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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/487 20070101AFI20250627BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20250627BHJP
【FI】
H02M7/487
H02M1/08 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022068087
(22)【出願日】2022-04-18
(65)【公開番号】P2023158323
(43)【公開日】2023-10-30
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐司
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-271810(JP,A)
【文献】特開平08-051770(JP,A)
【文献】特開2006-197763(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152989(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/487
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが制御端子と一対の主端子とを有する複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応して設けられ、前記複数のスイッチング素子を駆動し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより電力の変換を行う複数の駆動回路と、
前記複数の駆動回路のそれぞれに対応して設けられ、前記駆動回路を動作させるための駆動電源を生成し、生成した前記駆動電源を対応する前記駆動回路へ給電する複数の給電回路と、
前記複数のスイッチング素子を駆動するための複数の駆動信号を生成し、生成した前記複数の駆動信号を前記複数の駆動回路に入力することにより、前記複数のスイッチング素子のスイッチングによる電力の変換を制御する制御装置と、
を備え
記複数の給電回路のそれぞれは前記複数のスイッチング素子のそれぞれの前記一対の主端子に対して並列的に設けられるとともに前記スイッチング素子の前記一対の主端子間の電圧を前記駆動電源を生成するための所定の電圧に降圧する降圧回路および前記降圧回路によって降圧された後の電圧によって充電されることにより電荷の蓄積を行う電荷蓄積素子を有し、前記電荷蓄積素子に蓄積された電荷に基づいて前記駆動電源を生成し、
前記制御装置は、前記複数のスイッチング素子のいずれかのオン状態が継続される場合に、前記給電回路の前記電荷蓄積素子の電圧が所定電圧よりも低くになる前の所定のタイミングで一時的に当該スイッチング素子をオフ状態に切り替える制御を行う電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の給電回路のそれぞれは、前記降圧回路と前記電荷蓄積素子との間に設けられ、前記降圧回路から前記電荷蓄積素子に向かう方向に電流の流れを整流することにより、対応する前記スイッチング素子がオン状態となった際に、前記電荷蓄積素子に蓄積された電荷が、対応する前記スイッチング素子側に放電されてしまうことを抑制する整流素子をさらに有する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記降圧回路は、抵抗素子を有し、前記抵抗素子による分圧によって、前記スイッチング素子の前記一対の主端子間の電圧を降圧する請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記複数のスイッチング素子は、上アームのスイッチング素子と、下アームのスイッチング素子と、を有するとともに、1つのアームに対して複数の前記スイッチング素子が直列に接続された多直列構成に構成され、
前記降圧回路は、1つのアームに設けられる複数の前記スイッチング素子のそれぞれに印加される電圧が等しくなるように調整するための電圧バランス回路としても機能する請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記複数のスイッチング素子は、中性点クランプ型の3レベルインバータを構成するスイッチング素子であり、
中性点側の前記スイッチング素子に対応する前記給電回路の前記電荷蓄積素子の静電容量は、直流接続点側の前記スイッチング素子に対応する前記給電回路の前記電荷蓄積素子の静電容量よりも大きい請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子を駆動する駆動回路と、を備え、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、電力の変換を行う電力変換装置がある。駆動回路は、専用の電源から電力の供給を受けて動作する。
【0003】
例えば数百V以上などの高い電圧を扱う高圧の電力変換装置の駆動回路においては、スイッチングの度に駆動回路の出力側の電位が数百V変動し、駆動回路の出力側の電位は、駆動回路の電源である大地電位相当の制御電源と比べて高電位となる。そのため、駆動回路の電源においては、変圧器などを介して駆動回路の出力側と絶縁された状態で、駆動回路へ電力を供給することが行われている。この場合には、変圧器などが必要となり、装置が大型化してしまう。
【0004】
また、電力変換装置の直流回路側から電源を得る主回路給電を採用することも提案されている。この場合においても、フライバックトランスを用いて絶縁して電源が供給されるため、高圧の変圧器が必要となる。また、電源回路用に高圧のスイッチング素子も必要となる。
【0005】
さらに、変圧器を用いない方法として、ブートストラップ回路を用いる方法も提案されている。しかしながら、この場合には、スイッチング動作に制約が生じてしまう可能性がある。例えば、ブートストラップ回路を用いた方法では、対向アームがオンしている時にしか駆動回路に電源を供給することができないため、スイッチング素子に負バイアスを印加してオフ状態とする際などに、上下アームを同時にオフ状態とすることができない可能性がある。
【0006】
このため、電力変換装置では、スイッチング動作に制約が生じることを抑制しつつ、より簡単な構成で駆動回路に電源を供給できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-27832号公報
【文献】特開2016-144354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、スイッチング動作に制約が生じることを抑制しつつ、より簡単な構成で駆動回路に電源を供給することができる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、それぞれが制御端子と一対の主端子とを有する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応して設けられ、前記複数のスイッチング素子を駆動し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより電力の変換を行う複数の駆動回路と、前記複数の駆動回路のそれぞれに対応して設けられ、前記駆動回路を動作させるための駆動電源を生成し、生成した前記駆動電源を対応する前記駆動回路へ給電する複数の給電回路と、前記複数のスイッチング素子を駆動するための複数の駆動信号を生成し、生成した前記複数の駆動信号を前記複数の駆動回路に入力することにより、前記複数のスイッチング素子のスイッチングによる電力の変換を制御する制御装置と、を備え、前記複数の給電回路のそれぞれは前記複数のスイッチング素子のそれぞれの前記一対の主端子に対して並列的に設けられるとともに前記スイッチング素子の前記一対の主端子間の電圧を前記駆動電源を生成するための所定の電圧に降圧する降圧回路および前記降圧回路によって降圧された後の電圧によって充電されることにより電荷の蓄積を行う電荷蓄積素子を有し、前記電荷蓄積素子に蓄積された電荷に基づいて前記駆動電源を生成し、前記制御装置は、前記複数のスイッチング素子のいずれかのオン状態が継続される場合に、前記給電回路の前記電荷蓄積素子の電圧が所定電圧よりも低くになる前の所定のタイミングで一時的に当該スイッチング素子をオフ状態に切り替える制御を行う電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
スイッチング動作に制約が生じることを抑制しつつ、より簡単な構成で駆動回路に電源を供給することができる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2】実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
【0012】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、複数のスイッチング素子12と、複数の駆動回路14と、複数の給電回路16と、制御装置18と、を備える。
【0014】
電力変換装置10は、複数のスイッチング素子12のスイッチングによって電力の変換を行う。複数のスイッチング素子12は、例えば、ブリッジ接続されている。複数のスイッチング素子12は、上アームのスイッチング素子12と、下アームのスイッチング素子12と、を有する。
【0015】
複数のスイッチング素子12は、例えば、MOSFETやIGBTなどの自励式のスイッチング素子である。複数のスイッチング素子12は、一対の主端子12a、12bと、制御端子12cと、を有する。主端子12aは、例えば、ドレインである。主端子12bは、例えば、ソースである。制御端子12cは、例えば、ゲートである。
【0016】
複数の駆動回路14は、複数のスイッチング素子12のそれぞれに対応して設けられる。複数の駆動回路14は、制御装置18から駆動信号の入力を受け、入力された駆動信号に基づいて複数のスイッチング素子12を駆動する。
【0017】
複数の駆動回路14は、換言すれば、駆動信号に基づいてスイッチング素子12のオン状態とオフ状態とを切り替える。複数の駆動回路14は、換言すれば、駆動信号に基づいて電力変換装置10による電力の変換を駆動する。電力変換装置10は、複数の駆動回路14の駆動により、複数のスイッチング素子12のオン状態とオフ状態とを切り替え、電力の変換を行う。
【0018】
制御装置18は、例えば、上位のコントローラなどから入力される指令値などに基づいて複数のスイッチング素子12を駆動するための複数の駆動信号を生成し、生成した複数の駆動信号を複数の駆動回路14に入力することにより、複数のスイッチング素子12のスイッチングによる電力の変換を制御する。
【0019】
電力変換装置10は、1つのアームに対して2つのスイッチング素子12を直列に接続した多直列構成の電力変換装置である。図1では、電力変換装置10の1つのレグの上アームを構成する2つのスイッチング素子12、下アームを構成する2つのスイッチング素子12、及び各スイッチング素子12に対応する4つの駆動回路14のみを便宜的に図示している。
【0020】
電力変換装置10は、例えば、12個のスイッチング素子12を三相ブリッジ接続した2レベルの三相インバータである。電力変換装置10では、上アームのスイッチング素子12と下アームのスイッチング素子12との接続点が、交流接続点となる。また、電力変換装置10では、1レグの各スイッチング素子12の両端が直流接続点となる。電力変換装置10は、交流接続点を介して交流電力系統や交流負荷などと接続され、直流接続点を介して直流電源や直流負荷などと接続される。
【0021】
電力変換装置10は、複数のスイッチング素子12のスイッチングにより、例えば、直流電力から交流電力への変換及び交流電力から直流電力への変換の少なくとも一方の変換を行う。
【0022】
電力変換装置10の一対の直流接続点の間の電圧は、例えば、数千Vである。一対の直流接続点の間の電圧は、例えば、1000V以上である。このように、電力変換装置10は、比較的高い電圧を扱う高圧の電力変換装置である。
【0023】
但し、電力変換装置10の構成は、これに限定されるものではない。電力変換装置10は、例えば、単相インバータなどでもよい。また、電力変換装置10は、必ずしも高圧の電力変換装置でなくてもよい。一対の直流接続点の間の電圧は、上記に限ることなく、任意の電圧でよい。
【0024】
また、この例では、1つのアームに対して2つのスイッチング素子12を直列に接続した多直列構成の電力変換装置10を表している。1つのアームに設けられるスイッチング素子12の数は、2つに限ることなく、3つ以上でもよい。また、1つのアームに設けられるスイッチング素子12の数は、1つでもよい。電力変換装置10の構成は、必ずしも多直列の構成でなくてもよい。
【0025】
複数の給電回路16は、複数の駆動回路14のそれぞれに対応して設けられる。給電回路16は、駆動回路14を動作させるための駆動電源を生成し、生成した駆動電源を対応する駆動回路14へ給電する。駆動回路14は、給電回路16から給電された駆動電源に基づいて動作する。
【0026】
複数の給電回路16のそれぞれは、複数のスイッチング素子12のそれぞれの一対の主端子12a、12bに対して並列的に設けられる。これにより、給電回路16は、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電力を電源として、駆動電源を生成する。
【0027】
各給電回路16は、例えば、降圧回路21と、電荷蓄積素子22と、整流素子23と、電圧変換回路24と、を有する。
【0028】
降圧回路21は、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電圧を、駆動電源を生成するための所定の電圧に降圧する。降圧回路21は、例えば、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の数百Vの電圧を数十V程度の電圧に降圧する。降圧回路21は、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の高圧の電圧を比較的低い低圧の電圧に降圧する。高圧の電圧とは、例えば、100V以上の電圧である。低圧の電圧とは、例えば、100V未満の電圧である。
【0029】
降圧回路21は、例えば、抵抗素子31、コンデンサ32と、抵抗素子33と、を有する。
【0030】
抵抗素子31の一端は、スイッチング素子12の高電位側の主端子12aに接続されている。抵抗素子31の他端は、コンデンサ32の一端に接続されている。コンデンサ32の他端は、スイッチング素子12の低電位側の主端子12bに接続されている。このように、コンデンサ32は、抵抗素子31と直列に接続されている。抵抗素子31とコンデンサ32との直列接続体は、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12bに対して並列に接続されている。
【0031】
抵抗素子33の一端は、抵抗素子31とコンデンサ32との接続点に接続されている。抵抗素子33の他端は、スイッチング素子12の低電位側の主端子12bに接続されている。抵抗素子33は、コンデンサ32に対して並列に接続されている。
【0032】
降圧回路21は、抵抗素子31、33による分圧によって、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電圧を降圧する。降圧回路21は、換言すれば、分圧回路である。
【0033】
また、降圧回路21は、多直列構成の電力変換装置10において、1つのアームに設けられる複数のスイッチング素子12のそれぞれに印加される電圧が等しくなるように調整するための電圧バランス回路としても機能する。複数の給電回路16のそれぞれの降圧回路21において、抵抗素子31、33の抵抗値やコンデンサ32の静電容量値が調整される。これにより、1つのアームに設けられる複数のスイッチング素子12のそれぞれに印加される電圧が、実質的に同じになるようにすることができる。
【0034】
但し、降圧回路21の構成は、抵抗素子31、33の分圧による構成に限定されるものではない。降圧回路21の構成は、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電圧を、駆動電源を生成するための所定の電圧に降圧することが可能な任意の構成でよい。
【0035】
電荷蓄積素子22は、降圧回路21の出力側に設けられる。電荷蓄積素子22の一端は、例えば、抵抗素子33に接続される。電荷蓄積素子22の他端は、例えば、スイッチング素子12の低電位側の主端子12bに接続される。電荷蓄積素子22は、降圧回路21によって降圧された後の電圧によって充電されることにより、電荷の蓄積を行う。
【0036】
給電回路16に対応するスイッチング素子12がオフ状態の時には、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電力が、給電回路16に供給される。給電回路16に対応するスイッチング素子12がオフ状態の時には、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電力に基づいて、電荷蓄積素子22が充電される。
【0037】
一方、給電回路16に対応するスイッチング素子12がオン状態の時には、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間が導通するため、給電回路16への電力の供給が停止される。給電回路16は、スイッチング素子12がオフ状態の時に、電荷蓄積素子22を充電することにより、スイッチング素子12がオン状態の時にも、電荷蓄積素子22に蓄積された電荷に基づいて、駆動電源の生成を継続できるようにする。
【0038】
このため、電荷蓄積素子22の静電容量の大きさは、スイッチング素子12がオン状態の時に必要となる駆動回路14へのエネルギ供給量に応じて決められる。電荷蓄積素子22の静電容量の大きさは、スイッチング素子12がオン状態の時にも駆動電源の生成を継続可能な大きさに設定される。
【0039】
整流素子23は、降圧回路21と電荷蓄積素子22との間に設けられ、降圧回路21から電荷蓄積素子22に向かう方向に電流の流れを整流する。これにより、整流素子23は、スイッチング素子12がオン状態となった際に、電荷蓄積素子22に蓄積された電荷が、スイッチング素子12側に放電されてしまうことを抑制する。
【0040】
電圧変換回路24の入力側は、電荷蓄積素子22と並列に接続される。これにより、電荷蓄積素子22の両端の電圧が、電圧変換回路24に入力される。電圧変換回路24の出力側は、駆動回路14と接続される。電圧変換回路24は、電荷蓄積素子22から入力された電圧を駆動回路14に対応した電圧に変換することにより、駆動回路14の駆動電源を生成し、生成した駆動電源を駆動回路14に供給する。電圧変換回路24は、例えば、数十V~数百Vの電荷蓄積素子22の電圧を、数V~数十Vの電圧に変換する。電圧変換回路24は、例えば、降圧型の変換回路である。これにより、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電力を電源として、駆動回路14に駆動電源を供給することができる。
【0041】
電圧変換回路24は、例えば、DC/DCコンバータである。電圧変換回路24は、三端子レギュレータなどでもよい。このように、電荷蓄積素子22の電圧を電圧変換回路24で変換して駆動電源を生成することにより、安定した電圧の駆動電源を駆動回路14に供給することができる。電圧変換回路24の構成は、上記に限ることなく、安定した電圧の駆動電源を駆動回路14に供給可能な任意の構成でよい。
【0042】
なお、給電回路16の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、入力電圧を安定化させる機能を駆動回路14が有する場合などには、電圧変換回路24を省略し、電荷蓄積素子22の電圧を駆動回路14に供給してもよい。換言すれば、電圧変換回路24は、駆動回路14に設けてもよい。給電回路16は、例えば、電荷蓄積素子22に蓄積された電荷を基に、駆動電源の生成を行う。給電回路16の構成は、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電力を電源として、駆動回路14の駆動電源を生成可能な任意の構成でよい。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、給電回路16が、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電力を電源として、駆動回路14の駆動電源を生成する。このため、本実施形態に係る電力変換装置10では、高圧の変圧器や高圧のスイッチング素子などを給電回路16に設ける必要がなく、変圧器などを介して駆動回路14に駆動電源を供給する場合や、フライバックトランスを用いた電源回路によって駆動回路14に駆動電源を供給する場合などと比べて、給電回路16の構成を簡単にすることができる。これにより、例えば、電力変換装置10の低コスト化、小型化、高信頼化などを可能とすることができる。
【0044】
そして、本実施形態に係る電力変換装置10では、スイッチング素子12がオフ状態の時に電荷蓄積素子22が充電され、電荷蓄積素子22に蓄積された電荷に基づいて駆動回路14の駆動電源が生成される。このため、ブートストラップ回路を用いた場合などと比べて、スイッチング動作に制約が生じてしまうことも抑制することができる。例えば、スイッチング素子12に負バイアスを印加してオフ状態とする際にも、上下アームを同時にオフ状態とすることができる。
【0045】
従って、スイッチング動作に制約が生じることを抑制しつつ、より簡単な構成で駆動回路14に電源を供給することができる電力変換装置10を提供することができる。
【0046】
また、電力変換装置10は、1つのアームに対して複数のスイッチング素子12を直列に接続した多直列構成に構成されている。このような多直列構成の電力変換装置においては、電圧バランス回路として抵抗素子31、33及びコンデンサ32を設けることが行われている。本実施形態に係る電力変換装置10では、降圧回路21を電圧バランス回路としても機能させる。これにより、給電回路16における部品点数の増加を抑制することができる。換言すれば、電圧バランス回路を降圧回路21(分圧抵抗)として用いることによって、部品点数の増加を抑制し、より簡単な構成で給電回路16を実現することができる。
【0047】
電力変換装置10では、給電回路16が、電圧変換回路24を有する。この場合においても、電圧変換回路24に入力される電圧は、降圧回路21によって降圧された後の低圧の電圧であり、電圧変換回路24も低圧の回路とすることができる。電圧変換回路24の基準電位は、駆動回路14の基準電位と同電位(低電位側の主端子12bの電位)であり、電圧変換回路24には、非絶縁型の変換回路を適用可能である。電圧変換回路24には、高圧の変圧器などを設ける必要がない。このため、電圧変換回路24を設けたとしても、高圧の回路を設ける場合と比べて、電圧変換回路24によるコストの増加、装置の大型化、及び信頼性の低下などを抑制することができる。
【0048】
例えば、電力変換装置10が、直流出力や低周波出力を行う変換器に適用された場合などに、複数のスイッチング素子12のいずれかのオン状態が、比較的長い時間継続されてしまう可能性がある。このような場合、電荷蓄積素子22を充電することができず、駆動回路14への駆動電源の供給が停止する可能性が生じてしまう。
【0049】
このため、制御装置18は、このように、複数のスイッチング素子12のいずれかのオン状態が継続される場合に、電荷蓄積素子22の電圧が所定電圧よりも低くになる前の所定のタイミングで一時的に当該スイッチング素子12をオフ状態に切り替える制御を行う。
【0050】
所定電圧は、例えば、電圧変換回路24の最低動作電圧である。電荷蓄積素子22の電圧を駆動回路14に直接供給する場合などには、所定電圧は、駆動回路14の最低動作電圧としてもよい。
【0051】
制御装置18は、例えば、電荷蓄積素子22の電圧が所定電圧に達した際に、スイッチング素子12を一時的にオフ状態に切り替える。制御装置18は、例えば、スイッチング素子12をオン状態に切り替えたタイミングから所定時間が経過した際に、スイッチング素子12を一時的にオフ状態に切り替えてもよい。
【0052】
スイッチング素子12を一時的にオフ状態とする時間は、例えば、電荷蓄積素子22を適切に充電でき、かつ電力変換の動作に影響を与えてしまうことを抑制できる比較的短い時間とすることが好ましい。制御装置18は、例えば、スイッチング素子12をオフ状態に切り替えたタイミングから所定時間が経過した際に、スイッチング素子12をオン状態に戻す。制御装置18は、例えば、スイッチング素子12をオフ状態に切り替えた後、電荷蓄積素子22の電圧が所定の閾値以上になった際に、スイッチング素子12をオン状態に戻してもよい。
【0053】
このように、制御装置18は、複数のスイッチング素子12のいずれかのオン状態が継続される場合に、電荷蓄積素子22の電圧が所定電圧よりも低くになる前の所定のタイミングで一時的に当該スイッチング素子12をオフ状態に切り替える。これにより、スイッチング素子12のオン状態が継続される際にも、電荷蓄積素子22を充電することができず、駆動回路14への駆動電源の供給が停止してしまうことを抑制することができる。
【0054】
図2は、実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、電力変換装置10aは、一対の電荷蓄積素子51、52と、一対の整流素子53、54と、をさらに備える。なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0055】
電荷蓄積素子51の一端は、高電位側の直流接続点に接続されている。電荷蓄積素子51の他端は、電荷蓄積素子52の一端に接続されている。電荷蓄積素子52の他端は、低電位側の直流接続点に接続されている。
【0056】
整流素子53の一端は、上アームの2つのスイッチング素子12の直列接続点に接続されている。整流素子53の他端は、整流素子54の一端に接続されている。整流素子54の他端は、下アームの2つのスイッチング素子12の直列接続点に接続されている。また、整流素子53、54の直列接続点は、電荷蓄積素子51、52の直列接続点に接続されている。
【0057】
電力変換装置10aは、中性点クランプ型の3レベルインバータである。複数のスイッチング素子12は、中性点クランプ型の3レベルインバータを構成するスイッチング素子である。3レベルインバータの電力変換装置10aにおいても、給電回路16が、スイッチング素子12の一対の主端子12a、12b間の電力を電源として、駆動回路14の駆動電源を生成することにより、上記実施形態と同様に、スイッチング動作に制約が生じることを抑制しつつ、より簡単な構成で駆動回路14に電源を供給することができる。
【0058】
電力変換装置10aにおいて、上アームの2つのスイッチング素子12のうちの中性点側のスイッチング素子12をスイッチング素子U1、直流接続点側のスイッチング素子12をスイッチング素子U2とし、下アームの2つのスイッチング素子12のうちの中性点側のスイッチング素子12をスイッチング素子X1、直流接続点側のスイッチング素子12をスイッチング素子X2とする時、中性点側のスイッチング素子U1、X1のオン時間は、直流接続点側のスイッチング素子U2、X2のオン時間よりも長くなる傾向にある。
【0059】
このような場合には、中性点側のスイッチング素子U1、X1に対応する給電回路16の電荷蓄積素子22の静電容量を、直流接続点側のスイッチング素子U2、X2に対応する給電回路16の電荷蓄積素子22の静電容量よりも大きくすることが好ましい。
【0060】
これにより、中性点側のスイッチング素子U1、X1のオン時間が、直流接続点側のスイッチング素子U2、X2のオン時間よりも長い場合にも、電荷蓄積素子22の電圧が低下し、中性点側のスイッチング素子U1、X1に対応する駆動回路14への駆動電源の供給が停止してしまうことを抑制することができる。
【0061】
このように、本実施形態に係る電力変換装置は、例えば、3レベルインバータなどのマルチレベルインバータなどでもよい。本実施形態に係る電力変換装置は、例えば、MMC(Modular Multilevel Converter)型の電力変換装置など、複数台の変換器(単位セル)を直列に接続した多段構成の電力変換装置の各変換器に適用してもよい。
【0062】
電力変換装置の構成は、複数のスイッチング素子12のスイッチングによって電力の変換を行う任意の構成でよい。電力変換装置による電力の変換は、例えば、交流電力から電圧や周波数の異なる別の交流電力への変換などでもよいし、直流電力から電圧の異なる別の直流電力への変換などでもよい。電力変換装置による電力の変換は、別の電力への任意の変換でよい。
【0063】
本実施形態は、以下の態様を含む。
(付記1)
複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応して設けられ、前記複数のスイッチング素子を駆動し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより電力の変換を行う複数の駆動回路と、
前記複数の駆動回路のそれぞれに対応して設けられ、前記駆動回路を動作させるための駆動電源を生成し、生成した前記駆動電源を対応する前記駆動回路へ給電する複数の給電回路と、
を備え、
前記複数のスイッチング素子は、一対の主端子と、制御端子と、を有し、
前記複数の給電回路のそれぞれは、前記複数のスイッチング素子のそれぞれの前記一対の主端子に対して並列的に設けられ、前記一対の主端子間の電力を電源として、前記駆動電源を生成する電力変換装置。
(付記2)
前記複数の給電回路のそれぞれは、
前記スイッチング素子の前記一対の主端子間の電圧を、前記駆動電源を生成するための所定の電圧に降圧する降圧回路と、
前記降圧回路によって降圧された後の電圧によって充電されることにより、電荷の蓄積を行う電荷蓄積素子と、
を有し、前記電荷蓄積素子に蓄積された電荷を基に、前記駆動電源の生成を行う付記1記載の電力変換装置。
(付記3)
前記複数の給電回路のそれぞれは、前記降圧回路と前記電荷蓄積素子との間に設けられ、前記降圧回路から前記電荷蓄積素子に向かう方向に電流の流れを整流することにより、対応する前記スイッチング素子がオン状態となった際に、前記電荷蓄積素子に蓄積された電荷が、対応する前記スイッチング素子側に放電されてしまうことを抑制する整流素子をさらに有する付記2記載の電力変換装置。
(付記4)
前記降圧回路は、抵抗素子を有し、前記抵抗素子による分圧によって、前記スイッチング素子の前記一対の主端子間の電圧を降圧する付記2又は3に記載の電力変換装置。
(付記5)
前記複数のスイッチング素子は、上アームのスイッチング素子と、下アームのスイッチング素子と、を有するとともに、1つのアームに対して複数の前記スイッチング素子が直列に接続された多直列構成に構成され、
前記降圧回路は、1つのアームに設けられる複数の前記スイッチング素子のそれぞれに印加される電圧が等しくなるように調整するための電圧バランス回路としても機能する付記4記載の電力変換装置。
(付記6)
前記複数のスイッチング素子を駆動するための複数の駆動信号を生成し、生成した前記複数の駆動信号を前記複数の駆動回路に入力することにより、前記複数のスイッチング素子のスイッチングによる電力の変換を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記複数のスイッチング素子のいずれかのオン状態が継続される場合に、前記給電回路の前記電荷蓄積素子の電圧が所定電圧よりも低くになる前の所定のタイミングで一時的に当該スイッチング素子をオフ状態に切り替える制御を行う付記2~5のいずれか1つに記載の電力変換装置。
(付記7)
前記複数のスイッチング素子は、中性点クランプ型の3レベルインバータを構成するスイッチング素子であり、
中性点側の前記スイッチング素子に対応する前記給電回路の前記電荷蓄積素子の静電容量は、直流接続点側の前記スイッチング素子に対応する前記給電回路の前記電荷蓄積素子の静電容量よりも大きい付記2~6のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10、10a…電力変換装置、 12…スイッチング素子、 14…駆動回路、 16…給電回路、 18…制御装置、 21…降圧回路、 22…電荷蓄積素子、 23…整流素子、 24…電圧変換回路、 31…抵抗素子、 32…コンデンサ、 33…抵抗素子、 51、52…電荷蓄積素子、 53、54…整流素子
図1
図2