(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】半導体基板並びにその製造方法および製造装置、半導体デバイスの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20250627BHJP
H01S 5/20 20060101ALI20250627BHJP
H01S 5/323 20060101ALI20250627BHJP
【FI】
H01L21/20
H01S5/20
H01S5/323 610
(21)【出願番号】P 2023515443
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2022017816
(87)【国際公開番号】W WO2022224902
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021071379
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】正木 克明
(72)【発明者】
【氏名】神川 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏洋
(72)【発明者】
【氏名】林 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐基
(72)【発明者】
【氏名】青木 優太
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535051(JP,A)
【文献】特開2009-239270(JP,A)
【文献】特開2014-150211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0054292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H10H 20/825
H10H 20/82
H01S 5/323
H01S 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主基板と、前記主基板よりも上方に位置するシード部と、前記シード部と接する第1半導体部とを備え、
前記シード部は、第1方向を長手方向とし、
前記主基板と、前記第1半導体部との間に中空部が位置し、
前記第1半導体部は、前記シード部上に位置するベース部と、前記中空部を介して前記主基板に対向した本体部と、前記ベース部および前記本体部を接続するテザー部とを有し、前記テザー部は、前記本体部よりも前記第1方向の長さが小さい、半導体基板。
【請求項2】
前記シード部と接する第2半導体部を備え、
前記第1半導体部は、前記ベース部と、前記中空部を介して前記主基板に対向した前記テザー部とを有する第1フローティング部を含み、
前記第2半導体部は、前記中空部を介して前記主基板に対向した第2フローティング部を含み、
前記第1フローティング部と第2フローティング部とが分離されている、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記第1半導体部は、前記第1フローティング部と対となる第3フローティング部を含み、
前記第1フローティング部および第3フローティング部が、浮いた状態で前記第1方向と直交する第2方向に並ぶ、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記ベース部は、前記第1および第3フローティング部の間に位置し、前記第1および第3フローティング部に接続している、請求項3に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記第1フローティング部の前記第2方向の長さが、前記第1フローティング部の厚みよりも大きい、請求項3に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記主基板上面に、上方に突出する凸部が設けられ、
前記シード部は、前記凸部上に位置し、
前記第1フローティング部の前記第2方向の長さが、前記凸部の高さよりも大きい、請求項3に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記第2半導体部は、前記シード部上に位置するベース部と、前記中空部を介して前記主基板に対向した本体部と、前記ベース部および前記本体部を接続するテザー部とを有する、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項8】
平面視で前記本体部と重なる機能部を備える請求項1に記載の半導体基板。
【請求項9】
前記機能部は、デバイス部と前記デバイス部よりも上方の絶縁膜とを含む、請求項8に記載の半導体基板。
【請求項10】
前記テザー部の前記第1方向の長さは、前記テザー部の厚みよりも大きい、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項11】
前記テザー部の前記第1方向の長さは、前記本体部の第1方向の長さの半分以下である、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項12】
前記テザー部に切り欠きが設けられている、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項13】
前記第1フローティング部は、前記ベース部に接続する複数のテザー部を有する、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項14】
前記シード部は窒化物半導体を含む、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項15】
前記シード部上に位置する第3半導体部を含み、
前記第1半導体部のベース部および前記第2半導体部のベース部が、前記第3半導体部を介して接続されている、請求項7に記載の半導体基板。
【請求項16】
前記主基板の上方に、開口部およびマスク部を有するマスクパターンを備え、
平面視において、前記開口部と前記シード部とが重なる、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項17】
前記第1半導体部と、前記マスク部との間に前記中空部が位置する、請求項16に記載の半導体基板。
【請求項18】
前記マスク部が、前記シード部の端面を覆う、請求項16に記載の半導体基板。
【請求項19】
前記第1半導体部がGaN系半導体を含み、前記主基板が、前記GaN系半導体と格子定数が異なる異種基板である、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項20】
前記異種基板がシリコン基板または炭化ケイ素基板であり、
前記第1方向が前記GaN系半導体の<1-100>方向である、請求項19に記載の半導体基板。
【請求項21】
前記第1および第2フローティング部はそれぞれ、貫通転位密度が5×106〔個/cm2〕以下の低欠陥領域を含み、
前記低欠陥領域の前記第2方向のサイズが10μm以上である、請求項3に記載の半導体基板。
【請求項22】
前記機能部は、電極および活性部を含む、請求項8に記載の半導体基板。
【請求項23】
前記主基板がシリコン基板であり、
前記マスク部は、前記シリコン基板に熱酸化処理あるいは窒化処理を施して得られる基板加工膜である、請求項16に記載の半導体基板。
【請求項24】
前記絶縁膜は、平面視において前記本体部と重なり、かつ前記テザー部とは重ならない、請求項9に記載の半導体基板。
【請求項25】
前記絶縁膜の一部は、前記本体部の側面と接触し、前記本体部を前記主基板に対して固定するアンカー膜として機能する、請求項24に記載の半導体基板。
【請求項26】
前記第1半導体部の本体部および前記第2半導体部の本体部が、前記主基板から浮いた状態で前記第1方向に並ぶ、請求項7に記載の半導体基板。
【請求項27】
主基板と、前記主基板よりも上方に位置するシード部と、第1方向に並ぶ、第1半導体部および第2半導体部とを備え、前記第1半導体部および第2半導体部は、前記シード部と接し、前記シード部は、前記第1方向を長手方向とし、前記主基板と、前記第1半導体部および前記第2半導体部との間に中空部が位置している半導体基板の製造方法であって、
前記第1半導体部は、前記中空部を介して前記主基板に対向した第1フローティング部を含み、
前記第2半導体部は、前記中空部を介して前記主基板に対向した第2フローティング部を含み、
ELO法で形成した半導体部にエッチングを行うことで前記第1フローティング部および前記第2フローティング部を形成する、半導体基板の製造方法。
【請求項28】
前記第1半導体部は、前記シード部上に位置する第1ベース部を含み、
前記エッチングにおいて、前記第1フローティング部に、前記第1ベース部に接続するテザー部と、前記テザー部に接続する本体部とを形成する、請求項27に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項29】
前記エッチングの前に、ELO法で形成した半導体部を、アンカーとして機能する絶縁膜によって支持する、請求項27に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項30】
前記主基板上面に形成された凸部に前記シード部を設けることで、前記中空部を形成する、請求項27に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項31】
マスク部および開口部を含むマスクパターン上にELO法で前記半導体部を形成し、その後に前記マスク部を除去することで前記中空部を形成する、請求項27に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項32】
請求項27に記載の半導体基板の製造方法を行う、半導体基板の製造装置。
【請求項33】
請求項1に記載の半導体基板を準備する工程と、
前記テザー部を破断させる工程とを含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項34】
請求項33に記載の各工程を行う、半導体デバイスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法を用いて、シリコン基板等の主基板の上方に、浮いた状態の半導体デバイス層(活性層を含む)を形成する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示にかかる半導体基板は、主基板と、前記主基板よりも上方に位置するシード部と、第1方向に並ぶ、第1および第2半導体部とを備え、前記第1および第2半導体部は、前記シード部と接し、前記シード部は、前記第1方向を長手方向とし、前記主基板と、前記第1半導体部および第2半導体部との間に中空部が位置している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本実施形態に係る半導体基板の構成を示す平面図である。
【
図2A】本実施形態に係る半導体基板の構成を示す断面図である。
【
図2B】本実施形態に係る半導体基板の構成を示す断面図である。
【
図3】本実施形態にかかる半導体基板の製造方法の一例を示す平面図である。
【
図4】本実施形態にかかる半導体基板の製造方法の一例を示すフローチャートである
【
図5】本実施形態にかかる半導体基板の製造装置の一例を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態にかかる半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態にかかる半導体デバイスの製造装置の一例を示すブロック図である。
【
図8】本実施形態に係る電子機器の構成を示す模式図である。
【
図9】実施例1に係る半導体基板の構成を示す平面図である。
【
図12】実施例1における半導体デバイスの個片化工程を示す平面図である。
【
図13】実施例1における半導体デバイスの個片化工程を示す断面図である。
【
図14A】実施例1に係る半導体基板の別構成を示す断面図である。
【
図14B】実施例1に係る半導体基板の別構成を示す断面図である。
【
図15】実施例1に係る半導体基板の別構成を示す平面図である。
【
図16】実施例1におけるテンプレート基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図18】実施例1におけるテンプレート基板の別の製造方法を示すフローチャートである。
【
図20】実施例1における半導体基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図22】実施例1に係る半導体基板の別構成を示す平面図である。
【
図23】実施例1に係る半導体基板の別構成を示す平面図である。
【
図24】実施例1における半導体基板の別の製造方法を示す断面図である。
【
図25】実施例2に係る半導体基板の構成を示す平面図である。
【
図26】実施例2に係る半導体基板の構成を示す断面図である。
【
図27】実施例2に係る半導体基板の構成を示す断面図である。
【
図28】実施例4の構成を示す模式的断面図である。
【
図29】実施例4の電子機器への適用例を示す断面図である。
【
図30】実施例5の構成を示す模式的断面図である。
【
図31】実施例6の半導体基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
〔半導体基板〕
図1は、本実施形態に係る半導体基板の第1および第2半導体部の構成を示す平面図である。
図2Aおよび
図2Bは、本実施形態に係る半導体基板の構成を示す断面図である。本実施形態に係る半導体基板10(半導体ウエハー)は、
図1、
図2Aおよび
図2Bに示すように、主基板1と、主基板1よりも上方に位置するシード部SDと、第1方向(Y方向)に並ぶ、第1半導体部8Fおよび第2半導体部8Sとを備え、第1半導体部8Fおよび第2半導体部8Sはシード部SDと接する。シード部SDは、Y方向を長手方向とする。主基板1と、第1半導体部8Fおよび第2半導体部8Sとの間に中空部(ボイド部)VDが位置する。なお、本開示において、第1半導体部8Fおよび第2半導体部8Sは、層状に形成された、第1半導体層8Fおよび第2半導体層8Sであってもよい。
【0007】
主基板の上面1fには、上方に突出する凸部1Qが設けられ、シード部SDは、凸部1Q上に位置する。主基板1の上方には、開口部Kおよびマスク部5を有するマスクパターン6が設けられ、平面視において、開口部Kとシード部SDとが重なり、第1および第2半導体部8F・8Sとマスク部5との間に中空部VDが位置している。
【0008】
第1半導体部8Fは、中空部VDを介して主基板1に対向した第1フローティング部P1を含み、第2半導体部8Sは、中空部VDを介して主基板1に対向した第2フローティング部P2を含み、第1フローティング部P1と第2フローティング部P2とが分離されている。第1半導体部8Fは、第1フローティング部P1と対となる第3フローティング部P3を含み、第1フローティング部P1および第3フローティング部P3が、浮いた状態(下側に支持部材がない、中空部に接する状態)で第1方向(Y方向)と直交する第2方向(X方向)に並ぶ。第2半導体部8Sは、第2フローティング部P2と対となる第4フローティング部P4を含み、第2フローティング部P2および第4フローティング部P4が、浮いた状態でX方向に並ぶ。
【0009】
第1半導体部8Fは、シード部SD上に位置する第1ベース部BFを含み、第1ベース部BFは、第1および第3フローティング部P1・P3の間に位置し、第1および第3フローティング部P1・P3に接続している。第2半導体部8Sは、シード部SD上に位置する第2ベース部BSを含み、第2ベース部BSは、第2および第4フローティング部P2・P4の間に位置し、第2および第4フローティング部P2・P4に接続している。
【0010】
第1フローティング部P1は、第1ベース部BFに接続するテザー部T1と、テザー部T1に接続する本体部H1とを含み、テザー部T1は、本体部H1よりもY方向の長さが小さい。第3フローティング部P3は、第1ベース部BFに接続するテザー部T3と、テザー部T3に接続する本体部H3とを含み、テザー部T3は、本体部H3よりもY方向の長さが小さい。なお、テザー部T1の構成はこれに限定されない。テザー部T1は、Y方向の長さが本体部H1と同じあり、厚み(Z方向のサイズ)が本体部H1よりも小さい構成でもよい。さらに、テザー部T1は、Y方向の長さが本体部H1よりも小さく、厚みも本体部H1より小さい構成でもよい。
【0011】
半導体基板10は、シード部SD上に位置する第3導体部8Tを含み、第1ベース部BFおよび第2ベース部BSが第3半導体部8Tを介して接続されている。なお、本開示では、第3導体部8Tは層状に形成されており、以下、第3導体層8Tと表現することがある。
【0012】
半導体基板10では、主基板1上に複数の層状の部材が積層されているが、その積層方向を「上方向」とすることができる。また、半導体基板10の法線方向と平行な視線で半導体基板10を視ることを「平面視」と称することができる。半導体基板とは、半導体部を含む基板という意味であり、主基板1は、半導体であってもよいし、非半導体であってもよい。主基板1、マスクパターン6および層状の第1シード部S1を含めてテンプレート基板7と称する場合がある。
【0013】
第1および第2半導体部8F・8Sは窒化物半導体を含む。窒化物半導体は、例えば、AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+z=1)と表すことができ、具体例として、GaN系半導体、AlN(窒化アルミニウム)、InAlN(窒化インジウムアルミニウム)、InN(窒化インジウム)を挙げることができる。GaN系半導体は、ガリウム原子(Ga)および窒素原子(N)を含む半導体であり、例えば、GaN、AlGaN、AlGaInN、InGaN等を挙げることができる。第1および第2半導体部8F・8Sは、ドープ型(例えば、ドナーを含むn型)でもノンドープ型でもよい。
【0014】
第1および第2半導体部8F・8Sは、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法を用いて形成することができる。ELO法では、例えば
図2A・
図2Bにおいて、主基板1としてGaN系半導体と格子定数の異なる異種基板を用い、シード部SDに窒化物半導体を用い、マスク部5に無機化合物膜を用い、第1ベース部BFからマスク部5の上方(空中)にGaN系半導体を含む第1半導体部8Fを横方向(X方向)成長させることができる。この場合、第1半導体部8Fの厚み方向(Z方向)をGaN系結晶の<0001>方向(c軸方向)、長手形状である、シード部SDおよび開口部Kの長手方向(第1方向、Y方向)をGaN系結晶の<1-100>方向(m軸方向)、シード部SDおよび開口部Kの幅方向(第2方向、X方向)をGaN系結晶の<11-20>方向(a軸方向)とすることができる。ELO法で形成された層(第1および第2半導体部8F・8S等を含む)をELO半導体部8と称することがある。
【0015】
ELO法で形成された第1半導体部8Fは、平面視でマスク部5と重なり、相対的に貫通転位の少ない低転位部(第1フローティング部P1)と、平面視において開口部KのシードSDと重なり、低転位部よりも相対的に貫通転位の多い第1ベース部BFとを含む。低転位部は、貫通転位密度よりも非貫通転位密度の方が大きい構成であってもよい。第1半導体部8Fよりも上層に層状の活性部(以下、単に活性層ともいう)を含む場合、例えば、活性層の発光領域を平面視で低転位部と重なるように設けることができる。
【0016】
貫通転位は、第1半導体部8Fの厚み方向(Z方向)に沿って、第1半導体部8Fの下面または内部からその表面または表層に延びる転位(欠陥)である。貫通転位は、第1半導体部8Fの表層(c面に平行)について、CL(Cathode luminescence)測定を行うことにより観察可能である。非貫通転位は、厚み方向に平行な面(例えば、m面)による断面においてCL測定される転位であり、主には基底面(c面)転位である。
【0017】
少なくとも第1および第2半導体部8F・8S上には、層状の機能部9が設けられる。機能層9(以下、単に機能層ともいう)は、単層体でも積層体でもよい。機能層9が、半導体デバイスの構成要素としての機能、外力からの保護機能、静電気からの保護機能、水、酸素等の異物侵入を抑止する保護機能、エッチャント等からの保護機能、光学機能、およびセンシング機能の少なくとも1つを有していてもよい。機能層9は第1および第2半導体部8F・8Sの側面(端面)にも形成されていてもよい。
【0018】
図1、
図2Aおよび
図2Bに示される半導体基板10では、第1半導体部8Fのうち中空部VDと接する(シード部SDと接しない)第1フローティング部P1と、第2半導体部8Sのうち中空部VDと接する(シード部SDと接しない)第2フローティング部P2とが分離されているため、半導体基板10から、本体部H1・H3を含む半導体デバイスを得るときの個片化工程が容易である。例えば、第1フローティング部P1の本体部H1を半導体基板10から分離するには、テザー部T1を破断させればよい。また、本体部H1が主基板1から浮いているため、主基板1からの応力が緩和され、本体部H1に生じるクラックや欠陥が低減する。さらに、本体部H1を主基板1から浮かせ、本体部H1下に選択成長マスク(堆積抑制マスク)として機能するマスク部5を配することで、本体部H1が低転位部となり、平面視で低転位部と重なるように活性領域(例えば、発光領域)を形成することができる。低転位部の貫通転位密度は、例えば5×10
6〔個/cm
2〕以下であり、本体部H1のX方向のサイズは10μm以上とすることができる。また、ELO半導体部形成後のエッチング等、簡易な工程によって、本体部H1およびテザー部T1等を形成することができる。
【0019】
〔半導体基板の製造〕
図3は、本実施形態にかかる半導体基板の製造方法の一例を示す平面図である。
図4は、本実施形態にかかる半導体基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3および
図4に示す半導体基板の製造方法では、テンプレート基板7を準備する工程の後に、テンプレート基板7上に、マスクパターン6に接しないELO半導体部(エアブリッジ構造)8を形成し、その後、ELO半導体部8をフォトリソグラフィ法を用いてパターニング(例えば、エッチング)することで、第1および第2半導体部8F・8Sとする工程を行う。この工程により、本体部H1およびテザー部T1等を含む第1フローティング部P1と、第1フローティング部P1から分離された第2フローティング部P2とを形成することができる。なお、ELO半導体部8をパターニングする工程の前あるいは後に機能層9を形成する工程を行うことができる。
【0020】
図5は、本実施形態にかかる半導体基板の製造装置の一例を示すブロック図である。
図5の半導体基板の製造装置70は、テンプレート基板7上に第1および第2半導体部8F・8Sを形成する工程を行う半導体部形成部72と、半導体部形成部72を制御する制御部74とを備える。半導体部形成部72は、マスクパターン6に接しないELO半導体部8を形成し、その後、ELO半導体部8を、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることで、第1および第2半導体部8F・8Sとする工程を行う。半導体基板の製造装置70が機能層9を形成する構成でもよい。
【0021】
半導体部形成部72はMOCVD装置およびパターニング装置を含んでいてもよく、制御部74がプロセッサおよびメモリを含んでいてもよい。制御部74は、例えば、内蔵メモリ、通信可能な通信装置、またはアクセス可能なネットワーク上に格納されたプログラムを実行することで半導体部形成部72を制御する構成でもよく、このプログラムおよびこのプログラムが格納された記録媒体等も本実施形態に含まれる。
【0022】
〔半導体デバイスの製造〕
図6は、本実施形態にかかる半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6の半導体デバイスの製造方法では、半導体基板10を準備する工程の後に、テザー部T1等を破断させて半導体基板10から本体部H1等を離隔し、半導体デバイスを得る工程を行う。
【0023】
図7は、本実施形態にかかる半導体デバイスの製造装置の一例を示すブロック図である。
図7の半導体デバイスの製造装置80は、半導体デバイス生成部82と、半導体デバイス生成部82を制御する制御部84とを備える。半導体デバイス生成部82は、テザー部T1を破断させて半導体基板10から本体部HTを離隔し、半導体デバイスを得る工程を行う。半導体デバイスの製造装置80が機能層9を形成する構成でもよい。
【0024】
〔半導体デバイス〕
半導体基板10から離隔された本体部H1は、半導体デバイスとして機能させることができる。半導体デバイスの具体例として、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、ショットキーダイオード、フォトダイオード、トランジスタ(パワートランジスタ、高電子移動度トランジスタを含む)等を挙げることができる。
【0025】
〔電子機器〕
図8は、本実施形態に係る電子機器の構成を示す模式図である。
図8の電子機器30は、本体部H1を含む半導体デバイス20と、半導体デバイス20が実装される駆動基板23と、駆動基板23を制御する制御回路25とを含む。
【0026】
電子機器30としては、表示装置、レーザ出射装置(ファブリペロータイプ、面発光タイプを含む)、照明装置、通信装置、情報処理装置、センシング装置、電力制御装置等を挙げることができる。
【0027】
〔実施例1〕
(全体構成)
図9は、実施例1に係る半導体基板の構成を示す平面図である。
図10は、
図9のc-c矢視断面図である。
図11は、
図9のd-d矢視断面図である。実施例1に係る半導体基板10は、
図9~
図11に示すように、主基板1と、主基板1よりも上方に位置するシード部SDと、Y方向に並ぶ、第1半導体部8Fおよび第2半導体部8Sとを備え、第1半導体部8Fおよび第2半導体部8Sは、シード部SDと接し、主基板1と、第1半導体部8Fおよび第2半導体部8Sとの間に中空部(ボイド部)VDが位置する。
【0028】
第1半導体部8Fは、中空部VDと接する第1フローティング部P1を含み、第2半導体部8Sは、中空部VDと接する第2フローティング部P2を含み、第1フローティング部P1と第2フローティング部P2とが分離されている。第1半導体部8Fは、第1フローティング部P1と対となる第3フローティング部P3を含み、第1フローティング部P1および第3フローティング部P3が、浮いた状態でX方向に並ぶ。第1半導体部8Fは、シード部SD上に位置する第1ベース部BFを含み、第1ベース部BFは、第1および第3フローティング部P1・P3の間に位置し、第1および第3フローティング部P1・P3に接続している。
【0029】
実施例1では、第1フローティング部P1のX方向の長さが、第1フローティング部P1の厚みよりも大きい。主基板上面1Fに、上方に突出する凸部1Qが設けられ、シード部SDは、凸部1Q上に位置し、第1フローティング部P1のX方向の長さが、凸部1Qの高さよりも大きい。第1フローティング部P1は、第1ベース部BFに接続するテザー部T1と、テザー部T1に接続する本体部H1とを含み、テザー部T1は、本体部H1よりもY方向の長さが小さい。
【0030】
半導体基板10は、平面視で第1フローティング部P1と重なる機能層9を備える。機能層9は、平面視において本体部H1およびテザー部T1と重なる。テザー部T1のY方向の長さは、テザー部T1の厚みよりも大きい。テザー部T1のY方向の長さは、本体部H1のY方向の長さの半分以下である。
【0031】
平面視において機能層9が本体部H1およびテザー部T1と重なる構成に限定されない。平面視において機能層9がテーザ部T1と重ならない構成、すなわち、機能層9が、本体部H1上に積層され、テザー部T1上には積層されていない構成でもよい。こうすれば、個片化の際にテザー部T1が破断し易くなる。
【0032】
半導体基板10は、主基板1の上方に、開口部Kおよびマスク部5(選択成長マスク)を有するマスクパターン6を備え、平面視において、開口部Kとシード部SDとが重なる。第1半導体部8Fと、マスク部5との間に中空部VDが位置する。マスク部5は、シード部SDの端面を覆う。すなわち、シード部SDの上面は第1ベース部BFに接し、シード部SDの下面は主基板1の上面(凸部1Q)に接し、端面(側面)はマスク部5に覆われている。このため、半導体部8Fは、シード部SDの端面に接触しない。
【0033】
図12は、実施例1における半導体デバイスの個片化工程を示す平面図である。
図13は、実施例1における半導体デバイスの個片化工程を示す断面図である。
図12および
図13に示すように、例えば、テザー部T1・T3を破断させることで、第1フローティング部P1の本体部H1および第3フローティング部P3の本体部H3を半導体基板10から離隔し、半導体デバイス20を得ることができる。半導体デバイス20の一方側面に、テザー部T1の一部Tfが残余していてもよく、他方側面にアンカー膜9a(後述)が残余していてもよい。
【0034】
テザー部T1・T3を破断させる手法については、機能層9に対して上方から(下向きの)圧力を与えてもよいし(押し込み)、レーザで破断させてもよい。また、半導体基板10の温度制御によって破断させてもよい。例えば、ペルチェ素子を用いて、粘着テープが付いた状態の半導体基板10を低温に下げてもよい。この際に、一般に半導体よりも熱膨張係数の大きな粘着テープが大きく収縮し、テザー部T1・T3に応力が加えられる。さらなる手法として、半導体基板10上に支持基板を接合し、テザー部T1・T3に対して機械的に上方向の力を加えてこれらを破断させてもよい。
【0035】
(主基板)
主基板1には、GaN系半導体と異なる格子定数を有する異種基板を用いることができる。異種基板としては、単結晶のシリコン(Si)基板、サファイア(Al2O3)基板、シリコンカーバイド(SiC)基板等を挙げることができる。主基板1の面方位は、例えば、シリコン基板の(111)面、サファイア基板の(0001)面、SiC基板の6H-SiC(0001)面である。これらは例示であって、ELO半導体部を成長させることができる主基板および面方位であれば何でもよい。
【0036】
(シード部)
シード部SDは、ELO半導体部の成長起点であり、窒化物半導体(GaN系半導体、AlN、InAlN、InN等)、シリコンカーバイド(SiC)等を用いることができる。例えばシリコン基板またはシリコンカーバイド基板である主基板1の凸部上に局所形成された窒化アルミニウム(AlN)をシード部SDとすることができる。また、シリコンカーバイド基板である主基板1の凸部上に局所形成されたGaN系半導体をシード部SDとすることができる。
【0037】
図14Aは、実施例1に係る半導体基板の別構成を示す断面図である。
図14Aに示すように、シリコン基板である主基板1の凸部上に、バッファ部2B(例えば、AlN)を介してGaN系半導体のシード部SDを局所形成してもよい。主基板1にシリコン基板を用い、シード部SDにGaN系半導体を用いた場合、両者(シリコン基板とGaN系半導体)が溶融し合うことがあるため、AlN等のバッファ部2Bを設けることで溶融を抑制することができる。また、格子定数がGaN系半導体に近いバッファ部2Bを設けることで、シード部SDの結晶性の向上も期待できる。バッファ部2Bとして、低温(800°以下)形成のAlNを用いてもよい。こうすれば、シード部SD(例えば、GaN系半導体)の結晶性が向上する。シード部SD、バッファ部2Bは、MOCVD法以外の方法、例えばスパッタリング法等で形成してもよい。そうすることで消耗品費の削減、減価償却費の低減ができ、生産性を高めることができる。
図14Bは、実施例1に係る半導体基板の別構成を示す断面図である。
図14Bに示すように、凸部1Qの上面の一部にシード部SDを設けてもよい。
【0038】
(マスクパターン)
マスクパターン6はマスク部5および開口部Kを有し、開口部Kにおいてシード部SDが露出する。開口部KがY方向に伸びる複数のスリットであり、隣り合う開口部Kの間にマスク部5が位置する構成でもよい。
図15は、実施例1に係る半導体基板の別構成を示す平面図である。
図15に示すように、開口部Kおよびシード部SDをY方向に区切ってもよい。すなわち、Y方向を長手方向とする複数のシード部SDがY方向に並ぶ構成とする。こうすれば、Y方向に並ぶ複数のELO半導体部が形成され、主基板1と主に第1半導体部8Fとの間で発生する応力を緩和することができる。これにより、第1半導体部8Fにおける欠陥、クラックの発生が低減する。また、主基板1の反りが低減し、主基板1の大口径化が容易になる。マスク部5と開口部Kは、マスク体がある部分とない部分という意味であり、マスク部5が層状であるかは問わない。マスクパターン6がマスク層であってもよい。また、開口部Kの全体がマスク部5に囲まれていなくてもよい。
【0039】
マスク部5としては、例えば、シリコン酸化膜(SiOx)、窒化チタン膜(TiN等)、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸窒化膜(SiON)、および高融点(例えば1000度以上)をもつ金属膜のいずれか1つを含む単層膜、またはこれらの少なくとも2つを含む積層膜を用いることができる。シリコン酸化膜は、ELO半導体部の成膜中に微量ながら分解、蒸発し、ELO半導体部に取り込まれてしまうことがあるが、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜は、高温で分解、蒸発し難いというメリットがある。そこで、マスク部5を、シリコン窒化膜あるいはシリコン酸窒化膜の単層膜としてもよいし、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜をこの順に形成した積層膜としてもよいし、シリコン窒化膜およびシリコン酸化膜をこの順に形成した積層体膜としてもよいし、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜をこの順に形成した積層膜としてもよい。
【0040】
(テンプレート基板)
図16は実施例1におけるテンプレート基板の製造方法を示すフローチャートである。
図17は、
図16の製造方法を示す断面図である。
図16および
図17では、主基板1上に、シード層SL、および犠牲膜ZF(例えば、フォトレジスト)をこの順に成膜する工程と、パターニングした犠牲膜ZFをマスクパターンとしてシード層SLをパターニングする工程と、犠牲膜ZFをマスクパターンとして主基板1表面をエッチングし、凸部1Qを形成する工程と、主基板1および犠牲膜ZFを覆うマスクパターン6を形成する工程(例えばスパッタリング法やPECVD法を用いる)と、リムーバーによってフォトレジストを除去しシード部SDを露出させる開口部Kおよびマスク部5を形成する工程とを行う。この場合、マスク部5が、シード部SDの端面(側面)を覆う構成となる。
【0041】
図18は実施例1におけるテンプレート基板の別の製造方法を示すフローチャートである。
図19は
図18の製造方法を示す断面図である。
図18および
図19では、シリコン基板またはシリコンカーバイド基板である主基板1上に、シード層SL、および犠牲膜ZF(酸化シリコン膜またはレジスト膜)をこの順に成膜する工程と、シード層SLおよび犠牲膜ZFをパターニングする工程と、犠牲膜ZFをマスクパターンとして主基板1表面をエッチングし、凸部1Qを形成する工程と、犠牲膜ZFをエッチング(除去)する工程と、主基板1の表面に基板加工処理(熱酸化処理あるいは窒化処理)を施し、基板加工膜(シリコン熱酸化膜あるいはシリコン窒化膜あるいはシリコン酸窒化膜)であるマスク部5および開口部Kを形成する工程とを行う。基板加工膜は膜質に優れ、高温下におかれる選択成長マスクに好適である。
【0042】
マスクパターン6の厚みは、例えば100nm程度~4μm程度(好ましくは150nm程度~2μm程度)とし、開口部Kの幅は、0.1μm~20μm程度とする。開口部Kの幅が小さいほど、各開口部KからELO半導体部8に伝搬する貫通転位の数は減少する。また、低転位部である本体部(H1等)の面積を大きくすることができる。
【0043】
(ELO半導体部の成膜)
実施例1では、ELO半導体部(8F・8S・8T含む)をGaN層とし、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を用いて前述のテンプレート基板7上にELO成膜を行った。ELO成膜条件の一例として、基板温度:1120℃、成長圧力:50kPa、TMG(トリメチルガリウム):22sccm、NH3:15slm、V/III=6000(III族原料の供給量に対する、V族原料の供給量の比)を採用することができる。
【0044】
この場合、シード部SD上にELO半導体部が選択成長し、引き続いてマスク部5の上方(空中)に横方向成長する。そして、マスク部5の上方においてその両側から横方向成長するELO半導体部が会合する前に横方向成長を停止させた。
【0045】
横方向成膜レートを高める手法は、以下のとおりである。まず、シード部SD上に、Z方向(c軸方向)に成長する縦成長層を形成し、その後、X方向(a軸方向)に成長する横成長層を形成する。縦成長させるためには例えば成長温度を1050℃と低くする。この際、縦成長層の厚みを、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下とすることで、横成長層の厚みを低く抑え、横方向成膜レートを高めることができる。
【0046】
ELO半導体部8の成膜温度については、1200℃を超える高温よりも、1150℃以下の温度が好ましい。1000℃を下回るような低温においてもELO半導体部8の形成は可能であり、マスク部5の分解抑制の観点ではより好ましいといえる。
【0047】
なお、1000℃を下回るような低温成膜では、ガリウム原料ガスとしてトリエチルガリウム(TEG)を用いることが好ましい。TEGはTMGに比べ、低温で有機原料が効率よく分解するため、横方向成膜レートを高めることができる。
【0048】
ELO法の結晶成長には、上述の有機金属気相成長(MOCVD)法のほか、ハイドライド気相成長(Vaper Phase Epitaxy;HVPE)法、分子線気相成長(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法などを用いることができる。
【0049】
(機能層)
第1および第2半導体部8F・8S上に位置する機能層9は、層状のデバイス部9d(以下、単にデバイス層ともいう)と、デバイス層9dよりも上層に位置する絶縁膜9p(パッシベーション膜)と、絶縁膜9pよりも上層に位置する第1および第2電極E1・E2とを含む。本体部H1および機能層9が、発光ダイオード、半導体レーザ等の半導体デバイスとして機能する構成でもよい。
【0050】
デバイス層9d、絶縁膜9p、並びに第1および第2電極E1・E2は、テザー部T1とは重ならない。デバイス層9dは、例えば、n型半導体部(例えば、GaN系)、ノンドープ半導体部(例えば、GaN系)、p型半導体部(例えば、GaN系)の積層体であり、ノンドープ半導体部を活性層(電子と正孔が結合する層)とすることもできる。デバイス層9dは任意の方法で形成すればよい。絶縁膜9pには、酸化シリコン、窒化シリコン等の無機膜を用いることができる。第1および第2電極E1・E2の一方はアノード、他方はカソードとすることができる。第1電極E1の面積を、第2電極E2の面積よりも大きくすることもできる。実施例1では、デバイス層9d上に第1および第2電極E1・E2を設けているが、これに限定されない。例えば、第1電極E1だけをデバイス層9d上に設けてもよい。
【0051】
図20は実施例1における半導体基板の製造方法を示すフローチャートである。
図21は
図20の製造方法を示す断面図である。
図9、
図20および
図21に示すように、テンプレート基板7上にELO半導体部8を形成する工程と、ELO半導体部8上にデバイス層9dを形成する工程と、デバイス層9d上に、例えばPECVD法によって絶縁膜9pを成膜する工程と、絶縁膜9pをパターニングする工程と、第1および第2電極E1・E2を形成する工程と、ELO半導体部8をドライエッチング(例えば、反応性イオンエッチング:RIE)して、本体部H1・H3およびテザー部T1・T3を含む第1半導体部8Fと、第2半導体部8Sとを形成する工程とを行う。ELO半導体部8のエッチングには、ドライ方式の、ECR(電子サイクロトロン共鳴)エッチング、CAIB(化学アシストイオンビーム)エッチング等のほか、ウェット方式のPEC(光電気化学)エッチングを用いてもよい。
【0052】
絶縁膜9pは、デバイス層9dよりも上層に形成されるパッシベーション膜(例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜)であり、平面視で本体部H1と重なり、テザー部T1とは重ならない。こうすれば、絶縁膜9pがテザー部T1の破壊を妨げる不具合を回避することができる。また、
図13に示すように、絶縁膜9pの一部(例えば、本体部のH1の端面中央部を覆い、主基板上のマスク部5に到る部分)は、アンカー膜9aとして機能する。こうすれば、本体部H1が安定し、かつテザー部T1を破断させるときにアンカー膜9aも同時に破断させることができる。
【0053】
なお、ELO半導体部8を形成する際に、マスク部5の上方においてその両側から横方向成長するELO半導体部同士を会合させておき、ELO半導体部8をエッチングする際に会合部(高転位部)を除去してもよい。
【0054】
図22は、実施例1に係る半導体基板の別構成を示す平面図である。
図22に示すように、第1フローティング部P1が複数のテザー部T1・T5を含み、本体部H1が、複数のテザー部T1・T5を介して第1ベース部BFに接続する構成でもよい。複数のテザー部T1・T5を設けることで本体部H1が安定するというメリットがある。
【0055】
図23は、実施例1に係る半導体基板の別構成を示す平面図である。
図23に示すように、第1フローティング部P1のテザー部T1が切り欠き(ノッチ)NCを有する構成でもよい。この場合、ノッチNCの側面が、X方向に対して60°をなす構成とすることができる。このようなノッチNCは、例えば、テザー部形成時に半円状の切り欠きを設けておき、その後にTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)に浸漬してGaN系半導体のm面を出すことで形成できる。ノッチNCのような鋭角な破断起点を形成することで、テザー部T1の破断が容易になる。
【0056】
図24は実施例1における半導体基板の別の製造方法を示す断面図である。
図10では、主基板1に凸部1Qを設けているがこれに限定されない。
図24のように、主基板1(例えば、シリコン基板)、面状のバッファ層2(例えば、AlN)、およびY方向を長手方向とする局所的なシード部SD(例えば、GaN系半導体)をこの順に含み、マスクパターン6の開口部Kにシード部SDが露出するテンプレート基板7を用いて、シード部SDおよびマスク部5に接するELO半導体部(第1半導体部8Fを含む)を形成し、その後に、マスク部5をエッチング(例えば、ウェットエッチング)により除去してもよい。これにより、第1半導体部8Fを浮かす(下面が中空部VDと接する状態にする)ことができる。なお、機能層9を形成する前にマスク部5を除去してもよい。
【0057】
〔実施例2〕
図25は、実施例2に係る半導体基板の構成を示す平面図である。
図26および
図27は、実施例2に係る半導体基板の構成を示す断面図である。実施例1では、マスク部5の上方においてその両側から横方向成長するELO半導体部が会合する前に横成長を停止させ、第1および第2半導体部8F・8Sが、平面視でマスク部5と重なる端面(エッジ)を有する構成としているが、これに限定されない。
図25~
図27に示すように、マスク部5の上方においてその両側から横方向成長するELO半導体部が会合させる構成でもよい。
【0058】
図25~
図27に示すように、第1半導体部8Fは、中空部VDを介して主基板1に対向した第1フローティング部P1を含み、第2半導体部8Sは、中空部VDを介して主基板1に対向した第2フローティング部P2を含み、第1フローティング部P1と第2フローティング部P2とが分離されている。第1半導体部8Fは、第1フローティング部P1と対となる第3フローティング部P3を含み、第1フローティング部P1および第3フローティング部P3が、浮いた状態でX方向に並ぶ。第1半導体部8Fは、シード部SD上に位置する第1ベース部BFを含み、第1ベース部BFは、第1および第3フローティング部P1・P3の間に位置し、第1および第3フローティング部P1・P3に接続している。第1フローティング部P1は、第1ベース部BFに接続するテザー部T1と、テザー部T1に接続する本体部H1とを含み、テザー部T1は、本体部H1よりもY方向の長さが小さい。
【0059】
半導体基板10は、主基板1の上方に、開口部Kおよびマスク部5(選択成長マスク)を有するマスクパターン6を備え、平面視において、開口部Kとシード部SDとが重なる。第1半導体部8Fと、マスク部5との間に中空部VDが位置する。マスク部5は、シード部SDの端面を覆う。すなわち、シード部SDの上面は第1ベース部BFに接し、シード部SDの下面は主基板1の上面(凸部1Q)に接し、端面(側面)はマスク部5に覆われている。このため、半導体部8Fは、シード部SDの端面に接触しない。
【0060】
半導体部8上に形成される機能層9は、デバイス層9dと、デバイス層9dよりも上層に位置する絶縁膜9p(パッシベーション膜)と、絶縁膜9pよりも上層に位置する第1および第2電極E1・E2とを含む。
【0061】
〔実施例3〕
実施例1・2では、ELO半導体部をGaN層としているがこれに限定されない。実施例3では、第1および第2半導体部8F・8S(ELO半導体部)として、GaN系半導体部であるInGaN層を形成することもできる。InGaN層の横方向成膜は、例えば1000℃を下回るような低温で行う。高温ではインジウムの蒸気圧が高くなり、膜中に有効に取り込まれないためである。成膜温度が低温になることで、マスク部5とInGaN層の相互反応が低減される効果がある。また、InGaN層は、GaN層よりもマスク部5との反応性が低いという効果もある。InGaN層にインジウムがIn組成レベル1%以上で取り込まれるようになると、マスク部5との反応性がさらに低下するため、望ましい。ガリウム原料ガスとしては、トリエチルガリウム(TEG)を用いることが好ましい。
【0062】
〔実施例4〕
図28は、実施例4の構成を示す模式的断面図である。実施例4では、本体部H1およびデバイス層9dによってLED(発光ダイオード)として機能する半導体デバイス20を構成する。本体部H1(例えば、GaN系半導体)は、例えばシリコン等がドープされたn型である。デバイス層9dは、下層側から順に、活性層34、電子ブロッキング層35、GaN系p型半導体部36を含む。活性層34は、MQW(Multi-Quantum Well)であり、InGaN層およびGaN層を含む。電子ブロッキング層35は、例えばAlGaN層である。GaN系p型半導体部36は、例えばGaN層である。アノード38(例えば、第1電極E1)は、GaN系p型半導体部36と接触するように配され、カソード39(例えば、第2電極E2)は、本体部H1と接触するように配される。
【0063】
図29は、実施例4の電子機器への適用例を示す断面図である。実施例4によって、赤色マイクロLED20R、緑色マイクロLED20G、青色マイクロLED20Bを得ることができ、これらを、駆動基板(TFT基板)23に実装することで、マイクロLEDディスプレイ30D(電子機器)を構成することができる。一例として、駆動基板23の複数の画素回路27に、赤色マイクロLED20R、緑色マイクロLED20G、青色マイクロLED20Bを、導電樹脂24(例えば、異方性導電樹脂)等を介してマウントし、その後、駆動基板23に制御回路25およびドライバ回路29等を実装する。ドライバ回路29の一部が駆動基板23に含まれていてもよい。
【0064】
〔実施例5〕
図30は、実施例5の構成を示す模式的断面図である。実施例5では、本体部H1およびデバイス層9dによって半導体レーザとして機能する半導体デバイス20を構成する。デバイス層9dは、下層側から順に、n型クラッド層41、n型光ガイド層42、活性層43、電子ブロッキング層44、p型光ガイド層45、p型クラッド層46、およびGaN系p型半導体部47を含む。各光ガイド層42・45には、InGaN層を用いることができる。各クラッド層41・46には、GaN層もしくはAlGaN層を用いることができる。アノード48はGaN系p型半導体部47と接触するように配され、本体部H1は、実装基板53のnパッド49上に実装される。
【0065】
〔実施例6〕
図31は実施例6の半導体基板を示す平面図である。
図32は実施例6の半導体基板を示す断面である。実施例6の半導体基板10は、第1および第2シード領域J1・J2並びに成長抑制領域(堆積抑制領域)SPを上面に含むテンプレート基板7と、第1シード領域J1から成長抑制領域SPの上方に至り、成長抑制領域SPとの間に中空部VDが形成される第1半導体部8Fと、第2シード領域J2から成長抑制領域SPの上方に至り、成長抑制領域SPとの間に中空部VDが形成される第2半導体部8Sとを有し、第1および第2半導体部8F・8Sが、ギャップG1をおいて第1方向(Y方向)に隣り合っている。Y方向は、窒化物半導体を含む第1および第2半導体部8F・8Sのm軸方向であってよい。第1および第2シード領域J1・J2が、成長抑制領域SPよりも上側に位置していてもよい。
【0066】
第1および第2シード領域J1・J2がY方向を長手とする形状であってもよい。第1および第2半導体部8F・8Sそれぞれの両端がY軸方向に先細りする形状であってもよい。ギャップG2をおいて第1半導体部8FとX方向に隣り合う第4半導体部8Uが配されていてもよい。X方向は、窒化物半導体を含む第1および第2半導体部8F・8Uのa軸方向であってよい。半導体基板10は反り難いというメリットがある。第1および第2シード領域J1・J2がシード部上面のうちマスクパターンの開口部と重なる領域、成長抑制領域SPがマスク部の上面であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 主基板
SD シード部
5 マスク部
6 マスクパターン
7 テンプレート基板
8F 第1半導体部
8S 第2半導体部
9 機能層
9d デバイス層
10 半導体基板
20 半導体デバイス
30 電子機器
70 半導体基板の製造装置
K 開口部
VD 中空部
P1 第1フローティング部
P2 第2フローティング部
P3 第3フローティング部
H1 本体部
T1 テザー部