(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】下着
(51)【国際特許分類】
A41C 1/00 20060101AFI20250630BHJP
A41B 9/02 20060101ALI20250630BHJP
A41B 9/04 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
A41C1/00 F
A41B9/02 Q
A41B9/04 G
(21)【出願番号】P 2023214813
(22)【出願日】2023-12-20
【審査請求日】2024-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522430523
【氏名又は名称】株式会社AKS Therapy Studio
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 義弘
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3234606(JP,U)
【文献】特開2017-155352(JP,A)
【文献】特開2003-239105(JP,A)
【文献】特開2003-135526(JP,A)
【文献】登録実用新案第3134739(JP,U)
【文献】特開2003-64504(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078005(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C1/00-5/00
A41B9/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する身頃と、前記身頃を使用者の腰位置に保持する腰保持部と、を備える下着であって、
前記身頃は、前身頃と、前記前身頃と連続する後身頃と、前記前身頃と前記後身頃とを使用者の股座位置において接続する股身頃と、を有し、
前記身頃の伸縮度合いを制御する伸縮部が所定位置に配置され、
前記伸縮部は、前記後身頃の上において、前記股身頃と前記腰保持部とを接続する脊椎伸縮部と、
前記後身頃の上において、前記前身頃と接続する接続伸縮部と、を有し、
前記脊椎伸縮部は、着用時に使用者の脊椎に沿うように配置される、前記後身頃よりも弾性が高い弾性帯と
、前記弾性帯の中途と前記腰保持部とを接続する分岐帯と、を含み、
前記接続伸縮部は、前記前身頃から前記股身頃に延びる接続伸縮部本体と、前記接続伸縮部本体の中途から前記腰保持部に向けて分岐し、端部が前記分岐帯の端部と隣接する分岐接続部とを含む下着。
【請求項2】
前記伸縮部は、前記前身頃において、使用者の下腹部を覆うように配置される下腹伸縮部を有する
請求項1に記載の下着。
【請求項3】
前記腰保持部は、上端が筒状になる前記身頃の上端を取り囲むように配置され、
高弾性保持部と、前記前身頃の一部に設けられ、前記高弾性保持部よりも弾性が低い低弾性保持部とを有する請求項1または2に記載の下着。
【請求項4】
前記伸縮部は、前記前身頃において、使用者の下腹部を覆うように配置される下腹伸縮部を有し、
前記低弾性保持部は、前記下腹伸縮部と一体に設けられる
請求項3に記載の下着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢を含む身体機能の向上に用いられる下着に関する。
【背景技術】
【0002】
長時間歩行をしたり、立ったままの姿勢や座ったままの姿勢で長時間いたりすると、腰椎に過度な負担を掛け、脊椎管狭窄症や椎間板ヘルニアに繋がる場合がある。このような問題に鑑み、伸縮部材によって設けられ、腰椎の弯曲度合いを固定することで背骨を矯正する下着が種々開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の文献には、下着の後身頃にパワーネットからなるヨーク部材を設けて姿勢の改善に寄与するものが記載されているが、このヨーク部材が下着の側面及び後身頃の略全体を覆って骨盤回りを固定するため、締め付けにより着心地があまり良くない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、歩行時、立位及び座位における使用者の姿勢のサポートが可能で、使用感に優れる姿勢を含む身体機能向上用の下着の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、伸縮性を有する身頃と、前記身頃を使用者の腰位置に保持する腰保持部と、を備える下着であって、前記身頃は、前身頃と、前記前身頃と連続する後身頃と、前記前身頃と前記後身頃とを使用者の股座位置において接続する股身頃と、を有し、前記身頃の伸縮度合いを制御する伸縮部が所定位置に配置され、前記伸縮部は、前記後身頃の上において、前記股身頃と前記腰保持部とを接続する脊椎伸縮部を有し、前記脊椎伸縮部は、着用時に使用者の脊椎に沿うように配置される、前記後身頃よりも弾性が高い弾性帯を含む下着である。
このように脊椎伸縮部が配置されることで、立位及び座位においてそれぞれ伸縮具合が変更されるため、体勢に応じて使用者の姿勢のサポートが可能で、使用感に優れる姿勢を含む身体機能向上用の下着が提供される。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記脊椎伸縮部は、前記弾性帯の中途と前記腰保持部とを接続する分岐帯を含み、前記伸縮部は、前記前身頃において、使用者の下腹部を覆うように配置される下腹伸縮部を有する。また、前記伸縮部は、前記前身頃において、使用者の下腹部を覆うように配置される下腹伸縮部を有する。さらに、前記伸縮部は、前記股身頃と前記下腹伸縮部とを接続する接続伸縮部を有する。加えて、前記接続伸縮部は、中途で分岐し、分岐点から腰保持部に向けて延びる分岐接続部を含む。
このように、伸縮部は身頃上において所定位置に複数が協働するように設けられることで効果的な伸縮が行われ、全体の締め付けを抑えて効果的に姿勢のサポートができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記腰保持部は、上端が筒状になる前記身頃の上端を取り囲むように配置され、高弾性保持部と、前身頃の一部に設けられ、高弾性保持部よりも弾性が低い低弾性保持部とを有する。また、前記伸縮部は、前記前身頃において、使用者の下腹部を覆うように配置される下腹伸縮部を有し、前記低弾性保持部は、前記下腹伸縮部と一体に設けられる。
このような構成によって、腰回りにおいて保持しつつも使用者に係る腰回りの負担を和らげ、使用感に優れた姿勢のサポートができる。
【発明の効果】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、歩行時、立位及び座位における使用者の姿勢のサポートが可能で、使用感に優れる姿勢を含む身体機能向上用の下着を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る、下着の斜視説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、下着の展開図を表す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、履いていない状態の下着の正面図及び背面図である。
【
図4】本発明の変更例に係る、履いていない状態の下着の正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る、立位での使用に係る説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、座位での使用に係る説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る下着Xについて説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。また、出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また形状を構成する要素がその構成の目的を阻害しない範囲内で変形や長さ変更されているものを含むことを意味する概念である。また、本明細書における「弾性」は力を加えると伸縮する性質を表し、「弾性の高さ」は、その部品の弾性率を意味し、高いほど自然長からの伸縮に大きな力を要する。
なお、これらの図において、伸縮部3は実際には裏面に設けられているため視認できない部分を表面にあるように表現している。
【0012】
《第一の実施形態》
下着Xは、
図1に示すように、伸縮性を有する身頃1と、身頃1を使用者の腰位置に保持する腰保持部2と、を備える下着であって、身頃1は、前身頃11と、前身頃11と連続する後身頃12と、前身頃11と後身頃12とを使用者の股座位置において接続する股身頃13と、を有し、身頃1の伸縮度合いを制御する伸縮部3が所定位置に配置され、伸縮部3は、後身頃12の上において、股身頃13と腰保持部2とを接続する脊椎伸縮部31を有し、脊椎伸縮部31は、着用時に使用者の脊椎に沿って配置される、後身頃12よりも弾性が高い弾性帯311を含む。
なお、
図1(a)は、下着Xの前身頃側の斜視図を表し、
図1(b)は、後身頃側の斜視図を表す。
【0013】
身頃1は、いわゆるパンツを構成する伸縮性を有する布材であって、使用者の腹側を覆う前身頃11と、前身頃11と接続し、使用者の尻側を覆う後身頃12と、前身頃11と後身頃12とを接続し、使用者の股座位置を覆う股身頃13と、を有する。ここで、前身頃11と後身頃12とを接続する辺を身頃接続辺14とする。実施形態において身頃1は、スパッツ形状であり、使用者の太ももの一部まで覆うように設けられている。
【0014】
腰保持部2は、身頃1の上端と接続され、腰回りを取り囲んで一周するように設けられる弾性の部材である。腰保持部2は、締め付けを低減するために、高弾性保持部21と、高弾性保持部21よりも弾性が低い低弾性保持部22と、を有する。
【0015】
伸縮部3は、
図2に示すように身頃1の所定位置に取り付けられる弾性部材であり、下着Xにおいて、一枚の身頃1よりも弾性が高くなる部分である。取り付ける伸縮部3の材料としては、身頃1の生地よりも弾性が高いメッシュやパワーネット等のシート材や、弾性糸やゴムが含まれる帯状弾性部材や、身頃1を形成する弾性布地等、身頃1と重ねることでその部位の弾性を高められる種々の部材が想定され、これらの部材を二重に取り付けてもよい。なお、下着Xの裏面において、
図2は前身頃11と後身頃12が一側面でのみ接続され、股身頃13が分離されている状態にある展開図の模式図を表す。
【0016】
実施形態において、伸縮部3は縫合されることで身頃1と接合する。ここにおいて、伸縮部3はシート材の縁辺や帯状弾性部材の軸方向(伸縮がされる方向)に沿ってジグザグ縫いによって身頃1と接合され、伸縮部3の弾性が身頃1に確実に伝達できるようにしている。また、伸縮部3は身頃1の裏面に設けられ、身頃1よりも肌に対する摩擦力が強い部品によって形成、弾性の伝達効率をより高めていてもよい。
【0017】
伸縮部3は、身頃1の所定位置に配置される弾性部材であり、不使用時において自然長であり、使用時に使用者の腰回りの形状に応じて伸長・収縮するように設けられる。伸縮部3は、使用者の脊椎周辺の筋肉(例えば多裂筋)をサポートする脊椎伸縮部31と、前身頃11において、着用時に使用者の下腹部の筋肉(例えば腹横筋)をサポートする下腹伸縮部32と、前身頃11と後身頃12とを接続し、脊椎伸縮部31及び下腹伸縮部32の作用を補助する接続伸縮部33と、を有する。
このように、伸縮部3が身頃1の全体を覆わず、複数の部位に分かれて設けられることで、下着Xが使用者を強く締め付けず着心地をよくできる。
【0018】
前身頃11には、
図3(a)に示すように、折り返し部111を含み、その下方に下腹伸縮部32が設けられる。また、後身頃12には、
図3(b)に示すように、脊椎伸縮部31が腰保持部2の中心から股身頃13に向けてまっすぐに伸びており、その周辺を取り囲むように接続伸縮部33が設けられている。また、接続伸縮部33は、身頃接続辺14から後述する股辺121及び腰保持部2に向けて延在している。なお、折り返し部111は低弾性保持部22としても機能する。
【0019】
折り返し部111は、前身頃11の上端の辺が所定位置で折り返されて重複し、折り返しの端部が前身頃11と接続されて身頃1が二重になっている部分であって、高弾性保持部21よりも弾性が低くなるように設けられる。折り返し部111の折り返しの幅は、高弾性保持部21の幅よりも大きくして、弾性をより低くすることが好ましい。
【0020】
後身頃12はブーメラン様の形状であり、複数の縁辺を含む。この縁辺には、側面に設けられ前身頃11と接続する身頃接続辺14と、使用時に使用者の股間及び内腿に沿って位置する、曲線状の縁辺である股辺121と、使用時に使用者の足回りを覆う開口端辺となる略直線状の開口辺122と、を有する。
【0021】
股身頃13は、
図2に示すように略長方形状の部材であって、使用者の股と当接する。その内周面には、使用者が直接着用することができるように、クロッチが設けられていてもよい。直接着用することによれば、伸縮部3の伸縮作用が使用者の身体に直接作用するため好ましい。
【0022】
股身頃13において短手側の一辺は前身頃11の股辺121の中ほどと接続する前股接続辺131であり、前股接続辺131に相対する辺は後身頃12の股辺121の中ほどと接続する後股接続辺132である。また長手方向の辺は、身頃接続辺14の前身頃11と後身頃12とが接続しない部分と接続して身頃1のマチを形成するマチ辺133である。
【0023】
股辺121は、後身頃12の両端及び中心に設けられる弧状部分であって、湾曲している。後身頃12の両端に設けられる股辺121は、開口辺122付近においては後身頃12の中心に設けられる股辺121と接続し、他の部分は前股接続辺131と接続する。また、後身頃12の中心に位置する股辺121は、開口辺122付近においては両端に設けられる股辺121と接続し、他の部分は後股接続辺132と接続する。
【0024】
開口辺122は、身頃1において、腰保持部2と相対する端面に設けられる縁辺部分であって、前身頃11の股辺121の端部から、後身頃12の股辺121の端部にかけて延在する。開口辺122は、縫製されておらず、これにより使用時に足との間に段ができにくくなるため、下着としての着心地を改良できる。
【0025】
身頃接続辺14は、前身頃11の側部及び後身頃12の腰保持部2から股辺121にかけて延在する縁辺部分であって、低弾性保持部22、下腹伸縮部32とそれに重複する身頃1及びマチ辺133とそれぞれ接続する。なお、以上の股辺121や身頃接続辺14の接続は弾性の帯材(紐材であってもよい)を介して行うか、ジグザグに縫合されることで、身頃1の伸縮性を阻害しないことが好ましい。
【0026】
高弾性保持部21は、後身頃12の縁において腰回りを取り囲むように設けられる弾性を持つ帯状の部材である。低弾性保持部22は前身頃11の縁において、高弾性保持部21の両端と接続し、使用者の腹部に当たる位置に配置される。このように、腰保持部2の弾性に差をつけて設けることにより、腰回りを強固に保持しつつも使用者の腹部に負担をかけにくく、使用感を高められる。
【0027】
脊椎伸縮部31は、後身頃12の上に設けられ、股身頃13から腰保持部2に向けて伸びる帯状弾性部材である弾性帯311と、弾性帯311の中途と、腰保持部2とを接続する帯状弾性部材である分岐帯312と、を有する。
また、脊椎伸縮部31は、上述の複数の帯を補強するための弾性のシート材を複数含む。実施形態では、弾性帯311の両側に沿って設けられる帯状弾性部材である並行シート313と、弾性帯311と分岐帯312との間に設けられる分岐シート314と、並行シート313の下方から股辺121を覆うように設けられる股シート315と、を含む。
【0028】
弾性帯311は、腰保持部2の後身頃12における中心から股身頃13に向けて垂直に伸びる帯状弾性部材であり、腰保持部2と股身頃13とを最短距離で接続する。このように最短距離で接続することで使用者がどのような体勢になっても弾性を発揮できる。また、使用時に弾性帯311は使用者の脊椎に沿うため、脊椎の下部が前弯するように収縮する。ここにおいて弾性帯311の弾性は、少なくとも後身頃12の弾性よりも高く、好ましくは脊椎伸縮部31で最も高く、さらに好ましくは伸縮部3で最も高くなるように設けられ脊椎をサポートできるようにしている。
【0029】
分岐帯312は、後身頃12に左右対称に1本ずつ設けられ、一端が弾性帯311の中途と接続し、他端が腰保持部2の後身頃12から見た中心から離れた位置に接続している帯状弾性部材である。弾性帯311との接続位置は、弾性帯311軸方向全体に対して、腰保持部2から2/5程度下方に進んだ位置であり、弾性帯311と分岐帯312とのなす角は20°~40°程度とする。このように分岐帯312が設けられることで、身体が側方に傾いた時に直立に戻す方向に力が働き姿勢を改善できる。また、分岐帯312により、弾性帯311の伸縮が腰保持部2の収縮に作用し、特に弾性帯311が伸長したときに腰への保持力を高めることができる。また分岐帯312の弾性は弾性帯311よりも低く、弾性帯311よりも伸縮が起こりやすくしている。
【0030】
並行シート313は、後身頃12に左右対称に1本ずつ設けられ、一端が分岐帯312の弾性帯311側の端部と接続し、他端が接続伸縮部33に当たる位置まで延びる帯状の弾性シート部材である。これにより並行シート313は、耐久性を高めるとともに、弾性帯311の弾性を補強し脊椎のサポートをより的確に行う。また、弾性帯311において分岐帯312との接続点よりも上の部分と、下の部分における弾性の差を解消し、弾性帯311が適切に伸縮できるようにする。
【0031】
分岐シート314は、後身頃12に左右対称に1枚ずつ設けられる三角形状の弾性シート部材であり、弾性帯311、分岐帯312及び腰保持部2に囲われてなる。分岐シート314は、弾性帯311、分岐帯312及び後身頃12の間に挟まれて縫合され、分岐帯312の不用意な伸縮や隣接する身頃1のひずみを抑制し使用性能を高めている。
【0032】
股シート315は、後身頃12に左右対称に1枚ずつ設けられる弾性シート部材であり、股辺121の周辺を取り囲むように配置される。股シート315は、並行シート313の下端から連続して設けられ、弾性帯311の下端部とも接続している。さらに股シート315は、股辺121の中心から開口辺122の近傍にかけて股辺121と接続している。股シート315の一部は、接続伸縮部33と重複しており、重複していない部分は、接続伸縮部33の一部と股辺121の一部を二辺とする略三角形状の部分となる。脊椎伸縮部31が股辺121と幅広い領域において接続していることで、内腿から脊椎伸縮部31を作用させ、臀部の肉を持ち上げることで姿勢を改善できる。
【0033】
下腹伸縮部32は、前身頃11において、股身頃13に向けた略逆台形状に設けられている部材であって、下腹を下方から持ち上げる下腹シート321を有する。下腹伸縮部32は、下辺が股身頃13と接続し、側辺は身頃接続辺14と接続する。また、上辺には折り返し部111を挟むように高弾性保持部21が設けられる。
【0034】
下腹シート321は、略台形の部材であって、折り返し部111の直下に接続され、重複する身頃1と弾性を有する身頃接続辺14及びマチ辺133によって接続される。また、その側方は接続伸縮部33と接続する。下腹シート321の部材は、接続伸縮部33のものと同一であり、弾性も同一である。
【0035】
図4に示すように、下腹伸縮部32には、男性器を収納するためのポケット部322を下腹シート321の股身頃13側に設けられていてもよい。すなわち、ポケット部322は、周辺が下腹シート321、身頃接続辺14、マチ辺133によって囲まれる。
【0036】
ポケット部322は、腰保持部2に垂直な方向に弾性の分割線を有し、この分割線は平面視長さよりも長く、内周面との間にゆとりを付けている。このゆとりによってポケット部322と身体の間にゆとりが生まれ男性器を締め付けずに保持できる。
【0037】
接続伸縮部33は、後身頃12の上に配置される弾性のシート材であって、前身頃11と股身頃13とを接続する。また、前身頃11は下腹伸縮部32を含むため、接続伸縮部33は股身頃13と下腹伸縮部32とを接続する。
【0038】
接続伸縮部33は、前身頃11から股身頃13まで延びる接続伸縮部本体331と、接続伸縮部本体331から分岐して腰保持部2と接続する分岐接続部332と、を有する。また、接続伸縮部33において、股身頃13から腰保持部2までを結ぶ縁辺を臀部縁辺333とし、股身頃13から下腹伸縮部32までを結ぶ縁辺を下部縁辺334とし、腰保持部2から下腹伸縮部32までを結ぶ縁辺を上部縁辺335とする。接続伸縮部33は、これらの縁辺の付近において、後身頃12とジグザグ縫いによって縫合されている。
【0039】
接続伸縮部本体331の一端は前身頃11と接続するところ、接続伸縮部本体331の端部が下腹伸縮部32と隣接するため、実質的に下腹伸縮部32を引張する。また、その他端は股身頃13と接続するところ、股シート315とシートの一部が重複する。ここで、接続伸縮部本体331において、股身頃13との接続範囲は股シート315よりも短いが、弾性帯311の端部とも接続するように設けられる。これにより、股身頃13の位置や弾性帯311の伸縮によって接続伸縮部本体331の伸縮が連動して変化し、座位と立位で他の伸縮部の引っ張り強さを調整する。
【0040】
接続伸縮部本体331の他端は下腹伸縮部32と身頃接続辺14を介して接続するところ、接続範囲が身頃接続辺14の端部から離れた位置に設けられることにより、接続伸縮部本体331が下腹伸縮部32の中心を引張して、下腹に効果的に圧力をかけることができる。
【0041】
分岐接続部332は、使用時に身体の側面の略中心から分岐するように設けられている。その端部は腰保持部2と接続する分岐帯312に隣接又は接続しており、分岐帯312の伸縮に応じて分岐接続部332の伸縮度合いも変化する。
【0042】
臀部縁辺333は、使用者の大殿筋を取り囲むように背面視で弧状となるように設けられ、使用時に使用者の大殿筋を囲み、持ち上げるように配置する。これによって、使用者の尻肉を持ち上げ、大殿筋等の収縮をサポートする。
【0043】
下部縁辺334は、使用者の太ももを取り囲むように設けられる。下部縁辺334は、股身頃13から下腹伸縮部32にかけて、腰保持部2の方向に傾斜して設けられる。このため、着用時に太ももを前に動かす際、伸縮部3と干渉せずに動きやすくなる。
【0044】
上部縁辺335が前身頃11ないし腰保持部2から離れて設けられることで、この間に弾性が低くなる面が生じる。この面には着用時に腸骨の突起部分が位置することで、使用者の骨盤が締め付けられる不快感を軽減できる。
【0045】
以下、
図5、6を用いて、本発明の実施の方法(姿勢改善のプロセス)について詳述する。本発明は、本発明を着用した状態で、立位、歩行体勢または座位となる使用者によって実施される。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0046】
使用者が立位になったとき、
図5に示すように、伸縮部3が収縮する。すなわち、脊椎伸縮部31が収縮する方向に作用し、これと接続する接続伸縮部33が収縮して、下腹伸縮部32を側方に引張する方向に力が加わり、使用者の腹側を押圧する。
このように、脊椎伸縮部31が実際に収縮する(腹方向に引っ張る)ことで、腹側の下腹伸縮部32にテンションが掛かり、腹横筋等がサポートされることで骨盤の過度の前傾や、腰椎の過度な前弯を抑制することで姿勢が改善する。
歩行時においても、上記と同様に伸縮部3が伸縮し、骨盤の過度の前傾や、腰椎の過度な前弯を抑制することで姿勢が改善する。このとき、下部縁辺334が使用者の太ももと干渉しないため使用者は歩行を容易にできる。
【0047】
使用者が座位になったとき、
図6に示すように、使用者の臀部が立位と比較して相対的に大きくなるため、脊椎伸縮部31が収縮する。このとき、下着Xは腰保持部2で保持されるため、脊椎伸縮部31は腰保持部2に向けて収縮し、身体の脊椎に沿って頭方向に向かう力を加える。これによって多裂筋等をサポートして腰椎の前弯を維持し姿勢を改善できる。また、同様にして接続伸縮部33も臀部の側面に沿った上向きの力を加えるため、臀部の筋肉が収縮しやすくなり姿勢が改善される。
以上によって、歩行時、立位及び座位において使用者の姿勢のサポートが可能となる。
【0048】
また、伸縮部3のそれぞれが下着Xの全体を締め付けず、所定部位同士を接続するように設けていることで、身頃1がゆとりをもって作られていても、伸縮部3の効果を発揮できる。このため、下着Xの着心地をよくできる。
【0049】
好ましくは、脊椎伸縮部31は、弾性帯311の中途と前記腰保持部とを接続する分岐帯312を含むことで、より強固に脊椎の伸縮のサポートを行える。
【0050】
好ましくは、伸縮部3は、前身頃11において、使用者の下腹部を覆うように配置される下腹伸縮部32を有することで、立位において腹横筋等のサポートを行い、姿勢をより改善することができる。
【0051】
好ましくは、伸縮部3は、前身頃11と股身頃13とを接続する接続伸縮部33を有することで、立位において前身頃11ないし下腹伸縮部32が側面方向に引っ張られ、腹横筋等をより強固にサポートできる。
【0052】
好ましくは、接続伸縮部33は中途で分岐し、分岐点から腰保持部2に向けて延びる分岐接続部332を含むことで、接続伸縮部33に上下から引っ張る力を与え、腹横筋等をより強固にサポートできる。
【0053】
好ましくは、腰保持部2は、上端が筒状になる身頃1の上端を取り囲むように配置され、高弾性保持部21と、前身頃11に設けられ、高弾性保持部21よりも弾性が低い低弾性保持部22とを有することで、腰回りに保持しつつも締め付けを軽減できる。
【0054】
前記伸縮部は、前身頃11において、使用者の下腹部を覆うように配置される下腹伸縮部32を有し、低弾性保持部22は、下腹伸縮部32と一体に設けられることで、パーツ点数を減らして製造コストを抑えられる。
【符号の説明】
【0055】
X 下着
1 身頃
11 前身頃
111 折り返し部
12 後身頃
121 股辺
122 開口辺
13 股身頃
131 前股接続辺
132 後股接続辺
133 マチ辺
14 身頃接続辺
2 腰保持部
21 高弾性保持部
22 低弾性保持部
3 伸縮部
31 脊椎伸縮部
311 弾性帯
312 分岐帯
313 並行シート
314 分岐シート
315 股シート
32 下腹伸縮部
321 下腹面
322 ポケット部
33 接続伸縮部
331 接続伸縮部本体
332 分岐接続部
333 臀部縁辺
334 下部縁辺
335 上部縁辺
【要約】
【課題】
立位及び座位における使用者の姿勢のサポートが可能で、使用感に優れる姿勢サポート用の下着を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決する本願発明は、伸縮性を有する身頃1と、身頃1を使用者の腰位置に保持する腰保持部2と、を備える下着であって、身頃1は、前身頃11と、前身頃11と連続する後身頃12と、前身頃11と後身頃12とを使用者の股座位置において接続する股身頃13と、を有し、身頃1の伸縮度合いを制御する伸縮部3が所定位置に配置され、伸縮部3は、後身頃12の上において、股身頃13と腰保持部2とを接続する脊椎伸縮部31を有し、脊椎伸縮部31は、着用時に使用者の脊椎に沿って配置される、後身頃12よりも弾性が高い弾性帯311を含む。
【選択図】
図1