(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】検査用プローブヘッド
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20250627BHJP
G01R 31/265 20060101ALI20250627BHJP
【FI】
G01R29/08 B
G01R31/265
(21)【出願番号】P 2024201193
(22)【出願日】2024-11-18
【審査請求日】2024-11-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322014392
【氏名又は名称】株式会社M3
(72)【発明者】
【氏名】神谷 浩
【審査官】佐々木 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-179963(JP,A)
【文献】特開2007-078407(JP,A)
【文献】特開2004-253561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0267086(US,A1)
【文献】国際公開第2019/175995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/64-H01L 21/66
H10D 89/00
G01R 29/08
G01R 31/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の放射アンテナを備えた
半導体素子の検査用プローブヘッドであって、
主面を有する基板と、
前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記半導体素子の電源端子に接続して、前記半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、
前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子の前記第1の放射アンテナから放射された電磁波信号を受信する
ための環状コイルを有する第1の受信アンテナ
と、を備え、
前記電源接続子を検査対象である前記半導体素子の電源端子に電気的に接続したときに、前記環状コイルが前記半導体素子の前記第1の放射アンテナ
に対応する位置となるように前記主面上に
配置されることにより、前記第1の放射アンテナから放射される放射パターンが前記環状コイルの環状内に入るように設計されており、
前記電源接続子は、前記半導体素子の前記電源端子に接触したときに、前記半導体素子の表面と前記第1の受信アンテナとの距離が接近可能に屈曲構造を有することを特徴とする検査用プローブヘッド。
【請求項2】
前記第1の受信アンテナは、第1の半径を有する第1のループアンテナと、前記第1の半径と異なる第2の半径を有する第2のループアンテナを含み、
前記第2のループアンテナが、前記第1のループアンテナの内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の検査用プローブヘッド。
【請求項3】
前記第1の受信アンテナは、第1の
ループアンテナと、前記第1の
ループアンテナの側方に配置された第2の
ループアンテナを含むことを特徴とする請求項1に記載の検査用プローブヘッド。
【請求項4】
前記第1の受信アンテナは、第1のループアンテナと、前記主面の延伸方向と交差する方向に、絶縁層を介して、積層された第2のループアンテナを有することを特徴とする請求項1に記載の検査用プローブヘッド。
【請求項5】
第1の放射アンテナを備えた
半導体素子の検査用プローブヘッドであって、
主面を
有し、前記半導体素子の大きさに対応した大きさを有する基板上に形成され、半導体ウェハ上に形成された複数の前記半導体素子を同時に測定可能な複数の検査ユニットを含み、
前記検査ユニットは、前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記半導体素子の電源端子に接続して、前記半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、
前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子の前記
第1の放射アンテナから放射された電磁波信号を受信する
ための環状コイルを有する受信アンテナ
と、を備え、
前記電源接続子を検査対象である前記半導体素子の電源端子に電気的に接続したときに、前記環状コイルが前記半導体素子の前記第1の放射アンテナに対応する位置となるように前記主面上に配置されることにより、前記第1の放射アンテナから放射される放射パターンが前記環状コイルの環状内に入るように設計されており、
前記電源接続子は、前記半導体素子の前記電源端子に接触したときに、前記半導体素子の表面と前記受信アンテナとの距離が接近可能に屈曲構造を有することを特徴とする検査用プローブヘッド。
【請求項6】
放射アンテナと受信アンテナを備えた
半導体素子の検査用プローブヘッドであって、
主面を有する基板と、
前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記半導体素子の電源端子に接続して、前記半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、
前記基板の前記主面側に取り付けられた
環状コイルを有するプローブ受信アンテナと、プローブ放射アンテナを有し、
前記プローブ受信アンテナは、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子の前記放射アンテナから放射された第1電磁波信号を受信可能に構成され、
前記プローブ放射アンテナは、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子に設けられた前記受信アンテナによって受信可能な第2電磁波信号を放射するように構成されて
おり、
前記検査用プローブヘッドを検査対象である前記半導体素子の上側に配置し、
前記電源接続子を検査対象である前記半導体素子の電源端子に電気的に接続したときに、前記環状コイルが前記半導体素子の前記放射アンテナに対応する位置となるように前記主面上に配置されることにより、前記放射アンテナから放射される放射パターンが前記環状コイルの環状内に入るように設計されており、
前記電源接続子は、前記半導体素子の前記電源端子に接触したときに、前記半導体素子の表面と、前記プローブ受信アンテナと前記プローブ放射アンテナとの距離が接近可能に屈曲構造を有していることを特徴とする検査用プローブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子から放出される電磁波信号を受信する検査用接続装置に関し、特に、従来の半導体素子の電気信号による検査に加えて、電磁波信号を受信する方式に関するものであり、半導体素子間やチップレット間や、チップレット内部での電磁波信号の送受信方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今では、電子機器が小型化、高速化していることに伴い、その中で使われる半導体素子の配線ピッチも微細化が進み、クロックなどもスピードも速くなってきている。
【0003】
特に、ロジックデバイスなどでは、プロセステクノロジーが、2nm(ナノメートル)に近づきつつあるが、多ピンのプローブカードのピッチは、40μm(マイクロメートル)であり、大きなギャップがある。
【0004】
更に、マイクロプロセッサのクロックスピードも、28GHz(ギガヘルツ)となって来ているが、現行の検査装置としてのテスタや、多ピンのプローブカードでは、検査対象の半導体素子の評価が困難になってきている。
【0005】
そのための半導体素子の検査装置が半導体素子の進歩のネックになってしまうことや、検査装置の開発コストが高くなっていくことや、さらに検査のための準備に時間がかかるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1では、プローブには、コイルが含まれているが、電磁波信号を検査するためのものでなく、その検査方法について記載されていない。
【0008】
本発明は、半導体素子から放出される電磁波信号を受信する検査用接続装置に関し、特に、従来の半導体素子の電気信号による検査に加えて、電磁波信号を検査する方式に関するものであり、半導体素子間やチップレット間や、チップレット内部での電磁波信号の送受信方式に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検査用プローブヘッドは、第1の放射アンテナを備えた検査用プローブヘッドであって、主面を有する基板と、前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記半導体素子の電源端子に接続して、前記半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子の前記第1の放射アンテナから放射された電磁波信号を受信する第1の受信アンテナとを備える。また、前記第1の受信アンテナは、前記基板の前記主面上に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、半導体素子からの電磁波信号を効果的に受信することができる。
【0011】
また、本発明に係る検査用プローブヘッドにおいて、第1の受信アンテナは、第1の半径を有する第1のループアンテナと、前記第1の半径と異なる第2の半径を有する第2のループアンテナを含み、前記第2のループアンテナが、前記第1のループアンテナの内側に配置されていることを特徴としてもよい。
【0012】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、半導体素子からの2種類の周波数の電磁波信号を効果的に受信することができる。
【0013】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、第1の受信アンテナは、第1の受信アンテナと、前記第1の受信アンテナの側方に配置された第2の受信アンテナを含むことを特徴としてもよい。
【0014】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、半導体素子からの2種類の周波数の電磁波信号を効果的に受信することができる。
【0015】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、第1の受信アンテナは、第1のループアンテナと、前記主面の延伸方向と交差する方向に、絶縁層を介して、積層された第2のループアンテナを有することを特徴としてもよい。
【0016】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、半導体素子からの電磁波信号の受信を強化することができる。
【0017】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、第1の放射アンテナを備えた検査用プローブヘッドであって、主面を有する基板上に形成され、半導体ウェハ上に形成された複数の前記半導体素子を同時に測定可能な複数の検査ユニットを含み、前記検査ユニットは、前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記半導体素子の電源端子に接続して、前記半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子の前記放射アンテナから放射された電磁波信号を受信する受信アンテナを有することを特徴としてもよい。
【0018】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、複数の半導体素子からの電磁波信号を同時に受信することができる。
【0019】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、放射アンテナと受信アンテナを備えた検査用プローブヘッドであって、主面を有する基板と前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記半導体素子の電源端子に接続して、前記半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、前記基板の前記主面側に取り付けられたプローブ受信アンテナとプローブ放射アンテナを有し、前記プローブ受信アンテナは、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子の前記放射アンテナから放射された第1電磁波信号を受信可能に構成され、前記プローブ放射アンテナは、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子に設けられた前記受信アンテナによって受信可能な第2電磁波信号を放射するように構成されていることを特徴としてもよい。
【0020】
本発明に係る検査用プローブヘッドでは、半導体素子との間で電磁波信号により双方向通信ができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る検査用プローブヘッドは、第1の放射アンテナを備えた検査用プローブヘッドであって、主面を有する基板と、前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記半導体素子の電源端子に接続して、前記半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、前記基板の前記主面側に取り付けられ、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子の前記第1の放射アンテナから放射された電磁波信号を受信する第1の受信アンテナとを備える。また、前記第1の受信アンテナは、前記基板の前記主面上に形成されていることを特徴とすることで、半導体素子からの電磁波信号を効果的に受信することができる。
【0022】
このようにして、半導体素子からの電磁波信号の受信による検査の際に、電源接続子により電力を供給すると同時に、ループアンテナにより電磁波信号を受信することが可能となり、従来の半導体素子の電気信号による検査に加えて、電磁波信号を検査することも可能となり、複雑だった半導体素子の検査が簡便となり、従来、半導体素子の電気検査に必要とされる、半導体素子の信号ピンが多いため多ピンとなっていた高価なプローブカードや高性能で高価なテスタが不要となるためコストダウンとなり、検査装置の準備のための納期やセットアップ時間などの多大な時間が大きく短縮され、更には、半導体素子間やチップレット間や、チップレット内部での電磁波信号の送受信方式を可能にできるため、SDGsに貢献できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図4】本発明の1実施例における第1のループアンテナの斜視図
【
図5】本発明の検査対象の半導体素子の一例の上面図
【
図6】本発明の検査対象の半導体素子における内部検査フローの一例
【
図7】本発明の検査対象の半導体素子における周波数生成の一例
【
図8】複数のループアンテナを組み込むためのプローブヘッドの下面図
【
図9】本発明の正面図におけるループアンテナと電源接続子の位置関係図
【
図10】本発明の電源接続子が電源端子に接続した場合の正面図
【
図11】本発明の検査対象の複数の半導体素子の一例の上面図
【
図12】本発明の複数の半導体素子を同時に検査する1実施例の下面図
【
図13】本発明の複数の半導体素子を同時に検査する1実施例の下面図
【
図14】本発明の複数のループアンテナを有する1実施例における下面図
【
図15】本発明の検査対象の半導体素子の一例の上面図
【
図16】本発明の複数のループアンテナを有する1実施例における下面図
【
図17】本発明の検査対象の半導体素子の一例の上面図
【
図18】本発明の複数のループアンテナを有する1実施例における下面図
【
図20】本発明の隣接する層におけるループアンテナの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。
【0025】
尚、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複の説明を省略する。また、図面は理解することを目的としており、実際の寸法比率は実際のものと必ずしも一致しない。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0026】
図1は、本発明の1実施例における正面図及び下面図である。
図1(a)は正面図であり、
図1(b)は下面図である。
【0027】
図2は、本発明の1実施例における正面図であり、
図1(a)の拡大図である。
【0028】
図3は、本発明の1実施例における下面図であり、
図1(b)の拡大図である。
【0029】
図1の正面図及び下面図において、本発明の実施形態に関わる検査用接続装置は検査用プローブヘッドであり、電源を受電する電源端子と、電磁波信号を放射する第1の放射アンテナを有する半導体素子から放射される電磁波信号による検査に使用される。
【0030】
図1においては、図示を省略している検査対象の半導体素子は、電源端子と第1の放射アンテナの形成された表面を、検査用接続装置に対向して配置される。
【0031】
図1に示す検査用接続装置は、電源接続子2と、第1のループアンテナ3と、電源接続子2の先端部と第1のループアンテナ3のループ部が下面に露出した状態で、電源接続子2及び第1のループアンテナ3を保持するプローブヘッド1を備える。
【0032】
なお、プローブヘッド1は、電源接続子2と、第1のループアンテナ3を保持する機能を有するが、下面図におけるプローブヘッド1の形状に関しては、状況に応じて円形、方形、多角形など多様な形状を有することが可能である。
【0033】
図2において、基板4は下面である基板の主面5と上面である基板の裏面6を有しており、
電源接続子2は、導電性材料からなるプローブなどが好適に使用され、また、前記電源接続子2には、垂直タイプのプローブ、カンチタイプのプローブあるいはMEMSタイプなどの任意のタイプのプローブを使用できるが、ここではカンチタイプのプローブで説明を進める。
【0034】
前記電源接続子2はプローブヘッド1の下面から斜め下方に向かって延伸し、更に曲がり部分を有することでカンチタイプのプローブ形状を有しており、先端部が、前記電源端子に弾力をもって電気的に接続され、前記基板の主面から、前記基板の主面に対向する基板の裏面まで貫通した配線部材を備え基端部を形成し、更に、前記基端部はプローブヘッド1の裏面に露出しており、前記基端部が、前記電源接続子に接続され、外部からの電力を、前記基端部、及び前記基板の主面に取り付けられた電源接続子を介して、前記半導体素子の前記電源端子に電力を供給可能に構成されている。
【0035】
また、第1のループアンテナ3は、前記基板の主面から前記基板の主面に対向する基板の裏面まで貫通した2本の配線部材を備え、前記2本の配線部材が第1のループアンテナ3の基端部を形成し、さらに前記第1のループアンテナ3に接続され、第1のループアンテナ3で受信した信号を、前記基端部を介して、前記裏面から外部に取り出せるように構成されている。
【0036】
さらに、第1のループアンテナのループ部は、プローブヘッド1の基板の主面に露出しており、前記2つの基端部は、ループ部が作る面から法線方向に対して、前記2つの基端部の延伸方向は一致している例を示しているが、必ずしも法線方向に一致する必要は無い。
【0037】
図3において、前記プローブヘッド1における前記電源接続子2の先端部と第1のループアンテナ3のループ部の相対的な位置関係は、検査対象の前記半導体素子の前記電源端子と前記第1の放射アンテナの相対的な位置関係に対応している。
【0038】
更に、前記電源接続子2と前記第1のループアンテナ3のループ部は、それぞれ、検査時に検査対象の半導体素子の電源端子への電気的な接続と、第1の放射アンテナからの電磁波信号を受信できるように、即ち、正確に接続し受信できるように、所定の位置精度でプローブヘッド1に保持されている。
【0039】
ここで、「正確に接続し受信」とは、所定の測定精度が得られるように前記電源接続子2が前記半導体素子の電源端子と電気的に接続され、前記第1のループアンテナ3が前記半導体素子の第1の放射アンテナからの電磁波信号を受信可能な近傍に設置されることを示している。
【0040】
また、
図4は、本発明の1実施例における第1のループアンテナの斜視図であり、周囲の電源接続子や、プローブヘッドを割愛した状況での図を示している。
【0041】
図4における前記第1のループアンテナ3がプローブヘッドに組み込まれると、
図2に示すように、前記第1のループアンテナの2つの基端部はプローブヘッド1の裏面に露出し、第1のループアンテナのループ部は、プローブヘッド1の主面に露出している形態となる。
【0042】
次に、
図5は本発明の検査対象の半導体素子の一例の上面図を示す。
【0043】
図5において、半導体素子7は、電源端子8と第1の放射アンテナ9を有している。
【0044】
この時、前記電源端子8は、電源を受電する機能を有し、前記第1の放射アンテナ9は、電磁波信号を放射する機能を有している。
【0045】
ここで、前記半導体素子7の機能のフローを考える。
【0046】
図6は、本発明の検査対象の半導体素子における内部検査フローの一例であり、1段目のフローとして電源受電10、2段目のフローとしてBIST11、3段目のフローとして周波数生成12、4段目のフローとして電力増幅13、5段目のフローとして電磁波信号放射14の、合計5段のフローの事例として説明を進めるが、前記電力増幅13は内部検査フローの中には、必ずしも必要とされない。
【0047】
図6の1段目のフローである電源受電10において、
図5に示す前記半導体素子7の前記電源端子8から、前記半導体素子7に電源を受電する。
【0048】
次に、
図6の1段目のフローで半導体素子7に電源を受電した後の、2段目のフローでは、半導体素子内部において、半導体素子自体が自動的に半導体素子それ自体を良品か不良品かの検査をBIST(Built in self test)などの組込み自己テストにより実施し、その判定結果として、例えば、良品をHIGH信号とし、不良品をLOW信号と出力し、当該信号を、周波数生成12に入力することが可能である。
【0049】
またここで、
図7は、
図6における3段目のフローである周波数生成12の一例を示しており、リングオシレータを構成している。
【0050】
周波数を生成する回路としてリングオシレータが挙げられるが、通常のリングオシレータは、インバータを3個以上の奇数個を直列に接続する構成となっており、周波数を生成することができる。
【0051】
この時、
図7のように初段のゲートにインバータの代替えとしてNAND15を適用しているリングオシレータを考える。
【0052】
ここでは、
図7に示すように、リングオシレータは3段のゲートで構成されており、初段のゲートをNAND15、2段目のゲートを第1のインバータ16、3段目のゲートを第2のインバータ17としている。
【0053】
ここで、
図7におけるリングオシレータの動作を考えてみる。
【0054】
図7におけるNAND15の動作を考慮すると、NAND15の一方の入力端子18に、BIST11による良品結果であるHIGH信号が入力される場合には、NAND15は、NAND15の他方の入力端子20の信号を反転するインバータとしての機能を有する。
【0055】
この時、NAND15がインバータとして機能することで、第1のインバータ16と、第2のインバータ17を含めて奇数個、すなわち3段のインバータによって構成されるリングオシレータとして機能するため、
図7のリングオシレータの出力端子19からは、周波数fが出力される。
【0056】
ここで、NAND15のディレイをτ1、第1のインバータ16のディレイをτ2、第2のインバータ17のディレイをτ3とすると、一般的に、出力される周波数fは、 f = 1/((2x(τ1+τ2+τ3)) と表現することができる。
【0057】
また、NANDの一方の入力端子18に、BIST11による判定結果として不良品結果であるLOW信号が入力されると、NAND15は動作せず、
図7のリングオシレータの出力端子19からは、周波数が出力されない。
【0058】
このため、BIST11による判定結果が良品である場合は、リングオシレータの出力端子19からは、前記周波数fが出力されることになり、BIST11による判定結果が不良品の場合は、リングオシレータの出力端子19からは、周波数が出力されないことになる。
【0059】
また、この時、1つの半導体素子を2個以上のエリアに分割し、その分割したエリアごとに自動的に、前記エリアごとのそれ自体を良品か不良品かの検査をするために、前記エリアごとにBISTをそれぞれ個別に設け、前記エリアごとの判定結果として、例えば、良品をHIGH信号とし、不良品をLOW信号と出力することも可能である。
【0060】
ここで、仮に、1つの半導体素子を2個のエリアに分割し、その分割した1つのエリアを、第1のエリア、他のエリアを第2のエリアとする。
【0061】
第1のエリアには、第1のBISTを有し、第2のエリアには、第2のBISTを有している場合を考慮する。
【0062】
この時には、第1のBISTの結果と、第2のBISTの結果が出力される時間的タイミングをずらすことにより、第1のBIST結果と、第2のBIST結果を、時間的タイミングをずらした状態で、個別に出力することが可能である。
【0063】
またあるいは、第1のBISTには、第1のリングオシレータを設け、第2のBISTには第2のリングオシレータを設け、第1のリングオシレータと第2のリングオシレータの出力する周波数を変更することもできる。
【0064】
例えば、第1のリングオシレータのインバータの段数を3段とし、第2のリングオシレータのインバータの段数を5段とすると、第1のリングオシレータよりも、第2のリングオシレータから出力される周波数が小さくなることになる。
【0065】
また、第1のリングオシレータのインバータの段数を3段とし、第2のリングオシレータのインバータの段数も同様に3段とし、第2のリングオシレータのインバータの間に時間的遅延を目的としたキャパシタを付加することにより、第1のリングオシレータよりも、第2のリングオシレータから出力される周波数が小さくなることになる。
【0066】
次に、
図6における3段目のフロー後の、4段目のフローを考慮する。
【0067】
図6において、4段目のフローの電力増幅13として、一般的なトランク方式クロック回路などを利用し、トランク方式クロック回路の最終段のゲートを束ねて接続することで、3段目の周波数生成から得られた信号の電力を増幅させることができ、更に、トランク方式クロック回路の最終段のインピーダンスを低減することも可能となり、トランク方式クロック回路の最終段のゲートを束ねて接続し得られた信号を、5段目の電磁波信号放射に送出することができる。
【0068】
また、この時、半導体素子を2個以上のエリアに分割し、その分割したエリアごとに電力増幅の機能を有する、電力増幅部をそれぞれ個別に設けることも可能であるが、電力増幅部は必ずしも必要とはされない。
【0069】
次に、4段目のフロー後の、5段目のフローを考慮する。
【0070】
図6における5段目のフローである電磁波信号放射14として、例えば、半導体素子7に含まれる第1の放射アンテナ9などに、電力増幅13における前記トランク方式クロック回路の最終段のゲートを束ねて接続し得られた信号を接続することにより、第1の放射アンテナ9からの電磁波信号の放射が可能となる。
【0071】
この時、電磁波信号放射14のための第1の放射アンテナ9として、ループアンテナ、モノポールアンテナあるいはダイポールアンテナなどの形状を考慮すると、それぞれの形状のアンテナを半導体素子の上面に形成する場合、半導体素子におけるGNDプレーンなどの影響を多少なりとも受けるため、指向性は特段考慮する必要が無くなり、それぞれの形状のアンテナを指向性なしと判断して利用することが可能である。
【0072】
また、この時、半導体素子を2個以上のエリアに分割し、その分割したエリアごとに電磁波信号放射の機能を有する、第1の放射アンテナをそれぞれ個別に設けることも可能である。
【0073】
この際の第1の放射アンテナの形状としては、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、ループアンテナなどを選択することが可能であり、更にサイズも複数選択することが可能である。
【0074】
更には、半導体素子を2個以上のエリアに分割した場合でも、電磁波信号放射の機能を有する、1つの第1の放射アンテナを設け、その分割したエリアが、前記1つの第1の放射アンテナを共有して利用することも可能である。
【0075】
以上、
図6において、本発明の検査対象の半導体素子における内部検査フローの一例について説明したが、次に、検査用接続装置による半導体素子からの電磁波信号の具体的な受信方法について説明する。
【0076】
通常、半導体素子の第1の放射アンテナ9と、検査用接続装置の第1のループアンテナ3が近接することによって、第1の放射アンテナ9から放射された電磁波信号は、第1のループアンテナ3により受信される。
【0077】
図1に示した検査用接続装置では、半導体素子7の第1の放射アンテナ9から放射される電磁波信号の受信時において、電源接続子2の先端部が電源端子8と電気的に接続することと、第1のループアンテナ3が、第1の放射アンテナ9からの電磁波信号を受信することが同時に行われることが可能となっている。
【0078】
このことにより、例えば、電源接続子2の先端部が前記電源端子に電気的に接続されることで、半導体素子7に電源を受電すると共に、
図6に示した、本発明の検査対象の半導体素子における内部検査フローの一例の、5段目のフローである電磁波信号放射に示すように、半導体素子の第1の放射アンテナ9から放射された電磁波信号が、第1のループアンテナ3のループ部により受信され、検査用接続装置によって電磁波信号が検知される。
【0079】
また、ここでは、第1のループアンテナに関して電磁波信号の受信機能を持つアンテナとして説明しているが、電磁波信号の放射機能を持つアンテナとしての機能を持たせることも可能であり、受信アンテナかつ放射アンテナとしての機能を持たせることも可能である。
【0080】
このように、検査用接続装置は、検査対象の半導体素子と接続するプローブカードとして機能する。
【0081】
また、第1のループアンテナ3のループ部は、電磁波信号を受信することを目的としているが、ループ部を形成する導電性材料や、その周囲の保護用あるいは電気ショート防止のための被覆材料を利用していている場合には、その被覆材料の誘電率などの特性や、ループ部の半径などにより、電磁波信号を受信する際にアンテナとして有する周波数帯域やゲインなどの特性が異なってくる。
【0082】
また、第1のループアンテナ3の2つの基端部を増幅器(アンプ)などに接続することで、第1のループアンテナ3のループ部から受信された電磁波信号を増幅器にて増幅することができる。
【0083】
更に、増幅器により増幅された電磁波信号をスペクトラムアナライザなどに接続することで、スペクトラムアナライザにて、電磁波信号の周波数情報などを取得することが可能である。
【0084】
この際に、
図6と
図7で説明したとおり、例えば、BIST11による判定結果が良品の場合は、前記第1の放射アンテナ9から電磁波信号が放射されることになり、前記電磁波信号を、第1のループアンテナ3にて受信することができ、さらに、第1のループアンテナ3の2つの基端部を増幅器などに接続し、更にスペクトラムアナライザなどに接続することで、電磁波信号の周波数情報などを取得することができるため、前記検査用接続装置によって、検査対象の半導体素子が良品であるという検査結果情報を得ることが可能である。
【0085】
また、同様に、例えば、BIST11による判定結果が不良品の場合は、前記第1の放射アンテナ9から電磁波信号が放射されないため、第1のループアンテナ3にて電磁波信号を受信することがなく、更には、第1のループアンテナ3の2つの基端部を増幅器などに接続し、更にスペクトラムアナライザなどに接続したとしても、電磁波信号そのものを取得することが無いため、前記電磁波信号の周波数情報なども取得することが無く、前記検査用接続装置によって、検査対象の半導体素子が不良品であるという検査結果情報を得ることが可能である。
【0086】
また、
図8は、複数のループアンテナを組み込むためのプローブヘッドの下面図である。
【0087】
複数のループアンテナをプローブヘッドに設置する場合には、複数のループアンテナそれぞれが有する2つの基端部が、プローブヘッドの上面に露出するための貫通するガイド穴を、ループアンテナ毎に個別に準備することなく、隣接する複数のループアンテナそれぞれが有する2つの基端部で共通にすることも可能である。
【0088】
図8には、共通するガイド穴21により、複数の同一サイズのループアンテナそれぞれが有する2つの基端部が、プローブヘッドの上面に露出する状況を示しているが、ループ部の半径のサイズが異なる複数のループアンテナをプローブヘッドに設置する場合であっても考え方は同じである。
【0089】
次に、
図9は、本発明の正面図におけるループアンテナと電源接続子の位置関係図である。
【0090】
図9に示すようにプローブヘッド1の第1のループアンテナ3のループ部の下面からH1の長さ分、電源接続子2の先端部が延伸する構成の検査用接続装置を考慮する。
【0091】
ここで、H1が、300μmであると仮定する時の位置合わせを考える場合に、例えば、半導体素子が搭載面に搭載されたステージを、搭載面と平行な方向に移動させたり、搭載面の面法線方向を中心軸として回転させたりして位置合わせが行われるが、ステージに配置されたC C D カメラなどの撮像装置により、検査用接続装置に設けられたアライメントマークを撮影しながら行うことも可能である。
【0092】
この時、ステージに配置された撮像装置によって、検査用接続装置に設けられたアライメントマークの撮影画像が得られると、撮影画像の画像処理により、半導体素子が搭載されたステージと検査用接続装置との相対位置情報を得ることができる。
【0093】
この相対位置情報に基づいて、電源接続子2の先端部が半導体素子の電源端子に電気的に接触可能な位置になるように、ステージの位置や方向などが調整されることになる。
【0094】
更に、電源接続子2の先端部と半導体素子の電源端子の位置が平面視で一致している状態で、電源接続子2の先端部と半導体素子の電源端子を接触させる場合には、電源接続子2の先端部と、第1のループアンテナ3のループ部の位置関係が、半導体素子の電源端子と第1の放射アンテナの位置関係に対応しているため、半導体素子の第1の放射アンテナからの電磁波信号を受信できる位置に第1のループアンテナ3のループ部が配置されることになる。
【0095】
次に、
図10は、本発明の電源接続子が電源端子に接続した場合の正面図を示している。
【0096】
図10において、半導体素子の電源端子に、電源接続子が、所定の針圧で押圧されるようにして、半導体素子と検査用接続装置とを接近させる場合に、例えば、電源接続子の先端部を半導体素子に押し付けるようにオーバードライブを印加する。
【0097】
この場合、第1のループアンテナのループ部と半導体素子の第1の放射アンテナとの間隔として、H2が、第1のループアンテナのループ部が半導体素子の第1の放射アンテナからの電磁波信号を受信できる間隔であるように、半導体素子と検査用接続装置とを接近させる。
【0098】
ここで、第1のループアンテナのループ部と、半導体素子の第1の放射アンテナとの間隔は、
図9におけるH1の設定やオーバードライブの設定により、一定の範囲内で制御可能である。
【0099】
一例として、
図9におけるH1が、300μmで、オーバードライブの印加が100μmの場合、間隔H2は、200μm程度となる。
【0100】
この時、前記第1のループアンテナのループ部が、半導体素子に前記200μm程度に近接することになるが、前記第1のループアンテナのループ部が変形などによりプローブヘッドから離れていたりすると、前記ループ部が、半導体素子に接触することになり、半導体素子を破壊する恐れがある。
【0101】
そのため、理想的には、前記第1のループアンテナのループ部は、前記プローブヘッドの下面に接続されて動かない状態にするなど、前記プローブヘッドの下面から離れるようなことが無いように固定するのが良い。
【0102】
この場合、前記第1のループアンテナのループ部を、前記プローブヘッドの下面に接着材料などで接着させ、剥がれないようにすることや、また、前記プローブヘッドの下面に直接、フォトリソグラフィなどの技術により、前記第1のループアンテナのループ部を導電性材料などで形成することなども可能である。
【0103】
また、ここで、
図1に示した検査用接続装置では、電源接続子と、第1のループアンテナのそれぞれが所定の位置精度でプローブヘッドに配置されている。
【0104】
この場合、電源接続子を半導体素子の電源端子に対して位置合わせすることによって、第1のループアンテナに関しても、同時に半導体素子の第1の放射アンテナに対して位置合わせされることになる。
【0105】
このため、検査用接続装置と半導体素子との位置合わせが容易である。
【0106】
次に、
図5に示す半導体素子に対応する検査用接続装置について説明する。
【0107】
図5に示す半導体素子7は、電源端子8と第1の放射アンテナ9を有し、電源端子8は、前記半導体素子7に電源を受電する機能を有し、前記第1の放射アンテナ9は、電磁波信号を放射する機能を有している。
【0108】
この時、ウェハ状態においては、通常複数の半導体素子が配列される。
【0109】
図11は、本発明の検査対象の複数の半導体素子の一例の上面図である。
【0110】
図11において、複数配列されている各半導体素子7は、それぞれ1つの電源端子8と、それぞれ1つの第1の放射アンテナ9を有している。
【0111】
ここで、
図12は、本発明の複数の半導体素子を同時に検査する1実施例の下面図であり、検査用接続装置である。
【0112】
図12において、プローブヘッド1には、複数の検査ユニット22を有し、前記複数の各検査ユニット22には、それぞれ1つの電源接続子2と、第1のループアンテナ3を有しており、
図12における複数の電源接続子2と、複数の第1のループアンテナ3の位置関係は、
図11における、複数の半導体素子7における複数の電源端子8と複数の第1の放射アンテナ9の位置に対応している。
【0113】
即ち、
図12においてプローブヘッド1は、
図11における各半導体素子7の持つ電源端子8と第1の放射アンテナ9のそれぞれに、電源接続子2の先端部と第1のループアンテナ3のループ部を対応させる各検査ユニット22を複数配列した構成となっており、複数の半導体素子を同時に検査することが可能となる。
【0114】
また、ウェハ状態において、半導体素子が格子状に配列されている場合も存在するが、この場合も同様に、検査ユニット22をプローブヘッド1に格子状に組み込むことで対応可能である。
【0115】
更に、
図12では同一形状、同一サイズの第1のループアンテナを各検査ユニット22に組み込んでいる例を示しているが、他の事例として、モノポールアンテナやダイポールアンテナなどや、ループ部の半径が異なる他のループアンテナなども、第1のループアンテナの代替えとして利用することが可能であり、その際には、各検査ユニットに設置するアンテナの特性に依存して、半導体素子からの周波数特性などが異なる複数の電磁波信号を受信することが可能となる。
【0116】
次に、
図13は、本発明の複数の半導体素子を同時に検査する1実施例の下面図であるが、複数の検査ユニット22を仕切るための、GNDパターン23を設けている。
【0117】
前記GNDパターン23により、各検査ユニット22が測定する、被測定物である各半導体素子7に隣接するその他の半導体素子からの電磁波信号の侵入を防止することができるため、各検査ユニット22は、被測定物である各半導体素子7からの電磁波信号を適切に受信することが可能となるため、誤受信や干渉を防ぐことができ、複数の半導体素子を同時に測定できる。
【0118】
次に、
図14は、本発明の複数のループアンテナを有する1実施例における下面図である。
【0119】
図14において、プローブヘッド1は、電源接続子2と第1のループアンテナ3と第2のループアンテナ24を有する。
【0120】
ここで、
図15に示すように、検査対象の半導体素子7に、第1の放射アンテナ9と第2の放射アンテナ25が組み込まれているものを考慮する。
【0121】
前記半導体素子7において、第1の放射アンテナ9においては、第1の共振周波数を有し、第1の周波数の電磁波信号を放射し、第2の放射アンテナ25においては、第2の共振周波数を有し、第2の周波数の電磁波信号を放射すると仮定する。
【0122】
この時、第1のループアンテナは、第1のループアンテナのループ部を形成する導電性材料や、その周囲の保護用あるいは電気ショート防止のための被覆材料を利用していている場合の、その被覆材料の誘電率などの特性や、ループ部の半径などの要因により、第1の放射アンテナからの電磁波信号は受信できるが、第2の放射アンテナから放射される電磁波信号を受信できないとする。
【0123】
そこで、第2の放射アンテナから放射される電磁波信号を受信できるような特性、例えば、ループ部を形成する導電性材料や、その周囲の保護用あるいは電気ショート防止のための被覆材料を利用していている場合の、その被覆材料の誘電率などの特性や、ループ部の半径などの特性を有する第2のループアンテナをプローブヘッド1に設けることで、第2のループアンテナによって、第2の放射アンテナから放射される電磁波信号を受信することが可能となる。
【0124】
更に補足すると、ループアンテナにおいては、ループ部の半径を変更することで、受信感度や、分解能が変わることも知られていることであり、第1の半径を持つループ部を有する第1のループアンテナと、第2の半径を持つループ部を有する第2のループアンテナにより、異なる種類の周波数の電磁波信号を、選択的に受信することが可能である。
【0125】
次に、
図16は、本発明の複数のループアンテナを有する1実施例における下面図である。
【0126】
図16において、プローブヘッド1は、電源接続子2と第1のループアンテナ3と第3のループアンテナ26を有する。
【0127】
また、
図17は本発明の検査対象の半導体素子の一例の上面図を示す。
【0128】
図17において、半導体素子7は、電源端子8と第1の放射アンテナ9と第3の放射アンテナ27を有している。
【0129】
この時、前記電源端子8は、電源を受電する機能を有し、前記第1の放射アンテナ9においては、第1の共振周波数を有し、第1の周波数の電磁波信号を放射し、前記第3の放射アンテナ27においては、第3の共振周波数を有し、第3の周波数の電磁波信号を放射すると仮定する。
【0130】
この時、第1のループアンテナは、第1のループアンテナのループ部を形成する導電性材料や、その周囲の保護用あるいは電気ショート防止のための被覆材料を利用していている場合の、その被覆材料の誘電率などの特性や、ループ部の半径などの要因により、第1の放射アンテナからの電磁波信号は受信できるように設定し、更に、第1の放射アンテナからの電磁波信号が適切に受信できるようにプローブヘッドに配置する。
【0131】
また、第3の放射アンテナから放射される電磁波信号を受信できるような特性、例えば、ループ部を形成する導電性材料や、その周囲の保護用あるいは電気ショート防止のための被覆材料を利用していている場合の、その被覆材料の誘電率などの特性や、ループ部の半径などの特性を有する第3のループアンテナをプローブヘッドに配置する。
【0132】
このことにより、半導体素子7の第1の放射アンテナ9と第3の放射アンテナ27から放射される、それぞれの電磁波信号を、第1のループアンテナ3と第3のループアンテナ26によって受信することが可能となる。
【0133】
また、この際、第1のループアンテナ3のループ部の半径と、第3のループアンテナ26の特性、例えば、ループ部を形成する導電性材料や、その周囲の保護用あるいは電気ショート防止のための被覆材料を利用していている場合の、その被覆材料の誘電率などの特性や、ループ部の半径などの特性を同一にすることも可能である。
【0134】
次に、
図18は、本発明の複数のループアンテナを有する1実施例における下面図であるが、第1のループアンテナ3と第3のループアンテナ26を仕切るための、GNDパターン23を設けている。
【0135】
前記GNDパターン23により、第1のループアンテナ3が測定する、被測定物である各半導体素子7の第1の放射アンテナ9に隣接する第3の放射アンテナ27からの電磁波信号の侵入を防止することができるため、第1のループアンテナ3は、被測定物である各半導体素子7の第1の放射アンテナ9からの電磁波信号を適切に受信することが可能となるため、誤受信や干渉を防ぐことができる。
【0136】
また同様に、前記GNDパターン23により、第3のループアンテナ26が測定する、被測定物である各半導体素子7の第3の放射アンテナ27に隣接する第1の放射アンテナ9からの電磁波信号の侵入を防止することができるため、第3のループアンテナ26は、被測定物である各半導体素子7の第3の放射アンテナ27からの電磁波信号を適切に受信することが可能となるため、誤受信や干渉を防ぐことができる。
【0137】
更に、ここではループアンテナに特化しての説明となっているが、第3のループアンテナの代替えとして、ループアンテナとは形状が異なるモノポールアンテナやダイポールアンテナなど他の形状のアンテナでも対応が可能であり、更に、第3のループアンテナに加えて、第4のループアンテナや、第5のループアンテナを組込むことも可能である。
【0138】
このとき、
図18において、第1のループアンテナ3と第3のループアンテナ26をそれぞれ、電磁波信号を受信するための機能として利用しているが、第1のループアンテナ3を電磁波信号の受信機能として利用し、第3のループアンテナ26を電磁波信号の放射機能として利用することも可能であり、その際には双方向通信の手段として利用可能になる。
【0139】
例えば、
図17において、半導体素子7における、第1の放射アンテナ9は放射アンテナの機能を有し、第3の放射アンテナ27は、放射の機能ではなく、受信の機能を有していると仮定する場合には、
半導体素子7の第1の放射アンテナ9から放射された電磁波信号を、第1のループアンテナ3が受信し、
第3のループアンテナ26から放射された電磁波信号を、半導体素子7の第3の放射アンテナ27にて受信することが可能となる。
【0140】
更にこの時、半導体素子7における第1の放射アンテナ9、第3の放射アンテナ27、第1のループアンテナ3、第3のループアンテナ26を、ループアンテナ、モノポールアンテナやダイポールアンテナなどの形状に変更して電磁波信号の放射機能、受信機能を持たせることも可能である。
【0141】
次に、
図19は、本発明の1実施例における基板の層構成を示しており、プローブヘッドを構成する。
【0142】
図19において、基板4の層構成として、基板の主面5に基板の第1メタル層28を有し、絶縁層を介して隣接する層には、基板の第2メタル層29を有し、更に絶縁層を介して隣接する層には、基板の第3メタル層30を有し、基板の裏面には基板の第4メタル層31を有している。
【0143】
このとき、基板の第1メタル層28と、隣接する基板の第2メタル層29にループアンテナを構成する。
【0144】
次に、
図20は、本発明の隣接する層におけるループアンテナの斜視図であり、周囲の絶縁層や、ループアンテナの構成部以外の配線や、ベタ層などは削除した図となっている。
【0145】
図20において、
基板の第1メタル層28に第1メタル層のループアンテナのループ部32を形成し、第1メタル層のループアンテナのループ部32の一方の端子は第1メタル層における引き出し線35の一方の端子に接続され、
第1メタル層のループアンテナのループ部32の他方の端子は第1メタル層と第2メタル層を接続するVIA34の一方の端子に接続されており、第1メタル層と第2メタル層を接続するVIA34の他方の端子は第2メタル層29に形成された第2メタル層のループアンテナのループ部33の一方の端子に接続されており、引き出し線35の他方の端子と第2メタル層のループアンテナのループ部33の他方の端子はループアンテナの基端部36に接続され、基板の裏面に露出する構造となっている。
【0146】
このとき、第1メタル層のループアンテナのループ部32の半径と、第2メタル層のループアンテナのループ部33の半径が同一であり、第1メタル層のループアンテナのループ部32と第2メタル層のループアンテナのループ部33の受信特性が同一であるとすると、第1メタル層のループアンテナのループ部32と第2メタル層のループアンテナのループ部33が組み込まれるプローブヘッドにおいて、被測定物である半導体素子からの電磁波信号をより多く受信することが可能となる。
【0147】
またこの時、同様にして基板の第3メタル層30や、裏面にある基板の第4メタル層31にループアンテナのループ部を形成し、それぞれのメタル層におけるループ部をVIAなどにより電気的に接続することも可能である。
【0148】
さらに、ここでは、
図19において基板のメタル層の層数を4層と設定しているが、層数を6層や8層、更に増やして、各層にループ部を、基板の主面から見て垂直方向、水平方向に複数形成することも可能であり、基板となるプリント配線板の種類も、リジッド基板、セラミックス基板やフレキシブル基板などを利用することも可能である。
【0149】
また次に、
図5において、半導体素子7が電源端子8を有する場合を考慮しているが、半導体素子によっては、電源の受電の仕組みとして、太陽光発電(PV)、紫外線照射、ワイヤレス給電などによる電源の受電が可能な半導体素子が存在し、電源端子として、金属端子にて電源を受電するのではなく、太陽光発電(PV)のための受光端子としての電源端子、紫外線による発電のための受光端子としての電源端子、ワイヤレス給電による発電のための電源端子を持つものも存在し、代用が可能である。
【0150】
上記のような太陽光発電(PV)、紫外線照射、ワイヤレス給電などによる電源の受電が可能な半導体素子の電源の受電のためには、本発明の電源接続子による電圧の供給の代替えとして、太陽光発電(PV)のための可視光の照射の機能や、紫外線照射の機能や、ワイヤレス給電のための電磁波の照射の機能を有する検査用接続装置も対応が可能である。
【0151】
更に他の実施例として、第1のループアンテナを、第1の半導体素子の内部に有することにより、第1の放射アンテナにより電磁波信号を放射する機能を有する第2の半導体素子から放射された電磁波信号を前記第1の半導体素子の第1のループアンテナによって受信することも可能である。
【0152】
その場合、第2の半導体素子から電磁波信号を放射して、第1の半導体素子にて受信することになり、また逆に、第1の半導体素子が有する第1の放射アンテナからの電磁波信号を、第2の半導体素子が有するループアンテナにて受信することも可能であり、2つの半導体素子において、相互で電磁波信号をやり取りすることになるため、半導体素子の間でワイヤ接続が不要の信号通信が可能となる。
【0153】
同様の方式による他の実施例として、第1のループアンテナを、第1のチップレットの内部に有することにより、第1の放射アンテナにより電磁波信号を放射する機能を有する第2のチップレットから放射された電磁波信号を前記第1のチップレットの第1のループアンテナによって受信することも可能である。
【0154】
その場合、第2のチップレットから電磁波信号を放射して、第1のチップレットにて受信することになり、また逆に、受信することになり、また逆に、第1のチップレットが有する第1の放射アンテナからの電磁波信号を、第2のチップレットが有するループアンテナにて受信することも可能であり、2つのチップレットにおいて、相互で電磁波信号をやり取りすることになるため、チップレットの間でワイヤ接続が不要の信号通信が可能となる。
【0155】
更にまた、同一チップレットの内部における状況を考慮すると、同一チップレットの内部には半導体素子が複数存在するが、チップレットから放射される電磁波信号を受信する機能を持つループアンテナを、チップレットの中の第3の半導体素子に有することにより、第1の放射アンテナにより電磁波信号を放射する機能を有する同一チップレット内の第4の半導体素子からの電磁波信号を取得することも可能である。
【0156】
その場合、チップレット内の第4の半導体素子から電磁波信号を放射して、同一チップレット内の第3の半導体素子にて受信することになり、また逆に、第3の半導体素子が有する第1の放射アンテナからの電磁波信号を、第4の半導体素子が有するループアンテナにて受信することも可能であり、2つの半導体素子において、相互で電磁波信号をやり取りすることが可能となり、チップレット内でワイヤ接続が不要となる。
【0157】
更に、チップレットには通常、半導体素子を接続するためのインターポーザも含まれているため、インターポーザの中に、電磁波信号を放射する第1の放射アンテナや、電磁波信号を受信するループアンテナなどを設置することも可能である。
【0158】
更に他の実施例として、
図1においては、電源接続子のみが、電気関連の接続子として記載されているが、前記電源接続子に加えて、同電位あるいは別電位の電力を供給する機能を持つその他の電源接続子をプローブヘッドに設置することも可能である。
【0159】
同様な考え方の他の実施例として、更に、前記電源接続子に加えて、GNDレベルの電位を供給する機能を持つGND接続子をプローブヘッドに設置することも可能である。
【0160】
また、前記電源接続子に加えて、電気信号の送信、受信または送受信を行う機能を有する電気接続子をプローブヘッドに設置することも可能である。
【0161】
以上説明したように、本発明の半導体素子からの電磁波信号を受信する検査用接続装置について、実施例を挙げて説明を進めたが、
第1の放射アンテナを備えた検査用プローブヘッドであって、
主面を有する基板と
前記基板の主面側に取り付けられ、前記半導体素子の電源端子に接続して、前記半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、
前記基板の主面側に取り付けられ、前記電源接続子と前記電源端子を接続することによって、前記半導体素子の前記第1の放射アンテナから放射された電磁波信号を受信する第1の受信アンテナを有し、
前記第1の受信アンテナは、前記基板の主面上に形成されていることを特徴とする検査用プローブヘッド
であることにより、半導体素子からの電磁波信号を効果的に受信することが可能となる。
【0162】
このようにして、半導体素子からの電磁波信号の受信による検査の際に、電源接続子により電力を供給すると同時に、ループアンテナにより電磁波信号を受信することが可能となり、従来の半導体素子の電気信号による検査に加えて、電磁波信号の受信による検査をすることも可能となり、複雑だった半導体素子の検査が簡便となり、従来、半導体素子の電気検査に必要とされる、半導体素子の信号ピンが多いため多ピンとなっていた高価なプローブカードや高性能で高価なテスタが不要となるためコストダウンとなり、検査装置の準備のための納期やセットアップ時間などの多大な時間が大きく短縮され、更には、半導体素子間やチップレット間や、チップレット内部での電磁波信号の送受信方式を可能にできるため、SDGsに貢献できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の半導体素子からの電磁波信号を受信する検査用接続装置において、
半導体素子からの電磁波信号の受信による検査の際に、電源接続子により電力を供給すると同時に、ループアンテナにより電磁波信号を受信することが可能となり、従来の半導体素子の電気信号による検査に加えて、電磁波信号の受信による検査をすることも可能となり、複雑だった半導体素子の検査が簡便となり、従来、半導体素子の電気検査に必要とされる、半導体素子の信号ピンが多いため多ピンとなっていた高価なプローブカードや高性能で高価なテスタが不要となるためコストダウンとなり、検査装置の準備のための納期やセットアップ時間などの多大な時間が大きく短縮され、更には、半導体素子間やチップレット間や、チップレット内部での電磁波信号の送受信方式を可能にできるため、SDGsに貢献できるという効果がある。
【符号の説明】
【0164】
1・・・プローブヘッド
2・・・電源接続子
3・・・第1のループアンテナ
4・・・基板
5・・・基板の主面
6・・・基板の裏面
7・・・半導体素子
8・・・電源端子
9・・・第1の放射アンテナ
10・・・電源受電
11・・・BIST
12・・・周波数生成
13・・・電力増幅
14・・・電磁波信号放射
15・・・NAND
16・・・第1のインバータ
17・・・第2のインバータ
18・・・NANDの一方の入力端子
19・・・リングオシレータの出力端子
20・・・NANDの他方の入力端子
21・・・共通するガイド穴
22・・・検査ユニット
23・・・GNDパターン
24・・・第2のループアンテナ
25・・・第2の放射アンテナ
26・・・第3のループアンテナ
27・・・第3の放射アンテナ
28・・・基板の第1メタル層
29・・・基板の第2メタル層
30・・・基板の第3メタル層
31・・・基板の第4メタル層
32・・・第1メタル層のループアンテナのループ部
33・・・第2メタル層のループアンテナのループ部
34・・・第1メタル層と第2メタル層を接続するVIA
35・・・第1メタル層における引き出し線
36・・・ループアンテナの基端部
【要約】
【課題】非接触で半導体素子を簡便に検査するための検査プローブを提供することである。
【解決手段】検査用プローブヘッドは、放射アンテナを備えた検査用プローブヘッドであって、基板の主面側に取り付けられ、半導体素子の電源端子に接続して、半導体素子に電力を供給するための電源接続子と、基板の主面側に取り付けられ、電源接続子と電源端子を接続することによって、半導体素子の放射アンテナから放射された電磁波信号を受信する受信アンテナとを備える。また、当該受信アンテナは、基板の主面上に形成されている。
【選択図】
図2