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特許7703047照射ビームを制御するための方法、デバイスおよび装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-26
(45)【発行日】2025-07-04
(54)【発明の名称】照射ビームを制御するための方法、デバイスおよび装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/85 20210101AFI20250627BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20250627BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20250627BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20250627BHJP
   B29C 64/25 20170101ALI20250627BHJP
   B29C 64/371 20170101ALI20250627BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20250627BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250627BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20250627BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20250627BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20250627BHJP
   B22F 10/322 20210101ALI20250627BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20250627BHJP
【FI】
B22F10/85
B22F10/28
B22F10/366
B29C64/153
B29C64/25
B29C64/371
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y50/02
B22F10/322
B22F12/50
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023568013
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022061131
(87)【国際公開番号】W WO2022233653
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】102021111696.1
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523394734
【氏名又は名称】ニコン エスエルエム ソルーションズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ビルケス
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0176233(US,A1)
【文献】特表2016-517357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて原料粉末層に照射するために照射ビームを制御する方法において、
層堆積機構を用いて、キャリア上および/または前記キャリア上の先行材料層上に前記原料粉末層を堆積させるステップと、
照射部域と前記層堆積機構の間の距離が閾値距離より大きい場合に照射部域内で前記原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように前記照射ビームを制御するステップであって、
ここで前記閾値距離が、
(i)前記層堆積機構の移動速度、および
(ii)前記原料粉末層上の気体流の速度vg、
によって左右される、ステップと、
を含み、
前記気体流が、前記キャリアによって画定される平面に平行な第1の方向に流れ、前記層堆積機構が、前記第1の方向に直交する第2の方向に移動するように構成されており、前記第2の方向が前記キャリアによって画定される平面に対し平行である、
方法。
【請求項2】
前記距離は、前記層堆積機構が前記キャリアおよび/または前記キャリア上の前記先行材料層を横断して移動する間、前記閾値距離より大きく保たれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記閾値距離は、前記第2の方向でvldm/vgに比例しており、ここでvldmは前記第2の方向での前記層堆積機構の前記移動速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
記閾値距離は、前記第2の方向でp・vldm/vg+oに示される式により調整され、
ここでpは0より大きい係数であり、oは0より大きいオフセットである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記照射部域は、前記層堆積機構が前記キャリアおよび/または先行材料層に対して平行に移動する場合、前記閾値距離よりも前記層堆積機構により近いところにある前記原料粉末層上の部域を除外している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値距離がさらに、前記層堆積機構の形状に左右される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記閾値距離がさらに、前記気体流の気体流方向に左右される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記原料粉末層上の前記気体流の速度vgは、前記層堆積機構が前記キャリアおよび/または前記先行材料層に対し平行に移動する場合、前記層堆積機構からの閾値高さ内の体積中の前記気体流の速度vgを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記照射部域は、前記層堆積機構が前記キャリアおよび/または先行材料層に対して平行に移動する場合、前記閾値距離よりも前記層堆積機構により近いところにある前記原料粉末層上の部域を除外しており、前記除外される部域が1/vgに正比例する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記層堆積機構の前記移動速度は、連続的にかつ/または0.01m/sの増分に基づいて0m/sから0.5m/sまで調整可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記層堆積機構が、前記キャリアおよび/または前記キャリア上の前記先行材料層が中に延在している平面に直交する断面の視点から見て矩形の形状を有しており、前記照射部域が前記平面内の前記層堆積機構の移動方向とは反対である前記層堆積機構の側の領域を除外している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記領域が三角形の形状を有し、前記三角形の斜辺が、前記照射部域の縁によって形成され、前記斜辺以外の辺のうちの1つは、前記平面内の前記層堆積機構の移動方向とは反対である前記層堆積機構の側によって形成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記照射部域の一つの側が前記三角形の前記斜辺によって画定され、前記三角形が前記層堆積機構と前記照射部域の間に配設されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記速度vgは、1.0m/s~2.0m/sの範囲において調整可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記原料粉末層の前記照射は、前記層堆積機構が前記原料粉末層の形成を開始した部域内で始まるように制御されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記原料粉末層の前記照射が、前記気体流のための気体入口とは反対の場所で始まるように制御されている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記照射が、前記気体流に対抗する方向に制御されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記照射ビームおよび/または第2の照射ビームは、前記キャリアおよび/または前記キャリア上の前記先行材料層が中に延在している平面内を前記層堆積機構が移動する場合に向かっている部域に照射するように制御されている、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記平面内で前記層堆積機構が前記部域に向かって移動する場合、前記部域は、前記層堆積機構との間に予め定義された安全距離のところに来るように照射中に変更される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1つ以上のコンピューティングデバイス上で実行される場合に請求項1に記載の方法を行なうためのプログラムコード部分を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
コンピュータ可読記録媒体上に記憶されている、請求項20に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて原料粉末層に照射するために照射ビームを制御するデバイスにおいて、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに対し作動的に結合されたメモリであって、前記1つ以上のプロセッサによって実行された時点で前記デバイスに、キャリア上および/または前記キャリア上の先行材料層上に前記原料粉末層を堆積させるために使用される層堆積機構と照射部域の間の距離が閾値距離より大きい場合に前記照射部域内の前記原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように前記照射ビームを制御させるプログラムコード部分を記憶するように構成されており、前記閾値距離が、(i)前記層堆積機構の移動速度および(ii)前記原料粉末層上の気体流の速度vgによって左右される、メモリと、を含み、
前記気体流が、前記キャリアによって画定される平面に平行な第1の方向に流れ、前記層堆積機構が、前記第1の方向に直交する第2の方向に移動するように構成されており、前記第2の方向が前記キャリアによって画定される平面に対し平行である、
デバイス。
【請求項23】
デバイスであって、
3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて前記原料粉末層に照射するために前記照射ビームを制御する方法において、
前記層堆積機構を用いて、前記キャリア上および/または前記キャリア上の先行材料層上に前記原料粉末層を堆積させるステップと、
前記照射部域と前記層堆積機構の間の距離が前記閾値距離より大きい場合に前記照射部域内で前記原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように前記照射ビームを制御するステップであって、
ここで前記閾値距離が、
(i)前記層堆積機構の移動速度、および
(ii)前記原料粉末層上の気体流の速度vg、によって左右される、ステップと、を含む方法を実行するように構成された、
請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
積層造形方法を介して3次元ワークピースを製造するための装置において、
前記3次元ワークピースを製造するための材料を収容するように構成された前記キャリアと、
前記キャリアおよび/または前記キャリア上の1つ以上の先行材料層に対して材料を供給するように構成された材料供給ユニットと、
前記供給された材料を、前記キャリアおよび/または前記キャリア上の1つ以上の先行材料層上の材料層へと形成するための前記層堆積機構と、
前記3次元ワークピースを製造するために、前記キャリアおよび/または前記キャリア上の前記1つ以上の先行材料層に対して供給された材料を凝固させるように構成された凝固デバイスと、
前記凝固デバイスによって凝固されるべき前記材料層の部域に対してシールドガスを供給するように構成された気体供給ユニットと、
前記気体供給ユニットおよび前記凝固デバイスを含むプロセスチャンバと、
請求項22に記載のデバイスと、
を含む装置。
【請求項25】
装置であって、
方法を実行するためのプログラムコード部分を含むコンピュータプログラム製品をさらに含み、前記コンピュータプログラム製品が1つまたは複数のコンピューティングデバイスにおいて実行されるときに、前記方法が、
前記3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて前記原料粉末層に照射するために前記照射ビームを制御する方法において、
前記層堆積機構を用いて、前記キャリア上および/または前記キャリア上の先行材料層上に前記原料粉末層を堆積させるステップと、
前記照射部域と前記層堆積機構の間の距離が前記閾値距離より大きい場合に前記照射部域内で前記原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように前記照射ビームを制御するステップであって、
ここで前記閾値距離が、
(i)前記層堆積機構の移動速度、および
(ii)前記原料粉末層上の気体流の速度vg、
によって左右される、ステップと、
を含む、請求項24に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、積層造形(additive layer manufacturing)において照射ビームを制御するための方法、デバイス(device)および装置(apparatus)に関する。
【背景技術】
【0002】
積層法においては、ワークピース(work pieces)は、凝固し(solidified)相互連結された(interconnected)一連のワークピース層を生成することによって、層毎に製造される。これらのプロセスは、原料タイプおよび/または前記原料を凝固させてワークピースを製造する方法によって区別される。
【0003】
例えば、粉末床溶融結合は、粉体状の、詳細には金属および/またはセラミクスの原料を複雑な形状の3次元ワークピースへと加工できる積層プロセスの一種である。この目的で、原料粉末層がキャリア(carrier)上に適用され、製造すべきワークピースの所望の幾何形状に応じて部位選択的に例えば電子またはレーザ放射に付される。粉末層に侵入する放射線は、原料粉末粒子の加熱そしてその結果としての溶融または焼結をひき起こす。その後、ワークピースが所望の形状およびサイズになるまで、すでに放射線処理を受けたキャリア上の層に対して連続的に、さらなる原料粉末層が適用される。詳細には、CADデータに基づいて、プロトタイプ、工具、交換部品または医療用補綴物、例えば歯科補綴物または整形外科補綴物などの製造のために、選択的電子ビーム溶融、選択的レーザ溶融またはレーザ焼結を使用することができる。
【0004】
本開示全体を通して、選択的レーザ溶融に対する言及は全て、選択的レーザ焼結、選択的電子ビーム溶融、光造形、MELATO、選択的熱焼結または他の任意のエネルギービームベースの付加加工方法に対しても同様に適用可能である。したがって、積層造形に対するあらゆる言及が、選択的レーザ溶融、選択的レーザ焼結、選択的電子ビーム溶融、光造形、MELATO、選択的熱焼結および他の任意のエネルギービームベースの付加加工方法のうちの1つ以上に適用可能であり得る。
【0005】
積層構築方法の重要なパラメータは、製造されたワークピースの品質である。その上、製造効率は、例えば製造サイクルを可能なかぎり短かく保つという意味合いにおいて極めて重要である。例えば、単一のワークピース層の製造速度を上げるために、多くの戦略が公知である。しかしながら、大型ワークピースを製造する場合、公知の解決法は必ずしも所望の効率および/または品質を達成するわけではない。
【発明の概要】
【0006】
したがって、詳細には、積層造形プロセスを用いて製造された3次元ワークピースの品質を改善することが、本発明の目的である。さらに、詳細には、製造された3次元ワークピースの品質を台無しにすることを回避しながら、積層造形プロセスを使用して3次元ワークピースを調製する場合の効率を改善することが、本発明の目的である。
【0007】
したがって、3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて原料粉末層に照射するために照射ビームを制御する方法において、層堆積機構(layer depositing mechanism)を用いて、キャリア上および/またはキャリア上の先行材料層上に原料粉末の前記層を堆積させる(depositing)ステップと、照射部域と層堆積機構の間の距離が閾値距離より大きい場合に照射部域内で原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように照射ビームを制御するステップであって、ここで閾値距離が(i)層堆積機構の移動速度、および(ii)原料粉末層上の気体流の速度vによって左右されるステップと、を含む方法が記載される。
【0008】
発明人は、粉末床の層全体にわたる層状気体流が、詳細には層堆積機構の移動に起因して撹乱され得るということを認識した。層堆積機構が移動している間にすでに原料粉末層に照射することが望まれる可能性があることから、層状気体流が上で撹乱されている原料粉末層の部分と照射部域の距離を詳細には層堆積機構の移動中保つことができるような形で、照射部域を画定することが必要であり得る。照射部域中の気体流は、こうして、層堆積機構の移動に起因して発生した可能性のある乱流によってもはや撹拌され得ない。その結果、層堆積機構がなおも移動している間に原料粉末層の照射を開始できるため、3次元ワークピースを効率的に調製している間に、製造すべきワークピースの品質は改善される。
【0009】
層堆積機構の移動速度(そして、いくつかの例では、以下でさらに概略説明するように、層堆積機構の形状)は、層堆積機構の移動中に発生し得るあらゆる乱流に影響を及ぼし得るものの、照射ビームを制御する場合には原料粉末層全体にわたる気体流の速度も考慮に入れられる。このことは詳細には、あらゆる乱流を順方向にそして気体流に起因して照射対象の原料粉末層から離れるように運ぶことができることから、本開示の例示的実装に係る場合に当てはまる。気体流自体の速度は、層堆積機構の形状および/または移動速度に応じて、閾値速度より大きい気体流の速度について乱流をひき起こすものの、気体流の速度が速くなればなるほど、あらゆる乱流をより速く遠ざけることができる。したがって、これらの考慮事項の間のバランスを発見して、3次元ワークピースを製造するための任意の動作条件およびパラメータをかんがみて気体流の速度を最適化することが必要となり得る。
【0010】
認識されるように、層堆積機構は移動中に加速および減速に遭遇し得る。したがって、本開示全体を通して、層堆積機構の移動速度に対するいずれの言及も、走行距離全体にわたる(詳細には、層堆積機構はいかなる原料粉末(層)も堆積されていない1つ以上の部分の上を移動し得ることから、粉末床すなわち原料粉末層全体にわたる)層堆積機構の平均移動速度、層堆積機構の全走行距離にわたる層堆積機構の平均移動速度(ここでは、全走行距離は層堆積機構の1つ以上のストロークに関するものであり得る)、および具体的な場所における(詳細には、粉末床すなわち原料粉末層全体にわたる)層堆積機構の移動速度のうちの1つ以上に関するものであり得る。
【0011】
いくつかの実施例において、層堆積機構がキャリアおよび/またはキャリア上の先行材料層を横断して移動する間、距離は、閾値距離より大きく保たれる。これにより、製造されたワークピースの高い品質を可能にしながら、3次元ワークピースの製造効率の改善を保証することができる。
【0012】
気体流は、キャリアによって画定される平面に平行な第1の方向に流れ、層堆積機構が、第1の方向に直交するかまたは実質的に直交する第2の方向に移動するように構成されており、第2の方向がキャリアによって画定される平面に対し平行であり、かつ閾値距離が第2の方向でvldm/vに比例しており、ここでvldmは第2の方向での層堆積機構の移動速度である。原料粉末層は、乱流が上で発生し得る部域内では照射され得ないことから、これにより、製造されたワークピースの高い品質を保証することができる。いくつかの実施例において、第2の方向での閾値距離は、p・vldm/v+oであり、ここでpは0より大きい係数であり、oは0より大きいオフセットである。オフセットは、いくつかの実施例において、10mm~50mm(例えば10mm、15mm、20mm、...、50mm)であってよい。オフセットは、いくつかの実施例において、可変的であり得、例えば10mm~50mmの間で、詳細には段階的に(例えば1mmまたは0.1mmのステップで)かつ/または連続的に変動可能であり得る。オフセットは、照射部域が、何らかの乱流が発生し得る部域からさらに離れていることを保証し得る。オフセットは、例えば、(1つ以上の)スキャナ光学機器ミラーの考えられる偏向速度(例えば1つ以上のスキャナ光学機器ミラーの回転速度)、および/または制御信号のためのシステム待ち時間および/または層堆積機構の形状などの1つ以上の機械/装置パラメータに応じて選択され得る。いくつかの実施例において、pは第1の方向における距離値を表わし得る。この場合、閾値距離は、原料粉末層の気体出口側よりも原料粉末層の気体入口側の方が低いものであり得る。距離値の出発点(p=0)は、好ましくは気体入口、原料粉末層の縁部、またはそれらの間の任意の点にあり得る。
【0013】
いくつかの実施例において、気体流の速度を、原料粉末層より上の1つ以上の高さで測定することができる。いくつかの実施例において、1つ以上の高さは、原料粉末層より上5mm~50mmであり得、こうして、気体流の速度は5mm~50mmの間の1つ以上の高さで測定することが可能になる。気体流は、ここでは、いくつかの実施例において、2つ以上の高さで段階的に、例えば1mmまたは0.1mmのステップで、および/または連続的に、詳細には5mm~50mmの間で測定可能である。付加的または代替的に、気体流の速度は、気体入口の高さで測定されてよい。
【0014】
いくつかの実施例において、気体流の速度は、ビルドチャンバ内の1つ以上の点/場所で、詳細には気体入口および/または気体出口で、および/または粉末床(すなわち原料粉末層)の気体入口側縁部/縁部領域、および/または粉末床の気体出口側縁部/縁部領域で、および/または粉末床の上方で測定され得る。本開示全体を通して、「気体流速度」に対するあらゆる言及は、これらの点/場所のうちの1つにおける測定値、またはこれらの点/場所の2つ以上における測定値の1つ以上(詳細には任意の組合せ)の平均値を意味し得る。
【0015】
いくつかの実施例において、照射部域は、層堆積機構がキャリアおよび/または先行材料層に対して平行に移動する場合、閾値距離よりも層堆積機構により近いところにある原料粉末層上の部域を除外している。こうして、層堆積機構の移動に起因するいずれかの乱流がなおも存在し得る部域において、原料粉末層の照射を回避することができる。
【0016】
いくつかの実施例において、閾値距離はさらに層堆積機構の形状によっても左右される。認識されるように、層堆積機構の形状は詳細には、層堆積機構に空気力学的形状が備わっていない場合(または、空気力学的形状を有する場合でさえ)、幾分かの乱流をひき起こす可能性がある。層堆積機構の移動速度が高くなればなるほど、いずれかの乱流はさらに際立つものとなり得るということが認識される。さらにまた、以上で概略的に説明した通り、気体流自体の速度は、層堆積機構の形状および/または移動速度に応じて、詳細には閾値速度より大きい気体流の速度について乱流をひき起こし得るものの、気体流の速度が大きくなればなるほど、いずれかの乱流をより速く遠ざけることができるようになる。したがって以上のパラメータは、照射ビームを制御するとき、詳細には層堆積機構がキャリアおよび/またはキャリア上の先行材料層を横断して移動する場合に、考慮に入れることができる。
【0017】
いくつかの実施例において、閾値距離はさらに、気体流の気体流方向に左右される。気体流の方向は、いずれかの乱流がどこでどの程度まで発生し得るかに影響を及ぼし得る。したがって、気体流の方向を考慮に入れることで、層堆積機構がなおも移動している間にすでに3次元ワークピースが製造され得ることを保証しながら、さらに一層高い品質を有する3次元ワークピースを調製することが可能になり得る。
【0018】
いくつかの実施例において、原料粉末層上の気体流の速度vは、層堆積機構がキャリアおよび/または先行材料層に対し平行に移動する場合、層堆積機構からの閾値高さ内の体積中の気体流の速度vを含んでいる。認識されるように、このパラメータは、層堆積機構までの閾値距離内でいずれかの潜在的乱流が(なおも)どの程度存在し得るかを決定することを可能にし得る。こうして、層堆積機構が移動している早い段階で原料粉末層に照射し始めることが可能になり得る。
【0019】
いくつかの実施例において、除外される部域は、1/vに正比例する。換言すると、(例えば原料粉末層上の1つ以上の予め定義された高さでの)気体流の速度が高くなればなるほど、除外される部域は小さくなる。これは、気体流のより高い速度について、いずれかの乱流が気体流によってより速く遠ざけられ得るからである。
【0020】
いくつかの実施例において、層堆積機構の移動速度は、0m/sから0.5m/sまで、詳細には連続的にかつ/または0.01m/sの増分で調整可能である。例えば0.2m/sという速度は、層堆積機構の移動に起因してひき起こされるいずれかの乱流が合理的レベルまたは合理的最小値に保たれ得る一方で、層堆積機構が移動するときの層堆積機構による原料粉末層の効率の良い調製を可能にし得る。
【0021】
いくつかの実施例において、層堆積機構は、キャリアおよび/またはキャリア上の先行材料層が中に延在している平面に直交する断面の視点から見て矩形または実質的に矩形の形状を有しており、照射部域は平面内の層堆積機構の移動方向とは反対である層堆積機構の側の領域を除外している。この実施例は、詳細にはまたは主として層堆積機構の背後、すなわち層堆積機構の移動方向から見て外方に面する層堆積機構の側に形成され得るあらゆる潜在的乱流を考慮に入れることを可能にする。
【0022】
いくつかの実施例において、領域は三角形または実質的に三角形の形状を有し、三角形の隣辺は、平面内の層堆積機構の移動方向とは反対である層堆積機構の側によって形成されている。発明人は、詳細にはこのような三角形または実質的に三角形の領域内であらゆる潜在的乱流が発生し得、したがって、照射ビームを制御する場合、詳細には層堆積機構から閾値距離内にある原料粉末層のどの単数または複数の部分を(少なくとも予め定義された時間の間)照射から除外すべきかを決定する場合に、この現象を考慮に入れることが可能になっている。いくつかの実施例において、照射部域の一つの側は三角形の斜辺によって画定され、三角形は層堆積機構と照射部域の間に配設されている。
【0023】
いくつかの実施例において、vは1.0m/s~2.0m/s、詳細には1.5m/sであり、より詳細にはvは調整可能である。これは、気体流が(移動する)層堆積機構を通過するときにそれ自体過度に多くの乱流をひき起こさない気体流の速度であることが証明されており、その一方で気体流は層堆積機構の移動に起因してひき起こされたあらゆる乱流を効率良く除去できる。
【0024】
いくつかの実施例において、原料粉末層の照射は、層堆積機構が原料粉末層の形成を開始した部域内で始まるように制御されている。あらゆる潜在的乱流がすでに(または最初に)気体流によって遠ざけられている可能性があるのは、この部域内である。
【0025】
いくつかの実施例において、原料粉末層の照射は、気体流のための気体入口とは反対のまたは概して反対の場所で始まるように制御されている。これにより、気体流方向に対抗する方向に原料粉末層に照射することが可能になり、こうして、原料粉末層の照射に起因して創出されるいかなる煙霧も、層の未凝固部域内における原料粉末層のその後の照射に影響を及ぼさなくなる。いくつかの実施例において、照射は、気体流の方向に対抗して続行するように制御されている。
【0026】
いくつかの実施例において、照射ビームおよび/または第2の照射ビームは、キャリアおよび/またはキャリア上の先行材料層が中に延在している平面内を層堆積機構が移動する場合に向かっている部域に照射するように制御されている。この部域では、いかなる乱流も(または比較的わずかな乱流しか)発生しないことが仮定され得る。いくつかの実施例において、平面内で層堆積機構が移動する場合に向かっている部域は、層堆積機構から予め定義された安全距離のところに来るように、照射中に変更され、これによって、この照射対象の部域内ではいかなる乱流も(または比較的わずかな乱流しか)発生しないことを保証することが可能となり得る。
【0027】
さらに、1つ以上のコンピューティングデバイス上で実行される場合に、本明細書に記載のいずれかの例示的実装の方法を行なうためのプログラムコード部分を含むコンピュータプログラム製品について説明する。該コンピュータプログラム製品は、いくつかの実施例において、コンピュータ可読記録媒体上に記憶されていてよい。
【0028】
さらに、3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて原料粉末層に照射するために照射ビームを制御するデバイスにおいて、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサに対し作動的に結合されたメモリであって、1つ以上のプロセッサによって実行された時点でデバイスに、キャリア上および/またはキャリア上の先行材料層上に原料粉末層を堆積させるために使用される層堆積機構と照射部域の間の距離が閾値距離より大きい場合に照射部域内の原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように照射ビームを制御させるプログラムコード部分を記憶するように構成されており、閾値距離が、(i)層堆積機構の移動速度および(ii)原料粉末層上の気体流の速度vによって左右される、メモリと、を含むデバイスについて説明する。該デバイスは、詳細には、本開示全体を通して概略的に説明されているいずれかの例示的実装に係る方法を行なうように構成され得る。
【0029】
さらに、積層造形方法を介して3次元ワークピースを製造するための装置において、3次元ワークピースを製造するための材料を収容するように構成されたキャリアと、キャリアおよび/またはキャリア上の1つ以上の先行材料層に対して材料を供給するように構成された材料供給ユニットと、供給された材料をキャリアおよび/またはキャリア上の1つ以上の先行材料層上の材料層へと形成するための層堆積機構と、3次元ワークピースを製造するためにキャリアおよび/またはキャリア上の1つ以上の先行材料層に対して供給された材料を凝固させるように構成された凝固デバイスと、凝固デバイスによって凝固されるべき材料層の部域に対してシールドガスを供給するように構成された気体供給ユニットと、気体供給ユニットおよび凝固デバイスを含むプロセスチャンバと、本開示全体を通して概略的に説明されているいずれかの例示的実施形態に係るデバイスと、を含む装置について説明する。いくつかの実施例において、装置は,本開示全体を通して概略的に説明されているいずれかの例示的実施形態に係るコンピュータプログラム製品を含む。
【0030】
本発明のこれらのおよび他の態様についてここで、単なる一例として、添付図面を参照しながらさらに説明する。なお図面中、類似の参照番号は類似の部分を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る、積層造形を用いて3次元ワークピースを製造するための装置の概略的断面図を示す。
図2a図2aは、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る積層造形プロセス中に使用される層堆積機構の断面側面図を示す。
図2b図2bは、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る積層造形プロセス中に使用される層堆積機構の上面図を示す。
図3図3は、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る方法の流れ図を示す。
図4図4は、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係るデバイスのブロック図を示す。
図5図5は、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る装置のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明人は、層堆積機構を移動させた場合に、粉末床上の層状気体流が撹乱され得るということを認識した。
【0033】
層堆積機構がなおも移動している間に原料粉末層の照射を開始しなければならない場合、すでに鎮静した気体流部域内で照射を開始するために、層堆積機構までの充分大きな距離を維持することが必要であり得る。ビルドプラットフォームの領域内の気体流がすでに所望の状態に再び達した場合、コーティングプロセス中に照射を開始することができる。
【0034】
乱流は気体流によって運ばれることから、乱流領域は、いくつかの実施例において、層堆積機構背後の理想三角形内に形成される。認識されるように、乱流領域の形状は、なかでも、いくつかの実施例において、あらゆる種類の形状をとり得る層堆積機構の形状に基づくものである。
【0035】
本実施例において層堆積機構背後の三角形の延長部分は、層堆積機構の移動速度(いくつかの実施例においておよそ0.2m/s)、いくつかの実施例においては層堆積機構の形状(乱流発生に起因する)、および気体流の速度(いくつかの実施例において、例えば粉末床より上30mmの高さでおおよそ1.5m/s)によって影響され得る。いくつかの実施例において、粉末床の典型的な幅は150mm~1000mmである。
【0036】
乱流がもはや発生しなくなるはずの層堆積機構からの距離(「鎮静距離」)は、いくつかの実施例において(気体流のオフサイド縁部における)三角形の最長の延長部分によって計算される層堆積機構に対し平行な距離として、あるいはいくつかの実施例においては任意のオフセット(追加の安全性距離)としてのいずれかで設定され得る。代替的には、斜辺に平行な(それに沿った、またはオフセットに加えた)境界が可能であり、すなわち、照射は、いくつかの実施例において、気体流の下流側よりも上流側でより早く開始する。
【0037】
照射は、詳細には層堆積機構が粉末床を横断して移動し始めた粉末床の縁部で、好ましくはさらに気体入口の反対側で開始され得、こうして照射プロセスを気体流に対抗して行なうことができるようになっている。オフサイド縁部において、層堆積機構が少なくとも鎮静距離をカバーした時点で直ちに照射を開始することができる。
【0038】
さらに、層堆積機構の「前方」の照射を(同じ照射源および/または第2の照射源を用いて)同時に行なうことができる。いくつかの実施例において、層堆積機構に対する小さい安全性距離を維持するだけでよく、こうして、層堆積機構の前方のこの部域内で穏やかな(層状)気体流を仮定することができるようになっている。
【0039】
詳細には、本発明は、積層造形プロセスを用いて3次元ワークピースを製造するための方法、デバイスおよび装置、ならびにその中で使用される層堆積機構に関する。
【0040】
本明細書中に記載の実施例は、積層造形プロセス、詳細には選択的レーザ溶融機における製造性の増大を可能にする。本開示に係る実施例は、すでに(粉末材料での)コーティング中に照射を開始できること、あるいは少なくとも層堆積機構がビルドプラットフォームの領域を離れた後、ビルドプラットフォームの一領域内の気体流がすでに再び所望される状態に達しており、したがって次の層の照射をいかなる品質喪失もなく直ちに開始できること、を可能にする。
【0041】
いくつかの実施例において、層堆積機構および層堆積機構の(機械的)層堆積機構懸架器または取付け具は、ビルドプラットフォーム全体にわたって案内される気体流が可能なかぎりわずかしか影響を受けないような形で設計される。いくつかの実施例において、層堆積機構の懸架器は格子構造、詳細にはハニカム構造またはラメラ構造、または気体流方向に直交する断面平面内の横断面積が層堆積機構懸架器または層堆積機構の外周によって境界されている断面平面内の面積に比べて相対的に小さい個別の幅狭のウェブとして設計される。層堆積機構自体は、いくつかの実施例において、空気力学的に整形されており、いくつかの実施例においては、気体流が上を通過するにつれての乱流を最小限に抑えるように、穏やかにテーパの付いた側表面を有することができる。
【0042】
図1は、積層造形プロセスを用いて3次元ワークピース102を製造するための装置100の概略的断面図を示す。
【0043】
この実施例においては、装置100は、照射ビーム108を粉末層110または粉末床に導くことができるように偏向ユニット(スキャナ)106に結合された照射ユニット104(例えばレーザまたは粒子ビーム発生器)を含む。このような形で照射ビーム108を制御することにより、照射ビーム108によりいくつかの部域内で粉末材料111が凝固されていない状態で、ワークピース102を適切に製造することができる。
【0044】
この実施例において、装置は、3次元ワークピース102がその上で製造されるキャリア112を含む。キャリア112は、この実施例の場合のように、プロセスチャンバ116内で、昇降機構114によって垂直方向に移動させることができる。
【0045】
この実施例において、装置100は、実質的に角錐型または台形型の層堆積機構118を含む。本開示の全ての実施例において、層堆積機構は同様に、唯一の傾斜側面(例えば気体入口または出口に面する側面)を有することができ、他方の側面はキャリア平面に直交している。
【0046】
この実施例において、装置100の層堆積機構118は、下位側119aおよびそれに平行な反対側119bを有し、粉末材料がキャリアおよび/または粉末床に適用される側119aは、側119bよりも大きい面積を有している。粉末展延デバイス118b(すなわち展延要素またはスクレーパ要素、例えばコータリップ、ブラシ、ローラまたはプッシャ)が、層堆積機構118の下位側に取付けられる。
【0047】
この実施例において、層堆積機構118は、穏やかにラーパの付いた側面119cおよび119dを有する。詳細には、側面119cと側119cの間および側119bと側面119dの間の遷移は、形状が凸状であり、こうして気体流中に乱流をひき起こすことなく(またはわずかな乱流しかひき起こすことなく)、気体流を層堆積機構118全体にわたり導くことが可能となる。
【0048】
この実施例において、層堆積機構118は2つの領域内で層堆積機構懸架器120aおよび120bに結合されている。いくつかの実施例において、層堆積機構は、唯一の領域において層堆積機構懸架器に結合されている。この実施例において、装置100はさらに、ガイドレールおよび/または駆動機構122aおよび122bを含み、これらにより、層堆積機構118は層堆積機構懸架器120aおよび120bと共に、キャリア112全体にわたってかまたはこの実施例では粉末層110全体にわたって移動可能である。
【0049】
装置100はさらに、この実施例においては、気体入口124および気体出口126を含み、こうして気体流125が装置100内で生成され得、この装置は、層堆積機構118かキャリア112の上方に位置設定されていない場合、キャリア112の上方、または最上位の粉末層110の上方で気体流、詳細には層状気体流を形成する。気体入口124と気体出口126の間の軸128は、一点鎖線で示されている。この実施例において、装置はさらに、気体入口130と気体出口126の間で第2の気体流132を発生させるための気体入口130を含む。
【0050】
気体入口ノズル(すなわち気体入口124)に対面する層堆積機構118の表面119cは、気体伝導表面として作用し、したがって、軸128に対して好ましくは0°~90°の角度、この実施例では約45°の角度で形成される。
【0051】
表面の側119cおよび/または他方の側119dの層堆積機構懸架器120aは、少なくとも部分的に気体流動可能構造として、詳細には格子構造および/またはラメラ構造として形成される。
【0052】
この実施例において、層堆積機構懸架器120a、120bの気体流動可能構造は、少なくとも部分的に流れ誘導断面、詳細には、楕円形または涙滴状断面を有する。
【0053】
この実施例において、気体流出開口部すなわち気体出口126とは反対側の層堆積機構118の表面119dは、同様に、気体案内表面として機能し、好ましくは、軸128に対して0°~90°の角度、この実施例においては約45°の角度を成す。詳細には、角度は、軸128に対する表面119cの角度と同じであってよい。代替的には、層堆積機構118は同様に、流出開口部の方向に、詳細には流出開口部すなわち気体出口126を格納する壁まで連続していてよく、少なくとも部分的に気体出口126を覆うことができる。
【0054】
この実施例において、側119cおよび/または側119dから層堆積機構118の上位表面/側119bまでの遷移は、形状が凸状であって、気体流が表面と接触し乱流を回避することを可能にしている。
【0055】
いくつかの実施例において、層堆積機構118の前方および/または後方側も同様に角度が付けられている。代替的には、層堆積機構118の前部および/または後部は、粉末層110を横断した移動の間角度が付くように構成されていてよく、かつ(粉末層の相対する側の)一方または両方の駐機位置において、プロセスチャンバの壁にちょうど当接するように直立位置まで移動可能である。この機構は、いくつかの実施例において、粉末シュートの開口部に結合されている。
【0056】
層堆積機構懸架器120a、120bの流れ案内区分は、移動方向に応じて異なる形で気体流が偏向されるような形に設計され得、これらの区分は、詳細には、この目的で調整可能となるように設計され得る。移動方向に応じて、このとき、気体流に対する影響ができるかぎり最小限となるように、結果としての相対的流れ方向の方向にこれらの区分を整列させることができる。
【0057】
図2aは、本明細書中に記載されているいくつかの例示的実装に係る積層造形プロセス中に使用される層堆積機構118の概略的例示の断面側面図200を示す。
【0058】
見れば分かるように、層堆積機構118が移動方向204に移動する間、一方では照射ビーム108が原料粉末を凝固させる照射部域203そして他方では層堆積機構118の間には、距離202(以上で概略的に説明されている通り「鎮静距離」と呼ばれる)が維持され得る。こうして、照射ビーム108は、乱流が中で発生し得る層堆積機構118に対し過度に近くで原料粉末に照射しないということが保証され得る。距離202は、この実施例において、層堆積機構118の形状、層堆積機構118の移動速度そして原料粉末の層全体にわたる気体流の速度に基づいて決定される。
【0059】
図2bは、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る、積層造形プロセス中に使用される層堆積機構118の概略的例示の上面図210を示す。
【0060】
原料粉末層および層堆積機構118の上方の気体流212は、矢印で標示されている。
【0061】
見れば分かるように、この実施例においては、照射部域203と層堆積機構118の間には(仮想)三角形214が形成され、これにより、三角形214の部域内に乱流が発生し得、そのためこの部域は照射ビーム108による照射から除外されなければならない。この部域は、層堆積機構118が移動するにつれて変化する。
【0062】
この実施例においては、三角形214部域と照射部域203の間にオフセット(図2b中の破線)が具備され、これにより、照射部域203内にいかなる乱流も(閾値未満の乱流しか)発生しないことを保証するために、層堆積機構118と照射部域203の間にさらなる安全性距離を提供することが可能になり得る。オフセットは、距離202が層堆積機構118に対して平行に定義されている実施例においては、層堆積機構118の移動方向とは反対側にある層堆積機構118の縁部に対して平行に存在するオフセット216として定義可能である。照射部域203の縁部が三角形214の斜辺により定義されている実施例においては、オフセットは、三角形214の斜辺に対し平行に整列したオフセット218として定義可能である。オフセット216および/またはオフセット218は、この実施例において、10mm~50mmである。オフセット216および/またはオフセット218は(以上で概略的に説明した通り、例えば1mmまたは0.1mmのステップで段階的に、かつ/または連続的に)可変的であり得る。
【0063】
この実施例において、照射は、層堆積機構がその移動を開始した粉末床の縁部で開始される(そして好ましくは付加的に気体入口の反対側で開始され、こうして気体流に対する照射を提供することができる)。照射は、この実施例において、オフサイド縁部で層堆積機構が少なくとも距離202をカバーした時点で直ちに開始させられる。
【0064】
図3は、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る方法300の流れ図を示す。
【0065】
この実施例において、該方法300は、ステップS302で、層堆積機構を用いて、キャリア上および/またはキャリア上の先行材料層上に原料粉末の前記層を堆積させるステップを含む。ステップS304では、該方法300は、照射部域と層堆積機構の間の距離が閾値距離より大きい場合に照射部域内で原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように照射ビームを制御するステップを含み、ここで閾値距離は、(i)層堆積機構の移動速度、および(ii)原料粉末層上の気体流の速度vによって左右される。
【0066】
図4は、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る、3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて原料粉末層に照射するために照射ビームを制御するデバイス400のブロック図を示す。
【0067】
この実施例では、デバイス400は、1つ以上のプロセッサ402と、1つ以上のプロセッサに対し作動的に結合されたメモリ404であって、1つ以上のプロセッサによって実行された時点でデバイスに、キャリア上および/またはキャリア上の先行材料層上に原料粉末層を堆積させるために使用される層堆積機構と照射部域の間の距離が閾値距離より大きい場合に照射部域内の原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように照射ビームを制御させるプログラムコード部分を記憶するように構成されており、閾値距離が、(i)層堆積機構の移動速度および(ii)原料粉末層上の気体流の速度vによって左右される、メモリと、を含む。
【0068】
図5は、本明細書中に記載のいくつかの例示的実装に係る積層造形方法を介して3次元ワークピースを製造するための装置500のブロック図を示す。
【0069】
この実施例において、装置500は、3次元ワークピースを製造するための材料を収容するように構成されたキャリア112と、キャリアおよび/またはキャリア上の1つ以上の先行材料層に対して材料を供給するように構成された材料供給ユニット502と、供給された材料をキャリアおよび/またはキャリア上の1つ以上の先行材料層上の材料層へと形成するための層堆積機構118と、3次元ワークピースを製造するためにキャリアおよび/またはキャリア上の1つ以上の先行材料層に対して供給された材料を凝固させるように構成された凝固デバイス104と、凝固デバイスによって凝固されるべき材料層の部域に対してシールドガスを供給するように構成された気体供給ユニット504と、気体供給ユニットおよび凝固デバイスを含むプロセスチャンバ506と、本明細書中で概略的に説明されている実施例(詳細には図4)に係るデバイス400と、を含む。キャリア112、材料供給ユニット502および層堆積機構118は同様に、プロセスチャンバ506内に配設されてよい。
【0070】
当業者であれば他の多くの代替案を着想するであろうことは疑いのないところである。本発明は、説明された実施形態および例示的実装に限定されず、当業者にとって明白でかつ本明細書に添付されたクレームの範囲内に入る修正を包含するものである、ということが理解される。
上述の実施形態は下記のようにも記載され得るが下記には限定されない。
[構成1]
3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて原料粉末層に照射するために照射ビームを制御する方法において、
層堆積機構を用いて、キャリア上および/または前記キャリア上の先行材料層上に前記原料粉末層を堆積させるステップと、
照射部域と前記層堆積機構の間の距離が閾値距離より大きい場合に照射部域内で原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように前記照射ビームを制御するステップであって、ここで前記閾値距離が、
(i)前記層堆積機構の移動速度、および
(ii)前記原料粉末層上の気体流の速度v
によって左右される、ステップと、
を含む方法。
[構成2]
前記距離は、前記層堆積機構が前記キャリアおよび/または前記キャリア上の前記先行材料層を横断して移動する間、閾値距離より大きく保たれる、構成1に記載の方法。
[構成3]
前記気体流が、前記キャリアによって画定される平面に平行な第1の方向に流れ、前記層堆積機構が、前記第1の方向に直交するかまたは実質的に直交する第2の方向に移動するように構成されており、前記第2の方向が前記キャリアによって画定される平面に対し平行であり、かつ前記閾値距離が前記第2の方向でv ldm /v に比例しており、ここでv ldm は前記第2の方向での前記層堆積機構の前記移動速度である、構成1または2に記載の方法。
[構成4]
前記第2の方向での前記閾値距離がp・v ldm /v +oであり、ここでpは0より大きい係数であり、oは0より大きいオフセットである、構成3に記載の方法。
[構成5]
前記照射部域は、前記層堆積機構がキャリアおよび/または先行材料層に対して平行に移動する場合、前記閾値距離よりも前記層堆積機構により近いところにある前記原料粉末層上の部域を除外している、構成1から4のいずれか1項に記載の方法。
[構成6]
前記閾値距離がさらに、前記層堆積機構の形状に左右される、構成1から5のいずれか1項に記載の方法。
[構成7]
前記閾値距離がさらに、前記気体流の気体流方向に左右される、構成1から6のいずれか1項に記載の方法。
[構成8]
前記原料粉末層上の前記気体流の速度v は、前記層堆積機構が前記キャリアおよび/または前記先行材料層に対し平行に移動する場合、前記層堆積機構からの閾値高さ内の体積中の前記気体流の速度v を含んでいる、構成1から7のいずれか1項に記載の方法。
[構成9]
前記除外される部域が1/v に正比例する、構成5に従属する場合の構成1から8のいずれか1項に記載の方法。
[構成10]
前記層堆積機構の前記移動速度が0m/sから0.5m/sまで、詳細には連続的にかつ/または0.01m/sの増分で調整可能である、構成1から9のいずれか1項に記載の方法。
[構成11]
前記層堆積機構が、前記キャリアおよび/または前記キャリア上の前記先行材料層が中に延在している平面に直交する断面の視点から見て矩形または実質的に矩形の形状を有しており、前記照射部域が前記平面内の前記層堆積機構の移動方向とは反対である前記層堆積機構の側の領域を除外している、構成1から10のいずれか1項に記載の方法。
[構成12]
前記領域が三角形または実質的に三角形の形状を有し、前記三角形の隣辺が、前記平面内の前記層堆積機構の移動方向とは反対である前記層堆積機構の側によって形成されている、構成11に記載の方法。
[構成13]
前記照射部域の一つの側が三角形の斜辺によって画定され、前記三角形が前記層堆積機構と前記照射部域の間に配設されている、構成12に記載の方法。
[構成14]
が1.0m/s~2.0m/s、詳細には1.5m/sであり、より詳細にはv が調整可能である、構成1から13のいずれか1項に記載の方法。
[構成15]
前記原料粉末層の前記照射は、前記層堆積機構が前記原料粉末層の形成を開始した部域内で始まるように制御されている、構成1から14のいずれか1項に記載の方法。
[構成16]
前記原料粉末層の前記照射が、前記気体流のための気体入口とは反対のまたは概して反対の場所で始まるように制御されている、構成1から15のいずれか1項に記載の方法。
[構成17]
前記照射が、前記気体流の方向に対抗して続行するように制御されている、構成16に記載の方法。
[構成18]
前記照射ビームおよび/または第2の照射ビームは、前記キャリアおよび/または前記キャリア上の前記先行材料層が中に延在している平面内を前記層堆積機構が移動する場合に向かっている部域に照射するように制御されている、構成1から17のいずれか1項に記載の方法。
[構成19]
前記平面内で前記層堆積機構が移動する場合に向かっている前記部域が、前記層堆積機構から予め定義された安全距離のところに来るように照射中に変更される、構成18に記載の方法。
[構成20]
1つ以上のコンピューティングデバイス上で実行される場合に構成1から19のいずれか1項に記載の方法を行なうためのプログラムコード部分を含むコンピュータプログラム製品。
[構成21]
コンピュータ可読記録媒体上に記憶されている、構成20に記載のコンピュータプログラム製品。
[構成22]
3次元ワークピースを製造するための積層造形プロセスにおいて原料粉末層に照射するために照射ビームを制御するデバイスにおいて、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに対し作動的に結合されたメモリであって、前記1つ以上のプロセッサによって実行された時点で前記デバイスに、キャリア上および/または前記キャリア上の先行材料層上に前記原料粉末層を堆積させるために使用される層堆積機構と照射部域の間の距離が閾値距離より大きい場合に前記照射部域内の前記原料粉末層の少なくとも一部分に照射するように前記照射ビームを制御させるプログラムコード部分を記憶するように構成されており、前記閾値距離が、(i)前記層堆積機構の移動速度および(ii)原料粉末層上の気体流の速度v によって左右される、メモリと、
を含むデバイス。
[構成23]
構成1から19のいずれか1項に記載の方法を行なうように構成された、
構成22に記載のデバイス。
[構成24]
積層造形方法を介して3次元ワークピースを製造するための装置において、
前記3次元ワークピースを製造するための材料を収容するように構成されたキャリアと、
前記キャリアおよび/または前記キャリア上の1つ以上の先行材料層に対して材料を供給するように構成された材料供給ユニットと、
前記供給された材料を、前記キャリアおよび/または前記キャリア上の1つ以上の先行材料層上の材料層へと形成するための層堆積機構と、
前記3次元ワークピースを製造するために、前記キャリアおよび/または前記キャリア上の前記1つ以上の先行材料層に対して供給された材料を凝固させるように構成された凝固デバイスと、
前記凝固デバイスによって凝固されるべき前記材料層の部域に対してシールドガスを供給するように構成された気体供給ユニットと、
前記気体供給ユニットおよび前記凝固デバイスを含むプロセスチャンバと、
構成22または23に記載のデバイスと、
を含む装置。
[構成25]
構成20または21に記載のコンピュータプログラム製品をさらに含む、構成24に記載の装置。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5