを低減できる。
【0031】
前記の担持酸化ルテニウム触媒は、塩化水素および酸素から塩素を得る気相酸化法に好適に用いられうる。
【0032】
成形触媒を、例えば酸化ルテニウム触媒のような、ハロゲン化水素を酸素によって酸化するための触媒活性成分を含む触媒材料から形成することによって、成形触媒を、ハロゲン化水素を酸素によって酸化するための成形触媒としうる。
【0033】
(酸化ルテニウム触媒の特に好ましい例)
以下、ハロゲン化水素を酸素によって酸化するための成形触媒の材料として特に好ましい、酸化ルテニウムがチタニア担体に担持された酸化ルテニウム触媒の例について詳細に説明する。
【0034】
チタニア担体は、ルチル型チタニア(ルチル型の結晶構造を有するチタニア)やアナターゼ型チタニア(アナターゼ型の結晶構造を有するチタニア)、非晶質のチタニア等からなるチタニア担体であってもよく、また、これらの混合物からなるチタニア担体であってもよい。ルチル型チタニアおよび/またはアナターゼ型チタニアからなるチタニア担体が好ましく、中でも、チタニア担体中のルチル型チタニアおよびアナターゼ型チタニアに対するルチル型チタニアの比率(以下、ルチル型チタニア比率ということがある。)が50%以上のチタニア担体が好ましく、70%以上のチタニア担体がより好ましく、90%以上のチタニア担体がさらにより好ましい。ルチル型チタニア比率が高くなるほど、得られる担持酸化ルテニウムの熱安定性が向上する傾向となり、触媒活性がより良好となる。上記ルチル型チタニア比率は、X線回折法(以下XRD法)により測定でき、以下の式(a)で示される。
【0035】
ルチル型チタニア比率[%]=〔IR/(IA+IR)〕×100 (a)
【0036】
IR:ルチル型チタニア(110)面を示す回折線の強度
IA:アナターゼ型チタニア(101)面を示す回折線の強度
【0037】
なお、チタニア担体中のナトリウム含有量は200重量ppm以下であるのが好ましく、また、カルシウム含有量は200重量ppm以下であるのが好ましい。さらに、チタニア担体中の全アルカリ金属元素の含有量が200重量ppm以下であるのがより好ましく、また、チタニア担体中の全アルカリ土類金属元素の含有量が200重量ppm以下であるのがより好ましい。これらアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素の含有量は、例えば、誘導結合高周波プラズマ発光分光分析法(以下、ICP分析法ということがある。)、原子吸光分析法、イオンクロマトグラフィー分析法等で測定することができ、好ましくはICP分析法で測定する。なお、チタニア担体には、チタニアの他に、α-アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化ニオブ等の酸化物が含まれていてもよい。チタニア担体は高比表面積を有するアルミナを実質的には含まない方が好ましい。チタニア担体中に高比表面積を有するアルミナが存在すると、硫黄成分や酸化された硫黄成分が担持酸化ルテニウムに吸着および/または吸収されやすくなり、触媒の活性が低下することがある。なお、α-アルミナは低いBET比表面積を有するため、硫黄成分や酸化された硫黄成分の吸着および/または吸収は起こり難い。つまり、前記担体がα-アルミナを含有しても、前記問題は生じ難い。高比表面積を有するアルミナとしては、例えば、比表面積が10~500m/g、好ましくは20~350m/gのものが挙げられる。アルミナの比表面積は、窒素吸着法(BET法)で測定することができ、通常BET1点法で測定する。
【0038】
チタニア担体の比表面積は、窒素吸着法(BET法)で測定することができ、通常BET1点法で測定する。該測定により得られる比表面積は、5~300m/gが好ましく、より好ましくは5~50m/gである。比表面積が高すぎると、得られる担持酸化ルテニウムにおけるチタニア担体や酸化ルテニウムが焼結しやすくなり、熱安定性が低くなることがある。一方、比表面積が低すぎると、得られる担持酸化ルテニウムにおける酸化ルテニウムが分散しにくくなり、触媒活性が低くなることがある。
【0039】
上述のチタニア担体に、酸化ルテニウムを担持する。チタニア担体への酸化ルテニウムの担持は、例えば、チタニア担体をルテニウム化合物および溶媒を含む溶液で接触処理した後、溶媒の含有量がチタニア担体の重量を基準として0.10~15重量%になるまで乾燥し、次いで、得られた乾燥物をチタニア担体の重量を基準として1.0~15重量%の溶媒を含む状態で保持した後、酸化性ガス雰囲気下で焼成することにより実施される。
【0040】
前記ルテニウム化合物としては、例えば、RuCl、RuBrのようなハロゲン化物、KRuCl、KRuClのようなハロゲノ酸塩、KRuO、NaRuOのようなオキソ酸塩、RuOCl、RuOCl、RuOClのようなオキシハロゲン化物、K[RuCl(HO)]、[RuCl(HO)]Cl、K[RuOCl10]、Cs[RuOCl]のようなハロゲノ錯体、[Ru(NHO]Cl、[Ru(NHCl]Cl、[Ru(NH]Cl、[Ru(NH]Cl、[Ru(NH]Brのようなアンミン錯体、Ru(CO)、Ru(CO)12のようなカルボニル錯体、[RuO(OCOCH(HO)]OCOCH、[Ru(OCOR]Cl(R=炭素数1~3のアルキル基)のようなカルボキシラト錯体、K[RuCl(NO)]、[Ru(NH(NO)]Cl、[Ru(OH)(NH(NO)](NO、[Ru(NO)](NOのようなニトロシル錯体、ホスフィン錯体、アミン錯体、アセチルアセトナト錯体等が挙げられる。中でもハロゲン化物が好ましく用いられ、特に塩化物が好ましく用いられる。なお、ルテニウム化合物としては、必要に応じて、その水和物を使用してもよいし、また、それらの2種以上を使用してもよい。
【0041】
チタニア担体とルテニウム化合物との使用割合は、適宜調整できる。例えば、後述する焼成後に得られる担持酸化ルテニウム中の酸化ルテニウム/チタニア担体の重量比が、好ましくは0.1/99.9~20.0/80.0、より好ましくは0.3/99.7~10.0/90.0、さらに好ましくは0.5/99.5~5.0/95.0となるように、適宜調整してよい。酸化ルテニウムがあまり少ないと触媒活性が十分でないことがあり、あまり多いとコスト的に不利となる。
【0042】
チタニア担体とルテニウム化合物および溶媒を含む溶液との接触処理により、ルテニウム化合物がチタニア担体に担持される。該接触処理において、溶媒としては、水、アルコール、ニトリル等が挙げられ、必要に応じて、それらの2種以上を使用してもよい。水としては、蒸留水、イオン交換水、超純水などの純度の高い水が好ましい。使用する水に不純物が多く含まれると、かかる不純物が触媒に付着して、触媒の活性を低下させる場合がある。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等の炭素数1~6のアルコールが挙げられる。ニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等の炭素数1~6のニトリルが挙げられる。該溶液に含まれる溶媒の量は、使用するチタニア担体の総細孔容積から担持させるルテニウム化合物の体積を除いた量の70体積%以上であることが好ましい。上限は特に制限はないが、使用する溶媒量が多すぎると乾燥に時間がかかる傾向となるため、120体積%以下程度とすることが好ましい。該接触処理において、処理時の温度は、通常0~100℃、好ましくは0~50℃であり、処理時の圧力は通常0.1~1MPa、好ましくは大気圧である。また、かかる接触処理は、空気雰囲気下や、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化酸素等の不活性ガス雰囲気下で行うことができ、この際、水蒸気を含む雰囲気下で行ってもよい。
【0043】
接触処理としては、含浸、浸漬等が挙げられる。チタニア担体をルテニウム化合物および溶媒を含む溶液で接触処理する方法として、例えば、(A)チタニア担体にルテニウム化合物および溶媒を含む溶液を含浸させる方法、(B)チタニア担体をルテニウム化合物および溶媒を含む溶液に浸漬させる方法等が挙げられるが、前記(A)の方法が好ましい。該接触処理により、チタニア担体にルテニウム化合物が担持される。接触処理においては、接触処理後に得られるルテニウム化合物および溶媒を含むチタニア担体において、通常その溶媒の含有量がチタニア担体の重量を基準として15重量%を超える量となるように、チタニア担体に対する溶媒の使用量が調整される。
【0044】
チタニア担体をルテニウム化合物および溶媒を含む溶液で接触処理した後、得られたルテニウム化合物および溶媒を含むチタニア担体を、通常溶媒の含有量がチタニア担体の重量を基準として0.10~15重量%になるまで乾燥する。かかる乾燥において、その温度は、10℃~100℃が好ましく、乾燥における圧力は、0.01~1MPaが好ましく、より好ましくは大気圧である。乾燥時間は、適宜設定される。かかる乾燥は、空気雰囲気下や、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化酸素のような不活性ガス雰囲気下で行うことができ、この際、水蒸気を含む雰囲気下で行ってもよい。また、空気、不活性ガスまたは空気と不活性ガスとの混合ガスの流通下に乾燥を行ってもよく、この際、流通させるガスは、水蒸気を含んでいてもよい。水蒸気含有ガス流通下で乾燥を行う場合、水蒸気含有ガスにおける水蒸気の濃度は、通常乾燥条件における飽和水蒸気量未満の範囲で設定される。前記乾燥において、ガス流通下に乾燥を行う場合、該ガスの流通速度は、チタニア担体におけるガスの空間速度(GHSV)として、標準状態(0℃、0.1MPa換算)で10~10000/hが好ましく、100~5000/hがより好ましい。なお、空間速度は、乾燥処理を施す装置内を通過する1時間当りのガス量(L/h)を、乾燥処理を施す装置内のチタニア担体容量(L)で除することにより求めることができる。
【0045】
前記乾燥における乾燥速度は適宜設定されるが、生産性の観点から、チタニア担体1gあたりの溶媒の蒸発速度として、0.01g/h以上が好ましく、0.02g/h以上がより好ましく、0.03g/h以上がさらに好ましい。乾燥速度の上限は適宜設定されるが、チタニア担体1gあたりの溶媒の蒸発速度として、0.50g/h以下が好ましい。かかる乾燥速度は、温度、圧力、時間、ガスの流通速度等の条件を調整することにより制御できるが、乾燥中において、これらの条件を変更して乾燥速度を変化させてもよい。
【0046】
前記乾燥後に得られる乾燥物に含まれる溶媒の含有量は、通常チタニア担体の重量を基準として0.10~15重量%であり、好ましくは1.0~13重量%であり、より好ましくは2.0~7.0重量%である。該乾燥物における、チタニア担体の重量を基準とした溶媒の含有量は、以下の式(b)で算出される。
【0047】
乾燥物におけるチタニア担体の重量を基準とした溶媒の含有量(重量%)=[乾燥物における残存溶媒量(g)]/[乾燥物におけるチタニア担体の含有量(g)]×100 (b)
【0048】
なお、チタニア担体とルテニウム化合物および溶媒を含む溶液との接触処理を含浸により行った場合において、乾燥物における残存溶媒量は、接触処理に使用した溶媒の量から、乾燥前後の重量変化量を差し引くことにより求めることができる。
【0049】
前記乾燥は、撹拌しながら行うのが好ましい。なお、撹拌しながらの乾燥とは、ルテニウム化合物および溶媒を含むチタニア担体を静止状態ではなく流動状態で乾燥することを意味する。前記撹拌の方法としては、乾燥容器そのものを回転させる方法、乾燥容器そのものを振動させる方法、乾燥容器内に備えられた撹拌機により撹拌する方法等が挙げられる。
【0050】
こうして得られる乾燥物を、通常チタニア担体の重量を基準として1.0~15重量%の溶媒を含む状態で保持する。該保持は、乾燥物に含まれる溶媒の蒸発が抑えられた状態で行われ、その溶媒の蒸発速度は、チタニア担体1gあたり0.01g/h未満であるのが好ましく、0.001g/h以下であるのがより好ましい。かかる保持において、その温度は、0~80℃が好ましく、5~50℃がより好ましい。その保持時間は、溶媒の含有量や保持温度によって適宜設定されるが、10時間以上が好ましく、15時間以上がより好ましい。該保持は、チタニア担体の重量を基準として1.0~15重量%の溶媒を含む状態で行われることが好ましく、密閉条件下で行ってもよいし、開放条件下で行ってもよいし、ガス流通下で行ってもよい。また、乾燥時と同一の装置内で保持してもよいし、乾燥後、別の容器に移して保持してもよい。
【0051】
前記乾燥の際に、チタニア担体の重量を基準とした溶媒の含有量が0.10重量%以上1.0重量%未満となった場合には、前記保持の前に、気化させた溶媒を含有するガスを流通させて乾燥物に接触させる方法や、溶媒が水である場合には大気中に放置する方法等により、乾燥物における溶媒の含有量がチタニア担体の重量を基準として1.0~15重量%の範囲内となるようにしてから前記保持に供することが好ましい。
【0052】
前記保持の後、通常酸化性ガスの雰囲気下で焼成を行う。かかる焼成により、担持されたルテニウム化合物は酸化ルテニウムへと変換され、酸化ルテニウムがチタニア担体に担持されてなる担持酸化ルテニウムが得られる。酸化性ガスとは、酸化性物質を含むガスであり、例えば、酸素含有ガスが挙げられる。その酸素濃度は通常1~30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスや水蒸気で希釈される。酸化性ガスとしては、中でも、空気が好ましい。焼成温度は、通常100~500℃、好ましくは200~400℃である。
【0053】
前記焼成は、前記保持の後、乾燥物における溶媒の含有量がチタニア担体の重量を基準として1.0重量%未満になるまでさらに乾燥してから行ってもよいし、前記保持の後、還元処理を行ってから行ってもよいし、前記保持の後、乾燥物における溶媒の含有量がチタニア担体の重量を基準として1.0重量%未満になるまでさらに乾燥し、次いで還元処理を行ってから行ってもよい。かかる乾燥方法としては、従来公知の方法を採用することができ、その温度は、通常、室温から100℃程度であり、その圧力は、通常0.001~1MPa、好ましくは大気圧である。かかる乾燥は、空気雰囲気下や、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化酸素のような不活性ガス雰囲気下で行うことができ、この際、水蒸気を含む不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。かかる還元処理としては、例えば特開2000-229239号公報、特開2000-254502号公報、特開2000-281314号公報、特開2002-79093号公報等に記載される還元処理が挙げられる。
【0054】
前記焼成により得られる担持酸化ルテニウムにおいて、担持されている酸化ルテニウムにおけるルテニウムの酸化数は、通常+4であり、通常酸化ルテニウムは二酸化ルテニウム(RuO)の形態であるが、他の酸化数のルテニウムまたは他の形態の酸化ルテニウムが含まれていてもよい。
【0055】
(触媒材料の例(2))
触媒材料に含まれうる触媒活性成分の別の例としては、(2)気相酸化法によりイソブチレンおよび酸素からメタクロレイン、さらにメタクリル酸を得るための触媒活性成分(例、モリブデン元素などの元素を含む触媒活性成分)が挙げられる。かかる触媒活性成分を含む触媒の例としては、特開2000-351744号公報、特開2010-188276号公報、特開2003-10690号公報、特開2007-260588号公報に記載された酸化触媒が挙げられ、これら触媒は、従来公知の方法(例えば、前記公報に記載される方法)により製造されうる。
【0056】
[2.成形触媒の使用態様]
[2.1.好適な反応器]
成形触媒は、任意の反応器に収められて使用できるが、本発明の成形触媒の効果が顕著に発揮されるので、多管式反応器の反応管に充填されて使用されることが好ましい。したがって、成形触媒は、多管式反応器用、特に固定床多管式反応器用として好適である。
【0057】
ここで、固定床多管式反応器としては、反応管を複数備える従前公知の任意の反応器を用いうる。以下、固定床多管式反応器の一例を、図を用いて説明する。図1は、固定床多管式反応器の一例を模式的に示す概略図である。
【0058】
図1に示すように、固定床多管式反応器100は、複数の反応管101と、反応管101を内部に収める円筒状のシェル102と、シェル102の下端部に接続される、原料を導入するための原料導入部103と、シェル102の上端部に接続され、生成物を回収するための生成物回収部104と、反応管101をその下端部でシェル102に固定する固定部材105aと、反応管101をその上端部でシェル102に固定する固定部材105bとを備える。固定床多管式反応器100は、通常、シェル102が軸が鉛直方向と略平行となるように設置されて使用される。
【0059】
複数の反応管101は、軸方向が、シェル102の軸方向と略平行となるようにシェル102に固定されており、反応管101の内部には、成形触媒10が充填されて使用される。
【0060】
シェル102の内部であって反応管101の外側には、熱媒体が導入されて、反応管101において生成した反応熱を熱媒体により除去できるようになっている。固定床多管式反応器100は、ディスク・アンド・ドーナツ型、欠円バッフル型などの形式でありうる。
【0061】
複数の反応管101は、互いに概ね同一の長さおよび内径を有する直線状に延びた管である。反応管101は上端が開口しており、この開口から、成形触媒10を充填して使用する。
別の実施形態においては、複数の反応管は、コイル状でありうる。
【0062】
固定床多管式反応器100の使用方法の例を以下に説明する。
反応管101に成形触媒10(例えば、担持酸化ルテニウム触媒を材料として形成された触媒)を充填する。原料導入部103から原料(例えば、塩化水素および酸素を含むガス)を導入し、成形触媒10が充填された反応管101の内部を通過させる。反応管101の内部で、原料が成形触媒10と接触して反応し、生成物(例えば、塩素ガス)に変換される。得られた生成物は、生成物回収部104で集められ、固定床多管式反応器100の外部へ取り出される。
【0063】
[2.2.好適な用途]
成形触媒は、含まれる触媒活性成分に応じて、任意の製造方法に用いられうる。特に、前記担持酸化ルテニウム触媒を材料として形成された成形触媒は、ハロゲン化水素を酸素によって酸化してハロゲンを得るための触媒として、好適に用いられうる。
【0064】
[3.成形触媒を用いるハロゲンの製造方法]
前記成形触媒は、ハロゲン(好ましくは塩素)の製造方法に用いうる。ハロゲンの製造方法では、成形触媒として、ハロゲン化水素および酸素からハロゲンを生成する触媒活性を有する成形触媒を用いることが好ましく、前記項目[1.成形触媒](触媒材料の例(1))に挙げた触媒材料から形成された成形触媒を用いることがより好ましい。
【0065】
本発明の一実施形態に係るハロゲンの製造方法は、前記成形触媒を用いてハロゲンを得る工程を含む。以下、ハロゲンとして、塩素を製造する方法を例として、本実施形態の製造方法を説明する。
【0066】
本実施形態の製造方法においては、固定床多管式反応器の各反応管に塩化水素と酸素とを供給することにより塩化水素を酸化する。固定床多管式反応器としては、特に限定されないが、前記[2.成形触媒の使用態様]において説明した固定床多管式反応器を用いうる。各反応管には、前記成形触媒が充填されており、各反応管に充填された成形触媒の層(触媒充填層)に、塩化水素を含むガスおよび酸素を含むガスを流通させることにより、塩化水素を酸化する。
【0067】
前記塩化水素を含むガスの例としては、特に限定されず、塩化水素を含むあらゆるガスが挙げられ、水素と塩素との反応により生成するガス;塩酸の加熱により発生するガス;塩素化合物の熱分解反応や燃焼反応などにより発生するガス;各種化合物の製造において副生するガス(例、ホスゲンによる有機化合物のカルボニル化反応、塩素による有機化合物の塩素化反応、クロロフルオロアルカンの生成反応);および、焼却炉から発生する燃焼排ガスが挙げられる。
【0068】
塩化水素を含むガスにおける、塩化水素の濃度は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上であり、通常100体積%以下である。塩化水素の濃度が前記下限値以上であると、生産効率が向上し、生成した塩素の分離、未反応酸素をリサイクルする場合はリサイクルの操作などの、反応操作を簡便としうる。
【0069】
前記塩化水素を含むガスには、ガスを発生させる際の反応等における未反応原料、反応生成物などの不純物が含まれてもよい。ただし、不純物の濃度は、ガス中の塩化水素の濃度が前記の好ましい範囲となる程度であることが好ましい。
【0070】
前記塩化水素を含むガスには、水蒸気、不活性ガスなどの他のガスを含んでいてもよい。ただし、水蒸気、不活性ガスなどの他のガスは、ガス中の塩化水素の濃度が前記の好ましい範囲となる程度であることが好ましい。前記塩化水素を含むガスは、触媒充填層内の温度分布を平滑化しうるので、水蒸気を含むことが好ましい。
【0071】
前記酸素を含むガスとしては、空気を使用してもよいし、純酸素を使用してもよい。
【0072】
本実施形態のハロゲンの製造方法は、前記成形触媒を用いてハロゲンを得る工程の他に、任意の工程を含みうる。例えば、本実施形態のハロゲンの製造方法は、反応器に、成形触媒を充填する工程、反応器において生成したハロゲンを移送する工程などを含んでいてもよい。
【実施例
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。下記の記載において、「部」は「重量部」を意味する。なお、用いた成形触媒の物性等については、下記の方法で測定、算出した。
【0074】
<成形触媒の長径(L)>
任意抽出した成形触媒50個の長径(L)をデジタルノギスで測定した。
【0075】
<成形触媒の短径(D)>
任意抽出した成形触媒50個の短径(D)をデジタルノギスで測定した。
【0076】
<成形触媒の平均重量(WAV)>
任意抽出した成形触媒50個を精秤し、50で割ることによりWAVを算出した。
【0077】
<仮想円柱の平均体積(VAV)>
任意抽出した成形触媒50個それぞれに対して長径(L)と短径(D)から個々の仮想円柱の体積Vを以下式によって求め、個々の仮想円柱の体積の総和(=Wtot)を50で割ることによりVAVを算出した。
式:V=(D/2)・π・L
【0078】
<成形触媒の真密度(ρ)>
ピクノメーターを使用した液相置換法により測定した。分散媒にはブタノールを用いた。測定前に成形触媒を空気雰囲気下、105℃で2時間乾燥させた。測定はピクノメーター(側管付比重瓶、40mL)を使用し、25℃で測定した。測定の結果、実施例および比較例で用いた成形触媒の真密度はρ=4.193g/cmであった。
【0079】
<成形触媒の単位重量当たりの細孔容積(V)>
測定に供する触媒を0.6~1.2g量り取り、乾燥機にて110℃で4時間乾燥し、乾燥後の重量を精秤して試料とした。この試料を、細孔容積測定装置(MICROMERITICS社製「オートポアIII9420」)のセル内にセットし、セル系内を50μmHg以下にした後、水銀を系内に満たし、次いで、セルに段階的に圧力を加えていき、水銀の圧入平衡待ち時間を10秒として、各圧力における水銀圧入量を測定した。そして、0.007MPaから207MPaまで圧力を加えたときの総水銀圧入量(mL)を試料重量(g)で除することにより、試料1g当たりの水銀圧入量を求め、これを単位重量当たりの細孔容積(mL/g)とした。実施例および比較例で用いた成形触媒はV=0.20mL/gであった。
【0080】
<見かけ比重のバラツキ>
測定に供する成形触媒約80~100gを精秤して試料とし、これを、100ccのメスシリンダー上に設置したロートの上からメスシリンダー中央部に3秒以内に全量落下させた。次いで、メスシリンダー内の触媒の上面を水平にならして容量を読み取り、試料重量(g)を読み取った容量(cc)で割った値を算出し、見かけ比重(g/cc)とした。見かけ比重の測定を10回繰り返し行った結果に対して不偏分散を求め、これを見かけ比重のバラツキとした。
【0081】
<触媒の角取り>
触媒の角取りはノンバブリングニーダー(日本精機製作所製、NBK-1)を用いて所定の時間、回転数で処理することにより行った。
【0082】
[実施例1]
<酸化チタン成形体の調製>
チタニア粉末〔昭和タイタニウム(株)製のF-1R、ルチル型チタニア比率93%〕100部と有機バインダー2部〔ユケン工業(株)製のYB-152A〕とを混合し、次いで純水29部、チタニアゾル〔堺化学(株)製のCSB、チタニア含有量40%〕12.5部を加えて混練した。この混合物を直径3.0mmφのヌードル状に押出し、60℃で2時間乾燥した後、長さ3~5mm程度に破砕した。得られた成形体を、空気中で室温から600℃まで1.7時間かけて昇温した後、同温度で3時間保持して焼成し、白色の酸化チタン(チタニア)成形体を得た。
【0083】
<角取り処理と見かけ比重の測定>
酸化チタン成形体100gを精秤して試料とし、これをノンバブリングニーダーのサンプル容器に入れ、回転数500回転/分で52分間運転した。得られた成形体(成形触媒)を篩別(篩の目開き1.4mm、線径0.71mm)した。篩別後の成形体(成形触媒)を精秤したところ95.1gであった。篩別後の成形体(成形触媒)から50個を任意抽出し精秤したところ3.2602gであり、WAV=0.0652gであった。任意抽出した50個の成形体の長径(L)および短径(D)を測定した結果から算出したVAV、W、AはそれぞれVAV=0.0332mL、W=0.0754g、A=0.865であった。さらに篩別後の成形触媒の見かけ比重を10回測定しバラツキを求めたところ0.00002であった。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
ノンバブリングニーダーの運転時間を87分間とした以外は実施例1と同様に行った結果、篩別後の成形体(成形触媒)は90.1gであり、篩別後の成形体(成形触媒)から50個を任意抽出し精秤した結果は3.1650g、WAV=0.0633g、VAV=0.0338mL、W=0.0769g、A=0.823、篩別後の成形触媒の見かけ比重のバラツキは0.00004であった。結果を表1に示す。
【0085】
[実施例3]
ノンバブリングニーダーの運転時間を127分間とした以外は実施例1と同様に行った結果、篩別後の成形体(成形触媒)は84.9gであり、篩別後の成形体(成形触媒)から50個を任意抽出し精秤した結果は2.9746g、WAV=0.0595g、VAV=0.0320mL、W=0.0727g、A=0.818、篩別後の成形触媒の見かけ比重のバラツキは0.00001であった。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例4]
ノンバブリングニーダーの運転時間を24分間とした以外は実施例1と同様に行った結果、篩別後の成形体(成形触媒)は98.0gであり、篩別後の成形体(成形触媒)から50個を任意抽出し精秤した結果は3.4262g、WAV=0.0685g、VAV=0.0346mL、W=0.0786g、A=0.872、篩別後の成形触媒の見かけ比重のバラツキは0.00013であった。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例1]
ノンバブリングニーダーの運転時間を20分間とした以外は実施例1と同様に行った結果、篩別後の成形体(成形触媒)は98.5gであり、篩別後の成形体(成形触媒)から50個を任意抽出し精秤した結果は3.3633g、WAV=0.0673g、VAV=0.0337mL、W=0.0766g、A=0.878、篩別後の成形触媒の見かけ比重のバラツキは0.00024であった。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例2]
ノンバブリングニーダーの運転時間を158分間とした以外は実施例1と同様に行った結果、篩別後の成形体(成形触媒)は80.0gであり、篩別後の成形体(成形触媒)から50個を任意抽出し精秤した結果は2.8625g、WAV=0.0573g、VAV=0.0319mL、W=0.0725g、A=0.789、篩別後の成形触媒の見かけ比重のバラツキは0.00018であった。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例および比較例について、値Aに対して見かけ比重のバラツキをプロットし、図2に示した。図2は、実施例および比較例の値Aと見かけ比重のバラツキとの関係を示すグラフである。
【0091】
以上の結果によれば、式(1)を満たす実施例の成形触媒は、比較例の成形触媒と比較して、見かけ比重のバラツキが顕著に小さい。
【0092】
本実施例においては、成形触媒を形成する材料として、酸化チタン(チタニア)を用いたが、成形触媒を形成する材料として、他の様々な触媒活性を有する成分を含む材料(例えば、チタニア担体に酸化ルテニウムが担持された酸化ルテニウム触媒)を用いることにより、様々な触媒活性を有する成形触媒であって、反応管に充填する際の充填状態のバラツキの程度が低減されている成形触媒を得ることができる。
【符号の説明】
【0093】
10 成形触媒
100 固定床多管式反応器
101 反応管
102 シェル
103 原料導入部
104 生成物回収部
105a、105b 固定部材
図1
図2