(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】医療文書作成支援システム、医療文書作成支援方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 15/00 20180101AFI20250627BHJP
G06F 40/174 20200101ALI20250627BHJP
G06F 40/186 20200101ALI20250627BHJP
【FI】
G16H15/00
G06F40/174
G06F40/186
(21)【出願番号】P 2024213949
(22)【出願日】2024-12-06
【審査請求日】2024-12-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523394756
【氏名又は名称】フィッティングクラウド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和也
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】特許第7289923(JP,B2)
【文献】特開2023-112351(JP,A)
【文献】特開2002-207823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06F 40/00-40/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が任意に設定可能なテキストと、前記テキストと区別可能に記述されたキーワードと、患者の医療記録における前記キーワードに対応する第1情報の出力態様を示す出力態様指令とを含み且つ前記利用者が設定可能なテンプレートを取得するテンプレート取得部と、
取得した前記テンプレートに含まれる前記キーワード及び前記出力態様指令を特定可能な特定部と、
前記キーワードに対応する前記第1情報を前記患者の医療記録から抽出する指示を含むプロンプトを抽出システムへ入力する処理と、前記患者の医療記録における前記キーワードに対応する前記第1情報を前記出力態様指令が示す出力態様に変換した第2情報を得る処理と、前記テンプレートにおける前記キーワードに対応する位置に前記第2情報を含めて医療文書を生成する処理と、を実行可能な文書生成部と、
を備える、医療文書作成支援システム。
【請求項2】
前記キーワード及び前記出力態様指令は、前記テンプレートにおいて対の第1識別子で囲まれることにより区別可能に記述され、
前記キーワード及び前記出力態様指令のいずれか一方は、前記対の第1識別子で囲まれる範囲内において、対の第2識別子で囲まれることにより区別可能に記述され、
前記キーワード及び前記出力態様指令のいずれか他方は、前記対の第1識別子で囲まれる範囲内において、前記対の第2識別子で囲まれないことにより区別可能に記述される、請求項1に記載の医療文書作成支援システム。
【請求項3】
前記出力態様指令は、数値、日付または時間の出力態様を指示する、請求項1又は2に記載の医療文書作成支援システム。
【請求項4】
前記出力態様指令は、前記キーワードに対応する前記第1情報を、指定する言語へ翻訳することを指示する、請求項1又は2に記載の医療文書作成支援システム。
【請求項5】
前記出力態様指令は、前記キーワードに対応する前記第1情報を、数値または文字へ変換することを指示する、請求項1又は2に記載の医療文書作成支援システム。
【請求項6】
前記出力態様指令は、前記キーワードに対応する前記第1情報に応じた条件分岐後の出力を指示する、請求項1又は2に記載の医療文書作成支援システム。
【請求項7】
前記出力態様指令は、前記キーワードに対応する前記第1情報の要約を指示する、請求項1又は2に記載の医療文書作成支援システム。
【請求項8】
前記出力態様指令は、複数の選択肢から前記キーワードに対応する選択肢の出力を指示する、請求項1又は2に記載の医療文書作成支援システム。
【請求項9】
前記出力態様指令は、複数の前記キーワードに対応する情報の演算を指示する、請求項1又は2に記載の医療文書作成支援システム。
【請求項10】
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
利用者が任意に設定可能なテキストと、前記テキストと区別可能に記述されたキーワードと、患者の医療記録における前記キーワードに対応する第1情報の出力態様を示す出力態様指令とを含み且つ前記利用者が設定可能なテンプレートを取得することと、
取得した前記テンプレートに含まれる前記キーワード及び前記出力態様指令を特定することと、
前記キーワードに対応する前記第1情報を前記患者の医療記録から抽出することを指示するプロンプトを抽出システムへ入力する処理と、前記患者の医療記録における前記キーワードに対応する前記第1情報を前記出力態様指令が示す出力態様に変換した第2情報を得る処理と、前記テンプレートにおける前記キーワードに対応する位置に前記第2情報を含めて医療文書を生成する処理と、を実行することと、
を含む、医療文書作成支援方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法を1又は複数のプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療文書作成支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の医療に携わる医師には、診療情報提供書や退院サマリなどの医療文書を作成する業務がある。診療情報提供書は、提供先の医療機関の医師が患者の病歴や現在の病状を迅速かつ正確に把握できるように、患者の病歴、症状、検査結果、治療経過が記載される。退院サマリは、退院後に主治医の所属する医療機関における主治医以外の医療従事者とコミュニケーションを取る際に役立つために、患者の病歴、入院中の経過、退院時の状態、今後の治療計画が記載される。
【0003】
診療情報提供書や退院サマリなどの医療文書は、患者の診療録や検査結果などを含む患者の医療記録が参照されつつ、医師により作成される。医療文書の作成を支援するためのシステムが望まれる。
【0004】
特許文献1には、患者毎の医療記録と紹介状作成のための情報とを入力し、疑い病名、障害部位、詳細検査の必要性及び手術の必要性のいずれかを出力するように訓練された人工知能エンジンを用いたシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、特定の情報が出力されるように、人工知能エンジンと呼ばれるモデルに対して特定の学習を施すシステムは、その運用に応じた学習が適宜必要となる。
【0007】
利用者である医師が自由に設定できるテンプレートを用いる場合、医療記録から必要な情報を抽出するためにSQL文をテンプレートに含める必要があるシステムや、医療記録から必要な情報を抽出するための設定をテンプレートとは別個に設定する必要があるシステムが考えられるが、SQLやシステムなどの情報通信技術に詳しくない医師であっても直感的に利用可能なシステムが求められる。
【0008】
また、医療記録から抽出した情報を医師の好みの表現形式にしたいという要望がある。
【0009】
本開示は、医師などの利用者が直感的に利用可能であり且つ利用者の好みの表現での出力が可能な医療文書作成支援技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の医療文書作成支援システムは、利用者が任意に設定可能なテキストと、前記テキストと区別可能に記述されたキーワードと、患者の医療記録における前記キーワードに対応する第1情報の出力態様を示す出力態様指令とを含み且つ前記利用者が設定可能なテンプレートを取得するテンプレート取得部と、取得した前記テンプレートに含まれる前記キーワード及び前記出力態様指令を特定可能な特定部と、前記キーワードに対応する前記第1情報を前記患者の医療記録から抽出する指示を含むプロンプトを抽出システムへ入力する処理と、前記患者の医療記録における前記キーワードに対応する前記第1情報を前記出力態様指令が示す出力態様に変換した第2情報を得る処理と、前記テンプレートにおける前記キーワードに対応する位置に前記第2情報を含めて医療文書を生成する処理と、を実行可能な文書生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、医療文書の作成にあたり、利用者が直感的に利用でき且つ利用者の好みの表現での出力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の医療文書作成支援システムを示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態のプロンプトの一例と、そのプロンプトに基づく抽出システムからの出力の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態および変形例についての出力態様指令の種類とその意味、出力態様指令の処理に関する説明図である。
【
図7】第1実施形態および変形例についての出力態様指令の種類とその意味、出力態様指令の処理に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態の医療文書作成支援システム2を示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施形態の医療文書作成支援システム2は、テンプレート取得部20と、医療記録取得部21と、特定部22と、文書生成部23と、を有する。これらの各部(20~23)は、コンピュータの1又は複数のプロセッサが所定プログラムを読み込むことで実現される。医療文書作成支援システム2は、抽出システム4を用い、テンプレート10と医療記録30とに基づいて医療文書を生成し、医師などの利用者に提供することが可能である。
【0015】
抽出システム4は、プロンプトに基づいて、患者の医療記録30からプロンプトに対応する出力を返答可能なLLM(Large Language Models)などの機械学習モデルであり、新たなコンテンツ(テキストなど)を生成可能な生成AIとも呼ばれる。抽出システム4は、例えば、Microsoft Azure OpenAI、Google GCP Gemini / MedLM、Anthropic Claudeなどが利用可能である。
【0016】
テンプレート取得部20は、テンプレート10を記憶するDB等のテンプレート記憶部11から、テンプレート10を取得する。取得するテンプレート10は、利用者に指定されたものでも、利用者に関連付けられたデフォルト指定のもののいずれでもよい。テンプレート10は、医療文書の雛形であり、文書の種類毎、医療機関における診療科毎などの所定単位毎に個別に予め作成され、テンプレート記憶部11に記憶されている。
【0017】
図2は、テンプレート10の一例を示す図である。テンプレート10は、
図2に示すように、利用者(医師などの医療関係者)が任意に設定可能なテキストと、テキストと区別可能なキーワードと、出力態様指令とを含んでいる。テンプレート10には患者の医療記録30が含まれていない。
図2では、説明のために、キーワードを薄いグレー色で示し、出力態様指令を濃いグレー色で示している。
テキストは、あいさつ文や診療科名称、医師名称、医療文書における好みの表現などが挙げられる。キーワードは、医療記録30から情報を抽出するために用いるワードであり、利用者が任意に設定可能である。例えば、「患者は腹痛を訴えている」というテキストを含む医療記録30から「腹痛」を抽出するために、「病状」、「主訴」、「症状」などの任意のキーワードを設定することが挙げられる。任意のキーワードを設定しても抽出システム4がキーワードを解釈し、キーワードに関する情報(以後、キーワードに対応する第1情報と表記する場合がある)を抽出する可能性が高い。これにより、システムの直感的な利用が可能となる。第1情報は、出力形式(出力態様)を指定する指示をせずに、キーワードに対応する情報を抽出することを抽出システム4に指示して得られる情報を意味する。多くの場合、患者の医療記録30に記録されている情報がそのまま抽出される。
【0018】
出力態様指令は、患者の医療記録30におけるキーワードに対応する第1情報の出力態様を示し、利用者が出力態様を指定するために利用可能である。出力態様指令は、第1情報を出力態様指令が示す出力態様に変換して第2情報にする指令ともいえる。出力態様指令は、種々の出力態様を指示可能である。詳細は後述する。
【0019】
キーワードと出力態様指令とテキストとを区別可能にするために、第1実施形態では、キーワード及び出力態様指令は、テンプレート10において対の第1識別子で囲まれることによりキーワード及び出力態様指令とテキストとを区別可能に記述することができる。対の第1識別子は、例えば、開始タグ「{」と、終了タグ「}」とを例示できるが、これに限定されない。また、第1実施形態では、出力態様指令は、対の第1識別子(開始タグ「{」及び終了タグ「}」)で囲まれる範囲において、対の第2識別子で囲まれることによりキーワードと出力態様指令とを区別可能に記述することができる。対の第2識別子は、対の第1識別子と同様に、例えば、開始タグ「{」と、終了タグ「}」とを例示できるが、これに限定されない。キーワードは、対の第1識別子(開始タグ「{」及び終了タグ「}」)で囲まれる範囲において、対の第2識別子で囲まれないことによりキーワードと出力態様指令とを区別可能に記述することができる。対の第1識別子の中に対の第2識別子があるため、いわゆる第1識別子と第2識別子とは入れ子構造を有している。
【0020】
図2に示すテンプレート10の一例は、「入院日」、「手術日」、「術眼」、「病名」、「病名」、「術式」、「経過」、「退院日」の8つのキーワードを含んでいる。テンプレート10におけるこれら8つのキーワードとキーワードに付随する出力態様指令以外のテキストは、プロンプトに用いられない。
図2に示す一例において、対の第1識別子及び対の第2識別子によってキーワード「入院日」には出力態様指令「yyyy年mm月dd日の形式にしてください」が関連付けられている。
図2に示す一例において、対の第1識別子及び対の第2識別子によってキーワード「手術日」には出力態様指令「yyyy/mm/ddの形式にしてください」が関連付けられている。
図2に示す一例において、キーワード「術眼」、「術式」及び「経過」には出力態様指令が関連付けられていない。
図2に示す一例において、出力態様指令「日本語で表現してください」が関連付けられたキーワード「病名」と、出力態様指令「英語で表現してください」が関連付けられたキーワード「病名」と、がテンプレート10に含まれている。
図2に示す一例において、対の第1識別子及び対の第2識別子によってキーワード「退院日」には出力態様指令「mm月dd日の形式にしてください」が関連付けられている。
【0021】
図1に示す医療記録取得部21は、医療記録30を記憶するDB等の医療記録記憶部31から医療記録30を取得する。取得する医療記録30は、利用者に指定されたものでも、利用者に関連付けられたデフォルト指定のもののいずれでもよい。医療記録30は、患者の診療録や検査結果などを表すテキストが含まれる情報である。例えば、
図3に例示するように、医療記録30はテキストを含んでいる。
図3は、医療記録30の一例を示す図である。
なお、テンプレート取得部20によるテンプレート10を取得する処理と、医療記録取得部21による医療記録30を取得する処理との実行順序は順不同である。
【0022】
図1に示す特定部22は、テンプレート10に含まれる1つ以上のキーワード及びキーワードに関連付けられた出力態様指令を特定する。第1実施形態では、タグ(対の第1識別子)に挟まれている部分がキーワード及び出力態様指令のいずれかであると特定する。さらに、対の第1識別子で囲まれる範囲内において、タグ(対の第2識別子)で挟まれているか否かに応じて、キーワードであるか、出力態様指令であるかを特定する。正規表現やパーサを用いることで特定可能である。
図2に示すテンプレート10からは、「入院日」、「手術日」、「術眼」、「病名」、「病名」、「術式」、「経過」、「退院日」の8つのキーワードを特定する。また、8つのキーワードに出力態様指令がある場合には、それらの出力態様指令を特定する。
【0023】
図1に示す文書生成部23は、プロンプトを生成する処理と、プロンプトを抽出システム4へ入力する処理とが実行可能である。プロンプトは、キーワードに対応する第1情報を患者の医療記録30から抽出する指示を含む。プロンプトは、抽出対象のデータ(患者の医療記録30)を含む場合がある。プロンプトは、出力形式(出力態様)を指定する指示を含む場合がある。プロンプトは、抽出システム4が受け入れ可能な形式で記述される。
図4は、第1実施形態のプロンプトの一例と、そのプロンプトに基づく抽出システム4からの出力の一例を示す図である。
図4の上部に示す例では、2つのプロンプトを含む。1つ目のプロンプトは、「以下の診療記録から次の項目を抜き出して表示してください:入院日、手術日、術眼、病名、術式、経過、退院日。」というキーワードに対応する第1情報の抽出を指示する指示部を含んでいる。また、1つ目のプロンプトは、「ただし、入院日はyyyy年mm月dd日の形式にしてください。」、「ただし、手術日はyyyy/mm/ddの形式にしてください。」、「ただし、病名は日本語で表現してください。」、及び「ただし、退院日はmm月dd日の形式にしてください。」という出力形式を指定する指示を含んでいる。文書生成部23は、これらを、テンプレート10における出力態様指令に基づき生成する。2つ目のプロンプトは、「以下の診療記録から次の項目を抜き出してください:病名。」というキーワードに対応する第1情報の抽出を指示する指示部を含んでいる。また、2つ目のプロンプトは、「ただし、病名は英語で表現してください。」という出力形式を指定する指示を含んでいる。
図4では、入力データ(患者の医療記録30)の図示を省略している。
【0024】
図1に示す文書生成部23が、プロンプトを抽出システム4へ入力する処理を実行すると、抽出システム4からプロンプトに応じた出力を文書生成部23が受領する。
図4の下部は、
図3に例示する医療記録30から情報を抽出することを指示するプロンプト(
図4の上部参照)を用いて得られた抽出システム4からの出力を示している。
図4の下部に示すように、8つのキーワードに対する何らかの出力が得られている。
【0025】
図4の下部に示すように、8つのキーワードについて出力態様指令があるものについては、出力態様指令が示す出力態様に従っている。例えば、
図3に示す医療記録30における手術日に対応する第1情報が「2024-05-07」であるところ、第1情報「2024-05-07」が出力態様指令に従って第2情報「2024年05月06日」へ変換されている。例えば、
図3に示す医療記録30における入院日に対応する第1情報が「2024-05-06」であるところ、第1情報「2024-05-06」が出力態様指令に従って第2情報「2024年05月06日」へ変換されている。例えば、
図3に示す医療記録30における病名に対応する第1情報「緑内障」については、2つのキーワードそれぞれの出力態様指令に従った第2情報「緑内障」、「Glaucoma」へ変換(翻訳)されている。例えば、
図3に示す医療記録30における退院日に対応する第1情報が「2024-05-10」であるところ、第1情報「2024-05-10」が出力態様指令に従って第2情報「05月10日」へ変換されている。
すなわち、第1実施形態において、
図1に示す文書生成部23は、抽出システム4を利用することにより、患者の医療記録30におけるキーワードに対応する第1情報を出力態様指令が示す出力態様に変換した第2情報を得る処理を実行している。
なお、文書生成部23は、抽出システム4を利用することにより、患者の医療記録30におけるキーワードに対応する第1情報を取得する処理を実行し、それ以後、取得した第1情報を出力態様指令が示す出力態様となる第2情報に変換する処理を実行することも可能である。
【0026】
図1に示す文書生成部23は、テンプレート10と、抽出システム4から得られた出力とに基づいて医療文書を生成する。具体的には、文書生成部23は、テンプレート10におけるキーワードに対応する位置に第2情報を含めて医療文書を生成する処理を実行する。
図5は、生成された医療文書の一例を示す図である。
図5においては、第2情報を薄いグレー色で示している。
図5に示すように、
図2に示すテンプレート10のうちのキーワード、出力態様指令及び識別子が、抽出システム4により得られた第2情報に置換されている。
【0027】
このシステムによれば、医師などの利用者は、医療文書の雛形となるテンプレート10に、自分好みのテキストを記載すると共に、医療記録30を参照する必要がある部分にキーワードを区別可能に(第1実施形態では識別タグを用いる)記載するだけで、医療記録30からキーワードに対応する第1情報を抽出してテンプレート10に補完した形で医療文書が自動生成される。利用者は生成された医療文書をゼロから生成せずに、自動生成された文書を確認、修正すればよく、医療文書の作成が容易となる。
さらに、出力態様指令をキーワードに関連付けてテンプレート10に記述することにより、医療記録30から抽出するキーワードに対応する第1情報を、好みの出力態様の第2情報に変換して、医療文書を自動生成可能となる。
【0028】
<第1実施形態および変形例についての出力態様指令の種類と意味と出力態様指令の処理>
図6及び
図7は、第1実施形態および変形例についての出力態様指令の種類とその意味、出力態様指令の処理に関する説明図である。
図6に示すように、第1種の出力態様指令は、数値、日付または時間の出力態様を指示する。
図6に示す第1種の出力態様指令は、上記で説明した通り、日付の出力態様を指示する。日付について「yyyy年mm月dd日」という表記で指定している。yyyyは4桁の西暦を示し、mmは月を2桁で示し、ddは日を2桁で示すことを意味している。第1実施形態では、
図6に示すように、キーワードに対応する第1情報を抽出する処理と第2情報に変換する処理とをプロンプトで実現しているが、これに限定されない。例えば、
図6に示す変形例では、第1情報を抽出する処理をプロンプトで実現し、第1情報を第2情報に変換する処理を文書生成部23で実行している。変換処理は、プログラム言語に依存するが、例えば、to_date関数を用いている。
上記第1種の出力態様指令では、日付の形式の指定についての例を挙げているが、これに限定されない。例えば、数値の出力態様指令を「\000,000」とすれば、第1情報「12345」が「\12,345」という第2情報(¥マークとカンマを伴う形式)に変換可能となる。例えば、数値の出力態様指令を「00.00」とすれば、第1情報「12.34567」が「12.35」という第2情報(少数第2位までの表示)に変換可能となる。例えば、日付有り時間または日付無し時間の出力態様指令に「HH時」を含めれば、第1情報「2024-12-01 22:12:34」が、「22時」という第2情報(時間のみの表示)に変換可能となる。
【0029】
図6に示す第2種の出力態様指令は、キーワードに対応する第1情報を、指定する言語へ翻訳することを指示する。上記で説明した第2種の出力態様指令は、日本語での表現または英語での表現(英語への翻訳)を指示する。第1実施形態では、
図6に示すように、キーワードに対応する第1情報を抽出する処理と第2情報に変換(翻訳)する処理とを1つのプロンプトで実現しているが、これに限定されない。例えば、
図6に示す変形例では、第1情報を抽出する処理を1つ目のプロンプトで実現し、1つ目のプロンプトで取得した第1情報(緑内障)を英語に翻訳する処理を2つ目のプロンプトで実現している。また、第2情報へ変換する処理をプロンプトを用いずに、文書生成部23が実行してもよい。その場合、例えば、TRANSLATE("緑内障","jp","en")等のように日本語の緑内障を英語に翻訳する翻訳関数を用いてもよい。
【0030】
図6に示す第3種の出力態様指令は、キーワードに対応する第1情報を、数値または文字へ変換することを指示する。
図6に示す第3種の出力態様指令は、第1情報(「4000個/μl」)を数値に変換することを指示する。数値に変換した第2情報は「4000」となる。第1実施形態では、
図6に示すように、キーワードに対応する第1情報を抽出する処理と第2情報に変換する処理とをプロンプトで実現しているが、これに限定されない。例えば、
図6に示す変形例では、第1情報を抽出する処理をプロンプトで実現し、第1情報を第2情報に変換する処理を文書生成部23で実行している。変換処理は、プログラム言語に依存するが、例えば、substring関数による文字列から数値部分を抽出する処理を経て、number.parse関数による数値への変換処理を実行することが例示できる。
上記第3種の出力態様指令では、数値への変換処理についての例を挙げているが、これに限定されない。例えば、文字への変換を指示してもよい。文字への変換は、例えば、数値とアルファベッドと文字とを組み合わせたDPCコード(診断群分類コード)を用いる場合に、数値を文字情報に変換した上で結合してコードとして表現する際に利用可能である。
【0031】
図6に示す第4種の出力態様指令は、キーワードに対応する第1情報に応じた条件分岐後の出力を指示する。
図6に示すテンプレート10の例は、『if{2回目の手術}?{2回目の手術を行い、}else?{2回目の手術は行わず、}』である。これは、「2回目の手術」というキーワードに対応する第1情報に応じて条件分岐処理を行うことを意味している。「2回目の手術」というキーワードに対応する第1情報が存在する場合には、「2回目の手術を行い、」と出力し、「2回目の手術」というキーワードに対応する第1情報が存在しない場合には、「2回目の手術を行わず、」と出力する。条件分岐の結果となるテンプレートの中に更に別のキーワードを埋め込んでもよい。
【0032】
図7に示す第5種の出力態様指令は、キーワードに対応する第1情報の要約を指示する。
図7に示す第5種の出力態様指令は、キーワード「経過」に対応する第1情報「2024-05-07 異常なし 2024-05-08 異常なし 2024-05-09 異常なし 2024-05-10 異常なし」(
図5参照)を100文字以内に要約することを指示する。100文字以内の指定は省略可能であり、また、文字数の変更も可能である。第1実施形態では、
図7に示すように、キーワードに対応する第1情報を抽出する処理と第2情報に変換(要約)する処理とを1つのプロンプトで実現しているが、これに限定されない。例えば、
図7に示す変形例では、第1情報を抽出する処理を1つ目のプロンプトで実現し、1つ目のプロンプトで取得した第1情報「異常なし 異常なし 異常なし 異常なし」を100文字以内に要約する処理を2つ目のプロンプトで実現している。これにより、第1情報「異常なし 異常なし 異常なし 異常なし」が要約されて第2情報「異常なし」を得ることができる。
【0033】
図7に示す第6種の出力態様指令は、複数の選択肢からキーワードに対応する選択肢の出力を指示する。
図7に示す第6種の出力態様指令は、キーワード「結果」に対応する第1情報に基づき、複数の選択肢(〇、△、×)から対応する選択肢を選択して出力することを指示する。例えば、第1情報が「良好」などのポジティブな用語であれば〇が出力され、第1情報が「悪い」などのネガティブな用語であれば×が出力され、第1情報が「良くも悪くもない」などの中立な用語であれば△が出力される。第1実施形態では、
図7に示すように、キーワードに対応する第1情報を抽出する処理と第2情報に変換する処理とを1つのプロンプトで実現しているが、これに限定されない。例えば、
図7に示す変形例では、第1情報を抽出する処理を1つ目のプロンプトで実現し、1つ目のプロンプトで取得した第1情報に応じていずれかの選択肢を選択して出力する処理を2つ目のプロンプトで実現している。第1情報が複数の選択肢のうちのどの選択肢になるかの基準は、抽出システム4が有しており、抽出システム4がその基準に従って選択する。
【0034】
図7に示す第7種の出力態様指令は、複数のキーワードに対応する情報の演算を指示する。
図7に示す第7種の出力態様指令は、キーワード(体重)に対応する第1情報およびキーワード(身長)に対応する第1情報を用いて演算を行いてBMIを算出し、BMIを出力することを指示する。第1実施形態では、
図7に示すように、キーワードに対応する第1情報を抽出する処理と第2情報に変換する処理とを1つのプロンプトで実現しているが、これに限定されない。例えば、
図7に示す変形例では、第1情報を抽出する処理を1つ目のプロンプトで実現し、1つ目のプロンプトで取得した第1情報を用いて演算を指示する処理を2つ目のプロンプトで実現している。
【0035】
[別実施形態]
(A)第1実施形態において、出力態様指令は、対の第1識別子で囲まれる範囲において、対の第2識別子で囲まれることにより区別可能に記述され、キーワードは、対の第1識別子で囲まれる範囲において、対の第2識別子で囲まれないことにより区別可能に記述されるが、これに限定されない。例えば、出力態様指令は、対の第1識別子で囲まれる範囲において、対の第2識別子で囲まれないことにより区別可能に記述され、キーワードは、対の第1識別子で囲まれる範囲において、対の第2識別子で囲まれることにより区別可能に記述される、としてもよい。
【0036】
(B)第1実施形態では、第1識別子と第2識別子とが同一の識別子を用いている場合があるが、これに限定されない。第1識別子と第2識別子とが異なる場合であってもよい。
【0037】
(C)上記実施形態において、医療文書作成支援システム2が抽出システム4を呼び出すことが可能であれば、医療文書作成支援システム2が抽出システム4を有していても、医療文書作成支援システム2が抽出システム4を有していなくてもよい。
【0038】
(D)上記実施形態において、文書生成部23は、例えば、「病名」を「緑内障」に置換するように、テンプレート10におけるキーワードを、抽出システム4から得られたキーワードに対応する出力に置換しているが、これに限定されない。例えば、「病名」を「病名緑内障」のように、キーワードを置換して削除せずに残したままにし、キーワードとキーワードに対応する出力との両方が医療文書に含まれる形にしてもよい。一例として、キーワードの後に出力が記載されていてもよいし、キーワードの前に出力が記載されていてもよい。すなわち、キーワードを置換して削除する態様と、キーワードを残しておく態様を含め、文書生成部23は、テンプレート10におけるキーワードに対応する位置(キーワードの前や後など)に、抽出システム4から得られたキーワードに対応する出力を含める処理を実行するとしてもよい。
【0039】
(E)上記実施形態において、文書生成部23は、キーワードを区別可能にする識別子を置換して削除しているが、これに限定されず、識別子を残したままにしてもよい。
【0040】
(F)上記実施形態において、1つのテンプレートにつき1つのプロンプトを抽出システム4に入力する場合と、1つのテンプレート10につき複数のプロンプトを抽出システム4に入力する場合とがあるが、上記実施形態での例示に限定されない。1つのテンプレート10についてのプロンプトの数は適宜変更可能である。
【0041】
[1]
以上、上記実施形態のように、医療文書作成支援システム2は、利用者が任意に設定可能なテキストと、テキストと区別可能に記述されたキーワードと、患者の医療記録30におけるキーワードに対応する第1情報の出力態様を示す出力態様指令とを含み且つ利用者が設定可能なテンプレート10を取得するテンプレート取得部20と、取得したテンプレート10に含まれるキーワード及び出力態様指令を特定可能な特定部22と、キーワードに対応する第1情報を患者の医療記録30から抽出する指示を含むプロンプトを抽出システム4へ入力する処理と、患者の医療記録30におけるキーワードに対応する第1情報を出力態様指令が示す出力態様に変換した第2情報を得る処理と、テンプレート10におけるキーワードに対応する位置に第2情報を含めて医療文書を生成する処理と、を実行可能な文書生成部23と、を備える、としてもよい。
この構成によれば、医師などの利用者は、医療文書の雛形となるテンプレート10に、自分好みのテキストを記載すると共に、医療記録30を参照する必要がある部分にキーワードを区別可能に記載するだけで、医療記録30からキーワードに対応する第1情報を補完した形で医療文書が自動生成でき、医療文書の作成が容易となる。
さらに出力態様指令をキーワードに関連付けてテンプレート10に記述することにより、医療記録30から抽出するキーワードに対応する第1情報を、好みの出力態様の第2情報に変換して、医療文書を自動生成可能となる。
したがって、医師などの利用者が直感的に利用可能であり且つ利用者の好みの表現での出力が可能となる。
【0042】
[2]
上記[1]に記載の医療文書作成支援システム2のように、キーワード及び出力態様指令は、テンプレート10において対の第1識別子で囲まれることにより区別可能に記述され、キーワード及び出力態様指令のいずれか一方は、対の第1識別子で囲まれる範囲内において、対の第2識別子で囲まれることにより区別可能に記述され、キーワード及び出力態様指令のいずれか他方は、前記対の第1識別子で囲まれる範囲内において、前記対の第2識別子で囲まれないことにより区別可能に記述される、としてもよい。
この構成によれば、第1識別子と第2識別子を入れ子構造にするだけで、キーワードと出力態様指令とを関連付けることができ、医師などの利用者によるシステムの使用が容易となる。
【0043】
[3]
上記[1]又は[2]に記載の医療文書作成支援システム2のように、出力態様指令は、数値、日付または時間の出力態様を指示する、としてもよい。
これにより、数値、日付または時間を所望の出力態様で出力することが可能となる。
【0044】
[4]
上記[1]~[3]のいずれかに記載の医療文書作成支援システム2のように、出力態様指令は、キーワードに対応する第1情報を、指定する言語へ翻訳することを指示する、としてもよい。
これにより、医療記録30と異なる言語を用いた医療文書を自動生成可能となる。
【0045】
[5]
上記[1]~[4]のいずれかに記載の医療文書作成支援システム2のように、出力態様指令は、キーワードに対応する第1情報を、数値または文字へ変換することを指示する、としてもよい。
これにより、所望の数値または文字を用いた医療文書を自動生成可能となる。
【0046】
[6]
上記[1]~[5]のいずれかに記載の医療文書作成支援システム2のように、出力態様指令は、キーワードに対応する第1情報に応じた条件分岐後の出力を指示する、としてもよい。
これにより、条件分岐を用いた所望の表現を用いた医療文書を自動生成可能となる。
【0047】
[7]
上記[1]~[6]のいずれかに記載の医療文書作成支援システム2のように、出力態様指令は、キーワードに対応する第1情報の要約を指示する、としてもよい。
これにより、医療記録30の要約を用いた医療文書を自動生成可能となる。
【0048】
[8]
上記[1]~[7]のいずれかに記載の医療文書作成支援システム2のように、出力態様指令は、複数の選択肢からキーワードに対応する選択肢の出力を指示する、としてもよい。
これにより、複数の選択肢を用いた画一的な医療文書を自動生成可能となる。
【0049】
[9]
上記[1]~[8]のいずれかに記載の医療文書作成支援システム2のように、出力態様指令は、複数のキーワードに対応する情報の演算を指示する、としてもよい。
これにより、数値の演算を用いた医療文書を自動生成可能となる。
【0050】
[10]
上記実施形態のように、医療文書作成支援方法は、利用者が任意に設定可能なテキストと、テキストと区別可能に記述されたキーワードと、患者の医療記録30におけるキーワードに対応する第1情報の出力態様を示す出力態様指令とを含み且つ利用者が設定可能なテンプレート10を取得することと、取得したテンプレート10に含まれるキーワード及び出力態様指令を特定することと、キーワードに対応する第1情報を患者の医療記録30から抽出する指示を含むプロンプトを抽出システム4へ入力する処理と、患者の医療記録30におけるキーワードに対応する第1情報を出力態様指令が示す出力態様に変換した第2情報を得る処理と、テンプレート10におけるキーワードに対応する位置に第2情報を含めて医療文書を生成する処理と、を実行することと、を含む、としてもよい。
【0051】
[11]
上記実施形態のように、プログラムは、上記[10]に記載の方法を1又は複数のプロセッサに実行させる、としてもよい。
【0052】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
2 :医療文書作成支援システム
4 :抽出システム
10 :テンプレート
20 :テンプレート取得部
22 :特定部
23 :文書生成部
30 :医療記録
【要約】
【課題】医師などの利用者が直感的に利用可能であり且つ利用者の好みの表現での出力が可能な医療文書作成支援技術を提供する。
【解決手段】医療文書作成支援システム2は、利用者が任意に設定可能なテキストと、テキストと区別可能に記述されたキーワードと、患者の医療記録30におけるキーワードに対応する第1情報の出力態様を示す出力態様指令とを含むテンプレート10を取得するテンプレート取得部20と、取得したテンプレート10に含まれるキーワード及び出力態様指令を特定可能な特定部22と、第1情報を患者の医療記録20から抽出する指示を含むプロンプトを抽出システム4へ入力する処理と、第1情報を出力態様指令が示す出力態様に変換した第2情報を得る処理と、テンプレート10におけるキーワードに対応する位置に第2情報を含めて医療文書を生成する処理と、を実行可能な文書生成部23と、を備える。
【選択図】
図1