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特許7702783先行するリング紡績機のコップを巻き返すための巻取り機の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】先行するリング紡績機のコップを巻き返すための巻取り機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   D01H 13/32 20060101AFI20250627BHJP
   D01H 9/18 20060101ALI20250627BHJP
   D01H 13/00 20060101ALI20250627BHJP
   D01H 13/14 20060101ALI20250627BHJP
【FI】
D01H13/32
D01H9/18 Z
D01H13/00 A
D01H13/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020531014
(86)(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2018059208
(87)【国際公開番号】W WO2019111090
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】01492/17
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】590005597
【氏名又は名称】リーター アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20, 8406 Winterthur, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト インゴルト
【合議体】
【審判長】岩谷 一臣
【審判官】藤井 眞吾
【審判官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-507529号公報(JP,A)
【文献】特開2002-105770号公報(JP,A)
【文献】特開2015-117461号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行するリング紡績機(1)のコップ(7)を巻き返すための巻取り機(24)の運転方法であって、前記リング紡績機(1)が、複数のスピンドル(8)を有していて、該スピンドル(8)は、スピンドルレール(22)上に配置されていて、それぞれ1つの電気的な駆動装置(9)を含んでおり、
各電気的な駆動装置(9)が、分散型コントロールモジュール(10)を有していて、該分散型コントロールモジュール(10)が、前記電気的な駆動装置(9)と協働し、前記分散型コントロールモジュール(10)が、データバス(13,14)により上位の中央コントロール装置(12)と通信するための手段(10)を有していて、
前記コップ(7)を、搬送システム(26)により前記リング紡績機(1)から前記巻取り機(24)へと搬送する、方法において、
・前記電気的な駆動装置(9)の前記分散型コントロールモジュール(10)が、前記コップ(7)の形状または構造に関する情報、または形成された糸に関する情報を検出し、
・前記情報を前記巻取り機(24)に対してインタフェース(27)を介して伝達し、かつ
・前記巻取り機(24)が、前記コップ(7)の巻返しの速度プロフィールを、前記電気的な駆動装置(9)の前記情報に対応して適合させ、かつ、
・前記巻取り機(24)が、前記情報から異常箇所についての情報を受け取り、該異常箇所を切り離す、かつ/または
・前記巻取り機(24)が、伝達された前記コップ(7)の個別の形状に応じて、前記コップ(7)の小さなコップ直径では緩慢に、大きなコップ直径では高速になるように巻返し速度を変更する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記電気的な駆動装置(9)の前記分散型コントロールモジュール(10)が、各個別のコップ(7)の情報として、
・前記コップ(7)上の糸のメートル長さ
・糸長さにわたる糸破断の回数および位置
・コップ形成中の中間ストップの回数および位置
・前記コップ(7)の形状および構造
・前記糸の毛羽立ちにおける不規則性
・糸構造における不規則性
を、前記インタフェース(27)を介して前記巻取り機(24)に伝達する、請求項1記載の巻取り機(24)の運転方法。
【請求項3】
少なくとも1つのセクションコントロールモジュール(11)が存在しており、該セクションコントロールモジュール(11)が、複数の分散型コントロールモジュール(10)に割り当てられていて、前記コップ(7)の形状または構造に関する前記情報、または前記形成された糸に関する前記情報を、割り当てられた1つの分散型コントロールモジュール(10)に対して前記セクションコントロールモジュール(11)が問い合わせ、前記情報を前記分散型コントロールモジュール(10)から前記セクションコントロールモジュール(11)へと送信し、該セクションコントロールモジュール(11)において評価する、請求項1または2記載の巻取り機(24)の運転方法。
【請求項4】
少なくとも1つのセクションコントロールモジュール(11)が存在しており、該セクションコントロールモジュール(11)が、複数の分散型コントロールモジュール(10)に割り当てられていて、前記コップ(7)の形状または構造に関する前記情報、または前記形成された糸に関する前記情報を、割り当てられた1つの分散型コントロールモジュール(10)により評価し、該分散型コントロールモジュール(10)から、該分散型コントロールモジュール(10)に割り当てられた前記セクションコントロールモジュール(11)に送信する、請求項1または2記載の巻取り機(24)の運転方法。
【請求項5】
前記コップ(7)の前記糸長さを伝達して、前記巻取り機(24)が、1つのコップ(7)が完全に繰り出されたか否かを突き止める、請求項記載の巻取り機(24)の運転方法。
【請求項6】
前記コップ(7)を、自動または手動の搬送システム(26)により前記リング紡績機(1)から前記巻取り機(24)へと搬送する、請求項1から5までのいずれか1項記載の巻取り機(24)の運転方法。
【請求項7】
完全に繰り出されていない全てのコップを、前記巻取り機(24)に新たに供給する、請求項1から6までのいずれか1項記載の巻取り機(24)の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部に記載の形式の、先行するリング紡績機のコップを巻き返すための巻取り機の運転方法に関する。本発明は、対応して構成されたリング紡績機にも関する。
【0002】
先行技術
ベルト駆動装置に対する代替手段として個別スピンドル駆動装置を備えたリング紡績機は、以前から知られている。対応して、特に、このようなスピンドルユニットの駆動コンセプトまたは機械フレーム、つまりスピンドルレールにおける取付けを論じる、この分野に関する多数の刊行物が存在する。スイス国特許発明第698768号明細書は、例示的に個別スピンドル駆動装置を備えたこのような紡績機を開示している。
【0003】
駆動装置アセンブリは、回転式に作用する電気的な駆動モータを含んでいる。この駆動モータは、駆動モータの軸の端面側に設けられた、たとえばガイドローラの形で装備されたマニピュレータを介して、糸、繊維、不織布または編成品に作用する。さらに、典型的には種々異なる外部のセンサならびに付加的なアクチュエータエレメントが設けられている。外部のセンサは、特に糸、繊維、不織布または編成品の位置を検出するために働く。付加的なアクチュエータエレメントは、たとえば糸、繊維、編成品もしくは不織布にプリロードを加えるか、位置決めするために働く。回転式に作用する電気的な駆動モータは、通常、全体的に弾性的に支承されて設けられていて、これにより、駆動装置アセンブリを一方では共振問題に対して保護し、他方では高い回転数でも十分な走行安定性および寿命を保証することができる。
【0004】
電気的な駆動モータを開ループ制御もしくは閉ループ制御するために、分散型コントロールモジュールが設けられている。機能的にかつ通常は空間的にも駆動装置アセンブリの一部として設けられている分散型コントロールモジュールは、さらに外部のセンサおよび付加的なアクチュエータエレメントと協働する。分散型コントロールモジュールは、適切な通信手段を介して、上位の中央コントロール装置に接続されている。中央コントロール装置は、特に、繊維機械の複数の駆動装置アセンブリを調整する。基本的には、繊維機械におけるこのような駆動装置アセンブリの使用は、長年にわたって有効であると実証されている。
【0005】
欧州特許出願公開第2999096号明細書は、繊維機械であって、該繊維機械が、回転式に作用する電気的な駆動モータを含む少なくとも1つの駆動装置アセンブリを備え、該駆動モータが、少なくとも1つのコイルを有する、いずれの場合にも駆動モータのケーシングにより部分的に取り囲まれたステータと、ステータに関して回転可能に駆動モータの軸において保持されたロータと、軸用の少なくとも1つの軸受とを備え、前記駆動装置アセンブリが、駆動モータの少なくとも個別の機能構成要素を支持するための弾性的な手段と、駆動モータに割り当てられた、分散型コントロールモジュールとを含み、該分散型コントロールモジュールが、一方では駆動モータと協働し、他方では駆動装置アセンブリの少なくとも1つのセンサと協働し、かつ上位の中央コントロール装置との通信のための手段を有しており、軸を支持するために設けられた少なくとも1つの軸受が、弾性的な手段を介して、ステータに関して撓むことができるように、ケーシングにおいて支持されていて、軸が、ロータと一緒に、ステータに対して相対的に可動に保持されていて、駆動モータとして、電気的な同期モータが設けられていて、第1のセンサを介して、ケーシングに対して相対的な軸の位置が検出可能であり、かつ/または第2のセンサを介して軸の回転角が検出可能である、繊維機械に関する。
【0006】
このようなリング紡績機の作業ユニットにおいて製造される、比較的に少ない糸容量を有する紡績コップは、巻取り機の作業ユニットにおける後続の作業工程において大容量の綾巻きパッケージに巻き返される。巻取り機の巻取り速度を変更するための種々異なる方法が知られている。
【0007】
スイス国特許発明第669177号明細書による公知の装置では、巻取り速度の制御、ひいては紡績コップ上の糸残量に依存した糸引出し速度の制御も行われる。つまり、この装置では、コップ形成過程の開始時に、まず、比較的高い巻取り速度で巻成が行われるが、この巻取り速度は、コップ形成過程の終了時に明らかに非臨界的なレベルにまで降下される。巻取り速度は、巻き取るべきパッケージの巻取り回転数に一致する。この公知の方法によって、確かに、対応する手段なしではコップ形成過程中に連続的に増大する糸張力の制限、ひいては糸破断の明らかな減少を達成することができるが、コップ形成過程の最後の3分の1の期間の巻取り速度の降下は、比較的小さな平均巻取り速度につながり、このことはこのような巻取り機の効率に関して不都合に作用する。
【0008】
米国特許第4805846号明細書も、各巻取りユニットのための回転数に適合させることができ、これにより糸破断を阻止する自動巻取り機を開示している。
【0009】
これに関連して、巻取りプロセス中に、糸クリアラによって、巻き返すべき糸の毛羽立ちを監視し、毛羽立ちが制限値へ達した場合または制限値を上回った場合に、巻取り速度を減じることも知られている。
【0010】
欧州特許第2388222号明細書は、紡績コップを製造するための方法を開示している。紡績コップの、コップ巻管上に配置された糸巻成体は、リング紡績機の紡績プログラムにより規定された糸長さおよび巻取りサイズを有している。上掲の特許明細書は、さらにこの方法を実施するためのリング紡績機を開示している。ここでは、リング紡績機の作業ユニットにおいて製造すべきコップの巻成体の最適な位置およびサイズを、巻取り機の作業ユニットにおける少なくとも1つの紡績コップの巻返し時にこの紡績コップの繰出し挙動を評価することにより、検出することが規定されている。
【0011】
国際公開第9215737号は、ネットワーク設備を制御するための方法および装置を開示している。上掲の特許文献は、連鎖されたプロセス段、つまりリング紡績機と、いずれの場合もこのリング紡績機に対応配置された自動操作装置と、リング紡績機に連鎖された巻取り機との協働に関する。巻取り機自体は、糸クリアラを装備していて、糸クリアラは、糸品質の検出のために適している。
【0012】
しかし、この実施形態において不都合であるのは、リング紡績機の個別スピンドル駆動装置の付加的な情報が、巻取り機において使用されず、たとえば巻取り機において、異常箇所があるか否かを別個に検査しなければならず、これによりこの異常箇所を除去することができることである。さらに、戻し搬送時に各個別のコップのために、巻取り機がこのコップを完全に繰り出したか否か、または場合によっては残留物がコップ上に残っているか否かを突き止めなければならないことは不都合である。
【0013】
発明の開示
その限りでは、本発明の課題は、コップの改善された巻返し挙動を有する、個別スピンドル駆動装置を備えたリング紡績機が前置されている巻取り機の運転方法を提供することである。
【0014】
さらに本発明の課題は、個別スピンドル駆動装置を備えたリング紡績機であって、後続の巻取り機のために、コップの形状および構造ならびに糸品質等に関する付加的な情報が提供される、リング紡績機を提供することである。
【0015】
この課題は、独立した方法請求項の前提部に対応する方法により、
・個別スピンドル駆動装置の分散型コントロールモジュールが、コップの形状または構造に関する情報、または製造された糸に関する情報を検出し、
・この情報を巻取り機に対してインタフェースを介して伝達し、かつ
・巻取り機が受信した情報をコップの繰出し時かつ綾巻きパッケージの製造時に考慮する
ことにより解決される。
【0016】
個別スピンドル駆動装置の分散型コントロールモジュールは、各個別のコップの情報として、
・コップ上の糸のメートル長さ
・糸長さにわたる糸破断の回数および位置
・コップ形成中の中間ストップの回数および位置
・コップの形状および構造
・糸の毛羽立ちにおける不規則性
・糸構造における不規則性
を、インタフェースを介して巻取り機に伝達することができる。
【0017】
これにより、有利には、これらの情報は、本発明により直接に個別スピンドル駆動装置において検出することができ、このことは、先行技術において挙げられた実施例におけるよりも正確に、包括的に、かつ適時に行われる。
【0018】
したがって、巻取り機は、有利には、
・コップの巻返しの速度プロフィール(経過)を、個別スピンドル駆動装置の情報に対応して適合させることができ、かつ/または
・異常箇所を切り離すことができ、かつ/または
・コップの糸張力を巻返し時に考慮することができ、かつ/または
・コップの形状を巻返し時に考慮することができる。
【0019】
これにより、巻返しの作業を、有利にはより効果的に行うことができる。
【0020】
コップ上に巻き取られた糸の糸長さも、同様に伝達することができ、これにより巻取り機は、1つのコップが完全に繰り出されたか否かを突き止めることができる。したがって、完全に繰り出されていない全てのコップは、巻取り機に新たに供給することができる。
【0021】
有利には、リング紡績機の通信構造において、少なくとも1つのセクションモジュールが存在していてよい。セクションモジュールは、複数の分散型コントロールモジュールに割り当てられていて、コップの形状または構造に関する情報、または形成された糸に関する情報を、割り当てられた1つの分散型コントロールモジュールに対してセクションモジュールが問い合わせ、前記情報をコントロールモジュールからセクションモジュールへと送信し、該セクションモジュールにおいて評価する。代替的には、情報を、割り当てられた分散型コントロールモジュールにより評価し、該分散型コントロールモジュールから、該分散型コントロールモジュールに割り当てられたセクションモジュールへと送信することができる。
【0022】
リング紡績機から巻取り機への搬送システムとして、本発明の枠内では、自動または手動の搬送システムを使用することができる。したがって、たとえばコップをペッグトレイにより、または手動で車両により、リング紡績機から巻取り機へと搬送することができる。
【0023】
上記課題は、対応するリング紡績機によっても解決される。リング紡績機は、
・分散型コントロールモジュールが、コップの形状または構造に関する情報、または形成された糸に関する情報を検出するための手段を含み、
・該検出された情報を巻取り機に集約的に伝達するためのインタフェースを含んでいる
ことを特徴とする。
【0024】
したがって、有利にはこれらの情報は、本発明によれば、直接に、個別スピンドル駆動装置により検出することができ、これは、先行技術において挙げられた実施例におけるよりも正確に、包括的にかつ適時に行われる。分散型コントロールモジュールと、上位の中央コントロール装置との間には、セクションモジュールが存在していてよく、セクションモジュールは、複数の分散型コントロールモジュールに割り当てられていて、情報を対応してさらに伝達することができる。
【0025】
本発明の別の利点を、以下の実施例において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】個別スピンドル駆動装置を備えたリング紡績機を示す概略図である。
図2】リング紡績機の通信システムを示す概略図である。
図3】巻取り機に接続されたリング紡績機を示す概略図である。
【0027】
本発明にとって重要である特徴のみが示されている。同一の特徴は、種々異なる図面においても同一の参照符号を備えている。
【0028】
発明を実施するための方法
図1は、本発明に係るリング紡績機1を概略的に示している。このリング紡績機1は、相並んで配置された複数の紡績ユニット2を有している。これらの紡績ユニット2は、リング紡績機1の長手方向xでヘッド3とベース3との間に配置されて位置している。リング紡績機1のヘッド3とベース3とは、紡績機の運転のために必要である軸受、駆動装置、制御装置等を含んでいてよい。たとえば図1において概略的に図示されている2つの紡績ユニット2においてさらにわかるように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置5の上方に配置され、粗糸6が巻き取られている粗糸ボビン4を有している。粗糸6は、粗糸ボビン4から、粗糸がドラフトされるドラフト装置5を介して走行し、これにより、次いで糸形成エレメントへと走行することができる。循環するトラベラもしくはリングトラベラは、完成した糸を、駆動されるスピンドル8上に被せ嵌められたコップ7上へとガイドする。
【0029】
図2は、リング紡績機1の通信システムを概略的に示している。リング紡績機1は、スピンドル8を駆動するために、個別スピンドル駆動装置9を有している。この個別スピンドル駆動装置9は、スピンドル8を駆動する。個別スピンドル駆動装置9として、電気的な駆動装置、たとえば電気的な同期モータ、非同期モータ、ブラシレス直流モータ等または同等のモータが使用される。各個別スピンドル駆動装置9には、分散型コントロールモジュール10が割り当てられている。
【0030】
スピンドル8、個別スピンドル駆動装置9およびコントロールモジュール10は、リング紡績機1のスピンドルレール22上に配置されている。スピンドルレール22は、単に概略的に図示されていて、スピンドルレール22上に位置する構成部材は、対応して図2ではこの構成エレメント内に図示されている。電気的な駆動装置9の接続部は、接続ケーブルを有している。これらの接続ケーブルは、スピンドルレール22上で纏められていて、スピンドルレールの一方の端部において給電部に接続されている。有利には、これらの接続部は、電気的な駆動装置9において差込コネクタにより実現されている。
【0031】
コントロールモジュール10は、個別スピンドル駆動装置9を監視し、上位の制御装置からの命令を実行するというタスクを有している。本発明の枠内では、個別スピンドル駆動装置9の複数の分散型コントロールモジュール10が纏められていることが可能である。複数の分散型コントロールモジュール10、たとえば64個のコントロールモジュール10は、上位のセクションコントロールモジュール11と通信する。セクションコントロールモジュール11のうち2つのセクションコントロールモジュール11が図2に例示的に示されている。しかし、セクションコントロールモジュール11の個数は、破線のコントロールモジュール10により示唆されているように、スピンドル8の個数に依存する。セクションコントロールモジュール11は、コントロールモジュール10からの情報を処理し、この情報をさらに伝達する。複数のセクションコントロールモジュール11は、リング紡績機1の上位の中央コントロールモジュール12と通信する。中央コントロールモジュール12は、全ての機械データを有し、この機械データを統計的に処理して可視化する中央機械制御装置である。中央コントロールモジュール12には、この目的のためにディスプレイ20が接続されている。機械データは、この箇所においてユーザによりディスプレイ20を介して読み出されてよい。これらのデータを携帯アプリケーションにさらに伝達することも可能である。
【0032】
中央コントロールモジュール12とセクションコントロールモジュール11との間には、機械データバス13が存在していて、セクションコントロールモジュール11と分散型コントロールモジュール10との間には、セクションデータバス14が存在している。セクションデータバス14は、コントロールモジュール10とセクションコントロールモジュール11との間の通信を担当する。セクションデータバス14を介して、セクションモジュール11からの命令がコントロールモジュール10に伝達され、スピンドル8の電気的な駆動装置9の運転状態または測定データが、コントロールモジュール10によりセクションコントロールモジュール11へと伝達される。
【0033】
付加的に、かつデータバス13,14とは関係なしに、デジタル式の通信網15が存在している。デジタル式の通信網15により、中央コントロールモジュール12と分散型コントロールモジュール10とが互いに通信する。通信網15を介して、時間的に重要かつ安全性にとって重要な情報が中央コントロールモジュール(装置)12からセクションコントロールモジュール11を介して(破線)コントロールモジュール10に直接伝達される。通信網15を介して同時に、電気的な駆動装置9の全ての分散型コントロールモジュール10が中央コントロールモジュール12により作動されてよく、たとえばデジタル式の通信ネットワーク15を介して中央コントロールモジュール12からたとえばスタート/ストップ信号または加速/制動ランプ(勾配)を制御するための命令を分散型コントロールモジュール10に送信することができる。
【0034】
図2は、別の命令/報知エレメント17を示している。各個別スピンドル駆動装置9には、まさに1つの命令/報知エレメント17が割り当てられている。この命令/報知エレメントは、操作エレメント17の形式でリング紡績機1のリングレール23上に配置されている。複数のコントロールモジュール16は、セクション命令バス19を介して命令/報知エレメント17に接続されていて、この命令/報知エレメント17を上位におく。機械命令バス18は、コントロールモジュール16と中央コントロールモジュール12との間の通信のために働く。コントロールモジュール10が目標値からの逸脱を突き止めると、この情報は、バスシステム14,13,18,19を介して割り当てられた報知エレメント17に送信され、報知エレメント17において表示される。したがって、オペレータは、命令(たとえばスタートまたはストップ)をリングレール23において命令エレメント17に入力する可能性を有していて、この命令は、次いでバスシステム14,13,18,19を介してコントロールモジュール10に返信される。当然ながら、コントロールモジュール10自体が、1つのアクションを実施することも可能であり、したがってたとえば糸破断の場合にスピンドルを簡単に停止させることができる。
【0035】
個別スピンドル駆動装置9の分散型コントロールモジュール10からは、電力消費に基づいて、糸破断または遅速スピンドル(不調スピンドル)を検出することができる。電流波形(Stromform)に基づいて、機械的な軸受装置の場合に、回転数、トラベラ回転数、トラベラの状態、スピンドルの運転状態、軸受状態もしくは軸受損傷、オイル状態等を検出することができる。スピンドル8が磁気軸受を備えている場合、付加的に作動している磁気軸受の電力消費を介してコップ7の重量を検出することができる。糸破断およびこれに関連する電力消費の変更時に、1つの特定の分散型コントロールモジュール10は、これをセクションコントロールモジュール11に報知することができる。しかし、セクションモジュール11は、割り当てられた全ての分散型コントロールモジュール10に相前後して問い合わせることもできる。これにより得られた情報は、次いで相前後して評価され、運転状態が検出される。
【0036】
セクションモジュール11は、上述の運転状態を検出するために、得られた情報を評価するための(計算)手段を有している。計算手段は、電力消費の二乗平均値を計算し、電流波形を変換するための手段を含んでいる。時間領域から周波数領域へと信号を変換するためには、特にフーリエ変換、ウェーブレット変換もしくは主成分として経験的モード分解を有するヒルベルト・ファン変換が使用される。フーリエ変換の枠内では、特に短時間フーリエ変換、ガボール変換、高速フーリエ変換もしくは離散フーリエ変換を離散余弦変換または離散正弦変換としての形成において使用することができる。ウェーブレット変換では、特に離散ウェーブレット変換、高速ウェーブレット変換、ウェーブレットパケット変換もしくは静的ウェーブレット変換が使用される。同様に、信号の離散した静的な特性値を使用することができ、周波数領域の信号の変換を省略することができる。特性値として、特に、期待値、絶対偏差、分散、傾斜(Schiefe)、過剰もしくは共分散のような確率変数が使用される。同様に、信号を相関することができ、特に相互相関もしくは自己相関することができる。最終的に、変換された信号と、静的な特性値との組み合わせが表示可能である。特にパターン検出の枠内で、実際の測定信号を参照信号状態と比較することが共通の意図である。基準(参照)信号は、1つまたは複数の隣り合うスピンドルの情報から形成されるか、またはメモリから読み出すことができる。このことは、特に、信号から形成され、特徴工具(Merkmalswerkzeug)に纏められる特定の特徴につき、問題となっている信号の類似性に関する情報に基づいて行われる。
【0037】
代替的な実施形態では、コントロールモジュール10が、上述の(計算)手段を有していて、これにより、運転状態を評価することができる。次いでコントロールモジュール10は、結果を、割り当てられたセクションモジュール11にさらに処理するために送信する。さらに、コントロールモジュール10は、電気的な駆動装置9の電流信号からの情報を、スピンドル8、トラベラの回転数の閉ループ制御および糸張力の閉ループ制御のために使用することができる。
【0038】
図3は、リング紡績機1および巻取り機24を概略的に示している。巻取り機24は、ペッグトレイ搬送システム26の形式の接続部と、(概略的に図示した)双方向インタフェース27とにより機械複合体を形成する。別の適した自動または手動の搬送システムも本発明の枠内において可能である。したがって、たとえばコップ7を手動で車両によりリング紡績機1から巻取り機24へと搬送することができる。巻取り機24は、搬送システム26により巻取りユニットに搬送されたコップ7を綾巻きパッケージ25へと巻き返す。巻取り機24は、制御装置28により対応して制御される。
【0039】
リング紡績機1の上述の個別スピンドル駆動装置9からコップ7の形成中に発生し、双方向インタフェース27を介して伝達される情報は、以下の1つまたは複数の点を含んでいてよい:
・コップ上の糸のメートル単位の長さ
・糸長さにわたる糸破断の回数および位置
・中間ストップ(Zwischenstopp)の回数および位置(小さな糸張力)
これらの情報は、個別スピンドル駆動装置9の分散型コントロールモジュール10により、たとえば回転数測定、ストップの回数等を介して突き止められ、中央コントロールモジュール12へと送信される。
・コップの形状および構造
この情報は、メートル単位の長さ、糸破断の回数および位置等に関する上述の情報に対して付加的に、紡績リングの位置およびコップ7に対する相対的な高さを処理する場合に、突き止めることができる。
・毛羽立ちの不規則性
・糸構造における不規則性、たとえばパールチェーン、コップ形成中の反復性のパターン等
・コア糸の製造時に、芯がきれいに被覆されていない領域を突き止めることができる。
【0040】
これらの情報を個別スピンドル駆動装置9から得るために、上記で最初に挙げた3つの情報に対して付加的に、電力消費のパターンと、その結果生じるトルク消費が考慮される。次いでコップは、識別手段、たとえばRFIDタグにより直接にマークを付けられるか、またはペッグトレイ搬送システム26を介した識別が行われるので、巻取り機24は、獲得した情報をそれぞれのコップ7に割り当てることができる。各個別スピンドル駆動装置9は、コントロールモジュール10を介して、形成された各コップ7のための情報を得る。情報の評価および計算が、図2に関連して挙げた情報と同様に、提供可能な計算容量に応じて、直接に分散型コントロールモジュール10において、またはセクションコントロールモジュール11において行われる。情報は、セクションコントロールモジュール11を介して中央コントロールモジュール12に送信される。中央コントロールモジュール12は、この情報を、集約的に双方向インタフェース27を介して処理のために巻取り機24にさらに伝達する。
【0041】
したがって、巻取り機24をコップ7の巻返し時に制御装置28により、より意図的かつより効果的に運転することができる。
【0042】
コップ7の巻返し時の速度プロフィール(経過)は、対応して個別スピンドル駆動装置9の情報に適合させることができる:
・コップ7の個別の形状が伝達され、巻返し速度は、コップ7の形状を考慮することができる(たとえば小さなコップ直径では緩慢に、大きなコップ直径では高速に)。このことは、巻取りプロセスにおける糸破断を阻止し、ひいては巻取りプロセスにおけるより高い効率をもたらす。
・コップ7の個別の糸張力経過が伝達され、巻返し速度は、コップ7上の糸張力を考慮することができる(たとえば中間ストップ時には、低い糸張力が発生することになる)。これは、同時にコップ7の複数の箇所が引き出されて、不良コップ7の廃棄をもたらすことを阻止する。
【0043】
巻取りプロセスにおいて、特に、コップ7が完全に繰り出されたか否かを突き止めることができる。このことは、巻取り機24のペッグトレイ搬送システム26上のコップの、リング紡績機1への戻し搬送時の効率的な輸送を可能にする。コップが完全に繰り出されたか否かのコップ7の別個のコントロールは省略される。なぜならば、完全に繰り出されたコップ7のみが戻されるからである。完全に繰り出されていないコップ7は全て、巻取り機24の別個のラインに新たに供給される。
【0044】
既知の異常箇所が伝達されるので、最初に検出する必要はない。これにより、綾巻きパッケージ25への糸片を保持し、綾巻きパッケージ25上での糸探索を省略することができる:
・個別の異常箇所を直接に切り離すことができる。このことは、巻取りプロセスにおけるより高い効率をもたらす。
・近傍で連続している異常箇所(たとえばパールチェーン)を、全体として切り離すことができる。このことは、巻取りプロセスにおけるより高い効率をもたらす。
・芯が完全にきれいに被覆されていない、または全く被覆されていないコア糸領域を全体として切り離すことができる。このことは、巻取りプロセスにおけるより高い効率をもたらす。
【0045】
異常箇所に意図的に接近することができ、巻取りプロセスにおける糸破断を改善されたプロセスコントロールにより阻止することができるので、糸を接線方向でコップから繰り出すことができる。このことは、巻返し時に「バルーンのない」糸走行を可能にし、したがって(特に毛羽立ち時の)糸における品質欠陥を排除する。
【符号の説明】
【0046】
1 リング紡績機
2 紡績ユニット
リング紡績機1のヘッド
リング紡績機1のベース
4 粗糸ボビン
5 ドラフト装置
6 粗糸
7 コップ
8 スピンドル
9 スピンドル8の個別スピンドル駆動装置
10 個別スピンドル駆動装置9の分散型コントロールモジュール
11 セクションコントロールモジュール
12 中央コントロールモジュール
13 機械データバス
14 セクションデータバス
15 デジタル通信網
16 命令/報知エレメント17用のコントロールモジュール
17 命令/報知エレメント、操作ユニット
18 機械命令バス
19 セクション命令バス
20 ディスプレイ
22 スピンドルレール
23 リングレール
24 巻取り機
25 綾巻きパッケージ
26 ペッグトレイ搬送システム
27 双方向インタフェース
28 巻取り機8の制御装置
x 長手方向
図1
図2
図3