(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
G01J 1/42 20060101AFI20250630BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20250630BHJP
H10F 39/18 20250101ALI20250630BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20250630BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
G01J1/42 H
G01J1/02 Q
H10F39/18 F
H04N25/70
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2021152234
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2024-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】岩科 進也
(72)【発明者】
【氏名】永野 輝昌
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真昇
(72)【発明者】
【氏名】足立 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 卓也
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/203222(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146723(WO,A1)
【文献】特開2018-157387(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088478(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/172071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/42
G01J 1/02
H10F 39/18
H04N 25/70
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有していると共に前記主面に沿った方向に配列された複数の画素を含んでいる光検出基板と、
前記主面に沿った前記方向に配列されていると共に前記複数の画素のうち対応する画素に電気的に接続されている複数のMOSスイッチ回路を含んでいる回路基板と、を備え、
各前記画素は、各々が受光領域を形成すると共にガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードを含んでおり、
前記複数のアバランシェフォトダイオードは、前記複数の画素のうち対応する画素が占める画素領域において、前記主面に沿った前記方向に配列された複数の前記受光領域を形成しており、
前記MOSスイッチ回路が占めるMOSスイッチ回路領域は、前記主面に直交する方向から見て、前記画素領域に形成される複数の前記受光領域と重なっており、
前記主面に直交する方向から見て、前記MOSスイッチ回路領域の面積は、前記画素領域に形成されている1つの前記受光領域の面積よりも大きく、前記画素領域の面積以下であり、
各前記画素に含まれている前記複数のアバランシェフォトダイオードは、互いに電気的に並列に接続されていると共に各々が前記MOSスイッチ回路に接続されている、光検出装置。
【請求項2】
前記主面に直交する方向から見て、前記MOSスイッチ回路領域の面積は、前記画素に含まれる前記複数のアバランシェフォトダイオードのピッチを2乗した値よりも大きい、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
各前記画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードは、前記主面に沿っていると共に互いに交差する第一方向及び第二方向において、二次元配列されており、
前記主面に直交する方向から見て、前記MOSスイッチ回路領域の面積は、前記第一方向における前記複数のアバランシェフォトダイオードのピッチと、前記第二方向における前記複数のアバランシェフォトダイオードのピッチとを乗じた値よりも大きい、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記MOSスイッチ回路領域は、前記主面に直交する方向から見て、前記MOSスイッチ回路領域の前記MOSスイッチ回路に接続されている画素の前記画素領域内に位置している、請求項1から3のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記複数の画素は、前記主面に沿っていると共に互いに直交する一対の方向の少なくとも一方に、配列されており、
前記少なくとも一方における前記画素のピッチは、前記主面に直交する方向から見た場合における前記受光領域の最大幅の2倍よりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記MOSスイッチ回路と、当該MOSスイッチ回路に接続されている前記画素が含んでいる前記複数のアバランシェフォトダイオードとは、前記光検出基板と前記回路基板との間に配置されたバンプ電極を介して、電気的に接続されており、
前記バンプ電極は、前記主面に直交する方向から見て、当該バンプ電極に接続されている前記複数のアバランシェフォトダイオードのうちの1つの前記受光領域内に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記主面に直交する方向から見て、前記受光領域の前記面積は、5μm
2以上650μm
2以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記MOSスイッチ回路は、互いに並列に接続されている複数のMOS-FETを含んでいる、請求項1から7のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記回路基板は、前記複数のMOSスイッチ回路の各々に制御信号を伝達する複数の制御ラインを含んでおり、
前記光検出基板及び前記回路基板は、各々が、複数の前記画素と複数の前記MOSスイッチ回路とを含むと共に、前記MOSスイッチ回路を介して前記画素からの信号を出力する複数の信号出力ユニットを含んでおり、
同一の前記信号出力ユニットに含まれる前記複数のMOSスイッチ回路は、同一の前記制御ラインに接続されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項10】
互いに異なる前記信号出力ユニットに含まれる前記複数のMOSスイッチ回路は、互いに異なる前記制御ラインに接続されている、請求項9に記載の光検出装置。
【請求項11】
前記同一の制御ラインに接続されている前記複数のMOSスイッチ回路は、一列に配列されている、請求項9又は10に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記複数のMOSスイッチ回路は、前記主面に直交する方向から見て、行列状に配列されており、
前記回路基板は、前記複数のMOSスイッチ回路のうち対応する前記MOSスイッチ回路と前記アバランシェフォトダイオードからの信号を処理する信号処理部とを電気的に接続する複数の読出しラインをさらに含んでおり、
互いに異なる前記信号出力ユニットに含まれており、かつ、一列に配列されている複数の前記MOSスイッチ回路は、同一の前記読出しラインに接続されている、請求項9から11のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項13】
互いに時間的に並行して処理を行う複数の前記信号処理部をさらに備え、
前記複数の信号処理部は、互いに異なる前記読出しラインに接続されている、請求項12に記載の光検出装置。
【請求項14】
前記MOSスイッチ回路は、互いに並列に接続されている第一、第二、及び、第三スイッチを含んでおり、
前記回路基板は、前記第一スイッチと前記アバランシェフォトダイオードからの信号を処理する信号処理部とを電気的に接続する読出しラインをさらに含んでおり、
前記第一、第二、及び、第三スイッチの各々は、前記アバランシェフォトダイオードに接続されている第一端子と、前記第一端子と異なる第二端子とを含んでいると共に、前記第一端子と前記第二端子とが電気的に導通される導通状態と、前記第一端子と前記第二端子とが電気的に遮断される遮断状態とを切り換えるように構成されており、
前記第一スイッチの前記第二端子は、前記読出しラインに接続されており、
前記第二及び第三スイッチの前記第二端子は、前記読出しラインに接続されておらず、かつ、互いに電気的に離間している、請求項1から8のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項15】
前記第一及び第二スイッチは、前記導通状態において前記アバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧以上の電圧が付与されるように構成されており、
前記第三スイッチは、前記導通状態において前記アバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧より小さい電圧を付与する電位が付与されるように構成されている、請求項14に記載の光検出装置。
【請求項16】
前記回路基板は、前記第一、前記第二、及び、前記第三スイッチの制御を行うスイッチ制御部をさらに含んでおり、
前記スイッチ制御部は、前記第一、前記第二、及び、前記第三スイッチのうちのいずれか1つを前記導通状態とし、前記第一、前記第二、及び、前記第三スイッチのうちの残りを前記遮断状態とするように前記制御を行う、請求項14又は15に記載の光検出装置。
【請求項17】
前記スイッチ制御部は、前記アバランシェフォトダイオードから検出信号を読出不可能な状態から前記アバランシェフォトダイオードから検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、前記第三スイッチ、前記第二スイッチ、前記第一スイッチの順に、前記導通状態となるように前記制御を行う、請求項16に記載の光検出装置。
【請求項18】
前記スイッチ制御部は、前記アバランシェフォトダイオードから検出信号を読出不可能な状態から読出可能な状態に切り換える際に、前記第三スイッチに対して、前記導通状態から前記遮断状態に切り換えるよう指示し、所定時間経過した後に、前記第二スイッチに対して前記遮断状態から前記導通状態に切り換えるように指示する、請求項16又は17に記載の光検出装置。
【請求項19】
前記スイッチ制御部は、前記アバランシェフォトダイオードから検出信号を読出不可能な状態から読出可能な状態に切り換える際に、前記第二スイッチに対して、前記導通状態から前記遮断状態に切り換えるよう指示すると同一のタイミングで、前記第一スイッチに対して、前記遮断状態から前記導通状態に切り換えるように指示する、請求項16から18のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項20】
前記第二スイッチの前記第二端子に付与される電位は、前記第一スイッチの前記第二端子に付与される電位と同一である、請求項16から19のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項21】
前記回路基板は、前記複数のMOSスイッチ回路の各々に制御信号を伝達する複数の制御ラインを含んでおり、
前記光検出基板及び前記回路基板は、各々が、複数の前記画素と複数の前記MOSスイッチ回路とを含むと共に、前記MOSスイッチ回路を介して前記画素からの信号を出力する複数の信号出力ユニットを含んでおり、
前記複数の制御ラインは、前記第一スイッチに制御信号を伝達する少なくとも一つの第一制御ラインと、前記第二スイッチに制御信号を伝達する少なくとも一つの第二制御ラインと、前記第三スイッチに制御信号を伝達する少なくとも一つの第三制御ラインとを含んでおり、
同一の前記信号出力ユニットに含まれる複数の前記第一スイッチは、同一の前記第一制御ラインに接続されており、
同一の前記信号出力ユニットに含まれる複数の前記第二スイッチは、同一の前記第二制御ラインに接続されており、
同一の前記信号出力ユニットに含まれる複数の前記第三スイッチは、同一の前記第三制御ラインに接続されている、請求項14から20のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項22】
互いに異なる前記信号出力ユニットに含まれる複数の前記第一スイッチは、互いに異なる前記第一制御ラインに接続されており、
互いに異なる前記信号出力ユニットに含まれる複数の前記第二スイッチは、互いに異なる前記第二制御ラインに接続されており、
互いに異なる前記信号出力ユニットに含まれる複数の前記第三スイッチは、互いに異なる前記第三制御ラインに接続されている、請求項21に記載の光検出装置。
【請求項23】
同一の前記制御ラインに接続されている前記複数のMOSスイッチ回路は、一列に配列されている、請求項21又は22に記載の光検出装置。
【請求項24】
前記複数のMOSスイッチ回路は、前記主面に直交する方向から見て、行列状に配列されており、
互いに異なる前記信号出力ユニットに含まれており、かつ、一列に配列されている複数の前記MOSスイッチ回路は、同一の前記読出しラインに接続されている、請求項21から23のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項25】
互いに時間的に並行して処理を行う複数の前記信号処理部をさらに備え、
前記複数の信号処理部は、互いに異なる前記読出しラインに接続されている、請求項14から24のいずれか一項に記載の光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の画素を含んでいる光検出基板と回路基板とを備える光検出装置が知られている(たとえば、特許文献1)。各画素は、光の入射に応じて信号を出力する。特許文献1において、複数の画素は、検出光が入射する入射面に沿った方向に配列されている。各画素は、受光領域を形成すると共にガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アバランシェフォトダイオードの発熱の抑制、及び、消費電力の抑制等のため、スイッチング回路によって、配列された複数の画素の動作状態を切り換えることが考えられる。たとえば、検出光が入射する画素のアバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧以上の電圧を付与し、それ以外の画素のアバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧よりも小さい電圧を付与する。これによって、検出光以外の光の入射によるアバランシェフォトダイオードの発熱が抑制され得る。スイッチング回路は、MOS(metal-oxide-semiconductor)によって形成することが考えられる。以下、MOSによって形成されるスイッチング回路を「MOSスイッチ回路」と呼ぶ。たとえば、MOSスイッチ回路は、少なくとも1つのMOS-FET(field-effect transistor)によって形成される。
【0005】
本願発明者らは、アバランシェフォトダイオードのPDE(Photon Detection Efficiency)をさらに向上させる構成を検討した。アバランシェフォトダイオードのPDEは、オーバー電圧が高いほど向上する。オーバー電圧とは、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードに付与される逆バイアス電圧とブレークダウン電圧との差分である。この場合、MOSスイッチ回路には、アバランシェフォトダイオードに付与する電位に耐え得る耐圧性が求められる。MOSスイッチ回路に耐圧以上の電圧が付与されれば、MOSスイッチ回路が故障するおそれがある。耐圧性が高いMOSスイッチ回路ほど、MOSスイッチ回路のサイズは大きい。したがって、アバランシェフォトダイオードのPDEを向上するには、オーバー電圧の向上に耐え得るMOSスイッチ回路の配置スペースの確保を要する。
【0006】
光検出装置のコンパクト化のため、MOSスイッチ回路は、検出光が入射する入射面に直交する方向から見て、MOSスイッチ回路に接続される画素と重なるように配置される。この場合、各画素のサイズが大きいほど、より大きいサイズのMOSスイッチ回路が配置され得る。このため、各画素のサイズの拡大によって、オーバー電圧の向上に耐え得るMOSスイッチ回路を配置する領域を確保することが考えられる。例えば、特許文献1に記載の構成において、各アバランシェフォトダイオードが構成する画素のサイズが拡大されれば、MOSスイッチ回路を配置する領域が確保される。
【0007】
本願発明者は、さらに、光検出精度の向上のため、検出結果に対する外乱光の影響を低減することも検討した。複数のアバランシェフォトダイオードに入射した光の検出結果を用いることによって、入射する検出光と外乱光とが弁別され得る。例えば、特許文献1のように、複数のアバランシェフォトダイオードがそれぞれ画素を構成する場合、互いに異なる複数の画素から出力される情報を用いることによって、検出光と外乱光とが弁別される。しかし、この場合、1つの画素に入射した光の検出に対して、互いに異なるMOSスイッチ回路が接続された複数の画素が用いられる。したがって、1つの画素に入射した光の検出に対して、複数のMOSスイッチ回路が配置された領域が要される。このため、光検出の解像度が確保され難い。解像度を確保するために各画素が縮小されれば、各画素に接続されたMOSスイッチ回路を配置する領域も縮小される。
【0008】
本発明の一つの態様は、画素の動作状態を切り換え可能な構成において、光検出の精度がさらに向上され得る光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの態様における光検出装置は、光検出基板と、回路基板と、を備える。光検出基板は、主面を有している。光検出基板は、主面に沿って配列された複数の画素を含んでいる。回路基板は、複数のMOSスイッチ回路を含んでいる。複数のMOSスイッチ回路は、主面に沿った方向に配列されており、複数の画素のうち対応する画素に電気的に接続されている。複数の画素の各々は、複数のアバランシェフォトダイオードを含んでいる。複数のアバランシェフォトダイオードの各々は、受光領域を形成すると共にガイガーモードで動作する。複数のアバランシェフォトダイオードは、複数の画素のうち対応する画素が占める画素領域において、主面に沿った方向に配列された複数の受光領域を形成している。MOSスイッチ回路が占めるMOSスイッチ回路領域は、主面に直交する方向から見て、複数の受光領域と重なっている。主面に直交する方向から見て、MOSスイッチ回路領域の面積は、画素領域に形成されている1つの受光領域の面積よりも大きく、画素領域の面積以下である。各画素に含まれている複数のアバランシェフォトダイオードは、互いに電気的に並列に接続されていると共に各々がMOSスイッチ回路に接続されている。
【0010】
上記一つの態様において、各画素に含まれている複数のアバランシェフォトダイオードは、互いに電気的に並列に接続されていると共に、各々がMOSスイッチ回路に接続されてる。このため、MOSスイッチ回路の切り換えに応じて、複数のアバランシェフォトダイオードからの検出信号が合算されて出力される。したがって、検出光と外乱光との弁別が可能であり、外乱光の影響が抑制され得る。さらに、主面に直交する方向から見て、各画素に電気的に接続されているMOSスイッチ回路領域の面積は、1つの受光領域の面積よりも大きく、当該MOSスイッチ回路領域は、複数の受光領域と重なっている。主面に直交する方向から見て、MOSスイッチ回路領域の面積は、画素領域の面積以下である。この場合、各画素に含まれる複数のアバランシェフォトダイオードが配置されている領域と重なるスペースが有効に活用されてMOSスイッチ回路が配置されている。オーバー電圧の向上に耐え得るMOSスイッチ回路を配置するスペースが確保されており、アバランシェフォトダイオードのPDEを向上することができる。したがって、光検出の解像度の確保とアバランシェフォトダイオードのPDEの向上とが両立されながら、外乱光の影響が抑制され得る。すなわち、光検出の精度がさらに向上し得る。以上の構成によれば、画素の動作状態を切り換え可能な構成において、光検出の精度がさらに向上され得る。
【0011】
上記一つの態様において、主面に直交する方向から見て、MOSスイッチ回路領域の面積は、画素に含まれる複数のアバランシェフォトダイオードのピッチを2乗した値よりも大きくてもよい。この場合、MOSスイッチ回路を配置するスペースがより確実に確保される。
【0012】
上記一つの態様において、各画素において、複数のアバランシェフォトダイオードは、主面に沿っていると共に互いに交差する第一方向及び第二方向において、二次元配列されていてもよい。主面に直交する方向から見て、MOSスイッチ回路領域の面積は、第一方向における複数のアバランシェフォトダイオードのピッチと、第二方向における複数のアバランシェフォトダイオードのピッチとを乗じた値よりも大きくてもよい。この場合、MOSスイッチ回路を配置するスペースがより確実に確保される。
【0013】
上記一つの態様において、MOSスイッチ回路領域は、主面に直交する方向から見て、MOSスイッチ回路領域のMOSスイッチ回路に接続されている画素の画素領域内に位置していてもよい。
【0014】
上記一つの態様において、複数の画素は、主面に沿っていると共に互いに直交する一対の方向の少なくとも一方に配列されていてもよい。少なくとも一方における画素のピッチは、主面に直交する方向から見た場合における受光領域の最大幅の2倍よりも大きくてもよい。この場合、画素のピッチが確保され、MOSスイッチ回路を配置する領域がより確実に確保される。
【0015】
上記一つの態様において、光検出装置は、光検出基板と回路基板との間に配置されたバンプ電極をさらに備えてもよい。バンプ電極は、MOSスイッチ回路と当該MOSスイッチ回路に接続されている画素が含んでいる複数のアバランシェフォトダイオードとを電気的に接続してもよい。バンプ電極は、主面に直交する方向から見て、当該バンプ電極に接続されている複数のアバランシェフォトダイオードのうちの1つの受光領域内に配置されていてもよい。この場合、主面と直交する方向から見て、受光領域はバンプ電極よりも大きく、MOSスイッチ回路領域はこの受光領域よりもさらに大きい。したがって、MOSスイッチ回路を配置する領域がより確実に確保される。
【0016】
上記一つの態様において、主面に直交する方向から見て、受光領域の面積は、5μm2以上650μm2以下であってもよい。主面に直交する方向から見て、MOSスイッチ回路領域の面積は、受光領域の面積よりも大きい。したがって、MOSスイッチ回路を配置する領域がより確実に確保される。
【0017】
上記一つの態様において、MOSスイッチ回路は、互いに並列に接続されている複数のMOS-FETを含んでいてもよい。この場合、MOSスイッチ回路に接続されている画素の動作状態の切り換えが可能である。
【0018】
上記一つの態様において、回路基板は、複数のMOSスイッチ回路の各々に制御信号を伝達する複数の制御ラインを含んでいてもよい。光検出基板及び回路基板は、複数の信号出力ユニットを含んでいてもよい。複数の信号出力ユニットの各々は、複数の画素と複数のMOSスイッチ回路とを含むと共に、MOSスイッチ回路を介して画素からの信号を出力してもよい。同一の信号出力ユニットに含まれる複数のMOSスイッチ回路は、同一の制御ラインに接続されていてもよい。この場合、同一の信号出力ユニットにおいて、一括して、複数のMOSスイッチ回路に接続されている複数の画素の動作状態の切り換えが可能である。
【0019】
上記一つの態様において、互いに異なる信号出力ユニットに含まれる複数のMOSスイッチ回路は、互いに異なる制御ラインに接続されていてもよい。この場合、信号出力ユニットごとに、一括して、複数のMOSスイッチ回路に接続されている複数の画素の動作状態の切り換えが可能である。
【0020】
上記一つの態様において、同一の制御ラインに接続されている複数のMOSスイッチ回路は、一列に配列されていてもよい。列ごとに、一括して、複数のMOSスイッチ回路に接続されている複数の画素の動作状態の切り換えが可能である。
【0021】
上記一つの態様において、複数のMOSスイッチ回路は、主面に直交する方向から見て、行列状に配列されていてもよい。回路基板は、複数のMOSスイッチ回路のうち対応するMOSスイッチ回路とアバランシェフォトダイオードからの信号を処理する信号処理部とを電気的に接続する複数の読出しラインをさらに含んでいてもよい。互いに異なる信号出力ユニットに含まれており、かつ、一列に配列されている複数のMOSスイッチ回路は、同一の読出しラインに接続されていてもよい。この場合、読出しラインの数及び信号処理部の数が削減され得る。信号の処理に要する時間が削減と光検出装置のコンパクト化とのバランスが図られる。
【0022】
上記一つの態様において、光検出装置は、互いに時間的に並行して処理を行う複数の信号処理部をさらに備えていてもよい。複数の信号処理部は、互いに異なる読出しラインに接続されていてもよい。この場合、信号の処理に要する時間が削減と光検出装置のコンパクト化とのバランスが図られる。
【0023】
上記一つの態様において、MOSスイッチ回路は、第一、第二、及び、第三スイッチを含んでいてもよい。第一、第二、及び、第三スイッチは、互いに並列に接続されていてもよい。回路基板は、第一スイッチとアバランシェフォトダイオードからの信号を処理する信号処理部とを電気的に接続する読出しラインをさらに含んでいてもよい。第一、第二、及び、第三スイッチの各々は、第一端子と、第一端子と異なる第二端子とを含んでいてもよい。第一端子は、アバランシェフォトダイオードに接続されていてもよい。第一、第二、及び、第三スイッチの各々は、第一端子と第二端子とが電気的に導通される導通状態と、第一端子と第二端子とが電気的に遮断される遮断状態とを切り換えるように構成されていてもよい。第一スイッチの第二端子は、読出しラインに接続されていてもよい。第二及び第三スイッチの第二端子は、読出しラインに接続されておらず、かつ、互いに電気的に離間していてもよい。このような構成によれば、第一スイッチが導通状態にされた場合に、アバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧以上の電圧を付与すると共に、アバランシェフォトダイオードの第二端子を読出しラインに接続することができる。第二スイッチが導通状態にされた場合に、アバランシェフォトダイオードの第二端子を読出しラインに接続せずに、アバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧以上の電圧を付与し、第三スイッチが導通状態にされた場合に、アバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧よりも小さい電圧を付与することができる。この結果、ブレークダウン電圧以上の電圧がアバランシェフォトダイオードに付与される状態とブレークダウン電圧よりも小さい電圧がアバランシェフォトダイオードに付与される状態との切り換えの際に、リチャージ電流が読出しラインに流れ込むことを抑制することができる。すなわち、画素の動作状態を切り換え可能な構成において、信号処理部にリチャージ電流が流れ込むことが抑制され得る。よって、光検出装置のロバスト性が向上し得る。
【0024】
上記一つの態様において、第一及び第二スイッチは、導通状態においてアバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧以上の電圧が付与されるように構成されていてもよい。第三スイッチは、導通状態においてアバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧より小さい電圧を付与する電位が付与されるように構成されていてもよい。
【0025】
上記一つの態様において、回路基板は、第一、第二、及び、第三スイッチの制御を行うスイッチ制御部をさらに含んでいてもよい。スイッチ制御部は、第一、第二、及び、第三スイッチのうちのいずれか1つを導通状態とし、第一、第二、及び、第三スイッチのうちの残りを遮断状態とするように制御を行ってもよい。この場合、互いに異なるスイッチ間に電流が流れることが抑制される。
【0026】
上記一つの態様において、スイッチ制御部は、アバランシェフォトダイオードから検出信号を読出不可能な状態からアバランシェフォトダイオードから検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、第三スイッチ、第二スイッチ、第一スイッチの順に、導通状態となるように制御を行ってもよい。この場合、信号処理部にリチャージ電流が流れ込むことがより確実に抑制され得る。
【0027】
上記一つの態様において、スイッチ制御部は、アバランシェフォトダイオードから検出信号を読出不可能な状態からアバランシェフォトダイオードから検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、第三スイッチに対して、導通状態から遮断状態に切り換えるよう指示し、所定時間経過した後に、第二スイッチに対して遮断状態から導通状態に切り換えるように指示してもよい。この場合、第三スイッチの第二端子から第二スイッチの第二端子に電流が流れることがより確実に抑制され得る。
【0028】
上記一つの態様において、スイッチ制御部は、アバランシェフォトダイオードから検出信号を読出不可能な状態からアバランシェフォトダイオードから検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、第二スイッチに対して、導通状態から遮断状態に切り換えるよう指示すると同一のタイミングで、第一スイッチに対して、遮断状態から導通状態に切り換えるように指示してもよい。この場合、アバランシェフォトダイオードがフローティング状態となること抑制され、ブレークダウン電圧以上の電圧が安定して、このアバランシェフォトダイオードに付与され得る。
【0029】
上記一つの態様において、第二スイッチの第二端子に付与される電位は、第一スイッチの第二端子に付与される電位と同一であってもよい。この場合、アバランシェフォトダイオードが、さらに安定した状態において、読出しラインに接続され得る。
【0030】
上記一つの態様において、回路基板は、複数のMOSスイッチ回路の各々に制御信号を伝達する複数の制御ラインを含んでいてもよい。光検出基板及び回路基板は、複数の信号出力ユニットを含んでいてもよい。複数の信号出力ユニットの各々は、複数の画素と複数のMOSスイッチ回路とを含むと共に、MOSスイッチ回路を介して画素からの信号を出力してもよい。複数の制御ラインは、少なくとも一つの第一制御ラインと、少なくとも一つの第二制御ラインと、少なくとも一つの第三制御ラインとを含んでいてもよい。第一制御ラインは、第一スイッチに制御信号を伝達する。第二制御ラインは、第二スイッチに制御信号を伝達する。第三制御ラインは、第三スイッチに制御信号を伝達する。同一の信号出力ユニットに含まれる複数の第一スイッチは、同一の第一制御ラインに接続されていてもよい。同一の信号出力ユニットに含まれる複数の第二スイッチは、同一の第二制御ラインに接続されていてもよい。同一の信号出力ユニットに含まれる複数の第三スイッチは、同一の第三制御ラインに接続されていてもよい。この場合、同一の信号出力ユニットにおいて、一括して、複数のMOSスイッチ回路に接続されている複数の画素の動作状態の切り換えが可能である。
【0031】
上記一つの態様において、互いに異なる信号出力ユニットに含まれる複数の第一スイッチは、互いに異なる第一制御ラインに接続されていてもよい。互いに異なる信号出力ユニットに含まれる複数の第二スイッチは、互いに異なる第二制御ラインに接続されていてもよい。互いに異なる信号出力ユニットに含まれる複数の第三スイッチは、互いに異なる第三制御ラインに接続されていてもよい。この場合、信号出力ユニットごとに、一括して、複数のMOSスイッチ回路に接続されている複数の画素の動作状態の切り換えが可能である。
【0032】
上記一つの態様において、同一の制御ラインに接続されている複数のMOSスイッチ回路は、一列に配列されていてもよい。列ごとに、一括して、複数のMOSスイッチ回路に接続されている複数の画素の動作状態の切り換えが可能である。
【0033】
上記一つの態様において、複数のMOSスイッチ回路は、主面に直交する方向から見て、行列状に配列されていてもよい。互いに異なる信号出力ユニットに含まれており、かつ、一列に配列されている複数のMOSスイッチ回路は、同一の読出しラインに接続されていてもよい。この場合、読出しラインの数及び信号処理部の数が削減され得る。信号の処理に要する時間が削減と光検出装置のコンパクト化とのバランスが図られる。
【0034】
上記一つの態様において、光検出装置は、互いに時間的に並行して処理を行う複数の信号処理部をさらに備えてもよい。複数の信号処理部は、互いに異なる読出しラインに接続されていてもよい。この場合、信号の処理に要する時間が削減と光検出装置のコンパクト化とのバランスが図られる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一つの態様は、画素の動作状態を切り換え可能な構成において、光検出の精度がさらに向上され得る光検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本実施形態における光検出装置の概略構成を示す概略図である。
【
図4】光検出部及びスイッチアレイ部を説明するための図である。
【
図5】光検出装置において検出された検出信号を示す図である。
【
図9】
図8のIX―IX線における受光ユニットの断面図である。
【
図10】スイッチアレイ部を制御する制御信号のタイミングチャートである。
【
図11】スイッチアレイ部を制御する制御信号のタイミングチャートである。
【
図12】比較例の光検出装置における光検出部及びスイッチアレイ部を説明するための図である。
【
図13】比較例の光検出装置において検出された検出信号を示す図である。
【
図14】(a)は比較例の画素構成を示す図であり、(b)は比較例の検出信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有している要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0038】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態における光検出装置の構成を説明する。
図1及び
図2は、本実施形態における光検出装置の概略構成を示す概略図である。
【0039】
光検出装置1は、入射光を検出する。たとえば、光検出装置1は、測定対象物からの光を検出することによって、測定対象物までの距離を測定する。光検出装置1は、たとえば、ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)を構成している。光検出装置1は、投光ユニット2と受光ユニット3とレンズL1,L2とを備えている。投光ユニット2は、レーザ光B1を照射する。投光ユニット2から射出されたレーザ光B1は、レンズL1を透過し、たとえば、対象物Tに照射される。対象物Tにおいて反射した光は、レンズL2を透過し、測定対象光B2として受光ユニット3に入射する。受光ユニット3は、入射した測定対象光B2を検出する。受光ユニット3には、測定対象光B2以外に外乱光B3が入射する。外乱光B3は、たとえば、太陽光などの環境光である。
【0040】
図2に示されているように、投光ユニット2は、検出対象領域DAに向けてレーザ光B1を照射する。対象物Tが検出対象領域DAに存在する場合、投光ユニット2から照射されたレーザ光B1は、対象物Tで反射する。検出対象領域DAは、予め任意に設定されており、たとえば矩形状である。
【0041】
投光ユニット2は、たとえば、複数のレーザ光源4とミラー5とを備えている。レーザ光源4は、レーザ光を生成する。レーザ光源4は、生成したレーザ光をミラー5に向けて発する。たとえば、複数のレーザ光源4から発せられたレーザ光のそれぞれは、ミラー5に照射される。ミラー5は、複数のレーザ光源4によって発せられた複数のレーザ光をレーザ光B1として検出対象領域DAに向けて反射する。ミラー5によって反射され、検出対象領域DAに向けて照射される光は、たとえば、照射方向に直交する平面において、楕円形状を呈する。投光ユニット2は、方向D1が長手方向であり、方向D2が短手方向である断面形状のレーザ光を検出対象領域DAに向けて照射する。換言すれば、レーザ光の断面形状では、方向D1が楕円の長軸方向であり、方向D2が楕円又は長円の短軸方向である。レーザ光の断面形状は、方向D1に沿った直線形状であってもよい。ミラー5は、投光ユニット2においてレーザ光を走査する走査部を有している。ミラー5は、たとえば、ガルバノミラー又はMEMSミラーである。たとえば、投光ユニット2における走査部は、ミラー5以外に、レーザ光B1の照射方向を変更する機構によって構成されてもよい。
【0042】
投光ユニット2は、たとえば、検出対象領域DAに含まれる照射位置P1~PNのそれぞれに向けて、レーザ光B1を照射位置P1から照射位置PNまで順に照射する。Nは、2以上の整数である。レーザ光B1を照射位置P1から照射位置PNまで順に照射することによって、投光ユニット2は、レーザ光を方向D2に沿って走査する。1つの照射位置に向けて照射されるレーザ光B1は、たとえば、ミラー5の角度が制御されることによって、方向D1に沿って、検出対象領域DAの端の照射位置から順に異なるタイミングで照射される。
【0043】
投光ユニット2は、不図示の制御部を備えている。投光ユニット2の制御部は、たとえば、ミラー5を駆動制御することにより、投光ユニット2から照射されるレーザ光の照射位置を制御する。投光ユニット2の制御部は、照射位置P1~PNのうちのいずれかの位置を示す位置情報と、照射を開始する時刻を示す時刻情報と、を受光ユニット3の制御部に送信する。
【0044】
レンズL2には、検出対象領域DAにおいて反射した反射光が入射する。レンズL2は、入射した反射光を、受光ユニット3に反射光が入射するように集光する。受光ユニット3は、レンズL2を介して入射された反射光に応じた複数の受光信号を出力する。光検出装置1では、たとえば、複数の受光信号に基づき、検出対象領域DAを複数の区画に分割した区画領域ごとに、光検出装置1から対象物Tの区画領域に存在している部分までの距離が測定される。投光ユニット2から照射されるレーザ光の照射位置P1~PNは、たとえば、区画領域の位置に合わせて設定される。
【0045】
次に、
図3から
図4を参照して、光検出装置1が備える受光ユニット3の構成について説明する。
図3は、受光ユニット3のブロック図である。
図3に示されているように、光検出装置1は、光検出部6と、スイッチアレイ部7と、スイッチ制御部8と、信号処理部9と、読出しライン10とを含んでいる。
【0046】
光検出部6は、光の入射に応じて検出信号を出力する。光検出部6は、複数のアバランシェフォトダイオード11及びクエンチング抵抗12を含んでいる。以下、「アバランシェフォトダイオード」を「APD」という。たとえば、光検出部6は、複数のAPD11によって構成された画素Gを含んでいる。光検出部6は、複数の画素Gを含んでいる。各画素Gは、複数のAPD11を含んでいる。
図4に示されているように、各APD11は、端子11a,11bを含んでいる。たとえば、端子11aはアノードであり、端子11bはカソードである。各画素Gにおいて、複数のAPD11は、互いに並列に接続されている。複数のAPD11は、各APD11の端子11bが接続された1つの出力端を構成している。各画素Gは、光の入射に応じて信号を出力する。各画素Gから出力される信号は、光の入射に基づくアナログ信号である。本明細書において、「接続」とは、特に断りがなくとも電気的な導通を意味し、直接的な連結だけでなく、別の部材を介した間接的な連結を含んでいる。「接続されている」には、異なる要素間に別途スイッチなどが設けられることによって、これらの要素間が一時的に電気的に分離されている構成も含んでいる。
【0047】
各APD11は、ガイガーモードで動作するAPDである。各APD11は、ブレークダウン電圧以上の電圧が付与されている状態において、光の入射に応じて発生した電子を増倍する。各APD11は、増倍された電子に基づく信号を、スイッチアレイ部7を介して信号処理部9に出力する。
【0048】
クエンチング抵抗12は、APD11をクエンチする。たとえば、クエンチング抵抗12は、複数のAPD11のうち対応するAPD11の端子11bに直列に接続されている。各APD11は、クエンチング抵抗12を介してスイッチアレイ部7に接続されている。
【0049】
スイッチアレイ部7は、各画素Gに含まれる複数のAPD11に付与される電位を切り換える。スイッチアレイ部7は、光検出部6の画素Gからの検出信号を読出可能な状態と、検出信号を読出不可能な状態とを切り換える。スイッチアレイ部7は、光検出部6から出力された信号を信号処理部9に伝達する。
【0050】
スイッチアレイ部7は、たとえば、複数のMOSスイッチ回路15を含んでいる。各MOSスイッチ回路15は、読出しライン10に接続されている。MOSスイッチ回路15は、複数の画素Gのうち対応する画素Gに電気的に接続されている。MOSスイッチ回路15は、複数の画素Gのうち、このMOSスイッチ回路15に電気的に接続されている画素Gの動作状態を切り換える。以下、MOSスイッチ回路15に電気的に接続されている画素Gを、単に「対応する画素G」ともいう。「画素の動作状態を切り換える」とは、対応する画素Gからの検出信号を読出可能な状態と、対応する画素Gからの検出信号を読出不可能な状態とを切り換えることをいう。
【0051】
同一の画素Gに含まれる複数のAPD11は、同一のMOSスイッチ回路15に接続されている。互いに異なる画素Gに含まれる複数のAPD11は、互いに異なるMOSスイッチ回路15に接続されている。換言すれば、画素GとMOSスイッチ回路15とは、一対一の関係で接続されている。この画素Gに含まれる複数のAPD11の出力端は、MOSスイッチ回路15に接続されている。
【0052】
MOSスイッチ回路15は、複数の画素Gのうち対応する画素Gに対して、この画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出可能な状態と、この画素Gに含まれるAPD11から信号を読出不可能な状態とを切り換える。MOSスイッチ回路15は、複数の画素Gのうち対応する画素Gについて、この画素Gに含まれる複数のAPD11がブレークダウンする状態と、これらのAPD11がブレークダウンしない状態とを切り換える。MOSスイッチ回路15は、複数の画素Gのうち対応する画素Gについて、この画素Gに含まれる複数のAPD11の動作状態をガイガーモードとリニアモードとの間で切り換える。
【0053】
各MOSスイッチ回路15は、複数のスイッチ21,22,23を含んでいる。たとえば、各MOSスイッチ回路15は、3つのスイッチ21,22,23を含んでいる。各MOSスイッチ回路15が含むスイッチの数は、2つであってもよい。スイッチ21は、第一スイッチである。スイッチ22は、第二スイッチである。スイッチ23は、第三スイッチである。各スイッチ21,22,23は、たとえば、MOS-FETを含んでいる。各MOSスイッチ回路15のスイッチ21,22,23は、互いに並列に接続されている。各MOSスイッチ回路15のスイッチ21,22,23は、それぞれ、複数の画素Gのうち対応する同一の画素Gに接続されている。
図4に示されているように、各MOSスイッチ回路15のスイッチ21,22,23は、それぞれ、複数のAPD11のうち対応する同一のAPD11の端子11bに接続されている。
図4は、1つの画素Gに接続されるMOSスイッチ回路15の構成を示す図である。
【0054】
図4に示されているように、スイッチ21,22,23の各々は、互いに異なる端子24aと端子24bとを含んでいる。端子24aは、複数のAPD11のうち対応するAPD11の端子11bに接続されている。スイッチ21,22,23は、各々の端子24aと端子24bとが電気的に導通される導通状態と、各々の端子24aと端子24bとが電気的に遮断される遮断状態とを切り換えるように構成されている。端子24aが第一端子に相当する場合、端子24bが第二端子に相当する。
【0055】
スイッチ21は、導通状態において、このスイッチ21に接続されているAPD11にブレークダウン電圧以上の電圧が付与されるように構成されている。スイッチ21は、読出しライン10に接続されている。スイッチ21は、読出しライン10を通して、信号処理部9に接続されている。スイッチ22は、導通状態において、このスイッチ22に接続されているAPD11にブレークダウン電圧以上の電圧が付与されるように構成されている。
【0056】
たとえば、スイッチ22の導通状態において当該スイッチ22に接続されているAPD11に付与する電圧は、スイッチ21の導通状態において当該スイッチ21に接続されているAPD11に付与する電圧と同一である。たとえば、スイッチ22の端子24bに付与される電位は、スイッチ21の端子24bに付与される電位と同一である。「同一」は、ノイズ等による誤差の範囲を含んでいる。本実施形態の変形例として、スイッチ22の導通状態において当該スイッチ22に接続されているAPD11に付与する電圧は、スイッチ21の導通状態において当該スイッチ21に接続されているAPD11に付与する電圧と同一でなくてもよい。
【0057】
スイッチ23は、導通状態において、このスイッチ23に接続されているAPD11にブレークダウン電圧よりも小さい電圧が付与されるように構成されている。スイッチ22及びスイッチ23は、信号処理部9に接続されていない。スイッチ22及びスイッチ23は、固定電位の電極に接続されている。各スイッチ21,22,23の構成の詳細は、後述する。
【0058】
スイッチ制御部8は、スイッチアレイ部7を制御する。スイッチ制御部8は、各MOSスイッチ回路15のスイッチ21,22,23の制御を行う。スイッチ制御部8は、スイッチアレイ部7に状態の切り換えを指示する制御信号を、スイッチアレイ部7に出力する。スイッチアレイ部7は、スイッチ制御部8からの制御信号に応じて、MOSスイッチ回路15のスイッチ21,22,23の状態を切り換える。
【0059】
たとえば、各MOSスイッチ回路15は、スイッチ制御部8からの制御信号に応じて、複数の画素Gのうち対応する画素Gに関して、画素Gの動作状態を切り換える。換言すれば、各MOSスイッチ回路15は、制御信号に応じて、当該MOSスイッチ回路15に対応する画素Gと信号処理部9とが電気的に導通される状態と、当該MOSスイッチ回路15に対応する画素Gと信号処理部9とが電気的に遮断される状態とを切り換える。各MOSスイッチ回路15は、制御信号に応じて、当該MOSスイッチ回路15に対応する画素Gに含まれる複数のAPD11に付与される電位を切り換える。各MOSスイッチ回路15は、制御信号に応じて、当該MOSスイッチ回路15に対応する画素Gに含まれる複数のAPD11がブレークダウンする状態と、これらのAPD11がブレークダウンしない状態とを切り換える。
【0060】
光検出装置1は、スイッチ制御部8からの制御信号をスイッチアレイ部7に伝達する制御ライン20をさらに含んでいる。たとえば、光検出装置1は、複数の制御ライン20を含んでいる。複数の制御ライン20は、複数のMOSスイッチ回路の各々に制御信号を伝達する。
図4に示されているように、複数の制御ライン20は、制御ライン20a,20b,20cを含んでいる。制御ライン20aは、スイッチ21に接続されており、スイッチ21に制御信号を伝達する。制御ライン20bは、スイッチ22に接続されており、スイッチ22に制御信号を伝達する。制御ライン20cは、スイッチ23に接続されており、スイッチ23に制御信号を伝達する。
【0061】
信号処理部9は、光検出部6における複数のAPD11からの検出信号を処理する。信号処理部9は、画素Gからの信号を処理する。本実施形態において、1つの信号処理部9は、複数の画素Gに接続されている。信号処理部9は、各画素Gに対応するスイッチアレイ部7の切り換えに応じて、複数の画素Gからの信号を順番に処理する。信号処理部9は、フロントエンド回路16と、機能部17と、記憶部18と、出力部19とを含んでいる。MOSスイッチ回路15と信号処理部9のフロントエンド回路16とは、MOSスイッチ回路15の状態に応じて、読出しライン10を介して、電気的に接続される。信号処理部9は、MOSスイッチ回路15の状態に応じて、読出しライン10を介して、複数の画素Gのうち対応する画素Gからの信号を受ける。たとえば、光検出装置1は、互いに時間的に並行して処理を行う複数の信号処理部9を含んでいる。
【0062】
フロントエンド回路16は、光検出部6から出力された検出信号に対して各種処理を行う。光検出部6からフロントエンド回路16に入力される検出信号は、アナログ信号である。フロントエンド回路16は、たとえば、バッファアンプリファイア26を含んでいる。バッファアンプリファイア26は、検出信号からノイズを除去する。
【0063】
機能部17は、検出信号の情報を示す信号を出力する。機能部17は、検出信号を処理し、目的とする情報に関する信号を出力する。たとえば、機能部17は、検出信号に基づいて、光検出部6に入射した光のエネルギー量に関する情報を示す信号、及び、光検出部6への光の入射タイミングに関する情報を示す信号を出力する。機能部17は、コンパレータ27を含んでいる。コンパレータ27は、検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。たとえば、コンパレータ27は、フロントエンド回路16に接続されている。たとえば、コンパレータ27には、フロントエンド回路16から出力された検出信号がそのまま入力される。換言すれば、機能部17は、コンパレータ27以降の電子部品からなる。
【0064】
コンパレータ27は、たとえば、
図5に示されているように、検出信号DSに対して閾値THを設定する。上述したように、光検出装置1の複数のAPD11は画素Gごとに並列に接続されているため、入射する光に応じて検出信号DSの強度が変化する。検出信号DSの強度が閾値THより大きいか否かを判定することによって、画素Gに入射した光が外乱光B3のみであるか否が判定され得る。
図5は、光検出装置1において検出された検出信号を示す図である。
【0065】
記憶部18は、機能部17から取得された信号を記憶する。たとえば、記憶部18は、機能部17から出力された信号に基づいて、光検出部6に入射した光のエネルギー量に関する情報を記憶する。記憶部18は、機能部17から出力された信号に基づいて、光検出部6への光の入射タイミングに関する情報を記憶する。
【0066】
出力部19は、記憶部18によって記憶された情報を外部に出力する。出力部19は、記憶部18によって記憶された情報を示す信号を外部に出力する。出力部19は、たとえば、シリアライザを含んでいる。シリアライザは、記憶部18に記憶された情報をシリアル化した信号を生成する。
【0067】
読出しライン10は、MOSスイッチ回路15と信号処理部9のフロントエンド回路16とを電気的に接続する。読出しライン10は、スイッチ21の端子24bと信号処理部9のフロントエンド回路16とを電気的に接続する。読出しライン10は、MOSスイッチ回路15の状態に応じて、複数の画素Gのうち対応する画素Gからの信号を信号処理部9のフロントエンド回路16に伝達する。
【0068】
図6は、受光ユニット3の概略平面図である。
図7は、受光ユニット3の部分拡大図である。
図8は、受光ユニット3の断面図である。
図9は、
図8のIX―IX線における受光ユニット3の断面図である。
図7及び
図8に示されている構成において、受光ユニット3は、裏面入射型の半導体光検出装置である。
【0069】
図6及び
図7に示されているように、受光ユニット3は、光検出基板40と、回路基板50とを備えている。光検出基板40、及び、回路基板50の各々は、たとえば、Z軸方向から見て、XY軸方向に延在する矩形状を呈している。光検出基板40と回路基板50とは、互いに接続されている。X軸、Y軸、及び、Z軸は、互いに交差している。本実施形態において、X軸、Y軸、及び、Z軸は、互いに直交している。
【0070】
受光ユニット3は、検出光が入射する入射面Sを有している。光検出基板40は、入射面Sに相当する主面40aを含んでいる。主面40aは、X軸方向及びY軸方向に沿っている。主面40aは、Z軸方向に直交している。入射面Sは、たとえば、XY軸平面に平行である。入射面Sに直交する方向は、Z軸方向に相当する。光検出基板40及び回路基板50は、複数の信号出力ユニットUを含んでいる。複数の信号出力ユニットUは、入射面Sに沿った方向に配列されている。複数の信号出力ユニットUは、たとえば、Y軸方向に延在する矩形状を呈しており、互いに平行にX方向に一列に配列されている。Y軸方向は、
図2における方向D1に一致する。X軸方向は、
図2における方向D2に一致する。たとえば、複数の信号出力ユニットUは、Z軸方向から見て、1行32列で二次元配列されている。本実施形態の変形例において、複数の信号出力ユニットUは、Y軸方向に配列されていてもよい。複数の信号出力ユニットUは、行列状に二次元配列されていてもよい。
【0071】
各信号出力ユニットUは、複数の画素Gと複数のMOSスイッチ回路15とを含んでいる。各信号出力ユニットUは、MOSスイッチ回路15を介して画素Gからの信号を出力する。複数の画素Gは、規則的な間隔で配列されている。複数の画素Gは、X軸方向とY軸方向との少なくとも一方に配列されている。
【0072】
図6に示されている構成において、各信号出力ユニットUにおいて、複数の画素Gは、Y軸方向に一列に配列されている。たとえば、複数の画素Gは、Z軸方向から見て、各信号出力ユニットUにおいて、32行1列で二次元配列されている。本実施形態の変形例において、複数の信号出力ユニットUにおいて、複数の画素Gは、X軸方向に配列されていてもよい。複数の画素Gは、各信号出力ユニットUにおいて、行列状に二次元配列されていてもよい。さらに換言すれば、各信号出力ユニットUは、X軸方向に配列されている複数の画素列を含んでいてもよい。この場合、各画素列において、複数の画素GがY軸方向に配列される。
【0073】
本実施形態において、受光ユニット3は、信号出力ユニットUごとに互いに異なるタイミングで光検出を行う。1つの信号出力ユニットUに含まれる複数の画素Gは、たとえば、同一のタイミングで光検出を行う。本実施形態の変形例として、受光ユニット3は、任意に組み合わされた複数の信号出力ユニットUごとに互いに異なるタイミングで光検出を行ってもよい。この変形例において、たとえば、組み合わされた複数の信号出力ユニットUに含まれる複数の画素Gは、同一のタイミングで光検出を行う。受光ユニット3は、全ての信号出力ユニットUにおいて同一のタイミングで光検出を行ってもよい。
【0074】
各信号出力ユニットUは、少なくとも光検出部6とスイッチアレイ部7とを含んでいる。複数の画素Gは、
図6及び
図7に示されているように、Z軸方向から見て、行列状に二次元配列されている。複数のMOSスイッチ回路15は、
図7に示されているように、Z軸方向から見て、行列状に二次元配列されている。受光ユニット3において、各画素Gと画素Gに対応するMOSスイッチ回路15とは、Z軸方向から見て、矩形状を呈する1つの領域に配置されている。Z軸方向から見て、互いに対応する画素GとMOSスイッチ回路15とのセットが、受光ユニット3においてXY軸方向に二次元配列されている。
【0075】
各画素Gは、画素領域αに設けられている。
図6及び
図7において、理解を容易にするため、互いに隣り合う画素領域αは、互いに離間するように示されている。しかし、実際には、互いに隣り合う画素領域αは接していてもよい。画素領域αは、Z軸方向から見て、画素Gが占める領域である。換言すれば、画素領域αは、Z軸方向から見て、画素Gに含まれる複数のAPD11が占める領域である。画素領域αは、Z軸方向から見て、各画素Gに含まれる全てのAPD11のうち外周に位置している複数のAPD11の縁によって画定されている。
【0076】
回路基板50は、上述した読出しライン10と制御ライン20とを含んでいる。読出しライン10は、接続されている複数の画素Gからの検出信号を信号処理部9に伝達する。制御ライン20は、スイッチ制御部8からの制御信号をスイッチアレイ部7に伝達する。
【0077】
たとえば、回路基板50は、
図6に示されているように、X軸方向に延在する複数の読出しライン10を含んでいる。各読出しライン10は、複数のMOSスイッチ回路15のうち対応するMOSスイッチ回路15と信号処理部9とを電気的に接続する。各読出しライン10は、互いに異なる信号出力ユニットUの複数の画素Gに電気的に接続されている。各読出しライン10は、X軸方向に配列されている複数の画素Gに対応する複数のMOSスイッチ回路15に接続されている。互いに異なる信号出力ユニットUに含まれており、かつ、一列に配列されている複数のMOSスイッチ回路15は、同一の読出しライン10に接続されている。換言すれば、X軸方向に配列されている複数のMOSスイッチ回路15は、同一の読出しライン10に接続されている。複数の信号処理部9は、互いに異なる読出しライン10に接続されている。
【0078】
各読出しライン10は、X軸方向に配列されている複数の画素Gに対応するスイッチ21の端子24bに接続されている。複数の信号出力ユニットUが1行32列で配列されている場合、各読出しライン10は、32個の画素Gに電気的に接続されている。光検出装置1は、複数の読出しライン10のうち対応する読出しライン10に接続されている複数の信号処理部9を含んでいる。読出しライン10と信号処理部9とは、一対一の関係で接続されている。複数の画素Gが各信号出力ユニットUにおいて32行1列で二次元配列されている場合、光検出装置1は32個の読出しライン10と32個の信号処理部9とを含んでいる。
【0079】
たとえば、回路基板50は、
図6に示されているように、各信号出力ユニットU内の複数の画素Gの配列方向に沿って延在する複数の制御ライン20を含んでいる。同一の信号出力ユニットUに含まれる複数のMOSスイッチ回路15は、同一の制御ライン20に接続される。互いに異なる信号出力ユニットUに含まれる複数のMOSスイッチ回路15は、互いに異なる制御ライン20に接続されている。同一の制御ライン20に接続されている複数のMOSスイッチ回路15は、一列に配列されている。同一の制御ライン20a、同一の制御ライン20b、及び、同一の制御ライン20cに接続されている複数のMOSスイッチ回路15は、一列に配列されている。
【0080】
たとえば、複数の制御ライン20は、
図6に示されているように、信号出力ユニットUごとに3本の制御ライン20a,20b,20cを含んでいる。制御ライン20aは、各信号出力ユニットU内の複数のスイッチ21に接続されており、各スイッチ21に制御信号を伝達する。制御ライン20bは、各信号出力ユニットU内の複数のスイッチ22に接続されており、各スイッチ22に制御信号を伝達する。制御ライン20cは、各信号出力ユニットU内の複数のスイッチ23に接続されており、各スイッチ23に制御信号を伝達する。制御ライン20aは、第一制御ラインに相当する。制御ライン20bは、第二制御ラインに相当する。制御ライン20cは、第三制御ラインに相当する。
【0081】
たとえば、同一の信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ21は、同一の制御ライン20aに接続されている。同一の信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ22は、同一の制御ライン20bに接続されている。同一の信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ23は、同一の制御ライン20cに接続されている。
【0082】
たとえば、各制御ライン20a,20b,20cは、Y軸方向に延在している。各制御ライン20a,20b,20cは、Y軸方向に配列されている複数の画素Gに対応する複数のMOSスイッチ回路15に接続されている。制御ライン20aは、Y軸方向に配列されている複数の画素Gに対応する複数のスイッチ21の制御端子に接続されている。制御ライン20bは、Y軸方向に配列されている複数の画素Gに対応する複数のスイッチ22の制御端子に接続されている。制御ライン20cは、Y軸方向に配列されている複数の画素Gに対応する複数のスイッチ23の制御端子に接続されている。
【0083】
たとえば、スイッチ制御部8によるスイッチ21,22,23の状態の切り換えによって、複数の画素Gからの検出信号が、列ごとに複数の信号処理部9に複数の読出しライン10を介して出力される。複数の信号処理部9は、複数の読出しライン10を介して取得された検出信号を並行して処理する。換言すれば、同一の信号出力ユニットUに含まれる複数の画素Gからの検出信号が、複数の信号処理部9において時間的に並行に処理される。複数の信号処理部9は、信号出力ユニットUごとに信号を処理する。
【0084】
各APD11は、
図7に示されているように、アクティブエリア13を含んでいる。アクティブエリア13は、光検出基板40に含まれる半導体基板の主面において、第一導電型の半導体領域に囲まれている第二導電型の半導体層である。アクティブエリア13は、第一導電型の半導体領域によって画定されている。アクティブエリア13は、不純物がドープされることによって形成されている。第一導電型はたとえばN型であり、第二導電型はたとえばP型である。本実施形態の変形例として、第一導電型がP型であり、第二導電型がN型であってもよい。
【0085】
たとえば、各画素Gは、二次元配列された複数のアクティブエリア13を含んでいる。
図7に示されている構成において、各アクティブエリア13は、Z軸方向から見て、正方形状である。各アクティブエリア13は、Z軸方向から見て、円形状又は長方形状であってもよい。
図7に示されている構成において、各画素Gは、Z軸方向から見て正方行列で配列されたアクティブエリア13を含んでいる。本実施形態の変形例として、各画素Gは、一列に配列された複数のアクティブエリア13を含んでいてもよい。
【0086】
Z軸方向から見て、各アクティブエリア13の面積は、たとえば、2μm2以上640μm2以下である。「アクティブエリアの面積」とは、アクティブエリアの投影面積である。「投影面積」とは、対象物のみを取り出して所定方向の平行な光によってこの対象物を照らしたと仮定した場合に、上記所定方向に直交する面にできると想定される当該対象物の影の面積を意味する。たとえば、Z軸方向に見たアクティブエリア13の投影面積は、このアクティブエリア13のみを取り出してZ軸方向の平行な光によって、このアクティブエリア13を照らしたと仮定した場合に、Z軸方向に直交する面にできると想定されるアクティブエリア13の影の面積である。
【0087】
APD11の縁は、アクティブエリア13の位置によって決定される。APD11の縁は、たとえば、Z軸方向から見て、互いに隣り合うアクティブエリア13の縁から等距離に位置する。最も端に位置するAPD11の縁は、たとえば、Z軸方向から見て、互いに隣り合うアクティブエリア13の縁間の距離の半分の距離だけ、アクティブエリア13の縁から離れて位置する。
【0088】
各画素Gは、複数の受光領域Rを含んでいる。複数のAPD11の各々が、受光領域Rを形成している。受光領域Rは、APD11の動作時において、この受光領域Rを形成するAPD11のアクティブエリア13から拡がる空乏層のうち、検出光が入射し得る領域である。したがって、遮光部材によって入射面が制限されている場合、受光領域Rは、空乏層よりも狭い。換言すれば、各APD11の受光領域Rは、APD11によって検出される検出光が電子と正孔とに変換される領域である。さらに換言すれば、各APD11の受光領域Rは、各APD11において入射光を検出可能な領域である。受光ユニット3は、各受光領域Rに入射した光を検出する。たとえば、各画素Gは、二次元配列された複数の受光領域Rを含んでいる。各受光領域Rは、各アクティブエリア13に対応して位置する。各受光領域Rは、たとえば、Z軸方向から見て、上述したAPD11の縁によって画定される領域と一致する。Z軸方向から見て、各APD11の受光領域Rの面積は、たとえば、5m2以上650μm2以下である。「各APDの受光領域の面積」とは、各APDの受光領域の投影面積である。本実施形態において、各APD11の受光領域Rの面積は、各アクティブエリア13の面積よりも大きい。
【0089】
図7に示されている構成において、各画素領域αは、Z軸方向から見て、正方形状を呈している。各画素領域αは、Z軸方向から見て、長方形状であってもよい。画素領域αは、Y軸方向の幅W1がX軸方向の幅W1よりも大きくてもよい。この場合、たとえば、Y軸方向の幅W1が画素領域αの最大幅であり、X軸方向の幅W1が画素領域αの最小幅であってもよい。
【0090】
複数の画素Gは、X軸方向とY軸方向との少なくとも一方に一定のピッチW2で配列されている。画素Gの最小のピッチは、たとえば、Z軸方向から見た場合における受光領域Rの最大幅の2倍よりも大きい。本明細書において、「画素のピッチ」とは、Z軸方向から見た場合における、互いに隣り合う画素の中心間の距離である。「画素の中心」は、Z軸方向から見た場合における画素の幾何中心である。「Z軸方向から見た場合における受光領域の最大幅」は、Z軸方向から見た場合において受光領域の最も長い幅の値を意味する。
【0091】
複数の画素Gは、たとえば、X軸方向とY軸方向とにおいて同一のピッチW2で配列されている。本実施形態の変形例として、複数の画素Gは、たとえば、X軸方向とY軸方向とにおいて互いに異なるピッチW2で配列されていてもよい。たとえば、Y軸方向のピッチW2がX軸方向のピッチW2よりも小さくてもよい。この場合、たとえば、Y軸方向のピッチW2が画素Gの最小のピッチであり、X軸方向のピッチW2が画素の最大のピッチであってもよい。
【0092】
各画素Gに含まれているAPD11は、X軸方向とY軸方向との少なくとも一方に一定のピッチW3で配列されている。本明細書において、「APDのピッチ」とは、Z軸方向から見た場合における、互いに隣り合うAPDの中心間の距離である。「APDの中心」は、Z軸方向から見た場合におけるAPDの幾何中心である。APD11の中心は、たとえば、Z軸方向から見た場合におけるアクティブエリア13の幾何中心である。APD11の中心は、たとえば、Z軸方向から見た場合における受光領域Rの幾何中心であってもよい。
【0093】
複数のAPD11は、たとえば、X軸方向とY軸方向とにおいて同一のピッチW3で配列されている。本実施形態の変形例として、複数のAPD11は、たとえば、X軸方向とY軸方向とにおいて互いに異なるピッチW3で配列されていてもよい。たとえば、Y軸方向のピッチW3がX軸方向のピッチW3よりも小さくてもよい。この場合、たとえば、Y軸方向のピッチW3がAPD11の最小のピッチであり、X軸方向のピッチW3が画素の最大のピッチであってもよい。
【0094】
各MOSスイッチ回路15は、MOSスイッチ回路領域βに設けられている。MOSスイッチ回路領域βは、MOSスイッチ回路15が占める領域である。換言すれば、MOSスイッチ回路領域βは、Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路15に含まれる複数のスイッチ21,22,23が占める領域である。MOSスイッチ回路領域βは、Z軸方向から見て、各MOSスイッチ回路15に含まれる全てのスイッチ21,22,23のうち外周に位置している複数のスイッチ21,22,23の縁によって画定されている。スイッチ21,22,23の縁とは、各スイッチを構成するウェルの縁である。
【0095】
MOSスイッチ回路領域βは、たとえば、長方形状を呈している。MOSスイッチ回路領域βは、正方形状又は円形状を呈していてもよい。たとえば、MOSスイッチ回路領域βの最大の幅W4は、画素領域αの最大の幅W1よりも小さい。たとえば、MOSスイッチ回路領域βの最小の幅W5は、画素領域αの最小の幅W1よりも小さい。たとえば、MOSスイッチ回路領域βの最大の幅W4は、画素Gの最小のピッチW2よりも小さい。たとえば、MOSスイッチ回路領域βの最小の幅W5は、画素Gの最小のピッチW2よりも小さい。Z軸方向から見て、各MOSスイッチ回路領域βの面積は、たとえば、1000μm2以上である。各MOSスイッチ回路領域βに含まれる各スイッチ21,22,23は、たとえば、3.3Vよりも大きい耐圧を有している。「MOSスイッチ回路領域の面積」とは、MOSスイッチ回路領域の投影面積である。
【0096】
MOSスイッチ回路領域βは、Z軸方向から見て、このMOSスイッチ回路領域βのMOSスイッチ回路15に対応する画素Gが占める画素領域αと重なっている。本明細書において、「重なっている」とは、少なくとも一部が重なっている場合を含んでおり、重なっていない部分を含んでいてもよい。たとえば、MOSスイッチ回路領域βは、Z軸方向から見て、複数の画素Gのうち対応する画素Gの画素領域α内に位置している。
【0097】
Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、このMOSスイッチ回路領域βに重なっている画素領域αに形成されている1つの受光領域Rの面積よりも大きい。MOSスイッチ回路領域βは、Z軸方向から見て、このMOSスイッチ回路領域βに重なっている画素領域αに形成される複数の受光領域Rと重なっている。したがって、Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、このMOSスイッチ回路領域βに重なっている画素領域αに形成されている1つのアクティブエリア13の面積よりも大きい。MOSスイッチ回路領域βは、Z軸方向から見て、このMOSスイッチ回路領域βに重なっている画素領域αに形成される複数のアクティブエリア13と重なっている。
【0098】
Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、画素領域の面積以下である。「画素領域の面積」とは、画素領域の投影面積である。たとえば、Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、このMOSスイッチ回路領域βに重なっている画素領域αの面積よりも小さい。
【0099】
たとえば、Z軸方向から見て、1つのMOSスイッチ回路15に含まれる複数のスイッチ21,22,23の面積の合計は、このMOSスイッチ回路15に接続されている1つのAPD11の受光領域Rの面積よりも大きい。「スイッチの面積」とは、スイッチの投影面積である。たとえば、Z軸方向から見て、1つのMOSスイッチ回路15に含まれる複数のスイッチ21,22,23の面積の合計は、このMOSスイッチ回路15が占めるMOSスイッチ回路領域βに重なっている画素領域αの面積よりも小さい。
【0100】
Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、このMOSスイッチ回路領域βに重なっている画素Gに含まれる複数のAPD11のピッチW3を2乗した値よりも大きい。「APD11のピッチW3を2乗した値」は、ピッチW3を一辺とする正方形の面積に相当する。本実施形態の変形例として、画素Gに含まれる複数のAPD11がX軸方向とY軸方向とにおいて互いに異なるピッチW3で配列されている場合、「ピッチW3を2乗した値」とは、Y軸方向のピッチW3とX軸方向のピッチW3とのうち大きい方のピッチW3を2乗した値に相当する。
【0101】
本実施形態の変形例として、画素Gに含まれる複数のAPD11がX軸方向とY軸方向とにおいて互いに異なるピッチW3で配列されている場合、MOSスイッチ回路領域βの面積は、Y軸方向のピッチW3とX軸方向のピッチW3とを乗じた値よりも大きくてもよい。「Y軸方向のピッチW3とX軸方向のピッチW3とを乗じた値」は、比較対象のMOSスイッチ回路領域βに重なっている画素Gに含まれる複数のAPD11について、Y軸方向のピッチW3とX軸方向のピッチW3とをそれぞれ、長辺及び短辺とする矩形の面積に相当する。
【0102】
図8及び
図9に示されている構成において、受光ユニット3は、光検出基板40と回路基板50との間に配置された複数のバンプ電極Bをさらに備えている。光検出基板40と回路基板50とは、複数のバンプ電極Bによって物理的かつ電気的に接続されている。たとえば、光検出基板40と回路基板50との対向方向は、Z軸方向に相当する。各バンプ電極Bは、複数の画素Gのうち対応する画素Gに接続されている。複数のバンプ電極Bと複数の画素Gは、一対一の関係で互いに接続されている。バンプ電極Bは、このバンプ電極Bに対応する画素Gが含んでいる複数のAPD11とMOSスイッチ回路15とを電気的に接続している。たとえば、バンプ電極Bは、Z軸方向から見て、このバンプ電極Bに画素Gが含んでいる複数のAPD11のうちの1つの受光領域R内に配置されている。たとえば、バンプ電極Bは、Z軸方向から見て、このバンプ電極Bに対応する画素Gの画素領域α内に配置されている。換言すれば、本実施形態において、受光領域R及び画素領域αは、Z軸方向から見て、バンプ電極Bよりも大きい。本実施形態の変形例として、受光領域Rは、Z軸方向から見て、バンプ電極Bよりも小さくてもよい。
【0103】
光検出基板40は、たとえば、上述した主面40aに対向する主面40bをさらに有している。主面40a及び主面40bは、たとえば、XY軸平面に平行である。複数の画素Gは、主面40aに沿った方向に配列されている。複数のAPD11は、複数の画素Gのうち対応する画素Gが占める画素領域αにおいて、主面40aに沿った方向に配列された複数の受光領域Rを形成している。主面40aに入射した光が、受光領域Rへ導かれる。
【0104】
光検出基板40は、上述した光検出部6を含んでいる。光検出基板40は、平面視で矩形状を呈している半導体基板45を含んでいる。半導体基板45は、化合物半導体からなる。半導体基板45は、Si、InP、InGaASP、InGaAS、GaAS、InGaAS、AlGaAS、及び、InAlGaASから選択された少なくとも一つを含んでいる。半導体基板45は、たとえば、N型の半導体基板である。本実施形態の変形例として、半導体基板45は、たとえば、P型の半導体基板であってもよい。
【0105】
半導体基板45は、複数のAPD11を含んでいる。複数のAPD11は、たとえば、半導体基板45において、XY軸方向に二次元配列されている。
図8及び
図9に示されている構成において、各APD11は、主面40b側にアクティブエリア13を含んでいる。アクティブエリア13は、たとえば、主面40b側から半導体基板45に不純物がドープされることによって形成される。アクティブエリア13は、たとえば、P型である。
【0106】
各画素Gに含まれる複数のAPD11は、互いに電気的に並列に接続されている。各APD11の端子11bは、バンプ電極Bを介して回路基板50に接続されている。各APD11は、ブレークダウン電圧以上の電圧が付与されている状態において、受光領域Rへの光の入射に応じて検出信号を回路基板50に出力する。
【0107】
光検出基板40は、電極層41と、電極パッド42と、パッシベーション層43とをさらに備えている。同一の画素Gに含まれる複数のAPD11は、半導体基板45の主面40b側において、電極層41に接続されている。半導体基板45の主面40b側は、電極層41及びパッシベーション層43によって覆われている。複数の画素Gの各々に含まれる複数のAPD11は、電極層41によって、互いに並列に接続されている。電極層41には、電極パッド42が接続されている。電極層41は、電極パッド42が設けられている部分を除いて、パッシベーション層43によって覆われている。電極パッド42の少なくとも一部は、パッシベーション層43から露出している。パッシベーション層43は、たとえば、絶縁層である。パッシベーション層43は、たとえば、シリコン酸化膜を含んでいる。
【0108】
電極パッド42は、パッシベーション層43から露出している部分において、バンプ電極Bと接合されている。各画素Gに含まれる複数のAPD11は、電極層41と電極パッド42とを通して、対応する1つのバンプ電極Bに接続されている。同一の画素Gに含まれる複数のAPD11は、同一の電極層41と同一の電極パッド42とを通して、同一のバンプ電極Bに接続されている。互いに異なる画素Gに含まれる複数のAPD11は、互いに異なる電極層41と互いに異なる電極パッド42とを通して、互いに異なる1つのバンプ電極Bに接続されている。換言すれば、画素Gとバンプ電極Bとは、一対一の関係で接続されている。
【0109】
回路基板50は、たとえば、互いに対向する主面50aと主面50bとを有している。回路基板50は、平面視で矩形形状を呈している。光検出基板40は、回路基板50に接続されている。主面50aと主面40bとが対向している。光検出基板40及び回路基板50の各主面と平行な面がXY軸平面に相当し、各主面に直交する方向がZ軸方向に相当する。
【0110】
回路基板50は、上述したスイッチアレイ部7と、スイッチ制御部8と、信号処理部9とを含んでいる。少なくともスイッチアレイ部7は、Z軸方向から見て、光検出基板40の縁によって画定される領域内に配置されている。少なくともスイッチアレイ部7は、Z軸方向から見て、主面40aと重なる領域に配置される。本実施形態の変形例として、信号処理部9は、光検出基板40及び回路基板50と別体で構成された基板に含まれていてもよい。この変形例において、信号処理部9が含まれる基板と回路基板50とは、ワイヤボンディングによって互いに電気的に接続されてもよい。
【0111】
スイッチアレイ部7と、スイッチ制御部8と、信号処理部9との一部又は全体は、集積回路によって構成されている。この集積回路は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)を含む。回路基板50は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成されている。
【0112】
スイッチアレイ部7は、上述したように複数のMOSスイッチ回路15を含んでいる。複数のMOSスイッチ回路15は、入射面Sに沿った方向に配列されている。複数のMOSスイッチ回路15は、それぞれに対応する画素Gに電気的に接続されている。受光領域Rを形成する各APD11は、複数のMOSスイッチ回路15うち対応するMOSスイッチ回路15に接続されている。たとえば、同一の画素Gに含まれる複数のAPD11は、同一のバンプ電極Bを介して、同一のMOSスイッチ回路15に接続されている。互いに異なる画素Gに含まれる複数のAPD11は、たとえば、互いに異なるバンプ電極Bを通して、互いに異なるMOSスイッチ回路15に接続されている。各MOSスイッチ回路15は、複数のスイッチ21,22,23を含んでいる。
図8及び
図9には、回路基板50のうち、スイッチアレイ部7が示されている。
図8及び
図9には、スイッチ21及びスイッチ22のみが示されている。
【0113】
回路基板50は、
図8及び
図9に示されているように、シリコン基板51と、シリコン基板51上に積層された配線層52と、配線層52上に積層されたパッシベーション層53とを含んでいる。スイッチアレイ部7は、シリコン基板51及び配線層52によって構成されている。シリコン基板51は、複数のMOSスイッチ回路15を形成する複数のウェル60を含んでいる。各ウェル60には、ドレイン61とソース62とが形成されている。配線層52は、複数の電極パッド54、複数のビア55,56、互いに異なる層に配置された複数のメタル層57,58、及び、絶縁層59を含んでいる。配線層52は、さらに、複数のMOSスイッチ回路15を形成する不図示のゲートを含んでいる。配線層52は、さらに、複数の読出しライン10を含んでいる。
【0114】
配線層52は、電極パッド54が設けられている部分を除いて、パッシベーション層53によって覆われている。電極パッド54の少なくとも一部は、パッシベーション層53から露出している。パッシベーション層53は、たとえば、絶縁層である。パッシベーション層53は、たとえば、シリコン酸化膜である。
【0115】
電極パッド54は、主面50a側において、MOSスイッチ回路15ごとに形成されており、バンプ電極Bを通して光検出基板40の電極パッド42と接続されている。複数の電極パッド54は、主面50a側で二次元配列されている。各電極パッド54は、バンプ電極Bを通して接続されている画素Gと重なるように配置されている。
【0116】
複数のビア55は、絶縁層59を貫通して形成され、電極パッド54と複数のメタル層57とスイッチ21,22,23の端子24aとを接続している。複数のビア56は、絶縁層59を貫通して形成され、メタル層58とスイッチ21,22,23の端子24bとを接続している。MOSスイッチ回路15には、n型MOSトランジスタ又はp型MOSトランジスタが用いられる。
【0117】
たとえば、電極パッド54は、APD11のカソードに接続されている。MOSスイッチ回路15には、p型MOSトランジスタが用いられる。この場合、ドレイン61はスイッチ21,22,23の端子24aに相当し、ソース62はスイッチ21,22,23の端子24bに相当する。この場合、複数のビア55は、絶縁層59を貫通して形成され、電極パッド54と複数のメタル層57とドレイン61とを接続している。したがって、各画素Gは、電極パッド42、バンプ電極B、電極パッド54、複数のビア55、複数のメタル層57を介して、複数のドレイン61のうち対応するドレイン61に接続されている。各画素Gは、当該画素Gに対応するMOSスイッチ回路15のドレイン61に接続されている。複数のビア56は、絶縁層59を貫通して形成され、メタル層58とソース62とを接続している。メタル層58は、ビア56を通して、スイッチ21,22,23のうち対応するスイッチのソース62に接続されている。
【0118】
スイッチ21の端子24bは、メタル層58とビア56とを通して、複数の読出しライン10のうち対応する読出しライン10に接続されている。スイッチ22及びスイッチ23の端子24bは、読出しライン10に接続されていない。スイッチ21、スイッチ22、及び、スイッチ23の端子24bは、互いに電気的に離間している。換言すれば、スイッチ21、スイッチ22、及び、スイッチ23の端子24bは、互いに絶縁されている。スイッチ22の端子24b、及び、スイッチ23の端子24bは、それぞれ、メタル層58を介して、不図示の互いに異なる電極に接続されている。たとえば、光検出装置1の複数の画素Gに接続されているスイッチ22の端子24bは、メタル層58を介して共通の電極に接続されている。たとえば、光検出装置1の複数の画素Gに接続されているスイッチ23の端子24bは、メタル層58を介して共通の電極に接続されている。
【0119】
図8及び
図9に示されている構成において、読出しライン10は、メタル層58及びビア56を通して接続されているソース62と信号処理部9のフロントエンド回路16とを電気的に接続する。信号処理部9は、たとえば、MOSスイッチ回路15のゲートに閾値以上の電位が付与されることによって、読出しライン10を介して、このMOSスイッチ回路15に接続されている画素Gからの信号を受ける。
【0120】
図6に示されているように、回路基板50は、さらにポート部67を含んでいる。ポート部67は、複数の電極を含んでいる。ポート部67には、不図示の電源部が接続されている。ポート部67には、電源部から電圧が付与される。電源部は、受光ユニット3に含まれていてもよいし、受光ユニット3の外部に設けられていてもよい。光検出基板40及び回路基板50は、ポート部67に付与された電圧に応じて動作する。ポート部67に付与された電圧によって、各APD11及び各スイッチ21,22,23が動作する。回路基板50は、信号処理部9によって処理された信号をポート部67から回路基板50の外部に出力する。本実施形態において、ポート部67は、1つの領域に集約されている。X軸方向において、入射面Sとポート部67とが配列されている。たとえば、入射面Sが矩形状である場合、ポート部67は、入射面Sの一辺に沿って配置されていてもよい。本実施形態の変形例として、ポート部67は、互いに離間した複数の領域に設けられていてもよい。この変形例において、入射面Sが矩形状である場合、ポート部67は、入射面Sの二辺、三辺、又は四辺のそれぞれに沿って配置されていてもよい。
【0121】
次に、
図10及び
図11を参照して、本実施形態におけるスイッチアレイ部7及びスイッチ制御部8の動作の一例についてより詳細に説明する。
図10及び
図11は、スイッチアレイ部7を制御する制御信号のタイミングチャートである。
【0122】
スイッチ制御部8は、各画素Gに対応するMOSスイッチ回路15の制御によって、光を検出する位置に配置されている画素Gの動作状態を、検出信号を読出可能な状態に設定し、それ以外の画素Gの動作状態を、検出信号を読出不可能な状態に設定する。スイッチ制御部8は、光を検出する位置に配置されている画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出可能な状態に設定し、それ以外の画素Gに含まれるAPD11から信号を読出不可能な状態に設定する。たとえば、
図2に示した構成において、光検出装置1は、投光ユニット2がレーザ光B1を照射した照射位置と投光ユニット2がレーザ光B1の照射を行ったタイミングとに基づいて、各画素Gからの検出信号を読出可能な状態とするタイミングを決定する。光検出装置1は、信号出力ユニットUごとに、複数の画素Gのそれぞれに設定する状態を決定する。スイッチ制御部8は、たとえば、スイッチ21,22,23のうちのいずれか1つを導通状態とし、スイッチ21,22,23のうちの残りを遮断状態とするように制御を行う。
【0123】
たとえば、スイッチ21,22,23の端子24aは、画素GのAPD11のカソードに接続されている。スイッチ21の端子24bは、読出しライン10に接続されている。スイッチ21の端子24bには、スイッチ21が導通状態である場合に、APD11にブレークダウン電圧以上の電圧が付与されるように電位が付与されている。スイッチ21の端子24bには、受光ユニット3の外部からポート部67に付与された電位に基づく電位が付与される。たとえば、受光ユニット3の外部からポート部67を介してAPD11のアノードに-50Vの電位が付与されている場合に、スイッチ21の端子24bには0.6Vの電位が付与されている。
【0124】
スイッチ22の端子24bは、読出しライン10に接続されていない。スイッチ22の端子24bには、スイッチ22が導通状態である場合に、APD11にブレークダウン電圧以上の電圧が付与されるように電位が付与されている。スイッチ22の端子24bには、受光ユニット3の外部からポート部67に付与された電位に基づく電位が付与される。たとえば、受光ユニット3の外部からポート部67を介してAPD11のアノードに-50Vの電位が付与されている場合に、スイッチ22の端子24bには0.6Vの電位が付与されている。
【0125】
スイッチ23の端子24bは、読出しライン10に接続されていない。スイッチ23の端子24bには、スイッチ23が導通状態である場合に、APD11にブレークダウン電圧よりも小さい電圧が付与されるように電位が付与されている。スイッチ23の端子24bには、受光ユニット3の外部からポート部67に付与された電位に基づく電位が付与される。たとえば、受光ユニット3の外部からポート部67を介してAPD11のアノードに-50Vの電位が付与されている場合に、スイッチ23の端子24bには-15Vの電位が付与されている。
【0126】
スイッチ制御部8は、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態において、スイッチ23を導通状態に設定し、スイッチ21及びスイッチ22を遮断状態に設定する。この場合、画素Gに入射する光を検出することが可能である。スイッチ制御部8は、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出可能な状態において、スイッチ21を導通状態に設定し、スイッチ22及びスイッチ23を遮断状態に設定する。この場合、画素Gに入射する光を検出することは不可能である。スイッチ制御部8は、画素Gの動作状態を切り変える際に、スイッチ22を導通状態に設定する。
【0127】
たとえば、スイッチ制御部8は、光検出装置1内の別の制御部から、信号出力ユニットUごとに、画素Gからの検出信号を読出可能な状態に設定することを示す情報を取得する。たとえば、スイッチ制御部8は、
図10及び
図11に示されている列選択信号をクロック信号と共に取得する。
【0128】
スイッチ制御部8は、列選択信号がLowからHighに切り換わると、クロック信号に基づくタイミングで、この列選択信号に対応する信号出力ユニットUに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、APD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える。スイッチ制御部8は、列選択信号がLowからHighに切り換わると、クロック信号に基づいてスイッチ21,22,23の状態を切り換える。スイッチ21,22,23の状態の切換によって、列選択信号に対応する信号出力ユニットUに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、APD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える。
【0129】
スイッチ制御部8は、列選択信号がHighからLowに切り換わった場合、クロック信号に基づくタイミングで、この列選択信号に対応する信号出力ユニットUに含まれるAPD11から検出信号を読出可能な状態から、APD11から検出信号を読出不可能な状態に切り換える。スイッチ制御部8は、列選択信号がHighからLowに切り換わった場合も、クロック信号に基づいてスイッチ21,22,23の状態を切り換える。スイッチ21,22,23の状態の切換によって、列選択信号に対応する信号出力ユニットUに含まれるAPD11から検出信号を読出可能な状態から、APD11から検出信号を読出不可能な状態に切り換える。
【0130】
まず、
図10を参照して、検出信号を読出不可能な状態から検出信号を読出可能な状態に画素Gの状態を切り換える場合の流れの一例についてさらに詳細に説明する。換言すれば、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える場合の処理の流れについて説明する。
図10は、画素Gからの検出信号を読出不可能な状態から画素Gからの検出信号を読出可能な状態に画素Gの状態を切り換える場合における信号のタイミングチャートである。スイッチ制御部8は、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、スイッチ23、スイッチ22、スイッチ21の順に、導通状態となるように制御を行う。
【0131】
スイッチ制御部8は、画素Gの状態を、検出信号を読出不可能な状態から検出信号を読出可能な状態に切り換える場合に、スイッチ23が導通状態に設定されている段階と、スイッチ21が導通状態に設定されている段階との間に、スイッチ22が導通状態に設定されている段階を実行する。換言すれば、スイッチ制御部8は、画素Gの状態を、検出信号を読出不可能な状態から検出信号を読出可能な状態に切り変える場合に、スイッチ23、スイッチ22、スイッチ21の順に、スイッチ21,22,23が導通状態となるように制御を行う。
【0132】
スイッチ制御部8は、光検出装置1の動作が開始された後、クロック信号の1つ目の立ち上がりが入力されるまでスイッチ23を導通状態において維持する。スイッチ制御部8は、光検出装置1の動作が開始された後、クロック信号の2つ目の立ち上がりが入力されるまでスイッチ22を遮断状態において維持する。スイッチ制御部8は、光検出装置1の動作が開始された後、クロック信号の3つ目の立ち上がりが入力されるまでスイッチ21を遮断状態において維持する。クロック信号の1つ目の立ち上がりが入力されるまでスイッチ23が導通状態において維持されることによって、スイッチ23を介して画素Gに一定の電圧が付与されることによって、各APD11の動作状態が安定する。この場合、たとえば、スイッチ22を導通状態とした際に、各APD11がブレークダウン電圧以上の所望の電圧を維持するまでの時間が安定する。
【0133】
スイッチ制御部8は、列選択信号がLowからHighに切り換わった後のクロック信号の1つ目の立ち上がりに応じて、スイッチ23に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるように指示する。この結果、APD11のカソードは、-15Vの電位が付与されている状態からフローティング状態に切り変わる。この段階において、APD11は、ブレークダウン状態となっていない。
【0134】
次に、スイッチ制御部8は、列選択信号がLowからHighに切り換わった後のクロック信号の2つ目の立ち上がりに応じて、スイッチ22に対して、遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。この結果、APD11のカソードは、フローティング状態から0.6Vの電位が付与されている状態に切り変わる。この段階において、APD11は、ブレークダウン状態となるが、読出しライン10に接続されていない。
【0135】
次に、スイッチ制御部8は、列選択信号がLowからHighに切り換わった後のクロック信号の3つ目の立ち上がりに応じて、スイッチ22に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるように指示すると共に、スイッチ21に対して、遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。この結果、APD11のカソードは、0.6Vの電位が付与され、かつ、読出しライン10に接続されていない状態から、0.6Vの電位が付与され、かつ、読出しライン10に接続された状態に切り換わる。この段階において、APD11は、ブレークダウン状態となり、かつ、読出しライン10に接続される。
【0136】
以上の様に、スイッチ制御部8は、クロック信号の1つ目の立ち上がりに応じて、スイッチ23に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるように指示し、クロック信号の2つ目の立ち上がりに応じて、スイッチ22に対して、遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。クロック信号の1つ目の立ち上がりから、クロック信号の2つ目の立ち上がりまでには、所定の時間が経過する。よって、スイッチ制御部8は、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、APD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、スイッチ23に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるよう指示し、所定時間経過した後に、スイッチ22に対して遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。
【0137】
スイッチ制御部8は、クロック信号の3つ目の立ち上がりに応じて、スイッチ22に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるように指示すると共に、スイッチ21に対して、遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。よって、スイッチ制御部8は、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、APD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、スイッチ22に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるよう指示すると同一のタイミングで、スイッチ21に対して、遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。
【0138】
続いて、
図11を参照して、検出信号を読出可能な状態から検出信号を読出不可能な状態に画素Gの状態を切り換える場合の流れの一例についてさらに詳細に説明する。換言すれば、画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出可能な状態から、APD11から検出信号を読出不可能な状態に切り換える場合の処理の流れについて説明する。
図11は、検出信号を読出可能な状態から検出信号を読出不可能な状態に画素Gの状態を切り換える場合における信号のタイミングチャートである。
【0139】
スイッチ制御部8は、画素Gの状態を、検出信号を読出可能な状態から検出信号を読出不可能な状態に切り換える場合には、スイッチ21が導通状態に設定されている段階と、スイッチ23が導通状態に設定されている段階との間に、スイッチ22が導通状態に設定されている段階を実行しない。換言すれば、スイッチ制御部8は、画素Gの状態を、検出信号を読出可能な状態から検出信号を読出不可能な状態に切り変える場合には、スイッチ21、スイッチ23の順に、スイッチ21,23が導通状態となるように制御を行う。この際、スイッチ21が遮断状態とされる後に、スイッチ23を介して各APD11にブレークダウン電圧より小さい電圧が付与されなければ、各APD11のブレークダウン状態が維持される。スイッチ21が遮断状態とされる後に、スイッチ23を介して各APD11にブレークダウン電圧より小さい電圧が付与されれば、所望のタイミングで、検出信号を読出可能な状態から検出信号を読出不可能な状態に切り換えられる。
【0140】
スイッチ制御部8は、列選択信号がHighからLowに切り換わった後のクロック信号の1つ目の立ち上がりに応じて、スイッチ21に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるように指示する。この結果、APD11のカソードは、0.6Vの電位が付与され、かつ、読出しライン10に接続されている状態から、フローティング状態に切り換わる。この段階において、APD11と読出しライン10との接続が切断される。
【0141】
次に、スイッチ制御部8は、列選択信号がHighからLowに切り換わった後のクロック信号の2つ目の立ち上がりに応じて、スイッチ22に対して、遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。この結果、APD11のカソードは、フローティング状態から-15Vの電位が付与されている状態に切り変わる。この段階において、APD11は、ブレークダウン状態でなくなる。スイッチ制御部8は、列選択信号がHighからLowに切り換わった後のクロック信号の3つ目の立ち上がりの際には、スイッチ21,22,23に対して指示を行わない。
【0142】
次に、光検出装置1の作用効果について説明する。APDは、ブレークダウン電圧以上の電圧が付与されている状態において光が入射すると熱を発する。このため、APDにブレークダウン電圧以上の電圧が付与されている状態において、検出光以外の光が入射した場合にも熱を発する。APDの発熱量は、オーバー電圧が大きいほど大きい。光検出装置におけるAPDの数が多いほど、光検出装置における発熱量は大きい。APDが用いられる光検出装置においては、APDにおける発熱に起因して検出精度が低下するおそれがある。APDにおける発熱に起因して、光検出装置の検出結果に対する信頼性が確保される寿命も縮小されるおそれがある。
【0143】
このため、光検出装置1は、MOSスイッチ回路15を含んでいる。このMOSスイッチ回路15によって、複数の画素Gの動作状態を切り換えることができる。たとえば、検出光が入射する画素GのAPD11にブレークダウン電圧以上の電圧を付与し、それ以外の画素GのAPD11にブレークダウン電圧よりも小さい電圧を付与する。この結果、検出光以外の光の入射によるAPDの発熱が抑制され得る。
【0144】
光検出装置1において、Z軸方向から見て、各画素Gに電気的に接続されているMOSスイッチ回路領域βの面積は、1つの受光領域Rの面積よりも大きく、当該MOSスイッチ回路領域βは、複数の受光領域Rと重なっている。この場合、オーバー電圧の向上に耐え得るMOSスイッチ回路15を配置するスペースが確保されており、オーバー電圧の向上によってAPD11のPDEを向上することができる。
【0145】
各画素Gは、互いに電気的に並列に接続されていると共に各々が同一のMOSスイッチ回路15に接続されている複数のAPD11を含んでいる。このため、MOSスイッチ回路15の切り換えに応じて、各画素Gの複数のAPD11からの検出信号が合算されて出力される。したがって、
図5に示されているように、入射する光に応じて検出信号DSの強度が変化する。この場合、機能部17などによって、検出信号DSの強度が閾値THより大きいか否かを判定することによって、画素Gに入射した光が外乱光B3のみであるか否が判定され得る。Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、画素領域αの面積以下である。
【0146】
以上のような構成によれば、各画素Gに含まれる複数のAPD11が配置されている領域と重なるスペースが有効に活用されてMOSスイッチ回路15が配置される。オーバー電圧の向上に耐え得るMOSスイッチ回路15を配置するスペースが確保されており、APD11のPDEを向上することができる。さらには、検出光と外乱光との弁別が可能であり、外乱光の影響も抑制され得る。したがって、光検出の解像度の確保とAPD11のPDEの向上とが両立されながら、外乱光の影響が抑制され得る。すなわち、光検出の精度がさらに向上し得る。よって、光検出装置1は、画素Gの動作状態を切り換え可能な構成において、光検出の精度がさらに向上され得る。
【0147】
図12、
図13、
図14(a)、及び、
図14(b)は、光検出装置1の比較例を説明するための図である。
図12に示されているように、各画素101,102,103が1つのみのAPD11を含んでいる場合、各画素101,102,103のAPD11にMOSスイッチ回路15が接続される。換言すれば、複数のAPD11に互いに異なるMOSスイッチ回路15が接続される。
図12に示されている構成において、各MOSスイッチ回路15から出力された信号は、信号処理部109に入力される。信号処理部109において、各MOSスイッチ回路15から出力された信号は、MOSスイッチ回路15に接続されているバッファアンプリファイア126に入力される。各バッファアンプリファイア126から出力された信号は、バッファアンプリファイア126に接続されているコンパレータ127に入力され、アナログ信号からデジタル信号に変換される。各コンパレータ127から出力された信号は、時間相関比較回路130に入力される。時間相関比較回路130には、複数の画素101,102,103から出力された信号が、それぞれMOSスイッチ回路15、バッファアンプリファイア126、及び、コンパレータ127を介して入力される。
【0148】
図12に示されている構成において、
図13に示されているような波形の検出信号DSが各バッファアンプリファイア126から出力される。検出光が入射した場合と外乱光が入射した場合との間に違いはなく、光の入射に応じて一定のピーク値を示す検出信号が出力される。この場合、受光領域に入射する外乱光の影響を低減するため、たとえば、時間相関比較回路130において互いに異なる位置に配置されている画素の検出結果が比較され、この比較結果に応じて検出光と外乱光とが弁別される。
【0149】
たとえば、
図14(a)に示されているように複数の画素101,102,103がZ軸方向から見て二次元に配列されている場合において、画素101、画素102、画素103の検出信号が同時に時間相関比較回路130に入力され、これに基づいて検出光と外乱光とが弁別される。
図14(b)に示されているデータD101,D102,D103は、それぞれ、画素101、画素102、画素103から出力される検出信号がコンパレータ127においてデジタル化された信号のデータである。データD101,D102,D103のいずれにおいても、信号RSが示されている。データD101及びデータD103には、それぞれ、信号NSも示されている。この場合、信号RSは同一のタイミングで生じているのに対し、信号NSは他の信号と異なるタイミングで生じている。このため、互いに異なる画素101,102,103から出力される検出信号を比較することによって、信号RSは、検出光が入射したタイミングであると判断され、信号NSは、外乱光の入射などによるノイズであると判断され得る。
【0150】
しかし、この構成においては、検出光と外乱光との弁別のため、1つの画素に入射した光の検出に複数の画素が用いられる。これらの画素には、互いに異なるMOSスイッチ回路15が接続されている。したがって、光検出の解像度の確保と、MOSスイッチ回路15を配置するスペースの確保とが両立され難い。各画素のAPD11に接続されているMOSスイッチ回路15のサイズが大きいほど、解像度は低下する。比較する対象の画素の数が多いほど、解像度は低下する。さらに、互いに異なる画素からの出力をデジタル化した上で比較するため、高度な演算処理を要する。これに対し、光検出装置1によれば、外乱光の影響の抑制、光検出の解像度の確保、オーバー電圧の向上に耐え得るMOSスイッチ回路15を配置するスペースの確保、及び、演算負荷の抑制が実現され得る。さらには、光検出装置1によれば、ダイナミックレンジも向上し得る。
【0151】
光検出装置1において、Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、画素に含まれる複数のAPD11のピッチW3を2乗した値よりも大きい。この場合、MOSスイッチ回路15を配置するスペースがより確実に確保される。
【0152】
光検出装置1において、各画素Gにおいて、複数のAPD11は、X軸方向及びY軸方向において、二次元配列されている。Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、Y軸方向における複数のAPD11のピッチW3と、X軸方向における複数のAPD11のピッチW3とを乗じた値よりも大きくてもよい。この場合も、MOSスイッチ回路15を配置するスペースがより確実に確保される。
【0153】
光検出装置1において、MOSスイッチ回路領域βは、Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βのMOSスイッチ回路15に接続されている画素Gの画素領域α内に位置している。この場合、光検出装置1のさらなるコンパクトが実現され得る。
【0154】
X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方における画素のピッチW2は、Z軸方向から見た場合における受光領域Rの最大幅の2倍よりも大きい。この場合、画素のピッチが確保され、MOSスイッチ回路15を配置するMOSスイッチ回路領域βがより確実に確保される。
【0155】
MOSスイッチ回路15と、このMOSスイッチ回路15に接続されている画素Gが含んでいる複数のAPD11とは、光検出基板40と回路基板50との間に配置されたバンプ電極Bを介して、電気的に接続されている。バンプ電極Bは、主面40aに直交する方向から見て、このバンプ電極Bに接続されている複数のAPD11のうちの1つの受光領域R内に配置されている。この場合、主面40aと直交する方向から見て、受光領域Rはバンプ電極Bよりも大きく、MOSスイッチ回路領域βはこの受光領域Rよりもさらに大きい。したがって、MOSスイッチ回路15を配置するMOSスイッチ回路領域βがより確実に確保される。
【0156】
Z軸方向から見て、受光領域Rの面積は、5μm2以上650μm2以下である。Z軸方向から見て、MOSスイッチ回路領域βの面積は、受光領域Rの面積よりも大きい。したがって、MOSスイッチ回路15を配置するMOSスイッチ回路領域βがより確実に確保される。
【0157】
MOSスイッチ回路15は、互いに並列に接続されている複数のMOS-FETを含んでいる。この場合、MOSスイッチ回路15に接続されている画素Gの動作状態の切り換えが可能である。
【0158】
ブレークダウン電圧よりも小さい電圧がAPD11に付与される第二状態からブレークダウン電圧以上の電圧がAPD11に付与される第一状態に切り換える際に、APD11にリチャージ電流が流れる。リチャージ電流は、アナログ回路に比較的大きな影響を与える。リチャージ電流は、たとえば、コンパレータ27の前段に設けられた部品に比較的大きな影響を与える。リチャージ電流は、たとえば、フロントエンド回路16のバッファアンプリファイア26に比較的大きな影響を与える。このリチャージ電流が信号処理部9に流れることを抑制することによって、信号処理部9のロバスト性が向上する。すなわち、光検出装置1のロバスト性が向上する。MOSスイッチ回路15は、スイッチ21,22,23を含んでいる。スイッチ21,22,23は、互いに並列に接続されている。スイッチ21,22,23の端子24aは、APD11の端子11bに接続されている。スイッチ21の端子24bは、読出しライン10に接続されている。スイッチ22,23の端子24bは、読出しライン10に接続されておらず、かつ、互いに電気的に離間している。
【0159】
このような構成によれば、スイッチ21が導通状態にされた場合に、APD11にブレークダウン電圧以上の電圧を付与すると共に、APD11の端子11bを読出しラインに接続することができる。スイッチ22が導通状態にされた場合に、APD11の端子11bを読出しライン10に接続せずに、APD11にブレークダウン電圧以上の電圧を付与し、スイッチ23が導通状態にされた場合に、APD11にブレークダウン電圧よりも小さい電圧を付与することができる。この結果、ブレークダウン電圧以上の電圧がAPD11に付与される状態とブレークダウン電圧よりも小さい電圧がAPD11に付与される状態との切り換えの際に、リチャージ電流が読出しライン10に流れ込むことを抑制することができる。すなわち、画素Gの動作状態を切り換え可能な構成において、信号処理部9にリチャージ電流が流れ込むことが抑制され得る。よって、光検出装置1のロバスト性が向上し得る。
【0160】
回路基板50は、スイッチ21,22,23の制御を行うスイッチ制御部8をさらに含んでいる。スイッチ制御部8は、スイッチ21,22,23のうちのいずれか1つを導通状態とし、スイッチ21,22,23のうちの残りを遮断状態とするように制御を行う。この場合、互いに異なるスイッチ間に電流が流れることが抑制される。
【0161】
スイッチ制御部8は、複数の画素Gのうち対応する画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、当該APD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、スイッチ23、スイッチ22、スイッチ21の順に、導通状態となるように制御を行う。この場合、信号処理部9にリチャージ電流が流れ込むことがより確実に抑制され得る。
【0162】
スイッチ制御部8は、複数の画素Gのうち対応する画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、当該APD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、スイッチ23に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるよう指示し、所定時間経過した後に、スイッチ22に対して遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。この場合、スイッチ23の端子24bからスイッチ22の端子24bに電流が流れることがより確実に抑制され得る。
【0163】
スイッチ制御部8は、複数の画素Gのうち対応する画素Gに含まれるAPD11から検出信号を読出不可能な状態から、当該APD11から検出信号を読出可能な状態に切り換える際に、スイッチ22に対して、導通状態から遮断状態に切り換えるよう指示すると同時に、スイッチ21に対して、遮断状態から導通状態に切り換えるように指示する。この場合、APD11がフローティング状態となること抑制され、ブレークダウン電圧以上の電圧が安定して当該APD11に付与され得る。
【0164】
スイッチ22の端子24bに付与される電位は、スイッチ21の端子24bに付与される電位と同一である。この場合、APD11が、さらに安定した状態において、読出しライン10に接続され得る。
【0165】
回路基板50は、複数のMOSスイッチ回路15の各々に制御信号を伝達する複数の制御ライン20を含んでいる。光検出基板40及び回路基板50は、各々が、複数の画素Gと複数のMOSスイッチ回路15とを含む複数の信号出力ユニットUを含んでいる。複数の信号出力ユニットUの各々は、複数の画素Gと複数のMOSスイッチ回路15とを含むと共に、MOSスイッチ回路15を介して画素Gからの信号を出力する。同一の信号出力ユニットUに含まれる複数のMOSスイッチ回路15は、同一の制御ライン20に接続されている。たとえば、制御ライン20aは、スイッチ21に制御信号を伝達する。制御ライン20bは、スイッチ22に制御信号を伝達する。制御ライン20cは、スイッチ23に制御信号を伝達する。同一の信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ21は、同一の制御ライン20aに接続されている。同一の信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ22は、同一の制御ライン20bに接続されている。同一の信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ23は、同一の制御ライン20cに接続されている。この場合、同一の信号出力ユニットUにおいて、一括して、複数のMOSスイッチ回路15に接続されている複数の画素Gの動作状態の切り換えが可能である。
【0166】
互いに異なる信号出力ユニットUに含まれる複数のMOSスイッチ回路15は、互いに異なる制御ライン20に接続されている。たとえば、互いに異なる信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ21は、互いに異なる制御ライン20aに接続されている。互いに異なる信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ22は、互いに異なる制御ライン20bに接続されている。互いに異なる信号出力ユニットUに含まれる複数のスイッチ23は、互いに異なる制御ライン20cに接続されている。この場合、信号出力ユニットUごとに、一括して、複数のMOSスイッチ回路15に接続されている複数の画素Gの動作状態の切り換えが可能である。
【0167】
同一の制御ライン20に接続されている複数のMOSスイッチ回路15は、一列に配列されている。この場合、列ごとに、一括して、複数のMOSスイッチ回路15に接続されている複数の画素Gの動作状態の切り換えが可能である。
【0168】
複数のMOSスイッチ回路15は、Z軸方向から見て、行列状に配列されている。回路基板50は、複数のMOSスイッチ回路15のうち対応するMOSスイッチ回路15とAPD11からの信号を処理する信号処理部9とを電気的に接続する複数の読出しライン10をさらに含んでいる。互いに異なる信号出力ユニットUに含まれており、かつ、一列に配列されている複数のMOSスイッチ回路15は、同一の読出しライン10に接続されている。この場合、読出しライン10の数及び信号処理部9の数が削減され得る。信号の処理に要する時間が削減と光検出装置1のコンパクト化とのバランスが図られる。
【0169】
光検出装置1は、互いに時間的に並行して処理を行う複数の信号処理部9を備えている。複数の信号処理部9は、互いに異なる読出しライン10に接続されている。この場合、信号の処理に要する時間が削減と光検出装置のコンパクト化とのバランスが図られる。
【0170】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0171】
たとえば、光検出装置1は、ライダーに限定されない。光検出装置1は、投光ユニット2を備えていなくてもよい。光検出装置1は、受光ユニット3のみの構成であってもよい。受光ユニット3は、ライダー以外に用いられてもよい。
【0172】
本実施形態において、スイッチアレイ部7、スイッチ制御部8、及び、信号処理部9は、1つの回路基板50に含まれている。しかし、スイッチアレイ部7と、スイッチ制御部8と、信号処理部9とは、それぞれ異なる基板に含まれていてもよい。この場合、互いに異なる基板間は、ワイヤボンディングによって接続されてもよい。スイッチアレイ部7が回路基板50に含まれ、スイッチ制御部8及び信号処理部9が回路基板50とは異なる基板に含まれてもよい。スイッチアレイ部7及びスイッチ制御部8が回路基板50に含まれ、信号処理部9が回路基板50とは異なる基板に含まれてもよい。
【0173】
上述した実施形態において、受光ユニット3が裏面入射型の半導体検出装置である場合を説明したが、受光ユニット3は表面入射型の半導体検出装置であってもよい。
【0174】
上述した実施形態において、光検出基板40と回路基板50との間に複数のバンプ電極Bが形成される構成を説明したが、本発明のこの構成に限定されない。たとえば、光検出基板40と回路基板50とは、互いに接するように接合されていてもよい。
【符号の説明】
【0175】
1…光検出装置、8…スイッチ制御部、9…信号処理部、10…読出しライン、11…アバランシェフォトダイオード、15…MOSスイッチ回路、24a,24b…端子、40…光検出基板、40a…主面、50…回路基板、G…画素、B…バンプ電極、DS…信号、R…受光領域、W2,W3…ピッチ、α…画素領域、β…MOSスイッチ回路領域。