(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】マスク検査装置及びマスク検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20250630BHJP
【FI】
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2021186688
(22)【出願日】2021-11-16
【審査請求日】2024-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 寿明
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-72393(JP,A)
【文献】特開2018-163075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0262944(US,A1)
【文献】特開2001-264263(JP,A)
【文献】特開2009-58382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
H01L 21/64 - H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査光を分岐するビームスプリッタと、
前記検査光のうち分岐された第1の光をパターンが形成されたマスク基板に照射して得られる前記マスク基板の像を撮像し、画像データを出力する時間遅延積分(TDI)センサと、
前記検査光のうち分岐された第2の光を受光して、前記TDIセンサの蓄積方向と直交する方向の光量分布の時間的変化を測定するラインセンサと、
時間的変化する前記光量分布の値を用いて、前記TDIセンサから出力される画像データを前記光量分布の位置に応じて補正する補正部と、
補正された画像データを用いた被検査画像を所定の画像と比較する比較部と、
を備えたことを特徴とするマスク検査装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記画像データの対象位置にマスク面換算で対応する前記光量分布の位置の値を用いて、当該対象位置の画像データを補正することを特徴とする請求項1記載のマスク検査装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記TDIセンサによって前記マスク基板の対象画素の像を撮像した時間帯に測定された前記光量分布の値を用いて、当該対象画素の画像データを補正することを特徴とする請求項1又は2記載のマスク検査装置。
【請求項4】
前記検査光は、ケーラー照明を用いて照明されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマスク検査装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記TDIセンサによって前記マスク基板の対象画素の像を撮像した時間帯に測定された前記光量分布の各値の移動平均値を用いて、当該対象画素の画像データを補正することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のマスク検査装置。
【請求項6】
検査光を分岐する工程と、
時間遅延積分(TDI)センサを用いて、前記検査光のうち分岐された第1の光をパターンが形成されたマスク基板に照射して得られる前記マスク基板の像を撮像し、画像データを出力する工程と、
ラインセンサを用いて、前記検査光のうち分岐された第2の光を受光して、前記TDIセンサの蓄積方向と直交する方向の光量分布の時間的変化を測定する工程と、
時間的変化する前記光量分布の値を用いて、前記TDIセンサから出力される画像データを前記光量分布の位置に応じて補正する工程と、
補正された画像データを用いた被検査画像を所定の画像と比較し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とするマスク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク検査装置及びマスク検査方法に関する。例えば、マスク基板のパターンの欠陥を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターンの形状欠陥、及び/或いは寸法欠陥等のパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
検査手法としては、例えば、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計されたCADデータをマスクにパターンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計データ)を検査装置に入力して、これをベースに参照画像を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。
【0005】
ここで、マスク上のパターンを撮像するための検査光となるレーザ光は光量が時間的に変化する。従来、時間的な光量の変化は、照明系で検査光の一部を分岐して、レンズで集光し、全光束をまとめてセンサで光束全体の光量を測定していた。そして、測定された光束全体の光量の変化を用いて画像の画素値を補正するといった手法が検討されていた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、光量は、照野全体で一意ではなく分布が生じる。かかる照明の分布ムラの変化が、撮像された画像の誤差要因になってしまう。この測定手法では、マスク共役位置での照野の分布ムラの変化を監視することが困難であった。そのため、全光束による光量を測定しても、光量分布の位置に応じた変化はわからないといった問題があった。光量補正の手法として、撮像センサの一部の領域で光量を測定するといった手法も検討されるものの、照明光の分布ムラの変化に追従することが困難であり、別の手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、照明光の分布ムラの変化を測定可能な検査装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のマスク検査装置は、
検査光を分岐するビームスプリッタと、
検査光のうち分岐された第1の光をパターンが形成されたマスク基板に照射して得られるマスク基板の像を撮像し、画像データを出力する時間遅延積分(TDI)センサと、
検査光のうち分岐された第2の光を受光して、TDIセンサの蓄積方向と直交する方向の光量分布の時間的変化を測定するラインセンサと、
時間的変化する光量分布の値を用いて、TDIセンサから出力される画像データを光量分布の位置に応じて補正する補正部と、
補正された画像データを用いた被検査画像を所定の画像と比較する比較部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、補正部は、画像データの対象位置にマスク面換算で対応する光量分布の位置の値を用いて、当該対象位置の画像データを補正すると好適である。
【0010】
また、補正部は、TDIセンサによってマスク基板の対象画素の像を撮像した時間帯に測定された光量分布の値を用いて、当該対象画素の画像データを補正すると好適である。
【0011】
また、検査光は、ケーラー照明を用いて照明されると好適である。
【0012】
また、補正部は、TDIセンサによってマスク基板の対象画素の像を撮像した時間帯に測定された光量分布の各値の移動平均値を用いて、当該対象画素の画像データを補正すると好適である。
【0013】
本発明の一態様のマスク検査方法は、
検査光を分岐する工程と、
時間遅延積分(TDI)センサを用いて、検査光のうち分岐された第1の光をパターンが形成されたマスク基板に照射して得られるマスク基板の像を撮像し、画像データを出力する工程と、
ラインセンサを用いて、検査光のうち分岐された第2の光を受光して、TDIセンサの蓄積方向と直交する方向の光量分布の時間的変化を測定する工程と、
時間的変化する光量分布の値を用いて、TDIセンサから出力される画像データを光量分布の位置に応じて補正する工程と、
補正された画像データを用いた被検査画像を所定の画像と比較し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、照明光の分布ムラの変化を測定できる。よって、分布ムラの位置に応じた変化を補正ができる。その結果、装置の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における検査領域を説明するための概念図である。
【
図3】実施の形態1における光量分布の時間的変化を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1における照明の分布ムラを測定する手法を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1の比較例における光量測定を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1における光量測定を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【
図8】実施の形態1における補正の仕方を説明するための図である。
【
図9】実施の形態1における各位置での倍率と像サイズとの関係を説明するための図である。
【
図10】実施の形態1における光量分布の各位置とTDIセンサの像の位置との関係を説明するための図である。
【
図11】実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。
【
図12】実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板101(検査対象基板の一例)に形成されたパターン欠陥を検査する検査装置100は、光学画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。
【0017】
光学画像取得機構150は、レーザ光を発生する光源103、ケーラー照明光学系300、リレーレンズ31、ビームスプリッタ32、透過照明光学系170、反射照明光学系270、XYθテーブル102、対物レンズ104、ビームスプリッタ176、ミラー177、結像光学系178、結像光学系278、撮像センサ105、センサ回路106、補正回路117、ストライプパターンメモリ123、撮像センサ205、センサ回路206、補正回路217、ストライプパターンメモリ223、ビームスプリッタ190、シリンダレンズ192、ラインセンサ194、メモリ196、ビームスプリッタ290、シリンダレンズ292、ラインセンサ294、及びメモリ296を有する。
【0018】
透過照明光学系170は、1つ若しくは複数のレンズ、及び/或いは1つ若しくは複数のミラーによって構成される。
図1の例では、透過照明光学系170は、ミラー134、ミラー138、及びレンズ171を有する。
【0019】
反射照明光学系270は、1つ若しくは複数のレンズ、及び/或いは1つ若しくは複数のミラーによって構成される。
図1の例では、反射照明光学系270は、レンズ271を有する。
【0020】
XYθテーブル102上には、図示しないオートローダから搬送された基板101が配置されている。基板101として、例えば、ウェハ等の半導体基板にパターンを転写する露光用のフォトマスクが含まれる。また、このフォトマスクには、検査対象となる複数の図形パターンが形成されている。基板101は、例えば、パターン形成面を下側に向けてXYθテーブル102に配置される。
【0021】
撮像センサ105,205として、例えば、TDI(時間遅延積分)センサを用いると好適である。TDIセンサは、2次元状に配列される複数のフォトセンサ素子を有する。各フォトセンサ素子は画像を撮像する際に、所定の画像蓄積時間(或いはスキャン時間という場合がある。以下において、同様である。)が設定される。TDIセンサでは、スキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子の出力が積分されて出力される。スキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子は、XYθテーブル102の移動に応じて時間をずらしながら同じ画素を撮像することになる。
【0022】
ビームスプリッタ190は、透過照明光学系170内に配置される。ラインセンサ194は、基板101のパターン形成面と共役位置に配置される。ビームスプリッタ290は、反射照明光学系270内に配置される。ラインセンサ294は、基板101のパターン形成面と共役位置に配置される。
【0023】
ラインセンサ194,294は、スキャン方向と直交する方向(例えばY方向)に並ぶ複数のフォトセンサ素子を有する。ラインセンサ194,294のフォトセンサ素子の数は、撮像センサ105,205のスキャン方向と直交する方向(例えばY方向)に並ぶ複数のフォトセンサ素子の数と同じであっても良いし、異なっても構わない。
【0024】
ケーラー照明光学系300は、例えば、ビームエキスパンダ302、回転位相板306、分割レンズ304、コリメータレンズ308、及び照明スリット310を有する。
【0025】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、磁気ディスク装置109、メモリ111、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、及びテーブル制御回路114に接続されている。
【0026】
補正回路117は、ストライプパターンメモリ123に接続され、補正回路217は、ストライプパターンメモリ223に接続される。ストライプパターンメモリ123,223は、比較回路108に接続されている。補正回路117は、センサ回路106内にその機能が搭載されても好適である。同様に、補正回路217は、センサ回路206内にその機能が搭載されても好適である。
【0027】
ラインセンサ194の出力は、メモリ196に接続され、ラインセンサ294の出力は、メモリ296に接続される。メモリ196は補正回路117に接続される。メモリ296は補正回路217に接続される。
【0028】
また、XYθテーブル102は、駆動機構115により駆動される。駆動機構115は、例えば、X軸モータ、Y軸モータ、及びθ軸モータを有し、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。XYθテーブル102は、ステージの一例となる。また、参照画像作成回路112は、比較回路108に接続される。
【0029】
これらの、X軸モータ、Y軸モータ、及びθ軸モータは、例えばリニアモータを用いることができる。XYθテーブル102は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下に基板101のパターン形成面と撮像センサ105,205との焦点位置(光軸方向:Z軸方向)に調整される。XYθテーブル102上に配置された基板101の移動位置は、図示しないレーザ測長システムにより測定され、位置回路107に供給される。
【0030】
なお、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、及びテーブル制御回路114といった一連の「~回路」は、処理回路を有する。かかる処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。例えば、比較回路108、参照画像作成回路112、及びテーブル制御回路114といった一連の「~回路」は、制御計算機110によって構成され、実行されても良い。比較回路108、参照画像作成回路112、及びテーブル制御回路114に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度各回路内の図示しないメモリ若しくはメモリ111に記憶される。制御計算機110に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度制御計算機110内の図示しないメモリ若しくはメモリ111に記憶される。コンピュータ、或いはプロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置109等の記録媒体に記録されればよい。
【0031】
検査装置100では、光源103、ケーラー照明光学系300、リレーレンズ31、ビームスプリッタ32、透過照明光学系170、対物レンズ104、ビームスプリッタ176、ミラー177、結像光学系178、撮像センサ105、センサ回路106、及び補正回路117により高い倍率M1の透過検査光学系が構成されている。倍率M1として、例えば、200~300倍の倍率の検査光学系が構成されている。
【0032】
同様に、検査装置100では、光源103、ケーラー照明光学系300、リレーレンズ31、ビームスプリッタ32、反射照明光学系270、ビームスプリッタ176、対物レンズ104、結像光学系278、撮像センサ205、センサ回路206、及び補正回路217により高い倍率M1の反射検査光学系が構成されている。倍率M1として、例えば、200~300倍の倍率の検査光学系が構成されている。
【0033】
被検査基板101のパターン形成の基となる描画データ(設計データ)が検査装置100の外部から入力され、磁気ディスク装置109に格納される。描画データには、複数の図形パターンが定義され、各図形パターンは、通常、複数の要素図形の組合せにより構成される。なお、1つの図形で構成される図形パターンがあっても構わない。被検査基板101上には、かかる描画データに定義された各図形パターンに基づいて、それぞれ対応するパターンが形成されている。
【0034】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0035】
光源103からは、検査照明光として、例えば、190~200nm程度の波長のレーザ光(例えば、DUV光)(紫外光の一例)が発生する。光源103から発せられたレーザ光301をケーラー照明光学系300に入射することで、理想的には面を均一に照明可能な検査光を生成する。具体的には、以下のように動作する。光源103から発せられたレーザ光301をビームエキスパンダ302で拡大し、回転位相板306を通すことによって空間コヒーレンシーが低減される。回転位相板306を通過した光は分割レンズ304で面光源を生成する。その後、コリメータレンズ308によって面光源のフーリエ面を生成し、このフーリエ面の位置に照明スリット310が配置される。
【0036】
照明スリット310を通過した検査光は、リレーレンズ31によってビームスプリッタ32に投影される。ビームスプリッタ32は、透過照明用の光と反射照明用の光とに検査光を分岐する。反射検査を行わない場合には、反射照明光学系270へと分岐する光を遮蔽すればよい。逆に透過検査を行わない場合には、透過照明光学系170へと分岐する光を遮蔽すればよい。
図1において、ビームスプリッタ32で分離された透過検査用の検査光及び像は点線で示している。
図1において、ビームスプリッタ32で分離された反射検査用の検査光及び像は実線で示している。
【0037】
透過検査において、ビームスプリッタ32で分離された透過検査用の検査光は、ミラー134で反射され、ビームスプリッタ190に入射する。そして、透過検査用の検査光は、ビームスプリッタ190によって、2つ光路に分岐される。例えば、透過検査用の検査光の0.1~10%(例えば、1%)がシリンダレンズ192側へと補正用の光として分離される。検査光の残部が透過照明光となる。検査光のうちビームスプリッタ190で分岐された透過照明光(第1の光)は、ミラー138で反射され、レンズ171によって基板101を照明する。基板101を透過した透過光は対物レンズ104を介して、ビームスプリッタ176を通過する。そして、ミラー177で反射され、結像光学系178により光学像(透過像)として撮像センサ105に結像させられ、入射する。このようにして撮像センサ105は透過像を撮像する。
【0038】
撮像センサ105上に結像されたパターンの像は、撮像センサ105の各フォトセンサ素子によって光電変換され、スキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子の積分後の値がセンサ回路106に出力される。そして、センサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。
【0039】
或いは/及び反射検査において、ビームスプリッタ32で分離された反射検査用の検査光は、ビームスプリッタ290に入射する。そして、反射検査用の検査光は、ビームスプリッタ290によって、2つ光路に分岐される。例えば、反射検査用の検査光の0.1~10%(例えば、1%)がシリンダレンズ292側へと補正用の光として分離される。検査光の残部が反射照明光となる。検査光のうちビームスプリッタ290で分岐された反射照明光(第2の光)は、ビームスプリッタ176で反射して、対物レンズ104により基板101に照射される。言い換えれば、反射照明光学系170、ビームスプリッタ176、及び対物レンズ104で構成される照明光学系は、パターンが形成された被検査基板101を照明する。基板101から反射した反射光は対物レンズ104及びビームスプリッタ174を通過して、結像光学系278により光学像(反射像)として撮像センサ205に結像させられ、入射する。このようにして撮像センサ205は反射像を撮像する。
【0040】
撮像センサ205上に結像されたパターンの像は、撮像センサ205の各フォトセンサ素子によって光電変換され、スキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子の積分後の値がセンサ回路206に出力される。そして、センサ回路206によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。
【0041】
図2は、実施の形態1における検査領域を説明するための概念図である。基板101の検査領域10(検査領域全体)は、
図2に示すように、例えばY方向に向かって、TDIセンサ105のスキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割される。そして、検査装置100では、検査ストライプ20毎に画像(ストライプ領域画像)を取得していく。検査ストライプ20の各々に対して、レーザ光(検査光)を用いて、当該ストライプ領域の長手方向(X方向)に向かって当該検査ストライプ20内に配置される図形パターンの画像を撮像する。なお、画像の取りこぼしを防ぐために、複数の検査ストライプ20は、隣接する検査ストライプ20同士間が所定のマージン幅でオーバーラップするように設定されると好適である。
【0042】
XYθテーブル102の移動によってTDIセンサ105が相対的にX方向に連続移動しながら光学画像が取得される。TDIセンサ105では、
図2に示されるようなスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。言い換えれば、TDIセンサ105は、TDIセンサ105の積分方向に相対的に移動しながら複数の図形パターンが形成された基板101面上の光学画像を撮像する。実施の形態1では、1つの検査ストライプ20における光学画像を撮像した後、Y方向に次の検査ストライプ20の位置まで移動して今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。すなわち、往路と復路で逆方向に向かうフォワード(FWD)-バックフォワード(BWD)の方向で撮像を繰り返す。
【0043】
また、実際の検査にあたって、各検査ストライプ20のストライプ領域画像は、
図2に示すように、矩形の複数のフレーム領域30の画像に分割される。そして、フレーム領域30の画像毎に検査を行っていく。例えば、1024×1024画素のサイズに分割される。よって、フレーム領域30のフレーム画像31と比較される参照画像も同様にフレーム領域30毎に作成されることになる。
【0044】
ここで、撮像の方向は、フォワード(FWD)-バックフォワード(BWD)の繰り返しに限るものではない。一方の方向から撮像してもよい。例えば、FWD-FWDの繰り返しでもよい。或いは、BWD-BWDの繰り返しでもよい。
【0045】
図3は、実施の形態1における光量分布の時間的変化を説明するための図である。
図3の例では、撮像センサ105(205)がY=Y0~Y1に位置する検査ストライプ20を撮像する場合を示している。
図3に示すように、スキャン方向に並ぶ領域Aのスキャン方向と直交する方向(Y方向)には、検査光の光量分布が存在する。スキャンを進めていき、領域Bのスキャンを行う際、領域Bのスキャン方向と直交する方向(Y方向)の検査光の光量分布は、領域Aのスキャン方向と直交する方向(Y方向)の検査光の光量分布とは異なってくる。言い換えれば、検査光の光量分布は、時間的変化を生じる。このように、光量は、照野全体で一意ではなく分布が生じる。かかる照明の分布ムラの変化が、撮像された画像の誤差要因になってしまう。全光束による光量を測定する従来の測定手法では、マスク共役位置での照野の分布ムラの変化を監視することが困難であった。そのため、全光束による光量を測定しても、光量分布の位置に応じた変化はわからないといった問題があった。光量補正の手法として、撮像センサの一部の領域で光量を測定するといった手法も検討されるものの、照明光の分布ムラの変化に追従することが困難であり、別の手法が求められている。そこで、実施の形態1では、
図1において説明したように、マスク共役位置に配置されるラインセンサ194(294)によって、照明の分布ムラの変化を測定する。
【0046】
図4は、実施の形態1における照明の分布ムラを測定する手法を説明するための図である。
図4の例では、ケーラー照明光学系300以降の照明光学系の図示を省略している。ケーラー照明光学系300によって、検査光は、理想的には面内均一な光量に制御されるものの基板101面上では、
図4に示すように光量分布が生じる。さらに、光源103から射出されるレーザ光の、例えば、ビーム径や光軸の変化によって、光量分布が時間的に変化する。そこで、実施の形態1では、撮像センサ105のスキャン方向と直交する方向の光量分布をラインセンサ194で測定する。
【0047】
図5は、実施の形態1の比較例における光量測定を説明するための図である。
図5の比較例では、照明光11を集光する集光レンズに球面レンズを用いる場合を示している。そのため照明光11の全光束が1点に集光され、集光された光は、例えば1つのフォトセンサ300によって測定される。かかる場合、得られたデータから光量分布を取得することは困難となる。
【0048】
図6は、実施の形態1における光量測定を説明するための図である。
図6に示すように、実施の形態1では、検査光のうちビームスプリッタ190(290)で分岐された照明光11(第2の光:補正用の光)を集光する集光レンズに円柱状或いは半円柱状のシリンダレンズ192(292)を用いる。シリンダレンズ192(292)の母線方向(延びる方向)が撮像センサ105(205)のスキャン方向と直交する方向に対応する方向になるように配置される。そして、ラインセンサ194(294)の長手方向も同様に、スキャン方向と直交する方向に対応する方向になるように配置される。これにより、分岐された照明光11は、シリンダレンズ192(292)によって集光される際、照明光11の進行方向に直交する面内においてシリンダレンズ192(292)の延びる方向に広がった光は集光せず、シリンダレンズ192(292)の延びる方向と直交する方向に広がった光を1点に集光する。シリンダレンズ192(292)を通過した光は、ラインセンサ194(294)の長手方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子によって測定される。よって、ラインセンサ194(294)の短手方向にだけ集光された、ラインセンサ194(294)の長手方向の光量分布を測定できる。ラインセンサ194(294)の長手方向は、撮像センサ105(205)のスキャン方向と直交する方向に対応する方向である。よって、撮像センサ105(205)のスキャン方向に集光された、撮像センサ105(205)のスキャン方向と直交する方向の光量分布を測定できる。かかる方向の光量分布をモニタすることにより、光量分布の時間的変化を測定できる。
【0049】
図7は、実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図7において、実施の形態1における検査方法は、キャリブレーション工程(S102)と、補正用基準値設定工程(S104)と、スキャン工程(S110)と、光量分布測定工程(S112)と、補正工程(S120)と、参照画像作成工程(S130)と、比較工程(S140)と、いう一連の工程を実施する。
【0050】
キャリブレーション工程(S102)として、撮像センサ105(205)のキャリブレーションを行う。例えば、256階調のセンサであれば、白パターンを撮像した際の階調レベルが例えば200階調程度になるように感度を調整すると良い。その際の照明光の光量分布をラインセンサ194(294)で測定しておく。測定された光量分布のデータはメモリ196(296)に格納されると共に補正回路117(207)に出力される。ここで得られた光量分布が、それぞれの位置での基準値となる。
【0051】
補正用基準値設定工程(S104)として、補正回路117(207)は、キャリブレーション工程(S102)において校正された際にラインセンサ194(294)で測定された光量分布のデータを入力し、補正用基準値S0として設定する。
【0052】
スキャン工程(S110)として、光学画像取得機構150は、キャリブレーションが実施された撮像センサ105(205)を用いて、透過検査光のうち検査照明光用にビームスプリッタ190で分岐された光(第1の光)をパターンが形成された基板101に照射して得られる基板101の像を撮像し、撮像された光学画像データを出力する。そのために、まず、光学画像取得機構150は、検査ストライプ20上をレーザ光(検査光)でスキャンして、検査ストライプ20毎に、撮像センサ105(205)によりストライプ領域画像を撮像する。具体的には、以下のように動作する。対象となる検査ストライプ20が撮像可能な位置にXYθテーブル102を移動させる。透過検査では、基板101の透過光が撮像センサ105に光学像として結像させられ、入射する。或いは/及び反射検査では、基板101からの反射光が撮像センサ205に光学像として結像させられ、入射する。
【0053】
撮像センサ105上に結像されたパターンの像は、撮像センサ105の各フォトセンサ素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。その際、センサ回路106によってスキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子の積分後の出力が階調値に変換されて補正回路117に出力される。
【0054】
或いは/及び撮像センサ205上に結像されたパターンの像は、撮像センサ205の各フォトセンサ素子によって光電変換され、更にセンサ回路206によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。その際、センサ回路206によってスキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子の積分後の出力が階調値に変換されて補正回路217に出力される。
【0055】
光量分布測定工程(S112)として、撮像センサ105での撮像と並行して、ラインセンサ194は、透過検査光のうち測定用にビームスプリッタ190で分岐された光(第2の光)を受光して、撮像センサ105の蓄積方向と直交する方向の光量分布の時間的変化を測定する。言い換えれば、ラインセンサ194は、撮像センサ105での撮像に利用した照明光を同時期に測定する。測定された光量分布のデータは、メモリ196に格納され、蓄積される。
【0056】
或いは/及び撮像センサ205での撮像と並行して、ラインセンサ294は、反射検査光のうち測定用にビームスプリッタ290で分岐された光(第2の光)を受光して、撮像センサ205の蓄積方向と直交する方向の光量分布の時間的変化を測定する。言い換えれば、ラインセンサ294は、撮像センサ205での撮像に利用した照明光を同時期に測定する。測定された光量分布のデータは、メモリ296に格納され、蓄積される。
【0057】
補正工程(S120)として、補正回路117(207)(補正部)は、時間的変化する光量分布の値を用いて、撮像センサ105(205)から出力される画像データを光量分布の位置に応じて補正する。
【0058】
図8は、実施の形態1における補正の仕方を説明するための図である。撮像センサ105(205)に配置されるスキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子は、XYθテーブル102の移動に応じて時間をずらしながら同じ画素を撮像することになる。
図8に示すように、撮像センサ105(205)は、スキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子によって時間をずらして撮像された同じ画素のデータが積分されて出力される。例えば、スキャン方向にN個のフォトセンサ素子が配置される。各フォトセンサ素子にはそれぞれ1画素あたりの画像蓄積時間(受光時間、露光時間)がXYθテーブル102の移動速度によって設定される。よって、蓄積されるフォトセンサ素子の数×画像蓄積時間で計算される時間t、各画素は、画像取得のために照明光を受け続けている。また、各フォトセンサ素子は、画像蓄積時間毎に撮像する基板101上の画素の領域をスキャン方向にずらしていく。
【0059】
一方、ラインセンサ194(294)は、各画素の撮像に使用されるスキャン方向のフォトセンサ素子の数×画像蓄積時間で得られる時間tの間に、複数回の測定が実施される。例えば1024回の測定が行われる。そして、測定毎の光量分布のデータはメモリ196(296)に格納される。
【0060】
補正回路117(207)は、撮像センサ105(205)によって基板101の対象画素の像を撮像した時間帯に測定された光量分布の値を用いて、当該対象画素の画像データを補正する。具体的には以下のように動作する。補正回路117(207)は、撮像センサ105(205)によって基板101の対象画素の像を撮像した時間帯に測定された複数の光量分布のデータをメモリ196(296)から読み出す。そして、補正回路117(207)は、光量分布の位置毎に、読み出された複数の光量分布における該当位置での値kを合計し、測定回数nで割った移動平均値Sを算出する。
【0061】
次に、補正回路117(207)は、対象画素の像を撮像した時間帯に複数回にわたって測定された光量分布の各値の移動平均値を用いて、当該対象画素の画像データを補正する。具体的には、補正回路117(207)は、センサ回路106(206)によって算出された対象画素の階調値dに基準値S0を移動平均値Sで割った比を乗じることで補正する。言い換えれば、キャリブレーション時の照明光の光量に対する実際の撮像時の光量の比を乗じることにより補正する。
【0062】
対象画素がスキャン方向にずれた場合には、対象画素の像を撮像した時間帯も一部重なりながらもずれる。時間帯がずれた分、メモリ196(296)から読み出す複数の光量分布のデータについても異なるものになる。よって、スキャン方向に並ぶ各画素を補正するための基になる複数の光量分布のデータの組も撮像時間帯に応じてそれぞれ異なってくる。よって、移動平均値Sも違う値になるので光量分布の時間的変化に応じた補正ができる。
【0063】
その際、補正回路117(207)は、画像データの対象位置にマスク面換算で対応する光量分布の位置の値を用いて、当該対象位置の画像データを補正する。
【0064】
図9は、実施の形態1における各位置での倍率と像サイズとの関係を説明するための図である。光学系では、結像する際の倍率が異なる場合がある。例えば、
図9に示すように、マスク基板面(倍率1)の撮像領域サイズをL1とした場合、撮像センサ105(205)上では、倍率がM1となる。この場合、撮像センサ105(205)で撮像されるマスク基板面の撮像領域の像のサイズは、L1に倍率M1を乗じたサイズとなる。一方、ラインセンサ194(294)上では、倍率がM2となる。この場合、ラインセンサ194(294)上で測定されるマスク基板面の撮像領域の像のサイズは、L1に倍率M2を乗じたサイズとなる。このように、マスク基板上でL1だった像が撮像センサ105(205)上とラインセンサ194(294)上ではそのサイズが異なる。よって、ラインセンサ194(294)によって測定される光量分布の各位置が、そのまま撮像センサ105(205)で撮像される像のスキャン方向と直交する方向の位置になるわけではない。倍率の違いによって対応位置が異なることになる。そのため、ラインセンサ194(294)上の位置と撮像センサ105(205)上の位置との関係性に基準が必要となる。ここでは、マスク面換算でラインセンサ194(294)上の位置と撮像センサ105(205)上の位置とを対応付ける。
【0065】
図10は、実施の形態1における光量分布の各位置とTDIセンサの像の位置との関係を説明するための図である。
図10の例では、マスク基板上のY=Y0の位置からY1の位置までの領域の像を撮像する場合を示している。
図10の例では、ラインセンサ194(294)では、n3個のフォトセンサ素子が配置される。一方、撮像センサ105(205)では、スキャン方向と直交するY方向にm個のフォトセンサ素子が配置される。例えば、mは、n3よりも数倍大きい。しかし、マスク面換算で見ると、マスク基板上のY=Y0の位置が、ラインセンサ194(294)では、n1画素目のフォトセンサに対応する。この場合に撮像センサ105(205)では1画素目のフォトセンサに対応する。マスク基板上のY=Y1の位置が、ラインセンサ194(294)では、n2画素目のフォトセンサに対応する。この場合に撮像センサ105(205)ではm画素目のフォトセンサに対応する。このように、マスク面換算で、マスク基板上の各位置が、ラインセンサ194(294)上と撮像センサ105(205)上とでそれぞれどの位置に割り当てられるのか予め設定しておけばよい。言い換えれば、マスク面換算でラインセンサ194(294)上の位置と撮像センサ105(205)上の位置とが関連付けされる。光量分布のデータに撮像センサ105(205)上の対象位置に該当するデータが無い場合には、例えば前後の位置のデータを使って線形補間した値を用いればよい。ラインセンサ194(294)の長手方向サイズは、マスク面換算で撮像センサ105(205)の長手方向サイズ以上あれば良い。
【0066】
以上のようにスキャン方向と直交する方向の光量分布を用いることで、スキャン方向と直交する方向の光量の違いに応じた補正ができる。さらに、スキャン方向の光量の時間的変化は移動平均値を用いることで平均化できる。
【0067】
補正回路117(207)で補正された各画素の階調値(画像データ)は、ストライプパターンメモリ123(223)に出力される。
【0068】
そして、ストライプパターンメモリ123(223)に、測定対象の検査ストライプ20の画素値のデータが格納される。測定データ(画素データ)は例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。検査ストライプ20の画素値のデータは比較回路108に出力される。
【0069】
参照画像作成工程(S130)として、参照画像作成回路112は、図形パターンデータ(設計データ)を用いて、リファレンスとなる参照画像を作成する。参照画像の作成は、検査ストライプ20毎に、当該検査ストライプ20のスキャン動作と並行して実施される。具体的には、以下のように動作する。参照画像作成回路112は、対象となる検査ストライプ20の各フレーム領域30について、図形パターンデータ(設計データ)を入力し、図形パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0070】
図形パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0071】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、フレーム領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データ(設計画像データ)を出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして作成する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0072】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、フィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。
【0073】
図11は、実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。基板101から撮像される光学画像の画素データは、撮像に使用される光学系の解像特性等によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、例えば、
図11に示すように、画像強度(濃淡値)がデジタル値の展開画像(設計画像)とは異なっている。一方、図形パターンデータでは、上述したように、図形コード等により定義されるので、展開された設計画像では、画像強度(濃淡値)がデジタル値になる場合があり得る。そのため、参照画像作成回路112は、展開画像に画像加工(フィルタ処理)を施して光学画像に近づけた参照画像を作成する。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データを測定データ(光学画像)の像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像は比較回路108に出力される。
【0074】
図12は、実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示す図である。
図12において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置70,72,76、フレーム画像作成部74、位置合わせ部78、及び比較処理部79が配置されている。フレーム画像作成部74、位置合わせ部78、及び比較処理部79といった一連の「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部74、位置合わせ部78、及び比較処理部79に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度比較回路108内の図示しないメモリ若しくはメモリ111に記憶される。
【0075】
比較回路108に入力されたストライプデータ(ストライプ領域画像)は、記憶装置70に格納される。比較回路108に入力された参照画像データは、記憶装置72に格納される。
【0076】
比較工程(S140)として、比較回路108(比較部の一例)は、補正された画像データを用いた被検査画像を所定の画像と比較する。具体的には、以下のように動作する。
【0077】
比較回路108では、まず、フレーム画像作成部74は、所定の幅でストライプ領域画像(光学画像)が分割された複数のフレーム画像31を生成する。具体的には、
図2に示すように、ストライプ領域画像は、矩形の複数のフレーム領域30のフレーム画像に分割される。例えば、512×512画素のサイズに分割される。各フレーム領域30のデータは、記憶装置76に格納される。
【0078】
次に、位置合わせ部78は、フレーム領域30毎に、対応するフレーム画像31と、対応する参照画像とを記憶装置72,76から読み出し、所定のアルゴリズムでフレーム画像31と、対応する参照画像との位置合わせを行う。例えば、最小2乗法を用いて位置合わせを行う。
【0079】
そして、比較処理部79(比較部の他の一例)は、フレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを比較する。例えば画素毎に比較する。ここでは、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。判定条件としては、例えば、所定のアルゴリズムに従って画素毎に両者を比較し、欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎に両画像の画素値の差分値を演算し、差分値が閾値Thより大きい場合を欠陥と判定する。そして、比較結果は、例えば、磁気ディスク装置109、或いは図示しないパターンモニタに出力される、或いは図示しないプリンタから出力されればよい。
【0080】
上述した例では、ダイ-データベース検査の場合を説明したが、ダイ-ダイ検査であっても構わない。かかる場合、比較回路108は、複数のフレーム領域30のうち、ダイ-ダイ検査を行うフレーム領域同士については、フレーム領域同士の一方の領域について取得されたダイ2のフレーム画像(光学画像)をリファレンス(参照画像)として用いる。まず、位置合わせ部78は、ダイ-ダイ検査を行うフレーム領域30毎に、対応するダイ1のフレーム画像31と、ダイ2のフレーム画像とを記憶装置76から読み出し、所定のアルゴリズムでダイ1のフレーム画像31とダイ2のフレーム画像との位置合わせを行う。例えば、最小2乗法を用いて位置合わせを行う。そして、比較処理部79(比較部)は、ダイ-ダイ検査を行うフレーム領域30毎に、対応するダイ1のフレーム画像31と、ダイ2のフレーム画像とを画素毎に比較する。
【0081】
以上のように、実施の形態1によれば、照明光の分布ムラの変化を測定できる。よって、分布ムラの位置に応じた変化を補正ができる。その結果、装置の再現性を高めることができる。また、ケーラー照明では、理想的には面内均一になる。よって、分布ムラが生じる場合でもそのムラの差は小さい。実施の形態1では、例えば、ケーラー照明光学系300によるケーラー照明光を作成している。実施の形態1では、このケーラー照明による微細な分布ムラについても分布ムラの位置に応じた変化を補正ができる。
【0082】
以上の説明において、「~回路」と記載したものは、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。また、プログラムを用いる場合、プログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0084】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、検査装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0085】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置、及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0086】
10 検査領域
11 照明光
20 検査ストライプ
30 フレーム領域
31 投影レンズ
32 ビームスプリッタ
70,72,76 記憶装置
74 フレーム画像作成部
78 位置合わせ部
79 比較処理部
100 検査装置
101 マスク基板
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105,205 撮像センサ
106,206 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
111 メモリ
112 参照画像作成回路
114 テーブル制御回路
115 駆動機構
117,217 補正回路
120 バス
123,223 ストライプパターンメモリ
134 ミラー
138 ミラー
150 光学画像取得機構
160 制御系回路
176 ビームスプリッタ
171,271 レンズ
170 透過照明光学系
177 ミラー
178,278 結像光学系
190,290 ビームスプリッタ
192 シリンダレンズ
194,294 ラインセンサ
196,296 メモリ
270 反射照明光学系
300 ケーラー照明光学系
302 ビームエキスパンダ
304 分割レンズ
306 回転位相板
308 コリメータレンズ
310 照明スリット