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特許7702570調整可能なレンズ要素による遮蔽およびコントラスト向上のための可変世界ぼかし
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  • 特許-調整可能なレンズ要素による遮蔽およびコントラスト向上のための可変世界ぼかし 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】調整可能なレンズ要素による遮蔽およびコントラスト向上のための可変世界ぼかし
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024510480
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 US2022041624
(87)【国際公開番号】W WO2023028284
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】63/237,385
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボディヤ,ティモシー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】カクマクシ,オザン
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-514826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0307893(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0379214(US,A1)
【文献】特表2019-514055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0201580(US,A1)
【文献】特開平10-239634(JP,A)
【文献】独国実用新案第202018101012(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
G02C 11/00 - 11/08
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズ層を有するレンズ構造であって、前記レンズ構造は、
拡張現実(AR)ディスプレイを含む表示光学(DO)レンズ層を含み、前記DOレンズ層は、ユーザの目に面する第1の側と、前記ユーザの前記目に反対側を向く第2の側とを有し、
前記レンズ構造は、
前記DOレンズ層の前記第1の側に隣接して配置される1つまたは複数の目側(ES)レンズ層と、
前記DOレンズ層の前記第2の側に隣接して配置される1つまたは複数の世界側(WS)レンズ層と、をさらに含み、前記1つまたは複数のWSレンズ層のうちの少なくとも1つのレンズ層は、前記レンズ構造を介して前記ユーザの現実世界の視界の少なくとも部分の焦点変調を選択的に調整するための調整可能なレンズ構成要素を含み、
前記ユーザの前記現実世界の視界の少なくとも部分の前記焦点変調を選択的に調整することは、前記ARディスプレイによって提示される仮想物体に視覚的に近い前記現実世界の視界の部分の焦点をぼかすことを含み、
前記現実世界の視界の前記部分の焦点をぼかすことは、前記仮想物体に関連付けられたコントラスト比に基づいて前記部分の焦点をぼかすことを含む、レンズ構造。
【請求項2】
前記現実世界の視界の前記部分の焦点をぼかすことは、前記現実世界の視界の前記部分に少なくとも部分的に含まれる現実世界の物体の焦点面に基づいて、前記現実世界の視界の前記部分の焦点をぼかすことを含む、請求項に記載のレンズ構造。
【請求項3】
前記焦点変調を選択的に調整することは、前記焦点変調を選択的に調整して、1つまたは複数の仮想物体が前記ARディスプレイによって提示される焦点面を調整することを含む、請求項1に記載のレンズ構造。
【請求項4】
前記1つまたは複数の仮想物体が提示される前記焦点面は第1の焦点面であり、前記第1の焦点面を調整することは、現実世界の物体が前記現実世界の視界に現れる第2の焦点面に基づいて前記第1の焦点面を調整することを含む、請求項に記載のレンズ構造。
【請求項5】
前記1つまたは複数のESレンズ層のうちの第1のESレンズ層は、第1の距離シフト(DS)構成要素を含み、
前記1つまたは複数のWSレンズ層は複数のWSレンズ層を含み、
前記複数のWSレンズ層のうちの1つのWSレンズ層は、前記第1のDS構成要素と実質的に等しいが反対の光パワーを有する第2のDS構成要素を含む、請求項1に記載のレンズ構造。
【請求項6】
前記調整可能なレンズ構成要素は、摺動可変倍率レンズ、電極湿潤レンズ、流体充填レンズ、グラフェンベースの可変レンズ、または液晶レンズを含むグループのうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のレンズ構造。
【請求項7】
前記ARディスプレイは複数の個別のピクセルを含み、前記ユーザの現実世界の視界の少なくとも部分の焦点変調を選択的に調整することは、前記複数の個別ピクセルのうちの1つまたは複数の個別ピクセルの各々に関連付けられた焦点変調を調整することを含む、請求項1に記載のレンズ構造。
【請求項8】
前記現実世界の視界の少なくとも部分の焦点変調を選択的に調整することは、前記現実世界の視界の実質的に全体の焦点をぼかすことを含む、請求項1に記載のレンズ構造。
【請求項9】
方法であって、
ウェアラブルヘッドアップディスプレイ(WHUD)デバイスのレンズ構造でユーザの現実世界の視界を形成する外部光を受け取ることを含み、前記レンズ構造は拡張現実(AR)ディスプレイを含む表示光学(DO)レンズ層を含み、
前記方法は、
光エンジンで生成される光を前記DOレンズ層の導波路に結合して、前記ユーザの前記現実世界の視界にオーバーレイされる1つまたは複数の仮想物体を形成することと、
前記レンズ構造の調整可能なレンズ構成要素によって、前記ユーザの前記現実世界の視界の少なくとも部分の焦点変調を選択的に調整することと、をさらに含み、
前記現実世界の視界の少なくとも部分の前記焦点変調を選択的に調整することは、前記1つまたは複数の仮想物体のうちの少なくとも1つに視覚的に近い前記現実世界の視界の部分の焦点をぼかすことを含み、
前記現実世界の視界の前記部分の焦点をぼかすことは、前記少なくとも1つの仮想物体に関連付けられたコントラスト比に基づいて前記部分の焦点をぼかすことを含む、方法。
【請求項10】
前記現実世界の視界の前記部分の焦点をぼかすことは、前記現実世界の視界の前記部分に少なくとも部分的に含まれる現実世界の物体の焦点面に基づいて、前記現実世界の視界の前記部分の焦点をぼかすことを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記焦点変調を選択的に調整することは、1つまたは複数の仮想物体が前記ARディスプレイによって提示される焦点面に基づいて、前記焦点変調を選択的に調整することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数の仮想物体が提示される前記焦点面は第1の焦点面であり、前記第1の焦点面に基づいて前記焦点変調を調整することは、現実世界の物体が前記現実世界の視界に現れる第2の焦点面に基づいて前記第1の焦点面を調整することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ARディスプレイは複数の個別のピクセルを含み、前記現実世界の視界の少なくとも部分の前記焦点変調を選択的に調整することは、前記複数の個別ピクセルのうちの1つまたは複数の個別ピクセルの各々に関連付けられた焦点変調を選択的に調整することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記現実世界の視界の少なくとも部分の前記焦点変調を選択的に調整することは、前記現実世界の視界の実質的に全体の焦点をぼかすことを含む、請求項に記載の方法。
【請求項15】
複数のレンズ層を有するレンズ構造を含むヘッドウェアラブルディスプレイ(HWD)デバイスであって、前記レンズ構造は、
拡張現実(AR)ディスプレイを含む表示光学(DO)レンズ層を含み、前記DOレンズ層は、ユーザの目に面する第1の側と、前記ユーザの前記目に反対側を向く第2の側とを有し、
前記DOレンズ層の前記第1の側に隣接して配置される1つまたは複数の目側(ES)レンズ層と、
前記DOレンズ層の第2の側に隣接して配置される1つまたは複数の世界側(WS)レンズ層と、を含み、前記1つまたは複数のWSレンズ層のうちの少なくとも1つは、前記レンズ構造を介して前記ユーザの現実世界の視界の少なくとも部分の焦点変調を選択的に調整するための調整可能なレンズ構成要素を含み、
前記ユーザの前記現実世界の視界の少なくとも部分の前記焦点変調を選択的に調整することは、前記ARディスプレイによって提示される仮想物体に視覚的に近い前記現実世界の視界の部分の焦点をぼかすことを含み、
前記現実世界の視界の前記部分の焦点をぼかすことは、前記仮想物体に関連付けられたコントラスト比に基づいて前記部分の焦点をぼかすことを含む、ヘッドウェアラブルディスプレイ(HWD)デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
光学の分野において、結合器は、2つの光源を結合する光学装置である。例えば、マイクロディスプレイから送信され、導波路(光ガイドとも呼ばれる)を介して結合器に導かれた光は、世界からの環境光と結合され、マイクロディスプレイからのコンテンツを現実世界の視界と統合することができる。光結合器は、ウェアラブルヘッドアップディスプレイ(WHUD)やヘッドマウントディスプレイ(HMD)またはニアアイディスプレイなどのヘッドアップディスプレイ(HUD)で使用され、これにより、ユーザは、HMDを通して表示されるユーザの環境に重ねてコンピュータ生成コンテンツ(例えば、テキスト、画像、ビデオコンテンツ)を見ることができるようになり、拡張現実(AR)として知られるものを作成できる。いくつかの用途では、HMDは、眼鏡フレーム内のレンズの少なくとも1つを形成する光結合器を備えた眼鏡フレームのフォームファクタで実装される。HMDを使用すると、ユーザは環境を見ながら、表示されるコンピュータ生成コンテンツを見ることができる。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、添付の図面を参照することによって、当業者にはよりよく理解され、その多くの特徴および利点が明らかになり得る。異なる図面での同じ参照符号の使用は、類似または同一の項目を示す。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】1つまたは複数の実施形態による例示的なウェアラブルディスプレイデバイスを示す図である。
図2】1つまたは複数の実施形態による例示的なウェアラブルディスプレイデバイスを示す図である。
図3】1つまたは複数の実施形態によるレンズ構造のブロック図を示す図である。
図4】1つまたは複数の実施形態による、拡張現実コンテンツをレンダリングするためのレンズ構造におけるピクセルごとの焦点変調の例を示す図である。
図5】1つまたは複数の実施形態による表示システムの動作の概要を示すブロック図を示す図である。
図6】1つまたは複数の実施形態を実装するのに適したシステムの一例を示す構成要素レベルのブロック図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
詳細な説明
ARコンテンツの提示のためのWHUDの典型的な使用には、2つのシナリオのうちの1つが含まれる。1つ目のシナリオには、鮮明に詳細なグラフィックやその他のARコンテンツの表示が含まれる。これにより、高コントラストが利用され、ユーザの目の高速調節ロックなどの低遅延動作が可能になる。調節ロックとは、レンズの焦点距離を調整するのと同様の方法で目の光学系を調整し、目からの距離が変化したり、物体がユーザの前に初めて現れたりするときに、物体の焦点を網膜上に維持することである。第2のこのようなシナリオには、現実世界の物体と相互作用する(または相互作用しているように見える)ARコンテンツの表示が含まれる。現実世界にはさまざまな焦点深度にある物体が含まれているため、このようなARコンテンツの提示には、通常、ARコンテンツの1つまたは複数の部分を優先して物体を部分的または完全に遮蔽するなど、1つまたは複数の個別の物体のハードまたはソフト遮蔽が含まれる。
【0005】
高コントラストのグラフィックコンテンツやさまざまな焦点深度を実現するためのさまざまなアプローチには、ピンライトディスプレイが含まれ、遮蔽をシミュレートできるが、透明度と鮮明さが制限され、遮蔽を目的とした光学画像を組み合わせて、通常、ディスプレイサイズの大幅な増加をもたらし、眼鏡型のフォームファクタを持つWHUDとはほとんど互換性がない、ことと、ディスプレイの明るさと性能の向上によりコントラストが向上するが、関連するデバイスの電力効率と重量効率に悪影響を及ぼす、ことと、を含む。
【0006】
本明細書で説明される実施形態は、ぼかしを行うためにWHUDシステムの世界側に1つまたは複数の調整可能なレンズ要素を組み込み、つまり、WHUDデバイスのレンズ構造を介して、ユーザの現実世界の視界の少なくとも部分の焦点変調を選択的に調整する。レンズ構造には複数のレンズ層が含まれ得、これらの各々は、ARコンテンツを提示する光学表示要素よりもユーザの目に近い(目側)、またはそれらの光学表示要素よりもユーザの目から遠い(世界側)に配置され得る。
【0007】
さまざまな実施形態において、レンズ構造に組み込まれる調整可能なレンズ要素には、非限定的な例として、摺動可変倍率レンズ、電極湿潤レンズ、流体充填レンズ、動的グラフェンベースのレンズ、および勾配屈折率液晶レンズが含まれ得る。調整可能なレンズは、球面凹レンズ、球面凸レンズ、円筒凹レンズ、円筒凸レンズ、および/またはプリズムレンズの組み合わせによって提供することもできる。特定の実施形態では、ピクセル化される調整可能なレンズ要素を(個別に、または別の調整可能なレンズ要素と組み合わせて)利用することができ、ピクセルごとに調整可能なレンズ要素の焦点変調を提供し、これにより、特定の物体の周囲に局所的なぼかしが生じ得る。このようにして、組み込まれたWHUDデバイスは、特定の現実世界の物体の遮蔽(ハードまたはソフト)をシミュレートして、ユーザに提示されているARコンテンツ内でより現実的な画像を提供することができる。さまざまな実施形態において、レンズ構造に組み込まれる調整可能なレンズ要素は、偏光または非偏光要素を含むことができ、平面または湾曲した導波路/光ガイドを含むWHUDデバイスアーキテクチャとともに利用することができる。
【0008】
調整可能なレンズを組み込み、表示動作中に調整可能なレンズの焦点変調を制御することで、WHUDデバイスの例では、目の焦点が当てられているARコンテンツ表示の詳細を維持しながら、現実世界の視界の一部またはすべての焦点をぼかす(焦点変調によってぼかしを引き起こす)ことができる。この機能はさまざまな方法で利用できる。一例として、コントラストを向上させるために、背景の現実世界の視界の焦点をぼかして視覚的な乱雑さを軽減することができる。別の例として、調整可能なレンズ要素の焦点をぼかすことによってわずかなぼかしを導入して、ユーザの目の調節ロックを支援することができる。別の例として、ARコンテンツ内に表示される物体は、迅速な調節ロックを支援するために(例えば、視線方向を感知するコンテキストセンサと組み合わせて)、現実世界の物体と同様の焦点面にシフトされてもよい。特定の実施形態では、この焦点面シフト(距離シフトとも呼ばれる)は、同時位置特定およびマッピング(SLAM)技術の態様を利用することができ、WHUDデバイスは、それ自体と複数の既知または特定される環境位置との間の空間的関係を決定することによって、世界におけるその位置を決定する。
【0009】
本明細書で説明される特定の実施形態は、ウェアラブルディスプレイデバイスの部分として光学構成要素または他の構成要素を利用することを含むが、追加の実施形態は、本明細書で説明される技術に従って、さまざまな他のタイプのデバイスを介してそのような構成要素を利用し得ることが理解されるであろう。
【0010】
図1は、さまざまな実施形態による例示的なウェアラブルディスプレイデバイス100を示す。図示の実施形態では、ウェアラブルディスプレイデバイス100は、眼鏡(例えば、サングラス)フレームの一般的な形状および外観(すなわち、フォームファクタ)を有するニアアイ表示システムである。ウェアラブルディスプレイデバイス100は、第1のアーム104、第2のアーム105、および第1のアーム104および第2のアーム105に物理的に結合される前部フレーム103を含む支持構造102を含む。ユーザが着用するとき、第1のアーム104はユーザの頭の第1の側に配置され得、一方、第2のアーム105は、ユーザの頭の第1の側とは反対側の第2の側に配置され得る。前部フレーム103はユーザの頭の前側に位置することができる。図示の実施形態では、支持構造102は、導波路を介してユーザの目に向かって画像を投影するように構成される光エンジン(例えば、レーザプロジェクタ、マイクロLEDプロジェクタ、液晶オンシリコン(LCOS)プロジェクタなど)を収容する。ユーザは、投影される画像が、ウェアラブルディスプレイデバイス100の1つまたは複数の光学表示要素を介して、レンズ構造108、110の一方または両方でディスプレイの視野(FOV)領域106内に表示されているものとして認識する。いくつかの実施形態では、光エンジンは、視線追跡などの目的で赤外光も生成する。
【0011】
支持構造102は、光エンジンや導波路など、ユーザの目に向けたそのような画像の投影を容易にするためのさまざまな構成要素を含有するか、さもなければ含む。いくつかの実施形態では、支持構造102は、1つまたは複数の前面カメラ、背面カメラ、他の光センサ、運動センサ、加速度計などのさまざまなセンサをさらに含む。いくつかの実施形態では、支持構造102は、1つもしくは複数の無線周波数(RF)インターフェース、またはBluetooth(登録商標)インターフェース、WiFiインターフェースなどの他の無線インターフェースを含む。さらに、いくつかの実施形態では、支持構造102は、ウェアラブルディスプレイデバイス100の電気構成要素に電力を供給するための1つもしくは複数のバッテリまたは他のポータブル電源をさらに含む。いくつかの実施形態では、ウェアラブルディスプレイデバイス100のこれらの構成要素の一部またはすべては、支持構造102の領域112内の第1のアーム104内など、支持構造102の内部容積内に完全にまたは部分的に含まれる。例示的なフォームファクタが示されているが、他の実施形態では、ウェアラブルディスプレイデバイス100が、図1に示される眼鏡フレームとは異なる形状および外観を有してもよいことが理解されることに留意されたい。本明細書における「または」という用語の例は、特に断りのない限り、「または」の非排他的な定義を指すことを理解されたい。例えば、本明細書で使用される「XまたはY」という語句は、「XまたはYのいずれか、または両方」を意味する。
【0012】
レンズ構造108、110の一方または両方は、拡張現実(AR)ディスプレイを提供するためにウェアラブルディスプレイデバイス100によって使用され、レンダリングされるグラフィックコンテンツは、レンズ構造108、110を通してユーザが認識する現実世界の視界に重ね合わせるか、あるいはそれと併せて提供することができる。例えば、ウェアラブルディスプレイデバイス100の投影システムは、さまざまな実施形態により、投影システムの光エンジンを介してユーザの目に光を投影することによって光を使用して認識可能な画像または一連の画像、対応するレンズ構造108または110内に少なくとも部分的に形成される導波路、および1つまたは複数の光学表示要素を形成する。いくつかの実施形態では、ウェアラブルディスプレイデバイス100は、レンズ構造108が結合器でもあるように対称的に構成され、レンズ構造108内のFOV領域に画像を投影するために、支持構造102の部分(例えば、アーム105内または前部フレーム103内)のレンズ構造108に近接して収容される光エンジンを備える。レンズ構造108、110のいずれかまたは両方は、ユーザの目に伝達される光の処方補正を組み合わせて提供する曲率を有する目側表面および世界側表面で構成することができる。
【0013】
さまざまな実施形態において、ウェアラブルディスプレイデバイス100の光学表示要素は、少なくとも以下を含むグループから選択される光学構成要素の1つまたは複数のインスタンスを含み、導波路(本明細書で使用する場合、光ガイドと導波路の両方を含み、包含する参照)、ホログラフィック光学要素、プリズム、回折格子、光反射板、光反射アレイ、光屈折器、光屈折アレイ、コリメーションレンズ、走査ミラー、光リレー、または、ARコンテンツを光エンジンからユーザの目に向けて方向転換するように配置および配向される、特定のアプリケーションに適したその他の光方向転換技術。さらに、レンズ構造108、110および光学表示要素の一部またはすべては、個別におよび/または集合的に、1つまたは複数の構造が形成され得る光学基板を備え得る。例えば、光学表示要素は、レンズ構造108、110の光学基板材料内に形成されるさまざまな光学格子(インカプラ格子、アウトカプラ格子、または中間格子として)を含んでもよい。
【0014】
レンズ構造108、110の一方または両方は、導波路のインカプラによって受け取られた表示光を導波路のアウトカプラに送る導波路の少なくとも部分を含み、ウェアラブルディスプレイデバイス100のユーザの目に向けて表示光を出力する。表示光は変調され、ユーザの目に投影されるため、ユーザは表示光を画像として認識する。さらに、レンズ構造108、110の各々は、ユーザがレンズ構造を通して見ることができ、ユーザの現実世界環境の視野を提供できるほど十分に透明であり、画像が現実世界の環境の少なくとも部分に重ねて表示されるようにする。
【0015】
レンズ構造108、110の各々は、複数のレンズ層を含み、各々は、ARコンテンツを提示するために使用されるレンズ構造の1つまたは複数の光学表示要素に関して、ユーザの目に近いかまたは離れて配置され得る(それぞれ、目側または世界側)。レンズ層は、例えば、成形またはキャストすることができ、薄膜またはコーティングを含むことができ、本明細書に記載されるように、光リダイレクタを搭載または支持するように機能する材料を指し得る、1つまたは複数の透明な担体を含むことができる。一例として、透明な担体は、眼鏡のレンズまたはレンズアセンブリであってもよい。さらに、特定の実施形態では、1つまたは複数のレンズ層をコンタクトレンズとして実装することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、ウェアラブルディスプレイデバイス100の投影システムの光エンジンは、デジタル光処理ベースのプロジェクタ、走査型レーザプロジェクタ、または変調光源の任意の組み合わせであり、例えば、レーザや1つまたは複数の発光ダイオード(LED)など、および1つまたは複数の動的スキャナなどの動的リフレクタ機構、反射パネル、デジタルライトプロセッサ(DLP)などである。いくつかの実施形態では、光エンジンはマイクロ表示パネルを含み、例えば、マイクロLED表示パネル(例えば、マイクロAMOLED表示パネル、またはマイクロ無機LED(i-LED)表示パネル)またはマイクロ液晶ディスプレイ(LCD)表示パネル(例えば、低温ポリシリコン(LTPS)LCD表示パネル、高温ポリシリコン(HTPS)LCD表示パネル、または面内スイッチング(IPS)LCD表示パネル)である。いくつかの実施形態では、光エンジンは、液晶オンシリコン(LCOS)表示パネルを含む。いくつかの実施形態では、光エンジンの表示パネルは、光(表示用の画像または画像の部分を表す)を表示システムの導波路に出力するように構成されている。導波路は光を拡大し、アウトカプラを介してユーザの目に向かって光を出力する。
【0017】
光エンジンは、コントローラと、プロセッサが実行可能な命令および他のデータを記憶する非一時的なプロセッサ可読記憶媒体またはメモリに通信可能に結合されており、コントローラによって実行されると、コントローラに光エンジンの動作を制御させる。いくつかの実施形態では、コントローラは光エンジンを制御して、FOV領域106の位置およびサイズを選択的に設定する。いくつかの実施形態では、コントローラは、ウェアラブルディスプレイデバイス100に表示されるコンテンツを生成する1つまたは複数のプロセッサ(図示せず)に通信可能に結合される。光エンジンは、導波路を介してウェアラブルディスプレイデバイス100のFOV領域106に向けて光を出力する。いくつかの実施形態では、導波路のアウトカプラの少なくとも部分は、FOV領域106と重なる。
【0018】
図2は、いくつかの実施形態によるウェアラブルディスプレイデバイス200の図を示す。いくつかの実施形態では、ウェアラブルディスプレイデバイス200は、ウェアラブルディスプレイデバイス100の態様を実装してもよく、またはウェアラブルディスプレイデバイス100の態様によって実装されてもよい。例えば、ウェアラブルディスプレイデバイス200は、第1のアーム210、第2のアーム220、および前部フレーム230を含むことができる。第1のアーム210は、第1のアーム210が前部フレーム230に対して回転できるようにするヒンジ219によって前部フレーム230に結合され得る。第2のアーム220は、ヒンジ229によって前部フレーム230に結合され得、これにより、第2のアーム220が前部フレーム230に対して回転することが可能になる。
【0019】
図2の例では、ウェアラブルディスプレイデバイス200は、第1のアーム210と第2のアーム220が回転する展開構成であってもよく、そのためウェアラブルディスプレイデバイス200がユーザの頭に装着でき、第1のアーム210がユーザの頭の第1の側に位置し、第2のアーム220がユーザの頭の第1の側の反対側の第2の側に位置し、前部フレーム230は、ユーザの頭の前部に位置する。第1のアーム210および第2のアーム220の両方が前部フレーム230とほぼ平行になるまで、第1のアーム210および第2のアーム220を前部フレーム230に向かって回転させることができ、したがって、ウェアラブルディスプレイデバイス200は、長方形、円筒形、または楕円形のケースに便利に収まるコンパクトな形状であってもよい。あるいは、ウェアラブルディスプレイデバイス200が折り畳まれ得ないように、第1のアーム210および第2のアーム220が前部フレーム230に固定的に取り付けられてもよい。
【0020】
図2において、第1のアーム210は光エンジン211を搭載している。第2のアーム220は、電源221を搭載する。前部フレーム230は、入力結合光リダイレクタ231、出力結合光リダイレクタ233、および少なくとも1セットの導電性電流経路を含む表示光学系235を搭載し、これらは、電源221と、第1のアーム210によって搭載される電気構成要素(光エンジン211など)との間の電気的接続を提供する。このような電気的結合は、電源回路などを介して間接的に提供することもできるし、電源221から第1のアーム210の各電気構成要素に直接提供することもできる。本明細書で使用される場合、「搭載する(carry)」、「搭載する(carries)」、または同様の用語は、ある構成要素が別の構成要素を物理的に支持することを必ずしも指示するものではない。例えば、第1のアーム210が光エンジン211を搭載していると上で述べた。これは、第1のアーム210が光エンジン211を物理的に支持するように、光エンジン211が第1のアーム210に、または第1のアーム210内に取り付けられることを意味し得る。しかし、第1のアーム210が必ずしも光エンジン211を物理的に支持しているわけではない場合でも、直接的または間接的な結合関係を記述することもできる。
【0021】
光エンジン211は、ユーザが見るARコンテンツまたは他の表示コンテンツを表す表示光290を出力することができる。表示光290は、ユーザがARコンテンツを見ることができるように、表示光学系235によってユーザの目291に向けて方向転換することができる。光エンジン211からの表示光290は、入力結合光リダイレクタ231に衝突し、表示光学系235の容積内を進むように方向転換され、表示光290は、全内部反射またはホログラムや反射コーティングなどの光ガイド表面処理などによって、光ガイドを通して導かれる。続いて、表示光学系235の容積内を進む表示光290は、出力結合光リダイレクタ233に衝突し、出力結合光リダイレクタ233は表示光290を光ガイドリダイレクタからユーザの目291に向けて方向転換する。
【0022】
ウェアラブルディスプレイデバイス200は、光エンジン211を含むがこれに限定されない、ウェアラブルディスプレイデバイス200内の電気構成要素の各々に通信可能に結合されるプロセッサ(図示せず)を含んでもよい。プロセッサは、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、マルチコアプロセッサ、集積回路、ASIC、FPGA、プログラム可能なロジックデバイス、またはこれらの構成要素の任意の適切な組み合わせを含むがこれらに限定されない、命令またはロジックを実行できる任意の適切な構成要素であり得る。ウェアラブルディスプレイデバイス200は、プロセッサ可読命令を記憶することができる非一時的なプロセッサ可読記憶媒体を含むことができ、プロセッサによって実行されると、プロセッサは任意の数の機能を実行でき、光エンジン211に、ユーザが見る表示コンテンツを表す表示光290を出力させることと、ユーザ入力を受け取ることと、ユーザインターフェースを管理することと、ユーザに提示する表示コンテンツを生成することと、ウェアラブルディスプレイデバイス200が搭載する任意のセンサからデータを受信し、管理すること、外部データとメッセージを受信および処理することと、および特定のアプリケーションに適切なその他の機能と、を含む。非一時的なプロセッサ可読記憶媒体は、任意の適切な構成要素にすることができ、命令、ロジック、またはプログラムを記憶でき、これには、不揮発性もしくは揮発性メモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、レジスタ、磁気ハードディスク、光ディスク、またはこれらの構成要素の任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
図3は、1つまたは複数の実施形態によるレンズ構造300のブロック図を示す。レンズ構造300は、例えば、図1のウェアラブルディスプレイデバイス100および/または図2のウェアラブルディスプレイデバイス200の部分として使用するための単一の「レンズ」として使用され得る。
【0024】
レンズ構造(例えば、レンズ構造300)の各特定のレンズ層は、レンズ構造全体に含まれる任意の表示光学系に対する相対位置に応じて、世界側(WS)または目側(ES)のいずれかと呼ばれることがある。本明細書に記載される1つまたは複数の実施形態によるレンズ構造のAR実装は、一般に、世界側光学系の1つまたは複数のレンズ層、その後に表示光学系(DO)、その後に目側光学系の1つまたは複数のレンズ層として表され得る。WS層はDO層のユーザの視界の向こうに配置されるため、表示光学系を介して伝えられるARコンテンツのユーザの認識に影響を与えるのはES層のみである。
【0025】
本明細書で使用される表示光学系は、一般に、通常は眼鏡などのウェアラブルディスプレイアセンブリを介して、ARコンテンツをユーザの視野に導入するために使用される1つまたは複数の提示要素を指す。特定の実施形態では、例えば、ディスプレイアセンブリのレンズ構造(本明細書ではレンズ「スタック」またはレンズディスプレイスタックとも呼ばれる)は、ARコンテンツまたは他の表示コンテンツを提示するためのヘッドアップディスプレイ(HUD)を生成するために、そのようなレンズ層の間に配置される1つまたは複数の表示光学系(例えば、1つまたは複数の光リダイレクタ要素)を備えた複数のレンズ層を含んでもよい。
【0026】
図示の実施形態では、レンズ構造300は、表示光学(DO)層315を含む。レンズ構造300は、DO層とユーザの目360との間に配置されていることを示すDO層315の「目側」に配置される3つのレンズ層(それぞれ320、325、および330)と、それらがDO層と現実世界350(ユーザによって見られ、ディスプレイアセンブリの向こうに物理的に存在する物理世界)との間に配置されていることを示すDO層の「世界側」に配置される2つのレンズ層(それぞれ305および310)と、をさらに含む。レンズ構造の使用中、現実世界350のユーザの視界は、レンズ構造300の各レンズ層の光指向構成要素を通してフィルタリングされる。上述したように、DO層315を介して提示されるARコンテンツに対するユーザの認識は、目の側の層(レンズ層305および310)によってのみ影響を受け、一方、現実世界350に対するユーザの認識は、目側層と世界側層(レンズ層305および310)の両方の影響を受ける。
【0027】
特定の実施形態では、調整可能なレンズ層310は、ピクセル化される調整可能なレンズ要素(ピクセルアドレス指定可能な液晶レンズなど)であってもよく、これにより、調整可能なレンズ層310の個々のアドレス指定可能な部分を選択的に制御して、異なる量の光パワーを提供することができる。したがって、特定のシナリオでは、調整可能なレンズ層310を使用して、ユーザの現実世界の視界の部分のみの焦点変調を選択的に調整することができ、組み込みのWHUDデバイスによって表示されるARコンテンツに含まれる仮想物体に視覚的に近い現実世界の視界の部分をぼかすなどを行う。例えば、現実世界の視界の部分は、比較的高いコントラスト比を持つテキストまたはその他のコンテンツでユーザの目が調節ロックを達成できるようにするために、仮想物体に関連付けられたコントラスト比に基づいてわずかにぼかす場合がある。別の例として、現実世界の視界の部分は、その部分に少なくとも部分的に含まれる現実世界の物体の焦点面に基づいて選択的にぼかすことができる。このようにして、現実世界の物体は、ユーザの現実世界の視界上にオーバーレイされる1つまたは複数の仮想物体を優先して、部分的または完全に遮蔽されてもよい。
【0028】
表示シフト(DS)は、このようにして導入されるARコンテンツのユーザが認識する表示距離に影響を与えるために、そのようなレンズ構造に組み込まれた認識されるシフトである。表示シフトがない場合、ARコンテンツは通常、無限遠、つまり夜空を見たときに星がどのように見えるかのように、ユーザから相対的に無限の距離にあるように認識される。表示シフトが追加されると、ARコンテンツはユーザから有限の距離にあるように認識される。通常、このような表示シフトは、現実世界内の物体の認識距離ではなく、ARコンテンツの認識距離にのみ影響する。
【0029】
1つの説明的な例として、ARコンテンツがユーザから無限の距離にあるように見えるのではなく、ユーザの視界内にユーザから2メートルの距離にあるかのように配置されることが望ましいとする。そうするために、-0.5ジオプター度数の目側表示シフト(ESS)を使用できる(ジオプターは、メートル単位の焦点距離の逆数に等しい屈折力の単位である)。しかし、その-0.5ジオプターの度数により、ユーザはユーザの眼鏡の向こうに現実世界をぼかして認識することになる。したがって、+0.5ジオプター度数の光学的に反対の世界側表示シフト(WSS)を使用してESSに対抗し、現実世界に対するユーザの焦点に影響を与えることなく、認識距離2mにARコンテンツを配置することができる。
【0030】
図示の実施形態では、レンズ構造300の世界側光学系は、調整可能なレンズ層310を含む。特定のシナリオでは、調整可能なレンズ層310は、レンズ構造300の他の層によって提供される距離シフトの静的な量を選択的に補うことができる、追加の選択可能な量の光パワー(例えば、-1から+2ジオプターの光パワー)と同等の焦点変調を提供することができる。例えば、DO層315を介して提供されるARコンテンツは、目側DS層320と組み合わせた世界側DS層305を介して、ユーザの目360から約2m離れたユーザが認識する焦点面まで静的に距離シフトされ得る。しかし、調整可能なレンズ層310を作動させることによって、組み込まれたWHUDデバイスは、ARコンテンツがユーザによって認識される表示距離を調整することを動的に選択することができる。
【0031】
このような実施形態では、組み込まれたWHUDデバイスは、複数の仮想物体の各々がユーザに提示される焦点面を能動的に制御することができ、このような焦点面は、レンズ構造300の他の層によって提供される距離シフトの静的量から制御可能な量だけずれている。このようにして、現実世界の物体が現れる焦点面と実質的に一致するように、仮想物体の焦点面を調整することができ、仮想物体と現実世界の物体(またはその変更)との相互作用を認識できるようにする。さらに、特定の実施形態は、追加の調整可能なレンズ層を利用することができ(例えば、目側レンズ層325に調整可能なレンズ構成要素を使用することによって)、ARコンテンツの一部またはすべての認識される表示距離に対するより優れた制御を可能にする。
【0032】
さまざまな実施形態において、レンズ構造300は、世界側および目側のレンズ層の他の配置を組み込んでもよいことが理解されるであろう。例えば、レンズ構造300は、レンズ構造300の全体にわたって選択可能な量の焦点変調を適用するために、第1のアドレス指定不可能な調整可能なレンズ層を組み込んでもよく(その結果、ユーザに提示される現実世界の視界全体に影響を与える)、さらに、第2のアドレス指定可能な調整可能なレンズ層を組み込んで、現実世界の視界の1つまたは複数の選択される部分にわたって可変量の焦点変調を適用できる。
【0033】
図4は、1つまたは複数の実施形態による、ARコンテンツをレンダリングするためのレンズ構造407におけるピクセルごとの焦点変調の例を示す。図示の実施形態では、眼鏡搭載表示システム401は、フレーム405と、走査方向変更システム(例えば、1つまたは複数の走査ミラー)415に結合される光エンジン410とを含む。
【0034】
図示の実施形態では、レンズ構造407は、1つまたは複数のぼかし構成を実現するためにピクセルごとの焦点変調を実装できる調整可能なレンズ層(個別には示されていない)を含み、表示システム401を介してユーザによって見られる現実世界の一部またはすべてをぼかすようにする。図示の実施形態では、写真ARコンテンツ420の部分は、比較的低いコントラスト比を有するものとして表示システム401によって特定される。対照的に、テキストARコンテンツ425の部分は、比較的高いコントラスト比を有するものとして表示システム401によって特定される。
【0035】
ARコンテンツ425の比較的高いコントラスト比に少なくとも部分的に基づいて、表示システム401は、調整可能なレンズ層を介して焦点変調を適用して、ARコンテンツ425に近い周囲領域430内のピクセルをぼかすことを決定する。特定の実施形態およびシナリオでは、表示システム401によって適用される焦点変調は、ARコンテンツ425に関連付けられた定義されるぼかし構成を含む。例えば、表示システム401は、受信したARコンテンツのコントラスト比に基づいて、表示されるARコンテンツがテキストまたは何らかの他の特定されるタイプのコンテンツなどに基づいて、焦点変調を介して適用する適切な定義されるぼかし構成を決定することができる。特定の実施形態では、表示システムは、表示のために受信したARコンテンツの部分を評価するときに表示システム401によって使用されるさまざまな基準に関連付けられた1つまたは複数の事前定義されるぼかし構成を記憶し得る。
【0036】
特定のシナリオでは、表示システム401は、レンズ構造407を介してユーザに見える現実世界の視界の他の部分に対応する焦点変調を選択的に調整することを決定してもよい。例えば、車両440の1つまたは複数の部分は、レンズ構造407によって提示される1つまたは複数の仮想物体を優先して、部分的または完全に遮蔽されてもよく、例えば、あたかもその仮想キャラクタが車両440に乗っているかのように、仮想キャラクタまたは他の仮想物体をユーザに提示する。別の例として、支援マッピングアプリケーションは、表示システム401を利用して、建物の入り口450の一部または全体を選択的にぼかす(したがって、部分的または完全に遮蔽する)ことができ、例えば、建物の入り口450に仮想構成要素(例えば、ネオンサインまたは他の視覚的に魅力的な構成要素)をオーバーレイすることによって、建物の入り口を強調するか、さもなければ建物の入り口に注意を引くようにする。
【0037】
図5は、1つまたは複数の実施形態によるプロセッサベースの表示システムの動作ルーチン500の概要を示すブロック図である。このルーチンは、例えば、図1のウェアラブルディスプレイデバイス100の実施形態によって、図7のシステム700の1つもしくは複数の構成要素によって、または何らかの他の実施形態によって実行され得る。
【0038】
ルーチンはブロック505で始まり、プロセッサベースの表示システムは、プロセッサベースの表示システムのレンズ構造でユーザの現実世界の視界を形成する外部光を受け取る(例えば、図1のレンズ構造110、図3のレンズ構造300、図4のレンズ構造407、図6のレンズ構造612など)。ルーチンはブロック510に進む。
【0039】
ブロック510で、プロセッサベースの表示システムは、表示用のARコンテンツを受信する。本明細書の他の箇所で説明するように、そのようなARコンテンツは、ユーザに対して1つまたは複数の焦点距離(焦点面)で表示するための1つまたは複数の仮想物体を含むことができる。ルーチンはブロック515に進む。
【0040】
ブロック515で、プロセッサベースの表示システムは、ブロック505で受け取った外部光によって形成される現実世界の視界の少なくとも部分の焦点変調を選択的に調整する。本明細書の他の箇所で説明するように、さまざまなシナリオおよび実施形態において、焦点変調はプロセッサベースの表示システムによって選択的に調整され、表示される1つもしくは複数の仮想物体に関連付けられたコントラスト比、1つもしくは複数の現実世界の物体の焦点面もしくは他の特性、または他の基準に少なくとも部分的に基づくことができる。ルーチンはブロック520に進む。
【0041】
ブロック520で、プロセッサベースの表示システムは、受信したARコンテンツをユーザに提示するために、レンズ構造の表示光学層を介して光エンジンの出力を提供し、例えば、プロセッサベースの表示システムに組み込まれる、および/または通信可能に結合される光エンジン(例えば、図2の光エンジン211または図4の光エンジン410)を介する。
【0042】
図6は、1つまたは複数の実施形態を実装するのに適したシステム600の一例を示す構成要素レベルのブロック図である。代替実施形態では、システム600は、スタンドアロンデバイスとして動作してもよいし、他のシステムに接続(例えば、ネットワーク化)されてもよい。さまざまな実施形態において、システム600の1つまたは複数の構成要素は、さまざまなタイプのグラフィックコンテンツおよび/またはテキストコンテンツを提供するために、ヘッドウェアラブルディスプレイまたは他のウェアラブルディスプレイ内に組み込まれてもよい。関連するHWDデバイスは、システム600のいくつかの構成要素を含むことができるが、必ずしもそれらのすべてを含む必要はないことが理解されるであろう。ネットワーク化される展開では、システム600は、サーバクライアントネットワーク環境においてサーバマシン、クライアントマシン、またはその両方の能力で動作することができる。一例では、システム600は、ピアツーピア(P2P)(または他の分散型)ネットワーク環境においてピアシステムとして機能することができる。システム600はパーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、Webアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチもしくはブリッジ、または、そのシステムが実行するアクションを指定する命令(順次またはその他)を実行できるシステムであってもよい。さらに、単一のシステムのみが示されているが、「システム」という用語は、本明細書で説明する方法論の1つまたは複数を実行するために、セットの命令(または複数のセット)を個別にまたは共同で実行するシステムの集合を含むものとも解釈され、クラウドコンピューティング、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、その他のコンピュータクラスタ構成などである。
【0043】
本明細書で説明される例は、ロジックまたは多数の構成要素または機構を含むことができ、またはそれらによって動作することができる。回路は、ハードウェア(例えば、単純な回路、ゲート、ロジックなど)を含む有形のエンティティに実装される回路の集合である。回路のメンバーシップは、時間の経過や基礎となるハードウェアの変動に応じて柔軟になる場合がある。回路には、動作時に単独または組み合わせて指定される動作を実行できる部材が含まれる。一例では、回路のハードウェアは、特定の動作を実行するように不変に設計され得る(例えば、ハードワイヤード)。一例では、回路のハードウェアは、可変的に接続される物理構成要素(例えば、実行装置、トランジスタ、単純な回路など)を含むことができ、物理的に変更されるコンピュータ可読媒体(例えば、磁気的、電気的、不変の大容量粒子の移動可能な配置など)を含み、特定の動作の命令を符号化する。物理構成要素を接続すると、ハードウェア構成要素の基礎となる電気的特性が、例えば絶縁体から導体に、またはその逆に変更される。この命令により、組み込みハードウェア(例えば、実行装置やローディング機構など)が可変接続を介してハードウェア内に回路の部材を作成し、動作時に特定の動作の部分を実行できるようになる。したがって、コンピュータ可読媒体は、デバイスが動作しているとき、回路の他の構成要素に通信可能に結合される。一例では、物理構成要素のいずれも、複数の回路の複数の要素で使用され得る。例えば、動作中、実行装置は、ある時点では第1の回路の第1の回路で使用され、第1の回路の第2の回路によって、または別の時点で第2の回路の第3の回路によって再利用され得る。
【0044】
システム600(例えば、モバイルまたは固定コンピューティングシステム)は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ602(例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)、ハードウェアプロセッサコア、またはそれらの任意の組み合わせ)、メインメモリ604、および静的メモリ606を含み得、それらの一部またはすべては、インターリンク(例えば、バス)608を介して互いに通信することができる。システム600は、焦点変調コントローラ611および1つまたは複数のレンズ構造612を備えるディスプレイデバイス610(光エンジンなど)、英数字入力デバイス613(例えば、キーボードまたは他の物理的もしくはタッチベースのアクチュエータ)、およびユーザインターフェース(UI)ナビゲーションデバイス614(例えば、マウスまたはタッチベースのインターフェースなどの他のポインティングデバイス)をさらに含むことができる。一例では、表示装置610、入力デバイス613、およびUIナビゲーションデバイス614は、タッチスクリーンディスプレイを備え得る。システム600は、記憶デバイス(例えば、ドライブ装置)616、信号生成デバイス618(例えば、スピーカ)、ネットワークインターフェースデバイス620、および全地球測位システム(GPS)センサ、コンパス、加速度計、または他のセンサなどの1つまたは複数のセンサ621をさらに含むことができる。システム600は、出力コントローラ628を含むことができ、例えば、1つまたは複数の周辺機器(例えば、プリンタ、カードリーダなど)を通信または制御するためのシリアル(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、パラレル、または他の有線もしくは無線(例えば、赤外線(IR)、近距離無線通信(NFC)など)接続などである。
【0045】
記憶デバイス616は、本明細書に記載される技術もしくは機能のいずれか1つもしくは複数を具体化する、またはそれによって利用される1つもしくは複数のセットのデータ構造もしくは命令624(例えば、ソフトウェア)が記憶されるコンピュータ可読媒体622を含んでもよい。命令624は、システム600による実行中に、完全にまたは少なくとも部分的に、メインメモリ604内、静的メモリ606内、またはハードウェアプロセッサ602内に載置することもできる。一例では、ハードウェアプロセッサ602、メインメモリ604、静的メモリ606、または記憶デバイス616の1つまたは任意の組み合わせが、コンピュータ可読媒体を構成することができる。
【0046】
コンピュータ可読媒体622は単一の媒体として示されているが、「コンピュータ可読媒体」という用語は、1つまたは複数の命令624を記憶するように構成される単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型もしくは分散型データベース、および/または関連するキャッシュおよびサーバ)を含み得る。
【0047】
「コンピュータ可読媒体」という用語には、あらゆる媒体が含まれ、システム600による実行のための命令を記憶、符号化、もしくは搬送することができ、システム600に本開示の技術のいずれか1つもしくは複数を実行させ、または、そのような命令によって使用される、もしくはそのような命令に関連するデータ構造を記憶、符号化、もしくは搬送できる。コンピュータ可読媒体の非限定的な例としては、固体メモリ、光媒体および磁気媒体が挙げられる。一例では、大容量コンピュータ可読媒体は、不変の(例えば、静止)大容量を有する複数の粒子を有するコンピュータ可読媒体を含む。したがって、大容量コンピュータ可読媒体は、一時的な伝播信号ではない。大容量コンピュータ可読媒体の具体例には、不揮発性メモリ、例えば、半導体メモリデバイス(例えば、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM))およびフラッシュメモリデバイス、内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含み得る。
【0048】
命令624はさらに、ネットワークインターフェースデバイス620を介して伝送媒体を使用して、通信ネットワーク626を介して送信または受信されてもよく、多数の転送プロトコル(例えば、フレームリレー、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)など)のいずれかを利用する。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、パケットデータネットワーク(例えば、インターネット)、携帯電話ネットワーク(例えば、携帯電話ネットワーク)、Plain Old Telephone(POTS)ネットワーク、無線データネットワーク(例えば、Wi-Fi(登録商標)として知られる電気電子学会(IEEE)802.11規格ファミリー、WiMax(登録商標)として知られるIEEE802.16規格ファミリー)、IEEE802.15.4規格ファミリー、ピアツーピア(P2P)ネットワークなどを含み得る。一例では、ネットワークインターフェースデバイス620は、通信ネットワーク626に接続するための1つもしくは複数の物理ジャック(例えば、イーサネット、同軸、または電話ジャック)または1つもしくは複数のアンテナを含んでもよい。一例では、ネットワークインターフェースデバイス620は、単一入力複数出力(SIMO)、複数入力複数出力(MIMO)、または複数入力単一出力(MISO)技術のうちの少なくとも1つを使用して無線通信するための複数のアンテナを含み得る。「伝送媒体」という用語は、システム600による実行のための命令を記憶、符号化、または搬送することができる任意の無形媒体を含むものと解釈され、デジタルもしくはアナログ通信信号、またはそのようなソフトウェアの通信を容易にする他の無形媒体を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、上述の技術の特定の態様は、ソフトウェアを実行する処理システムの1つまたは複数のプロセッサによって実装され得る。ソフトウェアは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上に記憶されるか、そうでなければ有形に具現化される、1つまたは複数の実行可能命令セットを備える。ソフトウェアは、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のプロセッサを操作して、上述の技術の1つまたは複数の態様を実行する命令および特定のデータを含むことができる。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体には、例えば、磁気もしくは光ディスク記憶デバイス、フラッシュメモリなどの固体記憶デバイス、キャッシュ、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の不揮発性記憶デバイスなどが含まれ得る。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶される実行可能命令は、ソースコード、アセンブリ言語コード、物体コード、または1つもしくは複数のプロセッサによって解釈または実行可能な他の命令フォーマットであってもよい。
【0050】
コンピュータ可読記憶媒体には、使用中にコンピュータシステムにアクセスして命令および/もしくはデータをコンピュータシステムに提供する任意の記憶媒体、または記憶媒体の組み合わせが含まれ得る。このような記憶媒体には、光メディア(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイディスク)、磁気メディア(例えば、フロッピーディスク、磁気テープ、または磁気ハードドライブ)、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)またはキャッシュ)、不揮発性メモリ(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)またはフラッシュメモリ)、または微小電気機械システム(MEMS)ベースの記憶媒体が含まれ得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピューティングシステム(例えば、システムRAMまたはROM)に埋め込まれ、コンピューティングシステムに固定的に接続され(例えば、磁気ハードドライブ)、コンピューティングシステムに取り外し可能に取り付けられ(例えば、光ディスクやユニバーサルシリアルバス(USB)ベースのフラッシュメモリ)、または、有線もしくは無線ネットワーク(例えば、ネットワークアクセス可能記憶装置(NAS)など)を介してコンピュータシステムに接続されていてもよい。
【0051】
上記の一般的な説明で説明したアクティビティや要素のすべてが必要なわけではなく、特定のアクティビティやデバイスの部分が必要ない可能性があること、記載されているものに加えて、1つまたは複数のさらなるアクティビティが実行されるか、要素が含まれる可能性があることことに留意されたい。さらに、アクティビティがリストされている順序は、必ずしも実行される順序ではない。また、概念は、特定の実施形態を参照して説明される。しかし、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示としてみなされるべきであり、そのような修正はすべて本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0052】
利益、他の利点、および問題の解決策は、特定の実施形態に関して上で説明される。しかし、利益、利点、問題の解決策、および利益、利点、または解決策が発生する、またはより顕著になる可能性がある特徴は、請求項の一部またはすべての重要な、必要な、または必須の特徴として解釈されるべきではない。さらに、上に開示した特定の実施形態は単なる例示であり、開示の主題は、本明細書の教示の恩恵を受ける当業者にとって明白な、異なるが同等の方法で変更および実施することができるためである。以下の特許請求の範囲に記載されているものを除き、本明細書に示される構造または設計の詳細に対して制限を意図するものではない。したがって、上で開示した特定の実施形態が変更または修正され得ることは明らかであり、そのような変形はすべて、開示される主題の範囲内にあるとみなされる。したがって、本明細書で求められる保護は、以下の特許請求の範囲に記載されているとおりである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6