(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20250630BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/10 F
(21)【出願番号】P 2021188874
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西山 正洋
(72)【発明者】
【氏名】高木 亮二
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰宏
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-316235(JP,A)
【文献】特開平03-065654(JP,A)
【文献】特開2005-241442(JP,A)
【文献】特開平08-114541(JP,A)
【文献】特開2018-151407(JP,A)
【文献】特開平08-043400(JP,A)
【文献】特開2011-106897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌抽出液の成分である検体および
粉末状の試薬を貯留する複数のセルを少なくとも1つの仮想的な円またはその一部に沿って配置可能な回転体
であって、前記複数のセルより大きく、前記試薬を溶解させる攪拌子が配置された複数の区画が前記回転体の径方向に沿って配置された容器を含む回転体と、
前記複数のセルの少なくとも1つに液体を注入するノズルを移動させる移動機構とを備え、
前記移動機構は、前記ノズルの先端が円弧を描くように前記ノズルを移動させ、
平面視した場合に前記ノズルの先端が描く円弧と重なる位置に、前記ノズルに供給される液体を貯留する液体貯留部、前記ノズルから排出された液体を受け入れる受液部および前記ノズルの洗浄を行う洗浄部のいずれか少なくとも1つが設けられ、
前記複数のセルに
前記攪拌子が配置され、前記回転体の往復回転により前記複数のセル
及び前記複数の区画を揺動させることで、前記攪拌子が前記検体および前記試薬を攪拌する、土壌
抽出液の成分測定を行うための測定装置。
【請求項2】
前記回転体には、前記検体を貯留する複数の検体貯留部を前記円またはその一部に沿って配置可能であり、
前記複数の検体貯留部が形成する円の外側に、前記複数のセルを配置可能であり、
前記液体貯留部、前記受液部および前記洗浄部は、前記回転体の外側に設けられている請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記ノズルから排出された液体を受け入れる前記受液部を備え、
前記ノズルが注入動作を行わない待機状態では、前記ノズルの先端は、前記受液部の上方に位置している請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記ノズルに対して気体を吹き付けることにより、前記ノズルの液滴を除去する気体噴出部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記ノズル内の流体の吸引および排出を行う第1および第2ポンプを備え、
第1ポンプと第2ポンプとは、容量が異なっている請求項1から4のいずれか1項に記
載の測定装置。
【請求項6】
土壌抽出液の成分である検体および
粉末状の試薬を貯留し、攪拌子が配置された複数のセルを少なくとも1つの仮想的な円またはその一部に沿って配置可能な回転体
であって、前記複数のセルより大きく、前記試薬を溶解させる前記攪拌子が配置された複数の区画が前記回転体の径方向に沿って配置された容器を含む回転体と、
前記複数のセルの少なくとも1つに検査光を出射する発光部と、
前記セルを透過した検査光を受光する受光部とを備え、
前記複数のセルには、大きさの異なるセルが含まれているか、前記複数のセルとは大きさが異なる容器をさらに前記回転体に配置可能であり、
前記複数のセルおよび前記容器は、前記回転体の外縁側に位置する外側面を有し、
前記外側面が前記回転体の外縁に沿って揃うように、前記複数のセルが配置可能であるか、前記複数のセルおよび前記容器が配置可能であり、
前記攪拌子は、前記複数のセル
及び前記複数の区画の底部に位置し、
前記回転体の往復回転により前記複数のセル
及び前記区画を揺動させることで、前記攪拌子が前記検体および前記試薬を攪拌可能であり、
前記検査光は、前記複数のセルの、前記回転体の中心に近い側から、前記中心から遠い側に向かう方向に出射され、
前記検査光の光路が、前記攪拌子によって遮られないように前記発光部と前記受光部との位置関係が規定され、
前記受光部は、前記外側面と対向する位置に設けられている土壌
抽出液の成分測定を行うための測定装置。
【請求項7】
前記回転体には、前記複数のセルを複数の同心円またはその一部に沿うように配置可能であり、
前記複数の同心円のうちの第一の円を構成する複数のセルに対応する第1の光学系と、前記同心円のうちの第二の円を構成する複数のセルに対応する第2の光学系とを備える請求項
6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記第一の円を構成する複数のセルと、前記第二の円を構成する複数のセルとは、互いに異なる高さに位置している請求項
7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記複数のセルは、平面視した場合に、前記円に沿った周方向の長さが、前記円の半径方向の幅より大きい請求項1から
8のいずれか1項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の物質の濃度を光学的に測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検体に含まれる特定の物質の濃度を光学的な手法により測定する装置が知られている。例えば、特許文献1には、土壌の減衰スペクトルに基づいて硝酸性窒素濃度を判定する硝酸性窒素測定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の測定装置では、多数の検体について測定を行う場合の測定効率が十分に高くない。本発明の一態様は、従来よりも測定効率の高い測定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る測定装置は、土壌抽出液の成分測定を行うための測定装置であって、土壌抽出液の成分である検体および粉末状の試薬を貯留する複数のセルを少なくとも1つの仮想的な円またはその一部に沿って配置可能な回転体であって、前記複数のセルより大きく、前記試薬を溶解させる攪拌子が配置された複数の区画が前記回転体の径方向に沿って配置された容器を含む回転体と、前記複数のセルの少なくとも1つに液体を注入するノズルを移動させる移動機構とを備え、前記移動機構は、前記ノズルの先端が円弧を描くように前記ノズルを移動させ、平面視した場合に前記ノズルの先端が描く円弧と重なる位置に、前記ノズルに供給される液体を貯留する液体貯留部、前記ノズルから排出された液体を受け入れる受液部および前記ノズルの洗浄を行う洗浄部のいずれか少なくとも1つが設けられ、前記複数のセルに前記攪拌子が配置され、前記回転体の往復回転により前記複数のセル及び前記複数の区画を揺動させることで、前記攪拌子が前記検体および前記試薬を攪拌するものである。
【0006】
また、本発明の一態様に係る測定装置は、土壌抽出液の成分測定を行うための測定装置であって、土壌抽出液の成分である検体および粉末状の試薬を貯留し、攪拌子が配置された複数のセルを少なくとも1つの仮想的な円またはその一部に沿って配置可能な回転体であって、前記複数のセルより大きく、前記試薬を溶解させる前記攪拌子が配置された複数の区画が前記回転体の径方向に沿って配置された容器を含む回転体と、前記複数のセルの少なくとも1つに検査光を出射する発光部と、前記セルを透過した検査光を受光する受光部とを備え、前記複数のセルには、大きさの異なるセルが含まれているか、前記複数のセルとは大きさが異なる容器をさらに前記回転体に配置可能であり、前記複数のセルおよび前記容器は、前記回転体の外縁側に位置する外側面を有し、前記外側面が前記回転体の外縁に沿って揃うように、前記複数のセルが配置可能であるか、前記複数のセルおよび前記容器が配置可能であり、前記攪拌子は、前記複数のセル及び前記複数の区画の底部に位置し、前記回転体の往復回転により前記複数のセル及び前記区画を揺動させることで、前記攪拌子が前記検体および前記試薬を攪拌可能であり、前記検査光は、前記複数のセルの、前記回転体の中心に近い側から、前記中心から遠い側に向かう方向に出射され、前記検査光の光路が、前記攪拌子によって遮られないように前記発光部と前記受光部との位置関係が規定され、前記受光部は、前記外側面と対向する位置に設けられているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、従来よりも測定効率の高い測定装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態1に係る測定装置が備えるターンテーブルの平面図である。
【
図5】試薬を溶解させる容器の形状を示す斜視図である。
【
図6】実施形態1に係る測定装置の、ターンテーブルを取り外した状態の斜視図である。
【
図7】実施形態1に係る測定装置におけるアーム、チューブおよびノズルの斜視図である。
【
図8】本体の内部における貯留部、洗浄部および溶媒供給部の構成について説明するための図である。
【
図10】実施形態1に係る測定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態2に係る測定装置の平面図である。
【
図12】実施形態2に係る測定装置の内部の構成を示す図である。
【
図13】第一の円を構成するセルと、第二の円を構成するセルとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
(測定装置1の構成)
図1は、測定装置1の平面図である。
図2は、測定装置1が備えるターンテーブル3の平面図である。測定装置1は、検体中の物質の濃度を光学的に測定する測定装置であり、例えば土壌抽出液の成分を測定する測定装置である。
図1および
図2に示すように、測定装置1は、本体2、本体2に対して回転駆動するターンテーブル(回転体)3、ターンテーブル3に配置された複数のセル4aおよび複数のセル5aの少なくとも1つに液体(検体または試薬)を注入するノズル13、を備えている。複数のセル4a・5aは、円形のターンテーブル3の外縁に沿って位置している。すなわち、複数のセル4a・5aは、仮想的な円またはその一部に沿って配置されている。
【0011】
図3は、セル部材4の形状を示す斜視図である。
図3に示すように、セル部材4は、複数のセル4aを備えている。複数のセル4aを個別のセルとして形成してもよいが、セル部材4として一体に形成することにより、複数のセル4aの取り外しが効率的になる。
図1に示す例では、10個のセル4aを備える5個のセル部材4がターンテーブル3に配置されている。ただし、各セル部材4が備えるセル4aの個数、およびターンテーブル3に配置されるセル部材4の個数は、
図1に示すものに限定されない。
【0012】
図4は、セル部材5の形状を示す斜視図である。
図4に示すように、セル部材5は、複数のセル5aを備えている。複数のセル5aをセル部材5として一体に形成することにより、複数のセル5aの取り外しが効率的になる。セル部材5についても、複数のセル5aを個別のセルとして形成してもよい。また、各セル部材5が備えるセル5aの個数およびターンテーブル3に配置されるセル部材5の個数は、
図1に示すものに限定されない。
【0013】
一般的な成分の測定では、後述するように粉体を溶媒に溶解させた液体の試薬を使用する。しかし、測定する成分によっては試薬を溶媒に溶解させず、粉末の状態で使用する場合がある。セル5aは、粉末状の試薬を使用して測定することが可能なセルである。セル5aにはユーザによって粉末状の試薬が予め投入される。試薬の投入のしやすさおよび試薬の濃度のばらつきを低減することを考慮して、セル5aはセル4aよりも大きく形成されている。
【0014】
ノズル13は、セル4a・5aの少なくとも1つに液体を注入する。ノズル13は、ノズル13を移動させる移動機構としてのアーム11によって支持されている。ノズル13は消耗品であってよく、必要に応じて交換されてよい。
【0015】
図2に示すように、ターンテーブル3は、複数のセル部材4・5を配置可能な凹部または開口部を備えている。
図2に示す例では、ターンテーブル3は、セル部材4を配置可能な開口部3a、およびセル部材5を配置可能な開口部3bを備える。セル部材4・5は消耗品であってよく、例えば測定ごとに交換される。そのため、セル部材4・5を、測定装置1の構成要素として捉えなくてもよい。
【0016】
また、測定装置1は、複数のセル4a・5aとは大きさが異なる複数のセル6a(区画)を備える容器6をさらに備える。容器6は、試薬を溶解させる容器である。複数のセル4a・5aに注入するために十分な量の試薬を調整するため、セル6aは、セル4a・5aよりも大きい。ターンテーブル3は、容器6を配置可能な開口部3cを備える。
図2に示す例では、開口部3a・3bの径方向外側の外縁部によって規定される仮想的な円に開口部3cの外縁部が沿うように開口部3cが備えられている。開口部3cの径方向外側の外縁部は、前記仮想的な円と一致する必要はなく、前記仮想的な円の内側に位置していればよい。
【0017】
図5は、容器6の形状を示す斜視図である。容器6には、ターンテーブル3の径方向に沿って複数のセル6aが設けられている。ターンテーブル3の径方向に複数のセル6aを設けているのは、試薬の溶解を効率的に行うためである。この詳細については後述する。また、容器6には、ターンテーブル3の周方向に沿って複数のセル6aが設けられている。容器6には、測定装置1による測定で使用される試薬の数以上のセル6aが設けられていればよい。
図5に示す例では、容器6には、ターンテーブル3の径方向に沿って2つのセル6aが設けられ、周方向に沿って3つのセル6aが設けられている。したがって、容器6全体では6つのセル6aが設けられている。それぞれのセル6aには、ユーザによって測定前に試薬が粉末の状態で投入されてよい。測定時には、測定装置1は、粉末状の試薬を溶媒により溶解、液化させて測定に用いる。容器6は、セル部材4・5等と同様に消耗品であってよく、必要に応じて交換されてよい。そのため、容器6を、測定装置1の構成要素として捉えなくてもよい。
【0018】
また、測定装置1は、検体を貯留する複数の検体貯留部7をさらに備える。ターンテーブル3は、複数の検体貯留部7を、ターンテーブル3の外縁によって規定される仮想的な円の同心円またはその一部に沿って配置可能な凹部3dを備える。凹部3dは、ターンテーブル3における開口部3a・3bの内側に位置する。すなわち、測定装置1においては、複数の検体貯留部7が形成する円の外側にセル4a・5aが配置されている。検体貯留部7は消耗品であってよく、測定装置1の構成要素として捉えなくてもよい。
【0019】
図6は、測定装置1の、ターンテーブル3を取り外した状態の斜視図である。
図6には、本体2の内部の構成が表れている。
図6に示すように、測定装置1は、回転機構15、駆動機構16、ポンプ17、および気体噴出部18をさらに備える。
図6においては、本体2の内部の部材(駆動機構16、ポンプ17、発光部21および受光部22)を支持する部材については省略している。回転機構15は、ターンテーブル3を回転させる機構である。
【0020】
ノズル13は、チューブ12を介して、本体2の内部に格納されたポンプ17と連通している。ポンプ17は、ノズル13内の流体の吸引および排出を行う。ポンプ17は、例えばシリンジポンプである。ノズル13を支持するアーム11は、本体2の内部に格納された駆動機構16により回動する。その結果、ノズル13の先端は、
図1に示した円弧Cを描くように移動する。また、駆動機構16は、アーム11を上下方向に移動させる。その結果、ノズル13の先端も上下方向に移動する。
【0021】
円弧Cは、ターンテーブル3上の、複数のセル4a・5aおよびセル6aによって規定される仮想的な円、および複数の検体貯留部7によって規定される仮想的な円と交差している。仮想的な円の中心は、ターンテーブル3の回転駆動の中心と一致している。このため、ターンテーブル3の回転とアーム11の回動および上下移動とを組み合わせることで、ノズル13は、任意のセル4a・5a・6a、および検体貯留部7に対して液体の吸引または吐出を行うことができる。
【0022】
また、測定装置1は、セル4a・5aに貯留された検体の測定を行うための光学系20として、本体2の内部に発光部21と受光部22とを備える。光学系20の具体的な構成については後述する。
【0023】
図7は、測定装置1におけるアーム11、チューブ12およびノズル13の斜視図である。
図7に示すように、アーム11の先端には、チューブ12およびノズル13が接続される接続部11aが設けられている。接続部11aの内部には、チューブ12とノズル13とを連通させる通路が設けられている。このため、ノズル13による検体または試薬の吸引および吐出を、ポンプ17の動作により行うことができる。
【0024】
さらに、本体2には、ノズル13に供給される液体を貯留する液体貯留部8、ノズル13の内側の洗浄を行う洗浄部9および洗浄部10が設けられている。洗浄部10は、ノズル13から排出された液体を受け入れる受液部として機能するとともにノズル13の外側の洗浄を行う。液体貯留部8に貯留される液体は、例えば試薬の溶解および液化に使用される溶媒である。洗浄部9および洗浄部10は、溶媒と同じ種類の液体を用いてノズル13を洗浄する。液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10は、アーム11によってノズル13が移動している状態の測定装置1を平面視した場合に、ノズル13の先端が描く円弧Cの一部と重なる位置に配置されている。このため、アーム11によってノズル13を、液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10のそれぞれの直上に移動させ、溶媒の吸引およびノズル13の洗浄を行うことができる。また、本体2には、洗浄部10においてノズル13の外部を洗浄するために用いる溶媒を供給する溶媒供給部14が設けられている。
【0025】
測定装置1は、ノズル13から排出された液体を受け入れる受液部を、洗浄部10とは別に備えていてもよい。この場合には、当該受液部についても、円弧Cの一部と重なる位置に配置される。また、測定装置1は、必ずしも液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10の全てを備えている必要はなく、これらのうちの少なくとも1つを備えていればよい。
【0026】
液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10は、ターンテーブル3の外側に設けられている。このため、アーム11は、ターンテーブル3の回転とは無関係に、液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10のそれぞれの直上にノズル13を移動させ、溶媒の吸引およびノズル13の洗浄を行うことができる。
【0027】
(本体2の内部の構成)
図8は、本体2の内部における液体貯留部8、洗浄部9、洗浄部10および溶媒供給部14の構成について説明するための図である。ただし、
図8における液体貯留部8、洗浄部9、洗浄部10および溶媒供給部14の位置関係は、概念的に示されており、
図1に示す測定装置1におけるそれらの位置関係とは一致しない。
【0028】
図8に示すように、液体貯留部8には、試薬の溶解および液化に用いるためにノズル13により吸引される溶媒が貯留されている。洗浄部9には、ノズル13の内側を洗浄するための溶媒が貯留されている。
【0029】
また、洗浄部10の下方には、溶媒供給部14と連通している洗浄用ノズル14aが配置されている。洗浄部10に挿入されたノズル13に対して、溶媒供給部14から供給された溶媒を図示しないポンプにより吸引して洗浄用ノズル14aから吹き付けることで、ノズル13の外側の洗浄を行うことができる。
図6および
図8においては簡単のため、洗浄用ノズル14aを1つのみ示している。しかし、測定装置1は、互いに異なる複数の方向からノズル13に洗浄用の溶媒を吹き付ける、複数の洗浄用ノズル14aを備えていてもよい。
【0030】
また、洗浄部10の下方には、洗浄部10に挿入されたノズル13に対して気体18aを吹き付けることにより、ノズル13の液滴13aを除去する気体噴出部18が配置されている。さらに、気体噴出部18の下方には、ノズル13から排出される液体および落下する液滴13aを収容する容器19が配置されている。
【0031】
(光学系20の構成)
図9は、光学系20の構成を示す図である。上述したとおり、測定装置1は、光学系20として発光部21と受光部22とを備える。発光部21は、セル4a・5aの少なくとも1つに検査光23を出射する。発光部21は例えばLED(Light Emitting Diode)である。受光部22は、セル4a・5aを透過した検査光23を受光する。受光部22は例えばフォトダイオードである。測定装置1は、発光部21から出射される検査光23の強度と、受光部22が受光する検査光23の強度とを用いて吸光分析を行う。ただし、発光部21および受光部22はこれらに限られない。
【0032】
セル部材4は、ターンテーブル3の外縁側に位置する外側面4bを有する。ターンテーブル3には、外側面4bがターンテーブル3の外縁に沿って揃うように、複数のセル4aを配置可能である。セル部材5および容器6も同様に、ターンテーブル3の外縁側に位置する外側面を有し、かつ当該外側面がターンテーブル3の外縁に沿って揃うように配置される。ターンテーブル3の径方向における外側に位置するセル6aについても同様である。
【0033】
図1に示したように、ターンテーブル3の径方向における内側に位置するセル6aは、セル4a・5aよりも中心側に位置する。すなわち、容器6はセル4a・5aよりもターンテーブル3の中心側へ突出している。このため、光学系20において、ターンテーブル3の中心に近い側に配置される構成要素(発光部21)は、ターンテーブル3の回転によって容器6に衝突しないよう、セル4a・5aから離隔して配置されることとなる。
【0034】
測定装置1においては、発光部21がターンテーブル3の中心に近い側に設けられる。検査光23は、ターンテーブル3の中心に近い側から、中心から遠い側に向かう方向に出射される。受光部22は、外側面4bと対向する位置に設けられている。上述のように、セル部材4・5および容器6の外側面がターンテーブル3の外縁に沿って揃うように配置されている。容器6の、ターンテーブル3の径方向の幅は、セル部材4・5の当該幅よりも大きいため、受光部22をターンテーブル3の中心に近い側に配置すると、受光部22とセル4a・5aとの距離が大きくなる。受光部22を外側面と対向する位置に設けることにより、受光部22をターンテーブル3の中心に近い側に設ける場合と比較して、受光部22を、セル4a・5aに近い位置に配置することができる。したがって、セル4a・5aを透過した検査光23のうち、受光部22が受光する光の比率を向上させることができる。さらに、大きさの異なるセル部材4・5および容器6を1つのターンテーブル3に搭載して測定を行うことができるため、従来よりも測定効率を高めることができる。
【0035】
図9においては、セル4a内に攪拌子4cが投入されている。攪拌子4cは、ターンテーブル3の往復回転によりセル4aを揺動させることで検体および試薬を攪拌させる場合に、攪拌の効率を向上させる部材である。攪拌子4cは、例えばセラミックの球体である。測定装置1においては、セル4a内に攪拌子4cが存在している場合であっても、検査光23の光路が攪拌子4cによって遮られないように発光部21と受光部22との位置関係が規定されている。
図9に示す例では、攪拌子4cは、セル4aの底部に位置する。これに対し、発光部21と受光部22との位置関係は、検査光23の光路が攪拌子4cの上側であるように規定されている。このため、セル4a内に攪拌子4cが存在していても測定に支障が生じない。また、セル5a・6a内にも攪拌子が投入されていてもよい。
【0036】
(測定装置1の動作)
図10は、測定装置1の動作の一例を示すフローチャートである。ここで示す測定方法は、あくまで一例に過ぎず、粉末の試薬ではなく液体の試薬を用いてもよい。また、セル4aおよびセル5aのいずれか一方のみを用いてもよい。また、検体と試薬とのどちらを先にセル4aまたはセル5aに注入するのかについても特に限定されない。
図10に示す例では、測定装置1は、まず検体をセル4a・5aに注入する(S1)。次に、測定装置1は、試薬を調整する(S2)。具体的には、測定装置1は、ノズル13により液体貯留部8から溶媒を吸引し、当該溶媒を、粉末の試薬が投入されているセル6aに注入する。さらに測定装置1は、ターンテーブル3の往復回転によりセル6aを揺動させることで攪拌して試薬を溶解させる。
【0037】
上述したとおり、容器6には、ターンテーブル3の径方向に沿って複数のセル6aが設けられている。径方向における外側に設けられたセル6aは、径方向における内側に設けられたセル6aと比較して、ターンテーブル3の回転に伴う移動速度が大きくなる。このため、径方向における外側に設けられたセル6aに、溶媒に溶解しにくい試薬を投入することで、ステップS2において効率良く試薬を攪拌して溶解させることができる。
【0038】
測定装置1は、調整した試薬をセル4aに注入する(S3)。このとき、測定装置1は、試薬を注入されたセル4aを、ターンテーブル3の往復回転により揺動させることで攪拌する。また、ステップS2・S3におけるターンテーブル3の往復回転により、セル5aに注入された検体も、予めセル5aに投入されていた粉末状の試薬と攪拌される。測定装置1は、検体と試薬とが攪拌されたセル4a・5aを、光学系20による測定位置に移動させる(S4)。その状態で、測定装置1は、セル4a・5a内の検体を透過した検査光23の強度を測定する(S5)。
【0039】
粉末の試薬を溶解させた後に当該試薬の成分が時間の経過とともに変化すること、または、検体と試薬とを混合した後に混合液の成分が時間の経過とともに変化することがある。また、粉末の試薬が完全に溶解するまでには多少の時間がかかる。そのため、セル6aまたはセル5bにおいて試薬の溶解に要する時間および溶解のタイミングと、調整した試薬をセル4aに注入するタイミングと、セル4a・5bの測定を行うタイミングとを考慮して、測定装置1の動作制御を行うことが好ましい。
【0040】
測定装置1の動作中、ノズル13が検体または試薬の注入動作を行わない待機状態では、ノズル13の先端は、ノズル13から排出された液体を受け入れる受液部として機能する洗浄部10の上方に位置している。このため、ノズル13の先端に検体または試薬の液滴13aが付着している場合であっても、当該液滴13aが他の検体または試薬が注入されたセル4a・5a・6a、または検体貯留部7に落下する可能性は小さい。
【0041】
また、測定装置1においては、互いに異なる複数種類の液体をノズル13により吸引および吐出する。複数種類の液体が混合すると、測定の精度が低下する。このため、測定の途中で必要に応じてノズル13を洗浄してもよい。
【0042】
ノズル13を洗浄する場合、まず、測定装置1は、洗浄部10において、ノズル13の内部に残留している液体を容器19(
図8参照)に排出するとともに、ノズル13の外部を洗浄する。次に、測定装置1は、ノズル13により洗浄部9から溶媒を吸引する。測定装置1は、ノズル13を揺動させることでノズル13内の溶媒を攪拌した後、洗浄部10において溶媒を容器19に排出する。その状態で、測定装置1は、液滴13aを気体噴出部18により除去することで、洗浄を終了する。このようにしてノズル13を洗浄することで、液体の混合を防止し、高精度な測定が可能となる。
【0043】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0044】
図11は、実施形態2に係る測定装置31の平面図である。
図11に示すように、測定装置31は、(i)ターンテーブル3の代わりにターンテーブル33(回転体)を備える点、(ii)検体貯留部7の代わりに検体数を増やした検体貯留部37を備える点、および(iii)複数のセル34a・35aをさらに備える点で測定装置1と相違する。複数のセル34aは、セル部材34として一体形成されている。また、複数のセル35aは、セル部材35として一体形成されている。ターンテーブル33には、検体数を増やした検体貯留部37を配置可能な凹部を備える。検体貯留部37の個数は、
図11に示すものに限定されない。
【0045】
ターンテーブル33には、複数のセル4a・5a・34a・35aを複数の同心円またはその一部に沿うように配置可能である。
図11に示す例では、セル4a・5aが第一の円に沿うように配置されている。また、セル34a・35aが第二の円に沿うように配置されている。また、ターンテーブル33には、セル4a・5a・34a・35aとは別のセルが、第一の円および第二の円のいずれとも別の同心円またはその一部に沿うように配置されていてもよい。
【0046】
図12は、測定装置31の、ターンテーブル33を取り外した状態の斜視図である。
図12には、測定装置31の内部の構成が表れている。
図12に示すように、測定装置31は、第一の円を構成するセル4a・5aに対応する第1の光学系20Aと、第二の円を構成するセル34a・35aに対応する第2の光学系20Bとを備える。第1の光学系20Aおよび第2の光学系20Bの、それぞれの構成は、実施形態1における光学系20の構成と同様である。また、測定装置31は、第1の光学系20Aおよび第2の光学系20Bに加えて、さらに別の光学系を備えていてもよい。複数の光学系を備えることで、測定装置31は、複数の検体を同時に測定することができる。したがって、測定装置31による測定の効率が向上する。
【0047】
また、測定装置31は、ノズル13内の流体の吸引および排出を行う第1ポンプ17Aおよび第2ポンプ17Bを備える。第1ポンプ17Aおよび第2ポンプ17Bはいずれもシリンジポンプであってよい。第1ポンプ17Aと第2ポンプ17Bとは、容量が異なっている。
図12に示す例では第1ポンプ17Aの容量が第2ポンプ17Bの容量よりも大きいものとする。第1ポンプ17Aおよび第2ポンプ17Bは、チューブ12Aによりノズル13と接続され、ノズル13内の流体の吸引および排出を行う。
【0048】
例えばセル5a・35aに液体を注入する場合には、測定装置31は容量の大きい第1ポンプ17Aを使用する。セル5a・35aよりも容量が小さいセル4a・34aに液体を注入する場合には、測定装置31は容量の大きい第2ポンプ17Bを使用する。このように第1ポンプ17Aおよび第2ポンプ17Bを使い分けることで、セル4a・34aの容量がセル5a・35aの容量よりも著しく小さい場合(例えばセル4a・34aの容量が数100μL程度であり、セル5a・35aの容量が1~2mLである場合)において、セル4a・34aに液体を注入する場合における注入量の精度が向上するとともに、セル5a・35aに液体を注入する効率が向上する。
【0049】
図13は、第一の円を構成するセル4aと、第二の円を構成するセル34aとの位置関係を示す図である。
図13に示すように、セル4aと、セル34aとは、互いに異なる高さに位置している。このため、セル4aに注入された検体について測定する第1の光学系20A、および、セル34aに注入された検体について測定する第2の光学系20Bについても、互いに異なる高さに位置している。セル4aが位置する高さとセル34aが位置する高さとを異ならせることで、平面視におけるセル4aの位置とセル34aの位置とを接近させる、または部分的に重複させることができる。また、第1の光学系20Aが位置する高さと第2の光学系20Bが位置する高さとを異ならせることについても同様である。したがって、測定装置31を平面視において小型化できる。
【0050】
また、このような構成によれば、例えば土壌の成分測定を行う場合に、測定効率を向上させることで、土壌の改善に寄与できる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0051】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1、31 測定装置
3、33 ターンテーブル(回転体)
7 検体貯留部
8 液体貯留部
9 洗浄部
10 洗浄部(受液部)
11 アーム(移動機構)
17A 第1ポンプ
17B 第2ポンプ
18 気体噴出部
20A 第1の光学系
20B 第2の光学系
21 発光部
22 受光部
C 円弧