(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】エンドエフェクタおよびエンドエフェクタのセット
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20250627BHJP
【FI】
B25J15/08 Q
(21)【出願番号】P 2023510644
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2022006727
(87)【国際公開番号】W WO2022209411
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2021057886
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】菊地 毅
(72)【発明者】
【氏名】河野 一則
(72)【発明者】
【氏名】松山 吉成
(72)【発明者】
【氏名】磯邉 柚香
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-503422(JP,A)
【文献】特開昭60-161539(JP,A)
【文献】特許第5480870(JP,B2)
【文献】特許第3912721(JP,B2)
【文献】特開平10-264068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の穴が設けられた一以上の穴プレートと、
前記一以上の穴プレートと共に用いられるクッション材と、
複数のインナーピンと、前記複数のインナーピンの外側に配置された複数のアウターピンとを含
み、対象物を支持する複数のピンと、
前記複数のアウターピンに対して内側に向かう力を加える加力部と、を備え、
前記複数のインナーピンは、前記一以上の穴プレートに対して前記複数の穴の貫通方向に第1の距離だけ移動可能になるように、前記複数の穴および前記クッション材を貫通し、
前記複数のアウターピンは、前記複数の穴の貫通方向に移動しないように、前記一以上の穴プレートに対して固定される、
エンドエフェクタ。
【請求項2】
前記複数のアウターピンは、前記複数のインナーピンの長さから前記第1の距離を減じた値以下の長さを有する、
請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
複数の穴が設けられた一以上の穴プレートと、
前記一以上の穴プレートと共に用いられるクッション材と、
複数のインナーピンと、前記複数のインナーピンの外側に配置された複数のアウターピンとを含
み、対象物を支持する複数のピンと、
前記複数のアウターピンに対して内側に向かう力を加える加力部と、を備え、
前記複数のインナーピンは、前記一以上の穴プレートに対して前記複数の穴の貫通方向に第1の距離だけ移動可能になるように、前記複数の穴および前記クッション材を貫通し、
前記複数のピンが
前記対象物と接する側の端部とは反対の端部側にスリーブが装着されている、
エンドエフェクタ。
【請求項4】
前記複数のインナーピンにおける、前記対象物と接する側の端部がテーパー状になっている、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記複数のインナーピンにおける、前記対象物と接する領域に滑り止め加工がなされている、
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記複数のアウターピンにおける、前記対象物に近い側の端部が丸みを有する、
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記加力部は、前記複数の穴の貫通方向に沿って移動可能な傾斜部を備え、前記傾斜部が丸みを有する、
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
前記一以上の穴プレートは、2枚の穴プレートであり、
前記クッション材は、前記2枚の穴プレートに挟まれて配置される、
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載のエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタによって支持可能な他のエンドエフェクタを備えた、
エンドエフェクタのセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタのセットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークを吸引する電磁石等の吸引部と、ワークに形沿いするための6本以上の自重により降下するピンを備えた沿形部と、を備えたロボットハンドで、必要に応じてピンの昇降を固定し、また、重量の大きい場合等の必要に応じワークを下方から支える支持釣を使用して、ワークを固定するロボットハンドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示は、上述した従来の状況を鑑みて案出され、対象物(例えばワーク)を支持できるエンドエフェクタを提供することを目的とする。
【0005】
本開示の一態様に係るエンドエフェクタは、複数の穴が設けられた一以上の穴プレートと、前記一以上の穴プレートと共に用いられるクッション材と、複数のインナーピンと、前記複数のインナーピンの外側に配置された複数のアウターピンとを含む複数のピンと、前記複数のアウターピンに対して内側に向かう力を加える加力部と、を備える。前記複数のインナーピンは、前記一以上の穴プレートに対して前記複数の穴の貫通方向に第1の距離だけ移動可能になるように、前記複数の穴および前記クッション材を貫通する。
【0006】
本開示によれば、ワークなどの対象物を支持できるエンドエフェクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】待機段階におけるエンドエフェクタの状態の一例を示す縦断面図
【
図2】型取り段階におけるエンドエフェクタの状態の一例を示す縦断面図
【
図3】支持段階におけるエンドエフェクタの状態の一例を示す縦断面図
【
図4】エンドエフェクタの構成の一例における突起部を含む部分の拡大図
【
図5】押し出し段階におけるエンドエフェクタの状態の一例を示す縦断面図
【
図6】エンドエフェクタが対象物を重力方向に支持する場合を示す概念図
【
図7】支持段階におけるエンドエフェクタの状態の一例を示す縦断面図
【
図8】
図7に対応する、エンドエフェクタが対象物を水平方向に支持する場合を示す概念図
【
図9】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタの構成の一例を示す斜視図
【
図10】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタの構成の一例を示す上面図
【
図11】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタの構成の一例を示す正面図
【
図12】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタの構成の一例を示す側面図
【
図13】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタの構成の一例を示す底面図
【
図14】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタの内部構造を示す斜視図
【
図15】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタの内部構造を示す分解斜視図
【
図16】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタの内部構造を示す断面図
【
図18】本開示の第2の実施形態に係るアウターピンとインナーピン、およびスリーブの対比図
【
図19】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタが対象物を支持するまでの流れを示す概念図
【
図20】本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタが支持した対象物を解放し、初期状態に戻るまでの流れを示す概念図
【
図21】支持状態におけるエンドエフェクタの一例を示す縦断面図
【
図22】
図21に対応する、エンドエフェクタが対象物を水平方向に支持する場合を示す概念図
【
図23】インナーピンの第1端付近の形状を例示する概念図
【
図24】
図23に示したインナーピンを、第1端から第2端の方向へと見た概念図
【
図25】インナーピンの第2領域に施される滑り止め加工の例を示す図
【
図26】本開示の各実施形態に係るエンドエフェクタと共に用いられる制御システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図
【
図27】変形例に係るエンドエフェクタの構成の一例を示す縦断面図
【
図28】変形例に係るエンドエフェクタによる切替アダプタの型取り段階の一例を示す縦断面図
【
図29】変形例に係るエンドエフェクタによる切替アダプタの支持段階の一例を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0009】
(実施の形態1)
本開示においては、重力方向と同方向を下方、重力方向と逆方向を上方として説明する。また、本開示では、重力方向に平行な断面を縦断面、重力方向に垂直な断面を横断面として説明する。
【0010】
工場等で用いられるロボット装置は、図示を省略するロボットアームにエンドエフェクタ2を取り付けることにより、種々の作業を行うことができる。例えば、ロボットアームは、エンドエフェクタを用いて工場の生産ラインを流れるワーク等の対象物Wkをピッキングし、目的地に搬送する作業を行う。対象物Wkは、ビス、ナット、ワッシャーといった比較的小さな物体であってもよいし、リブ、ボスを有する比較的大きな物体(例えば筐体)であってもよい。
【0011】
図1は、待機段階におけるエンドエフェクタ2の状態の一例を示す縦断面図である。
図1は、対象物Wkのピッキングを開始する前の段階(待機段階)における、ロボットアームに接続されたエンドエフェクタ2の状態を示す。
【0012】
エンドエフェクタ2は、穴プレート11、複数のピン12、ベース13、ホルダ14、可動プレート15、およびアクチュエータ16を備える。
【0013】
穴プレート11は、複数の貫通した穴が設けられたプレートである。穴プレート11の厚さは、例えば0.1mm~2mmであってよい。ただしこれには限られない。また、穴プレート11はベース13と一体であってよい。
【0014】
ピン12は、細長い棒状であり、穴プレート11の各穴に挿入される。ピン12の横断面形状及び穴の形状は円形であってよいが、これには限られない。ピン12の直径は、例えば0.1mm~2mmであってよく、穴の直径よりも少し小さい。ピン12の素材は金属であってよい。ただし、ピン12の素材は金属に限られず、例えば樹脂であってもよい。
【0015】
ピン12は、その上端に、穴プレート11に設けられた穴の直径より大きい直径の頭部を有してよい。この頭部がストッパとなって、ピン12は自重により穴プレート11にぶら下がる。また、ピン12の直径は穴の直径よりも少し小さいので、ピン12は、下から押し上げられた場合、上方へ移動できる。ここで、穴プレート11の厚さは、ピン12の長さに対して十分に短い。
【0016】
ピン12の先端部は、先端に向かって狭くなるテーパー状である。つまり、ピン12の先端は、針のように尖った形状である。これにより、後述するように、様々な形状の対象物Wkを支持できる。
【0017】
ピン12は、ピン12のガタによる最大可動半径(例えば上記した穴を頂点とする可動範囲によって形成される円錐の底面の半径)は、当該ピン12の中心から隣接するピン12の中心までの距離以内であってよい。ピン12が隣接するピン12の中心を超えて可動すると、力の伝達効率が低下するためである。ピン12は、アウターピン12Aとインナーピン12Bとを含む。
【0018】
アウターピン12Aは、インナーピン12Bよりも短くてよい。これにより、後述するように、アウターピン12Aに対して内向きに加えられた力(つまり対象物Wkに向かう力)が、インナーピン12Bの先端ではなく、インナーピン12Bの側面に伝達されるので、対象物Wkを支持する力が向上する。
【0019】
ベース13は筒状の形状を呈する。ベース13はロボットアームに接続される。また、ベース13には穴プレート11が固定される。穴プレート11にぶら下がる複数のピン12は、ベース13の端面から、図中の下方に突き出る。
【0020】
ホルダ14は筒の形状を呈しており、アウターピン12Aのさらに外側を囲む。ホルダ14は、ピン12に対してほぼ平行な面を形成する側面部14Aと、筒の内側へと突起する突起部14Bとを有する。突起部14Bは加力部の一例である。
【0021】
可動プレート15は、穴プレート11に対向して設けられ、穴プレート11に近づくまたは離れる方向に移動が可能である。この移動方向は、図中の上下方向である。可動プレート15は、ホルダ14の側面部14Aに設けられたスリット14Cに連結されている。可動プレート15が穴プレート11から離れる方向に移動すると、可動プレート15はスリット14Cの端部に接触する。可動プレート15がさらに移動すると、可動プレート15はホルダ14をピン12の先端から穴プレート11へと向かう方向(図中の上方)に移動させる。また、可動プレート15は、穴プレート11に近づく方向に移動して、穴プレート11から突き出したインナーピン12Bを、インナーピン12Bの先端方向へと押して移動させる。
【0022】
アクチュエータ16は、可動プレート15を穴プレート11に近づける方向、または穴プレート11から遠ざける方向に移動させるか、または移動を停止させる装置である。アクチュエータ16は例えば空気アクチュエータであってよく、空気の吸入及び排出によって、可動プレート15を移動させる。
【0023】
図2は、型取り段階におけるエンドエフェクタ2の状態の一例を示す縦断面図である。
【0024】
待機段階から型取り段階に移行すると、ロボットアームは、載置された対象物Wkに向けてエンドエフェクタ2を下降移動させ、ピン12の先端を対象物Wkに押し付ける。すなわち、複数のピン12による対象物Wkの形状の型取りを行う。この型取りにおいて、対象物Wkの表面に触れたピン12は、それ以上は下降できないため、ピン12の上部を、穴プレート11の上に突き出す。ロボットアームは、例えば、複数のインナーピン12Bのうち少なくとも一部のインナーピン12Bが対象物Wkの載置面に触れるまでエンドエフェクタ2を下降させる。すなわち、インナーピン12Bが穴プレート11の穴に沿ってスライドすることにより、エンドエフェクタ2は、複数のインナーピン12Bによって、対象物Wkの形状を型取りできる。なお、エンドエフェクタ2の下降は、手動で行われてもよいし、自動で行われてもよい。
【0025】
エンドエフェクタ2は、型取り段階において振動を発生させてもよい。引っかかりが生じて下降しきっていないピン12がこの振動により下降し得るので、より正確な型取りができる。したがって、後述する支持段階において、隣接するピン12同士の力の伝達効率、および、対象物Wkに対する力の伝達効率が向上し得る。
【0026】
図3は、支持段階におけるエンドエフェクタ2の状態の一例を示す縦断面図である。
【0027】
型取り段階から支持段階に移行すると、アクチュエータ16は可動プレート15を穴プレート11から遠ざける方向に移動させる(可動プレート15からの上向き矢印参照)。これにより、可動プレート15と連結するホルダ14も追随して移動し、ホルダ14の突起部14Bがアウターピン12Aの側面に接触して当該アウターピン12Aに対して内向きの力(つまり対象物Wkに向かう力)を加える。この内向きの力によりアウターピン12Aは内向きに倒れ、それに伴ってさらにインナーピン12Bも順次内向きに倒れ(インナーピン12Bにおける左右向きの矢印参照)、最終的に対象物Wkに接触するインナーピン12Bが、当該対象物Wkの側面に押し付けられる。当該対象物Wkに接触する複数のインナーピン12Bが対象物Wkに側圧を加えることによって対象物Wkが支持される。なお、アウターピン12Aに対して内向きの力(つまり対象物Wkに向かう力)を加える上述の機構や突起部14Bは、加力部の一例である。なお、突起部14B以外の手段によって加力部を構成してもよい。
【0028】
ロボットアームは、このようにエンドエフェクタ2が対象物Wkを支持した状態で、対象物Wkを、目的地へと搬送する。
【0029】
図4は、エンドエフェクタ2の構成の一例における突起部14Bを含む部分の拡大図である。
図4に示されているように、ホルダ14の移動時において、突起部14Bがアウターピン12Aに接触し、内向きに倒れる。このアウターピン12Aに押されるようにしてインナーピン12Bが内向きに倒れ、インナーピン12Bの側面部分が、対象物Wkに、図に示した横方向から接触する。すなわち、対象物Wkに対して横方向の力が加えられる。この横方向の力を向かい合うようにして反対側からもかけることにより、対象物Wkを掴むように支持することが可能となる。
【0030】
上述のように、ピン12の先端部は、先端に向かって狭くなるテーパー状であってよい。これにより、ピン12の端部が単なる棒状である場合と比較して、内向きに倒れたインナーピン12Bの側面部分が、対象物Wkにより滑らかに接することになる。そのため、対象物Wkに対して横向きの力を加えやすくなり、対象物Wkの支持が安定する。
【0031】
図5は、押し出し段階におけるエンドエフェクタ2の状態の一例を示す縦断面図である。
【0032】
支持段階から押し出し段階に移行すると、アクチュエータ16は、可動プレート15を穴プレート11に最も近づく位置まで移動(図中では、下降)させる。これにより、可動プレート15と連結するホルダ14も追随して移動し、ホルダ14の突起部14Bがアウターピン12Aに接触しなくなる。これにより、アウターピン12Aに対して加えられていた内向きの力が解放される。よって、対象物Wkに接触していたインナーピン12Bの内向きの力も解放されるので、対象物Wkは横向きの力を加えられず、支持されない状態となる。
【0033】
また、可動プレート15の移動によって、穴プレート11に突き出しているインナーピン12Bがその先端方向へと押し出される。押し出されたインナーピン12Bによって対象物Wkもまた押し出される。押し出された対象物Wkは、例えば、生産ラインの次の工程に設けられた容器等に落下する。
【0034】
図6は、エンドエフェクタ2が対象物Wkを重力方向に支持する場合を示す概念図である。
図6は、支持段階におけるエンドエフェクタ2(
図3参照)を、対象物Wkからエンドエフェクタ2へと向かう方向に見た図である。水平な作業台の上等に置かれた対象物Wkをエンドエフェクタ2が上から支持する場合には、
図3に基づいて上述したように、インナーピン12Bの側圧により対象物Wkを適切に支持することができる。
【0035】
図7は、支持段階におけるエンドエフェクタ2の状態の一例を示す縦断面図である。
図8は、
図7に対応する、エンドエフェクタ2が対象物Wkを水平方向に支持する場合を示す概念図である。
【0036】
図8は、
図7におけるエンドエフェクタ2を、対象物Wkからエンドエフェクタ2へと向かう方向に見た図である。アウターピン12Aおよびインナーピン12Bにかかる自重の方向が、ピン12が延びる方向とは異なるため、インナーピン12Bは対象物Wkとの接触以外の力により引っ込んでしまう(
図7中の右上方向への矢印参照)。すると、
図8の破線状の円で示したように、対象物Wkを支持するインナーピン12Bの数が減る。そのため、ピンが対象物Wkの形状を転写する転写機能がなくなり、支持力が低下する。すなわち、エンドエフェクタ2を横向きや上向き等で用いようとした場合、対象物の支持力を維持することは難しい。下記の第2の実施形態においては、横向きや上向き等で用いた場合であっても、対象物の支持力を維持することが可能なエンドエフェクタ1について説明する。
【0037】
図9は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の構成の一例を示す斜視図である。
図10は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の構成の一例を示す上面図である。
図11は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の構成の一例を示す正面図である。
図12は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の構成の一例を示す側面図である。
図13は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の構成の一例を示す底面図である。以下、
図9から
図13に基づいて、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の構成例を説明する。
【0038】
本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1は、キャッチベース120とキャッチホルダ130とを備える。キャッチベース120とキャッチホルダ130は、筒状の形状を呈する。本実施の形態においては、キャッチベース120とキャッチホルダ130は、略六角形の断面形状を呈する筒状に形成されている。ただし、断面形状は略六角形に限られず、例えば略四角形等であってもよい。キャッチホルダ130の凹部にキャッチベース120が挿入される。キャッチベース120の内部には、後述するキャッチブラケット110が挿入されている。
【0039】
キャッチホルダ130には、ネジ113を貫通させるネジ穴131が設けられる。キャッチベース120にはネジ113を貫通させるスライド溝121が設けられる。ネジ113は、ネジ穴131とスライド溝121とを貫通して、キャッチブラケット110に設けられたネジ穴にネジ留めされる。
【0040】
キャッチホルダ130における、アウターピン105およびインナーピン106の先端に近い側の端部には、絞り132が設けられる。絞り132は、キャッチホルダ130と同様に略六角形の断面形状を呈する。絞り132はテーパー状になっている。すなわち、絞り132の略六角形を呈する断面についての径が、アウターピン105およびインナーピン106の先端から遠い側から近い側へと向けて徐々に小さくなる。このテーパー状の部分は、傾斜部と解釈することができる。
【0041】
絞り132の内側から、複数のアウターピン105と、アウターピン105より内側に配置された複数のインナーピン106とが突出する。
【0042】
エンドエフェクタ1にはモータ200が接続される。モータ200は送りネジ201を備える。送りネジ201はキャッチブラケット110に挿入されている。
【0043】
図14は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の内部構造を示す斜視図である。
図15は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の内部構造を示す分解斜視図である。
図16は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の内部構造を示す断面図である。
図17は、穴プレートの実装例を示す概念図である。
図14から
図17に基づいて、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の内部構造について説明する。
【0044】
エンドエフェクタ1のキャッチベース120およびキャッチホルダ130の内部には、ピンモジュール100と、キャッチブラケット110とが挿入されている。
【0045】
キャッチブラケット110は、キャッチベース120内に、キャッチベース120が呈する筒の方向にスライド可能に挿入されている。キャッチベース120には図示を省略するバネ機構が組み込まれている。そのため、外力を受けない場合、キャッチブラケット110はキャッチベース120内部で、
図19および
図20を参照して後述する初期状態に位置づけられる。
【0046】
キャッチブラケット110は、送りネジ受け111と、ピン押出しプレート112と、ネジ穴114とを備える。送りネジ受け111には、モータ200の送りネジ201が挿入される。ピン押出しプレート112は、キャッチブラケット110のキャッチベース120内部での位置に応じて、後述のピンモジュール100が備えるインナーピン106に当接して、インナーピン106を押し出す。ネジ穴114には、ネジ穴131とスライド溝121とを貫通したネジ113がねじ込まれる。
【0047】
モータ200は、送りネジ201を回転させる。従って、送りネジ201が送りネジ受け111の内部にどの程度深く挿入されるかをモータ200が調節することになる。よってモータ200は、キャッチベース120に対するキャッチブラケット110の相対位置(キャッチベース120が呈する筒の方向に沿った位置)を調節する役割を果たす。
【0048】
また、キャッチブラケット110とキャッチホルダ130との間の相対位置が、ネジ113によって固定される。一方で、ネジ113はキャッチベース120のスライド溝121を貫通しているので、キャッチベース120に対するキャッチブラケット110の相対位置は固定されていない。そのため、モータ200は、キャッチベース120に対するキャッチホルダ130の位置をも調節する役割を果たす。
【0049】
ピンモジュール100は、スリーブ101と、穴プレート102と、クッション材103と、穴プレート104と、複数のアウターピン105と、複数のインナーピン106とを備える。
【0050】
穴プレート102、104と、クッション材103について説明する。穴プレートは複数の穴が設けられたプレートであり、パンチプレートとも呼ばれている。
図17に、パンチプレートの一例を示した。穴プレート102、104が備える複数の穴の配列は、千鳥配列であってよい。ただし、それ以外の配列の態様を排除する意図はない。穴プレート102と穴プレート104との間に、クッション材103が挟み込まれる。2枚の穴プレート102、104によってクッション材103を挟み込むことにより、エンドエフェクタ1の動作中にクッション材103が穴プレートから剥がれない。そのため、エンドエフェクタ1がクッション材103を安定して保持することができる。
【0051】
次に、アウターピン105とインナーピン106について説明する。アウターピン105は、穴プレート102、104の外周付近に複数配置される。アウターピン105は、穴プレート102、104の外周付近に、キャッチベース120の横断面形状と同様の断面形状を描くように配置されてよい。図示した第2の実施形態においては、複数のアウターピン105は六角形を描くように配置される。インナーピン106は、アウターピン105の内側に多数配置される。
【0052】
複数のアウターピン105は、穴プレート102に設けられた穴と、クッション材103と、穴プレート104に設けられた穴とを貫通する。なお、穴プレート102と、クッション材103と、穴プレート104とをまとめて、穴プレートユニットと表記する。アウターピン105は第1端と、第1端とは反対側の第2端とを有する。アウターピン105の第1端は、アウターピン105が穴プレートユニットを貫通する状態において、穴プレートユニットから対象物Wkと接することが可能な方向へと突出する側の端である。アウターピン105の第2端は、アウターピン105が穴プレートユニットを貫通する状態において、穴プレートユニットから対象物Wkと接することが可能な方向とは反対の方向へと突出する側の端である。このとき、アウターピン105の第2端側にスリーブ101が装着される。これを言い換えると、エンドエフェクタ1が支持する対象物Wkと接する側の端部とは反対の端部側にスリーブ101が装着される。
【0053】
複数のインナーピン106は、穴プレート102に設けられた穴と、クッション材103と、穴プレート104に設けられた穴とを貫通する。インナーピン106は第1端と、第1端とは反対側の第2端とを有する。インナーピン106の第1端は、インナーピン106が穴プレートユニットを貫通する状態において、穴プレートユニットから対象物Wkと接することが可能な方向へと突出する側の端である。インナーピン106の第2端は、インナーピン106が穴プレートユニットを貫通する状態において、穴プレートユニットから対象物Wkと接することが可能な方向とは反対の方向へと突出する側の端である。このとき、インナーピン106の第2端側にスリーブ101が装着される。これを言い換えると、これを言い換えると、エンドエフェクタ1が支持する対象物Wkと接する側の端部とは反対の端部側にスリーブ101が装着される。
【0054】
図18は、本開示の第2の実施形態に係るアウターピン105とインナーピン106、およびスリーブ101の対比図である。
【0055】
図18においては、あくまで例示として、アウターピン105、インナーピン106、およびスリーブ101の寸法を、ミリメートル単位で記載している。当然ながら、当業者は記載されているものとは異なる寸法でアウターピン105、インナーピン106、およびスリーブ101を構成してもよい。
図18には、アウターピン105の第1端がある側の部分である第1部分S1と、第2端がある側の部分である第2部分S2とが記載されている。
図18には、インナーピン106の第1端がある側の部分である第1部分T1と、第2端がある側の部分である第2部分T2が、併せて記載されている。
【0056】
アウターピン105の第2部分S2の直径(
図18の例では1ミリメートル)は、第1部分S1付近の直径(
図18の例では1.5ミリメートル)よりも小さい。また、
図17に示した穴プレート102、104の穴径Dは、第2部分S2の径以上であり、かつ、第1部分S1の径よりも小さい。そのため、アウターピン105の第2部分S2を、穴プレートユニットに貫通させることができる。第2部分S2と第1部分S1との間には、径が増加する箇所に段差が設けられている。段差が穴プレート104の穴以外の部分に当接する。これにより、アウターピン105の穴プレートに対するそれ以上の移動は制限される。
【0057】
インナーピン106の第2部分T2の径(
図18の例では1ミリメートル)は、第1部分T1付近の径(
図18の例では1.5ミリメートル)よりも小さい。また、
図17に示した穴プレート102、104の穴径Dは、第2部分T2の径以上であり、かつ、第1部分T1の径よりも小さい。そのため、インナーピン106の第2部分T2を、穴プレートユニットに貫通させることができる。第2部分T2と第1部分T1との間には、径が増加する箇所に段差が設けられている。段差が穴プレート104の穴以外の部分に当接する。これにより、インナーピン106の穴プレート104に対するそれ以上の移動は制限される。
【0058】
スリーブ101は中空の筒状に形成される。スリーブ101の内径は、第2部分S2およびT2の径に対応する。スリーブ101の外径は、第1部分S1およびT1の径に相当してよい。スリーブ101の径は穴プレート102の穴径よりも大きくてよい。なお、インナーピン106の第2部分T2にスリーブ101が取り付けられる。よって、スリーブ101は穴プレートユニットからインナーピン106が脱落することを防ぐストッパの機能も奏することができる。この場合、インナーピン106の段差とスリーブ101との間の距離から、穴プレートユニットの厚みを減じた距離が、インナーピン106が移動可能な距離、すなわち第1の距離となる。
【0059】
図19は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1が、対象物Wkを支持するまでの流れを示す概念図である。
図20は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1が、支持した対象物Wkを解放し、初期状態に戻るまでの流れを示す概念図である。なお、
図19および
図20における構成要素は
図9から
図18に示したものと同じであるため、一部の構成要素についてのみ、同じ参照符号を付して明示し、他の構成要素については参照符号の表記が省略されている。また、エンドエフェクタ1が備える複数のピンの先端が重力方向を向いている状態を仮定して説明する。
【0060】
図19に示した整列状態においては、モータ200による制御により、キャッチブラケット110がキャッチベース120に対して図中の下方向にスライドする。その結果、ピン押出しプレート112がインナーピン106の第2端を押し、インナーピンの第2端が同じ高さに揃うように、インナーピン106を整列させる。
【0061】
次に、キャッチブラケット110に設けられた、図示を省略するバネ機構により、キャッチブラケット110がキャッチベース120に対して所定の位置(高さ)まで戻る。インナーピン106は整列された状態を維持している。このようなエンドエフェクタ1の状態が、初期状態となる。
【0062】
転写状態においては、エンドエフェクタ1を対象物Wkへと押し付ける。この押し付けは、人間が行ってもよく、エンドエフェクタ1が装着されたロボットアームが行ってもよい。複数のインナーピン106のうち、対象物Wkと接触したものは、穴プレートユニットに対して上方向にスライドする。
【0063】
支持状態においては、モータ200による制御により、キャッチブラケット110がキャッチベース120に対して
図19中の上方向にスライドする。キャッチブラケット110に対して固定されているキャッチホルダ130もまた、キャッチベース120に対して上方向にスライドする。その結果、絞り132の内壁における傾斜部がアウターピン105に接触して当該アウターピン105に対して内向きの力(つまり対象物Wkに向かう力)を加える。この内向きの力によりアウターピン105は内向きに倒れ、それに伴ってさらに内側のインナーピン106も順次内向きに倒れ、最終的に対象物Wkに接触するインナーピン106が、当該対象物Wkの側面に押し付けられる。当該対象物Wkに接触する複数のインナーピン106が対象物Wkに側圧を加えることによって、対象物Wkが支持される。
【0064】
次に、
図20に基づいて説明する。
図20に示した支持状態は、
図19に示した支持状態と同じであるため、詳しい説明は省略する。
【0065】
解放状態においては、モータ200が送りネジ201へ加えていた回転方向への付勢力をオフにする。つまり、送りネジ201が自由に回転可能となる。すると、キャッチブラケット110に設けられたバネ機構の、バネが戻る力によって送りネジ201が回転し、キャッチブラケット110がキャッチベース120に対して
図20中の下方向にスライドする。キャッチブラケット110に対して固定されているキャッチホルダ130もまた、キャッチベース120に対して下方向にスライドする。その結果、アウターピン105は絞り132によって加えられていた内向きの力から解放される。それに伴ってさらに内側のインナーピン106も、内向きの力から解放される。対象物Wkに接触する複数のインナーピン106が対象物Wkに加えていた側圧がなくなることによって、対象物Wkがインナーピン106から解放される。
【0066】
押出状態においては、キャッチブラケット110に設けられたバネ機構による、バネの反動によって、キャッチブラケット110がキャッチベース120に対して
図20中の下方向にさらにスライドする。その結果、ピン押出しプレート112がインナーピン106の第2端を押し、インナーピン106の第2端が同じ高さに揃うように、インナーピン106を整列させる。すなわち、
図20の押出状態は、
図19の整列状態と同様に、インナーピン106を整列させる。この時、対象物Wkはインナーピン106によって押し出される。
【0067】
キャッチブラケット110に設けられたバネ機構により、キャッチブラケット110がキャッチベース120に対して所定の位置(高さ)まで戻る。インナーピン106は整列された状態を維持している。すなわちエンドエフェクタ1の状態が初期状態に戻る。
【0068】
図21は、支持状態におけるエンドエフェクタ1の一例を示す縦断面図である。
図22は、
図21に対応する、エンドエフェクタ1が対象物Wkを水平方向に支持する場合を示す概念図である。
【0069】
図22は、支持状態におけるエンドエフェクタ1を、対象物Wkからエンドエフェクタ1へと向かう方向に見た図である。
図7および
図8の例と同様に、
図21および
図22においても、アウターピン105およびインナーピン106にかかる自重の方向が、ピンが延びる方向とは異なる。そのため、インナーピン106には、対象物Wkとの接触以外の力がかかる。しかし第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1の場合、インナーピン106は上述のようにクッション材103を貫通している。そのため、クッション材103が抵抗となって、インナーピン106が意図しないスライドを行うことを防止する。したがって、
図22に示したように、対象物Wkを支持するインナーピン106の数が減らない。そのため、ピンが対象物Wkの形状を転写する転写機能が損なわれず、支持力が低下しない。これは、エンドエフェクタ1が対象物Wkを他の方向に、例えば上方向に支持する場合でも同様である。インナーピン106が貫通するクッション材103が、インナーピン106のスライド移動に対する抵抗力を発揮することにより、インナーピン106の意図しない落下を防止することもできる。すなわち、横方向や上方向などの、どの方向に向けても支持力が低下しないエンドエフェクタ1を得ることができる。このような、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1によって、幅広い作業を行うことができるようになる。例えば、エンドエフェクタ1は、壁に設けられたスイッチをつまんでオンオフ制御することができる。エンドエフェクタ1は、ドアノブを把持して回転させ、ドアを開けることができる。また、エンドエフェクタ1は、室内の天井に配置された裸電球を回転させて取り外すことができる。
【0070】
また、アウターピン105およびインナーピン106のうち、少なくともインナーピン106に対して、適切な厚みを有するスリーブ101が取り付けられる。スリーブ101が取り付けられることにより、スリーブ101が取り付けられた箇所においてインナーピン106が隙間なく整列する。また、インナーピン106が穴プレート102、104の穴に対して斜めにずれて別のピンにひっかかることが無くなる。そのため、エンドエフェクタ1をどの方向(例えば横方向や上方向)に用いたとしても、インナーピン106が対象物Wkの形状を正しく転写することができる。従って、エンドエフェクタ1が対象物Wkをしっかりと支持することができる。
【0071】
ここで、クッション材103、アウターピン105、絞り132、およびインナーピン106について、より詳しく説明する。
【0072】
(クッション材)
クッション材103は、インナーピン106が、対象物Wkから受ける力以外の、意図しない力を受けてスライドすることを防止する。この観点から、クッション材103は、貫通するインナーピン106に対して摩擦力を与えることが可能な材質によって形成される。クッション材103は例えばウレタンフォームによって形成されてよいが、材質はこれには限られない。クッション材103は弾性を有している。インナーピン106が貫通するクッション材103の孔径は、インナーピン106の径よりも小さいものとなるのが好ましい。
【0073】
(アウターピンおよび絞り)
アウターピン105は、穴プレート104の穴の方向にスライドしないように、穴プレート104に対して固定される。アウターピン105は、インナーピン106よりも短い。インナーピン106の、穴プレート104の穴の方向に沿った可動範囲(ストローク)を第1の距離とすると、アウターピン105は、インナーピン106の長さから第1の距離を減じた値以下の長さを有する。
【0074】
アウターピン105の第1端、すなわち、エンドエフェクタ1が支持する対象物Wkに近い側の端部は丸みを有する。この丸みが設けられていることにより、キャッチブラケット110と共にスライドする絞り132の内壁(傾斜部)とアウターピン105の第1端とが接する際に、互いを摩耗させることを防ぐ。例えば、アウターピン105の第1端は球状であってよい。摩耗を防ぐ観点から、絞り132の内壁(傾斜部)に丸みが設けられていてもよい。なお、絞り132は加力部の一態様である。
【0075】
アウターピン105の第1端または絞り132の内壁(傾斜部)に丸みが設けられていることにより、キャッチホルダ130の絞り132が穴プレート104の穴の方向に沿ってスライドして、
図19に示した転写状態から支持状態へと移行する際に、絞り132の内壁(傾斜部)がアウターピン105に対して内向きの力を滑らかに伝える。アウターピン105は内向きに滑らかに倒れ、そのさらに内側のインナーピン106が対象物Wkに対して滑らかに側圧をかける。結果として、エンドエフェクタ1が対象物Wkを滑らかに支持することができる。
【0076】
(インナーピン)
図23は、インナーピン106の第1端付近の形状を例示する概念図である。
図24は、
図23に示したインナーピン106を、第1端から第2端の方向へと見た概念図である。インナーピン106の第1部分T1(
図18参照)における、対象物Wkと接触する領域のうち、第1端を含む第1領域REG1は、テーパー状となるように加工が施されている。これにより、インナーピン106の端部が単なる棒状である場合と比較して、内向きに倒れたインナーピン106の側面部分が、対象物Wkにより滑らかに接することになる。そのため、対象物Wkに対して横向きの力を加えやすくなり、対象物Wkの支持が安定する。また、対象物Wkが小さい場合も、複数のインナーピン106におけるテーパー状となった部分で対象物Wkを囲うように掴むことができる。
図24には、第1領域REG1のテーパーの傾斜度をどの程度にするかを示す一例が示されている。
【0077】
インナーピン106の第1部分T1(
図18参照)における、対象物Wkと接触する領域のうち、第2領域REG2には、滑り止め加工がなされてよい。たとえば対象物Wkがヒラメやナマコなどの、滑りやすい物体である場合、エンドエフェクタがこのような物体を支持するのはそもそも難しい。本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1は、第2領域REG2において、引っ掛かりができるような滑り止め加工を施すことにより、滑りやすい物体を確実に支持することができる。この滑り止め加工は例えば、第2領域REG2の中心部分である芯1061を残して、芯1061の周辺部分を、摩擦力が上がるような形状に加工することによって行われる。
【0078】
図25は、インナーピン106の第2領域REG2に施される滑り止め加工の例を示す図である。引っ掛かりのある形状(引掛け形状)を例えば円柱とする場合は、芯1061を残してその周辺部分を切削することにより、第2領域REG2の表面形状が形成される。引掛け形状を、エッジのある形状とする場合、例えばインナーピン106自体を3Dプリンタを用いて形成することにより、第2領域REG2の表面形状が形成される。
【0079】
その他、インナーピン106の第2領域REG2の部分を、芯1061を残して削り、芯1061の周囲にゴム製の滑り止め部材を装着してもよい。
【0080】
なお、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1について説明した各構成要素は、本開示の第1の実施形態に係るエンドエフェクタ2について適用されてもよく、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
図26は、本開示の各実施形態に係るエンドエフェクタと共に用いられる制御システム500のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御システム500は、上述したエンドエフェクタ1またはエンドエフェクタ2の動作を制御する。なお、制御システム500は、図示を省略するロボットアームをさらに制御してもよい。制御システム500は、ロボットアームの内部に設けられてもよいし、ロボットアームの外部に設けられてもよい。
【0082】
制御システム500は、プロセッサ501、メモリ502、入力装置503、エンドエフェクタ接続部505、通信装置506、及び、入出力インターフェース507を備える。メモリ502、入力装置503、エンドエフェクタ接続部505、通信装置506、入出力インターフェース507は、それぞれ、プロセッサ501と、データ又は情報の入出力が可能に、内部バス等で接続される。
【0083】
プロセッサ501は、制御システム500の制御部として機能する。例えば、プロセッサ501は、制御システム500の各部の動作を全体的に統括するための制御処理、制御システム500の各部との間のデータ又は情報の入出力処理、データの計算処理、及び、データ又は情報の記憶処理を行う。また、プロセッサ501は、エンドエフェクタ1、エンドエフェクタ2、およびロボットアームを制御する制御部としても機能する。プロセッサ501は例えば、エンドエフェクタ2についてのアクチュエータ16、またはエンドエフェクタ1についてのモータ200の動作を制御してよい。プロセッサ501は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等であってよい。
【0084】
メモリ502は、プロセッサ501によって実行される各種プログラム(OS、アプリケーションソフト等)及び各種データを格納する。メモリ502は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)及び/又はRAM(Random Access Memory)等によって構成される。
【0085】
入力装置503は、ユーザとの間のヒューマンインターフェースとしての機能を有し、ユーザの操作を入力する。言い換えると、入力装置503は、制御システム500により実行される各種の処理における、入力または指示に用いられる。入力装置503の例は、キーボード又はマウスである。あるいは、入力装置503は、ロボットアームのコントローラ(図示しない)に接続されたプログラミングペンダントである。
【0086】
エンドエフェクタ接続部505は、エンドエフェクタ1またはエンドエフェクタ2を、制御システム500に接続するための装置である。エンドエフェクタ接続部505とエンドエフェクタ1またはエンドエフェクタ2との間は、コネクタ及びケーブルといった有線で接続される。ただし、エンドエフェクタ接続部505とエンドエフェクタ1またはエンドエフェクタ2との間は、無線で接続されてもよい。
【0087】
通信装置506は、ネットワーク508を介して外部と通信を行うための装置である。この通信は、有線通信又は無線通信の何れであってもよい。
【0088】
入出力インターフェース507は、制御システム500を構成する各装置の間でデータ又は情報を入出力するインターフェースとしての機能を有する。
【0089】
なお、
図26に示す制御システム500の構成は一例であり、制御システム500は、
図26に示す構成要素のうちの一部を備えなくてもよいし、
図26に図示しない追加の構成要素をさらに備えてもよい。
【0090】
(第1の実施形態の変形例)
本開示の第1の実施形態に係るエンドエフェクタ2の構成は、上述した構成に限られない。例えば、ホルダ14の突起部14Bがエアチューブによって構成され、エアチューブがアウターピン12Aの下端よりも上部に配置されてよい。この場合、エンドエフェクタ2は、支持段階において、エアチューブに空気を注入する。これにより、空気の注入によって膨張したエアチューブがアウターピン12Aを側面から圧迫して当該アウターピン12Aに対して内向きの力(つまり対象物Wkに向かう力)を加える。この内向きの力により、アウターピン12Aは内向きに倒れ、それに伴ってインナーピン12Bも順次内向きに倒れ、最終的に対象物Wkに接触するインナーピン12Bが当該対象物Wkの側面に押し付けられる。このような構成であっても、エンドエフェクタ2は、対象物Wkを支持できる。エアチューブは、加力部の一態様である。
【0091】
あるいは、エンドエフェクタ2は、ホルダ14を備えずに、通電すると先端部分が内向き(つまり対象物Wkに向かう向き)に変形する形状記憶合金のアウターピン12Aを備える構成であってもよい。この場合、エンドエフェクタ2は、支持段階において、アウターピン12Aに通電する。これにより、アウターピン12Aが内向きに変形し、それに伴ってインナーピン12Bも順次内向きに倒れ、最終的に対象物Wkに接触するインナーピン12Bが当該対象物Wkの側面に押し付けられる。このような構成であっても、エンドエフェクタ2は、対象物Wkを支持できる。アウターピン12Aに通電する装置は、加力部の一態様である。
【0092】
次に、切替アダプタを支持するエンドエフェクタ2について説明する。上述の実施の形態1においては、エンドエフェクタ2が支持する対象物Wkは、例えば工場等におけるピッキングの対象となる、ワークであった。一方、エンドエフェクタ2は、他のエンドエフェクタを支持してもよい。このような他のエンドエフェクタの一例として、後述の切替アダプタ33がある。
【0093】
以下、対象物Wkを吸着可能な吸着パッド32を備える切替アダプタ33を支持して利用するエンドエフェクタ2について説明する。
【0094】
図27は、変形例に係るエンドエフェクタ2の構成の一例を示す縦断面図である。
【0095】
エンドエフェクタ2は、本体吸着ユニット31をさらに備える。本体吸着ユニット31は
図28に基づき説明する吸着パッド32と連結可能であって、連結された吸着パッド32に対する空気の吸入及び排出の経路を構成する。
【0096】
なお、アクチュエータ16が空気の吸入及び排出を行うものである場合、本体吸着ユニット31は、アクチュエータ16と共通の空気搬送系統に接続されてもよい。
【0097】
図28は、変形例に係るエンドエフェクタ2による切替アダプタ33の型取り段階の一例を示す縦断面図である。
図29は、変形例に係るエンドエフェクタ2による切替アダプタ33の支持段階の一例を示す縦断面図である。
【0098】
まず、
図28に示すように、切替アダプタ33が吸着パッド32を備えている。この吸着パッドに対する空気の吸入及び排出を行う管34が本体吸着ユニット31に連結される。これにより、吸着パッド32から本体吸着ユニット31までの空気の吸入及び排出の通路が形成される。
【0099】
次に、
図28に示すように、エンドエフェクタ2は、型取り段階において、切替アダプタ33の型取りを行う。そして、
図29に示すように、エンドエフェクタ2は、支持段階において、切替アダプタ33を支持する。
【0100】
これにより、エンドエフェクタ2は、支持した切替アダプタ33を通じて、吸着パッド32を利用できる。すなわちロボットアームは、本開示に係るピン型のエンドエフェクタ2を交換することなく、切替アダプタ33を通じて、吸着パッド32のような別の種類のエンドエフェクタを利用できる。
【0101】
なお、切替アダプタ33に装着される別の種類のエンドエフェクタは、上述した吸着パッド32に限られない。例えば、切替アダプタ33には、フィンガタイプ、電磁タイプ、又はジャミングタイプのエンドエフェクタが装着されてもよい。
【0102】
なお、第1の実施形態の変形例について説明した各構成要素は、本開示の第2の実施形態に係るエンドエフェクタ1について適用されてもよく、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0103】
以上のように、本開示の一態様に係るエンドエフェクタは、複数の穴が設けられた一以上の穴プレートと、穴プレートと共に用いられるクッション材と、複数のピンとを備える。複数のピンは、複数のインナーピンと、インナーピンの外側に配置された複数のアウターピンとを含む。インナーピンは、穴プレートに対して穴の貫通方向に第1の距離だけ移動可能になるように、穴プレートの穴およびクッション材を貫通する。エンドエフェクタは、アウターピンに対して内側に向かう力を加える加力部をさらに備える。これにより、横向きや上向き等で用いた場合であっても、対象物の支持力を維持することが可能なエンドエフェクタを提供することができる。
【0104】
アウターピンは、穴プレートの穴の貫通方向に移動しないように、穴プレートに対して固定される。これにより、固定されたアウターピンが内向きに倒れることにより、インナーピンに内向きの力を加えることができる。
【0105】
アウターピンは、インナーピンの長さから第1の距離を減じた値以下の長さを有する。これにより、インナーピンが穴プレートの穴の方向に沿って移動する可動範囲(ストローク)を確保することができる。
【0106】
複数のピンにおける、エンドエフェクタが支持する対象物と接する側の端部とは反対の端部側にスリーブが装着されている。これにより、スリーブが取り付けられた箇所においてインナーピンが隙間なく整列する。また、インナーピンが穴プレートの穴に対して斜めにずれて別のピンにひっかかることが無くなる。そのため、エンドエフェクタをどの方向(例えば横方向や上方向)に用いたとしても、インナーピンが対象物の形状を正しく転写することができる。従って、エンドエフェクタが対象物をしっかりと支持することができる。
【0107】
インナーピンにおける、エンドエフェクタが支持する対象物と接する側の端部がテーパー状になっている。これにより、インナーピンの端部が単なる棒状である場合と比較して、内向きに倒れたインナーピンの側面部分が、対象物により滑らかに接することになる。そのため、対象物に対して横向きの力を加えやすくなり、対象物の支持が安定する。また、対象物が小さい場合も、複数のインナーピンにおけるテーパー状となった部分で対象物を囲うように掴むことができる。
【0108】
インナーピンにおける、エンドエフェクタが支持する対象物と接する領域に滑り止め加工がなされている。これにより、滑りやすい物体を確実に支持することができる。
【0109】
アウターピンにおける、エンドエフェクタが支持する対象物と接する側の端部が丸みを有する。これにより、当該端部と加力部との間の接触による摩耗を防ぐことができる。
【0110】
加力部は、穴プレートの穴の貫通方向に沿って移動可能な傾斜部を備え、傾斜部が丸みを有する。これにより、アウターピンにおける、エンドエフェクタが支持する対象物と接する側の端部と加力部(傾斜部)との間の接触による摩耗を防ぐことができる。
【0111】
クッション材は、2枚の穴プレートに挟まれて配置されてもよい。これにより、クッション材は、2枚の穴プレートに安定して保持される。
【0112】
エンドエフェクタのセットが、上述のエンドエフェクタと、上述のエンドエフェクタによって支持可能な他のエンドエフェクタを備える。これにより、上述のエンドエフェクタを取り替えずに、他のエンドエフェクタを支持して作業を行うことができる。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示のエンドエフェクタは、物体を支持する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 エンドエフェクタ
2 エンドエフェクタ
11 穴プレート
12 ピン
12A アウターピン
12B インナーピン
13 ベース
14 ホルダ
14A 側面部
14B 突起部
14C スリット
15 可動プレート
16 アクチュエータ
31 本体吸着ユニット
32 吸着パッド
33 切替アダプタ
34 管
100 ピンモジュール
101 スリーブ
102 穴プレート
103 クッション材
104 穴プレート
105 アウターピン
106 インナーピン
1061 芯
110 キャッチブラケット
112 プレート
113 ネジ
114 ネジ穴
120 キャッチベース
121 スライド溝
130 キャッチホルダ
131 ネジ穴
200 モータ
201 ネジ
500 制御システム
501 プロセッサ
502 メモリ
503 入力装置
505 エンドエフェクタ接続部
506 通信装置
507 入出力インターフェース
508 ネットワーク
Wk 対象物