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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20250630BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20250630BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250630BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
B60C11/00 D
C08L21/00
C08K3/36
B60C1/00 A
B60C11/00 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021108400
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006030
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】冨田 皓太
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-289704(JP,A)
【文献】特開2019-142503(JP,A)
【文献】特開2010-132772(JP,A)
【文献】特開2020-093675(JP,A)
【文献】特開平07-040708(JP,A)
【文献】特開昭59-124411(JP,A)
【文献】特開2011-148894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
C08L 21/00
C08K 3/36
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を備える空気入りタイヤであって、
加硫ゴム粉末を含有し、0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(0℃tanδ)が、0.30超であるゴム組成物を用いて、前記トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)が5mm超となるように形成されており、
前記トレッド部の最外層の断面において、前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)が、5%以上、50%以下であり、
さらに、前記トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)として得られる値に対する前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)として得られる値の割合(Sr/G)が、0.3超であり、
前記トレッド部の最外層のキャップゴム層以外のゴム層にも、前記加硫ゴム粉末が含有されており、
前記トレッド部の最外層のキャップゴム層において前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sout(%)が、前記トレッド部の最内層のベースゴム層において前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sin(%)よりも大きく、
前記ベースゴム層において前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sin(%)が1%超であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記0℃tanδが、0.45超であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記0℃tanδが、0.60超であることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部の最外層の断面において、前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)が、10%超、40%未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部の最外層の断面において、前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)が、15%超、30%未満であることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)に対する前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)の割合(Sr/G)が、0.5以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)に対する前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)の割合(Sr/G)が、0.8以上であることを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物および前記加硫ゴム粉末の双方に、シリカが含有されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物に含有されているシリカの質量%が、前記加硫ゴム粉末に含有されているシリカの質量%よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド部が、配合が異なる2層以上のゴム層から構成されており、
最外層のキャップゴム層に、前記ゴム組成物が用いられていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記加硫ゴム粉末が、JIS Z8801-1に規定された試験用ふるいで、30メッシュパスよりも細かい粒度の加硫ゴム粉末であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
モータ駆動の自動車に装着される空気入りタイヤであることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、より詳しくは、高速走行時におけるノイズ性能に優れた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車内における居住安定性を左右する要因の1つに、乗員が走行時に感じるノイズがあり、自動車に装着される空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)についても、従来より、トレッド部の形状を工夫するなどの種々の工夫により、ノイズの低減を図ることが提案されている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-74845号公報
【文献】特開2018-199455号公報
【文献】特開2019-111838号公報
【文献】特開2020-82861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、環境問題への関心の高まりに合わせて、電気自動車を始めとする内燃機関を持たない自動車の開発および普及が急速に進んでいる。これらの自動車は、駆動方式が、従来の自動車と異なり、モータ駆動であるため、乗員が走行時に感じるノイズは、内燃機関に起因するノイズの比率が低くなる一方、タイヤに起因するノイズの比率が高くなる。そして、この傾向は、速度が速くなるほど顕著となり、時速80km以上の高速走行時には、このタイヤに起因するノイズの比率が特に高くなる。
【0005】
このような状況下、上記した従来の技術では、このタイヤに起因するノイズの比率の低減が十分とは言えず、タイヤのノイズ性能のさらなる向上が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、時速80km以上の高速走行時においても、十分なノイズ性能を有する空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
請求項1に記載の発明は、
トレッド部を備える空気入りタイヤであって、
加硫ゴム粉末を含有し、0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(0℃tanδ)が、0.30超であるゴム組成物を用いて、前記トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)が5mm超となるように形成されており、
前記トレッド部の最外層の断面において、前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)が、5%以上、50%以下であり、
さらに、前記トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)として得られる値に対する前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)として得られる値の割合(Sr/G)が、0.3超であり、
前記トレッド部の最外層のキャップゴム層以外のゴム層にも、前記加硫ゴム粉末が含有されており、
前記トレッド部の最外層のキャップゴム層において前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sout(%)が、前記トレッド部の最内層のベースゴム層において前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sin(%)よりも大きく、
前記ベースゴム層において前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sin(%)が1%超であることを特徴とする空気入りタイヤである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記0℃tanδが、0.45超であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
前記0℃tanδが、0.60超であることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、
前記トレッド部の最外層の断面において、前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)が、10%超、40%未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
前記トレッド部の最外層の断面において、前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)が、15%超、30%未満であることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、
前記トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)に対する前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)の割合(Sr/G)が、0.5以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、
前記トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)に対する前記加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)の割合(Sr/G)が、0.8以上であることを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、
前記ゴム組成物および前記加硫ゴム粉末の双方に、シリカが含有されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤである。
【0016】
請求項9に記載の発明は、
前記ゴム組成物に含有されているシリカの質量%が、前記加硫ゴム粉末に含有されているシリカの質量%よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載の空気入りタイヤである。
【0017】
請求項10に記載の発明は、
前記トレッド部が、配合が異なる2層以上のゴム層から構成されており、
最外層のキャップゴム層に、前記ゴム組成物が用いられていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤである。
【0020】
請求項11に記載の発明は、
前記加硫ゴム粉末が、JIS Z8801-1に規定された試験用ふるいで、30メッシュパスよりも細かい粒度の加硫ゴム粉末であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤである。
【0021】
請求項12に記載の発明は、
モータ駆動の自動車に装着される空気入りタイヤであることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、時速80km以上の高速走行時においても、十分なノイズ性能を有する空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[1]本発明に係るタイヤの特徴
最初に、本発明に係るタイヤの特徴について説明する。
【0024】
1.概要
本発明に係るタイヤは、トレッド部を備える空気入りタイヤであって、加硫ゴム粉末を含有し、0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(0℃tanδ)が、0.30超であるゴム組成物を用いて、トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)が5mm超となるように形成されている。そして、トレッド部の最外層の断面において、加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)が、5%以上、50%以下であり、さらに、トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)として得られる値に対する加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)として得られる値の割合(Sr/G)が、0.3超である。また、トレッド部の最外層のキャップゴム層以外のゴム層にも、加硫ゴム粉末が含有されており、トレッド部の最外層のキャップゴム層において加硫ゴム粉末が占める面積比率Sout(%)が、トレッド部の最内層のベースゴム層において加硫ゴム粉末が占める面積比率Sin(%)よりも大きく、ベースゴム層において加硫ゴム粉末が占める面積比率Sin(%)が1%超である。
【0025】
これらの特徴を有することにより、後述するように、時速80km以上の高速走行時においても、十分なノイズ性能を有する空気入りタイヤを提供することができる。
【0026】
2.本発明に係るタイヤにおける効果発現のメカニズム
本発明に係るタイヤにおける効果発現のメカニズムについては、以下のように推測される。
【0027】
上記したように、本発明においては、トレッド部の最外層には、0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(0℃tanδ)が、0.30超であるゴム組成物を用いている。
【0028】
損失正接tanδは、エネルギーの吸収性能を示す粘弾性パラメータであり、値が大きいほどエネルギーを吸収して、熱に変換することができる。具体的には、0℃tanδを0.30超とすることにより、この効果が十分に発揮されて、高速走行時においても、タイヤに起因するノイズ、即ち、タイヤが受けるエネルギー(入力エネルギー)の音への変換を低減させて、高速走行時におけるノイズ性能を向上させることができる。
【0029】
損失正接(tanδ)は、例えば、GABO社製「イプレクサー(登録商標)」などの粘弾性測定装置を用いて、測定することができる。なお、0℃tanδが0.45超であると、タイヤが受けるエネルギー(入力エネルギー)をより高い比率で熱に変換してノイズの発生を低減させることができ好ましい。なお、0.60超であるとより好ましい。また、上限は、特に規定されないが、2.00未満であると好ましい。
【0030】
また、タイヤは、タイヤが直接接地するトレッド部の最外層を、加硫ゴム粉末を含有するゴム組成物で形成している。この加硫ゴム粉末は、ゴム組成物に含有されることにより緩衝材として機能するため、断面において加硫ゴム粉末が占める面積比率Srを高めることにより、トレッド部から伝わる振動を吸収して、ノイズ性能を向上させることができる。
【0031】
具体的には、トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)を2.5mm超とすると共に、断面において加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)を、5%以上、50%以下とし、さらに、G(mm)に対するSr(%)の割合(Sr/G)が、0.3超であることにより、緩衝材(静音材、制音材)としての効果が十分に発揮されて、高速走行時におけるノイズ性能を向上させることができる。
【0032】
なお、上記記載において、最外層のクラウン部における厚みG(mm)とは、タイヤの半径方向断面の赤道面上における最外層ゴム層の厚みを指し、赤道面上に溝を有する場合には、赤道面に最も近い接地面を形成する最外層部の幅方向中央部での厚みを指す。
【0033】
本発明において、最外層のクラウン部における厚みG(mm)は、2.5mm超であれば特に限定されないが、4mm以上であることが好ましく、6mm以上であるとより好ましい。一方、上限は特に限定されないが、15mm以下であることが好ましく、13mm以下であるとより好ましく、11mm以下であることがより好ましい。
【0034】
上記した断面において加硫ゴム粉末が占める面積比率Srは、トレッド面に平行な面が観察用断面となるように切断したサンプルを、例えば、走査型電子顕微鏡で撮像して、加硫ゴム粉末が占めるドメインの面積を求め、切断面全体の面積に対する比率を求めることにより得ることができる。なお、Srは、5%超であるとより好ましく、8%超であるとさらに好ましく、15%超であると特に好ましい。上限としては、50%未満であるとより好ましく、45%以下であるとさらに好ましく、30%以下であると特に好ましい。また、Sr/Gは、0.5以上であるとより好ましく、0.8以上であるとさらに好ましい。そして、Sr/Gの上限は、特に規定されないが、1.5以下であると好ましい。
【0035】
本発明においては、これらの効果が相乗的に発揮されるため、時速80km以上の高速走行時においても、十分にノイズ性能を向上させることができる。
【0036】
[2]本発明に係るタイヤにおけるより好ましい態様
本発明に係るタイヤは、以下の態様を取ることにより、さらに大きな効果を得ることができる。
【0037】
1.シリカの含有
本発明に係るタイヤは、ゴム組成物および加硫ゴム粉末の双方に、シリカが含有されていることが好ましい。
【0038】
ゴム組成物や加硫ゴム粉末にシリカが含有されていると、微小変形においても変形しやすくなるため、加硫ゴム粉末内部でも衝撃を吸収しやすくなると共に、上記した0℃tanδをより向上させることができる。
【0039】
このとき、0℃tanδの向上に対する寄与の程度は、加硫ゴム粉末よりもゴム組成物の方が大きいため、ゴム組成物に含有されているシリカの質量%が、加硫ゴム粉末に含有されているシリカの質量%よりも大きいことが好ましい。
【0040】
2.トレッド部の複層化
本発明において、トレッド部は、上記したゴム組成物を用いて形成された単層のトレッド部に限定されず、配合が異なる2層以上のゴム層から構成されていてもよい。なお、この場合、最外層のキャップゴム層に、上記したゴム組成物が用いられる。
【0041】
配合が異なるゴム層は、一般的に、損失正接が異なっているため、このように、配合が異なるゴム層を配置してトレッド部を形成させた場合、各ゴム層において応答するノイズの位相を異ならせることができる。この結果、より効率的にノイズを吸収して、ノイズ性能を向上させることができる。なお、キャップゴム層以外のゴム層にも加硫ゴム粉末が含有されていると、前記した加硫ゴム粉末による効果が相乗的に発揮されるため、より好ましい。
【0042】
しかし、ゴム組成物に加硫ゴム粉末を含有させた場合、補強性が低下して、タイヤの耐久性の低下を招く恐れがある。そこで、内側ゴム層において加硫ゴム粉末が占める面積比率Sin(%)を、キャップゴム層において加硫ゴム粉末が占める面積比率Sout(%)よりも小さくなるように、即ち、Sout(%)>Sin(%)の関係を満たすようにすることが好ましい。そして、Sin(%)は1%超とすることが好ましい。
【0043】
これにより、内側ゴム層において耐久性能を担保することができるため、十分な耐久性を維持しつつ、十分なノイズ性能を発揮させることができる。なお、前記した加硫ゴム粉末の緩衝材としての機能を十分に発揮させるためには、内側ゴム層において加硫ゴム粉末が占める面積比率Sin(%)は、1%超であることが好ましい。
【0044】
3.加硫ゴム粉末の粒度
本発明において、加硫ゴム粉末は、JIS Z8801-1に規定された試験用ふるいで、30メッシュパスよりも細かく、250メッシュパスよりも粗い粒度であることが好ましい。粒度を30メッシュパスより細かくすることにより、ゴム組成物において、ゴム組成物内での均一な分散を得やすくなり、十分な耐久性能を得やすくすることができる。一方、250メッシュパスより大きくすることにより、十分な大きさの加硫ゴム粉末のドメインをゴム組成物内で形成させることができ、衝撃を緩衝させやすくなりノイズ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0045】
[3]実施の形態
以下、実施の形態に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0046】
1.ゴム組成物
(1)配合材料
本発明において、トレッド部の最外層を形成するゴム組成物は、以下に記載するゴム成分、およびその他の配合材料から得ることができる。
【0047】
(a)ゴム成分
本実施の形態において、ゴム成分としては特に限定されず、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)などのジエン系ゴム、ブチルゴムなどのブチル系ゴムなど、タイヤの製造に一般的に用いられるゴム(ポリマー)を用いることができる。これらの内でも、イソプレン系ゴムが好ましく、ポリイソプレンのシス構造が100%に近く、引張り強さが他のゴム成分より優れているという点で、NRを用いることが好ましい。また、ゴム組成物内でミクロなドメインを形成させ、それらのドメイン構造によりさらにノイズを吸収させやすくするという観点から、NRおよびブタジエンゴム、NRおよびSBRを併用することや、NR、BR、SBRの3種を併用することが好ましい。
【0048】
(イ)イソプレン系ゴム
ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量(合計含有量)は、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であるとより好ましく、45質量部以上であるとさらに好ましい。一方、上限としては、75質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。
【0049】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられるが、強度に優れるという点からNRが好ましい。
【0050】
NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
(ロ)BR
本実施の形態において、ゴム成分には、必要に応じて、NRと共に、BRを用いることが好ましい。これらは互いに非相溶となるため、混合させることで、ミクロなドメイン構造を形成し、加硫ゴム粉末と合わせてゴム層内で衝撃を緩衝させやすくすることが可能になると考えられる。BRの含有量は特に限定されないが、5質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、45質量部以上であるとさらに好ましい。一方、上限も特に限定されないが、75質量部以下であると好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であるとさらに好ましい。
【0052】
BRの重量平均分子量は、例えば、10万超、200万未満である。BRのビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、例えば1質量%超、30質量%未満である。BRのシス含量は、例えば1質量%超、98質量%以下である。BRのトランス含量は、例えば、1質量%超、60質量%未満である。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0053】
BRとしては特に限定されず、高シス含量(シス含量が90%以上)のBR、低シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、例えば、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたS変性BRを使用することができる。
【0054】
【化1】
【0055】
なお、式中、R、RおよびRは、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)またはこれらの誘導体を表す。RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
【0056】
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性BRとしては、重合末端(活性末端)を前記式で表される化合物により変性されたBRを挙げることができる。
【0057】
、RおよびRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。RおよびRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、RおよびRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0058】
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
また、変性BRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性BRも使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基および/または置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基および/または置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドン;N-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類の他、N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
【0060】
変性BRとしては、例えば、スズ変性BRを使用することもできる。スズ変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行った後、スズ化合物を添加することにより得られ、更に該スズ変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているものが好ましい。
【0061】
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウム、有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物や、リチウム金属などが挙げられる。前記リチウム開始剤をスズ変性BRの開始剤とすることで、高ビニル、低シス含有量のスズ変性BRを作製できる。
【0062】
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p-トリブチルスズスチレンなどが挙げられる。
【0063】
そして、スズ変性BR中のスズ原子の含有率は、50ppm以上が好ましく、60ppm以上がより好ましい。一方、3000ppm以下が好ましく、2500ppm以下がより好ましく、250ppm以下が更に好ましい。
【0064】
また、スズ変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。
【0065】
また、スズ変性BR中のビニル結合量は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。一方、スズ変性BRのビニル結合量は、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0066】
なお、上記したS変性BRやスズ変性BRは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0068】
(ハ)その他のゴム成分
また、その他のゴム成分として、必要に応じて、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)などのタイヤの製造に一般的に用いられるゴム(ポリマー)を含んでもよい。
【0069】
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)充填剤
本実施の形態において、ゴム組成物は、充填剤を含有することが好ましい。具体的な充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられ、この内でも、シリカをシランカップリング剤と併用して含有することが好ましく、また、必要に応じて、さらに、カーボンブラックを含有してもよい。
【0070】
(i)シリカ
ゴム組成物は、シリカを含むことが好ましい。シリカのBET比表面積は、良好な耐久性能が得られる観点から140m/g超が好ましく、160m/g超がより好ましい。一方、良好な低転がり抵抗性が得られる観点からは250m/g未満が好ましく、220m/g未満であることがより好ましい。なお、上記したBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定されるNSAの値である。
【0071】
また、ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量は、40質量部以上が好ましく、50質量部以上であるとより好ましく、60質量部以上であるとさらに好ましい。一方、170質量部以下が好ましく、130質量部以下であるとより好ましく、80質量部以下であるとさらに好ましい。
【0072】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。また、上記した含水ガラスなどを原料としたもの以外に、もみ殻などのバイオマス材用を原料としたシリカを用いてもよい。
【0073】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0074】
(ii)シランカップリング剤
シリカの使用に際しては、シランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0076】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、例えば、3質量部超、15質量部未満である。
【0077】
(iii)カーボンブラック
ゴム組成物は、必要に応じて、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であるとより好ましく、5質量部以上であるとさらに好ましい。一方、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であるとより好ましく、10質量部以下であるとさらに好ましい。
【0078】
カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCFおよびECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FTおよびMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPCおよびCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック)などを挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、例えば30m/g超、250m/g未満である。カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、例えば50ml/100g超、250ml/100g未満である。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定され、DBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定される。
【0080】
具体的なカーボンブラックとしては特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
(iv)その他の充填剤
ゴム組成物には、上記したシリカ、カーボンブラックの他に、タイヤ工業において一般的に用いられている、例えば、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤をさらに含有してもよい。これらの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
【0082】
(ロ)加硫ゴム粉末
前記したように、ゴム組成物には、緩衝材として機能する材料として、加硫ゴムを粉砕することにより作製された加硫ゴム粉末を含有させる。加硫ゴム粉末としては、使用済みのタイヤをロール機やグラインダー等を用いて粉砕した後、所定の粒径にふるい分けされた市販品の加硫ゴム粉末を使用してもよいが、必要に応じて、別途配合されたゴム組成物を加硫して、粉砕、ふるい分けされた加硫ゴム粉末を使用してもよい。なお、前記したように、加硫ゴム粉末の粒度は、JIS Z8801-1に規定された試験用ふるいで、30メッシュパスよりも細かく、50メッシュパスよりも粗い粒度であることが好ましい。
【0083】
前記したように、加硫ゴム粉末の含有は、タイヤの補強性を低下させ、タイヤの耐久性の低下を招く恐れがある。このため、加硫ゴム粉末のゴム成分100質量部に対する含有量としては、例えば、10質量部以上、100質量部以下であることが好ましく、15質量部以上、70質量部以下であるとより好ましく、20質量部以上、40質量部以下であるとさらに好ましい。
【0084】
このような含有量とすることにより、断面において加硫ゴム粉末が占める面積比率Srを、上記した5%以上、50%以下とすることができる。なお、断面において加硫ゴム粉末が占める面積比率Srは、例えば、トレッド部から切り出したサンプルを、SEM(走査電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)などを用いて観察することにより求めることができる。
【0085】
(ハ)可塑剤成分
ゴム組成物は、必要に応じて、可塑剤成分を用いることが好ましい。ゴム成分100質量部に対する可塑剤成分の含有量としては、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であるとより好ましく、45質量部以上であるとさらに好ましい。これにより、混合時に加硫ゴム粉末を分散させ、緩衝材としての効果を得やすいだけでなく、ゴム組成物全体も動きやすくなる為、ノイズ性能を向上させやすくすることができる。一方で、上限としては特に限定されないが、100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であるとより好ましく、60質量部以下であるとさらに好ましい。これにより、ゴムを混合する際、粘度の低下を招きにくくなり、加硫ゴム粉末を分散させやすくすることができる。なお、ここでの可塑剤成分とは、プロセスオイルやゴム成分の進展油、液状ゴム、樹脂成分など、ゴム組成物を可塑化させるものを指す。
【0086】
(ニ)樹脂成分
ゴム組成物は、加工性(粘着性付与)の観点から、必要に応じて、樹脂成分を含有することが好ましい。樹脂成分は、常温で固体であっても、液体であってもよく、具体的な樹脂成分としては、例えば、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂が挙げられ、2種以上を併用しても良い。樹脂成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、15質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であるとより好ましく、30質量部以上であるとさらに好ましい。一方、60質量部以下であることが好ましく、55質量部以下であるとより好ましく、50質量部以下であるとさらに好ましい。
【0087】
ロジン系樹脂は、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とする樹脂である。このロジン系樹脂(ロジン類)は、変性の有無によって分類可能であり、無変性ロジン(未変性ロジン)、ロジン変性体(ロジン誘導体)に分類できる。無変性ロジンとしては、トールロジン(別名トール油ロジン)、ガムロジン、ウッドロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、その他の化学的に修飾されたロジンなどが挙げられる。ロジン変性体は無変性ロジンの変性体であって、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、ロジンのアミド化合物、ロジンのアミン塩などが挙げられる。
【0088】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体およびこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0089】
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物等が例示できる。
【0090】
クマロン系樹脂の中でも、クマロンインデン樹脂が好ましい。クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロンおよびインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0091】
クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1.0質量部超、50.0質量部未満である。
【0092】
クマロンインデン樹脂の水酸基価(OH価)は、例えば、15mgKOH/g超、150mgKOH/g未満である。なお、OH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0093】
クマロンインデン樹脂の軟化点は、例えば、30℃超、160℃未満である。なお、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0094】
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂およびそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素およびその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0095】
ポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。テルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した樹脂、および該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物およびホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂、および該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
【0096】
「C5樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0097】
「C9樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレン(AMS樹脂)もしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0098】
「C5C9樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0099】
アクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、無溶剤型アクリル系樹脂を使用できる。
【0100】
無溶剤型アクリル系樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、メタクリルおよびアクリルを意味する。
【0101】
上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
【0102】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
【0103】
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。また、上記アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していても良い。
【0104】
樹脂成分としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0105】
(ホ)加硫活性剤
ゴム組成物は、必要に応じて、加硫活性剤を含有していることが好ましい。これにより、架橋反応に強い活性作用が発揮されて加硫速度がアップし、架橋密度とリバージョン(加硫戻り)抵抗を増大させることができる。具体的な加硫活性剤としては、例えば、ストラクトール社製のアクチベータ73A(脂肪族・芳香族カルボン酸の亜鉛石けん混合物)などを使用できる。なお、加硫活性剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上、3質量部以下が好ましく、0.2質量部以上、2.5質量部以下であるとより好ましく、0.3質量部以上、2質量部以下であるとさらに好ましい。
【0106】
(ヘ)老化防止剤
ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部超、10質量部未満である。
【0107】
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
なお、老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0109】
(ト)滑剤
ゴム組成物は、滑剤を含んでもよい。滑剤としては、ステアリン酸などの脂肪酸誘導体ベースの滑剤が好ましく、具体的には、例えば、ステアリン酸としては、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用でき、また、ストラクトール社製のストラクトールWB16などを使用することもできる。なお、加硫活性剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上、3質量部以下が好ましく、0.5質量部以上、2.5質量部以下であるとより好ましく、1.0質量部以上、2.0質量部以下であるとさらに好ましい。
【0110】
(チ)酸化亜鉛
ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、15質量部未満である。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0111】
(リ)ワックス
ゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5~20質量部、好ましくは1.0~15質量部、より好ましくは1.5~10質量部である。
【0112】
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
なお、ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0114】
(ヌ)架橋剤および加硫促進剤
ゴム組成物は、硫黄等の架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、10.0質量部未満である。
【0115】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
なお、硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0117】
そして、ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.3質量部超、10.0質量部未満である。
【0118】
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
(ル)その他
ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、脂肪酸金属塩、カルボン酸金属塩、有機過酸化物等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
【0120】
(2)ゴム組成物の作製
前記ゴム組成物は、一般的な方法、例えば、ゴム成分とシリカ等のフィラーとを混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物と架橋剤とを混練する仕上げ練り工程とを含む製造方法により作製される。
【0121】
混練は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどの公知の(密閉式)混練機を用いて行うことができる。
【0122】
ベース練り工程の混練温度は、例えば、50℃超、200℃未満であり、混練時間は、例えば、30秒超、30分未満である。ベース練り工程では、上記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、オイル等の軟化剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤などを必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0123】
仕上げ練り工程では、前記ベース練り工程で得られた混練物と架橋剤とが混練される。仕上げ練り工程の混練温度は、例えば、室温超、80℃未満であり、混練時間は、例えば、1分超、15分未満である。仕上げ練り工程では、上記成分以外にも、加硫促進剤、酸化亜鉛等を必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0124】
2.タイヤの製造
本発明のタイヤは、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤとして作製することができる。
【0125】
具体的には、成形ドラム上に、タイヤの気密保持性を確保するための部材としてのインナーライナー、タイヤの受ける荷重、衝撃、充填空気圧に耐える部材としてのカーカス、カーカスを強く締付けトレッドの剛性を高める部材としてのベルト部材などを巻回し、両側縁部にカーカスの両端を固定すると共に、タイヤをリムに固定させるための部材としてのビード部を配置して、トロイド状に成形した後、外周の中央部にトレッド、径方向外側にサイドウォールを貼り合せてサイド部を構成させることにより、未加硫タイヤを作製する。
【0126】
その後、作製された未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。加硫工程は、公知の加硫手段を適用することで実施できる。加硫温度としては、例えば、120℃超、200℃未満であり、加硫時間は、例えば、5分超、15分未満である。
【0127】
以上のように、本実施の形態に係るタイヤは、時速80km以上の高速走行時においても、十分なノイズ性能を有する空気入りタイヤであるため、内燃機関を持たないモータ駆動の自動車に装着された場合、特に顕著な効果を発揮することができ好ましい。
【実施例
【0128】
以下、実施例により、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、以下では、第1のゴム組成物をキャップゴム層、第2のゴム組成物をベースゴム層として2層構造のトレッド部を作製し、サイズ205/55R16のタイヤを製造した。
【0129】
1.ゴム組成物の製造
タイヤの製造に先立って、まず、トレッド部形成用のゴム組成物を製造した。
【0130】
(1)配合材料
まず、以下に示す各配合材料を準備した。
【0131】
(a)ゴム成分
(イ)NR:TSR20
(ロ-1)BR-1:宇部興産社製のUBEPOL BR150B
(ロ-2)BR-2:旭化成ケミカルズ社製のN103
(ハ)SBR:JSR社製のSBR1502(乳化重合SBR)
【0132】
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)カーボンブラック:三菱化学社製のダイヤブラックN220
(ロ)シリカ:エボニック社製のウルトラシルVN3
(ハ)シランカップリング剤:デグサ社製のSi266
(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
(ニ)ワックス:日本精蝋社製のオゾエース0355
(ホ)酸化亜鉛:三井金属鉱業社製の亜鉛華1号
(ヘ-1)加硫ゴム粉末-1:シリカ分40wt%の加硫ゴム粉末(製法は次段落参照)
(ヘ-2)加硫ゴム粉末-2:シリカ分10wt%の加硫ゴム粉末(製法は次段落参照)
(ト)加硫活性剤:ストラクトール社製のアクチベータ73A
(脂肪族・芳香族カルボン酸の亜鉛石けん混合物)
(チ)滑剤:ストラクトール社製のストラクトールWB16
(リ)ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
(ヌ-1)老化防止剤-1:大内新興化学工業社製のノクラック 6C
(N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
(ヌ-2)老化防止剤-2:老化防止剤-2:川口化学工業社製のアンテージRD
(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)
(ル)オイル:H&R社製のVIVATEC NC500
(アロマ系プロセスオイル)
(ヲ-1)樹脂-1:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85
(AMS樹脂:α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)
(ヲ-2)樹脂-2:JXTGエネルギー社製のT-REZ OP501
(水添DCPD系樹脂)
(ヲ-3)樹脂―3:ヤスハラケミカル社製のテルペンスチレンレジンTO125
(芳香族変性テルペン樹脂)
(ワ)架橋剤および加硫促進剤
硫黄:細井化学工業社製の5%オイル硫黄
加硫促進剤-1:大内新興化学工業社製のノクセラー CZ-G(CBS)
(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤-2:大内新興化学工業社製のノクセラー D(DPG)
(1,3-ジフェニルグアニジン)
【0133】
(c)加硫ゴム粉末の製造
上記した加硫ゴム粉末は、以下の手順に従って製造した。
【0134】
まず、表1に示す2つの配合内容に従い、それぞれ、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、その後、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込んで、2種類の混練物を得た。なお、各配合量は、質量部である。
【0135】
次に、得られた混練物のそれぞれを、170℃×20分間の条件で加硫して、ゴム板を得た。その後、得られたゴム板のそれぞれをロール粉砕し、30メッシュのふるいにかけることにより、2種類の加硫ゴム粉末(シリカ分40wt%の加硫ゴム粉末-1、シリカ分10wt%の加硫ゴム粉末-2)を得た。
【0136】
【表1】
【0137】
(2)ゴム組成物の製造
表2~表4に示す各配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得た。なお、各配合量は、質量部である。
【0138】
次に、得られた混練物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、各配合のゴム組成物を得た。
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
2.タイヤの製造
表2、表3に示す各配合の内、配合1~配合20のゴム組成物をキャップゴム層、表4に示す配合21、配合22のゴム組成物をベースゴム層として所定の形状に押出加工した後、得られたキャップゴム層とベースゴム層とを表5~表7に示すように組み合わせて、2層構造のトレッド部を作製し、他のタイヤ部材と共に貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して、実施例1~実施例5および比較例1~比較例14の各試験用タイヤを製造した。
【0143】
3.パラメータの算出
次に、得られた各試験用タイヤについて、以下の各パラメータを求めた。
【0144】
(1)加硫ゴム粉末の面積比率
まず、各試験用タイヤのキャップゴム層およびベースゴム層から、トレッド面に並行な面が観察用断面となるように観察用サンプルを切り出した。
【0145】
次に、サンプルの観察用断面を、走査型電子顕微鏡(ThermoFisher社製 Teneo)を用いて、加速電圧15kVで撮像して、倍率50倍の電子顕微鏡画像を得た。
【0146】
次に、得られた電子顕微鏡画像の2.54mm×1.69mmの範囲において、ゴム粉に該当するドメインの面積を算出し、切断面全体の面積に対して占める比率を算出した。これを、1サンプルにつき3視野行い、その平均値を加硫ゴム粉末の面積比率とした。
【0147】
結果を、表5~表7に示す。なお、同一の配合を用いた試験用タイヤについては、それぞれに対して同様の測定を行った後、得られた結果を再度平均化して、各配合における加硫ゴム粉末の面積比率とした。
【0148】
(2)損失正接
各試験用タイヤのキャップゴム層から、タイヤ周方向が長辺となるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ2mmで切り出して、測定用ゴム試験片を作製した。各ゴム試験片について、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で損失正接(0℃tanδ)を測定した。
【0149】
結果を、表5~表7に示す。なお、同一の配合を用いた試験用タイヤについては、それぞれに対して同様の測定を行った後、得られた結果を平均化して、各配合における0℃tanδとした。
【0150】
(3)クラウン部における厚み
各試験用タイヤのキャップゴム層のクラウン部を切断し、切断面におけるキャップゴム層の厚みをノギスを用いて測定した。結果を、表5~表7に示す。
【0151】
4.性能評価試験(ノイズ性能評価試験)
各試験用タイヤを車両(国産のFF車、排気量2000cc)の全輪に装着させて、前輪の内圧が230kPa、後輪の内圧が220kPaとなるように空気を充填した後、乾燥路面のテストコース上を、100km/hの速度で走行し、その際における車内でのノイズの大きさについて、ドライバーが5段階で官能検査した。
【0152】
評価は、20人のドライバーによる評価を合計した後、比較例12における合計点を100として指数化し、その逆数で評価した。結果を、表5~表7に示す。数値が大きいほど、高速走行時のノイズ性能が優れていることを示す。
ノイズ性能=[(比較例12の評価点)/(試験用タイヤの評価点)]×100
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
【表7】
【0156】
表5~表7に示す結果より加硫ゴム粉末を含有し、0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(0℃tanδ)が、0.30超であるゴム組成物を用いて、トレッド部の最外層(キャップゴム層)のクラウン部における厚みG(mm)が5mm超となるように形成されており、トレッド部の最外層の断面において、加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)が、5%以上、50%以下であり、さらに、トレッド部の最外層のクラウン部における厚みG(mm)に対する加硫ゴム粉末が占める面積比率Sr(%)の割合(Sr/G)が、0.3超である場合、時速80km以上の高速走行時においても、十分なノイズ性能を有する空気入りタイヤを提供できることが分かる。
【0157】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。