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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20250627BHJP
【FI】
C02F1/00 S
C02F1/00 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020112213
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011222
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】榊原 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐岡 美咲
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和大
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/156012(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/131650(WO,A1)
【文献】特開2011-173079(JP,A)
【文献】特開平01-261583(JP,A)
【文献】特表平10-500755(JP,A)
【文献】特開2020-049447(JP,A)
【文献】中国実用新案第209685433(CN,U)
【文献】特開平04-122493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 1/50
C02F 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材を内包した濾過部と、
前記濾過部に接続させる原水流入配管と、
前記原水流入配管において前記濾過部より上流側に設けられ、前記原水流入配管の経路内を流れる原水に薬剤を添加する薬剤供給部と、
前記濾過部から濾過後の浄化した前記源水を取り出す浄水吐出配管と、
前記原水流入配管の前記経路内を前記薬剤供給部へ向かう前記原水の一部を排水する余剰排水管と、を有し、
前記濾過部には、前記薬剤を添加された前記源水が流入し、
前記原水流入配管の経路内であって、前記薬剤供給部の上流側から前記余剰排水管に接続するバイパス排水分岐部を設け、
前記バイパス排水分岐部から前記余剰排水管に流れる排水量を調整する流量調整部を設け、前記流量調整部は、前記原水流入配管を流れる前記源水による圧力が所定の値を超えた時に開く弁を有する水処理装置。
【請求項2】
前記流量調整部は、内部にダイヤフラムによって流路を開閉する二方弁とした請求項1記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過と薬剤添加によって水を浄化する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理装置における酸化剤の供給には固体の酸化剤を水に接触させる薬剤供給装置が用いられている。例えば、井戸水を浄水処理する場合には、固体の次亜塩素酸カルシウムを徐々に溶かす薬剤供給装置を用いて、浄水処理対象となる原水を酸化させることが可能である。
【0003】
定量ポンプで薬剤を注入するシステム、もしくは流量に関わらず一定量の薬剤を溶出させる薬剤供給装置においては、流量が増加した際において薬剤濃度が低下する。
【0004】
図7に示す通り、固形薬剤供給装置101においては、取水口102から原水を流入させて水溶性固形薬剤103に原水を接触させる、一定の範囲内で流量が増えた際に薬剤接触相104内の水位が上昇し、接触させる水溶性固形薬剤103の量が増加させることが可能である。本機構により、流量が上昇した際も薬剤溶出量が上昇し、薬剤の濃度低下を抑えることが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公昭58-49836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような水処理装置においては、薬剤の添加量を調整し、所望の濃度の薬液を得る必要がある。特に、簡単な構成によって所望の濃度の薬液が得られることが望まれている。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、水処理装置内部において、固形薬剤供給装置に過剰な水流・圧力がかかることを抑制することにより、薬剤を浸す原水の水圧・水流を制限し、所望の濃度の薬液を得ることができる水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る水処理装置は、濾材を内包した濾過部と、前記濾過部に接続させる原水流入配管と、前記原水流入配管において前記濾過部より上流側に設けられ、前記原水流入配管の経路内を流れる原水に薬剤を添加する薬剤供給部と、前記濾過部から濾過後の浄化した前記源水を取り出す浄水吐出配管と、前記原水流入配管の前記経路内を前記薬剤供給部へ向かう前記原水の一部を排水する余剰排水管と、を有し、前記濾過部には、前記薬剤を添加された前記源水が流入し、前記原水流入配管の経路内であって、前記薬剤供給部の上流側から前記余剰排水管に接続するバイパス排水分岐部を設け、前記バイパス排水分岐部から前記余剰排水管に流れる排水量を調整する流量調整部を設け、前記流量調整部は、前記原水流入配管を流れる前記源水による圧力が所定の値を超えた時に開く弁を有するという構成により、所期の目的を達成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水処理装置において、バイパス排水分岐部で余剰排水管に原水を分岐し、原水流入配管から薬剤供給部に流入する原水を抑制することにより、所望の水量・水圧を固形薬剤に与え、所望の濃度の薬液を供給することが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1の水処理装置の全体構成の概略図
図2】同水処理装置の内部構造斜視図
図3】同水処理装置の薬剤供給部を示す斜視図
図4】同水処理装置の薬剤供給部の断面図
図5】同水処理装置の高圧時における濾過処理時の水の流れを示す概略図
図6】同水処理装置の流量調整部の断面図
図7】従来の水処理装置の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る水処理装置1は、井戸水または貯水槽に蓄えた水を原水とし、この原水に含まれる金属イオンや濁質成分を除去する濾過処理と、濾過処理によって系内に蓄積された金属イオンの凝集物、濁質成分を系外へ排出する逆洗処理を行うものである。
【0013】
図1は、本実施の形態の水処理装置1の全体構成を示すとともに、濾過処理時における水の流れを示した概略図となっている。図2では、斜視図によって水処理装置1の配管構造を示す。
【0014】
図1、2に示すように、水処理装置1は、濾材を内包した濾過部2と、原水に対して薬剤を添加する薬剤供給部3を有し、濾過部2、薬剤供給部3を後述するように配管で接続して構成される。濾過部2は、原水から金属イオンや濁質成分を除去し、原水を浄化するものであり、いわば、水処理装置1の心臓部である。濾過部2に溜まった汚れは、原水を逆流させ汚れを排出する運転(逆洗)を行った後、濾過方向に原水を流す運転(リンス)を行うことで濾過部2を綺麗に保つことができ、濾過部2を繰り返し使用することが可能である。この濾過部2に対して、原水を送る側の配管を原水流入配管10とし、濾過部2で浄化された水を濾過部2から送出する配管を浄水吐出配管20とし、逆洗運転で汚れを排出する配管を逆洗ドレン管40とし、リンス処理で原水を捨てる配管をリンスドレン管27とする。浄化された水は、水処理装置1外部に設けられる浄水タンクなどに貯められ、必要な時に生活水として使われることになる。
【0015】
水処理装置1に対しては、原水流入配管10の入口側(濾過部2の反対側)に接続された電動ポンプ4によって原水が送られる。なお、電動ポンプ4を使用する代わりに、貯水槽を高所に設け、貯水槽と水処理装置1との高低差によって原水を水処理装置1に送る方法でもよい。また、地域などで共同運営している水道水を直接接続してもよい。本実施の形態では、井戸、貯水槽、水道等に加え、原水を送り出す装置類を含めて水源とする。
【0016】
電動ポンプ4は、井戸水または貯水槽へ蓄えた水を吸い上げ、吐出する電動機で駆動するポンプであって、例えば、渦巻きポンプ、タービンポンプなどの遠心ポンプや、渦流ポンプ(カスケードポンプ)、ジェットポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプなどが用いられる。また、井戸水位が低い場合は、吸い上げ型のポンプではなく、サブマーシブルポンプ等、水中ポンプを用いると良い。一般家庭で用いる場合、井戸の深さは、浅井戸であれば1メートルから10メートル程度、深井戸であれば10メートルから30メートル以上吸い上げる必要がある。後段の配管や水処理装置の損失水頭を考慮すると、20メートル以上の揚程があるものがよく、渦流ポンプやジェットポンプなどがより好ましい。電動式ポンプで吐出する流量は、例えば5リットルから100リットル毎分程度であるが、一般家庭用であれば5リットルから50リットル毎分程度の流量特性をもつものがより好ましい。
【0017】
原水流入配管10、浄水吐出配管20は、電動ポンプ4の水圧に耐えられる材質、構造であればよい。具体的には、耐久性、加工のしやすさから、例えば、塩化ビニル樹脂や鋼管、あるいは、これらの複合材料を用いた直管や配管継手が使用できる。なお、呼び径は損失水頭が低くなるよう大きい方が好ましく、例えば呼び径13から50ミリメートル、厚みは1から5ミリメートル程度のものが好ましい。電動ポンプ4の最大圧に耐えうる部材選定が困難な場合は、電動ポンプ4と水処理装置1の間に減圧弁や調圧弁、逃し弁を取り付けると良い。
【0018】
薬剤供給部3は、原水流入配管10の経路内に設けられている。詳しくは、後述するが、薬剤供給部3は、原水に対して酸化剤を添加し、原水に含まれる金属イオンを水に難溶な物質として凝集させ、濾過部2において捕集しやすくする働きをする。
【0019】
(濾過部)
濾過部2は、内部に濾材を充填したもので、原水を通過させて浄化するものである。濾材としては、上層に活性炭、中層にはマンガン砂、下層には砂利を用いた3層で構成されている。本実施の形態の濾過部2は、上層、中層を中心に濾過の作用が働く。一方、最下層に比較的粒径の大きい砂利層を設け、水の流れを良くするとともに、下部から濾材が流出しないようにしている。このような構成により、濾過部2の入口から原水を流入させ、出口からは浄化された水が排出されることになる。
【0020】
(薬剤供給部)
次に、薬剤供給部3について、図2図3図4用いて説明する。
【0021】
薬剤供給部3は、上述のとおり、その内部に入れられた薬剤によって、原水に含まれる金属イオンの凝集を促進し、濾過部2で補足しやすくするために設けられている。図2に示すように、薬剤供給部3は、水処理装置1の最上部に配置されている。すなわち、図3に示すように、薬剤供給部3は、原水流入配管10において、原水入口11から上方に向けて立ち上がった配管の上部に備えられている。また、薬剤供給部3の出口からの配管(流出路34)は、下方に伸びた後、分岐部13を経て濾過部2へと接続されている。薬剤供給部3は、流入路31、薬剤路32、バイパス路33、流出路34を有している。流入路31は、原水流入配管10と接続され、原水を薬剤供給部3に流入させる。薬剤路32は、流入路31から分岐し、薬剤を溶かすものである。バイパス路33は、同じく流入路31から分岐し、薬液を必要な濃度に調整するために設けられている。流出路34は、薬剤路32、バイパス路33と合流し、再び原水流入配管10に接続し、原水流入配管10に薬剤の含まれた原水を送り出すことになる。図4に示すように、薬剤路32は、分岐後、鉛直方向に立ち上がる噴出管52と、噴出管52の上部で薬剤に接触し、薬剤を溶出させる薬剤載置部53と、噴出管52の外周であって、筐体51の内部となる回収部54とで構成される。
【0022】
噴出管52は小径の管路で上部に薬剤載置部53を備えて立設されている。噴出管52は、下部の径を小さくし、薬剤載置部53を噴出管52の上部に設けることによって、原水を所望の流量で薬剤と接触させることを実現している。薬剤載置部53は、原水の流量に対し、所望の濃度の薬液が得られるよう、置く薬剤の量(数)を確保するための大きさとなる。
【0023】
薬剤を溶かした薬液は、回収部54へ流出する。回収部54において、薬剤を溶かした薬液は、筐体51の下部に貯まり、その後、回収開口55から流出路34へと流れだす。噴出管52の径を小さくし、筐体51の内壁面との距離を確保してあるので、筐体51内に流下した薬剤の溶けた原水は、液面を筐体51の高さに対し、1/2程度、あるいはそれ以下にすることができている。薬液は所望の深さで筐体51内に貯まることによって、流出路34において原水と混合する割合が調整されている。
【0024】
そして、薬剤供給部3への原水流入量を所定の範囲内にし、薬剤供給部3内の液面を所望の高さにすることによって、薬剤供給部3から流出する原水の薬剤濃度を所望の範囲内に調整することができるのである。
【0025】
また、薬剤供給部3への原水流入量を所定の範囲内にするためには、筐体51内の空気を確保することも重要となる。そのため、薬剤供給部3の後段に設置された空気補給弁43から空気を取り込み、逆洗ドレン管40を経由し、薬剤供給部3に空気を供給できるようになっている。また、液面を所望の高さにするためには、運転時の原水を送る圧力を調整する方法もある。薬剤供給部3内の圧力が上昇した際に、後述の流量調整部91で原水逃がし量を調整することで薬剤供給部3内の圧力を所望の範囲内に調整することが出来る。
【0026】
薬剤載置部53には、固形薬剤、すなわち水溶性固形薬剤60を備えている。水溶性固形薬剤60としては、タブレットや顆粒状のものを用いることがよい。なぜなら、水溶性固形薬剤60の表面積が大きくでき安定した溶剤濃度を保つことができるからである。タブレットであれば、直径30mm、高さ10~20mmのもの、顆粒状であれば直径5mmから15mmのものを使用するとよい。水溶性固形薬剤60の大きさが小さい場合には、隣り合った薬剤が同時に水に接触して薬剤同士が固着してしまう。固着すると、薬剤の下部だけが水に接触して所望の濃度の薬液が得られなくなるということがある。あるいは、水溶性固形薬剤60の大きさが小さい場合には、噴出管52から供給される水との接触面積が大きくなって所望の濃度の薬液が得られなくなる。そのため、所望の濃度の薬液を供給するため、上述の大きさの水溶性固形薬剤60を用いている。
【0027】
また、水溶性固形薬剤60は、上述のように、原水に含まれる金属イオンを酸化して水に難溶な凝集物を生成する働きをする。水溶性固形薬剤60としては、種々の酸化剤を用いることができるが、求められる水浄化性能によってはPAC(ポリ塩化アルミニウム)やキトサン等、高分子の凝集剤を使用しても良い。原水に対して薬剤を添加する場合には、水溶性固形薬剤60は水に溶けやすいものがよいが、停止中、あるいは逆洗処理中、すなわち、薬剤の添加を中断しているときには、固形形状を保持し、薬剤載置部53から流れ出さないものがよい。本実施の形態では、トリクロロイソシアヌル酸を用いている。
【0028】
薬剤供給部3の各部材は、薬剤と長時間接する可能性があるのでPVC(ポリ塩化ビニル)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PP(ポリプロピレン)など薬剤に対する反応性が低い素材を選ぶとよい。一方、噴出管52には薬剤載置部53を支えるための強度が必要なので、薬剤に対する相性を考慮すると、噴出管52の材質はPPより強度がある塩化ビニルやABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)などを選択することが好ましい。噴出管52の外径は、基台51aや上部カバー51bの内径の4分の1以下に抑えるとよい。上述のように、噴出管52の外側に載置部出口58から排出された薬剤供給後の溶液を一時貯留する空間(回収部54)を設けることができ、筐体51内の水位が急激に上昇し薬剤載置部53まで到達することを抑制できるからである。例えば、基台51aの内径が130mmの場合、外径25~40mm程度の塩ビ管などを使用するとよい。
【0029】
(配管構成)
本実施の形態の水処理装置1は、濾過部2において、原水を濾過し、浄水として取り出すほかに、濾過部2で捕集された粒状物質(よごれ、濁質成分、金属凝集物など)を逆洗によって系外へ排出する機能を有している。次に、水処理装置1内の配管構成と、濾過処理、逆洗処理における水の流れを説明する。
【0030】
図1に示すように、原水流入配管10は、濾過処理時において、水源側の原水入口11から薬剤供給部3を経由して濾過部2へと接続するものである。原水流入配管10の経路内であって、薬剤供給部3の上流側には、バイパス排水分岐部90が設けられている。詳しくは後述するが、バイパス排水分岐部90の下流側には流量調整部91を備え、原水流入配管10を流れる水量を調節する働きをする。浄水吐出配管20は、濾過処理時において、濾過部2から水処理装置1の浄水出口21へと接続するものである。
【0031】
図1を用い逆洗処理時の水の流れを説明する。逆洗処理時には、濾過部2内の水の流れが逆になる。従って、逆洗処理時には、濾過部2では、浄水吐出配管20側から濾過部2へ水を送り、原水流入配管10側から水を出す。本実施の形態による水処理装置1は、水源(電動ポンプ4)をひとつにして、濾過処理、逆洗処理を行うことができる。従って、逆洗処理時に濾過部2において原水を浄水吐出配管20側から流すようにするため、原水流入配管10と浄水吐出配管20とを接続する逆洗送水管80が設けられている。ここで、原水流入配管10において、薬剤供給部3と濾過部2との間には、逆洗処理時に濾過部2から流出する逆洗ドレンを排出する逆洗ドレン管40との分岐部13が第一の分岐部として設けられている。また、逆洗送水管80の原水流入配管10との接続部を第二の分岐部として分岐部12とする。逆洗送水管80と浄水吐出配管20との接続部を第三の分岐部として分岐部22とする。
【0032】
このような配管構成において、濾過処理時には、以下のように水が流れることになる。
【0033】
[濾過処理時の流路]
原水入口11→(原水流入配管10)→分岐部12→薬剤供給部3→分岐部13→濾過部2→(浄水吐出配管20)→分岐部22→浄水出口21
なお、浄水吐出配管20の経路内には、逆止弁62を設けている。浄水出口21から取り出した浄水は、高所に設けた浄水タンクへと配管接続される場合が多い。逆止弁62は、高所に設けられた浄水タンクからの浄水の逆流を制止し、濾過部2内への水の逆流入を防ぐものである。
【0034】
一方、逆洗処理時には、以下のように水が流れることになる。
【0035】
[逆洗処理時の流路]
原水入口11→(原水流入配管10)→分岐部12→(逆洗送水管80)→分岐部22→(浄水吐出配管20)→濾過部2→(原水流入配管10)→分岐部13→(逆洗ドレン管40)→逆洗ドレン口41
濾過処理、逆洗処理において、上記水の流れとなるように、分岐部12、分岐部13、分岐部22での連通方向を切り替えるための開閉バルブが設けられている。
【0036】
本実施の形態の水処理装置1では、4個の開閉バルブ(二方弁)で上記切り替えを実現している。すなわち、逆洗送水管80に設けた逆洗送水バルブ81と、原水流入配管10において、分岐部12と薬剤供給部3との間に設けた薬剤供給バルブ14と、浄水吐出配管20において、分岐部22と浄水出口21との間に設けた浄水取出バルブ23と、逆洗ドレン管40に設けた逆洗バルブ42の開閉の組み合わせによって濾過処理、逆洗処理の水の流れを切り替えている。
【0037】
濾過処理時には、薬剤供給バルブ14と浄水取出バルブ23を開放し、逆洗送水バルブ81と逆洗バルブ42を閉鎖する。すなわち、分岐部12では、原水入口11と薬剤供給部3を連通させ、分岐部13では、薬剤供給部3と濾過部2とを連通させ、分岐部22では、濾過部2と浄水出口21とを連通させる。
【0038】
一方、逆洗処理時には、薬剤供給バルブ14と浄水取出バルブ23を閉鎖し、逆洗送水バルブ81と逆洗バルブ42を開放する。すなわち、分岐部12では、原水入口11と逆洗送水管80とを連通させ、分岐部13では、濾過部2の原水流入配管10との接続側と逆洗ドレン口41とを連通させ、分岐部22では、逆洗送水管80と濾過部2の浄水吐出配管20との接続側を連通させる。
【0039】
すなわち、薬剤供給バルブ14と逆洗送水バルブ81によって分岐部12の連通方向を切り替えている。また、浄水取出バルブ23と逆洗バルブ42によって水の取り出し口を決定している。
【0040】
また、逆洗処理を行う際には、大きな流量を必要とする。すなわち、逆洗処理時の流量よりも濾過処理時の流量を小さくしている。そのため、濾過処理時に通過する配管の一部に絞り部を設け、濾過処理時における流量を抑えるようにしている。具体的には、浄水吐出配管20のうち、分岐部22の下流側で絞り部24が設けられている。この絞り部24と電動ポンプ4との組み合わせによって、濾過処理時の流量を所望の設計値にしている。
【0041】
一方、逆洗処理時の配管には、絞り部24のような径を小さくした部分がないので、濾過処理時よりも大きな流量を確保し、逆洗処理を効率的に行うことができる。すなわち、逆洗時のみに用いる配管、逆洗送水管80、逆洗ドレン管40の最小径部は、絞り部24の開口よりも大きくなっている。
【0042】
なお、本実施の形態の水処理装置1は、逆洗処理時に配管内に残った異物を排出するための「リンス処理」を行うことができる。このリンス処理について、図1を用いて説明する。リンス処理を行うための配管は、浄水吐出配管20において、分岐部26と、リンスドレン管27と、リンスドレンバルブ28を備えている。分岐部26は、浄水吐出配管20において、分岐部22と浄水出口21の間に設けられている。そして、分岐部26は、浄水吐出配管20からリンスドレン管27を分岐している。リンスドレンバルブ28は、リンスドレン管27の開閉を行い、開放したときに浄水吐出配管20を流れてきた水をリンスドレン口29へと流すものである。濾過処理、逆洗処理時には、リンスドレンバルブ28は閉鎖である。
【0043】
リンス処理は、薬剤供給バルブ14を開放し、浄水取出バルブ23を閉鎖し、逆洗送水バルブ81と逆洗バルブ42を閉鎖する。さらに、リンスドレンバルブ28を開放する。このようなバルブ操作によって、リンス処理時には、以下のように水が流れることになる。
【0044】
[リンス処理時の流路]
原水入口11→(原水流入配管10)→分岐部12→薬剤供給部3→分岐部13→濾過部2→(浄水吐出配管20)→分岐部22→(絞り部24)→分岐部26→リンスドレン口29
逆洗処理が終わった直後には、濾過部2内、あるいは、水処理装置1の配管内には、濾過部2の逆洗によって洗い出された異物が残っている。そのため、リンス処理によって、異物を排出することができる。
【0045】
また、本実施の形態の水処理装置1では、絞り部24を迂回する直接排水管70と直接排水管70の開閉を行う直接排水バルブ71を設けている。絞り部24は、配管径を小さくした部分であるので、異物が詰まり易くなっている。そのため、異物を排出する逆洗処理時には、直接排水バルブ71を開放し、最小径部となる絞り部24を迂回して流すとよい。
【0046】
また、原水の汚れ度合によっては、濾過部2を通さず、そのまま排水したほうが良い場合がある。このような場合に、直接排水バルブ71を開放するとよい。例えば、原水として井戸水用いる場合などにおいて、水処理装置1の設置直後は貯まった井戸水の汚れ度合が大きく、そのまま濾過処理(濾過部2を通す)すると、所望の浄化性能が得られず、異物を含んだ水が浄水出口21から流出することになる。そのため、設置直後の初期の原水は濾過せずそのまま排水するとよい。すなわち、逆洗送水バルブ81、リンスドレンバルブ28を開放し、薬剤供給バルブ14、浄水取出バルブ23を閉鎖することによって、系内に取り入れた原水を濾過部2、薬剤供給部3を通さずに直接排水することができる。この場合にも、直接排水バルブ71を開放するとよい。
【0047】
また、逆洗送水バルブ81、浄水取出バルブ23を開放し、薬剤供給バルブ14、リンスドレンバルブ28を閉鎖することによって、系内に取り入れた原水を濾過部2、薬剤供給部3を通さずに直接取り出すこともできる。
【0048】
次に、本発明の最も特徴的な構成について説明する。本実施の形態の水処理装置1では、上述のとおり、原水流入配管10の経路内に、薬剤供給部3の上流側で原水の流れを二分する、バイパス排水分岐部90が設けられている。バイパス排水分岐部90は、一方を原水流入配管10を経由して濾過部2へ、他方を流量調整部91を経由して余剰排水管92へと分岐し、接続している。流量調整部91は、上流側から所定の圧力以上の原水が流れ込んだ場合に、内部の弁機構を開放して余剰排水管92の下流側へ排水するものである。
【0049】
濾過処理時に流れる原水は、場合によっては設計流量を越えて流入する場合がある。すなわち、濾過処理時には電動ポンプ4から送水された原水が水処理装置1に供給されるが、電動ポンプ4の水源の変化等、環境の変化により電動ポンプ4から供給される水圧が高くなることがある。例えば、井戸から水を揚水している場合、大雨によって井戸水位が上昇すると、電動ポンプ4への負荷が減少する。すると、電動ポンプ4は水処理装置1に高圧の原水を供給し、薬剤供給部3の内部の水位が上昇し、規定濃度以上の薬剤が溶出することがある。
【0050】
このように、原水流入配管10に高い圧力がかかった場合、図5に示す通り、流量調整部91は、原水を余剰排水管92側に流すことにより、圧力上昇を回避する。つまり、水処理装置1に高水圧原水が供給された際、上述した濾過処理時の流れに加え、原水流入配管10内のバイパス排水分岐部90で分流された余剰原水が、流量調整部91を経由し、余剰排水管92を通り逆洗ドレン口41に排水される。このように、バイパス排水分岐部90において原水を分岐して薬剤供給部3、濾過部2への水量を所望の範囲内に抑えることができる。バイパス排水分岐部90による分岐によって、以下の様に主流路と排水流路に原水が分岐して流れることになる。
【0051】
[主流路]
原水入口11→(原水流入配管10)→分岐部12→バイパス排水分岐部90→薬剤供給部3→分岐部13→濾過部2→(浄水吐出配管20)→分岐部22→浄水出口21
[排水流路]
原水入口11→(原水流入配管10)→分岐部12→バイパス排水分岐部90→流量調整部91→余剰排水管92→(逆洗ドレン管40)→逆洗ドレン口41
このように、排水経路では、外的影響で余剰に供給された原水が排出されるとともに、主流路では、濾過部2によって浄化された後、浄水タンクに供給される。
【0052】
なお、本実施の形態では、余剰排水管92と逆洗ドレン口41を接続しているが、余剰排水管92から水処理装置1の系外に余剰原水を直接排水してもよい。また、バイパス排水分岐部90は原水流入配管10内に設けたが、水処理装置1の内部配管であれば、接続されたすべての配管圧力を低下させることが出来るため、圧力を直接的に減少させたい配管に接続しても良い。例えば、余剰排水管92は分岐部12の前段や、薬剤供給バルブ14の後段に設けてもよい。
【0053】
次に、流量調整部91について図6を用い説明する。図6は、流量調整部91の断面図である。
【0054】
上述した通り、流量調整部91は余剰排水管92に設けられ、バイパス排水分岐部90から分流した余剰原水の流量を調整する。流量調整部91は調整部土台93と、その上部に取り付けられた調整部蓋94と、調整部土台93と調整部蓋94の間に挟まれたダイヤフラム95を有している。ダイヤフラム95は弁97に固定されており、通常は、弁座98にばね96の反力によって押さえつけられ、流路を閉じるようになっている。ばね96の下面は、弁97に接し、ばね96の上面は、調整部蓋94に接している。そして、流入管99内の圧力が上昇すると、弁97を押し上げ、流入管99と流出管100が連通接続され、流路が開通し、余剰の原水は、余剰排水管92から排出される。このように、流量調整部91に流入した余剰原水が、余剰排水管92に排水されることにより、水処理装置1の圧力を低下させる。
【0055】
ダイヤフラム95は水処理装置1の流路上にあるため、フッ素ゴムやシリコンゴム等、薬剤耐性を有するゴム材を選定するとよい。また前記ばね96のばね定数は0.5-20N/mm程度のものを選定すると良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明にかかる水処理装置は、逆洗に十分量の清浄な逆洗水を供給可能で、従来品と比較し省スペース設置可能な水処理装置であるため、井戸水や貯留水の浄化に使用される家庭用小型水処理装置等として有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 水処理装置
2 濾過部
3 薬剤供給部
4 電動ポンプ
10 原水流入配管
11 原水入口
12 分岐部
13 分岐部
14 薬剤供給バルブ
20 浄水吐出配管
21 浄水出口
22 分岐部
23 浄水取出バルブ
24 絞り部
26 分岐部
27 リンスドレン管
28 リンスドレンバルブ
29 リンスドレン口
31 流入路
32 薬剤路
33 バイパス路
34 流出路
40 逆洗ドレン管
41 逆洗ドレン口
42 逆洗バルブ
43 空気補給弁
51 筐体
51a 基台
51b 上部カバー
52 噴出管
53 薬剤載置部
54 回収部
55 回収開口
58 載置部出口
60 水溶性固形薬剤
62 逆止弁
70 直接排水管
71 直接排水バルブ
80 逆洗送水管
81 逆洗送水バルブ
90 バイパス排水分岐部
91 流量調整部
92 余剰排水管
93 調整部土台
94 調整部蓋
95 ダイヤフラム
96 ばね
97 弁
98 弁座
99 流入管
100 流出管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7