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特許7702985非天然アミノ酸を含むペプチドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】非天然アミノ酸を含むペプチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/02 20060101AFI20250627BHJP
   C07K 14/245 20060101ALI20250627BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250627BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250627BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250627BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250627BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20250627BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20250627BHJP
   C40B 30/04 20060101ALI20250627BHJP
   C40B 50/06 20060101ALN20250627BHJP
【FI】
C07K1/02 ZNA
C07K14/245
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/31
C12P21/02 C
C40B30/04
C40B50/06
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023068770
(22)【出願日】2023-04-19
(62)【分割の表示】P 2021564050の分割
【原出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2023099039
(43)【公開日】2023-07-11
【審査請求日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019224297
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】吉井 早貴子
(72)【発明者】
【氏名】下村 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石野 聡
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】UniprotKB-A0A377B8T0,2018年11月07日,UniProt [online], [retrieved on 2021.01.14], Retrieved from the Internet : <URL: https://www.uniprot.org/uniprot/A0A377B8T0>, Accession No. A0A377B8T0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/02
C07K 14/245
C12N 15/31
C12P 21/02
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C40B 30/04
C40B 50/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドの製造方法であって、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系中で、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳する工程を含み、前記改変されたL31タンパク質が、以下の(1)から(3)に記載のタンパク質からなる群:
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6以上45以下のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質、
(2)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が挿入、置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
(3)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
より選択され、
前記(2)および前記(3)に記載のタンパク質を含むリボソームが、配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドの翻訳活性が大きい、前記方法。
【請求項2】
前記翻訳系における、全リボソームに対する前記改変されたL31タンパク質を含むリボソームの割合が50%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドを環化する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドが、その開始アミノ酸の位置に非天然アミノ酸を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下の(a)~(c)に記載の工程:
(a)請求項1~4のいずれか一項に記載された方法によってペプチドを製造する工程、
(b)前記ペプチドまたは前記ペプチドを含むライブラリに標的物質を接触させる工程、および
(c)前記標的物質に結合するペプチドを選択する工程
を含む、標的物質に結合するペプチドのスクリーニング方法。
【請求項6】
以下の(1)から(3)に記載のタンパク質(但し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から8アミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質と、MKKDIHPKYEEITASCSCGNVMKIRSTVGHDLNLDVCSKVPPVLHWQTAで表されるアミノ酸配列を有するタンパク質を除く。):
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から9以上45以下のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質、
(2)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において、1~9のアミノ酸が挿入、置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
(3)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される、改変されたL31タンパク質であって、
前記(1)、前記(2)および前記(3)に記載のタンパク質を含むリボソームが、配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドの翻訳活性が大きい、改変されたL31タンパク質。
【請求項7】
以下の(1)から(3)に記載のタンパク質(但し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から8アミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質と、MKKDIHPKYEEITASCSCGNVMKIRSTVGHDLNLDVCSKVPPVLHWQTAで表されるアミノ酸配列を有するタンパク質を除く。):
(1)配列番号:2および42~48からなる群より選択されるいずれか1つで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(2)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において、1~9のアミノ酸が挿入、置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
(3)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される、改変されたL31タンパク質であって、
前記(2)および前記(3)に記載のタンパク質を含むリボソームが、配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドの翻訳活性が大きい、改変されたL31タンパク質。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の改変されたL31タンパク質をコードする単離された核酸。
【請求項9】
請求項に記載の核酸を含むベクターまたは細胞。
【請求項10】
以下の(a)~(c)に記載の工程:
(a)請求項に記載の細胞を培養する工程、
(b)前記細胞の培養物から溶解液を生成する工程、および
(c)前記溶解液からリボソームを精製する工程
を含む、改変されたL31タンパク質を含むリボソームの製造方法。
【請求項11】
請求項6又は7に記載の改変されたL31タンパク質を含むリボソーム。
【請求項12】
請求項11に記載のリボソームを含む組成物。
【請求項13】
改変されたL31タンパク質を含む、非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性が大きい無細胞翻訳のための合成系であって、
改変されたL31タンパク質が、以下の(1)から(3)に記載のタンパク質:
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6以上45以下のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質、
(2)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において、1~9のアミノ酸が挿入、置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
(3)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択され、
前記(2)および前記(3)に記載のタンパク質を含むリボソームが、配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドの翻訳活性が大きい、前記合成系。
【請求項14】
以下の工程:
(a)請求項10に記載の方法によりリボソームを製造する工程、および
(b)前記リボソームを、非天然アミノ酸がアシル化された開始tRNAと混合する工程
を含む、無細胞翻訳系の製造方法。
【請求項15】
以下の工程:
(a)マグネシウムイオン濃度が5mM以下の条件下において、大腸菌を破砕して溶解液を生成する工程、および
(b)前記溶解液からリボソームを精製する工程
を含む、無細胞翻訳系の製造方法。
【請求項16】
以下の工程:
(a)マグネシウムイオン濃度が5mM以下の条件下において、大腸菌を破砕して溶解液を生成する工程、
(b)前記溶解液からリボソームを精製する工程、および
(c)前記リボソームを、非天然アミノ酸がアシル化された開始tRNAと混合する工程
を含む、無細胞翻訳系の製造方法。
【請求項17】
前記無細胞翻訳系が2~8mMのマグネシウムイオンをさらに含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記無細胞翻訳系が再構成無細胞翻訳系である、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
以下の工程:
(i)請求項14~18のいずれか一項に記載の方法により無細胞翻訳系を製造する工程、および
(ii)前記無細胞翻訳系を用いて、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳する工程
を含む、ペプチドの製造方法。
【請求項20】
前記ペプチドが、その開始アミノ酸の位置に非天然アミノ酸を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記翻訳が、イニシエーションサプレッションにより行われる、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
以下の工程:
(I)請求項19~21のいずれか一項に記載された方法によってペプチドを製造する工程、
(II)前記ペプチドまたは前記ペプチドを含むライブラリに標的物質を接触させる工程、および
(III)前記標的物質に結合するペプチドを選択する工程
を含む、標的物質に結合するペプチドのスクリーニング方法。
【請求項23】
前記ペプチドまたは前記ペプチドを含むライブラリが、前記ペプチドを含むライブラリである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ライブラリがディスプレイライブラリである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ライブラリがmRNAディスプレイライブラリである、請求項24記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非天然アミノ酸を含むペプチドまたは当該ペプチドを含むライブラリの製造方法に関する。また本発明は、当該方法において使用するための改変されたL31タンパク質等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非天然アミノ酸を複数含む多様なペプチドのライブラリから医薬品の候補物質を選択する創薬方法が考えられている。なかでも無細胞翻訳系を利用した非天然アミノ酸を含有するペプチドのmRNAディスプレイライブラリなどは、その多様性、スクリーニングの簡便性の点から期待が集まっている。翻訳系を利用した非天然アミノ酸を含むペプチドの合成法はいくつか報告されている(非特許文献1、2)。しかしながら、これらの文献に記載された方法では翻訳合成の効率が低い。
【0003】
生体内では、ペプチドは、mRNAが有する塩基配列情報に即してアミノ酸が重合されることによって合成される。このペプチドの合成過程は翻訳と呼ばれる。翻訳の過程で中心的な役割を果たすのがリボソームである。mRNAディスプレイライブラリの調製に用いられる無細胞翻訳系には、通常、精製したリボソームが添加されている。
【0004】
リボソームを構成するタンパク質として、L31タンパク質が知られている。L31タンパク質はinter subunit Bridge B1bを形成しているタンパク質で、30Sと50Sとの会合状態(70S)を安定化する役割がある(非特許文献3)。
【0005】
L31タンパク質は、その精製中にプロテアーゼ7によって分解を受けることが知られている。大腸菌野生型株から調製されたリボソーム、プロテアーゼ7を欠損したprotease7 KO株から調製されたリボソーム、およびL31タンパク質を欠損したL31KO株から調製したリボソームについてこれらの活性を比較すると、プロテアーゼ7欠損株から調製したリボソームは、大腸菌野生型株から調製したリボソームやL31欠損株から調製したリボソームと比較して、その活性が大きいことが報告されている(非特許文献3)。またL31欠損株から調製されたリボソームは、in vivoにおいてinitiation rateが38%下がること、in vitroにおいて70Sの形成速度が遅くなることも報告されている(非特許文献4)。さらに、L31欠損株ではFidelityが下がることも報告されている(非特許文献4)。このように、天然アミノ酸からなるペプチドの翻訳においては、プロテアーゼ7による分解を受けていないL31タンパク質を含むリボソームは、切断されたL31タンパク質を含むリボソームやL31タンパク質を含まないリボソームよりもその活性が大きいことが知られていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Maini, R., Umemoto, S. &Suga, H. Ribosome-mediated synthesis of natural product-like peptides viacell-free translation. Current opinion in chemical biology 34, 44-52,doi:10.1016/j.cbpa.2016.06.006 (2016).
【文献】Hartman, M. C., Josephson, K.,Lin, C. W. & Szostak, J. W. An expanded set of amino acid analogs for theribosomal translation of unnatural peptides. PloS one 2, e972,doi:10.1371/journal.pone.0000972 (2007).
【文献】Ueta M, Wada C, Bessho Y, MaedaM, Wada A. Genes Cells. 2017 May;22(5):452-471. doi: 10.1111/gtc.12488. Epub2017 Apr 10. Genes Cells. 2017
【文献】Lilleorg S, Reier K, Remme J,Liiv A. J Mol Biol. 2017 Apr 7;429(7):1067-1080. doi: 10.1016/j.jmb.2017.02.015.Epub 2017 Feb 24. J Mol Biol. 2017
【文献】Chadani Y, Niwa T, Izumi T,Sugata N, Nagao A, Suzuki T, Chiba S, Ito K, Taguchi H. Mol Cell. 2017 Nov2;68(3):528-539.e5. doi: 10.1016/j.molcel.2017.10.020. Mol Cell. 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、一局面において、非天然アミノ酸を含むペプチドの効率的な製造方法、並びに当該方法において使用するための改変されたL31タンパク質、およびこれを含むリボソームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、翻訳系を利用して非天然アミノ酸を含むペプチドを製造するにあたり、プロテアーゼ7による分解を受けていないL31タンパク質を含むリボソームとプロテアーゼ7により切断されたL31タンパク質を含むリボソームとの間で、mRNAの翻訳効率に違いが生じるか検討を試みた。その結果本発明者らは、イニシエーションサプレッション(Initiation Suppression:iSP)法により非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳するときに、プロテアーゼ7により切断されたL31タンパク質を含むリボソームを使用すると、プロテアーゼ7による分解を受けていないL31タンパク質を含むリボソームを使用する場合と比較して、目的産物の翻訳量が増加することを見出した。また本発明者らは、プロテアーゼ7により切断されたL31タンパク質を含むリボソームを使用することにより、副生成物の相対的な量も減少させることが可能なことを見出した。これらの結果は、非天然アミノ酸を含まないペプチドの翻訳において従来知られていた事実とは逆の結果であった。さらに本発明者らは、翻訳系のマグネシウムイオン濃度を変えてペプチドの合成を行ったところ、マグネシウムイオン濃度が一定の濃度範囲にある場合に翻訳量が多く、かつ副生成物の割合も低いことを明らかにした。
【0009】
本発明はこのような知見に基づくものであり、具体的には以下〔1〕~〔37〕に関する。
〔1〕ペプチドの製造方法であって、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系中で、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳する工程を含み、前記改変されたL31タンパク質を含むリボソームは、配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームと比較して、前記非天然アミノ酸を含むペプチドの翻訳活性が大きい、前記方法。
〔2〕ペプチドの製造方法であって、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系中で、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳する工程を含み、前記改変されたL31タンパク質が、以下の(1)から(3)に記載のタンパク質からなる群より選択される、前記方法:
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質、
(2)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が挿入、置換、 欠失および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
(3)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
〔3〕ペプチドの製造方法であって、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系中で、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳する工程を含み、前記改変されたL31タンパク質が、以下の(1)から(3)に記載のタンパク質からなる群より選択される、前記方法:
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質、
(2)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が挿入、置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
(3)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質。
〔4〕前記(1)に記載の、C末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列が、C末端から8以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列である、〔2〕または〔3〕に記載の方法。
〔5〕前記(1)に記載の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から8以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列が、配列番号:2および42~48からなる群より選択されるアミノ酸配列である、〔4〕に記載の方法。
〔6〕前記(2)および前記(3)に記載のタンパク質を含むリボソームが、配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドの翻訳活性が大きい、〔2〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕前記(1)に記載のタンパク質を含むリボソームが、配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドの翻訳活性が大きい、〔2〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕前記C末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列が、C末端から6~50個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列である、〔2〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕前記C末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列が、C末端から8~50個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列である、〔2〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕前記C末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列が、C末端から6~43個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列である、〔2〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕前記C末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列が、C末端から8~43個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列である、〔2〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕前記改変されたL31タンパク質が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から8以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕前記改変されたL31タンパク質が、配列番号:2および42~48からなる群より選択されるいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質である、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕前記翻訳系における、全リボソームに対する前記改変されたL31タンパク質を含むリボソームの割合が50%以上である、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の方法。
〔15〕前記翻訳系が2~8mMのマグネシウムイオンをさらに含む、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕前記ペプチドを環化する工程をさらに含む、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の方法。
〔17〕前記ペプチドが、その開始アミノ酸の位置に非天然アミノ酸を含む、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕前記翻訳が、イニシエーションサプレッションにより行われる、〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕前記翻訳系に含まれる開始tRNAに非天然アミノ酸がアシル化されている、〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕前記翻訳活性が、全翻訳産物に対するアミノ酸の読み飛ばしが生じている翻訳産物の割合(iRT割合)で評価される、〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕前記翻訳活性が、配列番号:10の鋳型mRNAを用いて、配列番号:29のペプチドを翻訳することにより評価される、〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の方法。
〔22〕配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームのiRT割合と比較して、前記改変されたL31タンパク質を含むリボソームのiRT割合が15%以上低い、〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の方法。
〔23〕〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の方法により製造されたペプチドまたは当該ペプチドを含む、ライブラリ。
〔24〕以下(a)および(b)に記載の工程を含む、標的物質に結合するペプチドのスクリーニング方法;
(a)〔1〕~〔22〕のいずれかに記載された方法によって得られるペプチドまたは当該ペプチドを含むライブラリ、もしくは、〔23〕に記載されたペプチドまたはライブラリに標的物質を接触させる工程、および
(b)前記標的物質に結合するペプチドを選択する工程。
〔25〕〔2〕~〔24〕のいずれかに記載の、改変されたL31タンパク質。
〔26〕〔25〕に記載の、改変されたL31タンパク質(ただし、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるL31タンパク質を除く)。
〔27〕〔25〕または〔26〕に記載の改変されたL31タンパク質をコードする単離された核酸。
〔28〕〔27〕に記載の核酸を含むベクターまたは細胞。
〔29〕以下(a)~(c)に記載の工程を含む、改変されたL31タンパク質を含むリボソームの製造方法;
(a)〔28〕に記載の細胞を培養する工程、
(b)前記細胞の培養物から溶解液を生成する工程、および
(c)前記溶解液からリボソームを精製する工程。
〔30〕以下(a)および(b)に記載の工程を含む、改変されたL31タンパク質の製造方法;
(a)〔28〕に記載の細胞を培養する工程、および
(b)前記細胞の培養物から発現産物を単離する工程。
〔31〕以下(a)および(b)に記載の工程を含む、リボソームの製造方法;
(a)マグネシウムイオン濃度が5mM以下の条件下において、フレンチプレスを使用して、野生型大腸菌の培養物から溶解液を生成する工程、および、
(b)前記溶解液からリボソームを精製する工程。
〔32〕〔25〕または〔26〕に記載の改変されたL31タンパク質を含むリボソーム。
〔33〕〔32〕に記載のリボソームを含む組成物。
〔34〕〔33〕に記載の組成物であって、全リボソームに対する前記改変されたL31タンパク質を含むリボソームの割合が50%以上である、組成物。
〔35〕以下(a)および/または(b)をさらに含む、〔33〕または〔34〕に記載の組成物;
(a)非天然アミノ酸とtRNAが結合してなるアミノアシルtRNA、
(b)1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNA。
〔36〕非天然アミノ酸がアシル化された開始tRNAをさらに含む、〔33〕~〔35〕のいずれかに記載の組成物。
〔37〕以下の工程を含む、無細胞翻訳系の製造方法;
(a)〔29〕または〔31〕に記載の方法によりリボソームを製造する工程、および
(b)前記リボソームを、非天然アミノ酸がアシル化された開始tRNAと混合する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、非天然アミノ酸を含むペプチドおよび当該ペプチドを含むライブラリの効率的な製造方法が提供された。また本発明により、当該方法において使用するための改変されたL31タンパク質、およびこれを含むリボソームが提供された。本発明の方法を用いることにより、非天然アミノ酸を含むペプチドやそのライブラリを効率的に製造することができる。
従来、プロテアーゼ7により切断されたL31タンパク質を含むリボソームは、切断されていないL31タンパク質を含むリボソームよりもその活性が劣ることが示唆されていた。この事実を踏まえると、本明細書における改変されたL31タンパク質を含むリボソームを用いることによって非天然アミノ酸を含むペプチドを効率的に翻訳できることは驚くべき効果であった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】L31shortリボソームまたはL31intactリボソームを用いて、mR-1配列を翻訳した時の目的産物の翻訳量とiRTペプチドの翻訳量を示すグラフである。
図2】L31shortリボソームまたはL31intactリボソームを用いて、mR-2配列を翻訳した時の目的産物の翻訳量とiRTペプチドの翻訳量を示すグラフである。
図3】WT-0MG リボソーム、WT-5MGリボソームまたはWT-10MGリボソームを用いて、mR-1配列を翻訳した時の目的産物の翻訳量とiRTペプチドの翻訳量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系中で、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳する工程を含む、ペプチドまたはペプチドのライブラリの製造方法に関する。本発明においては、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系と、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAとを混合することにより、ペプチドまたはペプチドのライブラリを製造することができる。したがって本発明は、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系と、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAとを混合し、当該mRNAを翻訳する工程を含む、ペプチドまたはペプチドのライブラリの製造方法に関する。本発明の製造方法は、大腸菌野生型に由来する配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する野生型L31タンパク質を含むリボソームを使用する場合と比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドを効率的に翻訳することが可能な方法である。
【0013】
L31タンパク質はリボソームを構成するタンパク質の一つであり、50Sサブユニットおよび30Sサブユニットの会合に重要な役割を果たす。本発明者らは、大腸菌野生型に由来する配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する野生型L31タンパク質においてC末端側のアミノ酸残基が欠損した改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系において、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドを合成した場合、大腸菌野生型L31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系において当該ペプチドを合成する場合と比較して、翻訳産物の量が増加することを見出した。さらに本発明者らは、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系を用いた場合、大腸菌野生型L31タンパク質を含むリボソームを含む翻訳系を使用する場合と比較して、副生成物の相対的な生成量を減少させることが可能なことを見出した。
【0014】
なお本明細書において、「大腸菌野生型L31タンパク質」は配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するL31を指し、これを「大腸菌野生型L31」、「intactなL31」、「L31intact」などと称する場合がある。また、本明細書において「改変されたL31タンパク質」は「大腸菌野生型L31タンパク質においてC末端から6以上のアミノ酸残基が欠損した改変されたL31タンパク質」を指す。本明細書においては、このようなタンパク質のうち、「大腸菌野生型L31タンパク質において63番目以降のアミノ酸残基が欠損した改変されたL31タンパク質」、具体的には配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するL31を、「shortL31」、「L31short」などと称する場合がある。また、「大腸菌野生型L31タンパク質において(X+1)番目以降のアミノ酸残基が欠損した改変されたL31タンパク質」を、「L31(1-X)」と称する場合がある。すなわち、前記shortL31は、「L31(1-62)」とも称する。また本明細書において、あるL31タンパク質を含むリボソームを、該L31タンパク質の名称の後に「リボソーム」を付して表記することがある。例えば、「intactなL31」、「L31intact」、「shortL31」、「L31(1-62)」または「L31short」を含むリボソームを、それぞれ、「intactL31リボソーム」、「L31intactリボソーム」、「shortL31リボソーム」、「L31(1-62)リボソーム」または「L31shortリボソーム」などと称する場合がある。また、大腸菌野生型株から精製したリボソームを「WTリボソーム」などと称する場合がある。
【0015】
改変されたL31タンパク質
本開示における製造方法においては、改変されたL31タンパク質を含むリボソームを使用することにより、大腸菌野生型L31を含むリボソームを使用する場合と比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドを効率的に翻訳することが可能である。本発明の一態様において、改変されたL31タンパク質は、
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質、
(2)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が挿入、置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
(3)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
を例示することができる。
【0016】
前記(1)のタンパク質としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から8以上のアミノ酸残基、または9以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよく、例えば、C末端から6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個から選択される下限の値と、50個、49個、48個、47個、46個、45個、44個、43個、42個、41個、40個、39個、38個から選択される上限の値の範囲に含まれる個数のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。また一態様において、前記(1)のタンパクは、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6~50個の範囲に含まれる個数のいずれかの個数、6~43個の範囲に含まれる個数のいずれかの個数、8~50個の範囲に含まれる個数のいずれかの個数、または8~43個の範囲に含まれる個数のいずれかの個数のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。さらなる態様において、前記(1)のタンパクとして、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、27個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、または50個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。より具体的には、本開示における改変されたL31タンパク質には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から8個、43個、38個、33個、28個、23個、18個、または13個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質およびこれらのタンパク質においてアミノ酸残基が改変(欠失、置換、及び/又は挿入)されたタンパク質が含まれる。すなわち、本開示における改変されたL31タンパク質には、
(1)配列番号:2および42~48より選択されるいずれかで表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(2)配列番号:2および42~48より選択されるいずれかで表されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質、および
(3)配列番号:2および42~48より選択されるいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
も包含される。
本発明の改変されたL31タンパク質は、配列番号:2および42~48のいずれか、または配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質であることが好ましい。
なお本明細書においては、「含む」は「含む」及び「からなる」の両方を意味する。
【0017】
いくつかの態様において、本開示の改変されたL31タンパク質は、(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6以上若しくは8以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質、または(ii)配列番号:2および42~48より選択されるいずれかで表されるアミノ酸配列を含むタンパク質のアミノ酸配列において、1または複数(例えば10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、若しくは3以下、または、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10、または10を超える)のアミノ酸が挿入、置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であってよい。アミノ酸の付加、欠失、置換、及び/又は挿入は、当分野で公知の方法により行うことが可能である。例えば、アミノ酸配列をコードする核酸に対して、例えば部位特異的変異誘発法(Kunkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 488-492(1985))やOverlap extension PCRを行うことができる。これらを適宜、単独でまたは組み合わせて行ってもよい。
【0018】
一般に、タンパク質における1つまたは複数(例えば10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、若しくは3以下、または、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10、または10を超える)のアミノ酸の改変(例えば、保存的な置換、欠失、挿入、および/または付加)は、そのペプチドの機能に影響を及ぼさず、または元のタンパク質の機能を強化しさえすることが知られている。アミノ酸は、その側鎖の特徴に応じて、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)に分類される。またアミノ酸の側鎖は、脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P)、ヒドロキシル基を含む側鎖(S、T、Y)、硫黄原子を含む側鎖(C、M)、カルボン酸およびアミドを含む側鎖(D、N、E、Q)、塩基を含む側鎖(R、K、H)、および芳香族を含む側鎖(H、F、Y、W)に分類することもできる。配列番号:1、2、および42~48のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するタンパク質に含まれるアミノ酸を、同じ特徴を有するグループに分類される他のアミノ酸で改変されたタンパク質もまた、本発明の改変されたL31タンパク質に含まれる。ただし、本発明の改変されたL31タンパク質は、配列番号:2および42~48のいずれか、または配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等である限り、非保存的改変も含んでよい。
【0019】
また本発明の一態様において、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6以上、若しくは8以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列、または、配列番号:1、2、および42~48のいずれかで表されるアミノ酸配列と高い配列の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質もまた、本開示における改変されたL31タンパク質に包含される。本開示において高い同一性とは、アミノ酸配列全体あるいは塩基配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を指す。配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873,1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
【0020】
本開示において「機能的に同等」とは、改変されたL31タンパク質を含むリボソームが、非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳に関して、配列番号:1で表されるアミノ酸配列においてC末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列(例えば、配列番号:2および42~48のいずれかに記載されたアミノ酸配列)からなるL31タンパク質を含むリボソームと同等の翻訳活性を示すことをいう。したがって、あるタンパク質を含むリボソームが、配列番号:1で表されるアミノ酸配列においてC末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列(例えば、配列番号:2および42~48のいずれかに記載されたアミノ酸配列)からなるL31タンパク質を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳に関して同程度の活性を有する場合に、当該あるタンパク質は「配列番号:1で表されるアミノ酸配列においてC末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列(例えば、配列番号:2および42~48のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)と機能的に同等なタンパク質」ということができる。本発明者らは、配列番号:1で表されるアミノ酸配列においてC末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列(例えば、配列番号:2および42~48のいずれかに記載されたアミノ酸配列)を含むL31タンパク質を含むリボソームは、配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を含むL31タンパク質を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性が大きいことを明らかにした。したがって、あるタンパク質を含むリボソームが、配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を含むL31タンパク質を含むリボソームと比較して、非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性が大きい時に、当該あるタンパク質は「配列番号:1で表されるアミノ酸配列においてC末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列(例えば、配列番号:2および42~48のいずれかに記載のアミノ酸配列)からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質」ということができる。あるいは、あるタンパク質が、配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を含むL31タンパク質と比較して、リボソームを構成した時に、リボソームに対して大きな非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性を提供した時に、当該あるタンパク質は「配列番号:1で表されるアミノ酸配列においてC末端から6以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列(例えば、配列番号:2および42~48のいずれかに記載のアミノ酸配列)からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質」ということができる。
【0021】
本開示において「非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性」とは「非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳効率」と表現することもでき、具体的には、非天然アミノ酸を有するtRNAの取り込みやすさ、非天然アミノ酸をコードするコドンの読み飛ばしの程度、ペプチドの翻訳量、および/または副生成物の生成量が含まれる。
本開示において「非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性が大きい」とは「非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳効率が高い」と表現することもでき、具体的には、非天然アミノ酸を有するtRNAが取り込まれやすい、非天然アミノ酸をコードするコドンの読み飛ばしが少ない、目的ペプチドの生成量が多い、および/または副生成物の生成量が少ないことを意味する。
【0022】
本開示における「非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性」は、全翻訳産物に対するアミノ酸の読み飛ばしが生じている翻訳産物の割合を指標として評価することができる。非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳すると、目的産物(TM)の他に、開始アミノ酸が読み飛ばされ開始2文字目のアミノ酸から翻訳されたペプチド(本開示において「1iRT」という)や、開始アミノ酸および開始2文字目のアミノ酸が読み飛ばされ開始3文字目のアミノ酸から翻訳されたペプチド(本開示において「2iRT」という)等のイニシエーションリードスルー(iRT)ペプチドが含まれ得る。本開示においては、イニシエーションリードスルー(iRT)と目的産物(TM)の濃度から以下の式により算出される「iRT割合」を、「非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性」として採用できる。式中の「iRT total濃度」は、1iRT(開始2文字目から翻訳が開始されたペプチド)濃度と2iRT(開始3文字目から翻訳が開始されたペプチド)濃度の合計値として算出できる。
【0023】
(数1)
iRT割合 = (iRT total濃度 [nM]) / (iRT total濃度 [nM] + TM 濃度[nM]) ×100
【0024】
具体的には、iRT割合は実施例に記載のアミノアシルtRNAや翻訳系等を使用し、実施例に記載の方法で評価することができる。一例として、配列番号:10の鋳型mRNAを用いて、配列番号:29~31のいずれか、好ましくは配列番号:29のペプチドを翻訳させることにより「非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性」を評価することができる。
【0025】
本開示において「非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳活性が大きい」とは、iRT割合が低いことを意味することができる。「配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームと比較して、前記非天然アミノ酸を含むペプチドの翻訳活性が大きい」とは、例えば、配列番号:1のアミノ酸配列を含む大腸菌野生型L31を含むリボソームのiRT割合と比較して、本開示の改変されたL31タンパク質を含むリボソームのiRT割合が15%、20%、25%、または30%以上低いことを意味することができる。
【0026】
なお、原核細胞のリボソームは50Sのラージサブユニットおよび30Sのスモールサブユニットを含む。50Sサブユニットはさらに23SrRNAおよび5SrRNAならびに複数のタンパク質から構成される。また30Sサブユニットは16SrRNAおよび複数のタンパク質から構成される。一方、真核細胞のリボソームは60Sのラージサブユニットおよび40Sのスモールサブユニットを含む。60Sサブユニットはさらに28SrRNA、5.8SrRNAおよび5SrRNAならびに複数のタンパク質から構成される。また40Sサブユニットは18SrRNAおよび複数のタンパク質から構成される。リボソームの構成因子は当業者に公知である。
【0027】
アミノ酸
本開示においてペプチドを構成する「アミノ酸」は、α-アミノ酸などの「天然アミノ酸」およびβ-アミノ酸、γ-アミノ酸などの「非天然アミノ酸」を含む。アミノ酸の立体構造は、L型アミノ酸、D型アミノ酸のいずれであってもよい。「アミノ酸」、「天然アミノ酸」、「非天然アミノ酸」はそれぞれ、「アミノ酸残基」、「天然アミノ酸残基」、「非天然アミノ酸残基」ということがある。
【0028】
特定の態様において、天然アミノ酸は、以下の20種類のα-アミノ酸:グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、ヒスチジン(His)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、およびプロリン(Pro)からなる。あるいは、上述の20種類のアミノ酸から、任意の1種類以上のアミノ酸を除いたものを、本開示における天然アミノ酸としてもよい。一態様において、天然アミノ酸は、イソロイシンを除く19種類のアミノ酸からなる。一態様において、天然アミノ酸は、メチオニンを除く19種類のアミノ酸からなる。さらなる態様において、天然アミノ酸は、イソロイシンおよびメチオニンを除く18種類のアミノ酸からなる。天然アミノ酸は通常、L型アミノ酸である。
【0029】
非天然アミノ酸
本開示において、非天然アミノ酸とは、上記の20種類のα-アミノ酸からなる天然アミノ酸を除く全てのアミノ酸を表す。非天然アミノ酸の例として、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、D型アミノ酸、天然アミノ酸とは側鎖が異なるα-アミノ酸、α,α-二置換アミノ酸、主鎖のアミノ基が置換基を有するアミノ酸(N置換アミノ酸)などを挙げることができる。非天然アミノ酸の側鎖は、特に限定されないが、水素原子の他に、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、シクロアルキルなどを有していてもよい。また、α,α-二置換アミノ酸の場合、2つの側鎖が環を形成していてもよい。さらに、これらの側鎖は、1つ以上の置換基を有していてもよい。特定の態様において、置換基は、ハロゲン原子、O原子、S原子、N原子、B原子、Si原子、またはP原子を含む任意の官能基の中から選択することができる。例えば、本開示において「ハロゲンを置換基に有するC1-C6アルキル」とは、アルキルにおける少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された「C1-C6アルキル」を意味し、具体的には、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、ペンタフルオロエチル、テトラフルオロエチル、トリフルオロエチル、ジフルオロエチル、フルオロエチル、トリクロロメチル、ジクロロメチル、クロロメチル、ペンタクロロエチル、テトラクロロエチル、トリクロロエチル、ジクロロエチル、クロロエチルなどを含む。また、例えば「置換基を有するC5-C10アリールC1-C6アルキル」とは、アリールおよび/またはアルキルにおける少なくとも一つの水素原子が置換基により置換された「C5-C10アリールC1-C6アルキル」を意味する。さらに、「置換基を2つ以上有している」とは、ある官能基(例えばS原子を含む官能基)を置換基として有し、さらにその官能基が別の置換基(例えばアミノやハロゲンなどの置換基)を有していることも含む。非天然アミノ酸の具体的な例としては、WO2013/100132やWO2018/143145なども参照することができる。
【0030】
非天然アミノ酸の主鎖のアミノ基は、非置換のアミノ基(NH基)でもよく、置換されたアミノ基(NHR基)であってもよい。ここで、Rは、置換基を有していてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、シクロアルキルを示す。また、プロリンのように主鎖のアミノ基のN原子に結合した炭素鎖とα位の炭素原子とが環を形成していてもよい。アミノ基のアルキル置換の例としては、N-メチル化、N-エチル化、N-プロピル化、N-ブチル化などが、アラルキル置換の例としては、N-ベンジル化などが挙げられる。N-メチルアミノ酸の具体的な例としては、N-メチルアラニン、N-メチルグリシン、N-メチルフェニルアラニン、N-メチルチロシン、N-メチル-3-クロロフェニルアラニン、N-メチル-4-クロロフェニルアラニン、N-メチル-4-メトキシフェニルアラニン、N-メチル-4-チアゾールアラニン、N-メチルヒスチジン、N-メチルセリン、N-メチルアスパラギン酸などを挙げることができる。
【0031】
ハロゲンを含む置換基としては、ハロゲンを置換基に有するアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基などが例示され、より具体的には、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキルなどが例示される。
【0032】
O原子を含む置換基としては、ヒドロキシル(-OH)、オキシ(-OR)、カルボニル(-C=O-R)、カルボキシル(-COH)、オキシカルボニル(-C=O-OR)、カルボニルオキシ(-O-C=O-R)、チオカルボニル(-C=O-SR)、カルボニルチオ基(-S-C=O-R)、アミノカルボニル(-C=O-NHR)、カルボニルアミノ(-NH-C=O-R)、オキシカルボニルアミノ(-NH-C=O-OR)、スルホニルアミノ(-NH-SO-R)、アミノスルホニル(-SO-NHR)、スルファモイルアミノ(-NH-SO-NHR)、チオカルボキシル(-C(=O)-SH)、カルボキシルカルボニル(-C(=O)-COH)が挙げられる。
【0033】
オキシ(-OR)の例としては、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシなどが挙げられる。
【0034】
カルボニル(-C=O-R)の例としては、ホルミル(-C=O-H)、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アラルキルカルボニルなどが挙げられる。
【0035】
オキシカルボニル(-C=O-OR)の例としては、アルキルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニルなどが挙げられる。
(-C=O-OR)
【0036】
カルボニルオキシ(-O-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルオキシ、シクロアルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ、アルキニルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アラルキルカルボニルオキシなどが挙げられる。
【0037】
チオカルボニル(-C=O-SR)の例としては、アルキルチオカルボニル、シクロアルキルチオカルボニル、アルケニルチオカルボニル、アルキニルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、ヘテロアリールチオカルボニル、アラルキルチオカルボニルなどが挙げられる。
【0038】
カルボニルチオ(-S-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルチオ、シクロアルキルカルボニルチオ、アルケニルカルボニルチオ、アルキニルカルボニルチオ、アリールカルボニルチオ、ヘテロアリールカルボニルチオ、アラルキルカルボニルチオなどが挙げられる。
【0039】
アミノカルボニル(-C=O-NHR)の例としては、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニルなどが挙げられる。これらに加えて、-C=O-NHR中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0040】
カルボニルアミノ(-NH-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アルケニルカルボニルアミノ、アルキニルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて-NH-C=O-R中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0041】
オキシカルボニルアミノ(-NH-C=O-OR)の例としては、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルコキシカルボニルアミノ、アルケニルオキシカルボニルアミノ、アルキニルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、アラルキルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-C=O-OR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0042】
スルホニルアミノ(-NH-SO-R)の例としては、アルキルスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、アルケニルスルホニルアミノ、アルキニルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-SO-R中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0043】
アミノスルホニル(-SO-NHR)の例としては、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルアミノスルホニル、アルケニルアミノスルホニル、アルキニルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、アラルキルアミノスルホニルなどが挙げられる。これらに加えて、-SO-NHR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0044】
スルファモイルアミノ(-NH-SO-NHR)の例としては、アルキルスルファモイルアミノ、シクロアルキルスルファモイルアミノ、アルケニルスルファモイルアミノ、アルキニルスルファモイルアミノ、アリールスルファモイルアミノ、ヘテロアリールスルファモイルアミノ、アラルキルスルファモイルアミノなどが挙げられる。さらに、-NH-SO-NHR中のN原子と結合した2つのH原子はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、およびアラルキルからなる群より独立して選択される置換基で置換されていてもよく、またこれらの2つの置換基は環を形成しても良い。
【0045】
S原子を含む置換基として、チオール(-SH)、チオ(-S-R)、スルフィニル(-S=O-R)、スルホニル(-S(O)-R)、スルホ(-SOH)が挙げられる。
【0046】
チオ(-S-R)の例としては、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオなどが挙げられる。
【0047】
スルフィニル(-S=O-R)の例としては、アルキルスルフィニル、シクロアルキルスルフィニル、アルケニルスルフィニル、アルキニルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アラルキルスルフィニルなどが挙げられる。
【0048】
スルホニル(-S(O)-R)の例としては、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アルケニルスルホニル、アルキニルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アラルキルスルホニルなどが挙げられる。
【0049】
N原子を含む置換基として、アジド(-N、「アジド基」ともいう)、シアノ(-CN)、1級アミノ(-NH)、2級アミノ(-NH-R)、3級アミノ(-NR(R'))、アミジノ(-C(=NH)-NH)、置換アミジノ(-C(=NR)-NR'R'')、グアニジノ(-NH-C(=NH)-NH)、置換グアニジノ(-NR-C(=NR''')-NR'R'')、アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR'R'')が挙げられる。
【0050】
2級アミノ(-NH-R)の例としては、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アラルキルアミノなどが挙げられる。
【0051】
3級アミノ(-NR(R'))の例としては、例えばアルキル(アラルキル)アミノなど、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択される、任意の2つの置換基を有するアミノ基が挙げられ、これらの任意の2つの置換基は環を形成しても良い。
【0052】
置換アミジノ(-C(=NR)-NR'R'')の例としては、N原子上の3つの置換基R、R'、およびR''が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、例えばアルキル(アラルキル)(アリール)アミジノなどが挙げられる。
【0053】
置換グアニジノ(-NR-C(=NR''')-NR'R'')の例としては、R、R'、R''、およびR'''が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらが環を形成した基などが挙げられる。
【0054】
アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR'R'')の例としては、R、R'、およびR''が、水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらは環を形成した基などが挙げられる。
【0055】
B原子を含む置換基として、ボリル(-BR(R'))やジオキシボリル(-B(OR)(OR'))などが挙げられる。これらの2つの置換基RおよびR'は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択されるか、あるいはこれらは環を形成してもよい。
【0056】
ペプチドを構成する「アミノ酸」を構成する少なくとも1つの原子は、原子番号(陽子数)が同じで,質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子(同位体)であってもよい。当該ペプチドを構成する「アミノ酸」に含まれる同位体の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子などがあり、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl等が含まれる。
【0057】
本明細書における「ハロゲン原子」としては、F、Cl、BrまたはIが例示される。
【0058】
本明細書において「アルキル」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基であり、骨格中にヘテロ原子(炭素及び水素原子以外の原子をいう。)または不飽和の炭素-炭素結合を含有せず、水素及び炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素基構造の部分集合を有する。アルキルは直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。アルキルとして具体的には、炭素原子数1~20(C-C20、以下「C-C」とは炭素原子数がp~q個であることを意味する)のアルキルであり、好ましくはC-C10アルキル、より好ましくはC-Cアルキルが挙げられる。アルキルとして、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、n-ペンチル、s-ペンチル(1-メチルブチル)、t-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(3-メチルブチル)、3-ペンチル(1-エチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2-メチルブチル、n-ヘキシル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
【0059】
本明細書において「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する1価の基である。二重結合および置換分(存在する場合)の配置によって、二重結合の幾何学的形態は、エントゲーゲン(E)またはツザンメン(Z)、シスまたはトランス配置をとることができる。アルケニルは、直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状ものも含む。アルケニルとして好ましくはC-C10アルケニル、より好ましくはC-Cアルケニルが挙げられ、具体的には、たとえば、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル(シス、トランスを含む)、3-ブテニル、ペンテニル、3-メチル-2-ブテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0060】
本明細書において「アルキニル」とは、少なくとも1個の三重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する、1価の基である。アルキニルは、直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。アルキニルとして好ましくはC-C10アルキニル、より好ましくはC-Cアルキニルが挙げられ、具体的には、たとえば、エチニル、1-プロピニル、プロパルギル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、3-フェニル-2-プロピニル、3-(2'-フルオロフェニル)-2-プロピニル、2-ヒドロキシ-2-プロピニル、3-(3-フルオロフェニル)-2-プロピニル、3-メチル-(5-フェニル)-4-ペンチニルなどが挙げられる。
【0061】
本明細書において「シクロアルキル」とは、飽和または部分的に飽和した環状の1価の脂肪族炭化水素基を意味し、単環、ビシクロ環、スピロ環を含む。シクロアルキルとして好ましくはC-Cシクロアルキルが挙げられ、具体的には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、スピロ[3.3]ヘプチルなどが挙げられる。
【0062】
本明細書において「アリール」とは1価の芳香族炭化水素環を意味し、好ましくはC-C10アリールが挙げられる。アリールとして具体的には、たとえば、フェニル、ナフチル(たとえば、1-ナフチル、2-ナフチル)などが挙げられる。
【0063】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、芳香族性の環状の1価の基を意味する。環は単環でも、他の環との縮合環でもよく、部分的に飽和されていてもよい。環を構成する原子の数は好ましくは5~10(5~10員ヘテロアリール)であり、より好ましくは5~7(5~7員ヘテロアリール)である。ヘテロアリールとして具体的には、たとえば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、インドリジニル、イミダゾピリジルなどが挙げられる。
【0064】
本明細書において「アルコキシ」とは、前記定義の「アルキル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cアルコキシが挙げられる。アルコキシとして具体的には、たとえば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、3-メチルブトキシなどが挙げられる。
【0065】
本明細書において「アルケニルオキシ」とは、前記定義の「アルケニル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cアルケニルオキシが挙げられる。アルケニルオキシとして具体的には、たとえば、ビニルオキシ、アリルオキシ、1-プロペニルオキシ、2-プロペニルオキシ、1-ブテニルオキシ、2-ブテニルオキシ(シス、トランスを含む)、3-ブテニルオキシ、ペンテニルオキシ、ヘキセニルオキシなどが挙げられる。
【0066】
本明細書において「シクロアルコキシ」とは、前記定義の「シクロアルキル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cシクロアルコキシが挙げられる。シクロアルコキシとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシなどが挙げられる。
【0067】
本明細書において「アリールオキシ」とは、前記定義の「アリール」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-C10アリールオキシが挙げられる。アリールオキシとして具体的には、たとえば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシなどが挙げられる。
【0068】
本明細書において「アミノ」とは、狭義には-NHを意味し、広義には-NRR’を意味し、ここでRおよびR’は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールから選択されるか、あるいはRおよびR’はそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成する。アミノとして好ましくは、-NH、モノC-Cアルキルアミノ、ジC-Cアルキルアミノ、4~8員環状アミノなどが挙げられる。
【0069】
本明細書において「モノアルキルアミノ」とは、前記定義の「アミノ」のうち、Rが水素であり、かつR’が前記定義の「アルキル」である基を意味し、好ましくは、モノC-Cアルキルアミノが挙げられる。モノアルキルアミノとして具体的には、たとえば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、i-プロピルアミノ、n-ブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノなどが挙げられる。
【0070】
本明細書において「ジアルキルアミノ」とは、前記定義の「アミノ」のうち、RおよびR’が独立して前記定義の「アルキル」である基を意味し、好ましくは、ジC-Cアルキルアミノが挙げられる。ジアルキルアミノとして具体的には、たとえば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられる。
【0071】
本明細書における「アミノアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アミノ」で置換された基を意味し、C-Cアミノアルキルが好ましい。アミノアルキルとして具体的には、たとえば、1-ピリジルメチル、2-(1-ピペリジル)エチル、3-(1-ピペリジル)プロピル、4-アミノブチルなどが挙げられる。
【0072】
本明細書において「アラルキル(アリールアルキル)」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「アリール」で置換された基を意味し、C-C14アラルキルが好ましく、C-C10アラルキルがより好ましい。アラルキルとして具体的には、たとえば、ベンジル、フェネチル、3-フェニルプロピルなどが挙げられる。
【0073】
非天然アミノ酸の具体的な例としては、WO2013/100132やWO2018/143145なども参照することができる。
【0074】
一態様において、本願発明に係る製造方法により得られる1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドを医薬品として使用することができる。ペプチドを医薬品として使用する場合、代謝安定性と膜透過性に優れていることが好ましい。このような性質を本明細書において「ドラッグライクネス」あるいは「ドラッグライク」という。本明細書において「ドラッグライクなアミノ酸」とは、α、β及びγアミノ酸であり、主鎖アミノ基(NH基)の水素原子2つのうちの1つ、又は主鎖メチレン基(-CH-基)の水素原子のうち1つあるいは2つはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基などで置換されていてもよい。これら置換基は、さらに「ドラッグライクネスに寄与する置換基」で置換されていてもよい。WO2018/225864に開示される「長側鎖」を有するアミノ酸が、ドラッグライクなアミノ酸として好ましく例示される。また、ドラッグライクなアミノ酸は、L型アミノ酸、D型アミノ酸、α、α-二置換アミノ酸、N置換アミノ酸等であってもよい。ドラッグライクなアミノ酸は、翻訳可能である必要は必ずしも無い。「翻訳アミノ酸」から得られたペプチドの側鎖部分(例えばD-チロシンにてヒット化合物が取得された場合には、そこから化学修飾させたD型のアミノ酸、β-アラニンにてヒット化合物が取得された場合には、そこから化学修飾させたβ-アミノ酸)、あるいはNメチルアミノ酸の化学変換によるN置換部分の構造最適化により化学的に合成し得るアミノ酸を含む。これらのアミノ酸はドラッグライクなペプチドの構成要素として機能するため、翻訳後に実施する化学修飾によって得られるペプチドがドラッグライクとなるような範囲から選択される。以下にて述べるとおり、例えばアミノアルキル基を有するリジンは、アミノ基が翻訳後修飾に関与しない場合にはドラッグライクなアミノ酸には含まれない。しかしながら、リジンのアミノ基を翻訳後修飾の反応性官能基として活用する場合(例えば交差ユニット)にはリジンユニットをドラッグライクなアミノ酸のユニットとして含む。このように、「ドラッグライクなアミノ酸」に該当するかどうかは、翻訳後の修飾によって変換された後の官能基にて判断される。このような置換基になり得る例として、別途上で定義した置換基の中から、例えばエステル基(-CO-OR)、チオエステル基(-CO-SR)、チオール基(-SH)、あるいは保護されたチオール基、アミノ基(-NH)、モノ置換アミノ基(-NH-R)あるいはジ置換アミノ基(-NRR')、あるいは保護されたアミノ基、置換スルホニルアミノ基(-NH-SO-R)、アルキルボラン基(-BRR')、アルコキシボラン基(-B(OR)(OR'))、アジド基(-N)、ケト酸基(-CO-COH)、チオカルボン酸基(-CO-SH)、ホスホリルエステル基(-CO-PO(R)(R'))、アシルヒドロキシアミノ基(-NH-O-CO-R)などが挙げられる。前記ドラッグライクなアミノ酸の側鎖に含まれる隣接しない1又は2個のメチレン基は、酸素原子、カルボニル基(-CO-)、又はスルホニル基(-SO-)で置換されていてもよい。
【0075】
本明細書における「ドラッグライクネスに寄与する置換基」としては、例えば、ハロゲン(F、Cl、Br、I等)、ヒドロキシ(-OH)、アルコキシ基(-OR)、オキシ(-OR)、アミド(-NR-COR'もしくは-CO-NRR')、スルホニル(-SO-R)、スルフィニル(-SOR)、オキシアミノ(-NR-OR')、アミノオキシ(-O-NRR')、オキシカルボニル(-CO-OR)、チオカルボニル(-CO-SR)、チオール(-SH)、チオ(-SR)、1級アミノ(-NH)、2級アミノ(-NHR)あるいは3級アミノ(-NRR')、スルホニルアミノ(-NH-SO-R)、ボリル(-BRR')、ジオキシボリル(-B(OR)(OR'))、アジド(-N)、カルボキシカルボニル(-CO-COH)、ホスホリルカルボニル(-CO-PO(R)(R'))、カルボニルオキシアミノ(-NH-O-CO-R)、ヒドロキシアミノ(-NR-OR')、アミノヒドロキシ(-O-NRR')等の置換基が例示される。
【0076】
また、本開示における1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドを構成する非天然アミノ酸の特に具体的な例として、MeSer(tBuOH)、BODIPYFL-4-AMF、MeCys(StBu)、MeG、MeStBuOH、Nle、S3F5MePyr、SPh2Cl、MeF、MeHph、MeA3Pyr、SPh2Cl、Pic(2)、MeHph、dA等を例示することができる。これらの非天然アミノ酸は、例えばペプチドの2文字目または3文字目の位置に含まれ得る。
【0077】
ペプチド
本開示においてペプチドとは、2以上のアミノ酸がアミド結合及び/又はエステル結合で結合したものをいう。限定を意図しないが、本開示におけるペプチドには、鎖状ペプチド、及び環状ペプチドが含まれる。また、本開示におけるペプチドには、ペプチド、ペプチドと核酸の複合体(ペプチド-核酸複合体)、ペプチドとリボソームと核酸の複合体等が含まれる。また、本開示における「核酸」にはDNA、mRNA、及びtRNAが含まれる。また、本開示における「ペプチド」には、その薬学的に許容される塩が含まれてもよい。
【0078】
本開示におけるペプチドは、一態様において、2~100個、3~50個、4~30個、または5~30個のアミノ酸が、アミド結合及び/又はエステル結合により連結されている。例えば、一態様において、本願発明に係る1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドを医薬品として使用する場合、高い膜透過性を獲得するために、ペプチドを構成するアミノ酸の数は20以下が好ましく、18以下、16以下、15以下、又は14以下がより好ましく、13以下が特に好ましく、具体的には、9、10、11、12、13が例示される。また高い代謝安定性を獲得するためには、ペプチドを構成するアミノ酸の数は8以上であることが好ましく、9以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、11以上が特に好ましい。膜透過性と代謝安定性の両立を考慮すると、ペプチドを構成するアミノ酸の数は5~20、又は7~20が好ましく、7~17、8~16、9~16、又は10~16がより好ましく、8~13、10~15、11~15、10~14、10~13、又は11~14がさらに好ましく、11~13が特に好ましい。
【0079】
本開示における環状ペプチドの環状部を構成するアミノ酸の数は限定されないが、例えば、4以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、7、8、9、10、11、12、13、14、15、及び16が挙げられる。膜透過性と代謝安定性の両立を考慮すると、前記環状部を構成するアミノ酸の数は、5~15が好ましく、5~14、7~14、又は8~14がより好ましく、8~13、9~13、8~12、8~11、又は9~12がさらに好ましく、9~11が特に好ましい。なお、本明細書においてペプチドの「環状部」とは、2以上のアミノ酸残基が連結され、形成されている環状の部分を意味する。
【0080】
非限定の一態様において、本開示における環状ペプチドは直鎖部を有していてもよい。本明細書において、環状ペプチドの部分構造を指す際に使用される「直鎖部」とは、環状部の主鎖構造に含まれない部分であって、該部分の鎖上に少なくとも一つのアミド結合及び/又はエステル結合を有するものをいう。直鎖部のアミノ酸の数(ユニットの数)は0~8であることが好ましく、0~5がより好ましく、0~3がより好ましい。なお、非限定の一態様において、本明細書における直鎖部には天然アミノ酸や非天然アミノ酸(化学修飾や骨格変換されたアミノ酸を含む)が含まれる場合がある。
【0081】
非限定の一態様において、本開示におけるペプチドに含まれる非天然アミノ酸の数は、2以上が好ましく、4以上、5以上、又は6以上がより好ましく、7以上が更に好ましく、8以上が特に好ましく、また、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、10以下、9以下が好ましく例示される。本開示におけるペプチドに含まれる非天然アミノ酸の数としては、環状部を構成するアミノ酸の数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。また、本開示におけるペプチドに含まれる非天然アミノ酸の種類は、1以上が好ましく、2以上、3以上、又は4以上がより好ましく、7以上が更に好ましく、8以上が特に好ましく、また、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、10以下、9以下が好ましく例示される。
【0082】
本開示における1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドにおいて非天然アミノ酸を含む部位は限定されないが、一態様として開始アミノ酸の位置に非天然アミノ酸を含むことができ、更に、2文字目および/または3文字目のアミノ酸の位置に非天然アミノ酸を含むことができる。
【0083】
開始アミノ酸の部位にfMet以外のアミノ酸を導入した場合、開始2文字目や3文字目のアミノ酸から翻訳が開始されるInitiation read through(iRT)と定義する現象が観察されることが知られている(以下、このようにして生産されたペプチドを、Initiation read throughペプチド(iRTペプチド)と定義する)。本開示における改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームを用いることにより、開始アミノ酸の部位に非天然アミノ酸が導入されているペプチドを合成する場合であってもInitiation read throughの現象を防ぐことができる。また、iRTペプチドは環化されない。そのため、環状ペプチドを含むライブラリを作成する場合において、それをコードするmRNAの大部分がiRTペプチドをコードするものになると、ディスプレイ可能な分子数が限られ、環状ペプチドのディスプレイ数が減少し、ライブラリの多様性が減少してしまう。本開示における改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームを用いることにより、このようなライブラリの品質低下を防ぐことができる。
【0084】
ペプチドをコードするmRNA
本開示においては、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳してペプチドを製造する。mRNAとは、タンパク質に翻訳され得る遺伝情報を持ったRNAのことである。遺伝情報はコドンとしてmRNA上にコードされており、それらが全20種類のアミノ酸にそれぞれ対応している。タンパク質の翻訳は開始コドンから始まり、終止コドンで終了する。真核生物における開始コドンは原則としてAUGであるが、原核生物(真正細菌および古細菌)ではAUGの他にGUGやUUGなども開始コドンとして使用されることがある。AUGはメチオニン(Met)をコードするコドンであり、真核生物および古細菌ではそのままメチオニンから翻訳が開始される。一方、真正細菌では、開始コドンのAUGのみN-ホルミルメチオニン(fMet)に対応しているため、ホルミルメチオニンから翻訳が開始される。終止コドンには、UAA(オーカー)・UAG(アンバー)・UGA(オパール)の3種がある。終止コドンが翻訳終結因子(release factor;RF)と呼ばれるタンパク質によって認識されると、それまでに合成されたペプチド鎖がtRNAから解離し、翻訳工程は終了する。一態様において、本開示における1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAとして、少なくとも開始アミノ酸の位置に非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするコドンを含むものを例示することができる。
本開示における1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAにおいて非天然アミノ酸を含む部位は限定されないが、一態様として開始アミノ酸の位置に非天然アミノ酸をコードするコドンを含むことができる。
【0085】
ペプチドの翻訳
上述の通り、本開示においては、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドを、当該ペプチドをコードするmRNAから翻訳して製造することができる。本明細書において「翻訳」とは、ペプチドをコードする核酸(例えば、DNA、RNA)から、該ペプチドを翻訳して合成することを意味する。翻訳とは、リボソームの作用によってmRNAを鋳型にアミド結合及び/又はエステル結合反応を繰り返すことによって直鎖ペプチドを得る工程である。
【0086】
一局面において、本開示は、非天然アミノ酸を少なくとも1種、2種以上、3種以上、4種以上、又は5種以上含むペプチドまたはペプチドを含むライブラリの製造方法を提供する。限定はされないが、このような製造方法は、以下(i)および(ii)を含んでよい:
(i) 非天然アミノ酸が結合したtRNAを少なくとも1種、2種以上、3種以上、4種以上、又は5種以上用意する工程;
(ii) 前記tRNAのアンチコドンに対応するコドンを少なくとも1つ含む核酸を翻訳系で翻訳し、前記ペプチドを得る工程。
ここで該核酸は前記tRNAのアンチコドンに対応するコドンを少なくとも1つ含んでよい。また非限定の一態様において、本開示における1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAは、少なくとも開始アミノ酸の位置に非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするコドンを含むものであってよい。
【0087】
天然のアミノ酸の翻訳では、64種類のコドンそれぞれに、20種類のタンパク質性アミノ酸及び翻訳の終止が割り当てられている。翻訳系から特定のアミノ酸を除去すると、当該アミノ酸に対応するコドンが空きコドンになる。そこで、その空きコドンに相補的なアンチコドンを有するtRNAに所望の非天然アミノ酸を連結し、これを加えて翻訳を行えば、当該アミノ酸がそのコドンでコードされることになり、除去したアミノ酸の代わりに所望の非天然アミノ酸が導入されたペプチドが翻訳される。
【0088】
本開示における一態様において、ペプチドの翻訳には、イニシエーションサプレッション(InitiationSuppression:iSP)法を利用することが好ましい。通常の翻訳では、一般的に翻訳開始アミノ酸としてメチオニンがN末端アミノ酸として翻訳される。翻訳の開始には専用の「開始tRNA」があり、開始tRNAがメチオニン(原核生物ではホルミルメチオニン)と結合しリボソームに運ばれることによって、翻訳が開始され、N末端のアミノ酸がメチオニン(原核生物ではホルミルメチオニン)となる。これに対し、翻訳系内からメチオニンがアミノアシル化された開始tRNAを除去し(または生成されないにし)、予め調製した所望のアミノ酸がアミノアシル化された開始tRNAを代わりに翻訳系内に加えることによって、N末端に所望のアミノ酸を持つペプチドを翻訳することをイニシエーションサプレッション法という。非天然アミノ酸の許容度は、アミノ酸の伸長時よりN末端への導入において高く、天然アミノ酸と大きく構造の異なる非天然アミノ酸をN末端アミノ酸として利用できることが知られている(非特許文献:J Am Chem Soc. 2009 Apr 15;131(14):5040-1.Translation initiationwith initiator tRNA charged with exotic peptides.Goto Y, Suga H.)。本開示における一態様において、翻訳系に含まれる開始tRNAには非天然アミノ酸がアシル化されていてもよい。
【0089】
翻訳系
本開示において「翻訳系」とは、ペプチドを翻訳するための方法およびペプチドを翻訳するための組成物の両方を含む概念として定義される。本開示において「翻訳系」は、本開示における改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含むものであれば限定されない。本開示における「翻訳系」は、その他、翻訳に関与する蛋白因子群、tRNA、アミノ酸、ATPなどのエネルギー源、その再生系を組み合わせたもので、mRNAを蛋白質に翻訳することが出来るものを含むことが好ましい。また、翻訳が進行している間の系も、本明細書における「翻訳系」に含まれてよい。本明細書における翻訳系は、ペプチドを翻訳する際の鋳型となる核酸を含んでいてよく、これら以外にも、開始因子、伸長因子、解離因子、アミノアシルtRNA合成酵素などを含むことができる。これらの因子は、種々の細胞の抽出液から精製することによって得ることができる。因子を精製するための細胞は、例えば原核細胞、または真核細胞を挙げることができる。原核細胞としては、大腸菌細胞、高度好熱菌細胞、または枯草菌細胞を挙げることができる。真核細胞としては、酵母細胞、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球、植物細胞、昆虫細胞、または動物細胞を材料にしたものが知られている。またtRNAやアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)は天然に存在するものに加え、人工tRNAや非天然アミノ酸を認識する人工アミノアシルtRNA合成酵素を用いることもできる。人工tRNAや人工アミノアシルtRNA合成酵素を用いることにより部位特異的に非天然アミノ酸を導入したペプチドを合成することができる。なお、必要に応じて、翻訳系にT7 RNA polymeraseなどのRNAポリメラーゼを加えることで、鋳型DNAから転写させることもできる。
【0090】
本明細書において、「翻訳系がある物質を含む」とは、翻訳の開始時に該物質を含んでいなくても、翻訳の過程において系内で該物質が合成され含まれることになる態様も含む。例えば、翻訳の過程で、アミノ酸がアシル化されたtRNAが合成される場合には、翻訳系が該アミノアシルtRNAを含むと理解される。
【0091】
翻訳系の主な種類としては、生細胞を利用した翻訳系や、細胞抽出液を利用した翻訳系(無細胞翻訳系)がある。生細胞を利用した翻訳系としては、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞や哺乳動物細胞などの生細胞に、所望のアミノアシルtRNAおよびmRNAをマイクロインジェクション法やリポフェクション法により導入してペプチド翻訳を行う系が知られている(Nowak et al., Science (1995) 268: 439-442)。無細胞翻訳系の例としては、大腸菌(Chen et al., Methods Enzymol (1983) 101: 674-690)、酵母(Gasior et al., J Biol Chem (1979) 254: 3965-3969)、小麦胚芽(Erickson et al., Methods Enzymol (1983) 96: 38-50)、ウサギ網状赤血球(Jackson et al., Methods Enzymol (1983) 96: 50-74)、HeLa細胞(Barton et al., Methods Enzymol (1996)275: 35-57)、あるいは昆虫細胞(Swerdel et al., Comp BiochemPhysiol B (1989) 93: 803-806)などからの抽出液を利用した翻訳系が知られている。このような翻訳系は、当業者に公知の方法またはそれに準ずる方法によって適宜調製することができる。無細胞翻訳系には、ペプチド翻訳に必要な因子をそれぞれ単離・精製して、それらを再構成して構築された翻訳系(再構成型の無細胞翻訳系)も含まれる(Shimizu et al., Nat Biotech (2001) 19: 751-755)。再構成型の無細胞翻訳系には、通常、リボソーム、アミノ酸、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)、翻訳開始因子(例えば、IF1、IF2、IF3)、翻訳伸長因子(例えばEF-Tu、EF-Ts、EF-G)、翻訳終結因子(例えばRF1、RF2、RF3)、リボソーム再生因子(ribosome recycling factor; RRF)、エネルギー源としてのNTP類、エネルギー再生系、および翻訳に必要なその他の因子などが含まれ得る。DNAからの転写反応を併せて行う場合は、さらにRNAポリメラーゼなどが含まれ得る。無細胞翻訳系に含まれる種々の因子は、当業者に周知の方法によって単離・精製することが可能であり、それらを用いて再構成型の無細胞翻訳系を適宜構築することができる。あるいは、ジーンフロンティア社のPUREfrex(登録商標)や、New England BioLabs社のPURExpress(登録商標)などの市販されている再構成型の無細胞翻訳系を利用することもできる。再構成型の無細胞翻訳系の場合、翻訳系の構成成分のうち必要な成分だけを再構成して、所望の翻訳系を構築することができる。
【0092】
PURESYSTEM(登録商標)(BioComber,Japan)は大腸菌における翻訳に必要な蛋白因子類、エネルギー再生系酵素、リボソームそれぞれを抽出、精製し、tRNA、アミノ酸、ATP、GTPなどと混合した再構成無細胞翻訳系である。不純物の含有量が少ないだけでなく、再構成系であるため排除したい蛋白因子、アミノ酸を含まない系を容易に作製することができる((i)Nat Biotechnol. 2001;19:751-5. Cell-free translationreconstituted with purified components. Shimizu Y, Inoue A, Tomari Y, Suzuki T,Yokogawa T, Nishikawa K, Ueda T.(ii)Methods Mol Biol. 2010;607:11-21.PUREtechnology.Shimizu Y, Ueda T.)。
【0093】
例えば、非天然アミノ酸を導入するコドンとして終止コドンを利用する方法が多く報告されているが、前述のPURESYSTEMを用いることで天然アミノ酸、ARSを除いた合成系を構築できる。これにより、除外する天然アミノ酸をコードするコドンに、非天然アミノ酸を対応付けることが出来る(J Am Chem Soc. 2005;127:11727-35.Ribosomal synthesis of unnaturalpeptides. Josephson K, Hartman MC, Szostak JW.)。さらにコドンの縮重を解くことにより天然アミノ酸を除外することなく非天然アミノ酸を加えることが出来る(Kwon I,et al. Breaking the degeneracy of the genetic code. J Am ChemSoc. 2003, 125, 7512-3.)。N-メチルアミノ酸を含むペプチドがPURESYSTEMなどの無細胞翻訳系の活用によりリボソームにて合成できる。
【0094】
より具体的には、翻訳合成は、例えば、大腸菌における翻訳に必要な蛋白因子類(メチオニルtRNAトランスフォルミラーゼ、EF-G、RF1、RF2、RF3、RRF、IF1、IF2、IF3、EF-Tu、EF-Ts、ARS(AlaRS、ArgRS、AsnRS、AspRS、CysRS、GlnRS、GluRS、GlyRS、HisRS、IleRS、LeuRS、LysRS、MetRS、PheRS、ProRS、SerRS、ThrRS、TrpRS、TyrRS、ValRSから必要なものを選ぶ))、リボソーム、アミノ酸、クレアチンキナーゼ、ミオキナーゼ、無機ピロフォスファターゼ、ヌクレオシド二リン酸キナーゼ、E. coli 由来tRNA、クレアチンリン酸、グルタミン酸カリウム、HEPES-KOH pH7.6、酢酸マグネシウム、スペルミジン、ジチオスレイトール、GTP、ATP、CTP、UTPなどを適宜取捨選択して混合したPURESYSTEM等の公知の無細胞翻訳系にmRNAを加えることによって行うことが出来る。また、T7 RNA polymeraseを加えておけば、T7プロモーターを含む鋳型DNAからの転写、翻訳を共役して行なうこともできる。また、所望のアミノアシルtRNA群やアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)が許容する非天然アミノ酸群(例えばF-Tyr)を系に添加することによって非天然アミノ酸を含むペプチド化合物を翻訳合成することが出来る(Kawakami T, et al. Ribosomal synthesis of polypeptoids andpeptoid-peptide hybrids. J Am Chem Soc. 2008, 130, 16861-3., Kawakami T, et al.Diverse backbone-cyclized peptides via codon reprogramming. Nat Chem Biol.2009, 5, 888-90.)。さらに、天然のARSに代えて又はこれらに加えて、ARSの改変体を系に含めるとともに、非天然アミノ酸群を系に含めることによっても、非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳することが出来る。あるいは、リボソームやEF-Tuなどの変異体を利用することによって、非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAの翻訳、およびそれに伴う非天然アミノ酸の導入の効率を高めることも出来る(Dedkova LM, et al. Construction of modified ribosomes forincorporation of D-amino acids into proteins. Biochemistry. 2006, 45,15541-51., Doi Y, et al. Elongation factor Tu mutants expand amino acidtolerance of protein biosynthesis system. J Am Chem Soc. 2007, 129, 14458-62.,Park HS, et al. Expanding the genetic code of Escherichia coli withphosphoserine. Science. 2011, 333, 1151-4.)。
【0095】
また本開示における翻訳系は、本開示における改変されたL31タンパク質を含むリボソームを、当該翻訳系に含まれる全リボソームに対し、分子数の比率で、少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上)の割合で含むことが好ましい。「全リボソーム」としては、翻訳系に含まれるリボソームである限り特に限定されないが、本開示における改変されたL31タンパク質を含むリボソームとそれ以外のリボソーム(例えば、大腸菌野生型L31を含むリボソームおよびそれと機能的に同等なリボソーム)との合計を例示することができる。
改変されたL31タンパク質の翻訳系に含まれる全リボソームに対する割合は、例えば質量分析器による改変されたL31タンパク質の強度と全リボソームの強度の比率に基づいて算出することができる。
【0096】
また本開示における翻訳系は、マグネシウムイオンを含むことが好ましい。リボソームのスモールサブユニットとラージサブユニットの会合状態の維持にはマグネシウムイオンが必要であることが知られている。L31タンパク質はリボソームのラージサブユニットとスモールサブユニットの相互作用を形成するタンパク質の一つである。L31タンパク質を欠損しているリボソームや、shortL31を含むリボソームは、会合状態を保つために必要なマグネシウムイオン濃度が、intactなL31を含むリボソームより高いことが明らかにされている。したがって、改変されたL31タンパク質を含むリボソームが用いられる本開示における製造方法においては、マグネシウムイオン濃度を、intactなL31を含むリボソームが用いられる翻訳系におけるマグネシウムイオン濃度よりも高くすることが好ましい。このような翻訳系を調製するために、本発明の方法においては、マグネシウムイオンを本発明における翻訳系に加える工程をさらに含むことができる。あるいは、本発明においては、マグネシウムイオンがあらかじめ加えられた翻訳系を使用することもできる。加えられるマグネシウムの量は特に限定されないが、例えば、1mM以上、2mM以上、3mM以上、4mM以上、5mM以上、6mM以上または7mM以上の値から選択される下限と、9mM以下、8mM以下、7mM以下、6mM以下、5mM以下、4mM以下、3mM以下から選択される上限との任意の組み合わせによって特定可能な範囲を例示することができる。
【0097】
tRNA
非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを翻訳することにより非天然アミノ酸をペプチドに導入にするにあっては、直交性を有し効率よくリボソームに取り込まれるtRNA((i)Biochemistry. 2003;42:9598-608.Adaptation of an orthogonalarchaeal leucyl-tRNA and synthetase pair for four-base, amber, and opalsuppression. Anderson JC, Schultz PG., (ii)Chem Biol. 2003;10:1077-84.Using asolid-phase ribozyme aminoacylation system to reprogram the geneticcode.Murakami H, Kourouklis D, Suga H.)のアミノアシル化が必要である。tRNAをアミノアシル化する方法として以下の5つの方法を用いることができる。
【0098】
細胞内ではtRNAのアミノアシル化のための酵素として、アミノ酸別にアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)が用意されている。そのため第一の方法としては、ある種のARSがN-Me Hisなど非天然アミノ酸を許容することを利用する方法や、非天然アミノ酸を許容する変異アミノアシルtRNA合成酵素を用意し、これを利用する方法が挙げられる((i)Proc NatlAcad Sci U S A. 2002;99:9715-20. An engineered Escherichia coli tyrosyl-tRNAsynthetase for site-specific incorporation of an unnatural amino acid intoproteins in eukaryotic translationand its application in a wheat germ cell-freesystem.Kiga D, Sakamoto K, Kodama K, Kigawa T, Matsuda T, Yabuki T, Shirouzu M,Harada Y, Nakayama H, Takio K, Hasegawa Y, Endo Y, Hirao I, Yokoyama S.(ii)Science.2003;301:964-7.An expanded eukaryotic genetic code.Chin JW, Cropp TA, AndersonJC, Mukherji M, Zhang Z, Schultz PG. Chin,JW.(iii) Proc Natl Acad Sci U S A.2006;103:4356-61.Enzymatic aminoacylation of tRNA with unnatural aminoacids.Hartman MC, Josephson K, Szostak JW.)。第二に、試験管内でtRNAをアミノアシル化しその後アミノ酸を化学修飾する方法も用いることができる(J Am Chem Soc. 2008;130:6131-6.Ribosomal synthesis of N-methylpeptides.Subtelny AO, Hartman MC, Szostak JW.)。第三に、tRNAの3'末端のCCA配列からCAを除いたものと別途調製したアミノアシル化したpdCpAとをRNAリガーゼで結合させることでアミノアシルtRNAを得ることが出来る(Biochemistry.1984;23:1468-73.T4 RNA ligase mediated preparation of novel "chemicallymisacylated" tRNAPheS.Heckler TG, Chang LH, Zama Y, Naka T, Chorghade MS,Hecht SM.)。種々の非天然アミノ酸の活性エステルをtRNAに担持させるリボザイムであるフレキシザイムによるアミノアシル化もある(J Am Chem Soc. 2002;124:6834-5.Aminoacyl-tRNA synthesis by aresin-immobilized ribozyme.Murakami H, Bonzagni NJ, Suga H.)。第四に、tRNAとアミノ酸活性エステルとをカチオン性ミセル中で超音波混合する方法も用いることができる(Chem Commun (Camb). 2005;(34):4321-3.Simple and quick chemicalaminoacylation of tRNA in cationic micellar solution under ultrasonicagitation. Hashimoto N, Ninomiya K, Endo T, Sisido M.)。第五として、tRNAの3'末端付近に相補的なPNAにアミノ酸活性エステルを結合したものをtRNAに加えることによってもアミノアシル化が可能である(J Am Chem Soc.2004;126:15984-9.In situ chemical aminoacylation with amino acid thioesterslinked to a peptide nucleic acid.Ninomiya K, Minohata T, NishimuraM, Sisido M.)。
【0099】
より具体的には、以下のような方法を用いてアミノアシルtRNAを作製することができる。所望のtRNA配列をコードし、上流にT7、T3もしくはSP6プロモーターを配置した鋳型DNAを用意し、T7 RNA polymeraseやT3, SP6 RNA polymeraseなどプロモーターに適応したRNAポリメラーゼを利用して転写によってRNAを合成することが出来る。細胞からtRNAを抽出精製し、tRNAの配列の相補配列のプローブを用いて目的の生成tRNAを抽出することも出来る。この際目的のtRNAの発現ベクターで形質転換した細胞をソースにすることも出来る。化学合成によって目的の配列のRNAを合成することも出来る。例えば、このようにして得られた3'末端のCCA配列からCAを除いたtRNAと別途調製したアミノアシル化したpdCpAまたはpCpAとをRNAリガーゼで結合させることでアミノアシルtRNAを得ることが出来る(pdCpA法、pCpA法)。当該tRNAは、ペプチドの製造において有用である。あるいは、全長tRNAを用意し、種々の非天然アミノ酸の活性エステルをtRNAに担持させるリボザイムであるフレキシザイムによるアミノアシル化も可能である。また、限定を意図しないが、天然のARS又はその改変体を用いて、アミノアシルtRNAを作製することもできる。天然ARS又はその改変体を用いると、翻訳系内で一旦消費されたアミノアシルtRNAが、天然ARSやその改変体によって再生成され得るため、予め作製したアミノアシルtRNAを翻訳系に大量に存在させる必要がない。このようなARS改変体は、WO2016/148044に記載される。これらのアミノアシルtRNAの作製方法を適宜組み合わせることもできる。
【0100】
ペプチドの環化
非限定的な一態様において、本開示におけるペプチドまたはペプチドを含むライブラリの製造方法においては、翻訳されたペプチドを環化する工程をさらに含むことができる。環化の態様として、例えば、アミド結合、炭素-炭素結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、エステル結合、チオエステル結合、ラクタム結合、トリアゾール構造を介した結合、フルオロフォア構造を介した結合等を利用した環化が挙げられる。中でも代謝安定性が高いことから、アミド結合が好ましい。ペプチドの翻訳工程と環化反応の工程は、分離していても、連続して進行してもよい。環化は、例えばWO2013/100132、WO2008/117833、WO2012/074129等に記載された当業者に公知の方法により行うことができる。
【0101】
環形成における結合の態様は、限定されないが、ペプチドのN末端とC末端の結合、ペプチドのN末端と他のアミノ酸残基の側鎖の結合、ペプチドのC末端と他のアミノ酸残基の側鎖の結合、又はアミノ酸残基の側鎖同士の結合のいずれであってもよく、これらの二以上を組み合わせて使用してもよい。
【0102】
非限定の一態様において、本発明は、例えば、以下の工程を含むペプチドまたはペプチドを含むライブラリの製造方法に関する:
(1)1種または複数種の非天然アミノ酸を含む非環状のペプチドを、本明細書に記載の方法によって製造する工程であって、該非環状のペプチドは、C末端側に側鎖の1つに反応点を有するアミノ酸残基、及び、N末端側にもう1つの反応点を有するアミノ酸残基を含む、工程;及び
(2)N末端側のアミノ酸残基の反応点と、C末端側の側鎖に反応点有するアミノ酸残基の当該反応点とを結合させ、アミド結合、炭素-炭素結合又はチオエーテル結合を形成させる工程。
なお、これら(1)と(2)の工程は、分離していても、連続して進行してもよい。
【0103】
具体的には、アミド結合によるペプチドの環化方法の非限定的な一態様として、N末端のメチオニンのアミノ基と下流(C末端側)に配置したリジンのアミノ基をジスクシンイミジル・グルタレート(DSG)でクロスリンクさせることによる環化方法やN末端の翻訳開始アミノ酸としてクロロアセチル基を有するアミノ酸誘導体を導入し、下流にCysを配置することによって分子内環化反応によりチオエーテルを形成させることによる環化方法、N末端にシステインまたはシステイン類縁体を持ち、C末端側のアミノ酸の側鎖に活性エステルを持つペプチドを翻訳してネイティブケミカルライゲーションを用いて環化させる方法がある。
【0104】
非限定の一態様において、本開示におけるペプチドのC末端部位はカルボン酸のままではなく、化学修飾されていてよい。例えば、カルボン酸部位をピペリジンなどと反応させ、ピペリジンアミドなどに変換してよい。
【0105】
ライブラリ
また本発明は、本明細書に記載されたペプチドの製造方法により製造されたペプチドおよび当該ペプチドを含むライブラリに関する。また本発明は、本明細書に記載されたペプチドの製造方法によってペプチドを製造する工程を含む、当該ペプチドを含むライブラリに関する。本開示におけるライブラリには、本開示におけるペプチドを含むライブラリ、及び本開示におけるペプチドをコードする核酸を含むライブラリが含まれる。本開示におけるライブラリには、本開示におけるペプチドのライブラリ、ペプチド-核酸複合体のライブラリが含まれる。ライブラリとしては、ディスプレイライブラリが好ましい。ディスプレイライブラリとしては、ディスプレイを利用したライブラリが例示され、中でもmRNAディスプレイライブラリ、DNAディスプレイライブラリ、リボソームディスプレイライブラリが好ましく、mRNAディスプレイライブラリがより好ましい。
【0106】
ディスプレイライブラリ
ディスプレイライブラリは表現型であるペプチドとその遺伝子型であるペプチドをコードするRNAもしくはDNAが対応付けられているライブラリである。このライブラリを使用して、標的分子に特異的に結合できるペプチドを同定することができる。例えば、所望の固定した標的にライブラリを接触させ、標的に結合しない分子を洗い流すことで、標的に結合するペプチドの濃縮が可能である(パニング法)。このような過程を経て選択されたペプチドに対応付けられている遺伝子情報を解析することで標的に結合したペプチドの配列を明らかにすることができる。例えば、アミノアシルtRNAのアナログである抗生物質ピューロマイシンがリボソームによるmRNA翻訳伸長中の蛋白質に非特異的に連結されることを利用する方法がmRNAディスプレイ(Proc Natl Acad Sci USA.1997;94:12297-302. RNA-peptide fusions for the in vitro selection of peptidesand proteins. Roberts RW, Szostak JW.)ないしはin vitrovirus(FEBS Lett. 1997;414:405-8. In vitro virus: bonding of mRNA bearingpuromycin at the 3'-terminal end to the C-terminal end of its encoded proteinon the ribosome in vitro. Nemoto N, Miyamoto-Sato E, Husimi Y, Yanagawa H.)として報告されている。
【0107】
T7プロモーターなどのプロモーターを含むDNAライブラリから転写にて得たmRNAのライブラリの3'端にピューロマイシンなどのスペーサーを結合しておき、無細胞翻訳系でmRNAをタンパク質に翻訳させるとピューロマイシンがリボソームによってアミノ酸と間違ってタンパク質に取り込まれ、mRNAとこれにコードされる蛋白質が連結され、mRNAとその産物が対応付けられたライブラリになる。この過程では大腸菌などの形質転換を含まないため高い効率が実現され、大規模なディスプレイライブラリを構築することが出来る。パニングで濃縮、選択された分子についている遺伝子情報を含むタグであるmRNAからcDNAを合成し、PCR増幅し、塩基配列を解析することで結合したペプチドの配列を明らかにすることが出来る。
【0108】
無細胞翻訳系を利用したディスプレイライブラリには、mRNAディスプレイの他に、ペプチドとピューロマイシンの複合体が結合しているペプチドをコードするcDNAからなるライブラリであるcDNAディスプレイ(Nucleic Acids Res.2009;37(16):e108.cDNA display: a novel screening method for functionaldisulfide-rich peptides by solid-phase synthesis and stabilizationofmRNA-protein fusions.Yamaguchi J, Naimuddin M, Biyani M, Sasaki T, Machida M,Kubo T, Funatsu T, Husimi Y, Nemoto N.)、mRNA翻訳中にリボソームと翻訳産物が比較的安定な複合体であることを利用したリボソームディスプレイ(Proc Natl Acad Sci U S A. 1994;91:9022-6. An in vitro polysomedisplay system for identifying ligands from very large peptide libraries.Mattheakis LC, Bhatt RR, Dower WJ.)、bacteriophageendonuclease P2AがDNAと共有結合を形成することを利用したcovalent display(Nucleic AcidsRes. 2005;33:e10.Covalent antibodydisplay--an in vitro antibody-DNA library selection system.Reiersen H, LobersliI, Loset GA, Hvattum E, Simonsen B, Stacy JE, McGregor D, Fitzgerald K,Welschof M, Brekke OH, Marvik OJ.)、微生物のプラスミドの複製開始蛋白RepAが複製開始点oriに結合することを利用したCIS display(Proc Natl AcadSci U S A. 2004;101:2806-10. CIS display: In vitro selection of peptides fromlibrariesof protein-DNA complexes. Odegrip R, Coomber D, Eldridge B, HedererR,Kuhlman PA, Ullman C, FitzGerald K, McGregor D.)が知られている。また、DNAライブラリを構成するDNAの1分子毎に転写翻訳系をwater-in-oilエマルジョンやリポソームに封入し、翻訳反応を行うin vitrocompartmentalization(Nat Biotechnol. 1998;16:652-6. Man-made cell-likecompartments for molecular evolution. Tawfik DS, Griffiths AD.)も知られている。適宜、公知の方法を用いて上記方法を使用することができる。
【0109】
核酸ライブラリ
本開示における「核酸」には、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)あるいは、人工塩基を有するヌクレオチド誘導体を含むこともできる。また、ペプチド核酸(PNA)を含むこともできる。本開示において核酸は、目的とする遺伝情報が保持される限り、これらの核酸のいずれか、あるいは混成とすることもできる。すなわち、DNA-RNAのハイブリッドヌクレオチドやDNAとRNAのような異なる核酸が一本鎖に連結されたキメラ核酸も本開示における核酸に含まれる。
【0110】
ペプチドライブラリに含まれるペプチドの鋳型となる核酸のライブラリとしては、mRNAライブラリ、DNAライブラリ等が例示される。ペプチド配列上でアミノ酸残基を固定しない箇所は塩基を混ぜて合成することによって、核酸ライブラリを得ることができる。例えば、DNAライブラリとしては、A, T, G, C、RNAライブラリとしては、A, U, G, Cのそれぞれ4塩基の混合(N)の3の倍数個の繰り返し、もしくはコドンの一文字目二文字目はN、三文字目はW, M, K, Sなどの2塩基の混合として合成する、さらに導入するアミノ酸の種類を16以下に抑えるのであれば、三文字目を1種類の塩基にする方法もある。また、コドンの3文字に相当するコドンユニットを用意し、これを任意の割合で混合して合成に用いることによってアミノ酸残基の出現頻度を自由に調整できる。
【0111】
無細胞翻訳系を用いてこれら核酸ライブラリを翻訳することができる。無細胞翻訳系を使用する場合、目的の核酸の下流にスペーサーをコードする配列を含むことが好ましい。スペーサー配列としては、グリシンやセリンを含む配列が挙げられるがこれに限定されない。またピューロマイシン、その誘導体などリボソームによる翻訳時にペプチドに取り込まれる化合物と核酸ライブラリの間には、RNA、DNA、ヘキサエチレングリコール(spc18)のポリマー(例えば5つのポリマー)などで形成されるリンカーを含むことが好ましい。
【0112】
本開示におけるライブラリの製造は、本開示におけるペプチドの製造方法に準じて行うことができ、適宜公知の方法と組み合わせることができる。一態様において、上述した本開示における無細胞翻訳系を使用して本開示におけるペプチドのライブラリを製造できる。すなわち、本開示におけるライブラリの製造方法には、本開示における無細胞翻訳系を使用してペプチドを合成する工程を含んでよい。一態様において、本開示における無細胞翻訳系において記述した、例示、好ましい範囲、態様が、本開示におけるライブラリの製造方法においてもそのまま適用できる。
【0113】
スクリーニング方法
非限定の一態様において、本開示におけるライブラリを使用したスクリーニングにより、標的分子に特異的に結合できるペプチドを選択することができる。
【0114】
非限定の一態様において、本開示におけるスクリーニング方法は、本開示における1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドのライブラリと標的分子を接触させ、標的分子に結合しないペプチドを洗い流すことで標的分子に結合するペプチドを濃縮することができる(パニング)。一態様においては、このようにして選択されたペプチドに含まれる塩基配列情報を含むタグであるmRNAからcDNAを合成し、PCR増幅し、塩基配列を解析することで、結合したペプチドのアミノ酸配列を明らかにすることができる。なお、一態様において、上記で増幅されたcDNAを転写することによって、mRNAライブラリを得てもよく、これらを鋳型として再度ペプチドのライブラリを製造してもよい。このライブラリは標的分子に結合できるペプチドが濃縮されているため、このライブラリを用いて再度パニングを行うことで、標的分子に特異的に結合できるペプチドを、より濃縮することができる。この工程を複数回繰り返すことにより、目的のペプチドを、更に濃縮することができる。一態様において、このようにして濃縮されたペプチドに含まれる塩基配列情報を基にアミノ酸配列を同定し、標的分子に特異的に結合できるペプチドを製造することができる。一態様において、本開示におけるスクリーニング方法は、in vitroで行うことができる。
【0115】
非限定の一態様において、本開示におけるスクリーニング方法により得られたペプチドを公知の方法により化学修飾等することで、ペプチドを最適化してもよい。本明細書において「最適化」とは、翻訳されたペプチド中のそれぞれのアミノ酸の構造を変換させることにより、よりドラッグライクなペプチドとなるように化学修飾する、より薬効標的に強い活性を有するペプチドとなるように化学修飾する、及び/又は、より毒性が回避されたペプチドとなるように化学修飾することを意味する。
【0116】
非限定の一態様において、本開示におけるスクリーニング方法は、以下の工程を含む:
(a)本開示におけるライブラリに含まれるペプチドと標的分子を接触させる工程;
(b)前記標的分子に結合できるペプチドを選択する工程。
本開示におけるスクリーニング方法は、上記工程(a)の前に、本明細書に記載の方法によってライブラリを取得する工程を含むことができる。当該ライブラリは、本開示におけるペプチドの製造方法に倣って取得することができる。
【0117】
一態様において、本開示におけるスクリーニング方法は、前記の(a)及び(b)の工程を2回以上繰り返すことで、標的分子に特異的に結合できるペプチドを濃縮してもよい。
【0118】
標的分子
本開示におけるスクリーニング方法に用いられる標的分子は特に限定されず、タンパク質、ペプチド、核酸、糖、脂質などが例示されるが、中でもタンパク質を標的とすることが好ましい。また生体内における標的分子の存在場所も特に限定されない。一態様において、細胞内のタンパク質を標的とすることもできる。
【0119】
非限定の一態様において、本開示におけるスクリーニング方法に用いられる標的分子は、担体に固定して使用される。担体としては、標的分子を固定することができれば特に限定されないが、ビーズ又は樹脂が例示される。標的分子は公知の方法により担体に固定することができる。
【0120】
上述のとおり、本開示におけるライブラリ及びスクリーニング方法の標的分子は、特に限定されないが、GTPase KRas (KRAS)、Dual specificitymitogen-activated protein kinase kinase 1 (MEK1)、Mitogen-sctivatedprotein kinase 3 (ERK1)、インターロイキン6受容体 (IL-6R) が例示される。実施例に記載されるように、本開示におけるライブラリは、様々な標的分子に対し特異的に結合できるペプチドを含むため、一態様において、これまで創薬が困難とされてきたtough targetへの創薬を可能にし得る。
【0121】
非限定の一態様において、本開示におけるペプチドの製造方法は、以下の工程を含んでいてよい:
(i)本開示におけるライブラリに含まれるペプチドと標的分子を接触させる工程;
(ii)該標的分子に結合できるペプチドを選択する工程;及び
(iii)(ii)で選択されたペプチドのアミノ酸配列に基づき、ペプチドを製造する工程。
上記方法は、本明細書に記載の方法によってライブラリを取得する工程を含むことができる。
【0122】
非限定の一態様において、本開示におけるライブラリの製造方法、ペプチドの製造方法、及び/又はスクリーニング方法はin vitroで行ってよい。
【0123】
一局面において、本開示におけるペプチドは、環化されたものであってもよい。
【0124】
改変されたL31タンパク質をコードする核酸等
また本発明は、本開示の改変されたL31タンパク質、当該タンパク質を含むリボソーム、当該タンパク質をコードする単離された核酸に関する。また本発明は、当該核酸を含むベクターまたは細胞に関する。
本開示の改変されたL31タンパク質としては、例えば、以下(1)~(6)を挙げることができる。
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において、C末端から6以上のアミノ酸残基、8以上のアミノ酸残基、または9以上のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含むタンパク質、
(2)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が挿入、置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
(3)前記(1)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
(4)配列番号:2および42~48より選択されるいずれかで表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(5)配列番号:2および42~48より選択されるいずれかで表されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質、および
(6)配列番号:2および42~48より選択されるいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であって、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質。
本開示における改変されたL31タンパク質、当該タンパク質を含むリボソーム、当該タンパク質をコードする単離された核酸等は、例えば、本開示における非天然アミノ酸を含むペプチドや当該ペプチドを含むライブラリの製造等に利用することが可能である。
【0125】
本開示において「単離された」核酸とは、自然環境の要素から分けられた核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、該核酸分子は、染色体外に存在するか、その天然の染色体位置とは違う位置に存在している。天然の染色体に存在しない核酸の場合には、単離された核酸は、細胞内のいずれの位置に存在していてもよい。本開示における「核酸」にはDNA(ゲノムDNA、cDNA)およびRNAが含まれる。
【0126】
本明細書で言い換え可能に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーのことをいい、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによってまたは合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の物質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらのアナログなどの修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドの配列に、非ヌクレオチド成分が割り込んでいてもよい。ポリヌクレオチドは、標識へのコンジュゲーションなどの、合成後になされる修飾を含み得る。他のタイプの修飾は、例えば、「キャップ」、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドとアナログとの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミド酸、カルバメート等)および荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)を伴うもの、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)などのペンダント部分を含むもの、インターカレート剤(例えば、アクリジン、ソラレン等)を伴うもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾連結(例えば、アルファアノマー核酸等)や非修飾形態のポリヌクレオチドを伴うものを含む。さらに、通常糖に存在する任意のヒドロキシル基は、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置換され得、標準的な保護基によって保護され得、もしくはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を生成するよう活性化され得、または固体もしくは半固体支持体にコンジュゲートされ得る。5’および3’末端のOHは、リン酸化またはアミンもしくは1~20炭素原子の有機キャップ基部分で置換され得る。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化され得る。ポリヌクレオチドはまた、例えば以下のものを含む、当技術分野で一般に公知となっているリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態を含み得る:2'-O-メチル-、2'-O-アリル-、2'-フルオロ-、または2'-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、α-アノマー糖、アラビノースまたはキシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、およびメチルリボシドなどの塩基性ヌクレオシドアナログ。1つまたは複数のホスホジエステル結合は、代替の連結基によって置き換えられ得る。これらの代替の連結基は、これらに限定されるものではないが、ホスフェートが以下のものによって置き換えられている態様を含む:P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)、ここで、各RまたはR'は独立してH、または、任意でエーテル(-O-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルを含む置換もしくは非置換アルキル(1~20C)である。ポリヌクレオチド中のすべての連結が同一である必要はない。上記の説明は、RNAおよびDNAを含む本明細書で言及されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0127】
本開示における改変されたL31タンパク質をコードする核酸を調製するための方法として、例えば、site-directed mutagenesis法(Kramer, W. andFritz,H.-J. (1987) Oligonucleotide-directed construction of mutagenesis viagapped duplex DNA.Methods in Enzymology, 154: 350-367)が挙げられる。あるいは、ハイブリダイゼーション技術(Southern, E.M. (1975) Journal of Molecular Biology, 98, 503)によっても、配列番号:2および42~48より選択されるいずれかに記載の改変されたL31タンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする核酸を得ることも可能である。すなわち、本開示における改変されたL31タンパク質をコードする核酸は、配列番号:2および42~48より選択されるいずれかに記載のアミノ酸配列をコードする核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものであってもよい。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、当業者であれば、適宜選択することができる。一例を示せば、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4×SSC、50mM Hepes pH7.0、10×デンハルト溶液、20μg/ml変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを行う。その後の洗浄における洗浄液および温度条件は、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1xSSC、0.1% SDS、37℃」程度で、より厳しい条件としては「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5xSSC、0.1%SDS、42℃」程度で、さらに厳しい条件としては「0.2xSSC、0.1% SDS、65℃」程度で実施することができる。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほど、配列番号:2および42~48より選択されるいずれかに記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列と高い相同性を有する核酸の単離を期待しうる。但し、上記SSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0128】
これにより単離された核酸は、アミノ酸レベルにおいて、配列番号:2および42~48より選択されるいずれかに記載の改変されたL31タンパク質と高い相同性を有すると考えられる。また塩基配列レベルにおいて、配列番号:2および42~48より選択されるいずれかに記載のアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列と高い相同性を有すると考えられる。高い相同性とは、上述の通り、アミノ酸配列全体あるいは塩基配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を指す。
【0129】
本発明の核酸は、例えば、改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームの調製などに利用することが可能である。改変されたL31の組み換えタンパク質、またはこれを含むリボソームを調製する場合には、通常、改変されたL31タンパク質をコードする核酸を適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な細胞に導入し、形質転換細胞を培養して、発現させた改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームを単離、精製、培養する。改変されたL31タンパク質は、精製を容易にするなどの目的で、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも可能である。例えば、大腸菌を宿主としてマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として調製する方法(米国New England BioLabs社発売のベクターpMALシリーズ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として調製する方法(Amersham Pharmacia Biotech社発売のベクターpGEXシリーズ)、ヒスチジンタグを付加して調製する方法(Novagen社のpETシリーズ)などを利用することが可能である。
【0130】
非限定の一態様において、ベクターは、相同組換えによって本発明の核酸がノックインされたノックインベクターであってもよい。すなわち、本発明の改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームは、相同組換えにより本発明の核酸をベクターにノックインすることを通して調製することもできる。このようなベクターは、改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームを調製するための本発明の核酸が、大腸菌等の宿主中の標的遺伝子の同一読み取り枠に挿入されるように構築されたものであってもよい。一態様において、本発明の核酸は、ノックインベクターにおいてその翻訳開始点が標的遺伝子の翻訳開始点と一致するように、当該翻訳開始点が含まれるエクソン内に挿入されていることが好ましい。この場合、ノックインベクターにおいて、任意の外来遺伝子の翻訳開始点の5'側には、標的遺伝子の翻訳開始点よりも上流の塩基配列が配置されていることが好ましい。別の一態様において、ノックインベクターの任意の外来遺伝子の5'側にエクソン・イントロン構造配列が付加されている場合には、当該エクソン・イントロン構造の5'側末端が、標的遺伝子の翻訳開始点と一致するように、当該翻訳開始点が含まれるエクソン内に挿入されていることが好ましい。この場合、ノックインベクターにおいて、前記エクソン・イントロン構造の5'側末端の5'側上流には、標的遺伝子の翻訳開始点よりも上流の塩基配列が配置されていることが好ましい。
【0131】
またノックインベクターは、宿主細胞内において複製する能力を有することが好ましい。ノックインベクターは遺伝子工学に利用されるベクターであれば特に限定されず、公知のベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、コスミドベクター、細菌人工染色体(BAC)ベクター、酵母人工染色体(YAC)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターその他のウイルスベクター等が挙げられる。
【0132】
宿主細胞としては、組み換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、上記の大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動植物細胞、昆虫細胞などを用いることが可能である。宿主細胞へのベクターの導入には、当業者に公知の種々の方法を用いることが可能である。例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法(Mandel, M., Higa, A. (1970) Journal of Molecular Biology, 53,158-162、Hanahan, D. (1983) Journal of MolecularBiology, 166, 557-580)を用いることができる。宿主細胞内で発現させた改変されたL31タンパク質は、該宿主細胞またはその細胞培養物もしくは培養上清から、当業者に公知の方法により精製し、回収することが可能である。改変されたL31タンパク質を上記のマルトース結合タンパク質などとの融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。
【0133】
本開示の一態様において、本発明の核酸はベクターに挿入されたものであってもよい。ベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、XL1Blue)等で大量に増幅させ大量調製するために、大腸菌で増幅されるための「ori」をもち、さらに形質転換された大腸菌の選抜遺伝子(例えば、薬剤(アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール等)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有するベクターが挙げられるがこれに限定されない。このようなベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Script等が挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM-T、pDIRECT、pT7等が挙げられる。改変されたL31タンパク質を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1-Blue等の大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら,Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーター(Betterら,Science (1988) 240, 1041-1043 )、またはT7プロモーター等を持っていることが不可欠である。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(ファルマシア社製)、「QIAexpress system」(キアゲン社製)、pEGFP、またはpET等が挙げられる。
【0134】
また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。ポリペプチド分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol.(1987) 169, 4379)を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。また植物体内で発現するベクターとしてpMH1、pMH2、pCAMBIAなどのベクターが挙げられる。
【0135】
大腸菌以外にも、例えば、改変されたL31タンパク質を製造するためのベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3 (インビトロゲン社製)や、pEGF-BOS(Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BACbaculovairus expression system」(ギブコBRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia ExpressionKit」(インビトロゲン社製)、pNV11、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)等が挙げられる。
【0136】
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら,Nature (1979) 277, 108)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーター等を持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418等)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13等が挙げられる。
【0137】
本発明の形質転換細胞は、例えば、改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームの製造や発現のための産生系として使用することができる。タンパク質の製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。
【0138】
真核細胞を使用する場合、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞(例えば、上述のCHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞に加え、3T3、ミエローマ細胞、BHK (babyhamster kidney)、HeLa、Vero等の細胞)、両生類細胞(例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358-340))、あるいは昆虫細胞(例えば、sf9 、sf21、Tn5等の細胞)が知られている。CHO 細胞としては、特に、DHFR遺伝子を欠損したCHO 細胞であるdhfr-CHO(Proc.Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220)やCHO K-1 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。
【0139】
植物細胞としては、後述の植物由来の細胞の他、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotianatabacum )由来の細胞がタンパク質生産系として知られており、これをカルス培養すればよい。
また真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が知られているがこれらに限定されない。
【0140】
本開示において、改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームは、野生型大腸菌の培養物から精製することによっても取得することもできる。すなわち、培養された野生型大腸菌を低濃度のマグネシウムイオンを含むバッファーに懸濁し、それを破砕することにより、改変されたL31タンパク質を含む溶解液を得ることができる。具体的には、野生型大腸菌を、例えば5mM以下(より具体的には、例えば4mM以下、3mM以下、2mM以下、1mM以下、または0mM)のマグネシウムイオンを含むバッファー中で破砕することにより、本明細書に記載の配列番号:1に記載された大腸菌野生型L31タンパク質と本開示における改変されたL31タンパク質とを含む溶解液を得ることができる。大腸菌体の破砕は、フレンチプレスによる破砕、超音波処理による破砕、ホモジナイザーによる破砕、ガラズビーズによる破砕、乳鉢による破砕など、当業者に公知の手法を用いて行うことができるが、本開示においてはフレンチプレスによる破砕が好ましい。このようにして調製される溶解液を当業者に公知の手法により精製すると、改変されたL31タンパク質、またはこれを含むリボソームを単離、取得することができる。
【0141】
本発明の別の局面において、本開示における改変されたL31タンパク質を含むリボソームを含む組成物が提供される。本開示における組成物は、例えば、非天然アミノ酸を含むペプチドの製造等における翻訳系またはその一部として利用することが可能である。したがって本開示における組成物は、本開示における改変されたL31タンパク質を含むリボソームに加え、例えば、非天然アミノ酸とtRNAが結合してなるアミノアシルtRNA、1種または複数種の非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNA等をさらに含むことが好ましい。本開示における組成物は、本開示における改変されたL31タンパク質を含むリボソームを、当該組成物に含まれる全リボソームに対し少なくとも、分子数の比率で50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上)の割合で含むことが好ましい。
【0142】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0143】
以下に、実施例で本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の内容は必ずしも以下の実施例にのみ限定されるものではない。なお、実施例中では以下の略号を使用した。
AA 酢酸アンモニウム
CHCN シアノメチル基
CHCN アセトニトリル
CTACl N,N,N-トリメチルヘキサデカン-1-アミニウム 塩化物
DBU 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
FA ギ酸
Fmoc 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基
F-Pnaz 4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジルオキシカルボニル基:
【化1】

MeCN アセトニトリル
NMP N-メチル‐2‐ピロリドン
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフランTM 目的産物
【0144】
MePheをMeF、Pic(2)をPic2、GlyをG、IleをI、ProをP、ThrをT、MeSer(tBuOH)をMeStBuOH、D-AlaをdA、LeuをL、BODIPYFL-4-AMFをBdp4AMF、Acbz-D-MeCys(StBu)をAcbzdMeCStBu、Acbz-MeCys(StBu)をAcbzMeCStBu、Acbz-Cys(StBu)をAcbzCStBuと省略して記載することがある。
【0145】
実施例1.大腸菌株の構築
ompT(Protease7)の欠損株(L31intact株と定義する)および、L31タンパク質のN末端側62アミノ酸までを発現するL31short株を構築した。リボソームの精製過程において、Protease7はL31タンパク質の62番目のアミノ酸と63番目のアミノ酸の間で分解する事が知られている。
Quick and Easy Conditional Knockout Kit(loxP/Cre)(Gene Bridges 社)のキットに従い、大腸菌株を構築した。
【0146】
ホモロジーアームが付加した機能カセットの作成
機能カセットloxP-PGK-gb2-neo-loxP (Gene Bridges 社, A003)を鋳型に用いてPrime STAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社, R010A)にてPCR反応をおこなった。得られたPCR産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社, 28104)を用いて精製した。機能カセットの濃度は200ng/μL程度であった。ompT(Protease7)欠損株作成用の機能カセットCassette-1はOligo1(配列番号:3), Oligo2(配列番号:4)のプライマーを用いてPCRを行った。L31short株作成用の機能カセットCassette-2はOligo3(配列番号:5)、Oligo4(配列番号:6)のプライマーセットを用いてPCRを行った。
【0147】
大腸菌株の作成
Quick and Easy Conditional Knockout Kit(loxP/Cre)(Gene Bridges 社)のキットに記載のプロトコルに従って実施した。大腸菌 W3110 株 (Escherichia coli K-12 W3110)を用いて、pRed/ETを形質転換し、Red/ETを発現するコンピテントセルを調製した。機能カセットCasette-1もしくはCasette-2を、調製したコンピテントセルにエレクトロポレーションで導入し、相同組換えを誘導した。得られたコロニーよりコロニーPCRをおこない、増幅されたDNAの長さからカナマイシンカセットの導入かつ目的の遺伝子の欠損あるいは一部欠損を確認した。キット記載のプロトコルに従い、取得した目的の大腸菌株よりLoxp配列で挟まれたカナマイシン耐性遺伝子カセットを欠失させた。取得した大腸菌をシングルコロニー化し、遺伝子組み換え箇所のゲノムDNAの配列を読むことで、目的の株の完成を確認した。
【0148】
実施例2.リボソームの調製方法
大腸菌の培養
W3110株(WT)の培養をおこなった。
前培養培地(Glycerol 5g/L, Yeast Extract 6g/L,KH2PO4, 4g/L, K2HPO4 9.3g/L)に菌体W3110株を植菌し、前培養を行った。前培養菌をOD600=0.1になるように本培養用培地(Glycerol 10 g/L, Yeast Extract 10 g/L, ポリペプトンN 15 g/L, KH2PO4 4 g/L , MgSO4・7H2O 2.4g/L , FeSO4・7H2O0.04g/L, CaCl2・2H2O 0.04g/L,アデカノールLG-109 0.24g/L)30Lに添加した。培養は50L培養槽で行った。37℃で5.4時間培養し、OD600=33.5になったところで回収した。培養液は、500mlずつ分注し、室温に1時間、4℃に1時間静置した。静置後 6000×g, 10minで遠心し、沈澱をD-PBS(-)(タカラバイオ社、T9181)で懸濁して再度6000×g、10分で遠心操作を行った。回収した菌体は液体窒素で凍結し、-80℃で保管した。
【0149】
L31short株、もしくはL31intact株の培養
培養にはLB培地、Miller(ナカライテスク社、20068-75)を使用した。菌体の前培養を行った。前培養した菌体を、OD600=0.05になるように本培養培地に添加した。培養は3Lバッフル付きフラスコ(コーニング社、431253)に、1LのLB培地を添加しておこなった。Climo-shakerISF-1-Xを用いて、37℃で、100rpmで、約2時間40分程度培養して、OD600が1.0程度になった事を確認して、室温に取り出し、1時間静置した。その後4℃で1時間静置した。5000×g、10分で遠心操作を行うことで菌体を回収した。培地と等量のPBS(タカラバイオ社、T9181)で菌体を懸濁して再度5000×g、10分で遠心操作を行った。菌体は液体窒素で凍結し、-80℃で保管した。
【0150】
大腸菌の破砕
L31intact株とL31short株におけるFPを用いた破砕
回収菌体1ODあたり、0.004mLのLysis Buffer(10 mM HEPES-KOH, pH7.6, 5~10 mM MgCl2, 50 mM KCl, 1 mM DTT, 10 μg/mL DNaseI)で懸濁した。FrenchPress(Emulsi Flex B15, AVESTIN)を用いて破砕を行った。圧力設定は40Barであった。破砕速度は約1ml/minになるようにコントロールした。20000×g、30分、4℃で遠心操作を行い、上清を回収した。
WT株におけるFPを用いた破砕
次の組成の3種類のLysisBufferを用意した。
Mg10 Lysis Buffer(10mM HEPES-KOH, pH7.6, 50 mM KCl, 10 mM MgCl2, 1 mM DTT, 10 μg/mLDNaseI)
Mg5 Lysis Buffer(10mM HEPES-KOH, pH7.6, 50 mM KCl, 5 mM MgCl2, 1 mM DTT, 10 μg/mLDNaseI)
Mg0 Lysis Buffer(10mM HEPES-KOH, pH7.6, 50 mM KCl, 1 mM DTT, 10 μg/mL DNaseI)
各種類のLysis Bufferを用いて、回収菌体1ODあたり、0.004mLのLysisBufferで菌体を懸濁した。 FrenchPress(EmulsiFlex B15, AVESTIN)を用いて破砕を行った。圧力設定は40Barであった。破砕速度は約1ml/minになるようにコントロールした。20000×g、30分、4℃で遠心操作を行い、上清を回収した。
【0151】
大腸菌の精製
L31short株、もしくはL31intact株の硫安沈殿
大腸菌破砕液上清に対して等量の2×硫安沈殿用Buffer(10 mM HEPES-KOH, pH7.6, 5~10 mM MgCl2, 50 mM KCl, 3.24M 硫酸アンモニウム, 1mM DTT)を添加して、4℃で30分間撹拌した。4℃、20000×g、40分で遠心操作を行い、上清を回収した。0.22μm (Millipore社)のフィルターでろ過した。
【0152】
WT株の硫安沈殿
大腸菌破砕液上清1mlに対して、乳鉢で細かく砕いた0.222gの硫酸アンモニウムを、スターラーを用いて撹拌しながら添加した。4℃で30分間 撹拌した。4℃、20380×g、40分で遠心操作を行い、上清を回収した。0.22μm (Millipore社) のフィルターでろ過した。
【0153】
Butyl sepharose 精製
Butyl Sepharose 4 FastFlow(GEヘルスケア、17098002)をXK50カラム(GEヘルスケア、28988952)に充填したカラムを使用した。Buffer A(20 mM HEPES-KOH, pH7.6, 10 mM Mg(OAc)2, 1.5 M(NH4)2SO4, 1mM DTT)で、カラムを置換した。2ml/minで、硫安沈殿後のサンプルをカラムに添加した。Buffer Aでカラムを洗浄後、つづいて30% BufferA、70% Buffer B(20 mM HEPES-KOH, pH7.6, 10 mMMg(OAc)2, 1mM DTT)でさらに洗浄した。その後、50% Buffer Aと50% BufferBで溶出した。
【0154】
超遠心精製
30% sucrose Buffer (20 mM HEPES-KOH,pH7.6, 10 mM Mg(OAc)2, 30mM NH4Cl, 30% Sucrose, 1mM DTT)を超遠心チューブの容量の半量添加し、そこに界面を乱さないようにButyl sepharose精製後の溶出液を添加した。99700×g、20時間、4℃で遠心した。ペレットを保存Buffer(20 mM HEPES-KOH, pH7.6, 6mM Mg(OAc)2, 30mM KCl, 1mM DTT)で懸濁した。
最終濃度が20~30μMになるように調製した。
最終的にL31shortリボソーム、L31intactリボソーム、WT-10MGリボソーム(Mg10 Lysis Bufferを使用)、WT-5MGリボソーム(Mg5 Lysis Bufferを使用)、WT-0MGリボソーム(Mg0 LysisBufferを使用)の5種類のリボソームの調製をおこなった。
【0155】
実施例3.L31の分解割合の分析
WT-10MGリボソーム、WT-5MGリボソーム、WT-0MGリボソームのL31の分解割合を分析した。
【0156】
サンプル調製方法
40pmolのリボソームを38μLの水で希釈した。トリフルオロ酢酸を1%になるように添加し、リボソーマルRNAを沈澱させた。遠心操作を行い、上清をマトリックス(50%アセトニトリル、5 mg/ml シナピン酸)と1:1で混合し、MALDI/MS用のプレートに1μLスポットして結晶化した。
【0157】
MALDI/MSでの分析
質量分析器(ABS CIEX・TOF/TOF 5800)を用いて、Liner Positiveモードを用いて測定した。リボソーマルタンパク質を内部スタンダードとしてキャリブレーションを行った。キャリブレーションが正しく行われた測定結果を用いた。IntactなL31の割合は、IntactL31のMS intensityをIntact L31のMSのintensityとShortL31のMS intensityの和で割ることで求めた。N=3 で測定を実施し、平均値をintactなL31の割合とした。
【0158】
L31分解率の分析の結果
WT-10MG リボソームでは71%がintactなL31であった。同様にWT-5MGリボソームは20%、WT-0MG リボソームは7%がintactなL31であった。
【0159】
実施例4.無細胞翻訳系に用いるpCpA-アミノ酸(アミノアシルpCpAともいう)の合成
LCMSの分析条件は下記のとおりである。
【表1】
【0160】
Pnaz-MeSer(tBuOH)-pCpA (TS01)の合成
化合物TS01の合成は、以下のスキームに従って行った。
【化2】
【0161】
N-(((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-O-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-N-メチル-L-セリン(TS01-3)の合成
【化3】
【0162】
WO2018225864に基づいて合成した(2S)-2-[[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル](メチル)アミノ]-3-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)プロパン酸(TS01-1、41.0mg、0.10mmol)をDCM(0.10mL)に溶解し、4-(3-フェニルプロピル)ピペリジン(32.0uL,0.15mmol)を加えて室温で15時間撹拌した。DCMを減圧濃縮により除去し、(2S)-3-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-2-(メチルアミノ)プロパン酸(TS01-2)を粗生成物として得た。得られた(2S)-3-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-2-(メチルアミノ)プロパン酸(TS01-2、粗生成物)とWO2018225864に基づいて合成した炭酸(4-ニトロフェニル)―4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(110.0mg、0.26mmol)を、DMSO(0.50 mL)に溶解し、トリエチルアミン(41.8uL,0.30mmol)を加えて50℃で1時間撹拌した。反応液を逆相カラムクロマトグラフィ(0.1%FA in HO/0.1%FA in CHCN)で精製し、標題の化合物(TS01-3、40mg、84%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 475.4 (M-H)-
保持時間:0.64分(分析条件SQDFA05)
【0163】
シアノメチル N-(((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-O-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-N-メチル-L-セリナート(TS01-4)の合成
【化4】
【0164】
N-(((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-O-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-N-メチル-L-セリン(TS01-3、19.0mg、0.04mmol)をCHCN(0.20mL)に溶解し、DIPEA(10.48uL,0.06mmol)および2-ブロモアセトニトリル(3.22uL,0.048mmol)を加えて室温で12時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、表題の化合物(TS01-4)を粗生成物として得た。
LCMS(ESI) 514(M-H)-
保持時間:0.73分(分析条件SQDFA05)
【0165】
(2R,3S,4R,5R)-2-((((((2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-4-ヒドロキシ-2-((ホスホノオキシ)メチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)メチル)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-3-イル N-(((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-O-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-N-メチル-L-セリナート(TS01)の合成
【化5】
【0166】
緩衝液A(10ml)に、文献記載(Helv. Chim. Acta, 90,297- 310)の方法で合成したリン酸二水素 ((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(28.9mg、0.04mmol)を溶解させ、シアノメチル N-(((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-O-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-N-メチル-L-セリナート(TS01-4、粗生成物)のアセトニトリル溶液(0.021mg、0.04mmol、0.50ml)を滴下し、室温で60分撹拌した。反応液を0℃に冷却したのちトリフルオロ酢酸(0.50mL)を加えた。反応液を0℃で60分撹拌したのちに、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(TS01、8.0mg、18.0%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1109.7 (M-H)-
保持時間:0.50分(分析条件SQDFA05)
【0167】
なお、緩衝液Aは以下のように調整した。
N,N,N-トリメチルヘキサデカン-1-アミニウム 塩化物(6,40g、20mmol)とイミダゾール(6.81g、100mmol)の水溶液に酢酸を添加し、pH7.9、20mM N,N,N-トリメチルヘキサデカン-1-アミニウム、100mMイミダゾールの緩衝液A(1L)を得た。
【0168】
BdpFL-(4-AMF)-pCpA(MT01)の合成
(2S)-3-[4-(アミノメチル)フェニル]-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]プロパン酸(化合物MT02)の合成
【化6】
【0169】
窒素雰囲気化、(2S)-3-[4-(アミノメチル)フェニル]-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]プロパン酸(500mg,0.968 mmol)のジクロロメタン(4.5ml)懸濁液に4N HClの1,4-ジオキサン溶液を室温で加えた。室温で1時間撹拌した後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣と[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メチル (4-ニトロフェニル) カーボネート(411 mg、0.968 mmol)のDMSO(5mL)懸濁液にDIPEA(413 mg、3.19 mmol)を室温で加えた。室温で2時間撹拌した後、ピペリジン(400 mg、4.7 mmol)を室温で加え、15分撹拌した。反応液を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%FA CHCN/HO)にて精製し、(2S)-3-[4-(アミノメチル)フェニル]-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]プロパン酸(化合物MT02)(83.3 mg、 18%収率、3ステップ) を得た。
LCMS(ESI) m/z = 480.3 (M+H)+
保持時間:0.46分(分析条件SQDFA05)
【0170】
(S)-3-(4-((3-(5,5-ジフルオロ-7,9-ジメチル-5H-4λ ,5λ -ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3-イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)-2-((((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸(化合物MT03)の合成
【化7】
【0171】
窒素雰囲気化、(2S)-3-[4-(アミノメチル)フェニル]-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]プロパン酸(化合物MT02)(11.8mg,0.030 mmol)のNMP(500ml)溶液3-(3-((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-3-オキソプロピル)-5,5-ジフルオロ-7,9-ジメチル-5H-5λ-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニ-4-ニウムのNMP(500ml)溶液を室温で加えた。40℃で10分撹拌した後、反応液を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%FA CHCN/HO)にて精製し、(S)-3-(4-((3-(5,5-ジフルオロ-7,9-ジメチル-5H-4λ,5λ-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3-イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)-2-((((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸(化合物MT03)(14.6 mg、 64%収率) を得た。
LCMS(ESI) m/z = 752.2(M-H)-
保持時間:0.79分(分析条件SQDFA05)
【0172】
(S)-3-(4-((3-(5,5-ジフルオロ-7,9-ジメチル-5H-4λ ,5λ -ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3-イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)-2-((((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸 シアノメチルエステル(化合物MT04)の合成
【化8】
【0173】
窒素雰囲気下、(S)-3-(4-((3-(5,5-ジフルオロ-7,9-ジメチル-5H-4λ,5λ-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3-イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)-2-((((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸(50mg、0.066mmol)およびN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(23.2 μL, 0.133 mmol)をアセトニトリル(200μL)に溶解し、2-ブロモアセトニトリル(9.0 μL, 0.133 mmol)を0℃で加えたのち、40℃で3.5時間撹拌した。反応液を濃縮し、(S)-3-(4-((3-(5,5-ジフルオロ-7,9-ジメチル-5H-4λ,5λ-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3-イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)-2-((((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸 シアノメチルエステル(化合物MT04)を粗生成物として得た。得られた粗生成物は、そのまま次工程に用いた。
LCMS(ESI) 791.4(M-H)-
保持時間:0.90分(分析条件SQDFA05)
【0174】
[(2R,3S,4R,5R)-2-((((((2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-4-ヒドロキシ-2-((ホスホノオキシ)メチル)テトラハイドロフラン-3-イル)オキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)メチル)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-3-イル (2S)-3-(4-((3-(5,5-ジフルオロ-7,9-ジメチル-5H-4λ ,5λ -ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3-イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)-2-((((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)プロパノエート(化合物MT01、BdpFL-(4-AMF)-pCpA)の合成
【化9】
【0175】
緩衝液A(55mL)に、リン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(47.7mg、0.066mmol)を溶解させ、(S)-3-(4-((3-(5,5-ジフルオロ-7,9-ジメチル-5H-4λ,5λ-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]ジアザボリニン-3-イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)-2-((((4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸 シアノメチルエステル(化合物MT03)(52.3mg、0.066mmol)のアセトニトリル溶液(5 mL)を3回に分けて加えたのち、室温で90分撹拌した。反応液に0℃でTFA(3 mL)を加え、5分撹拌したのち、室温にて40分撹拌した。反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05% TFA CHCN/HO)にて精製し、表題化合物(化合物MT01、BdpFL-(4-AMF)-pCpA)(8.3 mg、9.1%収率)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1386.7 (M-H)-
保持時間:0.65分(分析条件SQDFA05)
【0176】
実施例5.アミノアシルtRNAの合成
tRNAGlu(-CA)の配列
定法により以下のtRNAGluCUU(-CA)を調製した。
配列TR-1(配列番号:7)
tRNAGluCUU(-CA) RNA配列:
GUCCCCUUCGUCUAGAGGCCCAGGACACCGCCCUCUUACGGCGGUAACAGGGGUUCGAAUCCCCUAGGGGACGC
定法により以下のtRNAGluCUG(-CA)を調製した。
配列TR-2(配列番号:8)
tRNAGluCUG(-CA) RNA配列:
GUCCCCUUCGUCUAGAGGCCCAGGACACCGCCCUCUGACGGCGGUAACAGGGGUUCGAAUCCCCUAGGGGACGC
定法により以下のtRNAfMet(CAU)(-CA)を調製した。
配列TR-3(配列番号:9)
GGCGGGGUGGAGCAGCCUGGUAGCUCGUCGGGCUCAUAACCCGAAGAUCGUCGGUUCAAAUCCGGCCCCCGCAAC
【0177】
アミノアシルpCpAを用いたアミノアシルtRNA合成:その1
50μM 転写tRNAGluCUG(-CA)(配列番号:8)(20μl)に、10X ligation buffer (500 mM HEPES-KOH pH 7.5, 200 mM MgCl2)(4μl)、10mM ATP (4μl)、Nuclease free water (5.6μl)を加え、95℃で2分間加熱した後、室温で5分間放置し、tRNAのリフォールディングを行った。10unit/μl T4 RNAリガーゼ(New england bio lab.社)(2.4μL)および、2.5mMのアミノアシルpCpA(TSO1)のDMSO溶液 (4μL)を加え、16℃で45分間ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応液に、最終濃度0.3Mになるように酢酸ナトリウムを添加して、フェノール・クロロホルム抽出を行い、エタノール沈殿によりアミノアシルtRNA(化合物AAtR-1)を回収した。回収したアミノアシルtRNA(化合物AAtR-1)は、翻訳混合物に添加する直前に1mM酢酸ナトリウムに溶解した。
化合物AAtR-1
MeSer(tBuOH)- tRNAGluCUG
【0178】
アミノアシルpCpAを用いたアミノアシルtRNA合成:その2
50μM 転写tRNAGluCUU(-CA)(配列番号:7)(20μl)に、10X ligationbuffer (500 mM HEPES-KOH pH 7.5, 200 mM MgCl2)(4μl)、10mM ATP (4μl)、Nuclease free water (5.6μl)を加え、95℃で2分間加熱した後、室温で5分間放置し、tRNAのリフォールディングを行った。10unit/μl T4 RNAリガーゼ(New england bio lab.社)(2.4μL)および、2.5mMのアミノアシルpCpA(MT01)のDMSO溶液 (4μL)を加え、16℃で45分間ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応液に、最終濃度0.3Mになるように 酢酸ナトリウムを添加して、フェノール・クロロホルム抽出を行い、エタノール沈殿によりアミノアシルtRNA(化合物AAtR-2)を回収した。回収したアミノアシルtRNA(化合物AAtR-2)は、翻訳混合物に添加する直前に1mM酢酸ナトリウムに溶解した。
化合物AAtR-2
BODIPYFL-4-AMF-tRNAGluCUU
【0179】
アミノアシルpCpAを用いたアミノアシルtRNA合成:その3
50μM 転写tRNAfMetCAU(-CA)(配列番号:9)(20μl)に、10X ligation buffer (500 mM HEPES-KOH pH7.5, 200 mM MgCl2)(4μl)、10mM ATP (4μl)、Nucleasefree water (5.6μl)を加え、95℃で2分間加熱した後、室温で5分間放置し、tRNAのリフォールディングを行った。10unit/μl T4 RNAリガーゼ(New england bio lab.社)(2.4μL)および、2.5mMの(Acbz-MeCys(StBu)-pCpA (特許文献WO2017150732に記載の化合物nk14)のDMSO溶液 (4μL)を加え、16℃で45分間ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応液に、0.3M酢酸ナトリウムを添加して、フェノール・クロロホルム抽出を行い、エタノール沈殿によりアミノアシルtRNA(化合物AAtR-3)を回収した。回収したアミノアシルtRNA(化合物AAtR-3)は、翻訳混合物に添加する直前に1mM酢酸ナトリウムに溶解した。)
化合物AAtR-3
Acbz-MeCys(StBu)- tRNAfMetCAU
【0180】
実施例6.LCT12の合成
LCT-12のペプチド合成機によるペプチド合成に用いる(2S,3R)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ブタン酸(Fmoc-Thr(THP)-OH)の合成
【化10】
【0181】
(2S,3R)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-ヒドロキシブタン酸一水和物(Fmoc-Thr-OHの一水和物、東京化成より購入、5.0g、13.9mmol)とp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS、0.175g、0.70mmol)の混合物にトルエン(50mL)を加えて、減圧下トルエンを留去することで共沸により含まれている水分を除去した。得られた残渣に超脱水テトラヒドロフラン(THF、28mL)と3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(8.8mL、97mmol)を加え、窒素雰囲気下、50℃にて4時間攪拌した。LCMS(SQDFA05)にて原料の消失を確認後、混合物を25℃まで冷却し、酢酸エチル(30mL)を加えた。続いて飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)を加えて有機層を洗浄し、水層を酢酸エチル(30mL)で抽出した。得られた全ての有機層を混合し、これをさらに飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)にて2度洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を減圧下留去し、粗生成物(9.3g)を得た。
【0182】
得られた粗生成物のうち、4.65gをテトラヒドロフラン(THF、30mL)に溶解させ、次いでpH8.0に調整した1.0Mリン酸緩衝液(30mL)を加えた。この混合物を50℃で4時間攪拌した。25℃まで冷却した後、酢酸エチル(30mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層に酢酸エチル(30mL)を加えて抽出を行った後、得られた全ての有機層を混合し、飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で2度洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去し、さらにポンプにて減圧下、25℃で30分乾燥させた。
【0183】
得られた残渣をジエチルエーテル(50mL)に溶解させ、次いでヘプタン(50mL)を加えた。制御した減圧下(~100hPa)、ジエチルエーテルのみを留去し、得られた混合物をろ過して固体を得た。このヘプタンでの洗浄操作を2度繰り返した。得られた固体をポンプにて減圧下、25℃で2時間乾燥させ、Fmoc-Thr(THP)-OHのナトリウム塩(2.80g、6.26mmol)を得た。
【0184】
得られた全量のFmoc-Thr(THP)-OHのナトリウム塩に酢酸エチル(50mL)とpH2.1の0.05Mリン酸水溶液(140mL)を加えて、25℃にて5分間攪拌した後、有機層と水層を分離した。水層に酢酸エチル(50mL)を加えて抽出した後、得られた全ての有機層を混合し、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)にて2度洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。残渣をポンプにて減圧下、25℃で2時間乾燥させた後、得られた固体をt-ブチルメチルエーテル(TBME、50mL)に溶解させ、溶媒を減圧下留去した。さらにポンプにて減圧下、25℃で1時間乾燥させることで、(2S,3R)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ブタン酸(Fmoc-Thr(THP)-OH、2.70g、30mol%のt-ブチルメチルエーテル(TBME)が残留)をTHP保護上の不斉炭素に由来するジアステレオマーとして得た。得られたFmoc-Thr(THP)-OHは-25℃の冷凍庫にて保存した。
LCMS(ESI)m/z=424.2(M-H)-
保持時間:0.84分、0.85分(分析条件SQDFA05_01)
【0185】
LC/MSの標品として用いるN末端にBdpFLを持つペプチド(LCT-12)の合成
【化11】
【0186】
Fmoc-Ala-OHを担持させた2-クロロ卜リチルレジン(100mg)を用い、Fmocアミノ酸としてFmoc-Gly-OH、Fmoc-Thr(THP)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Pro-OHを用いてペプチド合成機にてペプチドの伸長を行った。Fmoc法によるペプチド合成法に従い、ペプチドの伸長を行った(WO2013100132B2)。ペプチドの伸長後、N末端のFmoc基の除去をペプチド合成機上にて行った後、レジンをDCMにて洗浄した。
【0187】
レジンにTFE/DCM(1:1、v/v、2mL)を加えて1時間振とうし、ペプチドのレジンからの切り出しを行った。反応終了後、チューブ内の溶液を合成用カラムでろ過することによりレジンを除き、レジンをTFE/DCM(1:1、v/v、1mL)にて2回洗浄した。全ての抽出液を混合し、DMF(2mL)を加えた後、減圧下濃縮した。得られた残査をNMP(0.5mL)に溶解し、そのうち1/4(125μL)を次の反応に使用した。ペプチドのNMP溶液に76.5mMに調製したBdpFLスクシンイミドエステル(140μL)を室温にて加え、40℃で終夜撹拌した後、減圧下濃縮した。得られた残査を0.05M テトラメチルアンモニウム硫酸水素塩 in HFIP(1.2 ml, 0.060 mmol)に溶解し、室温で2時間撹拌した。反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%FA MeCN/HO)にて精製し、表題化合物(LCT-12)(0.3mg)を得た。LCT-12のアミノ酸配列を配列番号:17に示す。
LCMS(ESI) m/z = 1972.9 (M-H)-
保持時間:0.74分(分析条件SQDFA05_01)
【0188】
実施例7.ペプチドの翻訳合成
実験1の概要
L31intact株から調製したリボソーム(L31intact リボソーム)、L31short株から調製したリボソーム(L31short リボソーム)の2種類のリボソームの翻訳特性を比較する実験を実施した。
具体的には、鋳型mRNAの配列mR-1(配列番号:10)あるいは配列mR-2(配列番号:11)を化合物AAtR-1、AAtR-2、Initiator-tRNA(AAtR-3)を用いて翻訳し、ペプチド化合物を翻訳合成した。翻訳産物としてはmR-1では、Acbz-MeCys(StBu):MeSer(tBuOH):MePhe:Ile:Ile:Gly:MePhe:BODIPYFL-4-AMF:Ile:Ile:Pro:Ile:Gly(配列番号:14)、mR-2ではAcbz-MeCys(StBu):T:MePhe:Ile:Ile:Gly:MePhe:BODIPYFL-4-AMF:Ile:Ile:Pro:Ile:Gly(配列番号:16)が翻訳されるように設計した。以後アミノ酸をコロンで区切って表記する。
LC-MSを用いて目的産物(TM)と、副生成物の定量を行った。副生成物として主に観測されたのは開始アミノ酸から3文字目のアミノ酸から翻訳が開始されたInitiation Read through(iRT)ペプチドであった。
【0189】
翻訳条件
翻訳系は、原核生物由来の再構成無細胞タンパク質合成系であるPURE systemを用いた。具体的には、翻訳液には下記のものを含む。1mM GTP、1mM ATP、20mM クレアチンリン酸、50mM HEPES-KOH pH7.6、100mM 酢酸カリウム、2mM スペルミジン、1mM ジチオスレイトール、1.0mg/ml E.coli MRE600(RNaseネガティブ)由来tRNA(Roche社)(非特許文献:(Yokogawa T, Kitamura Y, Nakamura D, Ohno S, Nishikawa K. 2010.Nucleic acids research 38:e89)に記載の方法で、一部のtRNAを除去している)、3μMのin vitro転写大腸菌tRNA Ala1B、0.26μM EF-G、4μg/ml クレアチンキナーゼ、3μg/ml ミオキナーゼ、2unit/ml 無機ピロフォスファターゼ、1.1μg/ml ヌクレオシド二リン酸キナーゼ、2.7μM IF1、0.4μM IF2、1.5μM IF3、40μM EF-Tu、35 μM EF-Ts、1μM EF-P-Lys、0.4unit/μl RNasein Ribonuclease inhibitor(Promega社,N2111)、0.4~0.5μM Penicillin G Amidase (PGA)、2.7μM AlaRS、1 μM GlyRS、0.4μM IleRS、0.5 μM 変異体PheRS(WO2016/148044)、0.16μM ProRS、0.09μM ThrRS、1μM 変異体ValRS(WO2016/148044)、 1μM 変異体SerRS(WO2016/148044)、250μM Gly、250μM Lys、100μMIle、250μM Pro、250μM Thr、5mM N-メチルアラニン、5mM N-メチルフェニルアラニン、5mM N-メチルセリン、5mM Nメチルバリン。酢酸マグネシウム濃度を2 mM、4 mM、6 mM、8 mMの4点で調製し、initiatorアミノアシルtRNA(化合物AAtR-3)を25μM、化合物 AAtR-1とAAtR-2を含むアミノアシルtRNAを各10μMになるように翻訳反応混合物に添加した。また、mRNA (mR-1もしくはmR-2)を1μMになるように翻訳反応混合物に添加した。翻訳には使用されないアミノアシルtRNAを185μM含んでいる。L31shortリボソームまたはL31incactリボソームを1.2μMになるように添加して、37℃で1時間静置することで行った。その後、95℃で3分間加熱し室温になるまで静置後、Peptidyl-tRNA hydrolase(Pth)を8.58μMになるように添加し37℃で1時間静置した。
【0190】
mRNAの調製
鋳型DNA(配列番号:12または、配列番号:13)から、RiboMAX LargeScale RNA production System T7(Promega社,P1280)を用いたin vitro 転写反応により鋳型mRNA、配列mR-1または配列mR-2を合成し、RNeasy Mini kit(Qiagen社)により精製した。
【0191】
分析概要
非天然アミノ酸を含むペプチド翻訳産物を含む溶液を10倍希釈し、LC-FLR-MSの装置を用いて分析した。分析データはMSデータより対象となる翻訳されたペプチドの保持時間を同定し、該当保持時間の蛍光ピークを定量することで、ペプチド翻訳量を評価した。なお、定量評価は実施例6にて合成したLCT12を標品により検量線を作成し、相対定量により含有量を算出した。LC-MSは下記の分析条件でおこなった。
【0192】
分析条件
【表2】
【0193】
結果
各リボソームの至適なMg濃度におけるmR-1、mR-2のmRNAの配列の翻訳実験とも、L31shortリボソームで翻訳した場合の目的産物の翻訳量がL31intactリボソームを用いて翻訳した場合に比べて多かった。
各リボソームの至適なMg濃度におけるmR-1、mR-2のmRNAの配列の翻訳とも、副生成物であるiRTペプチドの翻訳量の目的産物に対する割合は、L31short リボソームを用いた場合のほうが、L31intactリボソームを用いた場合に比べて低かった。
開始アミノ酸から2番目の文字がMeSer(tBuOH)であるmR-1の配列のほうが、 ThrであるmR-2の配列に比べて至適Mg2+濃度での目的産物の翻訳量のL31shortリボソームによる向上効果が大きかった。
Initiation Suppression (iSup)法を用いた翻訳の際に、L31short株より調製されたL31shortリボソームを用いる事の有用性が示された。
【0194】
L31shortリボソームまたはL31intactリボソームを用いて、mR-1配列、mR-2配列を翻訳した時の目的産物の翻訳量とiRTペプチドの翻訳量を以下に示す。
【0195】
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】
【0196】
実験2の概要
実施例2にて、W3110株由来の野生型大腸菌を用いて、破砕バッファーのMg2+濃度を10mM、5mM、0mMの3点にてリボソームを調製した。それぞれの調製方法で調製したリボソームをWT-10MGリボソーム、WT-5MGリボソーム、WT-0MGリボソームと呼ぶ。実施例3にて、それぞれのリボソームのL31タンパク質が精製中に分解された割合をMALDI-MSを用いて測定した。その結果、破砕液中のMg2+が低いほどL31が分解されていることを示した。
これらのリボソームを用いて実験1と同様に、mR-2の配列を用いて翻訳実験を行った。
その結果、最もL31の分解がされていたWT-0MGリボソームを用いた場合が最も目的産物の量が多い事がわかった。
【0197】
翻訳条件
翻訳系は、原核生物由来の再構成無細胞タンパク質合成系であるPURE systemを用いた。具体的には、翻訳液には下記のものを含む。1mM GTP、1mM ATP、20mM クレアチンリン酸、50mM HEPES-KOH pH7.6、100mM 酢酸カリウム、4 mM酢酸マグネシウム、2mM スペルミジン、1mM ジチオスレイトール、1.0mg/ml E.coli MRE600(RNaseネガティブ)由来tRNA(Roche社)(非特許文献:(Yokogawa T, Kitamura Y, Nakamura D, Ohno S, Nishikawa K. 2010.Nucleic acids research 38:e89) 記載の方法で、一部のtRNAを除去している)、3μMのin vitro転写大腸菌tRNA Ala1B、0.26μM EF-G,4μg/ml クレアチンキナーゼ、3μg/ml ミオキナーゼ、2unit/ml 無機ピロフォスファターゼ、1.1μg/ml ヌクレオシド二リン酸キナーゼ、2.7μM IF1、0.4μM IF2、1.5μM IF3、40μM EF-Tu、35μM EF-Ts、1μM EF-P-Lys、0.4unit/μl RNasein Ribonuclease inhibitor(Promega社,N2111)、0.5μM Penicillin G Amidase (PGA) 、2.7μM AlaRS、1μMGlyRS、0.4μM IleRS、0.5 μM 変異体PheRS(WO2016/148044)、0.16μM ProRS、0.09μM ThrRS、1μM 変異体ValRS(WO2016/148044)、1μM 変異体SerRS(WO2016/148044)。250μM Gly、250μM Lys、100μMIle、250μM Pro、250μM Thr、5mM N-メチルアラニン、5mM N-メチルフェニルアラニン、5mM N-メチルセリン、5mM Nメチルバリン。initiatorアミノアシルtRNA(化合物AAtR-3)を25μM、化合物 AAtR-1とAAtR-2を含むアミノアシルtRNAを各10μMになるように翻訳反応混合物に添加した。翻訳には使用されないアミノアシルtRNAを185μM含んでいる。WT-0MG リボソーム、WT-5MGリボソーム、もしくはWT-10MGリボソームを1.2μM添加して、37℃で1時間静置することで行った。その後、95℃で3分間加熱し室温になるまで静置後、Peptidyl-tRNA hydrolase (Pth)を8.58μMになるように添加し37℃で1時間静置した。
【0198】
分析概要
非天然アミノ酸を含むペプチド翻訳産物を含む溶液を10倍希釈し、LC-FLR-MSの装置を用いて分析した。分析データはMSデータより対象となる翻訳されたペプチドの保持時間を同定し、該当保持時間の蛍光ピークを定量することで、ペプチド翻訳量を評価した。なお、定量評価は実施例6にて合成したLCT12を標品により検量線を作成し、相対定量により含有量を算出した。LC-MSは下記の分析条件でおこなった。
分析条件
【表4】
【0199】
結果
目的産物の翻訳量は多いものから、WT-0MGリボソーム、WT-5MGリボソーム、WT-10MGリボソームであった。
また、iRTペプチドの目的産物に対する割合が少ないものから順にWT-0MGリボソーム、WT-5MGリボソーム、WT-10MGリボソームであった。
実験1の結果と実施例3の結果から、破砕液中のMg2+濃度が低い状態で、L31が分解されているリボソームの比率が多くなり、iSup法における翻訳量を上げることができると示された。
【0200】
【表5】
【0201】
実施例8. L31shortリボソームを用いたパニング
アシル化tRNAの合成
特許文献(WO2013/100132)に記載の手法でパニングに使用するアシル化tRNAを調製した。特許文献(WO2018/225864)に記載のPic(2)、MeAla(3-pyr)、Ser(Ph-2-Cl)、MeGlyを含む15種類のアミノ酸を用いて、ElongatorアミノアシルtRNA混合物を調製した。それぞれのアシル化tRNAの翻訳液中の最終濃度は10μM~20μMであった。Pnaz保護のpCpAアミノ酸は、脱保護を実施せずにフェノール抽出以降の作業を行った。InitiatorアミノアシルtRNAは、実施例5の化合物AAtR-3と同一化合物であり、最終濃度が25μMになるように翻訳液中に添加して用いた。
【0202】
ペプチド化合物ライブラリをコードするランダム化された2本鎖DNAライブラリ
特許文献(WO2013/100132)に記載の手法でDNAライブラリを構築した。TTT、TTG、CTT、ATT、ATG、GTT、CCG、ACT、GCT、CAT、CAG、AAC、GAA、TGG、CGG、AGT、AGG、GGTを含む24種類のトリプレットがランダムに8回ないし9回繰り返して出現するものを用意した。
【0203】
ビオチン化標的蛋白質の調製
パニングに使用する標的蛋白質として、GlutathioneS-transferase (GST)を用いた。GSTは大腸菌で発現調製したものを使用した。ビオチン化は非特許文献BMC biotechnology, 2008,8,41 及び非特許文献ProteinScience, 1990;108(4):673-6.に従って行った。
【0204】
パニングに使用する翻訳液
翻訳液は以下の物質を含む。1mMのGTP、1mMのATP、20mMのクレアチンリン酸、50mMのHEPES-KOH pH7.6,100mMの酢酸カリウム、6 mMの酢酸マグネシウム、2mMのスペルミジン、1mMのジチオスレイトール、1mg/ml E.coli MRE600(RNaseネガティブ)由来tRNA(Roche社)(非特許文献:(Yokogawa T, Kitamura Y, Nakamura D, Ohno S, Nishikawa K. 2010.Nucleic acids research 38:e89)に記載の方法で、一部のtRNAを除去している)、4μg/mlのクレアチンキナーゼ、3μg/mlのミオキナーゼ、2unit/mlの無機ピロフォスファターゼ、1.1μg/mlのヌクレオシド二リン酸キナーゼ、0.26μMのEF-G、2.7μMのIF1、0.4μMのIF2、1.5μMのIF3,40μMのEF-Tu、49μMのEF-Ts、1μMのEF-P-Lys、1.2μMのリボソーム(L31short もしくは L31 intact)、2.73μMのAlaRS、1 μMのGlyRS、0.4μMのIleRS、0.5μMの変異体PheRS(WO2016/148044)、0.16μMのProRS、1μMの変異体SerRS(WO2016/148044)、0.09μMのThrRS、1μMの変異体ValRS(WO2016/148044)、0.11μMのLysRS、3μMのin vitro転写大腸菌tRNA Ala1B、250μMのグリシン、100μMのイソロイシン、250μMのプロリン、250μMのスレオニン、250μMのリジン、5mMのN-メチルバリン、5mMのN-メチルセリン、5mMのN-メチルアラニン、5mMのN-メチルフェニルアラニン、ElongatorアミノアシルtRNA混合物、25 μM InitiatorアミノアシルtRNA、10μM Penicillin G Amidase (PGA)。
【0205】
パニングの実施
前述の二本鎖DNAライブラリとL31shortを含む翻訳液、もしくはL31intactを含む翻訳液を使用し、特許文献(WO2013/100132)に倣ってパニングを実施した。GSTとビオチンとの間にTEVプロテアーゼ認識配列を導入し、TEVプロテアーゼによる溶出を行った。ペプチドライブラリをビオチン化タンパク質と相互作用させた後に、ストレプトアビジン固定化磁気ビーズで回収後、洗浄作業を行った後、ビーズにTEV溶出液(50mM Tris-HCl pH8.0、0.5mM EDTA、1mM DTT、0.1U/μL AcTEVプロテアーゼ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、製品番号12575015))を添加し反応させた。反応後、上清を回収しPCRを行った。
【0206】
濃縮配列の解析
最低1ラウンド以上で出現頻度がランクA:0.5 %以上 またはランクB:0.05%以上または、ランクC:NGSのリード数が50以上、かつ直前のラウンドのプールを分割し標的を添加せずにパニングした場合に比べ、標的を添加した場合に出現頻度が10倍以上増加する配列を抽出した。その結果、L31short リボソームを用いた翻訳系を用いた場合では、ランクAが33配列、ランクBが253配列ランクCが396配列であった。一方でL31intact リボソームを用いた翻訳系を用いた場合では、ランクAが32配列、ランクBが175配列、ランクCが247配列であった。L31shortリボソームを用いてパニングを実施した場合のほうがL31intactに比べてより多くの種類の配列を濃縮させる事ができた。
【0207】
実施例9.L31変異体リボソームを用いた翻訳実験
実施例9の概要
後述の実施例14に記載のとおり、L31の長さがそれぞれ異なる8種類のL31変異体株を構築した。実施例15に記載のとおり、それらの株と、L31short株、L31intact株、W3110株よりリボソームを調製した。得られた11種類のリボソームを用いてペプチドの翻訳合成を行い、L31変異体を含むリボソームの翻訳特性を調べた。
具体的には、表6にある、R1~R11の11種類のリボソームを用いて、2文字目のアミノ酸が異なる以下の3種類のペプチドを翻訳合成した。なお、本明細書において、以下のようにアミノ酸をコロンで区切ってアミノ酸配列を表記することがある。
AcbzMeCStBu:MeG:MeF:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号:29)
AcbzMeCStBu:MeStBuOH:MeF:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号:30)
AcbzMeCStBu:L:MeF:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号:31)
鋳型mRNAの配列mR-1(配列番号:10)と2文字目を紡ぐアミノアシルtRNAとしてそれぞれMeG-tRNAGlu(CUG), MeSer(tBuOH)-tRNAGlu(CUG), Leu-tRNAGlu(CUG)を用いた。アミノアシルtRNAは実施例13で調製したものを用いた。
【0208】
【表6】
【0209】
LC-MSを用いて目的産物(TM)と、副生成物の定量を行った。副生成物として主に観測されたのは開始アミノ酸から3文字目のアミノ酸から翻訳が開始されたInitiation Read through(iRT)ペプチドであった。本明細書において、開始2文字目から翻訳が開始させるペプチドを1iRT、開始3文字目から翻訳が開始させるペプチドを2iRTと呼ぶことがある。TM(配列番号:29~31)とそれぞれに対する1iRTおよび2iRTを表7~表9に示す。
【0210】
【表7】
【0211】
【表8】
【0212】
【表9】
【0213】
翻訳条件
実施例7実験1の翻訳液組成から、in vitro転写大腸菌tRNA Ala1B、Lys、アミノアシルtRNAを除き、0.5uM HisRSを添加している点、6.72unit/ml ミオキナーゼ、59μM EF-Ts、4 mM酢酸マグネシウム、20μM initiatorアミノアシルtRNA(化合物AAtR-3)、10μM各種2文字目をコードするアミノアシルtRNA、1.2μM、各種リボソーム、1μMmRNAの組成である点を除き、実施例7の実験1の翻訳条件に従った。
【0214】
分析概要
実施例11にて合成したLCT67を標品として用いて検量線を作成し定量評価を行った以外は、実施例7の実験2の方法に従い分析を行った。
【0215】
結果
表10の通り、3種類のいずれの配列においても、R1~R7とR11のリボソームを用いた翻訳ではTMの翻訳量が高く、Initiation Read through (iRT)ペプチドの割合が少ないという翻訳特性を示した。N末端からのアミノ酸残基数が62以下のL31変異体を含むリボソームは、翻訳活性が高くInitiation Read through (iRT)ペプチドの割合が少ないという特性を持つことが示された。なお、iRT割合は次の式で算出した。
【0216】
(数1)
iRT割合 = (iRT total濃度 [nM]) / (iRT total濃度 [nM] + TM 濃度[nM]) ×100
【0217】
【表10】
【0218】
実施例10.様々なペプチドの翻訳合成におけるL31shortリボソームの効果
実験1 開始アミノ酸をAcbzdMeCStBuとし、2文字目に各種アミノ酸を配置
実験1の概要
実施例2で精製したL31shortリボソーム、L31intactリボソームを用いて、2文字目のアミノ酸が異なる6種類のペプチドの翻訳合成を行い、L31shortリボソームの優位な翻訳特性が複数のペプチドの翻訳合成で認められる事を確認した。
具体的には、以下のアミノ酸配列(配列番号:36)の2文字目のアミノ酸(X)が異なる6種類のペプチドを翻訳合成した。ここでXは、Nle、S3F5MePyr、SPh2Cl、I、T、またはLとした。
AcbzdMeCStBu:X:MeF:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号:36)
【0219】
鋳型mRNAの配列mR-1(配列番号:10)と2文字目を紡ぐアミノアシルtRNAとしてそれぞれNle-tRNAGlu(CUG)、S3F5MePyr-tRNAGlu(CUG)、SPh2Cl-tRNAGlu(CUG)、Ile-tRNAGlu(CUG)、Thr-tRNAGlu(CUG)、Leu-tRNAGlu(CUG)を用いた。アミノアシルtRNAは実施例13で調製したものを用いた。
【0220】
LC-MSを用いて目的産物(TM)と、副生成物の定量を行った。副生成物として主に観測されたのは、1iRTと2iRTであった。iRT割合は次の式で算出した。
【0221】
(数1)
iRT割合 = (iRT total濃度 [nM]) / (iRT total濃度 [nM] + TM 濃度[nM]) ×100
【0222】
翻訳条件
実施例9の翻訳条件より、HisRSを除き、8 mM酢酸マグネシウム、3ug/ml ミオキナーゼ、
49μM EF-Ts、20μM initiatorアミノアシルtRNA(Acbz-D-MeCys(StBu)-tRNAfMetCAU)(特許文献WO2017150732)の組成である点を除き、実施例9の翻訳条件に従った。
【0223】
分析概要
実施例9の方法に従い分析を行った。
【0224】
結果
表11の通り、6種類中4配列においてTMの翻訳量はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて、2.8倍から3.9倍上昇しており、6種類中全ての配列において、iRTの割合はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて減少していた。
【0225】
【表11】
【0226】
実験2 開始アミノ酸をAcbzMeCStBuとし、2文字目に各種アミノ酸を配置
実験2の概要
実施例2で精製したL31shortリボソーム、L31intactリボソームを用いて、2文字目のアミノ酸が異なる12種類のペプチドの翻訳合成を行い、L31shortリボソームの優位な翻訳特性が複数のペプチドの翻訳合成で認められる事を確認した。
具体的には、以下のアミノ酸配列(配列番号:37)の2文字目のアミノ酸(X)が異なる12種類のペプチドを翻訳合成した。ここでXは、Nle、MeG、MeF、S3F5MePyr、MeHph、MeA3Pyr、SPh2Cl、G、I、T、MeStBuOH、またはLとした。
AcbzMeCStBu:X:MeF:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号:37)
【0227】
2文字目を紡ぐアミノアシルtRNAとしてMeG-tRNAGlu(CUG)、MePhe-tRNAGlu(CUG)、MeHph-tRNAGlu(CUG)、MeA3Pyr-tRNAGlu(CUG)、Gly-tRNAGlu(CUG)、およびMeSer(tBuOH)-tRNAGlu(CUG)を追加で用いた以外は、実施例10の実験1に準じた方法で実験を行った。副生成物として主に観測されたのは、1iRTと2iRTであった。
【0228】
翻訳条件
4 mM酢酸マグネシウム、20μMinitiatorアミノアシルtRNA(化合物AAtR-3)である点を除き実施例10実験1の翻訳条件に従った。
【0229】
分析概要
実施例9の方法に従い分析を行った。
【0230】
結果
表12の通り、12種類中11配列においてTMの翻訳量はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて、1.6倍から3.7倍上昇しており、12種類中全配列において、iRTの割合はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて減少していた。
【0231】
【表12】
【0232】
実験3 開始アミノ酸をAcbzCStBuとし、2文字目に各種アミノ酸を配置
実験3の概要
実施例2で精製したL31shortリボソーム、L31intactリボソームを用いて、2文字目のアミノ酸が異なる12種類のペプチドの翻訳合成を行い、L31shortリボソームの優位な翻訳特性が複数のペプチドの翻訳合成で認められる事を確認した。
具体的には、以下のアミノ酸配列(配列番号:38)の2文字目のアミノ酸(X)が異なる12種類のペプチドを翻訳合成した。ここでXは、Nle、MeG、MeF、S3F5MePyr、MeHph、MeA3Pyr、SPh2Cl、G、I、T、MeStBuOH、またはLとした。実験は、実施例10の実験2に準じた方法で行った。
AcbzCStBu:X:MeF:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号38)
【0233】
LC-MSを用いて目的産物(TM)と、副生成物の定量を行った。副生成物として主に観測されたのは、1iRTと2iRTであった。
【0234】
翻訳条件
0.23μM EF-G、5.92unit/mlミオキナーゼ2、1.0μg/ml ヌクレオシド二リン酸キナーゼ、2.4μM IF1、1.3μM IF3、35μM EF-Tu、52μM EF-Ts、20μM initiatorアミノアシルtRNA Acbz-Cys(StBu)-tRNAfMetCAU(WO2017/150732)である点を除き、実施例9の翻訳条件に従った。
【0235】
分析概要
実施例9の方法に従い分析を行った。
【0236】
結果
表13の通り、12種類中全配列においてTMの翻訳量はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて、1.7倍から3.8倍上昇しており、12種類中全配列において、iRTの割合はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて減少していた。
【0237】
【表13】
【0238】
実験4 開始アミノ酸をfMetとし、2文字目に各種アミノ酸を配置
実験4の概要
実施例2で精製したL31shortリボソーム、L31intactリボソームを用いて、2文字目のアミノ酸が異なる13種類のペプチドの翻訳合成を行い、L31shortリボソームの優位な翻訳特性が複数のペプチドの翻訳合成で認められる事を確認した。
具体的には、以下のアミノ酸配列(配列番号:39)の2文字目のアミノ酸(X)が異なる13種類のペプチドを翻訳合成した。ここでXは、Nle、MeG、MeF、S3F5MePyr、Pic(2)、MeHph、MeA3Pyr、SPh2Cl、G、I、T、MeStBuOH、またはLとした。
fMet:X:MeF:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号:39)
【0239】
2文字目を紡ぐアミノアシルtRNAとしてPic(2)-tRNAGlu(CUG) を追加で用いた以外は、実施例10の実験2に準じた方法で実験を行った。LC-MSを用いて目的産物(TM)と、副生成物の定量を行った。副生成物として主に観測されたのは、1iRTと2iRTであった。
【0240】
翻訳条件
initiatorアミノアシルtRNA(化合物AAtR-3)を除き、0.03μM MetRS、0.6μM メチオニルtRNAホルミルトランスフェラーゼ、0.25mM メチオニン、0.1mM folateを添加した点以外は、実施例10実験2の翻訳条件に従った。
【0241】
分析概要
実施例9の方法に従い分析を行った。
【0242】
結果
表14の通り、13種類中12配列においてTMの翻訳量はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて、1.2倍から2倍上昇しており、13種類中全配列において、iRTの割合はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて減少していた。
【0243】
【表14】
【0244】
実験5 開始アミノ酸をAcbzMeCStBu、2文字目のアミノ酸をThrとし、3文字目に各種アミノ酸を配置
実験5の概要
実施例15で精製したL31shortリボソーム、L31intactリボソームを用いて、3文字目のアミノ酸が異なる14種類のペプチドの翻訳合成を行い、L31shortリボソームの優位な翻訳特性が複数のペプチドの翻訳合成で認められる事を確認した。
具体的には、以下のアミノ酸配列(配列番号:40)の3文字目のアミノ酸(X)が異なる14種類のペプチドを翻訳合成した。ここでXは、Nle、MeF、S3F5MePyr、Pic(2)、MeHph、MeA3Pyr、SPh2Cl、G、I、P、T、MeStBuOH、dA、またはLとした。
AcbzMeCStBu:T:X:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号:40)
【0245】
鋳型mRNAの配列mR-3(配列番号:28)と3文字目を紡ぐアミノアシルtRNAとしてそれぞれNle-tRNAGlu(CUG)、MePhe-tRNAGlu(CUG)、S3F5MePyr-tRNAGlu(CUG)、Pic(2)-tRNAGlu(CUG)、MeHph-tRNAGlu(CUG)、MeA3Pyr-tRNAGlu(CUG)、SPh2Cl-tRNAGlu(CUG)、Gly-tRNAGlu(CUG)、Ile-tRNAGlu(CUG) 、Pro-tRNAGlu(CUG)、Thr-tRNAGlu(CUG)、MeSer(tBuOH)-tRNAGlu(CUG)、D-Ala-tRNAGlu(CUG) 、Leu-tRNAGlu(CUG)を用いた。アミノアシルtRNAは実施例13で調製したものを用いた。
【0246】
LC-MSを用いて目的産物(TM)と、副生成物の定量を行った。副生成物として主に観測されたのは、1iRTと2iRTであった。
【0247】
mRNAの調製
鋳型DNA(配列番号:27)から、RiboMAX Large Scale RNA production System T7(Promega社,P1280)を用いたinvitro 転写反応により鋳型mRNA、配列mR-3(配列番号:28)を調製し、RNeasy Mini kit(Qiagen社)により精製した。
【0248】
翻訳条件
10uM 各種3文字目をコードするアミノアシルtRNAを添加する点を除き、実施例9の翻訳条件に従った。
【0249】
分析概要
実施例9の方法に従い分析を行った。
【0250】
結果
表15の通り、14種類中全配列においてTMの翻訳量はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて、1.1倍から20.9倍上昇しており、14種類中全配列において、iRTの割合はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて減少していた。表中の「1iRT+2iRT濃度」は、クロマトグラムにおいて1iRTおよび2iRTのそれぞれに相当するピークが分離しなかった場合に、各ピークの合算値から定量した1iRTおよび2iRTの合算濃度を表す。
【0251】
【表15】
【0252】
実験6 開始アミノ酸をfMet、2文字目のアミノ酸をThrとし、3文字目に各種アミノ酸を配置
実験6の概要
実施例15で精製したL31shortリボソーム、L31intactリボソームを用いて、3文字目のアミノ酸が異なる15種類のペプチドの翻訳合成を行い、L31shortリボソームの優位な翻訳特性が複数のペプチドの翻訳合成で認められる事を確認した。
具体的には、以下のアミノ酸配列(配列番号:41)の3文字目のアミノ酸(X)が異なる15種類のペプチドを翻訳合成した。ここでXは、Nle、MeG、MeF、S3F5MePyr、Pic(2)、MeHph、MeA3Pyr、SPh2Cl、G、I、P、T、MeStBuOH、dA、またはLとした。
fMet:T:X:I:I:G:MeF:Bdp4AMF:I:I:P:I:G(配列番号:41)
【0253】
3文字目を紡ぐアミノアシルtRNAとしてMeG-tRNAGlu(CUG)を追加で用いた以外は、実施例10の実験5に準じた方法で実験を行った。LC-MSを用いて目的産物(TM)と、副生成物の定量を行った。副生成物として主に観測されたのは、1iRTと2iRTであった。
【0254】
翻訳条件
6.72unit/ml ミオキナーゼ、59μM EF-Ts、0.09μM GlyRSである点を除き、実施例10実験4に従った。
【0255】
分析概要
実施例9の方法に従い分析を行った。
【0256】
結果
表16の通り、15種類中全配列においてTMの翻訳量はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて上昇しており、L31intactを用いた時のTMの翻訳量は検出限界以下であった。15種類中全配列において、iRTの割合はL31shortリボソームを用いた時に、L31intactリボソームを用いた場合に比べて減少していた。表中の「1iRT+2iRT濃度」は、クロマトグラムにおいて1iRTおよび2iRTのそれぞれに相当するピークが分離しなかった場合に、各ピークの合算値から定量した1iRTおよび2iRTの合算濃度を表す。
【0257】
【表16】
【0258】
実施例11.LCT-67の合成
LC/MSの標品として用いるN末端にBdpFLを持つペプチド(LCT-67)を以下の手順で合成した。
Fmoc-Gly-OHを担持させた2-クロロ卜リチルレジン(100 mg)を用い、Fmocアミノ酸としてFmoc-Gly-OH、特許文献(WO2018225864)記載の方法で合成したFmoc-Thr(THP)-OH(aa01)、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-MePhe-OH、Fmoc-Pro-OHを用いてペプチド合成機にてペプチドの伸長を行った(アミノ酸の略号については本明細書中に別途記載)。Fmoc法によるペプチド合成法(例えばWO2013100132を参照)に従い、ペプチドの伸長を行った。ペプチドの伸長後、N末端のFmoc基の除去をペプチド合成機上で行った後、レジンをDCMにて洗浄した。
【0259】
レジンにTFE/DCM(1:1、v/v、2 mL)を加えて1時間振とうし、ペプチドのレジンからの切り出しを行った。反応終了後、チューブ内の溶液を合成用カラムでろ過することによりレジンを除き、レジンをTFE/DCM(1:1、v/v、1mL)にて2回洗浄した。全ての抽出液を混合し、DMF(2mL)を加えた後、減圧下濃縮した。得られた残査をNMP(1 mL)に溶解し、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸N-スクシンイミジルエステル(5 mg、0.013mmol)を室温にて加え、19時間撹拌した後、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%FA MeCN/H2O)に通し、中間体を含むフラクションを減圧下濃縮した。得られた残査を5%TFA in DCM(2 mL)に溶解し、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮した後、得られた残渣を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%FA MeCN/H2O)にて精製し、表題化合物(LCT-67)(13 mg)を得た。LCT-67のアミノ酸配列を配列番号:223に示す。
LCMS(ESI) m/z =1751.2(M-H)-
保持時間:0.97分(分析条件SQDFA05_02)
【0260】
実施例12.pCpAアミノ酸の合成
本実施例では、以下の略号を用いた。GlyまたはG(グリシン)、IleまたはI(イソロイシン)、LeuまたはL(ロイシン)、PheまたはF(フェニルアラニン)、ProまたはP(プロリン)、ThrまたはT(トレオニン)。
LCMSの分析条件を、下記の表17に示す。
【0261】
【表17】
【0262】
以下のスキームに従い、アミノアシルpCpA(ST04、ST08、ST11、ST14、ST17、ST20、ST23、ST28、ST31、ST32、ST33、ST34)を合成した。
【化12】
【0263】
(2S)-2-アミノヘキサン酸(化合物ST01、Nle-OH)の合成
【化13】
【0264】
窒素雰囲気下、特許文献(WO2018225851A1)記載の方法で合成した(2S)-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸(35.3mg、0.10mmol)にDCM(0.2ml)H2O(0.8ml)を室温にて加えた後、4-(3-フェニルプロピル)ピペリジン(0.212ml、1.00mmol)を室温にて加えて30分撹拌した。反応混合物を静置し水層を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S)-2-アミノヘキサン酸(化合物ST01、Nle-OH)(10mg、76%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 130.0 (M-H)-
保持時間:0.14分(分析条件SQDFA05_02)
【0265】
(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]ヘキサン酸(化合物ST02、F-Pnaz-Nle-OH)の合成
【化14】
【0266】
窒素雰囲気下、(2S)-2-アミノヘキサン酸(化合物ST01、Nle-OH)(3.94mg、0.03mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(12.7mg、0.03mmol)の混合物に室温にてDMSO(150uL)、トリエチルアミン(9.62ul、0.07mmol)を添加した。反応混合物を室温において1時間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]ヘキサン酸(化合物ST02、F-Pnaz-Nle-OH)(9mg、72%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 415.3 (M-H)-
保持時間:0.74分(分析条件SQDFA05_02)
【0267】
シアノメチル(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]ヘキサノアト(化合物ST03、F-Pnaz-Nle-OCH CN)の合成
【化15】
【0268】
窒素雰囲気下、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]ヘキサン酸(化合物ST02、F-Pnaz-Nle-OH)(8.3mg、0.02mmol)のアセトニトリル溶液(0.1ml)に、2-ブロモアセトニトリル(2.0μL、0.03mmol)及びN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(7.0μL、0.04mmol)を室温にて順番に加えた。反応混合物を室温にて16時間撹拌したのち反応液を濃縮し、粗生成物シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]ヘキサノアト(化合物ST03、F-Pnaz-Nle-OCHCN)を得た。得られた粗生成物をアセトニトリル(0.45mL)に溶解し、そのまま次工程に用いた。
LCMS(ESI) m/z = 454.4 (M-H)-
保持時間:0.83分(分析条件SQDFA05_02)
【0269】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]ヘキサノアト(化合物ST04、F-Pnaz-Nle-pCpA)の合成
【化16】
【0270】
緩衝液A(9mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(22mg、0.03mmol)を溶解させ、シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]ヘキサノアト(化合物ST03、F-Pnaz-Nle-OCHCN)のアセトニトリル溶液(0.45mL、0.02mmol)を投与し、室温で90分撹拌した。反応液を0℃に冷却した後に、トリフルオロ酢酸(0.45mL)を加えた。反応液を室温にて30分撹拌したのちに、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST04、F-Pnaz-Nle-pCpA)(5.7mg、27%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1049.7 (M-H)-
保持時間:0.54分(分析条件SQDFA05_02)
【0271】
なお、緩衝液Aは以下のように調製した。
N,N,N-トリメチルヘキサデカン-1-アミニウム 塩化物(6.40g、20mmol)とイミダゾール(6.81g、100mmol)の水溶液に酢酸を添加し、pH8、20mM N,N,N-トリメチルヘキサデカン-1-アミニウム、100mMイミダゾールの緩衝液A(1L)を得た。
【0272】
(2S)-2-アミノ-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパン酸(化合物ST05、S3F5MePyr-OH)の合成
【化17】
【0273】
窒素雰囲気下、特許文献(WO2018225864A1)記載の方法で合成した(2S)-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパン酸(43.6mg、0.10mmol)にDCM(0.2ml)H2O(0.2ml)を室温にて加えた後、4-(3-フェニルプロピル)ピペリジン(63.5ul、0.3mmol)を室温にて加えて1時間撹拌した。反応混合物を静置し水層を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S)-2-アミノ-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパン酸(化合物ST05、S3F5MePyr-OH)(14mg、66%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 213.0 (M-H)-
保持時間:0.19分(分析条件SQDFA05_02)
【0274】
(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパン酸(化合物ST06、F-Pnaz-S3F5MePyr-OH)の合成
【化18】
【0275】
窒素雰囲気下、(2S)-2-アミノ-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパン酸(化合物ST05、S3F5MePyr-OH)(10.7mg、0.05mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(21.2mg、0.05mmol)の混合物に室温にてDMSO(250uL)、トリエチルアミン(16.0ul、0.12mmol)を添加した。反応混合物を室温において1時間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]ヘキサン酸(化合物ST06、F-Pnaz-S3F5MePyr-OH)(23mg、92%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 498.4 (M-H)-
保持時間:0.66分(分析条件SQDFA05_02)
【0276】
シアノメチル(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパノエート(化合物ST07、F-Pnaz-S3F5MePyr-OCH CN)の合成
【化19】
【0277】
窒素雰囲気下、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパン酸(化合物ST06、F-Pnaz-S3F5MePyr-OH)(9.99mg、0.02mmol)のアセトニトリル溶液(0.1ml)に、2-ブロモアセトニトリル(2.0μL、0.03mmol)及びN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(7.0μL、0.04mmol)を室温にて順番に加えた。反応混合物を室温にて16時間撹拌したのち反応液を濃縮し、粗生成物シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパノエート(化合物ST07、F-Pnaz-S3F5MePyr-OCHCN)を得た。得られた粗生成物をアセトニトリル(0.45mL)に溶解し、そのまま次工程に用いた。
LCMS(ESI) m/z = 537.3 (M-H)-
保持時間:0.74分(分析条件SQDFA05_02)
【0278】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパノエート(化合物ST08、F-Pnaz-S3F5MePyr-pCpA)の合成
【化20】
【0279】
緩衝液A(9mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(22mg、0.03mmol)を溶解させ、シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-[(5-フルオロピリジン-3-イル)メトキシ]プロパノエート(化合物ST07、F-Pnaz-S3F5MePyr-OCHCN)のアセトニトリル溶液(0.45mL、0.02mmol)を投与し、室温で40分撹拌した。反応液を0℃に冷却した後に、トリフルオロ酢酸(0.45mL)を加えた。反応液を0℃で1時間撹拌したのちに、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST08、F-Pnaz-S3F5MePyr-pCpA)(6.5mg、29%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1132.7 (M-H)-
保持時間:0.51分(分析条件SQDFA05_02)
【0280】
(2S)-1-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル]ピロリジン-2-カルボン酸(化合物ST09、F-Pnaz-Pro-OH)の合成
【化21】
【0281】
窒素雰囲気下、L-プロリン(46.1mg、0.40mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(178mg、0.42mmol)の混合物に室温にてDMSO(2.00mL)、トリエチルアミン(128ul、0.92mmol)を添加した。反応混合物を室温において2日間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S)-1-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル]ピロリジン-2-カルボン酸(化合物ST09、F-Pnaz-Pro-OH)(157mg、98%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 399.2 (M-H)-
保持時間:0.66分(分析条件SQDFA05_02)
【0282】
2-O-(シアノメチル) 1-O-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メチル] (2S)-ピロリジン-1,2-ジカルボキシラート(化合物ST10、F-Pnaz-Pro-OCH CN)の合成
【化22】
【0283】
窒素雰囲気下、(2S)-1-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル]ピロリジン-2-カルボン酸(化合物ST09、F-Pnaz-Pro-OH)(40.0mg、0.10mmol)のアセトニトリル溶液(0.5ml)に、2-ブロモアセトニトリル(13.0μL、0.20mmol)及びN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(35.0μL、0.20mmol)を室温にて順番に加えた。反応混合物を室温にて16時間撹拌したのち反応液を濃縮し、粗生成物2-O-(シアノメチル) 1-O-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メチル] (2S)-ピロリジン-1,2-ジカルボキシラート(化合物ST10、F-Pnaz-Pro-OCHCN)を得た。得られた粗生成物をアセトニトリル(3.00mL)に溶解し、そのまま次工程に用いた。
LCMS(ESI) m/z = 438.3 (M-H)-
保持時間:0.76分(分析条件SQDFA05_02)
【0284】
2-O-[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] 1-O-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メチル] (2S)-ピロリジン-1,2-ジカルボキシラート(化合物ST11、F-Pnaz-Pro-pCpA)の合成
【化23】
【0285】
緩衝液A(60mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(72.2mg、0.10mmol)を溶解させ、2-O-(シアノメチル) 1-O-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メチル] (2S)-ピロリジン-1,2-ジカルボキシラート(化合物ST10、F-Pnaz-Pro-OCHCN)のアセトニトリル溶液(3.00mL、0.10mmol)を投与し、室温で20時間撹拌した。反応液を0℃に冷却した後に、トリフルオロ酢酸(3.00mL)を加えた。反応液を室温で30分撹拌したのちに、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST11、F-Pnaz-Pro-pCpA)(11mg、11%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1033.4 (M-H)-
保持時間:0.49分(分析条件SQDFA05_02)
【0286】
2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]酢酸(化合物ST12、F-Pnaz-Gly-OH)の合成
【化24】
【0287】
窒素雰囲気下、グリシン(30.0mg、0.40mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(178mg、0.42mmol)の混合物に室温にてDMSO(2.00mL)、トリエチルアミン(128ul、0.92mmol)を添加した。反応混合物を室温において2日間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]酢酸(化合物ST12、F-Pnaz-Gly-OH)(57mg、40%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 359.2 (M-H)-
保持時間:0.60分(分析条件SQDFA05_02)
【0288】
シアノメチル2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]アセテート(化合物ST13、F-Pnaz-Gly-OCH CN)の合成
【化25】
【0289】
窒素雰囲気下、2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]酢酸(化合物ST12、F-Pnaz-Gly-OH)(36.0mg、0.10mmol)のアセトニトリル溶液(0.5ml)に、2-ブロモアセトニトリル(13.0μL、0.20mmol)及びN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(35.0μL、0.20mmol)を室温にて順番に加えた。反応混合物を室温にて16時間撹拌したのち反応液を濃縮し、粗生成物シアノメチル 2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]アセテート(化合物ST13、F-Pnaz-Gly-OCHCN)を得た。得られた粗生成物をアセトニトリル(3.00mL)に溶解し、そのまま次工程に用いた。
LCMS(ESI) m/z = 398.3 (M-H)-
保持時間:0.69分(分析条件SQDFA05_02)
【0290】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] 2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]アセテート(化合物ST14、F-Pnaz-Gly-pCpA)の合成
【化26】
【0291】
緩衝液A(60mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(72.2mg、0.10mmol)を溶解させ、シアノメチル 2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]アセテート(化合物ST13、F-Pnaz-Gly-OCHCN)のアセトニトリル溶液(3.00mL、0.10mmol)を投与し、室温で90分撹拌した。反応液を0℃に冷却した後に、トリフルオロ酢酸(3.00mL)を加えた。反応液を室温で30分撹拌したのちに、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST14、F-Pnaz-Gly-pCpA)(16mg、16%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 993.6 (M-H)-
保持時間:0.47分(分析条件SQDFA05_02)
【0292】
(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-ヒドロキシブタン酸(化合物ST15、F-Pnaz-Thr-OH)の合成
【化27】
【0293】
窒素雰囲気下、L-トレオニン(47.6mg、0.40mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(178mg、0.42mmol)の混合物に室温にてDMSO(2.00mL)、トリエチルアミン(128ul、0.92mmol)を添加した。反応混合物を室温において2日間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-ヒドロキシブタン酸(化合物ST15、F-Pnaz-Thr-OH)(141mg、87%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 403.3 (M-H)-
保持時間:0.59分(分析条件SQDFA05_02)
【0294】
シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-ヒドロキシブタノアト(化合物ST16、F-Pnaz-Thr-OCH CN)の合成
【化28】
【0295】
窒素雰囲気下、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-ヒドロキシブタン酸(化合物ST15、F-Pnaz-Thr-OH)(81.0mg、0.20mmol)のアセトニトリル溶液(1.0ml)に、2-ブロモアセトニトリル(268μL、4.00mmol)及びN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(69.9μL、0.40mmol)を室温にて順番に加えた。反応混合物を室温にて3時間撹拌したのち逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-ヒドロキシブタノアト(化合物ST16、F-Pnaz-Thr-OCHCN)(72.0mg、81%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 442.3 (M-H)-
保持時間:0.68分(分析条件SQDFA05_02)
【0296】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S,3R)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-ヒドロキシブタノアト(化合物ST17、F-Pnaz-Thr-pCpA)の合成
【化29】
【0297】
緩衝液A(60mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(72.2mg、0.10mmol)を溶解させ、シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-ヒドロキシブタノアト(化合物ST16、F-Pnaz-Thr-OCHCN)のアセトニトリル溶液(3.00mL、0.10mmol)を投与し、室温で90分撹拌した。反応液を0℃に冷却した後に、トリフルオロ酢酸(3.00mL)を加えた。反応液を室温で30分撹拌したのちに、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST17、F-Pnaz-Thr-pCpA)(7mg、7%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1037.4 (M-H)-
保持時間:0.48分(分析条件SQDFA05_02)
【0298】
(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-4-メチルペンタン酸(化合物ST18、F-Pnaz-Leu-OH)の合成
【化30】
【0299】
窒素雰囲気下、L-ロイシン(13.1mg、0.10mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(42.4mg、0.10mmol)の混合物に室温にてDMSO(0.50mL)、トリエチルアミン(32.1ul、0.23mmol)を添加した。反応混合物を室温において1時間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-4-メチルペンタン酸(化合物ST18、F-Pnaz-Leu-OH)(28mg、67%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 415.3 (M-H)-
保持時間:0.73分(分析条件SQDFA05_02)
【0300】
シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-4-メチルペンタノアト(化合物ST19、F-Pnaz-Leu-OCH CN)の合成
【化31】
【0301】
窒素雰囲気下、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-4-メチルペンタン酸(化合物ST18、F-Pnaz-Leu-OH)(12.0mg、0.03mmol)のアセトニトリル溶液(75.0ul)に、2-ブロモアセトニトリル(20.0μL、0.30mmol)及びN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(7.86μL、0.05mmol)を室温にて順番に加えた。反応混合物を室温にて1時間撹拌したのち反応液を濃縮し、粗生成物シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-4-メチルペンタノアト(化合物ST19、F-Pnaz-Leu-OCHCN)を得た。得られた粗生成物をアセトニトリル(0.75mL)に溶解し、そのまま次工程に用いた。
LCMS(ESI) m/z = 454.3 (M-H)-
保持時間:0.82分(分析条件SQDFA05_02)
【0302】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-4-メチルペンタノアト(化合物ST20、F-Pnaz-Leu-pCpA)の合成
【化32】
【0303】
緩衝液A(15mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(72.2mg、0.10mmol)を溶解させ、シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-4-メチルペンタノアト(化合物ST19、F-Pnaz-Leu-OCHCN)のアセトニトリル溶液(0.75mL、0.10mmol)を投与し、室温で60分撹拌した。反応液を0℃に冷却した後に、トリフルオロ酢酸(0.75mL)を加えた。反応液を室温で30分撹拌したのちに、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST20、F-Pnaz-Leu-pCpA)(9.6mg、31%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1049.6 (M-H)-
保持時間:0.54分(分析条件SQDFA05_02)
【0304】
2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]酢酸(化合物ST21、F-Pnaz-MeG-OH)の合成
【化33】
【0305】
窒素雰囲気下、サルコシン(483mg、5.42mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル)(2.0g、4.71mmol)の混合物に室温にてDMSO(15mL)、トリエチルアミン(953.4mg、9.42mmol)を添加した。反応混合物を室温において16時間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]酢酸(化合物ST21、F-Pnaz-MeG-OH)(1.4g、79%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 397 (M+Na)+
保持時間:0.88分(分析条件SMD method3)
【0306】
シアノメチル 2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]アセテート(化合物ST22、F-Pnaz-MeG-OCH CN)の合成
【化34】
【0307】
窒素雰囲気下、2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]酢酸(化合物ST21、F-Pnaz-MeG-OH)(1.38g、3.69mmol)およびN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(0.95g、7.38mmol)をDMF(28mL)に溶解し、2-ブロモアセトニトリル(1.74g、14.75mmol)を室温において加え、室温で16時間撹拌した。反応液を濃縮し、順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)にて精製し、シアノメチル 2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]アセテート(化合物ST22、F-Pnaz-MeG-OCHCN)(1.2g、79%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 436 (M+Na)+
保持時間:0.70分(分析条件SMD method4)
【0308】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] 2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]アセテート化合物ST23、F-Pnaz-MeG-pCpA)の合成
【化35】
【0309】
緩衝液A(100mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(422mg、0.58mmol)を溶解させ、シアノメチル 2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]アセテート(化合物ST22、F-Pnaz-MeG-OCHCN)(120.7mg、0.29mmol)のアセトニトリル溶液(5mL)をシリンジポンプを用いて15分以上かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。反応液にトリフルオロ酢酸(2.3mL)を加え、反応液を凍結乾燥したのちに、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST23、F-Pnaz-MeG-pCpA)(76.7mg、26%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1007.5 (M-H)-
保持時間:0.48分(分析条件SQDFA05_02)
【0310】
化合物ST28の合成中間体は、以下のスキームに従って合成した。
【化36】
【0311】
(2S)-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパン酸 2,2,2-トリフルオロ酢酸(化合物ST24、Fmoc-MeA3Pyr-OH・TFA)の合成
【化37】
【0312】
(2S)-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-3-ピリジン-3-イルプロパン酸(15g、38.62mmol)、トリフルオロ酢酸(27mL、348mmol)およびパラホルムアルデヒド((CHO))(3.48g、116mmol)をトルエン(50mL)に懸濁させ、窒素雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。室温へと冷却後、反応液を減圧濃縮した。残渣をDCMに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過および減圧濃縮することで溶媒を除去し、(S)-5-オキソ-4-(ピリジン-3-イルメチル)オキサゾリジン-3-カルボン酸(9H-フルオレン-9-イル)メチルを粗生成物として得た。
【0313】
得られた粗生成物である(S)-5-オキソ-4-(ピリジン-3-イルメチル)オキサゾリジン-3-カルボン酸 (9H-フルオレン-9-イル)(18g、44.95mmol)をジクロロエタン(100mL)に溶解し、トリエチルシラン(EtSiH)(47g、404.20mmol)およびトリフルオロ酢酸(100mL)を室温で加えた。反応液を窒素雰囲気下、70℃で16時間撹拌した後、反応液を減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸イソプロピルに溶解し、t-ブチルメチルエーテルとヘキサンの混合溶液(9:1)を加えた。その溶液を室温で20分間撹拌した後、4℃にて1時間静置した。生じた沈殿物をろ過にて回収し、冷却したt-ブチルメチルエーテルとヘキサンの混合溶液(9:1)で洗浄し、(2S)-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパン酸 2,2,2-トリフルオロ酢酸(化合物ST24、Fmoc-MeA3Pyr-OH・TFA)(19g、95%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 403 (M+H)+
保持時間:0.77分(分析条件SMD method1)
【0314】
(2S)-2-(メチルアミノ)-3-ピリジン-3-イルプロパン酸(化合物ST25、MeA3Pyr-OH)の合成
【化38】
【0315】
(2S)-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパン酸; 2,2,2-トリフルオロ酢酸(化合物ST24、Fmoc-MeA3Pyr-OH・TFA)(19g、47.21mmol)に室温にてDMF(72mL)およびピペリジン(28.5mL)を添加し、反応混合物を室温において3時間撹拌した。ジエチルエーテル(140mL)およびヘキサン(280mL)を加え、室温においてさらに3時間撹拌した。生じた沈殿物をろ過にて回収し、(2S)-2-(メチルアミノ)-3-ピリジン-3-イルプロパン酸(化合物ST25、MeA3Pyr-OH)(7g)を定量的に得た。
LCMS(ESI) m/z = 181 (M+H)+
保持時間:0.15分(分析条件SMD method2)
【0316】
(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパン酸(化合物ST26、F-Pnaz-MeA3Pyr-OH)の合成
【化39】
【0317】
窒素雰囲気下、(2S)-2-(メチルアミノ)-3-ピリジン-3-イルプロパン酸(化合物ST25、MeA3Pyr-OH)(970mg、5.38mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(2g、4.71mmol)の混合物に室温にてDMSO(15mL)、トリエチルアミン(950mg、9.43mmol)を添加した。反応混合物を40℃において16時間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパン(化合物ST26、F-Pnaz-MeA3Pyr-OH)(1.0g、46%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 466 (M+H)+
保持時間:0.98分(分析条件SMD method3)
【0318】
シアノメチル(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパノエート(化合物ST27、F-Pnaz-MeA3Pyr-OCH CN)の合成
【化40】
【0319】
窒素雰囲気下、(2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパン(化合物ST26、F-Pnaz-MeA3Pyr-OH)(800mg、1.72mmol)およびN-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(444mg、3.44mmol)の混合物をDCM(20mL)に溶解し、2-ブロモアセトニトリル(818mg、6.82mmol)を室温において加え、室温で6時間撹拌した。反応液を濃縮し、順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)にて精製し、シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパノエート(化合物ST27、F-Pnaz-MeA3Pyr-OCHCN)(221mg、25%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 505 (M+H)+
保持時間:0.83分(分析条件SMD method4)
【0320】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパノエート(化合物ST28、F-Pnaz-MeA3Pyr-pCpA)の合成
【化41】
【0321】
緩衝液A(100mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(400mg、0.55mmol)を溶解させ、シアノメチル (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-3-ピリジン-3-イルプロパノエート(化合物ST27、F-Pnaz-MeA3Pyr-OCHCN)(146mg、0.29mmol)のアセトニトリル溶液(5mL)をシリンジポンプを用いて15分以上かけて滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液にトリフルオロ酢酸(2.3mL)を加え、反応液を凍結乾燥したのちに、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST28、F-Pnaz-MeA3Pyr-pCpA)(64.4mg、5%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1098.5 (M-H)-
保持時間:0.39分(分析条件SQDFA05_01)
【0322】
(2S,3S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-メチルペンタン酸(化合物ST29、F-Pnaz-Ile-OH)の合成
【化42】
【0323】
窒素雰囲気下、L-イソロイシン(52.5mg、0.40mmol)、特許文献(WO2018143145A1)記載の方法で合成した炭酸-(4-ニトロフェニル)-4-(2-(4-フルオロフェニル)アセトアミド)ベンジル(178mg、0.42mmol)の混合物に室温にてDMSO(2mL)、トリエチルアミン(128μL、0.92mmol)を添加した。反応混合物を室温にて2.5日間撹拌したのち、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製し、(2S,3S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-メチルペンタン酸(化合物ST29、F-Pnaz-Ile-OH)(125mg、75%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 415.4 (M-H)-
保持時間:0.74分(分析条件SQDFA05_02)
【0324】
シアノメチル(2S,3S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-メチルペンタノアト(化合物ST30、F-Pnaz-Ile-OCH CN)の合成
【化43】
【0325】
窒素雰囲気下、(2S,3S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-メチルペンタン酸(化合物ST29、F-Pnaz-Ile-OH)(42mg、0.1mmol)および2-ブロモアセトニトリル(13μL、0.200mmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解し、N-エチル-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)(35μL、0.200mmol)を室温において加え、室温で16時間撹拌した。反応液を濃縮し、粗生成物シアノメチル (2S,3S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-メチルペンタノアト(化合物ST30、F-Pnaz-Ile-OCH2CN)を得た。得られた粗生成物をアセトニトリル(3.00mL)に溶解し、そのまま次工程に用いた。
LCMS(ESI) m/z = 454 (M-H)-
保持時間:0.83分(分析条件SQDFA05_02)
【0326】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S,3S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-メチルペンタノアト(化合物ST31、F-Pnaz-Ile-pCpA)の合成
【化44】
【0327】
緩衝液A(60mL)に、文献(Helv. Chim. Acta, 90,297-310)記載の方法で合成したリン酸二水素((2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-(((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル(72.2mg、0.100mmol)を溶解させ、シアノメチル (2S,3S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]-3-メチルペンタノアト(化合物ST30、F-Pnaz-Ile-OCH2CN)(45.5mg、0.100mmol)のアセトニトリル溶液(3.00mL)を投与し、室温で20時間撹拌した。反応液を0℃に冷却した後に、トリフルオロ酢酸(3.00mL)を加えた。反応液を室温で30分撹拌したのちに、反応液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.05%トリフルオロ酢酸水溶液/0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル)にて精製し、表題化合物(化合物ST31、F-Pnaz-Ile-pCpA)(12mg、11.4%)を得た。
LCMS(ESI) m/z = 1049.4 (M-H)-
保持時間:0.54分(分析条件SQDFA05_02)
【0328】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-3-フェニルプロパノエート(化合物ST32、F-Pnaz-MePhe-pCpA)の合成
【化45】
【0329】
WO2018/225864に記載の方法で合成した。
【0330】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2R)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニルアミノ]プロパノエート(化合物ST33、F-Pnaz-D-Ala-pCpA)の合成
【化46】
【0331】
WO2018/143145に記載の方法で合成した。
【0332】
2-O-[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] 1-O-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メチル] (2S)-ピペリジン-1,2-ジカルボキシラート(化合物ST34、F-Pnaz-Pic(2)-pCpA)の合成
【化47】
【0333】
WO2020/138336に記載の方法で合成した。
【0334】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-4-フェニルブタノアト(化合物ST35、F-Pnaz-MeHph-pCpA)の合成
【化48】
【0335】
特許文献(WO2020138336A1)記載の方法で合成した。
【0336】
[(2R,3S,4R,5R)-2-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-2-(ホスホノオキシメチル)オキソラン-3-イル]オキシ-ヒドロキシホスホリル]オキシメチル]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシオキソラン-3-イル] (2S)-2-[[4-[[2-(4-フルオロフェニル)アセチル]アミノ]フェニル]メトキシカルボニル-メチルアミノ]-4-フェニルブタノアト(化合物ST36、F-Pnaz-SPh2Cl-pCpA)の合成
【化49】
【0337】
特許文献(WO2020138336A1)記載の方法で合成した。
【0338】
実施例13.アミノアシルtRNAの合成
実施例5の「アミノアシルpCpAを用いたアミノアシルtRNA合成:その1」に記載の方法に準じ、各種アミノアシルtRNAを合成し、回収した。回収した各種アミノアシルtRNAは1mM酢酸ナトリウムに溶解した。完成したアミノアシルtRNAの名称と、用いるアミノアシルpCpAアミノ酸の対応は表18の通り。
【0339】
【表18】
【0340】
実施例14.変異体を発現する大腸菌株の作製
L31タンパク質のN末端側から様々な長さで発現するL31変異体株を8種類(L31(1-27)、L31(1-32)、L31(1-37)、L31(1-42)、L31(1-47)、L31(1-52)、L31(1-57)、L31(1-67))構築した。Quick and Easy ConditionalKnockout Kit (loxP/Cre)(Gene Bridges 社)のキット付属のプロトコルに従い、大腸菌株を構築した。
【0341】
ホモロジーアームが付加した機能カセットの作成
実施例1に記載の方法に準じて、機能カセットを作成した。各株のL31の発現領域の長さと、株を作製するのに用いた機能カセットのPCRに用いたprimerとの対応を表19に示した。
【0342】
【表19】
【0343】
L31変異体株の作成
実施例1に記載の方法に準じL31変異体株を作成した。
【0344】
実施例15.リボソームの精製
L31変異体株、L31short株、L31intact株、W3110株を用いたリボソームの調製
実施例2に記載の方法に準じ、株の培養、大腸菌の破砕、大腸菌の精製、Butylsepharose精製、超遠心精製を行った。全ての株に関して、実施例2のL31intact株およびL31short株に関する記載に準じた。大腸菌の破砕には、実施例2に記載のMg10Lysis Bufferを使用した。最終濃度が10~20μMになるように調製し、L31shortリボソーム、L31intactリボソーム、WTリボソーム、L31変異体リボソーム8種類、の合計11種類のリボソームを調製した。
【産業上の利用可能性】
【0345】
本発明は、非天然アミノ酸を含むペプチドおよびペプチドライブラリの製造方法、および、当該方法において使用するための改変されたL31タンパク質等を提供する。本発明の製造方法を用いることにより、非天然アミノ酸を含むペプチドをコードするmRNAを効率よく翻訳し、当該ペプチドやそれを含むライブラリを効率的に製造することができる。
図1
図2
図3
【配列表】
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