(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】ターボファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20250627BHJP
F04D 29/30 20060101ALI20250627BHJP
F24F 1/0022 20190101ALI20250627BHJP
【FI】
F04D29/28 K
F04D29/28 R
F04D29/30 D
F24F1/0022
(21)【出願番号】P 2019128564
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-07-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】土井 康之
(72)【発明者】
【氏名】岡部 清志
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】長馬 望
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】実公昭41-7218(JP,Y1)
【文献】特開2005-127176(JP,A)
【文献】特開2017-122394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/30
F24F 1/0022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主板と、シュラウドと、前記主板と前記シュラウドとの間に複数の湾曲形状の羽根部材とを備えたターボファン
の製造方法において、
前記羽根部材は羽根本体部とフランジ部を有し、
前記フランジ部は前記羽根本体部の投影面よりも外側に延在して形成され
、
前記フランジ部は、
非円形状の孔部により形成される位置決め部が
1か所設けられ
、
前記位置決め部と金型治具に備えた位置決めピンを係合させることで前記複数の羽根部材を前記金型治具の所定位置に固定し、前記金型治具にインサート成型を行うことで、隣り合う前記フランジ部を繋ぎ、主板を形成する
ことを特徴とするターボファン
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボファンに係り、特に、羽根部材を安定して支持することができ、遠心方向に歪んだ場合でも、主板と羽根部材にズレが起こりにくいことを可能としたターボファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気調和機の室内ユニットなどに搭載され、主板と複数の翼とが一体成形されたファン本体と、シュラウドとで構成されたターボファンが知られている。
【0003】
このようなターボファンとして、従来、例えば、翼は主板に立設して、ほとんど湾曲形成することなくシュラウドに接合されているので、翼と主板とを一体成形する際に、治具に固定する翼の基部は大きく形成しなくても治具で押さえることができ、熱可塑性樹脂にてファン本体を一体成形するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年のターボファンにおいては、風量を確保するため、湾曲形状化され、羽根部材が主板に対して傾斜配置する傾向があり、このため、羽根部材に対する主板とシュラウドとの取り付け角度が異なるように羽根部材がねじれた形状に形成されることがある。
【0006】
そのため、羽根部材と主板を一体成形する時に、金型治具に固定する羽根部材のフランジ部は、湾曲形状の投影面よりも張り出して形成する必要がある。このためフランジ部が大きくなり、隣り合う羽根部材のフランジ部の間に形成される隙間が狭くなり、一体成形時に注入された熱可塑性樹脂がこの隙間を流れる時の流動性が低下するおそれがあった。
【0007】
また、一体成形する前工程で、主板に固定される羽根部材の角度がズレないように保持し、さら風量抵抗にならないように羽根部材を位置決めするという課題を有している。
【0008】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、湾曲形状を有した羽根部材を主板との一体成形時に、金型治具に位置決めして固定し成形することができるので、一体成形時の樹脂の流動性を維持し、風量を確保したターボファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明は、主板と、シュラウドと、前記主板と前記シュラウドとの間に複数の湾曲形状の羽根部材とを備えたターボファンにおいて、前記羽根部材は羽根本体部とフランジ部を有し、前記フランジ部は前記羽根本体部の投影面よりも外側に延在して形成され、前記主板に対する前記羽根部材を位置決めする位置決め部が前記フランジ部に形成され、前記位置決め部は前記羽根部材が回転移動するのを防止する回り止め機能を有していることを特徴とする。
【0010】
また、前記羽根部材は正圧側羽根部材と負圧側羽根部材とで形成され、前記正圧側羽根部材は前記羽根本体部の正圧面部と前記フランジ部とを有し、前記負圧側羽根部材は前記羽根本体部の負圧面部を有し、前記羽根本体部は前記正圧面部と前記負圧面部とを対面して配置し、前記フランジ部は前記負圧面部側で回転方向と逆方向に向かって延在し、前記フランジ部の端部に前記位置決め部を形成していることを特徴とする。
【0011】
また、前記位置決め部は孔部であり、前記回り止め機能は前記孔部が円形状以外の異形状で構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、隣り合う前記羽根部材の前記フランジ部間に形成された隙間部は回転軸から外側に向かって大きく形成され、前記隙間部は樹脂で覆われて一体成形されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記位置決め部は、前記主板を一体成形する治具に設けた位置決めピンに固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、羽根部材は主板に対してズレをなくして成形することができ、低騒音化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のターボファンを適用した天井埋込型空気調和機の実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】本実施形態の天井埋込型空気調和機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るターボファンの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るターボファンを適用した天井埋込型空気調和機の実施形態を示す縦断面図である。
図2は、天井埋込型空気調和機の斜視図である。
【0018】
本実施形態においては、
図1に示すように、室内ユニット10は、建屋の天井11とこの天井11の下方に設置された天井板12との間の天井空間13に設置されるものである。
【0019】
この室内ユニット10は、
図1に示すように、下面が開放された箱型に形成された空気調和機本体14を備えており、空気調和機本体14の外側角部には、吊り用金具18が取り付けられている。空気調和機本体14は、吊り用金具18に連結された吊りボルト15で天井11から吊り下げられた状態で設置される。この空気調和機本体14の内側には、発泡スチロール製の断熱部材16が、空気調和機本体14の側板17の内面に接した状態で配置され、側板17における結露を防止している。
【0020】
空気調和機本体14の上板の下面には、ファンモータ21が取り付けられており、このファンモータ21には、ファンモータ21の駆動により回転駆動される回転シャフト22が下方に延在するように設けられている。この回転シャフト22の下端部分には、ターボファン23が取り付けられており、このファンモータ21とターボファン23とで送風装置20を構成している。
【0021】
ターボファン23は、環状の板状に形成された主板24を備えている。主板24の中心部分には、下方に延出する逆円錐台形状のモータ収容部25が形成されている。
【0022】
モータ収容部25には、ファンモータ21が収容されており、ファンモータ21の回転シャフト22は、下方に延在しモータ収容部25の底面に連結されている。そして、ファンモータ21を回転駆動させることにより、回転シャフト22を介してターボファン23を回転動作させるように構成されている。
【0023】
主板24の下方には、シュラウド26が設けられており、シュラウド26は、周面が弧状に形成された環状に形成されている。主板24とシュラウド26の内周面との間には、周方向に所定間隔をもって配置される複数の湾曲形状の羽根部材27があり、羽根部材27は主板24と一体成形されている。
【0024】
シュラウド26の下方には、オリフィス28が配置されており、オリフィス28は、周面が弧状に形成された環状に形成されている。
【0025】
この送風装置20と断熱部材16との間には、送風装置20の側方を取り囲むように、平面視でほぼ四角形状に曲折形成された熱交換器30が配置されている。
【0026】
熱交換器30は、冷房運転時には、冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時、冷媒の凝縮器として機能する熱交換器30である。熱交換器30は、空気調和機本体14の内部に吸い込まれる室内の空気と冷媒との熱交換を行って、冷房運転時には、空調室内の空気を冷却し、暖房運転時には、室内の空気を加熱することができるように構成されている。
【0027】
また、熱交換器30の下側には、熱交換器30の下面に対応するようにドレンパン31が配置されている。このドレンパン31は、熱交換器30で発生するドレン水を受けるためのものである。また、ドレンパン31の中央部分には、送風装置20の吸い込み口32が形成されている。
【0028】
また、空気調和機本体14の下面には、
図1および
図2に示すように、空気調和機本体14の下側開口を覆うように、ほぼ四角形状の化粧パネル33が取り付けられている。
【0029】
化粧パネル33の中央部分には、ドレンパン31の吸い込み口32に連通する吸い込み口34が形成されており、化粧パネル33の吸い込み口34部分には、吸い込み口34を覆う吸い込みグリル35が着脱可能に取り付けられている。吸い込みグリル35の空気調和機本体14側には、空気中の塵などを除去するためのフィルタ36が設けられている。
【0030】
化粧パネル33の吸い込み口34の外側であって化粧パネル33の各辺に沿った位置には、空調後の空気を室内に送る吹出口37がそれぞれ形成されている。各吹出口37には、風向を変更するフラップ38がそれぞれ設けられている。そして、ファンモータ21により回転シャフト22を回転駆動させてターボファン23を回転させることにより、室内の空気は、吸い込み口32,34から吸い込まれ、フィルタ36を通過した後に熱交換器30を通過して熱交換され、吹出口37から空調後の空気が室内に送られるように構成されている。
【0031】
次に、ターボファンについてさらに詳細に説明する。
【0032】
図3は、ターボファンの底面図である。
図4はターボファンの斜視図である。
図5は、ターボファンの分解斜視図である。
【0033】
ターボファン23は、シュラウド26と、主板24と複数の湾曲形状の羽根部材27とが予め一体成形されており、これらをそれぞれ製造した後、組立を行い、ターボファン23を形成するようになっている。
【0034】
図4は、複数の羽根部材27のフランジ部43の間に、主板24との一体成形で熱可塑性樹脂50が注入された状態で、フランジ部43の外周形状はファン回転方向とは反対方向に略円弧状に湾曲形状で構成されており、射出成型時に隣り合う羽根部材27のフランジ部43間に形成された隙間部44もファン回転方向とは反対方向に向かって構成され、回転軸45から遠ざかる方向に向かって大きく広がるように形成されている。
【0035】
本実施形態においては、
図5に示すように、羽根部材27は、正圧側に位置する正圧側羽根部材40と、負圧側に位置する負圧側羽根部材41とを備え、この2つの羽根部材を接触させて1枚の羽根部材27を形成している。
【0036】
正圧側羽根部材40は、正圧側の面を構成する羽根本体42と、羽根本体42の底板を延在したフランジ部43とを備えており、フランジ部43は負圧側羽根部材41の底板を下方から受けるように負圧面部側に向かって形成され、さらにファンの回転方向と逆方向に延在して形成されている。
【0037】
ファンの回転方向と逆方向に延在するフランジ部43の端部には位置決め部80となる孔部が形成されている。位置決め部80は主板24上で、隣合う羽根部材27の正圧側羽根部材40の略中央部に配置している。
【0038】
また、正圧側羽根部材40の上部には、異なる高さに形成された段差状の溶着支持部46が形成されている。溶着支持部46の各段の上面は、平坦面とされており、これら各溶着支持部46には、
図5に示すように、溶着用ピン47が突設されている。
【0039】
羽根部材27はフランジ部43を介して主板24に一体成形されている。
【0040】
また、負圧側羽根部材41は、負圧側の面を構成する羽根本体48を備えている。正圧側羽根部材40の羽根本体42の内面には、係合ピン(図示しない)が形成され、負圧側羽根部材41の羽根本体48の内面には、係合ピンが係合される係合凹部(図示せず)が形成されている。
【0041】
図6は複数の羽根部材27を金型治具81に固定する前の状態である。羽根部材27の羽根本体部42、48を金型治具の所定位置に挿入し、フランジ部43を金型治具81の所定位置に固定する。
【0042】
この時、フランジ部43の端部に備えた位置決め部80は、金型治具81に備えた位置決めピン82と係合し、羽根部材27を金型治具81の所定位置に固定することができる。
【0043】
図7のように、金型治具81の位置決めピン82に装着した時に、羽根部材27が回転移動しないように、位置決め部80は、回転移動を防止して所定位置に維持されるように回り止め機能が構成されている。
【0044】
具体的には、位置決め部80は、円形状以外の異形状で構成されていて、実施例の場合、具体的には略D字形状の孔部であり、同形状の位置決めピン82に挿入することで、金型治具81の所定位置にズレることなく配置する。またフランジ部43に位置決め部80を1カ所設けるだけで、
図6のように縦置きされた金型治具81内でも、羽根部材27は回り止めされて回転移動を抑制することができる。
【0045】
そして、金型治具81に熱可塑性樹脂を注入、いわゆるインサート成型を行うことで複数の羽根部材27のフランジ部43の間に形成された隙間部44内を樹脂が流動し、隣り合うフランジ部43を繋ぎ、主板24を形成するので、位置決め部80によって、主板24に対する羽根部材27をズレなく一体成形することができる。
【0046】
また隙間部44は中心の回転軸45から外側に向かって幅が広がっており、成形時の樹脂の流動性の低下を抑制することができる。
【0047】
そして、羽根部材27と主板24の一体成型後、シュラウド26を接合することで、一体成形時のバラツキによる風量バラツキを抑制し、所定風量を確保したターボファン23を提供することができる。
【0048】
また、ターボファン23を運転させた時、フランジ部43に形成した位置決め部80を構成する孔部は、フランジ部43から突出しておらず、また位置決め部80は1カ所のみなので、空気の流動性を邪魔することなく風量を確保することができ、風切り音も抑制することができる。
【0049】
なお、位置決め部80は略D字形状の孔部としたが、回り止めすればよく、断面が矩形状や切欠き形状で形成されていてもよい。
【0050】
また、位置決め部80を孔部としたが、突起部としてもよい。この場合、突起部は主板の羽根部材が成形される側とは反対側に突出するので、ファンの回転による空気の流動性を邪魔することなく風量を確保し、風切り音も抑制することができる。
【0051】
なお、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 室内ユニット
14 空気調和機本体
24 主板
23 ターボファン
26 シュラウド
27 羽根部材
40 正圧側羽根部材
41 負圧側羽根部材
42、48 羽根本体
43 フランジ部
80 位置決め部