(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】人形玩具、および、玩具部品
(51)【国際特許分類】
A63H 3/46 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
A63H3/46 B
(21)【出願番号】P 2025019160
(22)【出願日】2025-02-07
【審査請求日】2025-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507221416
【氏名又は名称】株式会社グッドスマイルカンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】525046910
【氏名又は名称】浅井 真樹
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真樹
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-132857(JP,A)
【文献】国際公開第2011/036941(WO,A1)
【文献】特開2023-132858(JP,A)
【文献】特開2000-093662(JP,A)
【文献】特開2023-086012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 3/36
A63H 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部関節部と、
前記内部関節部の外側に配置された外部部品と、を備える人形玩具であって、
前記内部関節部は、
前記人形玩具の腹部および腰部を含む下胴部の内部に位置する支持部と、
前記支持部に回転可能に組み付けられた第1ジョイントと、
前記第1ジョイントに回転可能に組み付けられた第2ジョイントと、を備え、
前記第1ジョイントは第1の面に沿って回転可能であり、前記第2ジョイントは前記第1の面と同一の向きの第2の面に沿って回転可能であり、
前記外部部品は、前記第2ジョイントに回転可能に組み付けられた外構造部であって、前記人形玩具の大腿部に繋がる前記外構造部を含む
人形玩具。
【請求項2】
内部関節部と、
前記内部関節部の外側に配置された外部部品と、を備える人形玩具であって、
前記内部関節部は、
前記人形玩具の腹部および腰部を含む下胴部の内部に位置する支持部と、
前記支持部に回転可能に組み付けられた第1ジョイントと、
前記第1ジョイントに回転可能に組み付けられた第2ジョイントと、を備え、
前記外部部品は、前記第2ジョイントに回転可能に組み付けられた外構造部であっ
て前記人形玩具の大腿部に繋がる前記外構造部
と、前記人形玩具の腹部を構成する外構造部とを含
み、
前記支持部と前記第1ジョイントとの接続部分において、前記第1ジョイントは、前記支持部と前記腹部を構成する前記外構造部との間に挟まれる
人形玩具。
【請求項3】
内部関節部と、
前記内部関節部の外側に配置された外部部品と、を備える人形玩具であって、
前記内部関節部は、
前記人形玩具の腹部および腰部を含む下胴部の内部に位置する
第1支持部と、
前記
第1支持部に回転可能に組み付けられた第1ジョイントと、
前記第1ジョイントに回転可能に組み付けられた第2ジョイントと、
前記第1ジョイントおよび前記第2ジョイントの上方において前記人形玩具の前記下胴部の内部に位置する第2支持部と、
前記人形玩具の胸部が組み付けられる第3ジョイントと、を備え、
前記外部部品は、前記第2ジョイントに回転可能に組み付けられた外構造部であって、前記人形玩具の大腿部に繋がる前記外構造部を含
み、
前記第3ジョイントは、
前記胸部に接続される胸連結部と、
前記胸連結部を支持して下方に延びる延設支持部と、を備え、
前記延設支持部は、上下方向に移動可能に前記第2支持部に組み付けられている
人形玩具。
【請求項4】
前記外構造部は、第3外構造部であって、
前記外部部品は、前記人形玩具の腹部を構成する第1外構造部と、前記人形玩具の腰部を構成する第2外構造部と、前記第3外構造部とを含み、
前記第2外構造部は、前後方向への傾きが可変に前記第1外構造部に組み付けられている
請求項1に記載の人形玩具。
【請求項5】
前記第1ジョイントと前記第2ジョイントとは、前記第1ジョイントに対する前記第2ジョイントの回転角度を所定範囲に規制する回転規制構造を備えている
請求項1に記載の人形玩具。
【請求項6】
前記支持部と、前記第1ジョイントおよび前記第2ジョイントの少なくとも一方とは、前記支持部に対する前記第1ジョイントの回転角度を所定角度で留める角度保持構造を備えている
請求項1に記載の人形玩具。
【請求項7】
前記第1ジョイントと前記第2ジョイントとの接続部分において、前記第2ジョイントは、前記第1ジョイントに対して前記支持部の位置する側に配置されている
請求項1に記載の人形玩具。
【請求項8】
内部関節部と、前記内部関節部の外側に配置される外部部品とを備える人形玩具を組み立て可能に構成された玩具部品であって、
前記内部関節部は、
前記人形玩具の腹部および腰部を含む下胴部の内部に配置される支持部と、
前記支持部に回転可能に組み付けられる第1ジョイントと、
前記第1ジョイントに回転可能に組み付けられる第2ジョイントと、を含み
、
前記第1ジョイントは第1の面に沿って回転可能に前記支持部に組み付けられ、前記第2ジョイントは前記第1の面と同一の向きの第2の面に沿って回転可能に前記第1ジョイントに組み付けられ、
前記外部部品は、前記第2ジョイントに回転可能に組み付けられる外構造部であって、前記人形玩具の大腿部に繋がる前記外構造部を含む
玩具部品。
【請求項9】
内部関節部と、前記内部関節部の外側に配置される外部部品とを備える人形玩具を組み立て可能に構成された玩具部品であって、
前記内部関節部は、
前記人形玩具の腹部および腰部を含む下胴部の内部に配置される支持部と、
前記支持部に回転可能に組み付けられる第1ジョイントと、
前記第1ジョイントに回転可能に組み付けられる第2ジョイントと、を含み
前記外部部品は、前記第2ジョイントに回転可能に組み付けられる外構造部であっ
て前記人形玩具の大腿部に繋がる前記外構造部
と、前記人形玩具の腹部を構成する外構造部とを含
み、
前記支持部と前記第1ジョイントとの接続部分において、前記第1ジョイントは、前記支持部と前記腹部を構成する前記外構造部との間に挟まれるように組み付けられる
玩具部品。
【請求項10】
内部関節部と、前記内部関節部の外側に配置される外部部品とを備える人形玩具を組み立て可能に構成された玩具部品であって、
前記内部関節部は、
前記人形玩具の腹部および腰部を含む下胴部の内部に配置される
第1支持部と、
前記
第1支持部に回転可能に組み付けられる第1ジョイントと、
前記第1ジョイントに回転可能に組み付けられる第2ジョイントと、
前記第1ジョイントおよび前記第2ジョイントの上方において前記人形玩具の前記下胴部の内部に配置される第2支持部と、
前記人形玩具の胸部が組み付けられる第3ジョイントと、を含み
、
前記外部部品は、前記第2ジョイントに回転可能に組み付けられる外構造部であって、前記人形玩具の大腿部に繋がる前記外構造部を含
み、
前記第3ジョイントは、
前記胸部に接続される胸連結部と、
前記胸連結部を支持して下方に延びる延設支持部と、を備え、
前記延設支持部は、上下方向に移動可能に前記第2支持部に組み付けられる
玩具部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可動式の股関節部を有する人形玩具、および、人形玩具に用いられる玩具部品に関する。
【背景技術】
【0002】
可動式の関節部を有する人形玩具が知られている。従来から、こうした人形玩具による多様なポージングを可能とするために、腰部の周囲での大腿部の可動域の拡大を目的とした股関節部の構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の人形玩具は、腰部と大腿部との間に、J字形状のジョイントを備えている。ジョイントにおけるJ字の始点に対応する第1端部は、腰部に対して回転可能に接続されている。ジョイントにおけるJ字の終点に対応する第2端部には、大腿部が回転可能に接続されている。この構造によれば、第1端部での回転と第2端部での回転とにより、腰部に対する大腿部の角度を大きく変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、より柔軟なポージングの実現や、例えば女性型の人形玩具において曲線的なラインを表現したい場合のように、身体のラインについてのより自由度の高い表現のためには、腰部の周囲のより広い領域のなかで大腿部を動かせることが望ましい。こうした観点において、人形玩具の股関節部の構造には、なお改善の余地が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための人形玩具は、内部関節部と、前記内部関節部の外側に配置された外部部品と、を備える人形玩具であって、前記内部関節部は、前記人形玩具の腹部および腰部を含む下胴部の内部に位置する支持部と、前記支持部に回転可能に組み付けられた第1ジョイントと、前記第1ジョイントに回転可能に組み付けられた第2ジョイントと、を備え、前記外部部品は、前記第2ジョイントに回転可能に組み付けられた外構造部であって、前記人形玩具の大腿部に繋がる前記外構造部を含む。
上記構成によれば、第1ジョイントの回転と、第2ジョイントの回転と、外構造部の回転とに基づき、大腿部を腰部の周囲の広い領域のなかで動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】一実施形態の外部部品を分離して示す斜視図。
【
図5】一実施形態の内部関節部を分解して示す斜視図。
【
図6】一実施形態の内部関節部を分解して示す斜視図。
【
図8】一実施形態の内部関節部および第1外構造部を示す斜視図。
【
図9】一実施形態における基本位置の内部関節部を示す側面図。
【
図10】一実施形態における変更位置の内部関節部を示す側面図。
【
図11】一実施形態における変更位置の内部関節部を示す斜視図。
【
図12】一実施形態における下胴部の動作を示す斜視図。
【
図13】(a)~(c)は、一実施形態での第3ジョイントの動作を示す斜視図。
【
図14】(a)~(c)は、一実施形態での第3ジョイントの動作を示す側面図。
【
図15】一実施形態の人形玩具の収納形態を示す平面図。
【
図16】(a),(b)は、変形例の第3外構造部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、人形玩具および玩具部品の一実施形態を説明する。なお、玩具部品は、人形玩具の組み立てに用いられるパーツの集合であって、人形玩具を構成する複数のパーツを含む。以下の説明において、上下、前後、左右の各方向は、人形玩具の腹部の中心軸の延びる方向を上下方向とした場合の人形玩具から見た方向に対応する。
【0009】
[人形玩具の全体構成]
図1を参照して、人形玩具10の全体構成を説明する。人形玩具10は、頭部11、胸部12、下胴部13、右腕部14a、左腕部14b、右脚部15a、および、左脚部15bを備える。頭部11は胸部12の上端部に連結され、胸部12は下胴部13の上端部に連結される。下胴部13は、腹部、腰部、および、股関節部を含む。下胴部13の下端部右側には、右脚部15aが含む右大腿部16aが連結され、下胴部13の下端部左側には、左脚部15bが含む左大腿部16bが連結される。胸部12の右端上部には、右腕部14aが連結され、胸部12の左端上部には、左腕部14bが連結される。
【0010】
人形玩具10を構成する各パーツは樹脂製である。人形玩具10は、例えば、組立式のプラスチックモデルであり、人形玩具10を構成する複数のパーツ、すなわち玩具部品からなるキットとしてユーザに提供される。あるいは、人形玩具10は、組み立てられた状態でユーザに提供されてもよい。
本実施形態の人形玩具10は、下胴部13の構造に特徴を有する。人形玩具10における下胴部13以外の部分の構造や形状は、特に限定されない。
【0011】
[下胴部の全体構成]
図2~
図4を参照して、下胴部13の全体構成を説明する。下胴部13は、左右対称な構造を有する。
図2に示すように、下胴部13は、内部関節部20と、内部関節部20の外側に配置される外部部品とを備える。外部部品は、第1外構造部81と、第2外構造部82と、右第3外構造部83aおよび左第3外構造部83bとを含む。
【0012】
図3は、第1外構造部81、第2外構造部82、第3外構造部83a,83bを分離して示し、
図4は、内部関節部20を示す。
図2および
図3に示すように、第1外構造部81は、人形玩具10の腹部を構成する。第1外構造部81は、所望の腹部の外観に応じた形状や装飾を有していてよい。また、第1外構造部81は、複数のパーツから構成されていてよい。例えば、第1外構造部81の前部を構成するパーツと後部を構成するパーツとを含む複数のパーツの組み付けによって、第1外構造部81が形成されてよい。
【0013】
第2外構造部82は、人形玩具10の腰部を構成する。第2外構造部82は、所望の腰部の外観に応じた形状や装飾を有していてよい。また、第2外構造部82は、複数のパーツから構成されていてよい。例えば、第2外構造部82の前部を構成するパーツと後部を構成するパーツとを含む複数のパーツから、第2外構造部82が形成されてよい。
【0014】
なお、人形玩具10の腹部は、胸部の下から胴体の括れている部分までを含み、人形玩具10の腰部は、胴体の括れている部分の下から胴体下端までを含む。第1外構造部81の一部は、腰部を構成していてもよい。
【0015】
第2外構造部82は、第1外構造部81の下部の一部と重なるように組み付けられる。詳細には、第1外構造部81の下部の左右および後部に、第2外構造部82の上部の左右および後部が重なる。第1外構造部81は、第2外構造部82と重なる領域に、係合突起84a,84bを備えている。これらのうち、右係合突起84aは、第1外構造部81の下部右側の領域に位置し、左係合突起84bは、第1外構造部81の下部左側の領域に位置する。係合突起84a,84bは、例えば、半球形状の突起である。
【0016】
第1外構造部81に第2外構造部82が組み付けられた状態において、第2外構造部82の上部右側の縁部は、右係合突起84aに引っ掛かり、第2外構造部82の上部左側の縁部は、左係合突起84bに引っ掛かる。
【0017】
第2外構造部82の上部が係合突起84a,84bに引っ掛かっている範囲内で、第2外構造部82を前後に傾けることは許容される。言い換えれば、第2外構造部82は、前後方向への傾きが可変に第1外構造部81に組み付けられている。
【0018】
右第3外構造部83aは、球の一部が欠けた形状を有する関節連結部85aと、関節連結部85aから延びる柱状の脚連結軸86aとを備える。関節連結部85aにおける球が欠けた部分に対応する領域には、連結孔87aが設けられている。同様に、左第3外構造部83bは、関節連結部85bおよび脚連結軸86bを備え、関節連結部85bには、連結孔87bが設けられている。右第3外構造部83aおよび左第3外構造部83bの各々は、複数のパーツから構成されていてよい。
【0019】
図4に示すように、内部関節部20は、第1支持部の一例である中央支持部21と、中央支持部21の下部に組み付けられた第1ジョイント30a,30bと、第1ジョイント30a,30bに組み付けられた第2ジョイント40a,40bとを備えている。第1ジョイント30a,30bは、右第1ジョイント30aおよび左第1ジョイント30bを含み、第2ジョイント40a,40bは、右第2ジョイント40aおよび左第2ジョイント40bを含む。
【0020】
内部関節部20は、さらに、中央支持部21の上部に組み付けられた上部支持部22と、上部支持部22に組み付けられた第3ジョイント50とを備えている。上部支持部22は第2支持部の一例である。第3ジョイント50は、ボールジョイントとして機能する胸連結部51と、上部支持部22に組み付けられた右延設支持部52aおよび左延設支持部52bと、胸連結部51および延設支持部52a,52bに組み付けられた中央連結部53とを備える。
【0021】
下胴部13において、第1外構造部81は、上部支持部22、第3ジョイント50の下部、および、中央支持部21と第1ジョイント30a,30bとの一部を囲むように、これらの外側に配置される。第1外構造部81は、図示しない嵌合構造等により、内部関節部20の例えば上部支持部22に固定されてよい。内部関節部20の胸連結部51は、第1外構造部81の上方に突出し、
図1に示した胸部12に連結される。
【0022】
第2外構造部82は、中央支持部21の一部、第1ジョイント30a,30b、および、第2ジョイント40a,40bの上部を囲むように、これらの外側に配置される。右第3外構造部83aは、右第2ジョイント40aに組み付けられ、左第3外構造部83bは、左第2ジョイント40bに組み付けられる。
【0023】
右第3外構造部83aの脚連結軸86aは、
図1に示した右脚部15aの右大腿部16aが有する孔に差し込まれるように右大腿部16aに連結される。同様に、左第3外構造部83bの脚連結軸86bは、左脚部15bの左大腿部16bに連結される。これにより、人形玩具10における腰部と大腿部16a,16bとの間から、第3外構造部83a,83bの関節連結部85a,85bの一部、すなわち球形の一部が露出する。
【0024】
[第1,第2ジョイントの詳細構成]
図5~
図8を参照して、内部関節部20における第1ジョイント30a,30bおよび第2ジョイント40a,40bの構造について詳しく説明する。なお、以下では、左第1ジョイント30bおよび左第2ジョイント40bの構造と、中央支持部21の左側の構造とを例に説明するが、右第1ジョイント30aおよび右第2ジョイント40aも、左第1ジョイント30bおよび左第2ジョイント40bと左右対称に同様の構造を有し、中央支持部21の右側も、左側と左右対称に同様の構造を有する。
【0025】
図5および
図6は、内部関節部20において左第1ジョイント30bおよび左第2ジョイント40bを分離して示す図であって、
図5は前側から見た図であり、
図6は後側から見た図である。
【0026】
左第1ジョイント30bは、断面が円形の孔である第1軸孔31および第2軸孔32を有する。第1軸孔31および第2軸孔32の各々は、左右方向に延びて左第1ジョイント30bを貫通している。左右方向において、第2軸孔32は、第1軸孔31に対して外側、すなわち左側にずれた位置に配置されている。
【0027】
また、左第1ジョイント30bは、第2軸孔32の外周部から後方に突き出した第1突出部33を備えている。第1突出部33は、第2軸孔32に沿って、すなわち左右方向に沿って延びている。
【0028】
左第2ジョイント40bは、軸支持部41と、軸支持部41から左方向に延びる円柱状の第2関節軸42および第3関節軸43とを備える。軸支持部41は、第2関節軸42を支持する第2軸支持部44と、第3関節軸43を支持する第3軸支持部45と、第2軸支持部44と第3軸支持部45とを繋ぐ中間部46とを備える。第2軸支持部44は円板状であり、第3軸支持部45は球の端部を切り取った形状を有する。
【0029】
また、左第2ジョイント40bは、軸支持部41の中間部46の後部から左方向に突き出した第2突出部47を備えている。さらに、左第2ジョイント40bは、第2軸支持部44における第2関節軸42と反対側の領域に、半球状の凸部48を備えている。
【0030】
中央支持部21は、その下部に、前後方向に広がる支持板60と、支持板60の前部から左方向に延びる円柱状の第1関節軸61とを備える。中央支持部21は、支持板60における第1関節軸61の後方に、凹部62および補助溝63を有する。凹部62は半球状の窪みである。補助溝63は断面が弧状の溝であって、補助溝63の端部は支持板60の下端を突き抜けている。補助溝63は、支持板60の下端から上後方に弧状に延びる。そして、補助溝63と同一円周上の領域にて補助溝63の上方に凹部62が位置する。
【0031】
図5および
図6に加えて
図7に示すように、左第1ジョイント30bの第1軸孔31には、中央支持部21の第1関節軸61が挿入され、左第1ジョイント30bの第2軸孔32には、左第2ジョイント40bの第2関節軸42が挿入される。この左第1ジョイント30bと左第2ジョイント40bとの接続部分において、左第2ジョイント40bは、左第1ジョイント30bに対して中央支持部21の支持板60の位置する側に配置される。言い換えれば、支持板60と第2軸孔32の外周部との間に左第2ジョイント40bの第2軸支持部44が挟まれる。
【0032】
さらに、
図8に示すように、内部関節部20に第1外構造部81が組み付けられた状態において、第1外構造部81は、左第1ジョイント30bにおける第1軸孔31の付近を覆う。これにより、左第1ジョイント30bにおける中央支持部21との接続部分は、中央支持部21の支持板60と第1外構造部81との間に挟まれる。
【0033】
また、左第2ジョイント40bの第3関節軸43は、
図3に示した左第3外構造部83bの連結孔87bに挿入される。これにより、左第2ジョイント40bに左第3外構造部83bが組み付けられる。そして、左第2ジョイント40bの第3軸支持部45と左第3外構造部83bの関節連結部85aとから球状の構造体が形成される。
【0034】
[股関節部の動作]
図9~
図12を参照して、左第1ジョイント30bおよび左第2ジョイント40bの動きを中心に、人形玩具10の股関節部の動作を説明する。なお、右第1ジョイント30aおよび右第2ジョイント40aも、左第1ジョイント30bおよび左第2ジョイント40bと左右対称に同様に動作し得る。股関節部は、第1ジョイント30a,30bおよび第2ジョイント40a,40bを含む。
【0035】
図9は、左第1ジョイント30bおよび左第2ジョイント40bが基本位置に配置された状態を示す。基本位置は、例えば、腰部に対して大腿部が下方に延びるポージングに用いられる。基本位置においては、第1関節軸61の後方に第2関節軸42が位置し、第2関節軸42の下方に第3関節軸43が位置する。前後方向においては、第3関節軸43は、第1関節軸61の後側に位置する。
【0036】
左第1ジョイント30bは、第1関節軸61を軸として、中央支持部21に対して回転可能である。左第2ジョイント40bは、第2関節軸42を軸として、左第1ジョイント30bに対して回転可能である。左第3外構造部83bは、第3関節軸43を軸として、左第2ジョイント40bに対して回転可能である。
【0037】
本実施形態においては、第1関節軸61での回転と、第2関節軸42での回転と、第3関節軸43での回転とにより、大腿部を大きく動かすことができる。
詳細には、従来のように、中央支持部21の側の回転の軸である第1関節軸61と、大腿部の側の回転の軸である第3関節軸43とが、1つのジョイントによって繋がれている場合、第1関節軸61と第3関節軸43との間の距離は一定であるから、第3関節軸43は、第1関節軸61から所定半径の円周上でのみ動き得る。
【0038】
一方、本実施形態では、第1関節軸61と第3関節軸43とが2つのジョイントによって繋がれており、第2関節軸42での回転が可能であるため、第1関節軸61から所定半径の円周上とは異なる位置にも第3関節軸43を配置することができる。そのため、大腿部をより広い領域のなかで動かすことができる。したがって、より多様で柔軟なポージングが可能であり、また、外部部品の形状や配置の自由度も高められるため、身体のラインの表現の自由度も高められる。
【0039】
図10は、ジョイント30b,40bが、基本位置から動かされた位置の一例である変更位置に配置された状態を示す。変更位置は、例えば、腰部に対して大腿部が前側上方に延びるポージングに用いられる。
【0040】
基本位置に対して、左第1ジョイント30bが第1関節軸61の回りで右回転され、左第2ジョイント40bが第2関節軸42にて左第1ジョイント30bに対して左回転される。こうした回転後の変更位置では、前後方向において、第3関節軸43は、第1関節軸61の前側に位置する。したがって、
図12に併せて示すように、左第3外構造部83bやそれに接続される大腿部が第2外構造部82と干渉することを抑えつつ、脚連結軸86bが前斜め上方に延びる位置まで左第3外構造部83bを第3関節軸43の周りで回転させることが可能である。
【0041】
また、第1関節軸61と第3関節軸43との間の距離は、基本位置よりも長くなる。したがって、従来のように第1関節軸61と第3関節軸43との間の距離が一定である場合と比べて、第3関節軸43を第2外構造部82から離して大きく動かすことが可能である。その結果、左第3外構造部83bの露出を増やすことが可能であることから、体操座りのように股関節部が大きく曲げられている状態において、臀部から大腿部にかけての曲線的なラインを的確に表現することができる。
【0042】
また、上述したように、第2外構造部82の傾きの変更が可能であるため、ジョイント30a,30b,40a,40bおよび第3外構造部83a,83bの動きに合わせて、第2外構造部82の下部をやや手前に向けるように第2外構造部82が動く。これにより、第1外構造部81から第3外構造部83a,83bまで、すなわち腹部から大腿部に繋がる部分までが自然な流れで大きく動くため、高い美観が得られる。
【0043】
図10および
図11に示すように、左第2ジョイント40bを所定角度まで回転させると、左第1ジョイント30bの第1突出部33が、左第2ジョイント40bの第2突出部47に当接する。その結果、左第2ジョイント40bが上記所定角度よりも大きい角度に回転することが規制される。突出部33,47の配置によって、上記所定角度は、ポージングに必要な角度の最大に規定されていればよい。これにより、不必要な角度に左第2ジョイント40bが回転することが抑えられる。第1突出部33および第2突出部47は、回転規制構造の一例である。
【0044】
また、左第2ジョイント40bの凸部48が、中央支持部21の支持板60の凹部62に嵌まると、この位置に第2関節軸42が留められる。すなわち、小さな力では動かないように、中央支持部21に対する左第1ジョイント30bの回転の角度が固定される。例えば、基本位置で左第1ジョイント30bが固定可能であるように、凹部62の位置が定められていればよい。これにより、例えば基本位置である特定の位置で安定したポージングが可能である。凸部および凹部62は、角度保持構造の一例である。
【0045】
補助溝63が設けられていることにより、左第2ジョイント40bを下方から動かすとき、凸部48は支持板60の下端から補助溝63に入り、補助溝63内を滑って凹部62に嵌まる。したがって、凸部48と凹部62との嵌合が円滑に可能である。
【0046】
また、上述したように、左第2ジョイント40bは、支持板60と左第1ジョイント30bとの間に挟まれるように組み付けられている。したがって、股関節部における左第2ジョイント40bの意図しない分解が抑えられる。さらに、左第1ジョイント30bは、支持板60と第1外構造部81との間に挟まれるため、左第1ジョイント30bの意図しない分解も抑えられる。したがって、多様な動きが可能でありながら、パーツの分解が抑えられた股関節部が実現できる。
【0047】
[第3ジョイントの詳細構成および動作]
上部支持部22および第3ジョイント50の構造と、第3ジョイント50の動きを説明する。なお、以下では、上部支持部22および第3ジョイント50の左側の構造を例に説明するが、右側も左側と左右対称に同様の構造を有する。
【0048】
図4および
図13(a)に示すように、上部支持部22は、第1ジョイント30a,30bおよび第2ジョイント40a,40bの上方に位置する。上部支持部22は、中央支持部21の上部左方に位置する内側対向板70と、内側対向板70の左方にて内側対向板70と向かい合う外側対向板71とを備えている。
【0049】
図14(a)は、外側対向板71を切断して上部支持部22および第3ジョイント50を示す図である。
図4,
図11,
図13(a)にも併せて示すように、内側対向板70と外側対向板71との間には、上部接続部72および下部接続部73が位置し、これらの接続部72,73が、内側対向板70と外側対向板71とを繋いでいる。上部接続部72は、内側対向板70と外側対向板71との間の上部かつ前部に位置し、下部接続部73は、内側対向板70と外側対向板71との間の下部かつ後部に位置する。上部接続部72の下端と下部接続部73の上端との上下方向における位置は近接している。
【0050】
第3ジョイント50の左延設支持部52bは、中央連結部53に組み付けられた円筒部56と、円筒部56から下方に延びる摺動部57とを備えている。摺動部57の幅は、その下端部57Eが前方に突き出すように、下端部57Eにて広がっている。摺動部57は、内側対向板70と外側対向板71との間、かつ、上部接続部72と下部接続部73との間に挿入されている。
【0051】
中央連結部53は、球状部58から左右に円柱状の軸が延びる形状を有している。このうち、左方向に延びる左軸59が、左延設支持部52bの円筒部56に通されている。また、胸連結部51は、中央連結部53の上方に位置する球状のボール部54と、ボール部54から延びる中央軸55とを備える。中央連結部53の球状部58は、前後方向に延びる貫通孔を中央に有し、この貫通孔に胸連結部51の中央軸55が通されている。こうした構造により、延設支持部52a,52bは、中央連結部53および胸連結部51を支持している。
【0052】
上記中央連結部53およびボール部54の構造によれば、中央連結部53の回転によって前後方向におけるボール部54の傾きの変更が可能であり、また、中央軸55の回転によって左右方向におけるボール部54の傾きの変更が可能である。これにより、腹部に対して胸部を高い自由度で動かすことができる。
【0053】
図13(a)~(c)および
図14(a)~(c)を参照して、延設支持部52a,52bに関連した第3ジョイント50の動きを説明する。
図14(a)~(c)は、外側対向板71を切断して上部支持部22および第3ジョイント50を示す図であって、
図14(a)は
図13(a)に対応する状態を示し、
図14(b)は
図13(b)に対応する状態を示し、
図14(c)は
図13(c)に対応する状態を示す。
【0054】
左延設支持部52bの摺動部57は、内側対向板70と外側対向板71とに挟まれた領域内で、これらの対向板70,71に沿って滑るように、動くことができる。したがって、
図13(a),
図14(a)に示すように、摺動部57が上記領域に最も深く差し込まれた状態から、
図13(b),
図14(b)に示すように、摺動部57を引き上げることができる。左延設支持部52bと共に右延設支持部52aも引き上げられることにより、第3ジョイント50が引き上げられる。このように、延設支持部52a,52bは、上下方向に移動可能に上部支持部22に組み付けられている。
【0055】
摺動部57の下端部57Eの幅は、前後方向における上部接続部72と下部接続部73との間の長さと一致する。こうした構成では、上部接続部72と下部接続部73との間の隙間に対する下端部57Eの向きを正確に合わせて力をかけることで、下端部57Eに当該隙間を通過させて、上部支持部22に左延設支持部52bを組み付けることができる。
【0056】
一方で、組み付け後に左延設支持部52bを動かす際には、こうした向きの精密な合致は起こりにくいことから、下端部57Eが上部接続部72と下部接続部73との間から抜けることは抑えられる。したがって、摺動部57は、下端部57Eが上部接続部72よりも下方に位置する範囲内で動くことができる。対向板70,71および接続部72,73からなる構造体が一体成形品であれば、上部接続部72と下部接続部73との間の長さを精密に形成できるため好ましい。
【0057】
また、摺動部57における下端部57Eの上方の幅は、下端部57Eよりも小さくなっているため、
図13(c),
図14(c)に示すように、上部接続部72と下部接続部73との間で前後に摺動部57を傾けることができる。これにより、接続部72,73によって規制される範囲内において、前後に第3ジョイント50を傾けることが可能である。
【0058】
このように、延設支持部52a,52bの動きによって、第3ジョイント50全体の上下方向の位置および前後方向の傾きを変更できる。したがって、中央連結部53およびボール部54のみが可動である構造と比較して可動範囲の拡大が可能であり、腹部から胸部にかけての部分を大きく動かすことができる。
【0059】
以上のように、本実施形態の人形玩具10によれば、人形玩具10の下胴部13とそれに連結される大腿部16a,16bや胸部12を大きく動かすことができる。したがって、
図15に示すように、身体を折り曲げるようなポージングも可能であり、例えば六角形等の正多角形や円形のケース90に人形玩具10を収納することもできる。こうした構成によれば、人形玩具10の収納形態についての意匠性の向上が可能であり、また、収納に要するスペースの削減も可能である。
【0060】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)人形玩具10の股関節部が、第1ジョイント30a,30bと第2ジョイント40a,40bとを備えるため、大腿部を腰部の周囲の広い領域で動かすことができる。
【0061】
(2)第2外構造部82が、前後方向への傾きが可変に第1外構造部81に組み付けられている。これにより、ジョイント30a,30b,40a,40bおよび第3外構造部83a,83bの動きに合わせて、第2外構造部82が動くことが可能である。したがって、第1外構造部81から第3外構造部83a,83bまでが自然な流れで大きく動くため、高い美観が得られる。
【0062】
(3)第1ジョイント30a,30bに対する第2ジョイント40a,40bの回転角度を所定範囲に規制する回転規制構造が設けられている。これにより、不必要な角度に第2ジョイント40a,40bが回転することが抑えられる。
(4)中央支持部21に対する第1ジョイント30a,30bの回転角度を所定角度で留める角度保持構造が設けられている。それゆえ、第1ジョイント30a,30bの回転角度を特定の角度とした状態で、人形玩具10による安定したポージングが可能である。
【0063】
(5)第1ジョイント30a,30bと第2ジョイント40a,40bとの接続部分において、第2ジョイント40a,40bは、第1ジョイント30a,30bに対して中央支持部21の位置する側に配置されている。これにより、第2ジョイント40a,40bの外側が第1ジョイント30a,30bによって押さえられるため、第2ジョイント40a,40bの意図しない分解が抑えられる。
【0064】
(6)中央支持部21と第1ジョイント30a,30bとの接続部分において、第1ジョイント30a,30bは、中央支持部21と第1外構造部81との間に挟まれる。これにより、第1ジョイント30a,30bの外側が第1外構造部81によって押さえられるため、第1ジョイント30a,30bの意図しない分解が抑えられる。
【0065】
[変形例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。また、以下の変形例は互いに組み合わせて実施してもよい。
・第2ジョイント40a,40bにおける第3外構造部83a,83bとの連結のための構造は、第2ジョイント40a,40bに対して第3外構造部83a,83bが回転可能に組み付けられる構造であれば、上記実施形態と異なってよい。例えば、
図16(a),(b)に示すように、第2ジョイント40a,40bは、第3外構造部83a,83bに連結される端部として、球状の端部49を有していてもよい。第3外構造部83a,83bは、少なくとも前後方向に沿った鉛直面内で回転可能であればよい。
【0066】
また、第3外構造部83a,83bの形状も、第2ジョイント40a,40bおよび大腿部16a,16bに連結可能に構成されていれば、上記実施形態とは異なってよい。例えば、
図16(a)に示すように、関節連結部85aは、球形とは異なる形状であってよく、大腿部16a,16bと連続的に接続され得る形状であってもよい。また、第3外構造部83a,83bは、大腿部16a,16bに繋がるように構成されていればよく、第3外構造部83a,83bから連続して大腿部16a,16bが延びていてもよい。
【0067】
・回転規制構造は、第1ジョイント30a,30bに対する第2ジョイント40a,40bの回転角度を所定範囲に規制可能であれば、上記実施形態とは異なっていてよい。第1ジョイント30a,30bが有する構造と第2ジョイント40a,40bが有する構造との当接や嵌合によって、第2ジョイント40a,40bの回転が規制されればよい。
【0068】
・角度保持構造は、中央支持部21に対する第1ジョイント30a,30bの回転角度を所定角度で留めることが可能であれば、上記実施形態とは異なっていてよい。例えば、支持板60の凹部62に嵌合する凸部は、左第1ジョイント30bに設けられていてもよい。要は、支持板60が有する構造と、第1ジョイント30a,30bおよび第2ジョイント40a,40bの少なくとも一方が有する構造との嵌合等によって、第1ジョイント30a,30bの角度が固定されればよい。
【0069】
・股関節部が2つのジョイントを備えていれば、人形玩具10におけるその他の構造は上記実施形態とは異なってもよい。例えば、第2外構造部82の傾きは可変でなくてもよいし、第2外構造部82は第1外構造部81に連続していてもよい。また、第2ジョイント40a,40bは、第1ジョイント30a,30bの外側に配置されてもよいし、第3ジョイント50は上下方向に動かなくてもよい。また、人形玩具10は、回転規制構造や角度保持構造を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…人形玩具、13…下胴部、20…内部関節部、21…中央支持部、22…上部支持部、30a,30b…第1ジョイント、40a,40b…第2ジョイント、50…第3ジョイント、52a,52b…延設支持部、81…第1外構造部、82…第2外構造部、83a,83b…第3外構造部。
【要約】
【課題】腰部の周囲のより広い領域で大腿部を動かすことの可能な人形玩具および玩具部品を提供する。
【解決手段】人形玩具は、内部関節部20と、内部関節部20の外側に配置された外部部品とを備える。内部関節部20は、人形玩具の腹部および腰部を含む下胴部の内部に位置する支持部21と、支持部21に回転可能に組み付けられた第1ジョイント30a,30bと、第1ジョイント30a,30bに回転可能に組み付けられた第2ジョイント40a,40bとを備える。外部部品は、第2ジョイント40a,40bに回転可能に組み付けられた外構造部であって、人形玩具の大腿部に繋がる外構造部を含む。
【選択図】
図4