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  • 特許-電極材料および電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】電極材料および電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20250627BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20250627BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20250627BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20250627BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250627BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20250627BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250627BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250627BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250627BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/587
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022504965
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038177
(87)【国際公開番号】W WO2021176759
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020036065
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】上武 央季
(72)【発明者】
【氏名】峯谷 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】福岡 歩
【審査官】寺坂 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-060649(JP,A)
【文献】特開2019-016484(JP,A)
【文献】特開2015-185237(JP,A)
【文献】特開2020-170605(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038037(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質と、
固体電解質と、
を含む電極材料であって、
前記電極材料の断面の単位面積あたりの前記活物質と前記固体電解質との界面の長さが0.29μm/μm2以上であり、かつ、
前記電極材料の充填率が80%以上であり、
前記活物質のメジアン径をDとしたとき、
前記界面の長さは、(20D) 2 以上の面積を有する領域の観察により算出される、
電極材料。
【請求項2】
前記電極材料における前記活物質の含有量は、40wt%以上かつ80wt%以下である、
請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
前記固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する、
請求項1または2に記載の電極材料。
【請求項4】
前記界面の長さは、0.95μm/μm2以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項5】
前記界面の長さは、0.571μm/μm2以下である、
請求項4に記載の電極材料。
【請求項6】
前記充填率は、99%以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項7】
前記充填率は、93.1%以下である、
請求項6に記載の電極材料。
【請求項8】
前記活物質は、負極活物質である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項9】
前記負極活物質は、グラファイト、シリコン、シリコン合金、シリコン酸化物、スズ、スズ合金、およびスズ酸化物からなる群より選択される少なくとも1つを含む、
請求項8に記載の電極材料。
【請求項10】
前記負極活物質は、グラファイトを含む、
請求項9に記載の電極材料。
【請求項11】
前記活物質は、正極活物質である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項12】
前記正極活物質は、金属複合酸化物を含む、
請求項11に記載の電極材料。
【請求項13】
前記金属複合酸化物は、Mn、Co、Ni、およびAlからなる群より選択される少なくとも1つと、Liと、を含む、
請求項12に記載の電極材料。
【請求項14】
前記界面の長さは、前記界面の長さを算出する断面画像において前記活物質または前記固体電解質のうち粒子として判定された粒子の平均断面積を求め、前記平均断面積に対して1%以下の断面積を有する粒子は除外して算出される、
請求項1から13のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項15】
前記固体電解質のメジアン径は、前記活物質のメジアン径より小さい、
請求項1から14のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項16】
第一電極と、
第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極との間に位置する電解質層と、
を備え、
前記第一電極および前記第二電極からなる群より選択される少なくとも1つは、請求項1から15のいずれか一項に記載の電極材料を含む、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極材料および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子およびイオンの良好な伝導パスを形成するための電池の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-192061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、電池の充電容量のさらなる向上が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の電極材料は、
活物質と、
固体電解質と、
を含む電極材料であって、
前記電極材料の断面の単位面積あたりの前記活物質と前記固体電解質との界面の長さが0.29μm/μm2以上であり、かつ、
前記電極材料の充填率が80%以上である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、電池の充電容量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態1における電極材料の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、実施の形態2における電池の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見)
全固体リチウムイオン電池においては、電極に分散する活物質に対して電子とリチウムイオンの両方が効率的に供給される構造が求められる。一般的な正極及び負極においては、活物質の粒子同士が接触して形成される電子伝導パスと、固体電解質の粒子同士が接触し繋がることで形成されるイオン伝導パスとを両立する電極構造が望ましい。しかしながら、従来技術においては、全固体電池として良好な特性を示す電極構造が明らかにされていなかった。
【0009】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る電極材料は、
活物質と、
固体電解質と、
を含む電極材料であって、
前記電極材料の断面の単位面積あたりの前記活物質と前記固体電解質との界面の長さが0.29μm/μm2以上であり、かつ、
前記電極材料の充填率が80%以上である。
【0010】
第1態様によれば、リチウムイオン伝導パスおよび電子伝導パスを両立させることができ、電池の充電容量が向上する。
【0011】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る電極材料では、前記電極材料における前記活物質の含有量は、40wt%以上かつ80wt%以下であってもよい。このような構成によれば、活物質と固体電解質とが、良好な分散状態を形成しやすい。
【0012】
本開示の第3態様において、例えば、第1または第2態様に係る電極材料では、前記固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有していてもよい。このような構成によれば、電極材料を用いて高容量のリチウムイオン電池を提供できる。
【0013】
本開示の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つに係る電極材料では、前記界面の長さは、0.95μm/μm2以下であってもよい。このような構成によれば、電極材料の内部の抵抗をより下げることができる。
【0014】
本開示の第5態様において、例えば、第4態様に係る電極材料では、前記界面の長さは、0.571μm/μm2以下であってもよい。このような構成によれば、電極材料の内部の抵抗をより下げることができる。
【0015】
本開示の第6態様において、例えば、第1から第5態様のいずれか1つに係る電極材料では、前記充填率は、99%以下であってもよい。このような構成によれば、電池のさらなる高容量化が可能となる。
【0016】
本開示の第7態様において、例えば、第6態様に係る電極材料では、前記充填率は、93.1%以下であってもよい。このような構成によれば、電池のさらなる高容量化が可能となる。
【0017】
本開示の第8態様において、例えば、第1から第7態様のいずれか1つに係る電極材料では、前記活物質は、負極活物質であってもよい。このような構成によれば、電池の充電容量をより向上させることができる。
【0018】
本開示の第9態様において、例えば、第9態様に係る電極材料では、前記負極活物質は、グラファイト、シリコン、シリコン合金、シリコン酸化物、スズ、スズ合金、およびスズ酸化物からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。このような構成によれば、大きい充電容量および優れた充放電特性を有する電池を提供できる。
【0019】
本開示の第10態様において、例えば、第9態様に係る電極材料では、前記負極活物質は、グラファイトを含んでいてもよい。このような構成によれば、大きい充電容量および優れた充放電特性を有する電池を提供できる。
【0020】
本開示の第11態様において、例えば、第1から第7態様のいずれか1つに係る電極材料では、前記活物質は、正極活物質であってもよい。このような構成によれば、電池の充電容量を向上させることができる。
【0021】
本開示の第12態様において、例えば、第11態様に係る電極材料では、前記正極活物質は、金属複合酸化物を含んでいてもよい。このような構成によれば、電池の充電容量を向上させることができる。
【0022】
本開示の第13態様において、例えば、第12態様に係る電極材料では、前記金属複合酸化物は、Mn、Co、Ni、およびAlからなる群より選択される少なくとも1つと、Liと、を含んでいてもよい。このような構成によれば、電池の充電容量を向上させることができる。
【0023】
本開示の第14態様に係る電池は、
第一電極と、
第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極との間に位置する電解質層と、
を備え、
前記第一電極および前記第二電極からなる群より選択される少なくとも1つは、第1から第13態様のいずれか1つの電極材料を含む。
【0024】
第14態様によれば、電池の充電容量を向上させることができる。
【0025】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における電極材料1000の概略構成を示す断面図である。
【0027】
実施の形態1における電極材料1000は、固体電解質100と、活物質110と、界面120と、空隙130を含む。界面120は、固体電解質100と活物質110とが接触することによって形成された界面である。
【0028】
電極材料1000は、成形されていてもよい。本明細書において、「電極材料1000の断面」は、成形された電極材料1000の断面、典型的には、電極の断面を意味する。図1は、所望の形状に成形された電極材料1000の断面を示している。
【0029】
活物質110は、粒子の形状を有する。電極材料1000において、複数の活物質110の粒子が互いに接し、これにより、電子伝導パスが形成されている。固体電解質100は、活物質110の粒子間を埋めている。固体電解質100も粒子の形状を有していてもよい。固体電解質100の多数の粒子が圧縮されて互いに結合し、これにより、イオン伝導パスが形成されている。
【0030】
ここで電極材料1000の断面を観察した際の観察面積をA(単位:μm2)と定義する。観察面積内に確認される界面120の長さの合計をL(単位:μm)と定義する。界面周囲長ZをZ=L/Aと定義する。電極材料1000における界面周囲長Zは0.29μm/μm2以上である。
【0031】
界面周囲長Zを算出する方法として、例えば、以下の方法が用いられうる。
【0032】
電極材料1000をクロスセクションポリッシャにより加工し、平滑な断面を形成する。このとき、断面加工の方向は電極材料1000のいずれの方向であってもよい。例えば、電極材料1000が板状の形状を有するとき、板状の電極材料1000の面内方向に平行な断面が形成されてもよく、板状の電極材料1000の厚さ方向に平行な断面が形成されてもよく、面内方向および厚さ方向の両方向に非平行な断面が形成されてもよい。
【0033】
形成された断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、断面像を取得する。電極材料1000の平均的な形態が評価されることが望ましいことから、電極材料1000に含まれる活物質110の粒子群のメジアン径に対して、十分広い領域がSEMによって観察されることが望ましい。例えば、電極材料1000に含まれる活物質110の粒子群のメジアン径をD(単位:μm)とした場合、観察面積AはA≧(20D)2を満たす。
【0034】
次に、得られた断面像から、観察面積AがA≧(20D)2を満たす測定領域を選び、画像処理ソフトImage Jにて解析する。Image JのAnalyze Particles機能を用いることで、電極材料1000の断面像において、活物質110または固体電解質100を粒子として判定する。活物質110と固体電解質100との界面120の長さを算出する。この画像解析方法によって、粒子の周囲長の合計が算出される。
【0035】
固体電解質100と活物質110との界面において、バインダー、分散剤、導電助剤等の他の物質が存在している可能性もある。ただし、断面像において、それらの物質が明確に確認されない場合には、注目する粒子を周囲長の合計の算出の対象とする。
【0036】
また、図1に示すように、孤立した粒子が断面像に現れることがある。しかし、断面像において粒子が孤立していたとしても、断面に現れていない位置で他の粒子と接触している可能性がある。そのため、孤立した粒子を周囲長の合計の算出の対象としても差し支えない。
【0037】
次に、周囲長の合計を観察面積で除算することで、単位面積当たりの活物質と固体電解質との界面の長さ、すなわち界面周囲長Zを算出する。
【0038】
断面像において、活物質110の粒子同士あるいは固体電解質100の粒子同士が凝集している場合は、活物質110の粒子の凝集体および固体電解質100の粒子の凝集体のいずれか一方を粒子として判定することで、活物質110と固体電解質100との界面120を容易に画像認識できる。例えば、断面像中で固体電解質100同士が繋がり、大きな一つの凝集体を形成している場合には、この大きな集合体の周囲の長さが活物質110と固体電解質100との界面120の長さを意味する。また、活物質110の凝集体と固体電解質100の凝集体のどちらを画像解析ソフトで粒子判定させるべきか、電極材料1000における粒子の分散状態によって選択される。
【0039】
空隙、導電助剤等の影響あるいは活物質110と固体電解質100とのコントラストが低いといった原因により、画像解析による周囲長の合計の算出が困難な場合は、適宜、画像処理ソフトにて粒子判定されやすいように断面像を画像処理してもよい。断面像を用いた画像処理が困難な場合には、断面像中の界面をトレースした別画像を用意し、別画像を画像処理することで界面周囲長Zを算出してもよい。
【0040】
また、画像処理後のノイズ除去のため、粒子判定された粒子のうち比較的小さいものに関しては、界面周囲長の算出には適用しない。具体的には、断面像において粒子と判定された粒子の平均断面積に対して1%以下の断面積を有する粒子は、界面周囲長の算出には適用しない。
【0041】
電極材料1000において、単位体積の空間に占める空隙130の割合をεと定義し、充填率P(%)をP=(1-ε)×100と定義する。電極材料1000における充填率Pは80%以上である。
【0042】
充填率は、電極材料1000の体積、電極材料1000の重量、活物質110の真密度、固体電解質100の真密度、および、材料の混合比率から算出されうる。ただし、充填率は、ピクノメーター法などの他の方法によって算出されてもよい。
【0043】
以上の構成によれば、電池の充電容量を向上させることができる。
【0044】
本明細書において、「充電容量」は、単位重量の活物質110あたりの電池の充電容量を意味する。
【0045】
なお、特許文献1によれば、活物質と固体電解質によって形成される造粒粉体の平均粒子径が20から53μmであり、造粒粉体中の活物質同士および固体電解質同士が隣接する構造をとる場合に良好な充放電特性が得られる。しかしながら、活物質と固体電解質との分散状態が明らかにされていない。
【0046】
一方、本発明者らが鋭意検討した結果、活物質と固体電解質との間の界面周囲長と、電極内の充填率とが全固体リチウムイオン電池の特性に大きい影響を与えることを見出した。界面周囲長は、電極内において、固体電解質により形成されるリチウムイオン伝導パスを示す指標であるとともに、活物質と固体電解質との間の界面形成の特徴を示す指標である。全固体電池の充放電中においては、界面周囲長が大きければ大きいほど電極中に存在する活物質のリチウムイオン授受が容易になる。充填率は、成形された電極中の活物質および固体電解質の接触状態の特徴を示す指標である。充填率が低い場合には、固体電解質同士の接触、固体電解質と活物質との接触、および、活物質同士の接触が弱くなり、充電容量が低下する。特に、界面周囲長が長い場合には、活物質間に固体電解質が存在する割合が増え、活物質同士の接触によって確保される電極中の電子伝導性は低下しやすい。そのため、界面周囲長が長い場合においても、充填率が低い場合は活物質間の接触が弱く、電極内の電子伝導性が低下する。結果として、充電容量は低下する。
【0047】
従って、上記課題を解決し高容量な全固体リチウムイオン電池を実現するためには、界面周囲長および充填率を増加させ、電極内のリチウムイオン伝導パスおよび電子伝導パスを両立させる必要がある。
【0048】
本開示の構成では、電極材料1000の断面、言い換えれば、電極の断面を観察したとき、界面周囲長Zが0.29μm/μm2以上、かつ、電極材料1000の充填率Pが80%以上である。このとき、リチウムイオン伝導パスおよび電子伝導パスを両立させることができ、電池の充電容量が向上する。
【0049】
実施の形態1における、界面周囲長Zは、0.29μm/μm2以上かつ0.95μm/μm2以下であってもよい。界面周囲長Zが0.95μm/μm2以下の場合、固体電解質100が担うリチウムイオンの伝導経路が長くなりすぎず、電極材料1000の内部の抵抗が増加することを抑制できる。このため、電池の高出力での動作が可能となる。また、界面周囲長Zは、0.571μm/μm2以下であってもよい。これにより、電極材料1000の内部の抵抗をより下げることができる。
【0050】
界面周囲長Zを0.29μm/μm2以上に制御する方法は特に限定されない。例えば、活物質110と固体電解質100との混練工程によって界面周囲長Zを制御することができる。電極材料1000の作製工程において、活物質110の粉末と固体電解質100の粉末とを混合する際に、粒子群にせん断力がかかりやすい混練方法を選択することが望ましい。例えば、自動乳鉢、自転公転撹拌機、撹拌羽根を有する混合機などを用いてもよい。また、作製された電極材料1000の内部においては、固体電解質100と活物質110とが、良好な分散状態を形成し、均一に混合されていることが望ましい。ただし、電極材料1000に用いられる材料によって均一に混合されるまでに必要な処理時間が異なる。そのため、適宜、混練工程中の電極材料1000の一部を回収し、界面周囲長Zを測定しながら電極材料1000を作製することが推奨される。
【0051】
実施の形態1の電極材料1000においては、充填率Pが80%以上であってもよい。充填率Pが80%以上の場合、活物質110および固体電解質100の接触が十分に確保され、充電容量が向上する。また、充填率Pが99%以下であってもよい。充填率Pが99%以下の場合、電池の充放電過程における活物質110の膨張収縮の影響により、活物質110の粒子に割れが発生して充電容量が低下することを抑制できる。このため、電池の高容量化が可能となる。また、充填率Pは93.1%以下であってもよい。これにより、電池のさらなる高容量化が可能となる。
【0052】
電極材料1000の充填率Pを80%以上に制御する方法は特に限定されない。例えば、活物質110と固体電解質100とを混合した後の圧縮工程によって充填率は制御される。圧縮工程においては、例えば、液圧式プレス、機械式プレスなどを用いることができる。また、圧縮工程中に電極材料1000を加熱する熱プレスを用いてもよい。ただし、電極材料1000に用いられる材料に応じて、必要なプレス圧、必要な加熱温度、および必要な処理時間が異なる。例えば、プレス圧を1000MPa以上に設定した場合、活物質110の割れ、または、残留応力による電極材料1000の割れが発生する可能性が生じる。圧縮工程においては電極材料1000に用いられる材料によって好適な条件が選択される。
【0053】
固体電解質100として、例えば、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を用いることができる。この場合、電極材料1000を用いて高容量のリチウムイオン電池を提供できる。
【0054】
固体電解質100として、無機固体電解質および有機固体電解質から選ばれる少なくとも1つが使用されうる。固体電解質100は、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、高分子固体電解質、および錯体水素化物固体電解質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、高分子固体電解質、および錯体水素化物固体電解質の具体例は、実施の形態2に示される。実施の形態2において例示された全ての固体電解質からなる群より選ばれる少なくとも1つを固体電解質100として用いることができる。
【0055】
良好な分散状態を達成するために、固体電解質100は、柔らかい材料で作られていることが望ましい。この観点において、固体電解質100として、硫化物固体電解質および/またはハロゲン化物固体電解質が適している。
【0056】
実施の形態1における固体電解質100の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、針状、球状、楕円球状、鱗片状などであってもよい。例えば、固体電解質100の形状は、粒子状であってもよい。
【0057】
実施の形態1における活物質110の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、針状、球状、楕円球状などであってもよい。例えば、活物質110の形状は、粒子状であってもよい。
【0058】
例えば、実施の形態1における固体電解質100の形状が粒子状(例えば、球状)の場合、メジアン径は、0.01μm以上かつ100μm以下であってもよい。メジアン径が0.01μm以上の場合、固体電解質100の粒子同士の接触界面が増加しすぎず、電極材料1000の内部のイオン抵抗の増加が抑制されうる。このため、電池の高出力での動作が可能となる。
【0059】
固体電解質100のメジアン径が100μm以下である場合、活物質110と固体電解質100とが電極材料1000において良好な分散状態を形成しやすい。このため、電池の高容量化が容易となる。
【0060】
実施の形態1においては、固体電解質100のメジアン径は、活物質110のメジアン径より小さくてもよい。これにより、電極材料1000において固体電解質100と活物質110とが、より良好な分散状態を形成できる。
【0061】
実施の形態1における活物質110のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。
【0062】
活物質110のメジアン径が0.1μm以上である場合、電極材料1000において、活物質110と固体電解質100とが良好な分散状態を形成しやすい。この結果、電池の充電特性が向上する。
【0063】
活物質110のメジアン径が100μm以下である場合、活物質110内のリチウムの拡散速度が十分に確保される。このため、電池の高出力での動作が可能となる。
【0064】
活物質110のメジアン径は、固体電解質100のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、活物質110と固体電解質100とが、良好な分散状態を形成できる。
【0065】
実施の形態1における活物質110は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出する特性を有する材料を含む。活物質110は、例えば、負極活物質を含む。負極活物質として、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物などが使用されうる。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属、リチウム合金などが挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、非晶質炭素などが挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、および錫化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。
【0066】
活物質110は、例えば、正極活物質を含んでいてもよい。正極活物質として、例えば、金属複合酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン材料、フッ素化ポリアニオン材料、遷移金属硫化物、遷移金属オキシ硫化物、および遷移金属オキシ窒化物などが用いられうる。特に、正極活物質として、リチウム含有遷移金属酸化物を用いた場合には、製造コストを安くでき、平均放電電圧を高めることができる。
【0067】
実施の形態1において、活物質110として選択される金属複合酸化物は、Liと、Mn、Co、Ni、およびAlからなる群より選択される少なくとも1種の元素とを含んでもいてもよい。そのような材料としては、Li(NiCoAl)O2、Li(NiCoMn)O2、LiCoO2などが挙げられる。例えば、正極活物質は、Li(NiCoMn)O2であってもよい。
【0068】
活物質110は、単一の活物質を含んでいてもよく、互いに異なる組成を有する複数の活物質を含んでいてもよい。
【0069】
以上の構成によれば、電池の充電容量を向上させることができる。
【0070】
実施の形態1においては、固体電解質100の粒子と活物質110の粒子とは、図1に示されるように、互いに、接触していてもよい。
【0071】
実施の形態1の電極材料1000は、複数の固体電解質100の粒子と、複数の活物質110の粒子と、を含んでもよい。
【0072】
実施の形態1において、固体電解質100の含有量と活物質110の含有量とは、互いに、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0073】
電極材料1000の全量を100wt%としたとき、活物質110の含有量は、例えば、40wt%以上かつ80wt%以下でありうる。活物質110の含有量を適切に調整することによって、活物質110と固体電解質100とが、良好な分散状態を形成しやすい。
【0074】
電極材料1000は、活物質110および固体電解質100のみを含んでいてもよい。言い換えれば、電極材料1000は、実質的に、活物質110および固体電解質100からなっていてもよい。このような構成によれば、電池のエネルギー密度を向上させることができる。「活物質110および固体電解質100のみを含む」とは、不可避不純物を除き、他の材料を電極材料1000に意図的に含ませないことを意味する。
【0075】
一般に、「メジアン径」は、体積基準の粒度分布における累積堆積が50%に等しい場合の粒径を意味する。体積基準の粒度分布は、例えば、レーザー回折式測定装置によって測定される。
【0076】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2が説明される。上述の実施の形態1と重複する説明は、適宜、省略される。
【0077】
図2は、実施の形態2における電池2000の概略構成を示す断面図である。
【0078】
実施の形態2における電池2000は、第一電極201と、電解質層202と、第二電極203と、を備える。
【0079】
第一電極201は、電極材料1000を含む。
【0080】
電解質層202は、第一電極201と第二電極203との間に配置される。
【0081】
以上の構成によれば、電池2000の充電容量を向上させることができる。
【0082】
第一電極201に含まれる、活物質110と固体電解質100との重量比率「w:100-w」について、40≦w≦80が満たされてもよい。40≦wが満たされる場合、電池2000のエネルギー密度が十分に確保される。また、w≦80が満たされる場合、電池2000の高出力での動作が可能となる。
【0083】
第一電極201の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。第一電極201の厚みが10μm以上である場合、電池2000のエネルギー密度が十分に確保される。第一電極201の厚みが500μm以下である場合、電池2000の高出力での動作が可能となる。
【0084】
電解質層202は、電解質を含む層である。当該電解質は、例えば、固体電解質である。すなわち、電解質層202は、固体電解質層であってもよい。
【0085】
電解質層202に含まれる固体電解質として、例えば、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質が用いられる。無機固体電解質としては、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質などが用いられる。
【0086】
電解質層202に含まれる固体電解質として、ハロゲン化物固体電解質を用いてもよい。
【0087】
ハロゲン化物固体電解質は、例えば、下記の組成式(1)により表される。組成式(1)において、α、β、およびγは、それぞれ独立して、0より大きい値である。Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む。Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0088】
LiαMβXγ・・・式(1)
【0089】
半金属元素は、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeを含む。金属元素は、水素を除く周期表1族から12族に含まれる全ての元素、ならびに、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSeを除く13族から16族に含まれる全ての元素を含む。すなわち、金属元素は、ハロゲン化合物と無機化合物を形成した際にカチオンとなりうる元素群である。
【0090】
ハロゲン化物固体電解質として、Li3YX6、Li2MgX4、Li2FeX4、Li(Al,Ga,In)X4、Li3(Al,Ga,In)X6などが用いられうる。
【0091】
以上の構成によれば、電池2000の出力密度を向上させることができる。また、電池2000の熱的安定性を向上させ、硫化水素などの有害ガスの発生を抑制することができる。
【0092】
本開示において、式中の元素を「(Al,Ga,In)」のように表すとき、この表記は、括弧内の元素群より選択される少なくとも1種の元素を示す。すなわち、「(Al,Ga,In)」は、「Al、Ga、およびInからなる群より選択される少なくとも1種」と同義である。他の元素の場合でも同様である。ハロゲン化物固体電解質は、優れたイオン伝導性を示す。
【0093】
組成式(1)において、Mは、Y(=イットリウム)を含んでいてもよい。すなわち、電解質層202に含まれるハロゲン化物固体電解質は、金属元素としてYを含んでいてもよい。
【0094】
Yを含むハロゲン化物固体電解質は、下記の組成式(2)により表される化合物であってもよい。
【0095】
Liabc6・・・式(2)
【0096】
組成式(2)は、a+mb+3c=6、かつ、c>0を満たす。組成式(2)において、Mは、LiおよびY以外の金属元素ならびに半金属元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む。mは、Mの価数である。Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つを含む。Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つを含む。Yを含むハロゲン化物固体電解質として、具体的には、Li3YF6、Li3YCl6、Li3YBr6、Li3YI6、Li3YBrCl5、Li3YBr3Cl3、Li3YBr5Cl、Li3YBr5I、Li3YBr33、Li3YBrI5、Li3YClI5、Li3YCl33、Li3YCl5I、Li3YBr2Cl22、Li3YBrCl4I、Li2.71.1Cl6、Li2.50.5Zr0.5Cl6、Li2.50.3Zr0.7Cl6などが用いられうる。
【0097】
以上の構成によれば、電池2000の出力密度をより向上させることができる。
【0098】
電解質層202に含まれる固体電解質は、硫化物固体電解質を含んでいてもよい。
【0099】
以上の構成によれば、還元安定性に優れる硫化物固体電解質を含むため、黒鉛または金属リチウムなどの低電位負極材料を用いることができ、電池2000のエネルギー密度を向上させることができる。
【0100】
硫化物固体電解質としては、Li2S-P25、Li2S-SiS2、Li2S-B23、Li2S-GeS2、Li3.25Ge0.250.754、Li10GeP212などが用いられうる。これらに、LiX、Li2O、MOq、LipMOqなどが添加されてもよい。ここで、「LiX」における元素Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される数なくとも1種の元素である。「MOq」および「LipMOq」における元素Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。「MOq」および「LipMOq」におけるpおよびqは、それぞれ独立な自然数である。
【0101】
硫化物固体電解質としては、例えば、Li2S-P25系、Li2S-SiS2系、Li2S-B23系、Li2S-GeS2系、Li2S-SiS2-LiI系、Li2S-SiS2-Li3PO4系、Li2S-Ge22系、Li2S-GeS2-P25系、Li2S-GeS2-ZnS系などのリチウム含有硫化物が用いられうる。
【0102】
電解質層202に含まれる固体電解質は、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、および錯体水素化物固体電解質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0103】
酸化物固体電解質としては、例えば、LiTi2(PO43およびその元素置換体を代表とするNASICON型固体電解質、(LaLi)TiO3系のペロブスカイト型固体電解質、Li14ZnGe416、Li4SiO4、LiGeO4およびその元素置換体を代表とするLISICON型固体電解質、Li7La3Zr212およびその元素置換体を代表とするガーネット型固体電解質、Li3NおよびそのH置換体、Li3PO4およびそのN置換体、LiBO2、Li3BO3などのLi-B-O化合物を含むベース材料にLi2SO4、Li2CO3などの材料が添加されたガラスまたはガラスセラミックスなどが用いられうる。
【0104】
酸化物固体電解質としては、例えば、Li2O-SiO2およびLi2O-SiO2-P25などのリチウム含有金属酸化物、Lixy1-zzなどのリチウム含有金属窒化物、リン酸リチウム(Li3PO4)、リチウムチタン酸化物などのリチウム含有遷移金属酸化物などが用いられうる。
【0105】
酸化物固体電解質としては、例えば、Li7La3Zr212(LLZ)、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43(LATP)、(La,Li)TiO3(LLTO)などが用いられる。
【0106】
高分子固体電解質としては、例えば、高分子化合物と、リチウム塩との化合物が用いられうる。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有することで、高分子化合物はリチウム塩を多く含有することができるので、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO249)、LiC(SO2CF33などが使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が単独で使用されてもよいし、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が使用されてもよい。
【0107】
錯体水素化物固体電解質としては、例えば、LiBH4-LiI、LiBH4-P25などが用いられうる。
【0108】
電解質層202は、上述した固体電解質の群から選択される1種の固体電解質のみを含んでいてもよく、上述した固体電解質の群から選択される2種以上の固体電解質を含んでいてもよい。複数の固体電解質は、互いに異なる組成を有する。例えば、電解質層202は、ハロゲン化物固体電解質と硫化物固体電解質とを含んでいてもよい。
【0109】
電解質層202の厚みは、1μm以上かつ300μm以下であってもよい。電解質層202の厚みが1μm以上である場合には、第一電極201と第二電極203とが短絡しにくい。電解質層202の厚みが300μm以下である場合には、電池2000の高出力での動作が可能となる。
【0110】
第二電極203は、第一電極201の対極として電池2000の動作に寄与する。
【0111】
以下に、第一電極201が負極である場合を例にとって説明する。つまり、電池2000の負極に電極材料1000が用いられる。この場合、活物質110は、負極活物質である。電池2000の負極に電極材料1000を用いることによって、電池2000の充電容量をより向上させることができる。
【0112】
活物質110が負極活物質であるとき、負極活物質は、グラファイト、シリコン、シリコン合金、シリコン酸化物、スズ、スズ合金、およびスズ酸化物からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。負極活物質は、望ましくは、グラファイトを含む。これらの材料を用いることで、大きい充電容量および優れた充放電特性を有する電池2000を提供できる。
【0113】
第一電極201が負極活物質を含む場合、第二電極203は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出する特性を有する材料を含んでもよく、例えば、正極活物質を含む。正極活物質として、例えば、金属複合酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン材料、フッ素化ポリアニオン材料、遷移金属硫化物、遷移金属オキシ硫化物、および遷移金属オキシ窒化物などが用いられうる。特に、正極活物質として、リチウム含有遷移金属酸化物を用いた場合には、製造コストを安くでき、平均放電電圧を高めることができる。
【0114】
第二電極203に含まれる正極活物質として選択される金属複合酸化物は、Liと、Mn、Co、Ni、およびAlからなる群より選択される少なくとも1種の元素とを含んでもいてもよい。そのような材料としては、Li(NiCoAl)O2、Li(NiCoMn)O2、LiCoO2などが挙げられる。例えば、正極活物質は、Li(NiCoMn)O2であってもよい。
【0115】
第一電極201が正極である場合においても、第一電極201中の電子伝導パスおよびリチウムイオン伝導パスが確保され、充電容量が向上する。第一電極201が正極である構成も、第一電極201が負極である構成と同様に実施可能である。
【0116】
第一電極201が正極活物質を含む場合、第二電極203は、例えば、負極活物質を含む。負極活物質として、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、などが使用されうる。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属、リチウム合金などが挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、非晶質炭素などが挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、錫化合物を好適に使用できる。
【0117】
第二電極203は、固体電解質を含んでもよい。以上の構成によれば、第二電極203内部のリチウムイオン伝導性を高め、電池2000の高出力での動作が可能となる。第二電極203における固体電解質として、電解質層202に含まれた固体電解質として例示した材料を用いてもよい。
【0118】
第二電極203に含まれる活物質の粒子のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。活物質の粒子のメジアン径が0.1μm以上である場合、活物質粒子と固体電解質とが、良好な分散状態を形成できる。これにより、電池2000の充電容量が向上する。活物質の粒子のメジアン径が100μm以下である場合、活物質の粒子内のリチウムの拡散速度が十分に確保される。このため、電池2000の高出力での動作が可能となる。
【0119】
活物質の粒子のメジアン径は、固体電解質の粒子のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、活物質と固体電解質との良好な分散状態を形成できる。
【0120】
第二電極203に含まれる、活物質と固体電解質の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95が満たされてもよい。30≦vが満たされる場合、電池2000のエネルギー密度が十分に確保される。また、v≦95が満たされる場合、電池2000の高出力での動作が可能となる。
【0121】
第二電極203の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。第二電極203の厚みが10μm以上である場合には、電池2000のエネルギー密度が十分に確保される。第二電極203の厚みが500μm以下である場合には、電池2000の高出力での動作が可能となる。
【0122】
第二電極203は、電極材料1000を含んでいてもよい。この場合、第一電極201の事例に示されるいずれかの構成を用いてもよい。
【0123】
以上の構成によれば、第二電極203の内部のリチウムイオン伝導性および電子伝導性を高め、充電容量が向上する。
【0124】
第一電極201および第二電極203は、イオン電導性を高める目的で、1種類以上の固体電解質を含んでもよい。固体電解質としては、電解質層202に含まれた固体電解質として例示した材料を用いてもよい。
【0125】
第一電極201と電解質層202と第二電極203とのうちの少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上させる目的で、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極を構成する材料の結着性を向上させるために、用いられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また、結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体が用いられうる。また、これらのうちから選択された2種以上が混合されて、結着剤として用いられてもよい。
【0126】
第一電極201と第二電極203との少なくとも1つは、電子導電性を高める目的で、導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛または人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物などが用いられうる。炭素導電助剤を用いた場合、低コスト化を図ることができる。
【0127】
充放電に寄与しない導電助剤および結着剤が電極材料1000に明確に含まれている場合、導電助剤および結着剤は、周囲長の合計の算出から除外される。例えば、断面の元素マッピング等によって、導電助剤および結着剤は、固体電解質100および活物質110と区別されうる。導電助剤および結着剤を除外して、固体電解質100と活物質110との界面120の長さの合計が算出されうる。
【0128】
実施の形態2における電池2000は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型などの種々の形状の電池として構成されうる。
【実施例
【0129】
以下、実施例および比較例を用いて、本開示の詳細が説明される。
【0130】
<<実施例1>>
[硫化物固体電解質Aの作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のアルゴングローブボックス内で、Li2SとP25とを、モル比でLi2S:P25=75:25となるように秤量した。これらを乳鉢で粉砕して混合して混合物を得た。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、10時間、510rpmで混合物をミリング処理することで、ガラス状の固体電解質を得た。ガラス状の固体電解質を、不活性雰囲気中、270度、2時間の条件で熱処理した。これにより、硫化物固体電解質Aとして、ガラスセラミックス状の固体電解質であるLi2S-P25を得た。
【0131】
[電極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、メジアン径8μmの球状黒鉛と、硫化物固体電解質Aとを、40:60の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例1の電極材料を作製した。
【0132】
実施例1の電極材料は負極材料である。
【0133】
<<実施例2>>
[硫化物固体電解質Bの作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のアルゴングローブボックス内で、Li2SとP25とを、モル比でLi2S:P25=75:25となるように秤量した。Li2S、P25およびプロピオン酸エチルの混合物を直径4mmのジルコニアボールと共に試験管型の樹脂製容器に入れて密栓した。
【0134】
その後、樹脂製容器を振盪機(ASONE社製、CUTE MIXER-CM1000)にセットし、6時間、約1500回/分の速度で振盪することで懸濁液を得た。懸濁液からジルコニアボールを除き、得られた懸濁液を遠心分離機(日立工機社製、GR22GIII)にて遠心分離した。上澄みの溶媒を除去することでペースト状のサンプルを回収した。
【0135】
次に、ペースト状のサンプルを室温で30分間、真空乾燥させることで白色粉末を得た。最後に粉末状のサンプルを170度で2時間、真空熱処理を行うことで硫化物固体電解質Bを得た。
【0136】
[電極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、メジアン径8μmの球状黒鉛と、硫化物固体電解質Bとを、60:40の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例2の電極材料を作製した。
【0137】
実施例2の電極材料は負極材料である。
【0138】
<<実施例3>>
[電極材料の作製]
球状黒鉛と硫化物固体電解質Bとの重量比率を80:20に変更したことを除き、実施例2の方法と同じ方法によって、実施例3の電極材料を得た。
【0139】
実施例3の電極材料は負極材料である。
【0140】
<<実施例4>>
[硫化物固体電解質Cの作製]
実施例1と同じ方法で硫化物固体電解質Aを作製し、露点-40℃以下の乾燥雰囲気中にて、硫化物固体電解質Aをジェットミル装置(アイシンナノテクノロジー社製、NJ-50)により粉砕し、微粒化した。その後、不活性雰囲気中、270度、2時間の条件にて、微粒化した硫化物固体電解質を熱処理することで硫化物固体電解質Cを得た。
【0141】
[電極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、メジアン径8μmの球状黒鉛と、硫化物固体電解質Cとを、40:60の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例4の電極材料を作製した。
【0142】
実施例4の電極材料は負極材料である。
【0143】
<<実施例5>>
[電極材料の作製]
球状黒鉛と硫化物固体電解質Cとの重量比率を60:40に変更したことを除き、実施例4の方法と同じ方法によって、実施例5の電極材料を得た。
【0144】
実施例5の電極材料は負極材料である。
【0145】
<<実施例6>>
[電極材料の作製]
球状黒鉛と硫化物固体電解質Cとの重量比率を80:20に変更したことを除き、実施例4の方法と同じ方法によって、実施例6の電極材料を得た。
【0146】
実施例6の電極材料は負極材料である。
【0147】
<<実施例7>>
[電極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、メジアン径8μmの球状黒鉛と、メジアン径8μmのシリコン化合物を90:10の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合して混合負極活物質を得た。混合負極活物質と固体電解質Cとを70:30の重量比率で秤量した。混合負極活物質、固体電解質C、溶媒、分散剤、および増粘剤を混合することで負極スラリーを得た。この負極スラリーを銅箔上に塗布し、塗布膜を乾燥させた。これにより、銅箔上に実施例7の電極材料を作製した。
【0148】
実施例7の電極材料は負極材料である。
【0149】
<<比較例1>>
球状黒鉛と硫化物固体電解質Bとの重量比率を40:60に変更したことを除き、実施例1の方法と同じ方法によって、比較例1の電極材料を得た。
【0150】
比較例1の電極材料は負極材料である。
【0151】
<<比較例2>>
球状黒鉛と硫化物固体電解質Aとの重量比率を80:20に変更したことを除き、実施例1の方法と同じ方法によって、比較例2の電極材料を得た。
【0152】
比較例2の電極材料は負極材料である。
【0153】
<<比較例3>>
[硫化物固体電解質Dの作製]
実施例1と同じ方法で硫化物固体電解質Aを作製した。アルゴングローブボックス内で、硫化物固体電解質Aを目開き10μmの精密ふるいを用いて分級し、ふるいを通過した粉末を回収することで、硫化物固体電解質Dを得た。
【0154】
[電極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、メジアン径8μmの球状黒鉛と、硫化物固体電解質Dとを、80:20の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、比較例3の電極材料を作製した。
【0155】
比較例3の電極材料は負極材料である。
【0156】
[充填率の測定1]
実施例1から3、比較例1および比較例2の電極材料を用いて、下記の工程を実施した。
【0157】
まず、金属製外筒の中に電極材料を80mg投入し、これを360MPaの圧力で加圧成形することで、電極材料のペレットを得た。次に、ペレットの膜厚および重量を測定した。最後に、外筒の内径、活物質の真密度および固体電解質の真密度を用いることで、実施例1から3、比較例1および比較例2の電極材料の充填率を算出した。
【0158】
[充填率の測定2]
実施例4から6および比較例3の電極材料を用いて、下記の工程を実施した。
【0159】
まず、金属製外筒の中に電極材料を80mg投入し、これを720MPaの圧力で加圧成形することで、電極材料のペレットを得た。次に、ペレットの膜厚および重量を測定した。最後に、外筒の内径、活物質の真密度および固体電解質の真密度を用いることで、実施例4から6および比較例3の電極材料の充填率を算出した。
【0160】
[充填率の測定3]
実施例7の電極材料を用いて、下記の工程を実施した。
【0161】
実施例7の電極材料を600MPaの圧力で加圧成形した。その後、加圧成形した電極材料の重量および膜厚を測定した。活物質、固体電解質、分散剤、および増粘剤の各材料の真密度を用いることで、実施例7の電極材料の充填率を算出した。
【0162】
[界面周囲長の測定1]
実施例1、実施例2および比較例1の電極材料を用いて、下記の工程を実施した。
【0163】
まず、金属製外筒の中に電極材料を80mg投入し、これを360MPaの圧力で加圧成形することで、電極材料のペレットを得た。
【0164】
次に、ペレットをクロスセクションポリッシャ(JEOL社製、SM-09010)により加工することで、平滑な断面を形成した。このとき、ペレットの厚さ方向に断面加工を実施した。
【0165】
ペレットの断面をSEM(日立ハイテクノロジーズ社製、SU-70)により観察し、断面像(倍率500倍)を取得した。このときのSEM観察領域は4.5×104μm2であった。活物質である球状黒鉛のメジアン径Dが8μmであることから、観察面積AはA≧(20D)2を満たしていた。
【0166】
次に、断面像を画像処理ソフトImage Jにて解析した。まず、SEM観察領域に対し、バックグラウンドに白色を指定して二値化画像を得た。次に、Analyze Particles機能によって、二値化画像から活物質の粒子判定を行った。画像処理後のノイズ除去のため、断面像において粒子判定された粒子の平均断面積に対して1%以下の断面積を有する粒子は除外し、粒子と判定された活物質の周囲長の合計を算出した。最後に、断面像から算出された周囲長の合計を、画像解析面積で除算することで、単位面積当たりの活物質と固体電解質との界面長さ、すなわち界面周囲長を算出した。
【0167】
本明細書において、「粒子判定」とは、粒子が存在するかどうかを判定することを意味する。
【0168】
[界面周囲長の測定2]
バックグラウンドを黒色に指定したことを除き、測定1と同じ方法によって、実施例3および比較例2の電極材料における界面周囲長を測定した。
【0169】
[界面周囲長の測定3]
加圧成形時の圧力を720MPaに設定したことを除き、測定1と同じ方法によって、実施例4および5の電極材料における界面周囲長を測定した。
【0170】
[界面周囲長の測定4]
加圧成形時の圧力を720MPaに設定したこと、および、バックグラウンドを黒色に指定したことを除き、測定1と同じ方法によって、実施例6および比較例3の電極材料における界面周囲長を測定した。
【0171】
[界面周囲長の測定5]
実施例7の電極材料を用いて、下記の工程を実施した。
【0172】
まず、金属製外筒の中に80mgの硫化物固体電解質Aと実施例7の銅箔上に形成された電極材料とをこの順に積層した。銅箔/電極材料/硫化物固体電解質Aの積層体を600MPaの圧力で加圧成形することで、ペレットを得た。ペレット中の硫化物固体電解質Aは電極材料の担持層である。電極材料と一体成形することで、加圧成形後の電極材料の取り扱いが容易になる。
【0173】
その後、バックグラウンドを黒色に指定したこと、断面像の取得倍率が800倍であったことを除き、測定1と同じ方法によって、実施例7の電極材料における界面周囲長を測定した。
【0174】
実施例7の電極材料は、バインダー、分散剤、および増粘剤を含む。しかし、電極材料の全体に占めるバインダー、分散剤、および増粘剤の合計割合は、0.1wt%未満)であり、非常に低かった。そのため、界面周囲長の測定において、増粘剤を除外する操作は行わなかった。
【0175】
[二次電池の作製1]
実施例1および比較例1の電極材料と硫化物固体電解質Aとを用いて、下記の工程を実施した。
【0176】
まず、絶縁性外筒の中で、80mgの硫化物固体電解質Aと、12mgの電極材料とをこの順に積層させた。これらを360MPaの圧力で加圧成形することで、第一電極および電解質層を得た。
【0177】
次に、第二電極として、金属In(厚さ200μm)、金属Li(厚さ300μm)、金属In(厚さ200μm)をこの順に電解質層の上に積層させた。得られた積層体を80MPaの圧力で加圧成形することで、第一電極、電解質層、および第二電極からなる積層体を作製した。
【0178】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを取り付けた。
【0179】
最後に、絶縁性フェルールを用いて絶縁性外筒を密閉し、絶縁性外筒の内部を外気雰囲気から遮断することで、電池を作製した。
【0180】
以上により、実施例1および比較例1の電池をそれぞれ作製した。
【0181】
[二次電池の作製2]
実施例1の電極材料に代えて実施例2の電極材料を8mg用いたことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例2の電池を作製した。
【0182】
[二次電池の作製3]
実施例1の電極材料に代えて実施例3または比較例2の電極材料を6mg用いたことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例3および比較例2の電池を作製した。
【0183】
[二次電池の作製4]
実施例1の電極材料に代えて実施例4の電極材料を12mg用いたこと、および、電極材料を加圧成形する際の圧力を720MPaに変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例4の電池を作製した。
【0184】
[二次電池の作製5]
実施例1の電極材料に代えて実施例5の電極材料を8mg用いたこと、および、電極材料を加圧成形する際の圧力を720MPaに変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例5の電池を作製した。
【0185】
[二次電池の作製6]
実施例1の電極材料に代えて実施例6または比較例3の電極材料を6mg用いたこと、および、電極材料を加圧成形する際の圧力を720MPaに変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例6および比較例3の電池を作製した。
【0186】
[二次電池の作製7]
実施例1の電極材料に代えて実施例7の銅箔上に形成された電極材料(目付16mg)を用いたこと、硫化物固体電解質Aに代えて硫化物固体電解質Cを用いたこと、および、電極材料を加圧成形する際の圧力を600MPaに変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例7の電池を作製した。
【0187】
[充放電試験1]
実施例1から6および比較例1から3の電池を用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。
【0188】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0189】
電池を加圧治具によって150MPaに加圧しながら、電池の理論容量に対して0.04Cレート(25時間率)となる電流値70μAで定電流充電し、-0.62Vの電圧で充電を終了した。
【0190】
なお、ここでの充電とは、第一電極中の負極活物質である球状黒鉛へのLi挿入反応が進行する方向を意味する。
【0191】
また、実施例1から6、比較例1および比較例2の電池の第二電極に用いた合金InLiは、0.62V(vs.Li)の電位を示す。
【0192】
すなわち、実施例1から6、比較例1および比較例2の電池の-0.62Vの充電終止電圧は、Li基準の電位に換算すると0V(vs.Li)に相当する。
【0193】
以上により、実施例1から6および比較例1から3の電池の充電容量を測定した。この結果は、下記の表1に示される。充電容量は、単位重量の活物質あたりの充電容量である。
【0194】
[充放電試験2]
実施例7の電池を用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。
【0195】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0196】
電池を加圧治具によって150MPaに加圧しながら、電池の理論容量に対して0.04Cレート(25時間率)となる電流値140μAで定電流充電し、-0.62Vの電圧で充電を終了した。
【0197】
なお、ここでの充電とは第一電極中の負極活物質である球状黒鉛へのLi挿入反応が進行する方向を意味する。
【0198】
また、実施例7の電池の第二電極に用いた合金InLiは、0.62V(vs.Li)の電位を示す。
【0199】
すなわち、実施例7の電池の-0.62Vの充電終止電圧は、Li基準の電位に換算すると、0V(vs.Li)に相当する。
【0200】
以上により、実施例7の電池の充電容量を測定した。この結果は、下記の表1に示される。
【0201】
【表1】
【0202】
<<考察>>
表1に示す通り、活物質と固体電解質との界面周囲長が0.29μm/μm2以上であり、かつ、充填率が80%以上である電極材料を用いることで、電池の活物質重量あたりの充電容量が向上することが確認された。
【0203】
実施例7の結果は、活物質としてシリコン化合物が電極材料に含まれている場合においても、活物質と固体電解質との界面周囲長が0.29μm/μm2以上であり、かつ、充填率が80%以上である限り、充電容量が向上することを示している。すなわち、本開示の電極材料における活物質は黒鉛のような炭素材料に限定されない。実施例によって、他の活物質を用いた場合においても有効であることが確認された。
【0204】
実施例1の電池に用いた電極材料と比較例1の電池に用いた電極材料との相違点は、硫化物固体電解質の作製方法のみにある。このことは、電極材料における活物質の含有比率を調整するだけで、活物質と固体電解質との良好な分散状態を形成することが困難であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本開示の電池は、例えば、全固体電池として利用されうる。
図1
図2