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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】工作機械およびスプラッシュガード
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20250630BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q11/08 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024153557
(22)【出願日】2024-09-06
【審査請求日】2024-12-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】落合 隆文
(72)【発明者】
【氏名】日永 健斗
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0128915(US,A1)
【文献】中国実用新案第208483602(CN,U)
【文献】特開2003-080427(JP,A)
【文献】特開2021-176660(JP,A)
【文献】特開2011-143483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
B23Q 11/08
B23B 25/04、 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンテナンス用の開口部を有するスプラッシュガードと、
前記開口部を閉じるよう前記スプラッシュガードに組み付けられるカバーユニットと、
前記開口部の開閉状態を検出するセンサと、
前記開口部の開状態が検出されたときに主軸の駆動を制限するインターロック部と、
を備え、
前記カバーユニットは、
前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第1開口領域を遮蔽する第1カバーと、
前記第1カバーとは別に前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第2開口領域を遮蔽する第2カバーと、
前記第2カバーに着脱可能に取り付けられ、前記第2カバーが前記スプラッシュガードに取り付けられることで、前記第1カバーと前記第2カバーとの間に形成される前記開口部の第3開口領域を遮蔽する第3カバーと、
を含み、
前記センサは、前記第1カバーと前記第3カバーとの間に設けられ、
前記スプラッシュガードに前記第3カバーを取り付けた状態で前記第2カバーを前記スプラッシュガードから単独で取り外すことが不可能に構成される、工作機械。
【請求項2】
前記第3カバーは、前記第2カバーに取り付けられた状態においてのみ、前記第3開口領域を遮蔽可能である、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記センサの検出部は、前記第1カバーに取り付けられ、
前記センサによる被検出部は、前記第3カバーに固定され、
前記インターロック部は、前記検出部につながる信号ラインを介して前記センサの検出情報を取得し、
前記第1カバーが取り外されるときには、前記第1カバーから前記信号ラインが外れる、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記インターロック部は、前記センサにつながる信号ラインを介して前記センサの検出情報を取得し、
前記開口部を含む前記スプラッシュガードの全体又は一部とともに前記カバーユニットが取り外されるときには、前記カバーユニットから前記信号ラインが外れる、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項5】
メンテナンス用の開口部を有するスプラッシュガードと、
前記開口部を閉じるよう前記スプラッシュガードに組み付けられるカバーユニットと、
前記開口部の開閉状態を検出するセンサと、
前記開口部の開状態が検出されたときに主軸の駆動を制限するインターロック部と、
前記主軸として、加工対象となるワークを支持するワーク主軸と、
前記スプラッシュガードの内側に隣接するように配置され、前記ワーク主軸を回転可能に支持する主軸台と、
を備え、
前記カバーユニットは、
前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第1開口領域を遮蔽する第1カバーと、
前記第1カバーとは別に前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第2開口領域を遮蔽する第2カバーと、
前記第2カバーに着脱可能に取り付けられ、前記第2カバーが前記スプラッシュガードに取り付けられることで、前記第1カバーと前記第2カバーとの間に形成される前記開口部の第3開口領域を遮蔽する第3カバーと、
を含み、
前記センサは、前記第1カバーと前記第3カバーとの間に設けられ、
前記カバーユニットが形成される状態において、
前記第3カバーは、前記ワーク主軸に支持されるワークと軸線方向に対向配置され、
前記第1カバーと前記第2カバーとが、前記第3カバーの周囲を取り囲むように配置される、工作機械。
【請求項6】
前記センサが非接触式の近接センサである、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項7】
メンテナンス用の開口部を有するスプラッシュガードと、
前記開口部を閉じるよう前記スプラッシュガードに組み付けられるカバーユニットと、
前記開口部の開閉状態を検出するセンサと、
前記開口部の開状態が検出されたときに主軸の駆動を制限するインターロック部と、
を備え、
前記カバーユニットは、
前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第1開口領域を遮蔽する第1カバーと、
前記第1カバーとは別に前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第2開口領域を遮蔽する第2カバーと、
前記第2カバーに着脱可能に取り付けられ、前記第2カバーが前記スプラッシュガードに取り付けられることで、前記第1カバーと前記第2カバーとの間に形成される前記開口部の第3開口領域を遮蔽する第3カバーと、
を含み、
前記開口部の開閉状態を検出するセンサは、前記第1カバーと前記第3カバーとの間に設けられた一つのセンサのみである、工作機械。
【請求項8】
工作機械のメンテナンス用の開口部を有するスプラッシュガードであって、
前記開口部を閉じるよう組み付けられるカバーユニットと、
前記開口部の開閉状態を検出するセンサと、
を備え、
前記カバーユニットは、
前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第1開口領域を遮蔽する第1カバーと、
前記第1カバーとは別に前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第2開口領域を遮蔽する第2カバーと、
前記第2カバーに着脱可能に取り付けられ、前記第2カバーが前記スプラッシュガードに取り付けられることで、前記第1カバーと前記第2カバーとの間に形成される前記開口部の第3開口領域を遮蔽する第3カバーと、
を含み、
前記センサは、前記第1カバーと前記第3カバーとの間に設けられ、
前記スプラッシュガードに前記第3カバーを取り付けた状態で前記第2カバーを前記スプラッシュガードから単独で取り外すことが不可能に構成される、スプラッシュガード。
【請求項9】
工作機械のメンテナンス用の開口部を有するスプラッシュガードであって、
前記開口部を閉じるよう組み付けられるカバーユニットと、
前記開口部の開閉状態を検出するセンサと、
を備え、
前記カバーユニットは、
前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第1開口領域を遮蔽する第1カバーと、
前記第1カバーとは別に前記スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、前記開口部の第2開口領域を遮蔽する第2カバーと、
前記第2カバーに着脱可能に取り付けられ、前記第2カバーが前記スプラッシュガードに取り付けられることで、前記第1カバーと前記第2カバーとの間に形成される前記開口部の第3開口領域を遮蔽する第3カバーと、
を含み、
前記開口部の開閉状態を検出するセンサは、前記第1カバーと前記第3カバーとの間に設けられた一つのセンサのみである、スプラッシュガード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械に関し、特にスプラッシュガードに設けられるメンテナンス用開口部の開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の筐体は、スプラッシュガードと呼ばれるカバーにより構成される。スプラッシュガードが加工室を取り囲むように設けられることで、ワークの加工時に切屑や切削液が周囲に飛散することが防止される。筐体の前面には加工室内にアクセスするための扉が設けられるが、筐体の側面にもメンテナンス用の開口部が設けられることがある。
【0003】
例えばターニングセンタの場合、バーフィーダを筐体内のワーク主軸に接続できるよう、接続用開口部が設けられる。バーフィーダは、長尺状のワーク(棒材)をワーク主軸の後方から自動供給する装置である(特許文献1参照)。バーフィーダをターニングセンタに接続する際、ワーク主軸の後方に位置するスプラッシュガードの開口部を開放し、バーフィーダの先端部を接続する。一方、バーフィーダの不使用時には、ワークを筐体の外部に露出させたままワーク主軸を回転させないよう、開口部をカバーで閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7108148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばワーク主軸に関連し、スプラッシュガードに上記バーフィーダを接続するための開口部のほか、チャックシリンダをメンテナンスするための開口部が必要になる場合がある。チャックシリンダは、ワーク主軸の先端に取り付けられるチャックを動作させるものであり、その動作確認用のセンサがワーク主軸の後方に設けられる。このセンサのメンテナンスのために、バーフィーダ用とは別の開口部を設けることがある。
【0006】
そのような場合、これらの開口部を閉塞するために、近接した箇所に複数のカバーを配置することになる。それら全ての開口部が閉じた状態でワーク主軸を駆動させる必要がある。そのために、カバーごとに閉状態を検出するセンサを設けるとコストが嵩む。一方、それらの開口部を単一のカバーで閉じる構成も考えられるが、カバーが大きくなり、その取り外しの作業負担が大きくなる。このような問題は、ターニングセンタに限らず、スプラッシュガードにメンテナンス用の開口領域を複数近接させて設ける工作機械であれば同様に生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は工作機械である。この工作機械は、メンテナンス用の開口部を有するスプラッシュガードと、開口部を閉じるようスプラッシュガードに組み付けられるカバーユニットと、開口部の開閉状態を検出するセンサと、開口部の開状態が検出されたときに、加工部の駆動を制限するインターロックを実行するインターロック部と、を備える。カバーユニットは、スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、開口部の第1開口領域を遮蔽する第1カバーと、第1カバーとは別にスプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、開口部の第2開口領域を遮蔽する第2カバーと、第2カバーに着脱可能に取り付けられ、第2カバーがスプラッシュガードに取り付けられることで、第1カバーと第2カバーとの間に形成される開口部の第3開口領域を遮蔽する第3カバーと、を含む。センサは、第1カバーと第3カバーとの間に設けられる。
【0008】
本発明の別の態様は、工作機械のメンテナンス用の開口部を有するスプラッシュガードである。このスプラッシュガードは、開口部を閉じるよう組み付けられるカバーユニットと、開口部の開閉状態を検出するセンサと、を備える。カバーユニットは、スプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、開口部の第1開口領域を遮蔽する第1カバーと、第1カバーとは別にスプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、開口部の第2開口領域を遮蔽する第2カバーと、第2カバーに着脱可能に取り付けられ、第2カバーがスプラッシュガードに取り付けられることで、第1カバーと第2カバーとの間に形成される開口部の第3開口領域を遮蔽する第3カバーと、を含む。センサは、第1カバーと第3カバーとの間に設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スプラッシュガードに設けられたメンテナンス用開口部を複数のカバーで閉塞する場合に、その開口部の開閉状態を少ないセンサで検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る工作機械の外観を表す斜視図である。
図2】工作機械のハードウェア構成図である。
図3】工作機械の内部構造を表す斜視図である。
図4】収容室の内部構造を表す正面図である。
図5】カバーユニットの構成および配置を表す図である。
図6】カバーユニットおよびその周辺の構造を表す図である。
図7図6(B)のA部拡大図である。
図8】センサによる検出方法を模式的に表す図である。
図9】変形例に係るカバーユニットの構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る工作機械の外観を表す斜視図である。
なお、以下では便宜上、工作機械1の正面からみて上下方向,前後方向,左右方向を、それぞれX方向,Y方向,Z方向として説明する。
【0012】
工作機械1はターニングセンタであり、工具を適宜交換しながらワークを所望の形状に加工する。工作機械1の筐体2の内側(機内)に加工室4が設けられる。加工室4は、筐体2の側面を構成するスプラッシュガードにより取り囲まれている。加工室4には、ワークを加工する加工装置が設けられる。筐体2の前面には、加工装置を操作するための操作盤6が設けられる。
【0013】
工作機械1の筐体2に隣接するように、加工室4へ供給するクーラントを貯留するクーラントタンク8が設けられる。クーラントは、加工時における工具およびワークの除熱や潤滑のための切削油として用いられるが、加工室4内に飛散した切屑を除去するための洗浄液としても用いられる。クーラントは、加工室4内でミスト状になるため、そのまま機外に排出されると、工場内を汚損する原因となる。このため、工作機械1には、ミスト化したクーラント(「オイルミスト」ともいう)を回収するためのミストコレクタ10が設けられる。
【0014】
筐体2の前面には加工室4内にアクセスするための扉7が設けられ、筐体2の左側面にはメンテナンス用の開口部70が設けられている。開口部70を閉じるようにカバーユニット50が設けられる。カバーユニット50は、後述する複数のカバーを組み付けて構成される。カバーユニット50には、これらのカバーのいずれかが開放された状態を検出するセンサが設けられる。本実施形態では、この開放状態の検出を、カバーユニット50を構成するカバーの数よりも少ないセンサで実現する。以下、その詳細について説明する。
【0015】
図2は、工作機械1のハードウェア構成図である。
工作機械1は、情報処理装置100、加工制御装置102および加工装置104を含む。加工制御装置102は、数値制御部として機能し、加工プログラム(NCプログラム)にしたがって加工装置104に制御信号を出力する。加工装置104は、加工制御装置102からの指示にしたがってワーク主軸を駆動し、工具を移動させてワークを加工する。
【0016】
加工装置104は、ワーク主軸駆動部110、刃物台駆動部112、クーラント供給装置114およびミストコレクタ駆動部116を含む。本実施形態では後述のように、ワークを保持可能なワーク主軸として第1ワーク主軸および第2ワーク主軸が設けられる。ワーク主軸駆動部110は、第1ワーク主軸を駆動する第1主軸駆動部120と、第2ワーク主軸を駆動する第2主軸駆動部122を含む。刃物台駆動部112は、後述するタレット型の刃物台を駆動する。
【0017】
クーラント供給装置114は、加工室4にクーラントを供給する。クーラント供給装置114は、上述したクーラントタンク8のほか、図示略のクーラント吐出部、ポンプおよび制御弁をクーラント循環路に配置して構成される。クーラント吐出部は、クーラントを吐出するノズルと、ノズルを駆動するアクチュエータを含み、設定された目標位置に向けてクーラントを吐出する。ポンプは、クーラントタンク8に貯留されたクーラントをくみ上げてクーラント吐出部へ供給する。制御弁は複数の開閉弁を含み、クーラント循環路におけるクーラントの流路を適宜切り替える。
【0018】
ミストコレクタ駆動部116は、加工室4においてクーラントが吐出されるときにミストコレクタ10を駆動する。ミストコレクタ駆動部116は、ミストコレクタ10のファンを駆動するモータを含む。
【0019】
情報処理装置100は、操作盤6を含み、オペレータの操作入力に基づいて加工制御装置102に制御指令を出力する。情報処理装置100は、また、オペレータの操作入力に応じて操作盤6のモニタに表示される画面を制御する。
【0020】
情報処理装置100の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(co-processor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。
【0021】
情報処理装置100は、検出部106およびインターロック部108を含む。検出部106は、カバーユニット50に設けられた後述のセンサなど、工作機械1に設置された各種センサによる検出情報を取得する。インターロック部108は、上記センサの検出情報に基づき、カバーユニット50を構成するいずれかのカバーが開放されていると判定すると(つまり、開口部70の開状態が検出されると)、加工制御装置102にインターロック指令を出力する。加工制御装置102は、このインターロック指令を受け取ると、ワーク主軸を含む各部の駆動を制限する。本実施形態では、インターロックにより各部の駆動を禁止するが、例えば、インターロックにより各部の駆動速度を低下させるなど、安全性を確保できる程度の制限に留めてもよい。インターロックにより加工装置104の自動運転は禁止し、手動運転は許容されるようにしてもよい。
【0022】
図3は、工作機械1の内部構造を表す斜視図である。説明の便宜上、筐体2の前面および左右側面のカバー(スプラッシュガード)が除かれた状態が示されている。
工作機械1は、筐体2内におけるベッド3(基台)の上方の空間を加工室4と収容室5とに仕切る隔壁12を有する。
【0023】
加工装置104は、ベッド3上に第1主軸台14、第2主軸台16および刃物台18等を搭載して構成される。第1主軸台14は収容室5に収容され、第2主軸台16および刃物台18は加工室4に収容される。収容室5は、移動体が設けられないため、第1主軸台14の収容に必要十分な程度の大きさとされ、加工室4よりも十分に小さい。第1主軸台14は、第1ワーク主軸20を回転可能に支持する。第1ワーク主軸20の先端部が隔壁12を貫通し、加工室4に露出する。第1ワーク主軸20の先端には、ワークを保持可能なチャックが取り付けられる。第1ワーク主軸20は、上述した第1主軸駆動部120により回転駆動される。
【0024】
第2主軸台16は、第2ワーク主軸22を回転可能に支持する。第2主軸台16は、切屑やクーラントの侵入を防止するために専用のカバー17で覆われている。第2ワーク主軸22は、そのカバー17から露出する。第2ワーク主軸22の先端には、ワークを保持可能なチャックが取り付けられている。第2ワーク主軸22は、上述した第2主軸駆動部122により回転駆動される。第2ワーク主軸22は、必要に応じて図示しない心押し台と付け替えることができる。
【0025】
第1ワーク主軸20と第2ワーク主軸22は、Z方向に同軸状に対向するように配設される。第1主軸台14および第2主軸台16には、それぞれワーク主軸を回転させるためのスピンドルモータが内蔵されている。第2主軸台16は、図示略の移動機構の駆動によりZ方向に移動可能である。すなわち、第2主軸台16が第2ワーク主軸22を第1ワーク主軸20に対して近接又は離間させる方向に移動可能であり、第1ワーク主軸20と第2ワーク主軸22との間隔を調整できる。この移動機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。
【0026】
刃物台18は、加工室4において第2主軸台16よりも奥行方向奥側に配置され、「工具保持部」として機能する。刃物台18は、タレットベース24およびタレット26を備える。タレットベース24は、Z方向に延びる回転軸を有し、タレット26を回転可能に支持する。タレットベース24には、タレット26を回転駆動するためのスピンドルモータが設けられている。タレット26には、その周縁部に沿って複数のクランプ・アンクランプ機構(図示略)が設けられている。これらのクランプ・アンクランプ機構により、異なる種類の複数の工具(図示せず)が着脱可能とされている。
【0027】
タレットベース24は、図示略の移動機構の駆動によりX,Y,Z方向に移動可能であり、各ワーク主軸の保持されるワークと、タレット26に保持される工具との位置関係を調整できる。この移動機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。
【0028】
このような構成により、タレット26は、X,Y,Z方向に移動可能である。また、タレット26は、Z方向に延びる軸線を中心に回転可能であり、それにより加工に用いる工具を切り替えることができる。すなわち、タレット26は、第1ワーク主軸20および第2ワーク主軸22の一方又は双方に支持されたワークに対して直交3軸方向に相対的に移動し、工具によりワークを切削加工または旋削加工することができる。
【0029】
加工室4の所定箇所に上述したクーラント吐出部が設けられる(図示略)。クーラント吐出部は、ワークの加工時に工具に向けてクーラントを吐出し、また、加工室4内に飛散した切屑を洗い流すようにクーラントを吐出する。なお、タレット26が支持する一部又は全ての工具にいわゆるスルースピンドルクーラント装置の機能をもたせてもよい。すなわち、工具にクーラントを流通させる内部通路を設け、その内部通路をクーラント循環路と連通させてもよい。工具の先端には、その内部通路の一端を形成し、クーラントを吐出する吐出口が設けられる。このようにして加工時に工具の先端からクーラントを吐出することで、加工精度の向上、加工時間の短縮、工具の長寿命化および切屑排出性能の向上等を図ることができる。
【0030】
ミストコレクタ10は、収容室5における第1主軸台14の上方の空間に配置される。隔壁12には、加工室4に向けて開口するミスト取込口28が設けられる。収容室5には、ミストコレクタ10の吸入口10aとミスト取込口28とを接続する配管30が配設される。隔壁12の側面には、ミスト取込口28を上方から覆うカバー32が設けられている。カバー32は、下方に向けて開口し、クーラント吐出部から吐出されるクーラントのミスト取込口28への直接侵入を規制する。ミストコレクタ10の駆動により、加工室4内のオイルミストがミスト取込口28に取り込まれ、配管30を通って吸入口10aに導かれる。オイルミストは、ミストコレクタ10の内部で回収され、清浄化された空気が排出口10bから排出される。
【0031】
図4は、収容室5の内部構造を表す正面図である。
収容室5には、第1主軸台14とは別に支柱40がベッド3に立設されている。支柱40の上端にテーブル42が設けられ、そのテーブル42上にミストコレクタ10が載置されている。第1主軸台14は収容室5の奥行方向手前側に配置され、支柱40は奥行方向奥側に配置されている。テーブル42が支柱40の上端から手前側に延在するように設けられているため、ミストコレクタ10は、支柱40によって片持ち状に支持され、支柱40よりも奥行方向手前側に配置される。
【0032】
ミストコレクタ10は、第1主軸台14よりも相対的に奥方に配置されている。ミストコレクタ10の排出口10bは、筐体2に設けられた開口部34を介して機外と連通する。配管30は、ミストコレクタ10の吸入口10aから延出し、やや手前側に湾曲してミスト取込口28に接続される。配管30は、第1主軸台14の上方に配置される。このように、収容室5における第1主軸台14の上方の空間を有効活用してミストコレクタ10および配管30が配置されている。
【0033】
ミストコレクタ10は、ケース44に図示略のファンおよびフィルタを収容して構成される。ケース44には、ファンを回転駆動するモータが配設されている。ケース44には、排出口10bを取り囲むようにフード46(排気口カバー)が着脱可能に取り付けられる。なお、ミストコレクタ10の構成については、例えば特許第7144631号公報にも記載のように公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0034】
ミストコレクタ10の作動によりファンが駆動されると、加工室4のオイルミストを含む空気がミスト取込口28から吸引され、配管30を通ってミストコレクタ10の吸入口10aに導かれる。この空気は、フィルタを通過することでオイルミストが除去されて清浄化された後、排出口10bを介して機外に排出される。
【0035】
カバーユニット50は、第1主軸台14と第1ワーク主軸20の軸線方向に対向配置されるよう、筐体2の左側面(スプラッシュガード2a)に取り付けられる。スプラッシュガード2aの外側にカバーユニット50と対向するようにバーフィーダ60を設置することができる。バーフィーダ60は、長尺状のワークW(棒材)を第1ワーク主軸20の後方から自動供給する装置である。工作機械1にバーフィーダ60を接続する際には、カバーユニット50を構成する中央のカバー(図5に関連して後述する第3カバー53)を取り外し、バーフィーダ60から供給するワークWの挿入経路を確保する。
【0036】
バーフィーダ60は、複数のワークWを収容可能なワークストッカ、ワークストッカからワークWを取り出して待機位置にセットするワークフィーダ、待機位置にセットされたワークWを第1ワーク主軸20に向けて押し込むワーク押込み機構等を備えている。なお、バーフィーダ60の構成および動作については、例えば特許第7108148号公報にも記載のように公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0037】
第1主軸台14にはチャックシリンダ62が設けられる。チャックシリンダ62は、第1ワーク主軸20の先端に取り付けられるチャック20aを駆動する。チャックシリンダ62は、本実施形態では油圧シリンダであるが、エアシリンダを採用してもよい。チャックシリンダ62の作動により、チャック20aの把持動作を行わせることができる。
【0038】
第1主軸台14における第1ワーク主軸20の後方には、チャックシリンダ62の動作確認用のセンサ64が設けられる。センサ64は、チャックシリンダ62のピストンに連結されるロッド(図示略)の先端部を検出する。このセンサ64による検出状態に基づいてチャック20aの把持動作が正常であるか否かを確認できる。なお、このようなチャックシリンダ62の構成および動作、さらにセンサ64による把持動作の確認については、例えば特開2023-180634号公報にも記載のように公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0039】
図5は、カバーユニット50の構成および配置を表す図である。説明の便宜上、筐体2の前面のカバー(スプラッシュガード)が除かれた状態が示されている。
筐体2の側面を形成するスプラッシュガード2aの下半部には、メンテナンス用の開口部70が設けられている。開口部70は、第1ワーク主軸20の軸線方向にみて第1主軸台14とほぼ同等の幅および高さを有し、概略長方形状をなしている。カバーユニット50は、開口部70と相補形状なし、開口部70を閉止するようにスプラッシュガード2aに取り付けられる。
【0040】
カバーユニット50は、第1カバー51、第2カバー52および第3カバー53を組み付けて構成される。第1カバー51は、スプラッシュガード2aに着脱可能に取り付けられることで、開口部70の上半部に対応する第1開口領域71を遮蔽する。第2カバー52は、第1カバー51とは別にスプラッシュガード2aに着脱可能に取り付けられることで、開口部70の下半部に対応する第2開口領域72を遮蔽する。第3カバー53は、第2カバー52に着脱可能に取り付けられ、開口部70の中央部に対応する第3開口領域73を遮蔽する。第3カバー53は、ワーク主軸20に支持されるワークと軸線方向に対向配置される。第1カバー51と第2カバー52とが、第3カバー53の周囲を取り囲むように配置される。
【0041】
スプラッシュガード2aの上半部に開口部34が設けられ、ミストコレクタ10の側面を露出させている。開口部34は、ミストコレクタ10とほぼ同等の幅および高さを有し、フード46をスプラッシュガード2aの外部へ突出させる。ミストコレクタ10の本体(つまり、ファンやフィルタなどの機能部)は収容室5に収容され、フード46のみが筐体2の外部に突出する。フード46は、工場内においてミストコレクタ10から排出される空気の排出方向を規制する。このようにフード46のみを突出させることで、筐体2からの突出部を小さくできる。
【0042】
カバーユニット50を構成する3つのカバーを個別に取り外すことで、収容室5内に設けられた機器に対して個別にメンテナンス等を行うことができる。具体的には、上述したバーフィーダ60を接続する際に第3カバー53が取り外される。第3カバー53は、ワークWを供給するために必要十分な程度の大きさを有する。言い換えれば、バーフィーダ60の接続に際しては、第3カバー53を取り外すのみで足りる。なお、バーフィーダ60の不使用時には、再び第3カバー53を取り付けて開口部70を閉塞する。
【0043】
第1カバー51を取り外すことにより、チャックシリンダ62の動作確認用のセンサ64のメンテナンスを行うことができる。また、第1主軸台14の直上にあるミストコレクタ10のメンテナンスを行うこともできる。図示を省略するが、ミストコレクタ10は、複数のねじによりテーブル42に固定されており、それらのねじはテーブル42の下面に取り付けられる。このため、第1カバー51を取り外すことでそれらのねじを緩めることができる。それにより、ミストコレクタ10をテーブル42から離脱させ、開口部34から取り出すこともできる。
【0044】
第2カバー52を取り外すことで、第1主軸台14の下部に設けられた機器のメンテナンスを行うことができる。ただし、第3カバー53が第2カバー52に固定されるため、第2カバー52を取り外すと第3カバー53も取り外される。カバーユニット50が第1カバー51と第2カバー52とに上下に分割されるため、バーフィーダ60が接続されてワークWが差し込まれた状態であっても、第1カバー51および第2カバー52のそれぞれを取り外すことはできる。このように、メンテナンス箇所に応じて対応するカバーを取り外せばよいため、作業負担が軽減される。
【0045】
一方、カバーユニット50は第1ワーク主軸20の軸線上に位置するため、いずれかのカバーが外された状態で加工が開始されると安全上好ましくない。このため、カバーユニット50には、3つのカバーのいずれも取り外されていないことを検出するためのセンサ54が設けられる。上述のように、インターロック部108は、センサ54の検出情報に基づき、カバーユニット50を構成するいずれかのカバーが開放されていると判定するとインターロック指令を出力する。
【0046】
図6は、カバーユニット50およびその周辺の構造を表す図である。図6(A)はスプラッシュガード2aをその外面側からみた斜視図であり、図6(B)はスプラッシュガード2aをその内面側(収容室5側)からみた斜視図である。図7は、図6(B)のA部拡大図である。
【0047】
図6(A)に示すように、スプラッシュガード2aは、上カバー2bと下カバー2cとを上下に並べて構成される。上カバー2bに開口部34が設けられ、下カバー2cに開口部70が設けられる。各カバーは、筐体2の左側面を形成するように個別に着脱できる。変形例においては、スプラッシュガード2aを上下に分割することなく、単一のカバーとして構成してもよい。
【0048】
カバー51~53は、下カバー2cに着脱可能に組み付けられ、開口部70を開閉する。カバー51~53は、例えば金属板をプレス加工して得られる。第1カバー51は長方形状の下辺中央が半円状に切り欠かれたような形状を有する。第1カバー51は、その周縁部に沿って複数のねじ56を取り付けることによりスプラッシュガード2a(下カバー2c)に固定され、開口部70の第1開口領域71を遮蔽する。
【0049】
第2カバー52は、長方形状の上中辺央が半円状に切り欠かれたような形状を有する。第2カバー52は、その周縁部に沿って複数のねじ57を取り付けることによりスプラッシュガード2a(下カバー2c)に固定され、開口部70の第2開口領域72を遮蔽する。第1カバー51と第2カバー52とがスプラッシュガード2aに取り付けられることで、開口部70の中央に円形状の第3開口領域73が形成される。
【0050】
第3カバー53は円板状をなし、その第3開口領域73を遮蔽するように取り付けられる。第3カバー53は、複数のねじ58により第2カバー52に固定されるが、第1カバー51には固定されない。このため、第3カバー53が固定された第2カバー52がスプラッシュガード2aに取り付けられることで、第1カバー51と第2カバー52との間に形成される第3開口領域73を遮蔽できる。あるいは、第2カバー52をスプラッシュガード2aに取り付けた後、第3カバー53を第2カバー52に取り付けてもよい。一方、スプラッシュガード2aから第2カバー52を取り外すと第3カバー53も取り外されることになる。つまり、第3カバー53は、第2カバー52に取り付けられた状態においてのみ、第3開口領域73を遮蔽可能である。第2カバー52をスプラッシュガード2aに取り付けたまま、第3カバー53を単独で取り外すことはできる。
【0051】
図6(B)に示すように、カバーユニット50の背面側にセンサ54が配設されている。センサ54は、センサ本体80および検出エレメント82を含む。検出エレメント82は、センサ本体80による検出対象であり「被検出部」として機能する。センサ本体80は「検出部」として機能し、検出エレメント82が近接したときにこれを検出し、その検出信号を情報処理装置100へ出力する。センサ本体80は、信号ライン59(信号ケーブル)を介して情報処理装置100に接続される。インターロック部108は、信号ライン59を介してセンサ54の検出情報を取得する。
【0052】
本実施形態では、センサ54として非接触式の近接センサ(近接スイッチ)を採用している。近接センサとしては誘導式、静電容量式、磁気式などいずれを採用してもよい。なお、変形例においては光電センサを採用してもよい。反射型の光電センサを採用する場合、「被検出部」としての反射板を検出エレメント82に設ける。あるいは、反射板を第3カバー53に直接組み付けてもよい。第3カバー53の一部を反射板(反射領域)として機能させてもよい。また、リミットスイッチなどの接触式センサを採用してもよい。
【0053】
図7に示すように、センサ本体80は、第1カバー51の裏面に設けられた支持部材84に固定される。センサ54の不正使用防止のため、センサ本体80は、一方向ねじにより支持部材84ひいては第1カバー51に固定される。スプラッシュガード2aから第1カバー51を取り外す際には、信号ライン59とセンサ本体80との接続を取り外す必要がある。一方、検出エレメント82は、第3カバー53の裏面に設けられた支持部材86に固定されている。第1カバー51の内周縁に凹状のスリット88が設けられており、支持部材86がスリット88を貫通して収容室5側に配置される。それにより、検出エレメント82をセンサ本体80に対し、第3カバー53の半径方向に対向配置させることができる。
【0054】
このように第1カバー51と第3カバー53とが組み付けられることで検出エレメント82がセンサ本体80に対向することにより、センサ54が開口部70の閉塞状態を検出する。第3カバー53は第2カバー52に固定されるため、このときカバー51~53の全てが組み付けられてカバーユニット50が構成され、開口部70の閉塞していることになる。
【0055】
なお、第3カバー53を取り外す際には、検出エレメント82と一体に取り外されることになる。一方、第1カバー51を取り外す際には、センサ本体80と信号ライン59との接続を外す必要があるため、センサ54はオフになる。このように、第1カバー51を取り外す前提として信号ライン59を取り外すように構成されるため、信号ライン59の長さを必要最小限にでき、配線をすっきりさせることができる。
【0056】
図8は、センサ54による検出方法を模式的に表す図である。図8(A)~(D)は、カバーユニット50の開閉状態とセンサ54による検出状態との関係を示す。
スプラッシュガード2aの開口部70がカバーユニット50により完全に閉じられているとき(図8(A))、センサ本体80と検出エレメント82とが対向する。このため、センサ54がオン(センサ本体80が検出エレメント82を検出する状態)となる。インターロック部108は、検出部106がこの状態(センサ54がオン)を検出することで、インターロックを解除する(図2参照)。
【0057】
一方、第3カバー53のみが取り外されているとき(図8(B))、第3カバー53と一体の検出エレメント82も取り外されるため、センサ54はオフ(センサ本体80が検出エレメント82を検出しない状態)となる。第1カバー51のみが取り外されているときも(図8(C))、センサ本体80が検出エレメント82と対向できないため、センサ54はオフとなる。第2カバー52が取り外されるときは(図8(D))、第2カバー52に固定された第3カバー53も取り外されるため、センサ54はオフとなる。インターロック部108は、検出部106がこの状態(センサ54がオフ)を検出することで、インターロックを実行する(図2参照)。
【0058】
なお、仮にスプラッシュガード2a(特に下カバー2c)が取り外されるようなことがあったとしても、その場合には、カバーユニット50と信号ライン59との接続が外れることとなる(図6参照)。それによりインターロックがかかるため、第1ワーク主軸20が回転することはない。
【0059】
以上、実施形態に基づいて工作機械について説明した。
本実施形態では、筐体2の左側面を形成するスプラッシュガード2aにメンテナンス用の開口部70が設けられる。その開口部70を閉じるようにカバーユニット50が設けられる。カバーユニット50が第1カバー51、第2カバー52および第3カバー53を組み付けて構成されるため、メンテナンス箇所に対応したカバーを取り外すのみで足りる。カバーユニット50全体を取り外す必要がないため、メンテナンス作業に際して作業者の負担を軽減できる。
【0060】
そして特に、安全性を確保するために開口部70の開状態ではインターロックを解除させない必要があるところ、3つのカバーのいずれかが外された状態(つまり開口部70の開状態)を1つのセンサ54により検出できる。すなわち、開口部70の開閉状態の検出を、カバーユニット50を構成するカバーの数よりも少ないセンサで実現できる。このため、インターロックに関する運用コストを低減できる。また、装置内の省スペースにも寄与する。
【0061】
[変形例]
図9は、変形例に係るカバーユニット50の構成を表す図である。
本変形例では、カバーユニット150が、第1カバー51、第2カバー52および第3カバー153を含む。第3カバー153は、有底円筒状の膨出部153aと、膨出部153aの開口端から半径方向に延在するフランジ部153bを有し、シルクハット状をなす。フランジ部153bの外径は、第3開口領域73の外径よりも大きい。このような構成を採用することで、例えば第3カバー153の内方にワークWの一端を収容しつつ、作業者の安全を確保することもできる。なお、カバーユニットは、上記実施形態および変形例の構成に限らず、複数のカバーによりカバーユニットを構成できる構造であればよいことは言うまでもない。
【0062】
[他の変形例]
上記実施形態では、センサ54に関し、センサ本体80を第1カバー51に設け、検出エレメント82を第3カバー53に設ける例を示した。変形例においては逆に、センサ本体80(検出部)を第3カバー53に設け、検出エレメント82(被検出部)を第1カバー51に設けてもよい。その場合、信号ライン59をなくし、センサ本体80と情報処理装置100とを無線接続できるようにしてもよい。センサ本体80への電力供給を電池や無線給電により行ってもよい。センサの検出部およびセンサによる被検出部の一方を第1カバーに設け、他方の第3カバーに設ければよい。
【0063】
上記実施形態では、ワーク主軸として第1ワーク主軸20および第2ワーク主軸22を設け、両者を軸線方向に対向配置する例を示した。変形例においては、第2ワーク主軸22を有しない構成を採用してもよい。第2ワーク主軸22に代えて心押し台を配置してもよい。
【0064】
上記実施形態では、工作機械1をターニングセンタとして説明したが、ターニングセンタとマシニングセンタの機能を兼ね備えた複合加工機であってもよい。ミーリング加工とターニング加工ができるターニングセンタベースの複合加工機としてもよい。
【0065】
工作機械1を複合加工機とする場合、タレット(刃物台)に代えて工具主軸が設けられる。工具主軸は「工具保持部」として機能し、主軸頭に回転可能に支持される。主軸頭は、移動機構によりX,Y,Z方向に駆動される。複合加工機にはさらに、工具格納部および工具交換部が設けられる。工具格納部は工具を収容するマガジンを含む。工具交換部は、ATC(Automatic Tool Changer)を含み、加工制御装置102からの交換指示にしたがって工具格納部から工具を取り出し、工具主軸にある工具と交換する。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 工作機械、2 筐体、2a スプラッシュガード、4 加工室、5 収容室、8 クーラントタンク、10 ミストコレクタ、12 隔壁、14 第1主軸台、16 第2主軸台、18 刃物台、20 第1ワーク主軸、20a チャック、22 第2ワーク主軸、26 タレット、28 ミスト取込口、30 配管、34 開口部、40 支柱、42 テーブル、46 フード、50 カバーユニット、51 第1カバー、52 第2カバー、53 第3カバー、54 センサ、60 バーフィーダ、62 チャックシリンダ、64 センサ、70 開口部、71 第1開口領域、72 第2開口領域、73 第3開口領域、80 センサ本体、82 検出エレメント、100 情報処理装置、102 加工制御装置、104 加工装置、106 検出部、108 インターロック部、110 ワーク主軸駆動部、112 刃物台駆動部、153 第3カバー、W ワーク。
【要約】
【課題】スプラッシュガードに設けられたメンテナンス用開口部を複数のカバーで閉塞する場合に、その開口部の開閉状態を少ないセンサで検出できるようにする。
【解決手段】ある態様の工作機械は、メンテナンス用の開口部を有するスプラッシュガードと、開口部を閉じるようスプラッシュガードに組み付けられるカバーユニットと、開口部の開閉状態を検出するセンサと、を備える。カバーユニットは、開口部の第1開口領域を遮蔽する第1カバーと、第1カバーとは別にスプラッシュガードに着脱可能に取り付けられることで、開口部の第2開口領域を遮蔽する第2カバーと、第2カバーに着脱可能に取り付けられ、第1カバーと第2カバーとの間に形成される開口部の第3開口領域を遮蔽する第3カバーと、を含む。センサは、第1カバーと第3カバーとの間に設けられる。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9