(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】食品の貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/12 20060101AFI20250627BHJP
A23B 2/90 20250101ALI20250627BHJP
F25D 21/06 20060101ALI20250627BHJP
F26B 21/00 20060101ALI20250627BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20250627BHJP
【FI】
F25D23/12 D
A23B2/90 B
F25D21/06 N
F26B21/00 F
F26B25/00 A
(21)【出願番号】P 2021140131
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2024-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】安信 淑子
(72)【発明者】
【氏名】西村 晃一
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/175102(WO,A1)
【文献】特開2007-212093(JP,A)
【文献】特開平06-323690(JP,A)
【文献】特開昭63-167777(JP,A)
【文献】特開2008-051361(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1105665(KR,B1)
【文献】国際公開第2020/022127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 23/12
F26B 21/00 ~ 21/14
A23B 2/90 ~ 2/97
A23B 7/02 ~ 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を貯蔵する貯蔵区画と、前記貯蔵区画を冷却する冷却部と、前記冷却部に付着した霜を融解する除霜部と、前記貯蔵区画の内部温度を検知する温度検知部と、前記貯蔵区画の内部温度を制御する制御部と、を備え、
前記貯蔵区画の内部温度を段階的に上昇させる乾燥工程として、第一の温度帯である0℃未満の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程と、
前記貯蔵区画の内部温度を第二の温度帯である0℃以上の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程を有し、
前記第一の温度帯は、-18℃以下の冷凍温度帯を含み、
前記第一の温度帯で
は、前記除霜部が行う前記冷却部の霜を融解する除霜
を所定の時間ごとに実施し、
前記第一の温度帯から前記第二の温度帯へ切り替わる際に、前記除霜を開始し、
前記第二の温度帯では、前記除霜を行わないことを特徴とする貯蔵
庫。
【請求項2】
前記冷却部の温度を検出する冷却器温度
検出部と、を備え、前記除霜部は、前記冷却器温度検出部の検知する温度の低下速度が増加した時に、除霜を開始する請求項1に記載の貯蔵
庫。
【請求項3】
前記冷却部の風下側の温度を検知する空気温度検知部と、を備え、前記除霜部は、前記空気温度検知部の検知する温度が上昇した時に、除霜を開始する請求項1に記載の貯蔵
庫。
【請求項4】
前記冷却部の風下側の湿度を検知する空気湿度検知部と、を備え、前記除霜部は、前記空気湿度検知部の検知する湿度が上昇した時に、除霜を開始する請求項1に記載の貯蔵
庫。
【請求項5】
前記冷却部に付着した霜を融解した際に発生する暖湿気を、前記貯蔵区画の外に排出する排出口と、前記排出口を開閉する開閉手段と、を備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の貯蔵
庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品の乾燥が実行される貯蔵庫または貯蔵室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の乾燥が実行される貯蔵庫または貯蔵室において、冷却部に冷却器を有するものでは、乾燥する食品の量が多くなり除湿量が増加すると、冷却器に着霜が生じ、除湿性能が低下することから、冷却器を2台有し、一方で除湿を行っている間は、もう一方で着霜した霜を融解する除霜を実施し、交互に独立して除湿・除霜運転を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の貯蔵庫または貯蔵室では、冷却器を2台有することにより、大がかりなものになり、またシステムも複雑になる。また、装置そのものがより高価なものになり、手軽に、又は、安価に食品の乾燥を行うことができなくなる。また、食品に含有される栄養成分、機能性成分、及び乾燥食品の「おいしさ」に関しても、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために、本発明の貯蔵庫は、食品を貯蔵する貯蔵区画と、貯蔵区画を冷却する冷却部と、冷却部に付着した霜を融解する除霜部と、貯蔵区画の内部温度を検知する温度検知部と、貯蔵区画の内部温度を制御する制御部と、を備えることにより、冷却器は1台により手軽な装置にて、乾燥を行うことが可能になり、貯蔵区画の内部温度を段階的に上昇させる乾燥工程として、第一の温度帯である0℃未満の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程と、貯蔵区画の内部温度を第二の温度帯である0℃以上の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程を有し、第一の温度帯は、-18℃以下の冷凍温度帯を含み、第一の温度帯では、除霜部が行う冷却部の霜を融解する除霜を所定の時間ごとに実施し、第一の温度帯から第二の温度帯へ切り替わる際に、除霜を開始し、第二の温度帯では、除霜を行わないことにより、より短時間で効率よく乾燥が完了し、食品に含まれる栄養及び機能性成分をできるだけ保持した状態で、「おいしさ」も実感できる乾燥食品を得ることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の貯蔵庫または貯蔵室では、食品を貯蔵する貯蔵区画と、貯蔵区画を冷却する冷却部と、冷却部に付着した霜を融解する除霜部と、貯蔵区画の内部温度を検知する温度検知部と、貯蔵区画の内部温度を制御する制御部と、を備え、貯蔵区画の内部温度を段階的に上昇させる乾燥工程として、第一の温度帯である0℃未満の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程と、貯蔵区画の内部温度を第二の温度帯である0℃以上の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程を有し、第一の温度帯で、除霜部が行う冷却部の霜を融解する除霜回数が、第二の温度帯より多く制御することで、冷凍域から所定の時間維持しながら乾燥を行うので、腐敗細菌の増殖を抑制した環境で乾燥を行うことができ、乾燥工程では、冷却器1台で手軽に乾燥が進み、着霜する霜を効率よく除霜することで、乾燥が促進し、短時間で乾燥が完了し、腐敗細菌が増殖することなく、化学反応の反応性も抑制した状態で乾燥を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本実施の形態1の温度と除霜のパターンを示した図
【
図3】本実施の形態1の食品が乾燥するしくみを示した図
【
図6】(a)本実施の形態1の冷却器温度検知による除霜を示した図、(b)[
図6](a)のA部分拡大図
【
図7】(a)本実施の形態1の冷却器風下側温度検知による除霜を示した図、(b)[
図7](a)のB部分拡大図
【
図8】(a)本実施の形態1の冷却器風下側湿度検知による除霜を示した図、(b)[
図8](a)のC部分拡大図
【
図11】本実施の形態2の食品が乾燥するしくみを示した図
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の発明は、食品を貯蔵する貯蔵区画と、前記貯蔵区画を冷却する冷却部と、前記冷却部に付着した霜を融解する除霜部と、前記貯蔵区画の内部温度を検知する温度検知部と、前記貯蔵区画の内部温度を制御する制御部と、を備え、
前記貯蔵区画の内部温度を段階的に上昇させる乾燥工程として、第一の温度帯である0℃未満の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程と、前記貯蔵区画の内部温度を第二の温度帯である0℃以上の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程を有し、第一の温度帯で、前記除霜部が行う前記冷却部の霜を融解する除霜回数が、第二の温度帯より多く制御することを特徴とする貯蔵庫または貯蔵室とすることにより、冷却器1台の装置で手軽に食品の乾燥が行え、除霜を効率化することにより、より短時間で乾燥が完了し、食品に含まれる栄養・機能性成分は保持され、「おいしさ」も実感できる乾燥食品を得ることができる。また、乾燥する食品の重量が増えても、その量に関係なく、手軽に乾燥することができる。
【0009】
第2の発明は、前記冷却部の温度を検出する冷却器温度検知部と、を備え、前記除霜部は、前記冷却器温度検出部の検知する温度の低下速度が増加した時に、除霜を開始する請求項1に記載の貯蔵庫または貯蔵室とすることにより、冷却器への着霜の増加を冷却器温度の低下速度から予測し、除霜を行うことで、より精度高く除霜の制御可能になる。
【0010】
第3の発明は、前記冷却部の風下側の温度を検知する空気温度検知部と、を備え、前記除霜部は、前記空気温度検知部の検知する温度が上昇した時に、除霜を開始する請求項1に記載の貯蔵庫または貯蔵室とすることにより、冷却器への着霜の増加を温度上昇から予測し、除霜を行うことで、より精度高く除霜が制御可能になる。
【0011】
第4の発明は、前記冷却部の風下側の湿度を検知する空気湿度検知部と、を備え、前記除霜部は、前記空気湿度検知部の検知する湿度が上昇した時に、除霜を開始する請求項1に記載の貯蔵庫または貯蔵室とすることにより、冷却器への着霜の増加を湿度上昇から予測し、除霜を行うことで、より精度高く除霜が制御可能になる。
【0012】
第5の発明は、前記冷却部に付着した霜を融解した際に発生する湿気を、前記貯蔵区画の外に排出する排出口と、前記排出口を開閉する開閉手段と、を備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の貯蔵庫または貯蔵室とすることにより、除霜の湿気による貯蔵区画内の湿度上昇を抑制することが可能となり、より短時間で乾燥を行うことができる。
【0013】
第6の発明は、食品を貯蔵する貯蔵区画と、前記貯蔵区画を冷却する冷却部と、前記冷却部で冷却された空気を前記貯蔵区画に循環させる送風機と、前記貯蔵区画の内部温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部からの情報を用いて前記冷却部を制御して、前記貯蔵区画の内部温度を制御する制御部と、を備え、前記貯蔵区画の内部温度を段階的に上昇させる乾燥工程として、第一の温度帯である0℃未満の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程と、前記貯蔵区画の内部温度を第二の温度帯である0℃以上の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程を有し、前記冷却部の風上に、通過する空気を除湿する除湿部を設けることを特徴とする貯蔵庫または貯蔵室とすることにより、冷却器の除霜を行うことなく、より短時間に乾燥を行うことができる。
【0014】
第7の発明は、前記除湿部は、デシカント式の除湿手段であることを特徴とした請求項6に記載の貯蔵庫または貯蔵室とすることにより、温度によらず除湿できるので、幅広い温度帯で効果を発揮でき、より短時間に乾燥が行うことができる。
【0015】
第8の発明は、前記除湿部は、透湿膜型の全熱交換器であることを特徴とした請求項6に記載の貯蔵庫または貯蔵室とすることにより、簡単な構成で除湿を行うことができ、より手軽に乾燥が行うことができる。
【0016】
第9の発明は、前記除湿部は、小型冷却器であることを特徴とした請求項6に記載の貯蔵庫または貯蔵室とすることより、高温時の除湿能力に優れ、より短時間に乾燥が行うことができる。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1の乾燥貯蔵庫1の断面図である。
【0018】
図1において、乾燥貯蔵庫1は、断熱仕切壁2によって、上下方向において区画されている。乾燥貯蔵庫1は、内部において、断熱仕切壁2の上部に配置された乾燥貯蔵室(貯蔵区画)3、及び、断熱仕切壁2の下部に配置された冷凍室4を備えている。また、乾燥貯蔵庫1内には、乾燥貯蔵庫1の各部及び各装置を駆動制御する制御部5が配置されている。
【0019】
冷凍サイクル6は、圧縮機7、放熱器8、膨張手段9、冷却器10を環状に接続して、例えばイソブタンなどの冷媒が封入されており、冷却器10は、冷凍室4の背面に位置している。
【0020】
圧縮機7は、例えばインバーター電源などにより、モーターの回転数を変化させることにより能力を増減させることができ、制御部5により能力が制御される。
【0021】
同じく冷凍室4の背面には、冷却器で生成した冷気を強制的に乾燥貯蔵室3へと通風する送風機11が配置されているとともに、冷気を乾燥貯蔵室3に導く乾燥室ダクト12を備えている。
【0022】
乾燥室ダクト12内には、乾燥貯蔵室3内へ冷気を選択的に流すダンパ13と、乾燥室ダクト12内の冷気を加温する、例えばフィンとパイプヒータにより構成された乾燥室ヒータ14を備えている。
【0023】
また、乾燥貯蔵室3内には、乾燥貯蔵室3の内部温湿度を検知する空気温湿度検知部15を備えている。
【0024】
また、冷却器10に霜が付いた場合に、その霜を融解する除霜部16を備えている。
【0025】
また、乾燥貯蔵庫1には操作パネル17が配置されている。操作パネル17を介して入力される使用者の指示に応じて、制御部5が各部及び各装置の駆動制御を行う。
【0026】
以上のように構成された乾燥貯蔵庫1について、以下その動作を説明する。冷凍サイクル6の運転中、圧縮機7により圧縮された、高温高圧のガス冷媒は、放熱器8を流れることにより、外気に放熱し、低温高圧の液冷媒となる。そして、例えばキャピラリーチューブなどの膨張手段9内を流れることにより、低温低圧の気液二層冷媒となり、冷却器10内へと流れる。
【0027】
冷却器10内を流れる液冷媒は、冷凍室4内の空気と熱交換し、蒸発気化熱により冷気を発生し、送風機11により冷凍室4及び乾燥貯蔵室3を循環する。この作用により、冷凍室4を冷却し、冷凍室4を約-18℃以下の冷凍温度帯に維持する。
【0028】
乾燥貯蔵室3は、通常は-18℃以下の温度範囲に維持されている。この-18℃の冷凍温度は、T-TT(Time-Temperature-Tolerance:保存可能期間-保存温度と品質耐性)の考えに基づいて設定されている。なお、T-TTにおいて、食品の新鮮度が保持される時間と食品の品質(微生物及び味覚の観点)を保持する時間が異なるとされている。
【0029】
乾燥貯蔵室3は、通常、約-18℃以下の冷凍温度帯に維持されているが、使用者が食品を投入し、操作パネル17を介して入力される使用者の指示に応じて乾燥運転モードを開始すると、空気温湿度検知部15の検知する温度により、制御部5が圧縮機7、送風機11、ダンパ13及び乾燥室ヒータ14を制御し、乾燥貯蔵室3へと流れる風の風量、温度が所定のパターンになるように制御される。
【0030】
ここで、乾燥貯蔵室3に収納した場合を例にとって、本実施の形態1における貯蔵庫の乾燥工程を説明する。
【0031】
まず半分にカットしたトマトを乾燥貯蔵室3に設置し、操作パネル17にあるスイッチを操作して、「乾燥コース1」を選択し、さらに操作パネル17にある食品情報入力手段(17a)にて、設置するトマトの情報(例えば大きさ、厚み、重量等)を入力し、動作させる。
【0032】
図2は、本実施の形態1の温度と除霜のパターンを示す図である。また
図3は、本実施の形態1の食品が乾燥するしくみを示した図である。
【0033】
図3では、空気の流れを矢印にて示している。まず、冷却ファンにより、冷却器から流れ出た飽和空気は、乾燥室ヒータにより温められることで相対湿度が下がり、乾燥空気となって貯蔵区画に入る。この乾燥空気により、貯蔵区画に設置した食品の水分が空気中に昇華・蒸発し、湿り空気となり再び冷却器に戻る、一連のこのサイクルが繰り返され乾燥が進む。
【0034】
一方、乾燥の進行にともない、湿り空気により冷却器に徐々に着霜が生じる。この着霜は、冷却器内の空気の流れを妨げ、冷却器での熱交換を困難にすることで、循環する空気の温度・湿度を下がりにくくし、食品の乾燥効率の低下をもたらす。
【0035】
図4の除霜なしの乾燥例では、実施の形態1と同じロットのトマトで同じ形態(例えば大きさ、厚み、重量等)を実施の形態1と同様の貯蔵庫で、除霜をまったく行わず乾燥させた場合の乾燥貯蔵室内の温度、湿度、冷却器温度、食品の重量を示す。
【0036】
乾燥開始から除霜をまったく行わないと、冷却器に着いた霜により目詰まりし、冷却器温度が低下し続け、ついには乾燥貯蔵室内の湿度が100%まで上昇し、食品の重量が減少せず、食品の乾燥が進まなくなる。(
図4)よって、乾燥の進行にともない除霜は必ず必要になる。
【0037】
図2を用いて、本実施の形態1の乾燥運転中の各装置の動作及び、乾燥貯蔵庫内の各種温度・湿度の変化及び除霜のタイミングについて説明する。
【0038】
乾燥運転が開始されると、第1の温度帯では、制御部5により、乾燥貯蔵室3の内部温度を-18℃以下の冷凍温度帯(事例として-25℃)に維持すべく、例えば圧縮機7、送風機11を最大能力で、ダンパ13を最大開度で、乾燥室ヒータ14に通電させない状態とすることにより、冷凍温度帯(事例として-25℃)に安定させる。
【0039】
所定の時間経過(事例として480分)すると、例えば乾燥室ヒータ14に通電することにより、乾燥貯蔵室3の内部湿度を下降させるために、内部温度を上昇させ(事例として-3℃)、維持させるべく制御部5により、各装置が制御され、適切な除霜が行われることにより、第1の温度帯では湿度は50%から20%に低下する。
【0040】
本実施の形態1での、第1の温度帯での除霜タイミングは、所定の時間(事例として2日)ごとに実施されている。
【0041】
第1の温度帯が所定の時間経過(事例として7800分)すると、第2の温度帯に移行し、乾燥貯蔵室3の内部温度が上昇し(事例として3℃)その温度を維持させるべく制御部5により、各装置が制御される。
【0042】
所定の時間経過(事例として120分)すると、例えば乾燥室ヒータ14に通電することにより、乾燥貯蔵室3の内部湿度を下降させるために、内部温度がさらに上昇し(事例として8℃)、維持させるべく制御部5により、各装置が制御されることにより、第2の温度帯では、湿度が8%まで低下する。
【0043】
食品からの水分の減少は、第2の温度帯では、第1の温度帯と比較してその減少量が少ないことから、除霜は行わず、所定の時間(事例として6000分)で乾燥運転が終了し、約10日間でトマトの乾燥品が完成する。
【0044】
図5にあるように、本実施の形態1と同様の貯蔵庫で、同じ乾燥室内の温度パターンで、同じロット、同じ形態(例えば大きさ、厚み、重量等)のトマトを用いて、除霜を1日毎に行った場合の乾燥貯蔵室内の湿度、食品の重量を示す。
【0045】
図5では、1日毎に除霜が行われており、除霜を行うことで冷却器についた霜は融解され、重量が徐々に減少し乾燥は進むものの、除霜のたびに空気は加湿され、湿度が上昇し、結果、乾燥効率は低下し、乾燥完了には14日間かかる。
【0046】
本実施の形態1では、第1の温度帯で、所定の時間(事例として2日)ごと除霜が実施されている。これにより、適度に冷却器への着霜を抑制しつつ、乾燥貯蔵室内の湿度の上昇も抑制することで、効率よく乾燥が進み、10日間と乾燥を短縮することができる。
【0047】
また、
図3に示すように、冷却器の温度を検出する冷却器温度検知部を備えた場合は、
図6の示すように、冷却器温度の30分間あたりの温度低下幅△T1が、△T2のように増加する、つまり冷却器温度の低下速度が増加するタイミングで、除霜部が、除霜を開始することにより、より精度高く除霜が制御可能になり、乾燥が効率化し、乾燥時間が短縮する。
【0048】
また、
図3に示すように、冷却器の風下側の温度を検知する空気温度検知部を備えた場合は、
図7に示すように、冷却器下流空気温度が30分間で1K以上昇するタイミングで、除霜を開始することにより、精度高く除霜が制御可能になり、乾燥が効率化し乾燥時間が短縮する。
【0049】
また、
図3に示すように、冷却器の風下側の湿度を検知する空気湿度検知部を備えた場合は、
図8に示すように、冷却器下流空気湿度が30分間で1%以上昇するタイミングで、除霜を開始することにより、精度高く除霜が制御可能になり、乾燥が効率化し乾燥時間が短縮する。
【0050】
また、
図3に示すように、開閉手段を備えた場合は、除霜後に開閉手段を開き、除霜により発生した高温高湿の空気を乾燥貯蔵庫の外部へと排出口から排出することができる。これにより、除霜運転後の貯蔵区画内の湿度の上昇を抑制することができ、乾燥が効率化し乾燥時間が短縮する。
【0051】
図9に、上述の方法により乾燥させたトマトの官能評価結果を示す。従来例として、本実施の形態1と同じロットのトマトを常温の砂糖による浸透圧脱水で乾燥させたトマトを用いた。
【0052】
図9にあるように、従来例と比較して、本実施の形態1の半切トマトは、項目、「外観(変色の大・小)」、「香り(強・弱」および「総合(良い・悪い)」で1ポイント以上、上昇し、変色が小さく、生のフレッシュな香りが強く、総合的に食味が良好になった。
【0053】
官能評価は1ポイント違うとその差は明確に認識されることから、本実施の形態1の温度パターンで乾燥した半切トマトは、乾燥貯蔵後、従来例と比較して、「おいしさ」の差が実感できるレベルがより短時間で実現することができる。
【0054】
本実施の形態1では、適切に除霜を行うことで、効率よく短時間で乾燥が完了するので、常温の砂糖による浸透圧脱水で乾燥させたトマトと比較して、変性が抑制され、保存前の「外観」や「香り」が保たれ、変色が少なく、香りが強くなり、砂糖の添加がないヘルシーなイメージの乾燥品を得ることができる。
【0055】
また、本実施の形態1では、0℃以下の温度帯での乾燥を用いているので、0℃以上の20~30℃近辺の常温で、砂糖による浸透圧脱水で乾燥させたトマトと比較して、ビタミンC、総ポルフェノールなど酸化により変性する栄養成分の損失が少ないことも予想される。
【0056】
本実施の形態1では、第1の温度帯で、冷凍温度帯(事例として-25℃)で所定の時間経過(事例として480分)後、貯蔵区画の内部温度が上昇し、(事例として-3℃)、湿度は50%から20%に低下する。
【0057】
第1の温度帯では、除霜が所定の時間(事例として2日)ごとに実施される。
【0058】
その後所定の時間(事例として7800分)維持され、第2の温度帯に移行し、内部温度が上昇し(事例として3℃)、所定の時間経過(事例として120分)すると、内部温度がさらに上昇し(事例として8℃)、第2の温度帯では、湿度が8%まで低下する。
【0059】
第2の温度帯では、除霜を実施せず、所定の時間(事例として6000分)で乾燥運転が終了し、約10日間でトマトの乾燥品が完成する。
【0060】
以上述べたところから明らかなように、本実施の形態1の貯蔵庫または貯蔵室は、食品を貯蔵する貯蔵区画と、前記貯蔵区画を冷却する冷却部と、前記冷却部に付着した霜を融解する除霜部と、前記貯蔵区画の内部温度を検知する温度検知部と、前記貯蔵区画の内部温度を制御する制御部と、を備え、前記貯蔵区画の内部温度を段階的に上昇させる乾燥工程として、第一の温度帯である0℃未満の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程と、前記貯蔵区画の内部温度を第二の温度帯である0℃以上の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程を有し、第一の温度帯で、前記除霜部が行う、前記冷却部の霜を融解する除霜回数が、第二の温度帯より多く制御することを特徴とすることにより、食品の量によらず、貯蔵区画に設置した食品の乾燥は促進され、乾燥後のトマトは変色が少なく色鮮やかで外観が良く、生のフレッシュな香りが強く、生に近い自然な甘さで、「おいしさ」が実感できる乾燥品を得ることができる。
【0061】
(実施の形態2)
図10は、本実施の形態2の貯蔵庫の正面図である。実施の形態2では、冷却器の風上に除湿部を備える。
【0062】
その他、実施の形態1にて説明した内容と重複する内容については説明を省略する。
【0063】
また
図11は、本実施の形態2の食品が乾燥するしくみを示した図である。
【0064】
図11では、空気の流れを矢印にて示している。まず、冷却ファンにより、冷却器から流れ出た飽和空気は、乾燥室ヒータにより温められることで相対湿度が下がり、乾燥空気となって貯蔵区画に入る。この乾燥空気により、貯蔵区画に設置した食品から空気中へ水分が昇華・蒸発し、湿り空気となる。この湿り空気は、冷却器に戻る途中、冷却器の手前、風上の除湿部で除湿され、冷却器に戻る。一連のこのサイクルが繰り返され乾燥が進む。
【0065】
実施の形態2では、除湿した空気が冷却器に流れるので、乾燥中の除霜が不要になり、より効率的に乾燥が実施されることになる。
【0066】
また、乾燥時間のさらに短縮可能とし、乾燥品の品質も上がりよりおいしさが実感できるものになる。
【0067】
また、除湿部をデシカント式にすることにより、温度によらず除湿できるので、幅広い温度帯で効果を発揮でき、より短時間に乾燥が行うことができる。
【0068】
また、除湿部を透湿膜型の全熱交換器とすることにより、簡単な構成で除湿を行うことができ、より手軽に乾燥が行うことができる。
【0069】
また、除湿部を小型冷却器とすることにより、高温時の除湿能力に優れ、より短時間に乾燥が行うことができる。
【0070】
以上述べたところから明らかなように、本実施の形態2の貯蔵庫または貯蔵室は、食品を貯蔵する貯蔵区画と、貯蔵区画を冷却する冷却部と、冷却部で冷却された空気を貯蔵区画に循環させる送風機と、貯蔵区画の内部温度を検知する温度検知部と、温度検知部からの情報を用いて冷却部を制御して、貯蔵区画の内部温度を制御する制御部と、を備え、貯蔵区画の内部温度を段階的に上昇させる乾燥工程として、第一の温度帯である0℃未満の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程と、前記貯蔵区画の内部温度を第二の温度帯である0℃以上の温度範囲で所定の時間維持する乾燥工程を有し、冷却部の風上に通過する空気を除湿する除湿部を設けることを特徴とすることにより、食品の量によらず、貯蔵区画に設置した食品の乾燥は促進され、乾燥後、変色が少なく色鮮やかで外観が良く、生のフレッシュな香りが強く、生に近い自然な甘さで、「おいしさ」が実感できる乾燥品を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる貯蔵庫または貯蔵室は、保存中に温度・湿度制御を適正に与えることができるので、食品以外の有機物を保存温度や維持時間を変えて、化学反応を制御し、保存する用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 乾燥貯蔵庫
2 断熱仕切壁
3 乾燥貯蔵室(貯蔵区画)
4 冷凍室
5 制御部
6 冷凍サイクル
7 圧縮機
8 放熱器
9 膨張手段
10 冷却器
11 送風機
12 乾燥室ダクト
13 ダンパ
14 乾燥室ヒータ
15 空気温湿度検知部
16 除霜部
17 操作パネル(17a)