(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20250630BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20250630BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20250630BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20250630BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/19
A61K8/36
A61K8/37
A61Q1/12
(21)【出願番号】P 2022507223
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009315
(87)【国際公開番号】W WO2021182473
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020040081
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】池田 詩織
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168145(JP,A)
【文献】特開2003-306515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/44
A61K 8/36
A61K 8/19
A61K 8/37
A61Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アシルリジン、
(B)脂肪酸金属塩、
(C)25℃で液状の油剤又は油剤混合物、および
(D)無機粉体
を含有する固形粉末化粧料であって、
成分(A)と成分(B)の合計含有量が固形粉末化粧料全体の10~40質量%であり、
成分(C)の含有量が固形粉末化粧料全体の1~6%質量%であり、
成分(A)~(C)の含有量が((A)+(B))×(C)=40~150の関係を満た
し、
成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))が2~15であり、
さらに(E)球状粉体を2~10質量%含む固形粉末化粧料。
【請求項2】
成分(A)がラウロイルリジンである、請求項
1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
成分(E)
の含有量が3~9質量%
である、請求項1
または2に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
成分(B)が、ミリスチン酸金属塩およびステアリン酸金属塩から選ばれる1種または2種である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
成分(C)の25℃における粘度が180mPa~3000mPaである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
破断強度が45g以上である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料において、成形性を付与するために従来油剤の配合量を増やす手法がとられていた。しかし、十分な成形性を得る程度に油剤を配合すると、ケーキが硬くなったり、パフに取りにくくなる課題があった。一般に、柔らかさやパフへの取りやすさなどの使用感を改良しようとすると、成型性に加え強度(耐衝撃性)が犠牲になってしまうことが通常であった。
特開2013-209346号公報は、成型性及び耐衝撃性に優れ、塗布時になめらかな感触で、肌への密着性に優れ、粉感を抑制し、毛穴などの凹凸を目立ちにくくする固形粉末化粧料を開示するが、フッ素処理した粉体を使用して実施されており、より安価な未処理粉体での実施に課題が残されていた。
また、特開2017-197496号公報に記載の粉末化粧料は、柔らかさと耐衝撃性の両立の観点で課題が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-209346号公報
【文献】特開2017-197496号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明は、柔らかさ及びパフへの取りやすさと、成型性及び強度(耐衝撃性)を両立した固形粉末化粧料を提供することを目的とする。
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、油剤の配合量を抑え、アシルリジンを高配合することで、成形性を損なうことなく柔らかいケーキを調製することができた。また、脂肪酸金属塩を併用し、これらを最適な配合比で配合することで、パフへの取りやすさ、やわらかさ、と強度(耐衝撃性)の両立を可能にすることができた。さらには、各成分の配合量を調整することで、使用時のしっとり感を改良することができた。すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]
(A)アシルリジン、
(B)脂肪酸金属塩、
(C)25℃で液状の油剤又は油剤混合物、および
(D)無機粉体
を含有する固形粉末化粧料であって、
成分(A)と成分(B)の合計含有量が固形粉末化粧料全体の10~40質量%であり、
成分(C)の含有量が固形粉末化粧料全体の1~6%質量%であり、
成分(A)~(C)の含有量が((A)+(B))×(C)=40~150の関係を満たす、固形粉末化粧料。
[2]
成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))が1~15である、[1]に記載の固形粉末化粧料。
[3]
成分(A)がラウロイルリジンである、[1]または[2]に記載の固形粉末化粧料。
[4]
さらに(E)球状粉体を2~10質量%含む[1]~[3]のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
[5]
成分(B)が、ミリスチン酸金属塩およびステアリン酸金属塩から選ばれる1種または2種である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
[6]
成分(C)の25℃における粘度が180mPa~3000mPaである、[1]~[5]のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
[7]
破断強度が45g以上である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施例及び比較例で得られた固形粉末化粧料について、(A)+(B)と(C)との関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の固形粉末化粧料は、以下の成分(A)~(D)を含む。
(A)アシルリジン、
(B)脂肪酸金属塩、
(C)25℃で液状の油剤又は油剤混合物、および
(D)無機粉体
【0008】
成分(A)のアシルリジンのアシル基を構成するアシル成分としては、直鎖または分岐鎖の、飽和または不飽和脂肪酸より誘導され、または誘導され得るアシル基、例えばオクタノイル基、カプロイル基、ノナノイル基、カプリノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、パルミトレオイル基、オレオイル基、リノレオイル基等の単一脂肪酸アシル基、ヤシ油脂肪酸アシル、硬化牛脂脂肪酸アシル等の天然系混合脂肪酸アシル基の他、安息香酸アシル基等の芳香族カルボン酸アシル基等が挙げられる。このようなアシル基は脂肪酸から誘導することができるが、脂肪酸以外の原料物質(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、酸ハライド、酸無水物等)から同様に誘導することもできる。ラウロイル基、オクタノイル基好ましく、ラウロイル基がより好ましい。
アシルリジンとしては、C8からC20の炭素鎖長を有するN-アシルリジンが好ましく、C14からC18の炭素鎖長を有するN-アシルリジンがより好ましい。
また、少なくとも一個のアミノ基がアシル化されていればよいが、モノ-N-アシル誘導体の形態がよい。成分(A)がNε-アシル-L-リジンであることがより好ましい。
固形粉末化粧料中の成分(A)の含有量は、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは5~20質量%である。
【0009】
成分(B)の脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸成分としては、直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪酸のいずれでもよい。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リシノール酸等が挙げられ、ミリスチル酸、ステアリン酸が好ましい。
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、2価又は3価の非アルカリ金属のいずれでもよい。例えば、カルシウム、マグネシウム、リチウム、バリウム、亜鉛等が挙げられる。
脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム等が挙げられる。
固形粉末化粧料中の成分(B)の含有量は、好ましくは2~10質量%であり、より好ましくは5~10質量%である。
【0010】
本発明の固形粉末化粧料においては、成分(A)と成分(B)の合計含有量は、固形粉末化粧料全体の10~40質量%であり、好ましくは10~35質量%、より好ましくは10~32質量%、より好ましくは10~30質量%である。成分(A)と成分(B)の合計含有量をこのような範囲とすることによって、柔らかさ(使用感)に優れるとともに、十分な強度を有することができる。
また、本発明の固形粉末化粧料においては、成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))は、好ましくは1~15であり、より好ましくは2~15である。成分(A)と成分(B)の質量比をこのような範囲とすることによって、柔らかさ(使用感)としっとり感に優れるとともに、十分な強度を有することができる。
【0011】
成分(C)の油剤は、25℃において液状であるか、複数の油剤成分を使用する場合には油剤混合物として25℃において液状であれば特に限定されない。成分(C)の油剤としては、例えば、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール;スクワラン、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、イソドデカン等の炭化水素油;ホホバ種子油、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソステアリル、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、安息香酸アルキル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、ラウロイルグルタミン酸(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルサルコシンイソプロピル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ミリストイルメチルベータ-アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)、カプリン酸グリセリル等の天然または合成のエステル油;ジグリセリド;コーン油、オリーブオイル、ヒマワリ油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン等の天然または合成のトリグリセリド;ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、リンゴ酸ジイソステアリル、水添ポリデセン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル等の高粘性油;ジメチコン、メチコン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、フェニルトリメチコン、PEG-10 ジメチコン等のシリコーン油;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤;ミネラルオイル;等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(C)の25℃における粘度は180mPa~3000mPaであることが好ましい。複数の成分(C)を含む場合は、混合後の粘度がこの範囲であることが好ましい。このような油剤を含むことによって、粉体層と油層がよく混ざり合い、耐衝撃性に優れるものとすることができる。25℃における粘度は公知の方法で測定することができ、例えばB型粘度計を用い、適切なローターを選択することで測定することができる。
固形粉末化粧料中の成分(C)の含有量は、1~6質量%であり、好ましくは1~5質量%である。固形粉末化粧料中の成分(C)の含有量をこのような範囲とすることによって、成型性に優れるとともに、柔らかい感触のものとすることができる。
【0012】
本発明の固形粉末化粧料においては、成分(A)~(C)の含有量は、((A)+(B))×(C)=40~150の関係を満たす。((A)+(B))×(C)は、好ましくは50~150である。((A)+(B))×(C)をこのような範囲とすることによって、柔らかさ(使用感)に優れるとともに、しっとり感と十分な強度を有することができる。
【0013】
成分(D)の無機粉体としては、例えば、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、微粒子酸化鉄、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化コバルト、カーボンブラック、群青、紺青、酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛、酸化チタン、微粒子酸化チタン、シリカ、多孔性シリカ、アルミナ、酸化セリウム、窒化ホウ素、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭化珪素、色素、レーキ、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ベントナイト、板状硫酸バリウム、バタフライ状硫酸バリウム、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。無機粉体は、さらに、上述のものの複合体(例えば、シリカ被覆酸化チタン、マイカ被覆酸化チタン、チタン被膜マイカ)であってもよく、上述のものにシリコーン処理、フッ素化合物処理、シランカップリング剤処理、シラン処理、有機チタネート処理、脂肪酸処理(例えば、ステアロイルグルタミン酸処理)、金属石鹸処理(例えば、ステアリン酸アルミニウム処理)、油剤処理、アミノ酸処理等の表面処理を施したもの(例えば、シリコーン処理タルク、シリコーン処理マイカ、シリコーン処理セリサイト、シリコーン処理酸化チタン、シリコーン処理赤色酸化鉄、シリコーン処理黄酸化鉄、シリコーン処理黒酸化鉄、ステアロイルグルタミン酸処理酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸処理黄酸化鉄、ステアロイルグルタミン酸処理赤色酸化鉄、ステアロイルグルタミン酸処理黒酸化鉄、ステアリン酸アルミニウム処理酸化チタン等)でもよい。成分(D)としてタルクを含有した本発明の化粧料組成物では、本発明の効果がより顕著に表れるため、成分(D)としてタルクを用いることが好ましい。
【0014】
本発明の固形粉末化粧料は、さらに成分(E)の球状粉体を含んでもよい。ただし、成分(E)は成分(D)に該当するものを除く。球状粉体は、塗布時における伸び広がりを向上させるための成分である。具体的には、無水ケイ酸、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、架橋型シリコーン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
固形粉末化粧料中の成分(E)の含有量は、好ましくは2~10質量%であり、より好ましくは3~9質量%である。成分(E)をこのような含有量で固形粉末化粧料中に含有させることによって、化粧料中に適度な空隙が生まれ、パフへの取りやすさが向上する。
【0015】
上記成分を含む固形粉末化粧料は、破断強度が45g以上であることが好ましく、50g以上であることがより好ましい。このような破断強度を有する固形粉末化粧料は、落下させたときに割れにくい。
【0016】
本発明の固形粉末化粧料は、肌や唇の色のコントロールや着色、紫外線遮蔽を目的とする種々の用途に用いることができる。本発明の固形粉末化粧料としては、例えば容器に充填後に圧縮成型するか、又は溶剤を除去することによって形成される固形粉末化粧料等が挙げられる。本発明の固形粉末化粧料の用途としては、ファンデーション、スティックファンデーション、おしろい、口紅、ほお紅、アイカラー、アイブロウ、化粧下地、日中用美容液、サンスクリーン、コンシーラー、ブロンザー、リップカラー、BBクリーム等が挙げられる。本発明の固形粉末化粧料の特徴が特に生かされるのは無機粉体を比較的大量に配合する用途であり、そのような用途に用いる固形粉末化粧料としては、例えば、固形粉末ファンデーション等の固形粉末化粧料、ルースパウダーファンデーションやおしろい等の粉末化粧料、各種サンスクリーン、コンシーラー、化粧下地等が挙げられる。
【0017】
本発明の固形粉末化粧料には、上記成分(A)~(E)に加え、通常、化粧料(医薬外用剤、医薬部外品を含む)に使用し得るその他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合しても良い。その他の成分としては、例えば、水、界面活性剤、アミノ酸、アミノ酸誘導体、低級アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、グリセリン、ブチレングリコール)、糖アルコールおよびそのアルキレンオキシド付加物、水溶性高分子(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、被膜形成性高分子、ゲル化剤(例えば、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド)、保湿剤(例えば、ピロリドンカルボン酸ナトリウム)、殺菌剤および抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗真菌剤、角質軟化剥離剤、皮膚着色剤、ホルモン剤、紫外線吸収剤、育毛剤、発汗防止剤および収斂活性成分(例えば、ピロリドンカルボン酸亜鉛塩)、汗防臭剤、ビタミン剤、血流促進剤(血管拡張剤、血行促進剤)、生薬、植物抽出物、pH調整剤、キレート剤(例えば、EDTA-2Na)、粘度調整剤、パール化剤、天然香料、合成香料、色素および顔料(例えば、赤202号、青1号)、酸化防止剤(例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ペンタガロイルグルコシド)、防腐剤(例えば、メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール)、乳化剤、増粘剤、脂肪およびワックス、シリコーン化合物、香油等が挙げられる。
【0018】
本発明の固形粉末化粧料は、成分(A)~(E)及び必要に応じてその他の成分を、公知の方法で混合することによって製造することができる。例えば、粉体である成分(A)、(B)及び(D)、任意にさらに(E)に、成分(C)及び必要に応じてその他の成分を加えた後、それらをヘンシェルミキサー等を用いて混合し、得られた混合物を篩いがけすることによって、本発明の固形粉末化粧料を製造することができる。また、公知の方法によって成分(D)の一部または全量を、成分(A)の一部または全量で被覆してから、成分(A)で被覆された成分(D)と、残りの成分(A)(被覆に成分(A)の一部を使用した場合)、残りの成分(D)(成分(D)の一部を被覆した場合)、並びに成分(B)及び(C)、並びに必要に応じてその他の成分とを混合することによって、本発明の固形粉末化粧料を製造することができる。成分(A)で成分(D)を被覆する方法としては、衝撃混合装置、せん断混合装置等を利用する乾式処理法、成分(A)の強アルカリ溶解液を成分(D)のスラリーに滴下した後、酸で中和し、ろ過、乾燥させるといった湿式処理法が挙げられる。成分(A)で成分(D)を被覆する場合、被覆に使用する成分(A)の量は、被覆される成分(D)100重量部に対して、20重量部以下であることが望ましい。
【0019】
次に、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
<実施例1~6及び比較例1~7>
表1に示す粉体成分を、フードプロセッサーを用いて混合し、さらに油剤成分を加えて混合した。得られた混合物を149μmのメッシュの篩いに通し、下記の通りに、成型性、強度(耐衝撃性)、柔らかさ、取れ、及びしっとり感の評価を行った。結果を表1に示す。
【0021】
<油の粘度>
成分(C)を混合し、B型粘度計:DVL-B(東京計器社製)を用い、25℃に設定した室内で、測定する混合物の粘度領域に応じて、No.2またはNo.4のローターにて、回転数を30rpmとし、30秒間測定を実施した。
【0022】
<評価>
(1)成形性の評価
2×4cmに0.4mPaの力で圧縮成形した固形粉末化粧料を作製し、型からはずした際に、固形状を保つかどうかを確認した。
<評価基準>
A:保つ
D:崩れる
【0023】
(2)強度(耐衝撃性)の評価
2×4cmに0.6mPaの力で圧縮成形した固形粉末化粧料を作製し、FUDOHレオメーター社製のレオメーターを用いて破断に必要な荷重(破断強度)を測定した。得られた測定値に基づき、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
A:荷重(破断強度)が50g以上である
B:荷重(破断強度)が45g以上50g未満である
C:荷重(破断強度)が40g以上45g未満である
D:荷重(破断強度)が40g未満または測定不可である
【0024】
(3)柔らかさの評価
Φ58の丸い金皿に0.6mPaの力で圧縮成形した固形粉末化粧料を作製し、テクロック社製のゴム硬度計を用いて、針進入試験をしたときの硬度を測定した。得られた測定値に基づき、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
A:硬度が13未満である
B:硬度が13以上16未満である
C:硬度が16以上20未満である
D:硬度が20以上である
【0025】
(4)取れの評価
Φ58の丸い金皿に0.6mPaの力で圧縮成形した固形粉末化粧料を作製し、トリニティーラボ社製の動摩擦測定器を用いて、市販のファンデーションパフを2往復させたときの固形粉末化粧料の取れ量を測定した。得られた測定値に基づき、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
A:重量変化が7.0mg以上である
B:重量変化が6.0mg以上7.0mg未満である
C:重量変化が5.0mg以上6.0mg未満である
D:重量変化が5.0mg未満である
【0026】
(5)しっとり感の評価
専門パネラー5名に、実施例の各固形粉末化粧料をそれぞれ指で取り、手の甲に塗布した際のしっとり感を、下記の官能評価基準により評価させて点数化させた。5名の専門パネラーの官能評価点を合計し、下記評価基準に基づいてしっとり感を評価した。
<官能評価基準>
A:明らかに、しっとり感がある
B:ややしっとり感がある
C:やや粉粉しい
D:明らかに粉粉しい
【0027】
(6)総合評価
成型性、強度(耐衝撃性)、柔らかさ、及び取れの各評価項目において、評価Aを5点、評価Bを2点、評価Cを1点、評価Dを0点として、評価点の合計を求め、総合点が17点以上を実施例とした。
【0028】
【0029】
【0030】
※表1及び2中「顔料等その他の無機粉体」としては以下の成分からなる組成物を用いた。
窒化ホウ素 1質量部
合成金雲母 1質量部
顔料酸化チタン 1質量部
酸化鉄(赤) 0.5質量部
酸化鉄(黄) 1.2質量部
酸化鉄(黒) 0.3質量部
【0031】
実施例及び比較例で用いた各成分は以下の通りである。
【表3】
【0032】
A+Bが固形粉末化粧料全体の10%未満である比較例1は強度において劣っていた。またA+Bが固形粉末化粧料全体の40%を超える比較例2は柔らかさにおいて劣っていた。
Cが0の比較例4は、成形性が著しく低く形状を保つことができなかった。Cの含有量が6質量%の実施例5は、柔らかさ、しっとり感においてやや評価が下がった。上限は6%程度が好ましくいことが示唆された。Cの含有量が6質量%を超える比較例3は、柔らかさにおいて劣っていた。Cの含有量は実施例1~3より、5%以下がより好ましいことが示唆された。((A)+(B))×(C)が40~150の範囲にある実施例1~5は成形性、強度、取れやすさ、柔らかさのすべての評価において優れていることが分かった。((A)+(B))×(C)が50~150の範囲である実施例1と2は、さらに使用時のしっとり感に優れていることが分かった。
なお、A+Bを固形粉末化粧料全体の10~40質量%にしていても、A/Bを1~15の範囲外にした場合、しっとり感が失われる可能性がある。A/Bが1の実施例3よりも、A/Bが2の実施例1のほうが、しっとり感が高かった。よってA+Bを固定した場合、A/Bがより大きいほうが、より良好なしっとり感を得られることが示唆される。