IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ APB株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電池構造 図1
  • 特許-電池構造 図2
  • 特許-電池構造 図3
  • 特許-電池構造 図4
  • 特許-電池構造 図5
  • 特許-電池構造 図6
  • 特許-電池構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】電池構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20250630BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20250630BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20250630BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250630BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20250630BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20250630BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/202 501P
H01M50/244 A
H01M10/052
H01M10/0585
H01M4/13
H01M4/66 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020087695
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182519
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】230129838
【弁護士】
【氏名又は名称】牛島 信
(74)【代理人】
【識別番号】230129791
【弁護士】
【氏名又は名称】黒木 資浩
(74)【代理人】
【識別番号】230133422
【弁護士】
【氏名又は名称】薬師寺 怜
(74)【代理人】
【識別番号】230133433
【弁護士】
【氏名又は名称】百田 博太郎
(74)【代理人】
【識別番号】230133444
【弁護士】
【氏名又は名称】坂本 慎之介
(74)【代理人】
【識別番号】230133455
【弁護士】
【氏名又は名称】渡邊 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】230129827
【弁護士】
【氏名又は名称】福田 航
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】進藤 康裕
(72)【発明者】
【氏名】東 啓一郎
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033937(JP,A)
【文献】特開2011-134552(JP,A)
【文献】特開平09-259860(JP,A)
【文献】特開2020-047549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00 - 50/198
H01M 50/20 - 50/298
H01M 10/05 - 10/0587
H01M 10/36 - 10/39
H01M 4/00 - 4/62
H01M 4/64 - 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂集電体層を含む正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、樹脂集電体層を含む負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、が積層されており、積層方向に貫通する貫通孔が形成されたリチウムイオン電池と、
前記貫通孔の周面を含む前記リチウムイオン電池の全面を覆う外装フィルムと、
前記リチウムイオン電池の前記貫通孔の周面から前記リチウムイオン電池の表面の一部まで前記外装フィルムを覆う応力分散材と、
を備えており、
前記応力分散材は、前記貫通孔を挿通する挿通部材が前記応力分散材の内壁に当接した際に、前記応力分散材に加わる応力を分散させるように構成されている、
電池構造。
【請求項2】
樹脂集電体層を含む正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、樹脂集電体層を含む負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、が積層されており、積層方向に貫通する貫通孔が形成されたリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池の前記貫通孔の周面を覆う応力分散材と、
を備えており、
前記応力分散材は、前記貫通孔を挿通する挿通部材が前記応力分散材の内壁に当接した際に、前記応力分散材に加わる応力を分散させるように構成されており、
前記リチウムイオン電池は、前記貫通孔と連通する切欠き部が形成されており、
前記応力分散材は、前記貫通孔の周面及び前記切欠き部の内側面を覆うように設けられている、
電池構造。
【請求項3】
樹脂集電体層を含む正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、樹脂集電体層を含む負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、が積層されており、積層方向に貫通する貫通孔が形成されたリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池の前記貫通孔の周面を覆う応力分散材と、
を備えており、
前記応力分散材は、前記貫通孔を挿通する挿通部材が前記応力分散材の内壁に当接した際に、前記応力分散材に加わる応力を分散させるように構成されており、
前記応力分散材は、前記貫通孔の周面から前記リチウムイオン電池の表面の一部まで覆う第1のエッジカバーを有し、
前記第1のエッジカバーは、前記リチウムイオン電池を外部に取り付け固定するための第1の固定機構を有する、
電池構造。
【請求項4】
前記応力分散材は、前記貫通孔を挿通する挿通部材が前記応力分散材の内壁に当接した際に、非破壊状態に保たれる強度を有する、
請求項1~3にいずれか記載の電池構造。
【請求項5】
前記正極活物質層は、前記正極活物質同士が相互に結着しない状態の非結着体であり、
前記負極活物質層は、前記負極活物質同士が相互に結着しない状態の非結着体である、
請求項1~3にいずれか記載の電池構造。
【請求項6】
前記リチウムイオン電池の外周面を覆う枠状の補強部材を更に備えている、
請求項1~3にいずれか記載の電池構造。
【請求項7】
前記リチウムイオン電池は、前記貫通孔と連通する切欠き部が形成されており、
前記応力分散材は、前記貫通孔の周面及び前記切欠き部の内側面を覆うように設けられている、
請求項1又は3に記載の電池構造。
【請求項8】
前記リチウムイオン電池の外周面を覆う枠状の補強部材を更に備えており、
前記応力分散材と前記補強部材とが一体形成されている、
請求項2又は7に記載の電池構造。
【請求項9】
前記応力分散材は、前記貫通孔の周面から前記リチウムイオン電池の表面の一部まで覆う、
請求項2に記載の電池構造。
【請求項10】
前記応力分散材は、前記リチウムイオン電池を外部に取り付け固定するための第1の固定機構を有する、
請求項1又は9に記載の電池構造。
【請求項11】
前記リチウムイオン電池の一側面から前記一側面と連続する側面の一部まで覆う第2のエッジカバーを更に備えた、
請求項1~10のいずれか1項に記載の電池構造。
【請求項12】
前記第2のエッジカバーは、前記リチウムイオン電池を外部に取り付け固定するための第2の固定機構を有する、
請求項11に記載の電池構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン単電池を有する電池構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、例えば車載用のバッテリとして、リチウムイオン二次電池等の電池が適用されている。この電池について、特許文献1には、例えば耐熱性を向上させる目的で、電池の外周を保護する樹脂製の保護ケースを設けることが記載されている。また特許文献2には、中央部を切り抜いて作製した発電セルにおいて、その発電セルを保護するための外装を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-119122号公報
【文献】特開2000-285881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池は、車載用途以外にも、例えば各種建築物、航空機や列車の壁や床、胴体パネル等、様々な用途に利用することも考えられる。これら様々な用途に適用する場合、電池周辺には、一般的に多数の配線や配管等を配置するスペースが必要となるが、上記特許文献1及び2では、当該配線や配管等を考慮した電池構造について何ら検討されていなく、十分な省スペース化が図れていない。特許文献2に記載された、中央部を切り抜いて貫通孔を作製した発電セルにおいては、当該貫通孔を利用して配線や配管等を挿通することが可能であるが、特許文献2には、配線や配管等を貫通孔に挿通した場合の電池構造の耐久性について何ら記載されていなく、改善する必要があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、各種装置や構造物の内部に配線及び配管等が配された収容空間に電池を配置する際に、当該収容空間の省スペース化を図りながら、電池の耐久性を向上させることができる電池構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記のような知見に基づいて鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0007】
樹脂集電体層を含む正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、樹脂集電体層を含む負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、が積層されており、積層方向に貫通する貫通孔が形成されたリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池の前記貫通孔の周面を覆う応力分散材と、
を備えており、
前記応力分散材は、前記貫通孔を挿通する挿通部材が前記応力分散材の内壁に当接した際に、前記応力分散材に加わる応力を分散させるように構成されている、電池構造。
【0008】
前記応力分散材は、前記貫通孔を挿通する挿通部材が前記応力分散材の内壁に当接した際に、非破壊状態に保たれる強度を有することが好ましい。
【0009】
前記正極活物質層は、前記正極活物質同士が相互に結着しない状態の非結着体であり、
前記負極活物質層は、前記負極活物質同士が相互に結着しない状態の非結着体であることが好ましい。
【0010】
前記リチウムイオン電池の外周面を覆う枠状の補強部材を更に備えていることが好ましい。
【0011】
前記リチウムイオン電池は、前記貫通孔と連通する切欠き部が形成されており、
前記応力分散材は、前記貫通孔の周面及び前記切欠き部の内側面を覆うように設けられていることが好ましい。
【0012】
前記リチウムイオン電池の外周面を覆う枠状の補強部材を更に備えており、
前記応力分散材と前記補強部材とが一体形成されていることが好ましい。
【0013】
前記応力分散材は、前記貫通孔の周面から前記リチウムイオン電池の表面の一部まで覆う第1のエッジカバーを有することが好ましい。
【0014】
前記第1のエッジカバーは、前記リチウムイオン電池を外部に取り付け固定するための第1の固定機構を有することが好ましい。
【0015】
前記リチウムイオン電池の一側面から前記一側面と連続する側面の一部まで覆う第2のエッジカバーを更に備えることが好ましい。
【0016】
前記第2のエッジカバーは、前記リチウムイオン電池を外部に取り付け固定するための第2の固定機構を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各種装置や構造物の内部に配線及び配管等が配された収容空間に電池を配置する際に、当該収容空間の省スペース化を図りながら、電池の耐久性を向上させることができる電池構造が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態による電池構造の概略構成を示す模式図である。
図2】第1の実施形態による電池構造が設置された様子を例示する模式図である。
図3】第1の実施形態の変形例による電池構造を模式的に示す平面図である。
図4】第2の実施形態による電池構造の概略構成を示す模式図である。
図5】第2の実施形態の変形例の概略構成を示す模式図である。
図6】第3の実施形態による電池構造を模式的に示す斜視図である。
図7】第3の実施形態の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態による電池構造の概略構成を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が(a)の破線I-I'に沿った断面図である。この電池構造は、例えば、家屋等の各種建築物や列車及び航空機等における壁内、床内、胴体パネル及び翼部等に配置されるものである。
【0021】
本実施形態による電池構造10は、リチウムイオン二次電池の単電池1Aが複数積層されてなる平板状の組電池1を有している。
リチウムイオン二次電池の単電池1Aは、正極電極11及び負極電極13がセパレータ12を介して積層され、正極電極11、セパレータ12、及び負極電極13の外周部を取り囲み封止するシール部14が設けられ、封止された内部に電解液が封入されて構成されている。正極電極11は、正極樹脂集電体21及び正極活物質層22が積層されてなる。負極電極13は、負極樹脂集電体23及び負極活物質層24が積層されてなる。
【0022】
組電池1は、単電池1Aの集電体が樹脂集電体であることから、全体としても可撓性を有している。
なお本実施形態では、電池構造10において組電池1とされた場合を例示するが、電池構造10を単電池構成としても良い。
【0023】
(正極樹脂集電体)
正極樹脂集電体21としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0024】
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。また、これらの合金又は金属酸化物を用いても良い。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、更に好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電性フィラーの材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでも良い。
【0025】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01μm~1μmであることが好ましく、0.02μm~5μmであることがより好ましく、0.03μm~1μmであることが更に好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0026】
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であっても良く、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であっても良い。
【0027】
導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であっても良い。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性の良い金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。導電性フィラーが導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1μm~20μmであることが好ましい。
【0028】
樹脂集電体中の導電性フィラーの重量割合は、5重量%~90重量%であることが好ましく、20重量%~80重量%であることがより好ましい。特に、導電性フィラーがカーボンの場合、導電性フィラーの重量割合は、20重量%~30重量%であることが好ましい。
【0029】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーの他に、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいても良い。また、複数の樹脂集電体を積層して用いても良く、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0030】
正極樹脂集電体21の厚さは特に限定されないが、5μm~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体として用いる場合には、積層後の全体の厚さが5μm~150μmであることが好ましい。
【0031】
正極樹脂集電体21は、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。導電性樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。なお、正極樹脂集電体21は、フィルム成形以外の成形方法によっても得ることができる。
【0032】
(正極活物質層)
正極活物質層22は、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。
【0033】
正極活物質同士が相互に結着しない状態の非結着体で正極活物質層22が構成されている場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22に応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22の破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22は、正極活物質層13を、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22にする等の方法で得ることができる。
【0034】
なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0035】
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn24等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCox2、LiMn1-yCoy2、LiNi1/3Co1/3Al1/32及びLiNi0.8Co0.15Al0.052)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM'bM”c2(M、M'及びM”はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/32)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV25)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用しても良い。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであっても良い。
【0036】
正極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01μm~10μmであることが好ましく、0.1μm~35μmであることがより好ましく、2μm~30μmであることが更に好ましい。
【0037】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であっても良い。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0038】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0039】
被覆材には、導電剤が含まれていても良い。導電剤としては、正極樹脂集電体21に含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0040】
正極活物質層22には、粘着性樹脂が含まれていても良い。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平1-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。従って、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極用バインダ)と粘着性樹脂とは異なる材料である。
【0041】
正極活物質層22には、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていても良い。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(FSO22及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22及びLiC(CF3SO23等の有機酸のリチウム塩等が挙げられ、LiN(FSO22(LiFSIともいう)が好ましい。
【0042】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0043】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ-バレロラクトン等)等を挙げることができる。
【0044】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0045】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0046】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。非水溶媒は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0047】
非水溶媒のうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液である。
【0048】
正極活物質層22には、導電助剤が含まれていても良い。導電助剤としては、正極集電体11に含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0049】
正極活物質層22における導電助剤の重量割合は、3重量%~1重量%であることが好ましい。
【0050】
正極活物質層22は、例えば、正極活物質及び電解液を含むスラリーを正極樹脂集電体21又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法によって作製することができる。基材の表面に正極活物質層22を形成した場合、転写等の方法によって正極活物質層22を正極樹脂集電体21と組み合わせれば良い。上記スラリーには、必要に応じて、導電助剤や粘着性樹脂が含まれていても良い。また、正極活物質は被覆正極活物質であっても良い。
【0051】
正極活物質層22の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150μm~600μmであることが好ましく、200μm~450μmであることがより好ましい。
【0052】
(負極樹脂集電体)
負極樹脂集電体23としては、正極樹脂集電体21で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極樹脂集電体23の厚さは特に限定されないが、5μm~150μmであることが好ましい。
【0053】
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質同士が相互に結着しない状態の非結着体で負極活物質層24が構成されていることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層23を得る方法等は、正極活物質層22が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22を得る方法と同様である。
【0054】
負極活物質としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。上記負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施しても良い。
【0055】
これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素がさらに好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体が更に好ましい。
【0056】
負極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01μm~10μmが好ましく、0.1μm~20μmであることがより好ましく、2μm~1μmであることが更に好ましい。
【0057】
本明細書において、負極活物質の体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0058】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であっても良い。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0059】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0060】
負極活物質層24は、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22に含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0061】
負極活物質層24には、導電助剤が含まれていても良い。導電助剤としては、正極活物質層22に含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0062】
負極活物質層24における導電助剤の重量割合は、2重量%~1重量%であることが好ましい。
【0063】
負極活物質層24には、粘着性樹脂が含まれていても良い。粘着性樹脂としては、正極活物質層22の任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0064】
負極活物質層24は、例えば、負極活物質及び電解液を含むスラリーを負極樹脂集電体23又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法によって作製することができる。基材の表面に負極活物質層24を形成した場合、転写等の方法によって負極活物質層24を負極樹脂集電体23と組み合わせれば良い。上記スラリーには、必要に応じて、導電助剤や粘着性樹脂等が含まれていても良い。また、負極活物質は被覆負極活物質であっても良い。
【0065】
負極活物質層24の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150μm~600μmであることが好ましく、200μm~450μmであることがより好ましい。
【0066】
(セパレータ)
セパレータ12としては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、上記多孔性フィルムの積層フィルム(多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム等)、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン単電池に用いられるセパレータが挙げられる。
【0067】
(シール部)
組電池1は、各単電池1Aにおいて正極活物質層22及び負極活物質層24の外周と内周(後述する貫通孔の周面)とを封止することで電解液が封入された構成とされる。本実施形態では、シール部14は、電解液に対して耐久性のある高分子材料からなり、正極活物質層22又は負極活物質層24を囲む枠状体14aと、後述する貫通孔の周面に設けられる環状体14bとからなる。シール部14は、各単電池1において正極樹脂集電体21及び負極樹脂集電体23の間に配置されており、セパレータ12を封止する機能を有する。
【0068】
シール部14としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0069】
(電池構造の主要構成)
本実施形態において、図1に示すように、組電池1には、単電池1Aの積層方向と平行に貫通する貫通孔2が形成されている。貫通孔2の周面では、組電池1を構成する各単電池1Aにそれぞれ環状体14bが設けられ、枠状体14aと環状体14bとにより電解液が封入されている。なお、単電池1Aの積層方向は、組電池1の上面(又は下面)と直交する方向でなくとも良い。また、貫通孔は、積層方向と平行に形成されていなくても良い。貫通孔は、複数形成される場合もあるが、図1では1つの貫通孔2のみを例示する。また図1では、円形状の貫通孔2を例示するが、楕円形状又は多角形状の貫通孔を形成するようにしても良い。
【0070】
貫通孔2の周面を含む組電池1の全面に外装フィルム3が設けられている。外装フィルム3は、可撓性を有する絶縁材料からなり、電池に用いられている公知の材質を用いることが可能であり、好ましくはラミネートフィルムである。ラミネートフィルムとしては、外側にナイロンフィルム、中心にアルミニウム箔、内側に変性ポリプロピレン等の接着層を有した3層ラミネートフィルムを好ましく用いることができる。
【0071】
本実施形態では、貫通孔2の周面から表裏両縁部に架けて外装フィルム3上を覆う環状の応力分散材4が設けされている。貫通孔2の周面を覆う応力分散材4が設けられることにより、貫通孔5を有する電池構造10が構成される。応力分散材4は、例えば絶縁性材料からなり、組電池1の貫通孔2の周面(特に、当該周面で外装フィルム3により覆われるのみである正極樹脂集電体21及び負極樹脂集電体23の各端部)を保護するものである。応力分散材4は、貫通孔5を挿通する挿通部材が内壁に当接した際に、非破壊状態に保たれる強度を有している。
【0072】
図2は、本実施形態による電池構造が設置された様子を例示する模式図であり、(a)が概略斜視図、(b)が貫通孔の近傍を示す一部拡大平面図である。
電池構造10は、例えば列車や航空機の壁内等に設置されるものである。図2(a)に示すように、壁内等では、挿通部材として所定の配線及び配管等100が貫通孔5を挿通して配される。図2(b)に示すように、配線及び配管等100が応力分散材4に当接し、接触時の衝撃や摩擦、圧力等の応力が応力分散材4に加わっても、例えば図2(b)中の矢印で示すように、配線及び配管等100の当接点を起点として応力が応力分散材4内で分散される。即ち、応力が当接点に集中することなく分散されるため、応力分散材4は非破壊状態に保たれる。また、組電池1の貫通孔2は応力分散材4で保護されているため、組電池1の貫通孔2の破損や外装フィルム3の剥離等の発生が防止される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、各種装置や構造物の内部に配線及び配管等が配された収容空間に電池を配置する際に、当該電池に形成した貫通孔を当該配線や配管等の挿通箇所として利用できるので、当該配線や配管等を電池の周囲に引き回して電池を配置する必要がない。また、貫通孔に配線や配管等を挿通した場合において、当該貫通孔の周囲に応力分散材が設けられているため、配線や配管等が貫通孔の内周面に接触又は圧接することによる電池の破損も抑制される。したがって、配線及び配管等が配された収容空間に電池を配置する際に当該収容空間の省スペース化を図りながら、電池の耐久性を向上させることができる電池構造10が実現する。その結果、様々な箇所に配置することができる利便性の高い電池構造10を提供できる。
【0074】
(電池構造の製造方法)
電池構造10の製造方法としては、先ず、正極活物質層22、セパレータ12、負極活物質層24、及び負極樹脂集電体23をこの順に一組として、所定の複数組重ね合わせた後、貫通孔2を形成する。電解液を注入し、各組の正極活物質層22及び負極活物質層24の外周及び貫通孔2の周面を、セパレータ12の端部が挿入され、正極樹脂集電体21又は負極樹脂集電体23と接合されるようにシール部14である枠状体14a及び環状体14bで封止する。以上により、組電池1が得られる。
【0075】
続いて、組電池1の周面を含む組電池1の全面に外装フィルム3を設け、応力分散材4を貫通孔2を挿通させて配置する。以上により、電池構造10が得られる。
【0076】
[変形例]
以下、第1の実施形態の変形例による電池構造について説明する。
図3は、本変形例による電池構造を模式的に示す平面図である。
本変形例による電池構造20では、第1の実施形態で説明した電池構造10において、組電池1の外周面を外装フィルム3を介して覆う枠状の補強部材6が付加されている。
【0077】
補強部材6は、例えば絶縁性材料、ここでは応力分散材4と同一の絶縁性材料からなり、組電池1の外周面(特に、当該外周面で外装フィルム3により覆われるのみである正極樹脂集電体21及び負極樹脂集電体23の各端部)を保護するものである。補強部材6を設けることにより、外部の部材が補強部材6に当接した際に、組電池1が非破壊状態に保たれる。
【0078】
電池構造20では、応力分散材4及び第2の補強部材6が設けられたことにより、組電池1で脆弱な部位である貫通孔2の周面部及び組電池1の外周部が保護され、組電池1の強度が保持される。
【0079】
以上説明したように、本変形例によっても、前述した第1の実施形態による効果と同様の効果が得られる。更に、本変形例では組電池1の外周部も補強することができる。
【0080】
[第2の実施形態]
図4は、本実施形態による電池構造の概略構成を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が(a)の破線I-I'に沿った断面図、(c)が(b)のA部(一点鎖線の円内)を拡大して示す断面図である。
【0081】
本実施形態による電池構造30は、第1の実施形態で説明した平板状の組電池1を有している。組電池1には貫通孔2が形成され、貫通孔2の周面を含む組電池1の全面に外装フィルム3が設けられている。
【0082】
電池構造30では、組電池1の貫通孔2を保護する応力分散材として、貫通孔2のエッジ部分を保護する第1のエッジカバー31が設けられている。第1のエッジカバー31は、貫通孔2の周面から両縁部に架けて外装フィルム3上を覆う環状のカバー部材である。組電池1の貫通孔2を第1のエッジカバー31が覆うことにより、貫通孔7が形成される。第1のエッジカバー31は、例えば絶縁性材料からなり、組電池1の貫通孔2における端部を保護するものである。第1のエッジカバー31を設けることにより、外部の部材が第1のエッジカバー31に当接した際に、当接点を起点として応力が第1のエッジカバー31内で分散され、組電池1が非破壊状態に保たれる。
【0083】
電池構造30では、組電池1の外枠のエッジ部分を保護する一対の第2のエッジカバー32a,32bが設けられている。第2のエッジカバー32aは、図4(a)で組電池1の上側面から当該上側面と連続する左右側面の一部まで覆う保護部材である。第2のエッジカバー32bは、図4(a)で組電池1の下側面から当該下側面と連続する左右側面の一部まで覆う保護部材である。
【0084】
第1のエッジカバー31は、組電池1の貫通孔2から取り外し自在とされている。第2のエッジカバー32a,32bは、組電池1の上下側面からそれぞれ取り外し自在とされている。
第1のエッジカバー31は、図4(c)に示すように、貫通孔2の内壁面(周面)から上縁部まで覆う第1カバー31aと、貫通孔2の下縁部を覆い、爪部31b1を有する第2カバー31bとを有している。第2カバー31bの爪部31b1が第1カバー31aと係合することにより第1カバー31aと第2カバー31bとが一体となり、環状の第1のエッジカバー31となる。
【0085】
電池構造30においては、所定の配線及び配管等が第1のエッジカバー31に当接し、接触時の衝撃や摩擦、圧力等の応力が第1のエッジカバー31に加わっても、当接点を起点として応力がエッジカバー31で分散される。即ち、応力が当接点に集中することなく分散されるため、エッジカバー31は非破壊状態に保たれる。また、組電池1の貫通孔2はエッジカバー31で保護されているため、組電池1の貫通孔2の破損や外装フィルム3の剥離等の発生が防止される。
【0086】
電池構造30においては、組電池1の傷付き易いエッジ部(図4の例では4隅部)が第2のエッジカバー32a,32bで覆われて保護されており、組電池1の損壊等が防止される。
【0087】
以上説明したように、第2の実施形態によっても、前述した第1の実施形態による効果と同様の効果が得られる。更に、第2の実施形態では、組電池1の傷付き易いエッジ部が補強され、組電池1の耐久性をより一層向上させることができる。
【0088】
[変形例]
以下、第2の実施形態の変形例による電池構造について説明する。
図5は、本変形例による電池構造を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が(a)の破線I-I'に沿った断面図である。
【0089】
本変形例による電池構造40では、第2の実施形態で説明した電池構造30において、第1のエッジカバー31に第1の固定機構41が、第2のエッジカバー32a,32bに第2の固定機構42がそれぞれ付加されている。
【0090】
第1の固定機構41は、第1のエッジカバー31の貫通孔6の周面から貫通孔6側に張り出すように複数個所(ここでは例えば2箇所)に設けられた固定部41Aと、固定部41Aの挿通穴41Aaに挿通して外部に固定するネジ41Bとを有している。
第2の固定機構42は、第2のエッジカバー32a,32bの複数個所(ここでは例えばそれぞれ3箇所ずつ)に並んで設けられた固定部42Aと、固定部42Aの挿通穴42Aaに挿通して外部に固定するネジ42Bとを有している。
【0091】
電池構造40は、例えば列車や航空機の壁内等に設置されるものである。壁内等では、
例えば図5(b)に示すように、挿通部材として所定の配線及び配管等100が貫通孔7を挿通して配される。本変形例では、電池構造40は例えば壁内で第1の固定機構41及び第2の固定機構42により取り付けられる。電池構造40がこの状態で壁内に取り付けられて確実に固定保持されるため、配線及び配管等100が第1のエッジカバー31に当接し、接触時の衝撃や摩擦、圧力等の応力が第1のエッジカバー31に加わっても、当接点を起点として応力が第1のエッジカバー31内で分散される。これにより、組電池1の受けるダメージが可及的に軽減される。
【0092】
以上説明したように、本変形例によれば、前述した第1の実施形態による効果と同様の効果が得られる。更に、第1の固定機構41及び第2の固定機構42により電池構造40が固定保持されるため、貫通孔に挿通した配線及び配管等100が電池構造40に圧接した際においても電池構造40の変形が抑制され、その結果、組電池1の耐久性を更に向上させることができる。
【0093】
[第3の実施形態]
図6は、本実施形態による電池構造を模式的に示す斜視図である。
【0094】
本実施形態による電池構造50では、第1の実施形態で説明した電池構造10において、組電池1の貫通孔2と連通する切欠き部8が形成されており、応力分散材4に代わって、貫通孔2の周面及び切欠き部8の内側面を外装フィルム3を介して覆う応力分散材9が設けられている。応力分散材9が設けられることにより、電池構造50に形成される貫通孔及び切欠き部が連通してなる部位を連通貫通部51とする。
【0095】
応力分散材9は、例えば絶縁性材料からなり、組電池1の貫通孔2の周面及び切欠き部8の内側面(特に、当該周面及び当該内側面で外装フィルム3により覆われるのみである正極樹脂集電体21及び負極樹脂集電体23の各端部)を保護するものである。応力分散材9は、連通貫通部51を挿通する挿通部材が内壁に当接した際に、当接点を起点として応力が応力分散材9内で分散され、非破壊状態に保たれる。更に、応力分散材9が設けられることにより、連通貫通部51の貫通口部分に挿通部材が当接した際に、組電池1に及ぼされる力が貫通孔2の近傍に集中することなく貫通孔2から切欠き部8に亘って分散される。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、各種装置や構造物の内部に配線及び配管等が配された収容空間に電池を配置する際に、当該収容空間の省スペース化を図りながら、電池の耐久性を向上させることができる電池構造50が実現する。その結果、様々な箇所に配置することができる利便性の高い電池構造50を提供できる。
【0097】
[変形例]
以下、第3の実施形態の変形例による電池構造について説明する。
図7は、本変形例による電池構造を模式的に示す斜視図である。
本変形例による電池構造60では、第3の実施形態で説明した電池構造50において、組電池1の外周面を外装フィルム3を介して覆う枠状の補強部材が付加されている。電池構造60では、応力分散材9と補強部材とが一体形成されて全周面補強部材61とされている。即ち全周面補強部材61は、組電池1の貫通孔2の周面及び切欠き部8の内側面、並びに外周面を外装フィルム3を介して連続的に覆っている。
【0098】
全周面補強部材61は、例えば絶縁性材料からなり、組電池1の貫通孔2の周面及び切欠き部8の内側面、並びに外周面(特に、当該周面、当該内側面、及び当該外周面で外装フィルム3により覆われるのみである正極樹脂集電体21及び負極樹脂集電体23の各端部)を保護するものである。全側面補強部材61は、連通貫通部51を挿通する挿通部材が内壁に当接した際に、非破壊状態に保たれる強度を有している。更に、全側面補強部材61が設けられることにより、組電池1で脆弱な部位である貫通孔2の周面部及び組電池1の外周部が一体的に保護され、組電池1の強度が保持される。
【0099】
以上説明したように、本変形例によれば、各種装置や構造物の内部に配線及び配管等が配された収容空間に電池を配置する際に、当該収容空間の省スペース化を図りながら、電池の耐久性を向上させることができる電池構造60が実現する。その結果、様々な箇所に配置することができる利便性の高い電池構造60を提供できる。
【0100】
なお、本発明による電池構造は、上記した第1~第3の実施形態及び諸変形例で例示した形態に限定されるものではない。例えば、第3の実施形態及び変形例の電池構造50,60に対して、第2の実施形態及び変形例の第1のエッジカバー31や第2のエッジカバー32a,32b、及び第1及び第2の固定機構41,42を適用すること等も可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 組電池
1A 単電池
2,5,7 貫通孔
3 外装フィルム
4,6,9 補強部材
8 切欠き部
10,20,30,40,50,60 電池構造
11 正極電極
12 セパレータ
13 負極電極
14 シール部
14a 枠状体
14b 環状体
21 正極樹脂集電体
22 正極活物質層
23 負極樹脂集電体
24 負極活物質層
31 第1のエッジカバー
31a 第1カバー
31b 第2カバー
31b1 爪部
32a,32b 第2のエッジカバー
41 第1の固定機構
41A,42A 固定部
41Aa,42Aa 挿通穴
41B ネジ
42 第2の固定機構
51 連通貫通部
61 全周面補強部材
100 配線及び配管等
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7