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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20250627BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20250627BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250627BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20250627BHJP
【FI】
B60K11/04 E
B60L9/18 J
B60L50/60
B60K1/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022014189
(22)【出願日】2022-02-01
(65)【公開番号】P2023112412
(43)【公開日】2023-08-14
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】青木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】丹波 大樹
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-165177(JP,A)
【文献】特開2017-226283(JP,A)
【文献】特開2021-000957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361990(US,A1)
【文献】特開2006-141153(JP,A)
【文献】特開2003-034130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-16/00
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-15/42
B60L 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に設けられたバッテリと、
前記バッテリの電力が供給されるインバータと、
前記インバータからの電力により駆動されるモータと、
前記モータにより駆動される走行装置と、
前記バッテリを収容し、外部の空気が導入される導入部が前部に設けられたカバー部材と、
前記カバー部材の内部における前記導入部と前記バッテリの前部との間に設けられ、前記モータを冷却する冷却水を生成するラジエータと、
前記カバー部材の内部における前記導入部と前記バッテリの前部との間に設けられ、前記導入部から前記カバー部材の内部に導入された空気が、前記ラジエータに供給されるようにする冷却ファンとが備えられ、
前記ラジエータから前記バッテリへの空気の流れを遮蔽可能な遮蔽部材が、前記カバー部材の内部における前記ラジエータ及び前記冷却ファンと前記バッテリの前部との間に設けられ、
前記カバー部材の横部における前記遮蔽部材に対向する部分に、通気可能な横通気部が設けられている電動作業車。
【請求項2】
前記ラジエータは、前記モータを冷却する冷却水と、前記インバータを冷却する冷却水とを生成する請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記ラジエータから前記バッテリへの空気の流れを遮蔽可能な閉状態と、前記ラジエータから前記バッテリへの空気の流れを許容可能な開状態とに、操作可能である請求項1又は2に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより走行装置が駆動されるように構成された電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動作業車では、特許文献1に開示されているように、機体の前部に設けられたバッテリと、バッテリの電力が供給されるインバータとが設けられ、インバータからの電力によりモータが駆動されるように構成されたものがある。
特許文献1では、バッテリがカバー部材に収容されており、モータを冷却する冷却水を生成するラジエータと冷却ファンとが、カバー部材の内部におけるバッテリの前方の領域に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動作業車では、機体の前進に伴って、外部の空気が、主にカバー部材の前部からカバー部材の内部に導入され、冷却ファンの作用によりラジエータを通過し、高温の空気が冷却ファンから後方のバッテリに流れる。
バッテリでは、正常に電力を供給可能な上限温度が設定されることが多いので、例えば夏期での作業の場合、ラジエータからの高温の空気がバッテリに向けて流れると、バッテリの温度が上限温度に達する可能性がある。
【0005】
本発明は、電動作業車において、ラジエータ及び冷却ファンがバッテリの前方に設けられた場合、バッテリの正常な電力供給にとって不利な状況を少なくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動作業車は、機体の前部に設けられたバッテリと、前記バッテリの電力が供給されるインバータと、前記インバータからの電力により駆動されるモータと、前記モータにより駆動される走行装置と、前記バッテリを収容し、外部の空気が導入される導入部が前部に設けられたカバー部材と、前記カバー部材の内部における前記導入部と前記バッテリの前部との間に設けられ、前記モータを冷却する冷却水を生成するラジエータと、前記カバー部材の内部における前記導入部と前記バッテリの前部との間に設けられ、前記導入部から前記カバー部材の内部に導入された空気が、前記ラジエータに供給されるようにする冷却ファンとが備えられ、前記ラジエータから前記バッテリへの空気の流れを遮蔽可能な遮蔽部材が、前記カバー部材の内部における前記ラジエータ及び前記冷却ファンと前記バッテリの前部との間に設けられ、前記カバー部材の横部における前記遮蔽部材に対向する部分に、通気可能な横通気部が設けられている。
【0007】
本発明によると、機体の前進に伴って外部の空気がカバー部材の導入部からカバー部材の内部に導入された場合、カバー部材の内部に導入された空気は、冷却ファンの作用によりラジエータを通過しラジエータから後方に流れる。この場合に、ラジエータからの空気は、遮蔽部材により遮られるのであり、ラジエータの後方のバッテリには流れ難い。
これにより、ラジエータからの高温の空気がバッテリに向けて流れることを少なくすることができ、バッテリの正常な電力供給にとって不利な状況を少なくすることができて、バッテリの耐久性の向上を図ることができる。
カバー部材の内部に導入された空気が、冷却ファンの作用によりラジエータを通過して遮蔽部材による遮られると、空気は遮蔽部材に沿って左右方向に流れることがある。
本発明によると、カバー部材の横部における遮蔽部材に対向する部分に、通気可能な横通気部が設けられているので、ラジエータを通過し遮蔽部材に沿って左右方向に流れる空気は、カバー部材の横通気部を通って外部に出て行き易い。
これにより、ラジエータからの高温の空気がバッテリに向けて流れることを少なくすることができ、バッテリの耐久性の向上の面で有利である。
【0008】
本発明において、前記ラジエータは、前記モータを冷却する冷却水と、前記インバータを冷却する冷却水とを生成すると好適である。
【0009】
電動作業車では、ラジエータによる冷却水によってモータとインバータとが冷却されるように、ラジエータが十分な容量に構成されることがある。
本発明によると、ラジエータが十分な容量に構成されても、ラジエータからの高温の空気がバッテリに向けて流れることを少なくすることができるので、バッテリの耐久性の向上の面で有利である。
【0010】
【0011】
【0012】
本発明において、前記遮蔽部材は、前記ラジエータから前記バッテリへの空気の流れを遮蔽可能な閉状態と、前記ラジエータから前記バッテリへの空気の流れを許容可能な開状態とに、操作可能であると好適である。
【0013】
バッテリでは、例えば夏期での作業の場合にバッテリの温度が上限温度に達する可能性があるのに対して、例えば冬期での作業の場合にバッテリの温度が低下すると、バッテリの電力供給が十分に行われない可能性があり、バッテリの温度が低温になると、バッテリへの充電効率が低下することがある。
【0014】
本発明によると、遮蔽部材が閉状態と開状態とに操作可能に構成されている。
例えば冬期での作業において、作業を中断して電動作業車を数時間だけ放置するような場合、遮蔽部材を開状態に操作し、冷却ファンを作動させておけばよい。これにより、ラジエータからの高温の空気が遮蔽部材を通ってバッテリに向けて流れ、バッテリの温度低下を抑えることができるので、作業を再開した際にバッテリの電力供給が支障なく行われる。
【0015】
例えば冬期においてバッテリへの充電を行う場合、充電を行う前に、遮蔽部材を開状態に操作して、バッテリに残る電力によりモータを空転させ、冷却ファンを作動させればよい。これにより、ラジエータからの高温の空気が遮蔽部材を通ってバッテリに向けて流れて、バッテリの温度を上げることができるので、この後にバッテリへの充電を行う場合、バッテリへの充電が支障なく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】インバータ等の配置を示す左側面図である。
図3】動力伝達の流れを示す図である。
図4】カバー部材の付近の左側面図である。
図5】カバー部材の内部におけるバッテリ及び遮蔽装置の付近の左側面図である。
図6】カバー部材の内部におけるバッテリ及び遮蔽装置の付近の左側面図である。
図7】カバー部材の内部におけるバッテリ及び遮蔽装置の付近の平面図である。
図8】カバー部材の内部におけるバッテリ及びラジエータの付近の正面図である。
図9】カバー部材の内部におけるバッテリ及び遮蔽装置の付近の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0018】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本実施形態のトラクタについて説明する。図1に示すように、トラクタは、左右の前車輪10、左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0019】
また、トラクタは、機体フレーム2及び運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10及び左右の後車輪11に支持されている。
【0020】
カバー部材12は、機体前部に配置されている。そして、運転部3は、カバー部材12の後方に設けられている。言い換えれば、カバー部材12は、運転部3の前方に配置されている。
【0021】
運転部3は、保護フレーム30、運転座席31、ステアリングホイール32を有している。オペレータは、運転座席31に着座可能である。これにより、オペレータは、運転部3に搭乗可能である。ステアリングホイール32の操作によって、左右の前車輪10は操向操作される。オペレータは、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0022】
トラクタは、走行用バッテリ4を備えている。また、カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りに揺動可能に構成されている。これにより、カバー部材12は、開閉可能に構成されている。カバー部材12が閉状態であるとき、走行用バッテリ4は、カバー部材12に覆われている。
【0023】
図2に示すように、トラクタは、インバータ14及びモータMを備えている。走行用バッテリ4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、走行用バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換してモータMへ供給する。そして、モータMは、インバータ14から供給される交流電力により駆動する。
【0024】
図2及び図3に示すように、トラクタは、静油圧式無段変速機15及びトランスミッション16を備えている。図3に示すように、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15a及び油圧モータ15bを有している。
【0025】
油圧ポンプ15aは、モータMからの回転動力により駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することにより、油圧モータ15bから回転動力が出力される。尚、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が変速されるように構成されている。また、静油圧式無段変速機15は、変速比を無段階に変更可能に構成されている。
【0026】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11へ分配される。これにより、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動する。
【0027】
また、図2及び図3に示すように、トラクタは、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を備えている。モータMから出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18が回転する。
【0028】
ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18に作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18の回転動力により、作業装置が駆動することとなる。例えば、図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力により、草刈装置19が駆動する。
【0029】
〔カバー部材の構成〕
図1及び図2に示すように、右及び左の機体フレーム2とトランスミッション16とが連結されることによって、機体フレーム2とトランスミッション16とにより、トラクタの骨格としての機体が構成される。走行用バッテリ4(以下、バッテリ4と称する)は、機体の前部に搭載されており、閉状態のカバー部材12にバッテリ4が収容されている。
【0030】
図4に示すように、カバー部材12は、前部12a、右及び左の横部12b、上部12cが設けられて構成されている。カバー部材12の前部12aに、前照灯20及び通気可能な格子状のフロントグリル21(導入部に相当)が設けられ、カバー部材12の右及び左の横部12bに、通気可能な格子状のサイドグリル22(横通気部に相当),23が設けられている。機体の前進に伴って外部の空気が、主にフロントグリル21を通ってカバー部材12の内部に導入される。
【0031】
〔バッテリに関する構成〕
図7,8,9に示すように、バッテリ4の内部に、複数のバッテリモジュール(図示せず)が連結された複数のスタック(図示せず)が収容されており、バッテリ4の前部に、接続部4a,4b,4c,4dが設けられている。
【0032】
バッテリ4の前部の左部に、外部電源(図示せず)の充電器(図示せず)が接続される接続部13が設けられており、バッテリ4の接続部4aと接続部13とに亘って、ハーネス24が接続されている。外部電源の電力が、接続部13及びハーネス24を介して、バッテリ4の接続部4aに供給され、バッテリ4への充電が行われる。
バッテリ4の接続部4bとインバータ14とに亘ってハーネス25が接続されており、バッテリ4の接続部4bからインバータ14に電力が供給される。
【0033】
図7及び図8に示すように、カバー部材12の内部におけるフロントグリル21とバッテリ4の前部との間に、DC-DCコンバータ5及びバッテリ6が、上下方向及び前後方向に沿って設けられている。
【0034】
バッテリ4の接続部4cとDC-DCコンバータ5とに亘ってハーネス26(図9参照)が接続されており、バッテリ4の電力がDC-DCコンバータ5に供給され、DC-DCコンバータ5により12Vに減圧された電力がバッテリ6に供給される。
【0035】
バッテリ4の接続部4dとバッテリ6とに亘ってハーネス27(図9参照)が接続されており、バッテリ6の12Vの電力がバッテリ4に供給される。トラクタに装備された各種の機器(図示せず)が、バッテリ4の12Vの電力により作動する。
【0036】
〔ラジエータ及びラジエータの付近の構成〕
図7及び図8に示すように、カバー部材12の内部におけるフロントグリル21とバッテリ4の前部との間で、DC-DCコンバータ5及びバッテリ6に対して左側の部分に、ラジエータ1が上下方向及び左右方向に沿って設けられている。
【0037】
図5図8に示すように、カバー部材12の内部におけるフロントグリル21とバッテリ4の前部との間で、ラジエータ1の後方に、ファン装置7が上下方向及び左右方向に沿って設けられている。ラジエータ1の上部の左部とバッテリ4の前部とに亘ってステー28が連結されており、前述の接続部13がステー28に支持されている。
【0038】
ファン装置7に、前後方向に沿った軸芯周りに回転可能な冷却ファン7aと、冷却ファン7aを回転駆動する電動モータ(図示せず)と、冷却ファン7a及び電動モータを覆うファンシュラウド7bとが設けられており、電動モータはバッテリ4の12Vの電力により駆動される。ファン装置7のファンシュラウド7bがラジエータ1に連結されて、ファン装置7(冷却ファン7a)がラジエータ1に隣接して設けられている。
【0039】
図5,6,7に示すように、カバー部材12の内部におけるフロントグリル21とバッテリ4の前部との間で、ファン装置7とバッテリ4の前部との間の部分に、オイルクーラー8が上下方向及び左右方向に沿って設けられている。
【0040】
平面視でチャンネル状の支持部材38がラジエータ1の後部の右部及び左部に亘って左右方向に沿って連結されており、オイルクーラー8の上部が支持部材38に連結されている。オイルクーラー8は、静油圧式無段変速機15の作動油や、他の油圧機器(図示せず)の作動油を冷却する為のものである。
【0041】
〔ラジエータによる冷却の構成〕
図5図8に示すように、右及び左の機体フレーム2の間に、ウォーターポンプ9が設けられており、ウォーターポンプ9はバッテリ4の12Vの電力により駆動される。ラジエータ1の下部とウォーターポンプ9とに亘ってパイプ29が接続され、ウォーターポンプ9とインバータ14とに亘ってパイプ33が接続されている。
【0042】
インバータ14とモータMとに亘ってパイプ34が接続され、モータMとDC-DCコンバータ5とに亘ってパイプ35が接続されている。DC-DCコンバータ5とラジエータ1の上部とに亘ってパイプ36が接続されており、パイプ36に給水口37が設けられている。
【0043】
ウォーターポンプ9が駆動されることにより、ラジエータ1で生成された冷却水が、パイプ29、ウォーターポンプ9及びパイプ33を介してインバータ14に供給される。インバータ14の内部を通過した冷却水は、パイプ34を介してモータMに供給され、モータMの内部を通過した冷却水は、パイプ35を介してDC-DCコンバータ5に供給される。
【0044】
DC-DCコンバータ5の内部を通過した冷却水は、パイプ36を介してラジエータ1に戻るのであり、ラジエータ1で生成された冷却水により、モータM、インバータ14及びDC-DCコンバータ5が冷却される。
これにより、ラジエータ1は、モータMを冷却する冷却水と、インバータ14を冷却する冷却水と、DC-DCコンバータ5を冷却する冷却水とを生成する。
【0045】
〔遮蔽部材に関する構成〕
図5,6,7,9に示すように、カバー部材12の内部におけるフロントグリル21とバッテリ4の前部との間で、オイルクーラー8とバッテリ4の前部との間の部分に、遮蔽装置39が上下方向及び左右方向に沿って設けられている。
【0046】
遮蔽装置39に、枠部材40、遮蔽部材41及び操作レバー42等が設けられている。遮蔽装置39は、ラジエータ1と略同じ高さを有しており、ファン装置7及びオイルクーラー8よりも高いものとなっている。遮蔽装置39は、ラジエータ1、ファン装置7及びオイルクーラー8と略同じ横幅を有している。
【0047】
遮蔽装置39において、枠部材40は、正面視で長方形状に形成されており、枠部材40の下部が機体フレーム2に連結されている。支持ステー43が、支持部材38に連結されて、支持部材38から斜め後方上方に向けて延出されており、枠部材40の上部が支持ステー43に連結されている。
【0048】
遮蔽装置39において、遮蔽部材41は、正面視で横長の細長い平板状に形成されている。多数の遮蔽部材41が上下方向に沿って並ぶように配置され、遮蔽部材41の各々の上部が、左右方向に沿った軸芯周りに揺動可能に枠部材40に取り付けられている。遮蔽部材41の各々は、下方に向いた閉状態と後方に向いた開状態とに揺動可能である。
【0049】
遮蔽装置39において、操作レバー42が、枠部材40の上部に設けられている。操作レバー42が操作されることにより、全ての遮蔽部材41が閉状態に操作され(図5参照)、全ての遮蔽部材41が開状態に操作される(図6参照)。
【0050】
以上の構成により、遮蔽装置39(遮蔽部材41)が、カバー部材12の内部におけるラジエータ1及びファン装置7(冷却ファン7a)とバッテリ4の前部との間に設けられている。カバー部材12の右及び左の横部12bにおける遮蔽装置39(遮蔽部材41)に対向する部分に、右及び左のサイドグリル22が設けられている。
【0051】
〔ファン装置の作動状態〕
図5図8に示すように、機体の前進に伴って外部の空気が、主にフロントグリル21を通ってカバー部材12の内部に導入される。ファン装置7の冷却ファン7aが回転駆動されることにより、カバー部材12の内部に導入された空気は、ラジエータ1を通過するのであり、ラジエータ1を通過した空気は、ファン装置7(冷却ファン7a)からオイルクーラー8を通過して後方に流れる。
【0052】
図5及び図9に示すように、遮蔽装置39において、作業者により操作レバー42が操作されて、全ての遮蔽部材41が閉状態に操作されていると、遮蔽部材41の各々において、上側の遮蔽部材41の下部が下側の遮蔽部材41の上部に接触している。
【0053】
これにより、ファン装置7(冷却ファン7a)からオイルクーラー8を通過して後方に流れた空気は、遮蔽装置39(遮蔽部材41)を通過できないのであり、ラジエータ1からバッテリ4への空気の流れが遮られる。
遮蔽装置39(遮蔽部材41)により遮られた空気は、遮蔽装置39(遮蔽部材41)に沿って左右方向に流れるのであり、主に右及び左のサイドグリル22を通ってカバー部材12の外部に出て行く。
【0054】
図6に示すように、遮蔽装置39において、作業者により操作レバー42が操作され、全ての遮蔽部材41が開状態に操作されていると、遮蔽部材41の各々において、上側の遮蔽部材41の下部が下側の遮蔽部材41の上部から後方上方に離れている。
【0055】
これにより、ファン装置7(冷却ファン7a)からオイルクーラー8を通過して後方に流れた空気は、遮蔽装置39(遮蔽部材41)を通過してバッテリ4に流れるのであり、ラジエータ1からバッテリ4への空気の流れが許容される。
【0056】
〔発明の実施の第1別形態〕
遮蔽装置39において、操作レバー42が廃止され、横長の細長い平板状の多数の遮蔽部材41に代えて、枠部材40と同じ大きさの1枚の平板状の遮蔽部材41が採用されてもよい。
この構成によると、遮蔽部材41が枠部材40に取り付けられることにより、遮蔽部材41の閉状態となるのであり、遮蔽部材41が枠部材40から取り外されることにより、遮蔽部材41の開状態となる。
【0057】
〔発明の実施の第2別形態〕
遮蔽装置39(遮蔽部材41)が、ラジエータ1よりも高いものに構成されてもよく、カバー部材12の上部12cに近い高さを有するように構成されてもよい。
遮蔽装置39(遮蔽部材41)が、ラジエータ1よりも大きな横幅を有するように構成されてもよく、カバー部材12の右及び左の横部12bに亘る横幅を有するように構成されてもよい。
【0058】
〔発明の実施の第3別形態〕
遮蔽装置39において、操作レバー42が廃止されて、以下に説明するように構成されてもよい。
【0059】
遮蔽装置39において、遮蔽部材41を閉状態及び開状態に操作する電動モータ(図示せず)が設けられる。
バッテリ4の温度を検出するバッテリ温度センサー(図示せず)及び外気温を検出する気温センサー(図示せず)が設けられ、バッテリ温度センサー及び気温センサーの検出値に基づいて、電動モータにより遮蔽部材41が自動的に閉状態及び開状態に操作される。
【0060】
〔発明の実施の第4別形態〕
ファン装置7(冷却ファン7a)が、ラジエータ1に対して前方に設けられてもよい。
前車輪10及び後車輪11が、本発明の走行装置である。前車輪10及び後車輪11に代えて、右及び左のクローラ走行装置(図示せず)が、走行装置として機体に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、トラクタばかりではなく、電動カートや運搬車等の他の電動作業車にも適用でき、オペレータが搭乗しない自律走行型や無線操縦型の電動作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 ラジエータ
4 バッテリ
7a 冷却ファン
10 前車輪(走行装置)
11 後車輪(走行装置)
12 カバー部材
12a 前部
12b 横部
14 インバータ
21 フロントグリル(導入部)
22 サイドグリル(横通気部)
41 遮蔽部材
M モータ




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9