IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-インクジェット記録装置 図1
  • 特許-インクジェット記録装置 図2
  • 特許-インクジェット記録装置 図3
  • 特許-インクジェット記録装置 図4
  • 特許-インクジェット記録装置 図5
  • 特許-インクジェット記録装置 図6
  • 特許-インクジェット記録装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250701BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20250701BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20250701BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20250701BHJP
【FI】
B41J2/01 501
C09D11/38
C09D11/40
C09D11/328
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020217890
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102869
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】志村 一樹
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-139004(JP,A)
【文献】特開2020-199700(JP,A)
【文献】特開2020-180181(JP,A)
【文献】特開2017-203112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインク収容体と、前記インク収容体に収容されたインクジェットインク組成物を備えるインクジェット記録装置であって、
複数の前記インク収容体には、同種の前記インクジェットインク組成物を収容するものが含まれ、
複数の前記インクジェットインク組成物は、少なくとも、分散染料とシリコーン系界面活性剤と水とを含有する少なくとも1種の淡色インク、および、前記淡色インク中に含まれる前記分散染料と同一の前記分散染料を前記淡色インクよりも高い含有率で含む濃色インクを備えるものであり、
複数の前記インク収容体として、前記淡色インクを収容する第1の収容体、および、前記濃色インクを収容する第2の収容体を備え、
前記淡色インク中における前記分散染料の含有率が、1.0質量%以上3.0質量%以下であり、
前記シリコーン系界面活性剤は、プロピレングリコールの10質量%水溶液:99.0質量部と、前記シリコーン系界面活性剤:1.0質量部との割合で混合して混合液とした際に、当該混合液についての曇点が60℃以上となるものである、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記淡色インクは、さらに、分散剤を含むものである、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記分散剤は、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、および、リグニンスルホン酸のナトリウム塩よりなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記分散染料が、C.I.ディスパースレッド60およびC.I.ディスパースブルー359よりなる群から選択される1種以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記淡色インク中における前記分散染料の含有率が、2.0質量%以下である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記淡色インク中における前記シリコーン系界面活性剤の含有率が、0.1質量%以上3.0質量%以下である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
複数種の前記インクジェットインク組成物が、それぞれ、複数の前記インク収容体に収容されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記濃色インクとしてシアンインクを含むインクを備え、
前記シアンインク中における前記分散染料の含有率3.5質量%以上6.0質量%以下である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記シアンインク中に含まれる前記分散染料の含有率をXDC[質量%]、前記シアンインクと同一の前記分散染料を含む前記淡色インク中に含まれる前記分散染料の含有率をXLC[質量%]としたとき、0.18≦XLC/XDC≦0.70の関係を満たす、請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記濃色インクとしてマゼンタインクを含むインクを備え、
前記マゼンタインク中における前記分散染料の含有率5.0質量%以上8.0質量%以下である、請求項ないしのいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記マゼンタインク中に含まれる前記分散染料の含有率をXDM[質量%]、前記マゼンタインクと同一の前記分散染料を含む前記淡色インク中に含まれる前記分散染料の含有率をXLM[質量%]としたとき、0.18≦XLM/XDM≦0.70の関係を満たす、請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出して、記録媒体に付着させて記録を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で記録できるという特徴を有する。インクジェット記録方法においては、用いるインクの性質、記録における安定性、得られる画像の品質をはじめとして、非常に多くの検討要素があり、インクジェット記録装置のみならず、用いるインクに対する研究も盛んである。
【0003】
特に、分散染料を含むインクジェットインクにおいて、色材である分散染料の分散安定性が低下すると、分散染料の凝集に由来する異物や分散染料が再結晶することに由来する異物が発生するという問題が発生していた。
【0004】
そこで、上記のような問題を解決する目的で、分散染料と、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物と、を含み、前記ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物の含有量に対するナトリウムイオン濃度の比を所定の範囲内の値としたインクジェットインク組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-193692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、インクジェットインク組成物には、保存安定性のさらなる向上が求められている。
【0007】
より具体的には、分散染料の含有率が比較的高いインクジェットインク組成物では、比較的高い保存安定性を実現することができているのに対し、分散染料の含有率が比較的低いインクジェットインク組成物、より具体的には、分散染料の含有率が3.0質量%以下であり、かつ、水を含むインクジェットインク組成物においては、保存安定性が十分であるとは言えなかった。
【0008】
また、例えば、大容量のインク収容体を備えたインクジェット記録装置では、インクジェット記録装置内におけるインクジェットインク組成物の保存期間が長くなりやすく、例えば、インクジェットインク組成物中の固形分が徐々に沈降することにより、当該インクジェットインク組成物を用いて形成される画像の色が少しずつ変わってしまう場合があった。
【0009】
また、同色のインクジェットインク組成物を収容するインク収容体を複数備え、インクジェットインク組成物の使用状況等に応じて用いるインク収容体を適宜切り替えられるインクジェット記録装置では、インクジェットインク組成物中の固形分の沈降により、形成する画像の色が変わってしまうと、用いるインク収容体を切り替えた際に画像の色が顕著に変わってしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することができる。
【0011】
本発明の適用例に係るインクジェット記録装置は、複数のインク収容体と、前記インク収容体に収容されたインクジェットインク組成物を備えるインクジェット記録装置であって、
複数の前記インク収容体には、同種の前記インクジェットインク組成物を収容するものが含まれ、
複数の前記インクジェットインク組成物は、少なくとも、分散染料とシリコーン系界面活性剤と水とを含有する少なくとも1種の淡色インク、および、前記淡色インク中に含まれる前記分散染料と同一の前記分散染料を前記淡色インクよりも高い含有率で含む濃色インクを備えるものであり、
複数の前記インク収容体として、前記淡色インクを収容する第1の収容体、および、前記濃色インクを収容する第2の収容体を備え、
前記淡色インク中における前記分散染料の含有率が、1.0質量%以上3.0質量%以下であり、
前記シリコーン系界面活性剤は、プロピレングリコールの10質量%水溶液:99.0質量部と、前記シリコーン系界面活性剤:1.0質量部との割合で混合して混合液とした際に、当該混合液についての曇点が60℃以上となるものである。
【0012】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置では、前記淡色インクは、さらに、分散剤を含むものである。
【0013】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置では、前記分散剤は、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、および、リグニンスルホン酸のナトリウム塩よりなる群から選択される1種以上である。
【0014】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置では、前記分散染料が、C.I.ディスパースレッド60およびC.I.ディスパースブルー359よりなる群から選択される1種以上である。
【0015】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置では、前記淡色インク中における前記分散染料の含有率が、2.0質量%以下である。
【0016】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置では、前記淡色インク中における前記シリコーン系界面活性剤の含有率が、0.1質量%以上3.0質量%以下である。
【0017】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置では、複数種の前記インクジェットインク組成物が、それぞれ、複数の前記インク収容体に収容されている
【0020】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置は、前記濃色インクとしてシアンインクを含むインクを備え、
前記シアンインク中における前記分散染料の含有率3.5質量%以上6.0質量%以下である。
【0021】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置では、前記シアンインク中に含まれる前記分散染料の含有率をXDC[質量%]、前記シアンインクと同一の前記分散染料を含む前記淡色インク中に含まれる前記分散染料の含有率をXLC[質量%]としたとき、0.18≦XLC/XDC≦0.70の関係を満たす。
【0022】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置は、前記濃色インクとしてマゼンタインクを含むインクを備え、
前記マゼンタインク中における前記分散染料の含有率5.0質量%以上8.0質量%以下である。
【0023】
また、本発明の他の適用例に係るインクジェット記録装置では、前記マゼンタインク中に含まれる前記分散染料の含有率をXDM[質量%]、前記マゼンタインクと同一の前記分散染料を含む前記淡色インク中に含まれる前記分散染料の含有率をXLM[質量%]としたとき、0.18≦XLM/XDM≦0.70の関係を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置の概要を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るインクジェット記録装置が備える液滴吐出装置の概要を示す要部断面図である。
図3図3は、実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置の概要を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置の概要を示す斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置の概要を示す斜視図である。
図6図6は、実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置の概要を示す斜視図である。
図7図7は、実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]インクジェットインク組成物
まず、本発明のインクジェットインク組成物について説明する。
【0027】
本発明のインクジェットインク組成物は、分散染料と、シリコーン系界面活性剤と、水と、を含有するインクジェットインク組成物であって、前記分散染料の含有率が、1.0質量%以上3.0質量%以下である。そして、前記シリコーン系界面活性剤は、プロピレングリコールの10質量%水溶液:99.0質量部と、前記シリコーン系界面活性剤:1.0質量部との割合で混合して混合液とした際に、当該混合液についての曇点が60℃以上となるものである。
【0028】
これにより、保存安定性に優れたインクジェットインク組成物を提供することができる。特に、上記のように、分散染料の含有率が比較的低いインクジェットインク組成物において、上記のような効果が得られる。また、インクジェットインク組成物の保存安定性が優れたものとなることにより、インクジェット法により吐出されるインクジェットインク組成物の組成、色が、不本意に、経時的に変化すること等を効果的に防止することができ、形成される画像、製造される記録物の安定性、信頼性を優れたものとすることができる。
【0029】
これに対し、上記のような条件を満たさない場合には、満足のいく結果が得られない。
例えば、インクジェットインク組成物がシリコーン系界面活性剤を含まない場合には、インクジェットインク組成物の保存安定性を優れたものとすることができない。
【0030】
また、インクジェットインク組成物中における分散染料の含有率が前記下限値未満であると、インクジェットインク組成物を用いて形成される画像において、滲み等の問題の発生を十分に防止しつつ、色濃度を十分に高めることが困難となる。
【0031】
また、上記のようにして求められるシリコーン系界面活性剤についての曇点が60℃未満であると、インクジェットインク組成物の保存安定性を優れたものとすることができない。
【0032】
なお、本発明において、曇点とは、前記混合液を用いて、JIS K 2269に基づいた測定により求められる値である。
【0033】
[1-1]分散染料
本発明のインクジェットインク組成物は、分散染料を含んでいる。
【0034】
本発明のインクジェットインク組成物に含まれる分散染料は、特に制限されないが、具体的には、以下に例示するものが挙げられる。
【0035】
イエロー分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースイエロー3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232等が挙げられる。
【0036】
オレンジ分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースオレンジ1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142等が挙げられる。
【0037】
レッド分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースレッド1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328等が挙げられる。
【0038】
バイオレット分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77等が挙げられる。
【0039】
グリーン分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースグリーン9等が挙げられる。
【0040】
ブラウン分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースブラウン1、2、4、9、13、19等が挙げられる。
【0041】
ブルー分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースブルー3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359等が挙げられる。
【0042】
ブラック分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースブラック1、3、10、24等が挙げられる。
【0043】
本発明のインクジェットインク組成物では、例えば、上記の分散染料から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
特に、分散染料が、C.I.ディスパースレッド60およびC.I.ディスパースブルー359よりなる群から選択される1種以上であると、前述したような本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0045】
本発明のインクジェットインク組成物中における分散染料の含有率は、1.0質量%以上3.0質量%以下であればよいが、本発明のインクジェットインク組成物中における分散染料の含有率の下限値は、1.1質量%であるのが好ましく、1.2質量%であるのがより好ましい。また、本発明のインクジェットインク組成物中における分散染料の含有率の上限は、2.0質量%であるのが好ましく、1.8質量%であるのがより好ましい。
これにより、前述したような本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0046】
[1-2]シリコーン系界面活性剤
本発明のインクジェットインク組成物は、シリコーン系界面活性剤を含んでいる。
【0047】
本発明のインクジェットインク組成物を構成するシリコーン系界面活性剤は、上述したような曇点についての条件を満たすものである。
【0048】
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、例えば、下記式で示される化合物を好適に用いることができる。
【0049】
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは2以上13以下の整数を表し、mは2以上70以下の整数を表し、nは1以上8以下の整数を表す。)
【0050】
本発明のインクジェットインク組成物中におけるシリコーン系界面活性剤の含有率は、0.1質量%以上3.0質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0051】
これにより、本発明のインクジェットインク組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。
【0052】
[1-3]水
本発明のインクジェットインク組成物は、水を含んでいる。
水は、インクジェットインク組成物中において、主に、分散染料の分散媒として機能する成分である。
【0053】
本発明のインクジェットインク組成物中における水の含有率は、40質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、45質量%以上75質量%以下であるのがより好ましく、50質量%以上70質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0054】
これにより、インクジェットインク組成物の粘度をより確実に好適な値に調整することができ、インクジェット法による吐出安定性をより向上させることができる。
【0055】
[1-4]分散剤
本発明のインクジェットインク組成物は、分散染料と、上述した条件を満たすシリコーン系界面活性剤と、水とを含有するものであればよいが、さらに、分散剤を含んでいてもよい。
【0056】
これにより、本発明のインクジェットインク組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。
【0057】
分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、リグニンスルホン酸のナトリウム塩、スチレン―スチレンスルホン酸のナトリウム塩、クレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、および、リグニンスルホン酸のナトリウム塩よりなる群から選択される1種以上であるのが好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0058】
本発明のインクジェットインク組成物中における分散剤の含有率は、0.5質量%以上4.0質量%以下であるのが好ましく、0.8質量%以上3.2質量%以下であるのがより好ましく、1.1質量%以上1.8質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0059】
[1-5]水溶性有機溶剤
本発明のインクジェットインク組成物は、水溶性有機溶剤を含んでいてもよい。
【0060】
これにより、インクジェットインク組成物の保湿性を向上させることができ、インクジェットヘッド等での乾燥等により、インクジェットインク組成物の固形分が不本意に析出してしまうこと等をより効果的に防止することができる。また、インクジェットインク組成物の粘度をより好適に調整することができる。このようなことから、インクジェット法によるインクジェットインク組成物の吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
【0061】
水溶性有機溶剤は、水に対して溶解性を示す有機溶媒であればよいが、例えば、25℃における水への溶解度が10g/100g水以上の有機溶媒を好適に用いることができる。
【0062】
水溶性有機溶剤の1気圧下での沸点は、180℃以上300℃以下であるのが好ましい。
【0063】
これにより、インクジェットインク組成物の保湿性をさらに向上させることができ、インクジェットヘッド等での乾燥等により、インクジェットインク組成物の固形分が不本意に析出してしまうこと等をさらに効果的に防止することができる。このようなことから、インクジェット法によるインクジェットインク組成物の吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。また、インクジェットインク組成物を吐出した後、必要時においては、比較的容易に揮発させることができ、製造される記録物中に、水溶性有機溶剤が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。
【0064】
このような水溶性有機溶剤としては、例えば、アルキルモノアルコール類;アルキルジオール類;グリセリン;グリコール類;グリコールモノエーテル類;ラクタム類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、グリコールモノエーテル類としては、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。また、ラクタム類としては、例えば、2-ピロリドン等が挙げられる。
【0066】
本発明のインクジェットインク組成物中における水溶性有機溶剤の含有率は、4.0質量%以上45質量%以下であるのが好ましく、9.0質量%以上40質量%以下であるのがより好ましく、11質量%以上38質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0067】
これにより、インクジェットインク組成物の粘度をより好適なものとしつつ、インクジェットインク組成物の保湿性をより好適に向上させることができる。その結果、インクジェット法によるインクジェットインク組成物の吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
【0068】
また、インクジェットインク組成物中における水の含有率をXW[質量%]、インクジェットインク組成物中における水溶性有機溶剤の含有率をXH[質量%]としたとき、XH/XWは、0.10以上0.65以下であるのが好ましく、0.20以上0.60以下であるのがより好ましく、0.30以上0.55以下であるのがさらに好ましい。
【0069】
これにより、インクジェットインク組成物の粘度をより好適なものとしつつ、インクジェットインク組成物の保湿性をより好適に向上させることができる。その結果、インクジェット法によるインクジェットインク組成物の吐出安定性等をさらに優れたものとすることができる。
【0070】
[1-6]その他の成分
本発明のインクジェットインク組成物は、前述した成分以外の成分を含んでいてもよい。以下、このような成分を「その他の成分」ともいう。
【0071】
その他の成分としては、例えば、トリエタノールアミン等のpH調整剤;キレート化剤;防腐剤・防かび剤;防錆剤;防炎剤;各種分散剤;分散染料以外の色材;シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;酸素吸収剤;溶解助剤;浸透剤等が挙げられる。
【0072】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩等が挙げられる。また、防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンゾイソチアゾリン-3-オン、4-クロロ-3-メチルフェノール等が挙げられる。また、防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0073】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、分子内にイソチアゾリン環構造を有する化合物を好適に用いることができる。
【0074】
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤を用いることができる。
【0075】
その他の成分の含有率は、6.0質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましい。
なお、その他の成分の含有率の下限は、0質量%である。
【0076】
[1-7]その他
本発明のインクジェットインク組成物の25℃における表面張力は、特に限定されないが、20mN/m以上50mN/m以下であるのが好ましく、21mN/m以上40mN/m以下であるのがより好ましく、23mN/m以上30mN/m以下であるのがさらに好ましい。
【0077】
これにより、インクジェットヘッドのノズルの目詰まり等がより生じにくくなり、インクジェットインク組成物の吐出安定性がより向上する。また、ノズルの詰まりが生じた場合でも、ノズルにキャップをすることによる回復性をより優れたものとすることができる。
【0078】
なお、表面張力としては、ウィルヘルミー法により測定した値を採用することができる。表面張力の測定は、表面張力計(例えば、協和界面科学社製、CBVP-7等)を用いることができる。
【0079】
本発明のインクジェットインク組成物の25℃における粘度は、2mPa・s以上10mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であるのがより好ましく、4mPa・s以上6mPa・s以下であるのがさらに好ましい。
【0080】
これにより、インクジェットインク組成物のインクジェット法による吐出安定性がより優れたものとなる。
【0081】
なお、粘度は、振動式粘度計を用いたJIS Z8809に準拠した測定により求めることができる。
【0082】
また、本発明のインクジェットインク組成物は、インクジェット法による吐出に供されるものであるが、インクジェットインク組成物を最終的な記録媒体に直接吐出されるものに限らず、いったん中間転写媒体上に吐出され、その後、最終的な記録媒体に転写されるものであってもよい。
【0083】
特に、本発明のインクジェットインク組成物は、いったん中間転写媒体上に吐出された後に、昇華により記録媒体である布帛に転写されるもの、すなわち、昇華転写捺染に供されるものであるのが好ましい。
【0084】
これにより、インク受理層がコートされた中間媒体上に印刷するため、布帛への前処理が不要となる。また、色材のみが昇華し、染色するため、発色が鮮やかで堅牢性が高く、風合いが変化しない。また、プリンターは転写紙を搬送するため、布帛を搬送するプリンターと異なり機構が簡便でコストが抑えられる。また前処理や洗浄などの複雑な工程が不要で染色に大型のスチーマーを必要としないため、参入における設備投資コスト、設備のスペースが小さく済む、環境負荷も少ない。
【0085】
[2]インクジェットインクセット
次に、本発明のインクジェットインクセットについて説明する。
本発明のインクジェットインクセットは、複数種のインクジェットインク組成物を備えている。そして、インクジェットインクセットを構成するインクジェットインク組成物のうちの少なくとも1種が、前述した本発明のインクジェットインク組成物である。
【0086】
これにより、保存安定性に優れたインクジェットインク組成物を備え、安定的な画像形成を行うことができ、信頼性の高い記録物の製造に好適に用いることができるインクジェットインクセットを提供することができる。
【0087】
本発明のインクジェットインクセットは、複数種のインクジェットインク組成物を備え、そのうちの少なくとも1種が、前述した本発明のインクジェットインク組成物であればよいが、前述した本発明のインクジェットインク組成物を2種以上備えているのが好ましい。
前述した効果がより顕著に発揮される。
【0088】
また、本発明のインクジェットインクセットは、前述した本発明のインクジェットインク組成物を淡色インクとして備えるとともに、前記淡色インク中に含まれる分散染料と同一の前記分散染料を前記淡色インクよりも高い含有率で含む濃色インクを備えるものであるのが好ましい。
【0089】
例えば、本発明のインクジェットインクセットは、淡色インクおよび濃色インクとして、いずれも、シアンの分散染料を含むインクジェットインク組成物を備えていてもよい。
【0090】
また、例えば、本発明のインクジェットインクセットは、淡色インクおよび濃色インクとして、いずれも、マゼンタの分散染料を含むインクジェットインク組成物を備えていてもよい。
【0091】
これにより、例えば、インクジェットインクセットを用いて形成される画像において、淡色インクを用いて形成された部位と濃色インクを用いて形成された部位とでの色間のつながりをより優れたものとすることができ、画像の審美性等をより優れたものとすることができる。
【0092】
本発明のインクジェットインクセットが、濃色インクとしてシアンの分散染料を含むインクを備えるものである場合、濃色インクとしてのシアンインク中における分散染料の含有率は、3.5質量%以上6.0質量%以下であるのが好ましく、4.0質量%以上5.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0093】
これにより、十分に色濃度の高い画像をより好適に形成することができる。また、本発明のインクジェットインクセットが、濃色インクとしてのシアンインクとともに、本発明のインクジェットインク組成物である淡色インクとしてのライトシアンインクを備える場合、淡色インクを用いて形成された部位と濃色インクを用いて形成された部位とでの色間のつながりをより優れたものとすることができ、画像の審美性等をより優れたものとすることができる。
【0094】
濃色インクであるシアンインク中に含まれる前記分散染料の含有率をXDC[質量%]、前記シアンインクと同一の前記分散染料を含む淡色インクであるライトシアンインク中に含まれる前記分散染料の含有率をXLC[質量%]としたとき、0.18≦XLC/XDC≦0.70の関係を満たすのが好ましく、0.20≦XLC/XDC≦0.60の関係を満たすのがより好ましく、0.30≦XLC/XDC≦0.40の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0095】
これにより、十分に色濃度の高い画像をより好適に形成することができるとともに、淡色インクを用いて形成された部位と濃色インクを用いて形成された部位とでの色間のつながりをより優れたものとすることができ、画像の審美性等をより優れたものとすることができる。
【0096】
本発明のインクジェットインクセットが、濃色インクとしてマゼンタの分散染料を含むインクを備えるものである場合、濃色インクとしてのマゼンタインク中における分散染料の含有率は、5.0質量%以上8.0質量%以下であるのが好ましく、6.0質量%以上7.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0097】
これにより、十分に色濃度の高い画像をより好適に形成することができる。また、本発明のインクジェットインクセットが、濃色インクとしてのマゼンタインクとともに、本発明のインクジェットインク組成物である淡色インクとしてのライトマゼンタインクを備える場合、淡色インクを用いて形成された部位と濃色インクを用いて形成された部位とでの色間のつながりをより優れたものとすることができ、画像の審美性等をより優れたものとすることができる。
【0098】
濃色インクであるマゼンタインク中に含まれる前記分散染料の含有率をXDM[質量%]、前記マゼンタインクと同一の前記分散染料を含む淡色インクであるライトマゼンタインク中に含まれる前記分散染料の含有率をXLM[質量%]としたとき、0.18≦XLM/XDM≦0.70の関係を満たすのが好ましく、0.20≦XLM/XDM≦0.60の関係を満たすのがより好ましく、0.25≦XLM/XDM≦0.30の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0099】
これにより、十分に色濃度の高い画像をより好適に形成することができるとともに、淡色インクを用いて形成された部位と濃色インクを用いて形成された部位とでの色間のつながりをより優れたものとすることができ、画像の審美性等をより優れたものとすることができる。
【0100】
上記のような濃色インクは、例えば、本発明のインクジェットインク組成物の構成成分として説明した各成分を含むものとすることができる。
【0101】
[3]記録方法
次に、本発明のインクジェットインク組成物を用いた記録方法について説明する。
【0102】
本発明のインクジェットインク組成物、インクジェットインクセットは、例えば、ダイレクトプリント法、熱転写プリント法、例えば、昇華捺染等に適用することができる。
【0103】
以下、本発明のインクジェットインク組成物を用いた記録方法として、熱転写プリント法の一例について説明する。
【0104】
本実施形態に係る記録方法は、インクジェット方式により、インクジェットインク組成物を中間転写媒体に付着させるインク付着工程と、インクジェットインク組成物が付着された中間転写媒体を加熱し、インクジェットインク組成物中に含まれる分散染料を記録媒体に転写させる転写工程とを有している。
【0105】
[3-1]インク付着工程
インク付着工程では、インクジェット方式により、インクジェットインク組成物を中間転写媒体に付着させる。インクジェット方式によるインクジェットインク組成物の吐出は、公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。吐出方法としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡によりインクを吐出させる方式等を用いることができる。中でも、インクジェットインク組成物の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
【0106】
インク付着工程では、本発明のインクジェットインク組成物以外のインクを併用してもよい。例えば、本発明のインクジェットインク組成物以外のインクジェットインク組成物を備えるインクジェットインクセットを用いてもよい。
【0107】
[3-2]中間転写媒体
中間転写媒体としては、例えば、普通紙等の紙、インクジェット用専用紙やコート紙等で呼称されるインク受容層が設けられた記録媒体等を用いることができる。中でも、シリカ等の無機微粒子でインク受容層が設けられた紙が好ましい。これにより、中間転写媒体に付着したインクジェットインク組成物が乾燥する過程で、滲み等が抑制された中間転写媒体を得ることができ、また、後の転写工程において、分散染料の昇華がより円滑に進行する傾向にある。
【0108】
[3-3]転写工程
その後、インクジェットインク組成物を付着させた中間転写媒体を加熱し、インクジェットインク組成物の構成成分としての分散染料を記録媒体に転写させる。これにより、記録物が得られる。
【0109】
本工程での加熱温度は、分散染料の種類等にもよるが、160℃以上230℃以下であるのが好ましく、170℃以上230℃以下であるのがより好ましい。
【0110】
これにより、転写に要するエネルギーをより少なくすることができ、記録物の生産性をより向上させることができる。また、得られる記録物の発色性等をより向上させることができる。
【0111】
本工程での加熱時間は、加熱温度にもよるが、30秒以上90秒以下であるのが好ましく、45秒以上80秒以下であるのがより好ましい。
【0112】
これにより、転写に要するエネルギーをより少なくすることができ、記録物の生産性をより向上させることができる。また、得られる記録物の発色性等をより向上させることができる。
【0113】
また、本工程は、インクジェットインク組成物が付着した中間転写媒体の表面を、記録媒体と一定間隔で離間して対向させた状態で加熱することにより行ってもよいし、記録媒体の表面に密着させた状態で加熱することにより行ってもよいが、インクジェットインク組成物が付着した中間転写媒体の表面を記録媒体の表面に密着させた状態で加熱することにより行うことが好ましい。
【0114】
これにより、転写に要するエネルギーをより少なくすることができ、記録物の生産性をより向上させることができる。また、得られる記録物の発色性をより向上させることができる。
【0115】
[3-4]記録媒体
記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、疎水性繊維布帛等の布帛、樹脂フィルム、紙、ガラス、金属、陶磁器等が挙げられる。また、記録媒体としては、シート状、球状、直方体形状等の立体的な形状を有する物を用いてもよい。
【0116】
記録媒体が布帛である場合に、布帛を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維およびこれらの繊維を2種以上用いた混紡品等が挙げられる。また、これらとレーヨン等の再生繊維あるいは木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡品を用いてもよい。
【0117】
また、布帛としては、例えば、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織等の各種織物を用いることができる。
【0118】
また、布帛を構成する繊維の太さは、例えば、10d以上100d以下とすることができる。
【0119】
また、記録媒体が樹脂フィルムである場合、当該樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等が挙げられる。
【0120】
なお、樹脂フィルムは、複数の層が積層された積層体であってもよいし、材料の組成が傾斜的に変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
【0121】
[4]インクジェット記録装置
次に、本発明のインクジェット記録装置について説明する。
【0122】
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェットインク組成物を備える。
これにより、安定的な画像形成を行うことができ、信頼性の高い記録物の製造に好適に用いることができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0123】
以下、図面を参照しつつ、本発明のインクジェット記録装置の好適な実施形態について説明する。係る実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際と異ならせている。
【0124】
特に、インクジェット記録装置が、以下に説明するような、インクジェットインク組成物を収容する収容体が大容量であるもの、同種のインクジェットインク組成物を収容するインク収容体を複数備え、インクジェットインク組成物の使用状況等に応じて用いるインク収容体を適宜切り替えられるものであると、前述したような本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0125】
図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置の概要を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置が備える液滴吐出装置の概要を示す要部断面図である。
【0126】
最初に、図1および図2を参照し、本実施形態に係るインクジェット記録装置1、およびインクジェット記録装置1が備える液滴吐出装置10の概要について説明する。また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1が備えるインクジェットインク組成物供給装置100については、後に詳述する。
【0127】
図1に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、液滴吐出装置10にインクジェットインク組成物を供給するインクジェットインク組成物供給装置100と、インクジェットインク組成物供給装置100から供給されたインクジェットインク組成物をメディアMに吐出する吐出部を含む液滴吐出装置10とを備える。また、本実施形態に係る液滴吐出装置10は、ロール・ツー・ロール方式でメディアMを搬送し、A0サイズやB1サイズという大きなサイズのメディアMに画像を印刷するラージフォーマットプリンターである。
【0128】
以下の説明では、液滴吐出装置10の幅方向、言い換えると、長手方向をX方向とし、液滴吐出装置10の奥行き方向、言い換えると、短手方向をY方向とし、液滴吐出装置10の高さ方向をZ方向とする。また、方向を示す矢印の先端側を+方向とし、方向を示す矢印の基端側を-方向とする。
【0129】
図2に示すように、液滴吐出装置10は、脚台12に支持される筐体13を備えている。
【0130】
液滴吐出装置10は、筐体13の内部に配置される制御装置11を備えている。制御装置11は、CPUやメモリー等を有し、液滴吐出装置10の各部を制御する。加えて、制御装置11は、インクジェットインク組成物供給装置100からのインクジェットインク組成物の供給を制御する。
【0131】
さらに、液滴吐出装置10は、メディアMを筐体13外から筐体13内に向けて繰り出す繰出部20と、繰出部20によって繰り出されたメディアMを支持する支持部30とを備えている。さらに、液滴吐出装置10は、支持部30に沿ってメディアMを搬送する搬送部50と、支持部30に支持されるメディアMに印刷を行う印刷部40と、印刷部40によって印刷が行われ筐体13外に排出されるメディアMを巻き取る巻取部25とを備えている。
【0132】
本実施形態に係る液滴吐出装置10では、繰出部20と巻取部25とが筐体13の外に設けられ、支持部30と搬送部50と印刷部40とが筐体13の中に設けられている。
【0133】
繰出部20は、液滴吐出装置10の背面側、すなわち、図2における+Y方向側に設けられ、メディアMが円筒状に巻き重ねられたロール体Rを保持する保持部21を有している。保持部21は、脚台12に取り付けられ、ロール体Rを回転可能に保持する。そして、繰出部20は、ロール体Rを一方向、すなわち、図2では反時計回り方向に回転させることで、ロール体RからメディアMを筐体13の中に向けて繰り出す。
【0134】
支持部30は、メディアMを下方側、すなわち、図2における-Z方向側から支持し、第1支持部31と、第2支持部32と、第3支持部33とを備えている。第1支持部31と第2支持部32と第3支持部33とは、液滴吐出装置10の背面側からその反対となる前面側、すなわち、図2における-Y方向側にわたって並んで設けられ、このうち第1支持部31および第3支持部33は、それぞれの一部が筐体13の外に露出するよう設けられている。そして、第1支持部31は、繰出部20から繰り出されるメディアMを第2支持部32に案内し、第2支持部32は、第1支持部31から案内されたメディアMを第3支持部33に案内し、第3支持部33は、第2支持部32から案内されたメディアMを巻取部25に案内する。
【0135】
すなわち、第1支持部31と第2支持部32と第3支持部33とにより、メディアMが搬送される搬送経路が、液滴吐出装置10の背面側から前面側に向かって延びるように形成されている。また、第1支持部31および第2支持部32は、筐体13内に設けられたベース部材35に取り付けられている。
【0136】
印刷部40は、X方向に延びるガイド軸41と、ガイド軸41に支持されるキャリッジ42と、メディアMにインクジェットインク組成物を吐出する複数の吐出ヘッド43とを備える。キャリッジ42は、ガイド軸41に沿ってX方向に往復移動可能に設けられている。複数の吐出ヘッド43は、X方向に並んでいる。複数の吐出ヘッド43のそれぞれは、6種のインクジェットインク組成物、すなわち、淡色インクであるライトシアンインク、淡色インクであるライトマゼンタインク、濃色インクであるシアンインク、濃色インクであるマゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのうちいずれか1種を吐出可能である。吐出ヘッド43は、第2支持部32に支持されたメディアMと対向するようにキャリッジ42に保持されている。印刷部40は、ガイド軸41に沿ってキャリッジ42が移動し、複数の吐出ヘッド43のそれぞれから互いに異なる色のインクジェットインク組成物が吐出されることで、メディアMにフルカラーの画像を印刷可能である。複数の吐出ヘッド43のそれぞれは、インクジェットインク組成物を吐出するための複数の図示しないノズルが形成された図示しないノズルプレートを備える。
なお、吐出ヘッド43は吐出部の一例である。
【0137】
巻取部25は、液滴吐出装置10の前面側に設けられ、メディアMが円筒状に巻き取られてなるロール体Rを保持する保持部26を有する。保持部26は、脚台12に取り付けられ、ロール体Rを回転可能に保持する。そして、巻取部25は、ロール体Rを一方向、すなわち、図2では反時計回り方向に回転させることで、印刷部40により印刷が行われたメディアMが巻き取られる。
【0138】
搬送部50は、支持部30で構成される搬送経路において第1支持部31と第2支持部32との間に設けられる搬送ローラー対51と、第2支持部32と第3支持部33との間に設けられる搬送ローラー対52とを備えている。
【0139】
なお、本実施形態では、二つの搬送ローラー対51,52を有する液滴吐出装置10を例示したが、液滴吐出装置10が単数の搬送ローラー対を有する構成であってもよく、液滴吐出装置10が三つ以上の搬送ローラー対を有する構成であってもよい。
【0140】
搬送ローラー対51,52は、メディアMに対して下方側から接触する駆動ローラー56と、メディアMに対して上方側、すなわち、図2における+Z方向側から接触する従動ローラー57とを有する。
【0141】
搬送ローラー対51,52では、駆動ローラー56の動力源である図示しないモーターを駆動することで、駆動ローラー56が回転する。従動ローラー57は、駆動ローラー56が回転することに伴って回転する。搬送ローラー対51,52は、駆動ローラー56と従動ローラー57とがメディアMを挟持した状態で、メディアMを搬送経路に沿って搬送する。
【0142】
図3図7は、それぞれ、本実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置の概要を示す斜視図である。
図3および図4ではインクジェットインク組成物供給装置100に収容体110が載置されていなく、図5図7ではインクジェットインク組成物供給装置100に収容体110が載置されている。さらに、図3および図7ではコネクター140を保護するようにカバー150が配置され、図4図6ではコネクター140を露出するようにカバー150が配置されている。
【0143】
以降の説明では、コネクター140を保護するようにカバー150が配置されることを、カバー150が閉状態にあると称し、コネクター140を露出するようにカバー150が配置されることを、カバー150が開状態にあると称す。
【0144】
次に、図1および図3図7を参照し、本実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置100の概要を説明する。
【0145】
図1に示すように、インクジェット記録装置1において、液滴吐出装置10は、複数のチューブ105を介してインクジェットインク組成物供給装置100と接続されている。複数のチューブ105は、太い保護チューブ106の中を配管され、太い保護チューブ106によって保護されている。なお、図示の構成では、12本のチューブ105を備えているが、チューブ105の数はこれに限定されない。
【0146】
チューブ105および保護チューブ106は可撓性を有し、屈曲可能である。このため、液滴吐出装置10およびインクジェットインク組成物供給装置100は、チューブ105および保護チューブ106が屈曲可能な範囲で移動可能である。
【0147】
本実施形態では、インクジェットインク組成物供給装置100の長手方向がX方向に沿って配置され、インクジェットインク組成物供給装置100の短手方向がY方向に沿って配置され、インクジェットインク組成物供給装置100の高さ方向がZ方向に沿って配置されるものとする。
【0148】
本実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置100には、第1の収容体111と第2の収容体112とが載置されている。複数の第1の収容体111のそれぞれと複数の第2の収容体112のそれぞれとには、6種のうちいずれか一つの1種に対応するインクジェットインク組成物が収容されている。すなわち、本実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置100は、少なくとも一つの第1の収容体111と、少なくとも一つの第2の収容体112と、を載置可能である。
【0149】
少なくとも一つの第1の収容体111は、ライトマゼンタインクが収容される収容体111LMと、ライトシアンインクが収容される収容体111LCと、イエローインクが収容される収容体111Yと、マゼンタインクが収容される収容体111Mと、シアンインクが収容される収容体111Cと、ブラックインクが収容される収容体111Kと、を含む。
【0150】
インクジェットインク組成物供給装置100に第1の収容体111が載置された状態において、ライトマゼンタインクが収容される収容体111LMと、ライトシアンインクが収容される収容体111LCと、イエローインクが収容される収容体111Yと、マゼンタインクが収容される収容体111Mと、シアンインクが収容される収容体111Cと、ブラックインクが収容される収容体111Kとは、X方向において順に配置される。
【0151】
少なくとも一つの第2の収容体112は、ライトマゼンタインクが収容される収容体112LMと、ライトシアンインクが収容される収容体112LCと、イエローインクが収容される収容体112Yと、マゼンタインクが収容される収容体112Mと、シアンインクが収容される収容体112Cと、ブラックインクが収容される収容体112Kと、を含む。
【0152】
インクジェットインク組成物供給装置100に第2の収容体112が載置された状態において、ライトマゼンタインクが収容される収容体112LMと、ライトシアンインクが収容される収容体112LCと、イエローインクが収容される収容体112Yと、マゼンタインクが収容される収容体112Mと、シアンインクが収容される収容体112Cと、ブラックインクが収容される収容体112Kとは、X方向において順に配置される。
【0153】
各収容体、すなわち、収容体111LM,111LC,111Y,111M,111C,111K、収容体112LM,112LC,112Y,112M,112C,112Kの容量は、特に限定されないが、いずれも、1L以上であるのが好ましく、1L以上20L以下であるのがより好ましく、3L以上20L以下であるのがさらに好ましい。
【0154】
このように、大容量の収容体を備えることにより、前述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0155】
インクジェット記録装置1において、6つの収容体111LM,111LC,111Y,111M,111C,111Kのそれぞれに収容されるインクジェットインク組成物、または、6つの収容体112LM,112LC,112Y,112M,112C,112Kのそれぞれに収容されるインクジェットインク組成物は、チューブ105を経由して、液滴吐出装置10の吐出ヘッド43に供給される。
【0156】
以降の説明では、収容体111LM,111LC,111Y,111M,111C,111K、および収容体112LM,112LC,112Y,112M,112C,112Kを、収容体110と称す場合がある。
【0157】
インクジェットインク組成物供給装置100において、第1の収容体111が載置される部分と第2の収容体112が載置される部分とは、XZ平面に関して面対称の関係にあり、互いに同じ構造を有する。このため、以下の説明では、インクジェットインク組成物供給装置100の第1の収容体111が載置される部分を説明し、インクジェットインク組成物供給装置100の第2の収容体112が載置される部分の説明を省略する。
【0158】
図3図7に示すように、インクジェットインク組成物供給装置100は、支持部120と、インクジェットインク組成物が充填された収容体110を載置可能な載置台130と、収容体110から液滴吐出装置10にインクジェットインク組成物を供給可能なチューブ105と、チューブ105に接続され収容体110に着脱可能なコネクター140と、コネクター140を保護するカバー150とを有する。さらに、図4に示すように、インクジェットインク組成物供給装置100は、カバー150の位置を検出する検出部151を有する。
【0159】
図5に示すように、収容体110は、ダンボールで構成される外装ケース115と、外装ケース115の内側に配置される図示しないインクジェットインク組成物収容容器と、インクジェットインク組成物収容容器に接続され外装ケース115の外側に突出する接続口117とを有する。インクジェットインク組成物収容容器は、インクジェットインク組成物によって浸食されないように、例えばポリエチレンの樹脂で構成される。
【0160】
さらに、収容体110には、インクジェットインク組成物収容容器に収容されるインクジェットインク組成物の情報が記憶される図示しない半導体基板が設けられている。
【0161】
図3図7に戻って、載置台130は、高さ方向の下方、すなわち、-Z方向に配置される支持部120によって支持されている。インクジェットインク組成物供給装置100では、載置台130に収容体110が載置される場合、収容体110の接続口117とコネクター140とが接続可能となるように、載置台130の位置やコネクター140の位置が調整されている。
【0162】
載置台130の周囲には、高さ方向の上方、すなわち、+Z方向に延びる壁部131が設けられている。壁部131は、載置台130に載置された収容体110に当接して収容体110の移動を規制する。すなわち、載置台130に設けられた壁部131は、第2規制部の一例である。
【0163】
壁部131を設けることによって、収容体110は、載置台130において移動しにくくなり、安定して載置台130に載置される。
【0164】
壁部131には、載置台130に載置される収容体110に収納されるインクジェットインク組成物の種類を識別可能なラベル132が貼り付けられている。同様に、カバー150にも、載置台130に載置される収容体110に収納されるインクジェットインク組成物の種類を識別可能なラベル152が貼り付けられている。
【0165】
詳しくは、ライトマゼンタインクが収容される収容体110が載置される部位にはライトマゼンタのラベル132,152が貼り付けられ、ライトシアンインクが収容される収容体110が載置される部位にはライトシアンのラベル132,152が貼り付けられ、イエローインクが収容される収容体110が載置される部位にはイエローのラベル132,152が貼り付けられ、マゼンタインクが収容される収容体110が載置される部位にはマゼンタのラベル132,152が貼り付けられ、シアンインクが収容される収容体110が載置される部位にはシアンのラベル132,152が貼り付けられ、ブラックインクが収容される収容体110が載置される部位にはブラックのラベル132,152が貼り付けられている。ユーザーは、ラベル132,152の色によって載置台130に載置される収容体110の種類を識別することができる。
【0166】
支持部120におけるカバー150の周囲には、高さ方向の上方、すなわち、+Z方向に延びる壁部121が設けられている。カバー150は、壁部121の内側に配置され、壁部121によってZ方向に回動可能に支持されている。収容体110の接続口117にコネクター140が接続された状態において、カバー150は、図7に示すコネクター140の把持部141を覆う位置、または、図6に示すコネクター140の把持部141を露出する位置に配置される。
【0167】
なお、図7に示すカバー150がコネクター140の把持部141を覆う位置、すなわち、カバー150が閉状態にある場合のカバー150の位置は、把持部を覆う第1位置に相当し、以降、第1位置と称す。図6に示すカバー150がコネクター140の把持部141を露出する位置、すなわち、カバー150が開状態にある場合のカバー150の位置は、把持部を覆わない第2位置に相当し、以降、第2位置と称す。
【0168】
このように、カバー150は、載置台130に載置された収容体110にコネクター140が取り付けられた状態において、コネクター140の把持部141を覆う第1位置と、コネクター140の把持部141を覆わない第2位置とに移動可能である。また、載置台130に対してX方向に沿う軸を回動軸としてカバー150が回動することによって、カバー150が第1位置と第2位置とを移動することができる。
【0169】
コネクター140は、収容体110の接続口117に接続される液体用カプラーである。コネクター140の一方は収容体110の接続口117に接続され、コネクター140の他方はチューブ105に接続される。その結果、コネクター140が収容体110の接続口117に接続されることで、収容体110のインクジェットインク組成物は、コネクター140とチューブ105とを介して液滴吐出装置10に供給される。
【0170】
コネクター140は、外装ケースである把持部141を有する。ユーザーは、把持部141を把持してコネクター140をZ方向に回動する。コネクター140には、コネクター140と収容体110の接続口117との接続状態をロックする、または、コネクター140と収容体110の接続口117との接続状態を解除するレバー142が設けられている。
【0171】
さらに、コネクター140は、収容体110に設けられた半導体基板と電気的に接続可能な図示しない接続部材を有する。コネクター140が収容体110の接続口117に接続されると、収容体110に設けられた半導体基板は、当該接続部材を介して制御装置11と電気的に接続される。その結果、制御装置11は、収容体110に収容されるインクジェットインク組成物の情報を取得することができる。
【0172】
なお、収容体110の接続口117とコネクター140とが接続された部分を保護することが可能であれば、カバー150の形状は任意である。例えば、カバー150の形状は、半球体形状であってもよく、半円筒形状であってもよい。
【0173】
また、カバー150は、レバー142だけを保護するように設けてもよい。すなわち、カバー150は、収容体110の接続口117とコネクター140とが接続された部分を保護すること、および、レバー142を保護することのうち少なくとも一方を満足する構造であればよい。
【0174】
収容体110の接続口117にコネクター140が接続された状態において、支持部120の壁部121は、把持部141、すなわち、収容体110の接続口117とコネクター140との接続部分を挟むように配置される。すなわち、収容体110の接続口117にコネクター140が接続された状態において、支持部120は、把持部141を挟むように配置される一対の壁部121を有する。
【0175】
一対の壁部121のそれぞれには、図4に示すように、一対の壁部121の内側に張り出す凸部122が設けられている。凸部122は、カバー150と接触可能である。ユーザーがカバー150を回動し、把持部141を覆う第1位置にカバー150を配置する場合、カバー150がコネクター140に接触しないように、カバー150の移動を規制する。すなわち、壁部121には、カバー150と接触可能で、コネクター140の把持部141を覆う第1位置において、カバー150が収容体110に接続されたコネクター140に接触することを規制可能な凸部122が設けられている。
なお、凸部122は、規制部の一例である。
【0176】
検出部151は、いわゆるトルクスイッチであり、支持部120の壁部121に取り付けられ、カバー150の位置を検出する。検出部151では、カバー150が閉状態である場合に当該トルクスイッチのアクチュエーターが押圧され、カバー150が開状態である場合に当該トルクスイッチのアクチュエーターの押圧が解除されるようになっている。そして、制御装置11は、検出部151から供給される信号に基づき、カバー150の開閉を検出する。
【0177】
本実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置100では、収容体110に収容されるインクジェットインク組成物が少なくなると、ユーザーは、インクジェットインク組成物の少ない収容体110からコネクター140を取り外し、インクジェットインク組成物の少ない収容体110を載置台130から取り外す。続いて、ユーザーは、新たな収容体110を載置台130に載置し、新たな収容体110にコネクター140を取り付ける。
【0178】
次に、ユーザーがインクジェットインク組成物の少ない収容体110から新たな収容体110に交換する作業について説明する。
【0179】
収容体110に収容されるインクジェットインク組成物が少なくなると、ユーザーは、図6に示すように、カバー150を回動し、把持部141を覆わない第2位置にカバー150を配置する。続いて、ユーザーは、図5に示すように、コネクター140と収容体110の接続口117との接続状態が解除可能な位置にレバー142を移動し、コネクター140を収容体110の接続口117から取り外す。続いて、ユーザーは、図4に示すように、インクジェットインク組成物の少ない収容体110を載置台130から取り外す。
【0180】
本実施形態では、カバー150は、載置台130に載置された収容体110から取り外されたコネクター140を、第2位置において支持可能に構成されている。すなわち、カバー150が把持部141を覆わない第2位置に配置され、コネクター140が収容体110の接続口117から取り外されると、カバー150は、収容体110から取り外されたコネクター140が-Z方向に落下しないようにコネクター140を支持する。
【0181】
仮に、カバー150を設けていなく、収容体110から取り外されたコネクター140が-Z方向に落下すると、コネクター140とチューブ105との接続部分に余分な力が加わり、コネクター140とチューブ105との接続が解除されるおそれがある。さらに、コネクター140とチューブ105との接続が解除されると、空気が液滴吐出装置10の吐出ヘッド43に供給される可能性がある。空気が液滴吐出装置10の吐出ヘッド43に供給されると、吐出ヘッド43からインクジェットインク組成物を吐出する際に、複数のノズルのうちインクジェットインク組成物が吐出されるべきノズルから空気が吐出され、これが、インクジェットインク組成物のドット、すなわち、インクドットの欠陥に繋がる。インクドットの欠陥により、画像品質が低下するおそれがある。
【0182】
本実施形態では、収容体110から取り外されたコネクター140は、カバー150によって支持され-Z方向に落下せず、コネクター140とチューブ105との接続部分に余分な力が加わりにくいので、例えば、コネクター140とチューブ105との接続が解除され、空気が液滴吐出装置10の吐出ヘッド43に供給され、画像品質が低下するという不具合の発生が抑制される。
【0183】
次に、ユーザーは、図5に示すように、新たな収容体110を載置台130に載置する。続いて、ユーザーは、図6に示すように、コネクター140を収容体110の接続口117に接続する。続いて、ユーザーは、コネクター140と収容体110の接続口117との接続状態がロックされる位置にレバー142を移動する。
【0184】
続いて、ユーザーは、図7に示すように、カバー150を回動し、把持部141を覆う第1位置にカバー150を配置する。すると、コネクター140と、コネクター140と収容体110の接続口117とが接続された部分と、の少なくとも一方が、カバー150によって保護された状態になる。
【0185】
ユーザーがカバー150を回動する際、壁部121に設けられた凸部122は、カバー150がコネクター140の把持部141に接触しないように、カバー150の移動を規制する。これにより、ユーザーが、カバー150を回動し、把持部141を覆う第1位置にカバー150を配置しても、コネクター140と収容体110の接続口117とが接続された部分に余分な力が作用しない。さらに、コネクター140と収容体110の接続口117とが接続された部分は、レバー142によってロックされ、且つ、カバー150によって保護されているので、コネクター140と収容体110の接続口117との接続が解除される不具合が生じにくく、収容体110に収容されるインクジェットインク組成物は安定して液滴吐出装置10に供給される。
【0186】
本実施形態に係るインクジェットインク組成物供給装置100には、6種のインクジェットインク組成物が収容される第1の収容体111に加えて、6種のインクジェットインク組成物が収容される第2の収容体112が載置され、液滴吐出装置10へのインクジェットインク組成物の供給源を、第1の収容体111あるいは第2の収容体112に切り替え可能である。
【0187】
例えば、第1の収容体111の一例である収容体111LMからライトマゼンタインクが液滴吐出装置10に供給され、収容体111LMのライトマゼンタインクが少なくなると、第2の収容体112の一例である収容体112LMからライトマゼンタインクが供給されるように、ライトマゼンタインクの供給源を切り替え可能である。
【0188】
例えば、第2の収容体112の一例である収容体112LMからライトマゼンタインクが液滴吐出装置10に供給され、収容体112LMのライトマゼンタインクが少なくなると、第1の収容体111の一例である収容体111LMからライトマゼンタインクが供給されるように、ライトマゼンタインクの供給源を切り替え可能である。
【0189】
ライトシアンインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、および、ブラックインクも、ライトマゼンタインクと同様に、液滴吐出装置10へのインクジェットインク組成物の供給源を、第1の収容体111あるいは第2の収容体112に切り替え可能である。
【0190】
液滴吐出装置10へのインクジェットインク組成物の供給源は、ユーザーの手作業によって切り替わる場合と、自動で切り替わる場合とがある。次に、液滴吐出装置10へのインクジェットインク組成物の供給源が自動で切り替わる場合について説明する。
【0191】
本実施形態に係るインクジェット記録装置1では、制御装置11は、検出部151からの信号によって第1の収容体111のカバー150が把持部141を覆わない第2位置に移動したことを検出すると、液滴吐出装置10への収容体110からのインクジェットインク組成物の供給を自動的に停止させる。続いて、制御装置11は、液滴吐出装置10へのインクジェットインク組成物の供給源を、第1の収容体111から第2の収容体112へと自動的に切り替える。
【0192】
例えば、第1の収容体111の一例である収容体111LMからライトマゼンタインクが液滴吐出装置10に供給され、収容体111LMのライトマゼンタインクが少なくなり、ユーザーが、収容体111LMからコネクター140を取り外すために、収容体111LMに接続されているコネクター140に対応するカバー150を第2位置に移動させると、制御装置11は、検出部151からの信号によってカバー150が把持部141を覆わない第2位置に移動したことを検出し、収容体111LMからのライトマゼンタインクの供給を自動的に停止させる。続いて、制御装置11は、液滴吐出装置10へのインクジェットインク組成物の供給源を、第1の収容体111の一例である収容体111LMから、第2の収容体112の一例である収容体112LMへと自動的に切り替える。
【0193】
ライトシアンインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、および、ブラックインクも、ライトマゼンタインクと同様に、ユーザーが、第1の収容体111の一例である収容体110からコネクター140を取り外すために、カバー150を第2位置に移動させると、制御装置11は、第1の収容体111の一例である収容体110からのインクジェットインク組成物の供給を自動的に停止し、液滴吐出装置10へのインクジェットインク組成物の供給源を、第1の収容体111の一例である収容体110から、第2の収容体112の一例である収容体110へと自動的に切り替える。
【0194】
同様に、ユーザーが、ライトマゼンタインク、ライトシアンインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、および、ブラックインクにおいて、第2の収容体112の一例である収容体110からコネクター140を取り外すために、収容体111LM、収容体111LC、収容体111Y、収容体111M、収容体111C、収容体111Kのそれぞれに接続されているコネクター140に対応するカバー150を第2位置に移動させると、制御装置11は、第2の収容体112の一例である収容体110からのインクジェットインク組成物の供給を自動的に停止し、液滴吐出装置10へのインクジェットインク組成物の供給源を、第2の収容体112の一例である収容体110から、第1の収容体111の一例である収容体110へと自動的に切り替える。
【0195】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0196】
例えば、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェットインク組成物を備えるものであれば、いかなる構成のものであってもよく、前述したものに限定されない。
【実施例
【0197】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[5]インクジェットインク組成物としての淡色インクの調製
(実施例LM1)
まず、分散染料であるC.I.ディスパースレッド60:15質量部と、分散剤であるナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物:15質量部と、イオン交換水:70質量部の割合で配合し、その後、混合、撹拌してスラリーとした。
【0198】
次に、このスラリーを、ビーズミルのミキシングタンクに移し、粉砕室容積の80体積%になるように0.3mmのジルコニアビーズを加えて、分散染料の比表面積が3.0m/gとなるように分散染料分散液を作製した。
【0199】
その後、上記の分散染料分散液に、上記式で示される化学構造を有するシリコーン系界面活性剤であるシルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエタノールアミン、Proxel XL-2(S)(ロンザ社製)、および、イオン交換水を所定の割合で加え、マグネチックスターラーで2時間混合、攪拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過することのより、表1に示す組成のインクジェットインク組成物として、淡色インクであるライトマゼンタインクを調製した。
【0200】
(実施例LM2~M6)
各成分の配合比率を変更し、表1に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例LM1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0201】
(比較例LM1、M2)
各成分の配合比率を変更し、表1に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例LM1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0202】
(比較例LM3、M4)
シリコーン系界面活性剤として、シルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)の代わりに、BYK-348(ビックケミー社製)を用い、成分の配合比率を変更し、表1に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例LM1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0203】
(実施例LC1)
まず、分散染料であるC.I.ディスパースブルー359:15質量部と、分散剤であるナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物:15質量部と、イオン交換水:70質量部の割合で配合し、その後、混合、撹拌してスラリーとした。
【0204】
次に、このスラリーを、ビーズミルのミキシングタンクに移し、粉砕室容積の80体積%になるように0.3mmのジルコニアビーズを加えて、分散染料の比表面積が3.0m/gとなるように分散染料分散液を作製した。
【0205】
その後、上記の分散染料分散液に、上記式で示される化学構造を有するシリコーン系界面活性剤であるシルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエタノールアミン、Proxel XL-2(S)(ロンザ社製)、および、イオン交換水を所定の割合で加え、マグネチックスターラーで2時間混合、攪拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過することのより、表2に示す組成のインクジェットインク組成物として、淡色インクであるライトシアンインクを調製した。
【0206】
(実施例LC2~C6)
各成分の配合比率を変更し、表2に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例LC1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0207】
(比較例LC1、C2)
各成分の配合比率を変更し、表2に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例LC1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0208】
(比較例LC3、C4)
シリコーン系界面活性剤として、シルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)の代わりに、BYK-348(ビックケミー社製)を用い、成分の配合比率を変更し、表2に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例LC1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0209】
前記の各実施例および各比較例でシリコーン系界面活性剤として用いたシルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)、および、BYK-348(ビックケミー社製)について、以下のようにして、曇点の測定を行った。すなわち、プロピレングリコールの10質量%水溶液:99.0質量部と、シリコーン系界面活性剤:1.0質量部との割合で配合し、マグネチックスターラーで1時間混合、攪拌することにより混合液を得た。この混合液30mLを100mL瓶に封入し、40℃、50℃、60℃の恒温槽にそれぞれ24時間放置し、油分成分が析出し、組成物が白濁する温度範囲を計測した。その結果、シルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)については、60℃での測定でも白濁が発生せず、曇点が60℃超であることが確認された。これに対し、BYK-348(ビックケミー社製)については、60℃および50℃での測定で白濁が発生し、曇点が50℃以下であることが確認された。
【0210】
前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物の組成を表1、表2にまとめて示す。なお、表1、表2中、各成分の含有率についての数値は、質量%の単位で示しており、C.I.ディスパースレッド60を「DR60」、C.I.ディスパースブルー359を「DB359」、シルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)を「SAG503A」、BYK-348(ビックケミー社製)を「BYK-348」、グリセリンを「GL」、プロピレングリコールを「PG」、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを「TGME」、トリエタノールアミンを「TEA」、Proxel XL-2(S)(ロンザ社製)を「XL-2」と示した。また、前記各実施例のインクジェットインク組成物は、いずれも、表面張力が23mN/m以上30mN/m以下の範囲内の値であった。なお、表面張力は、表面張力計(協和界面科学社製、CBVP-7)を用いて、25℃にて、ウィルヘルミー法により測定した。また、前記各実施例のインクジェットインク組成物の25℃における粘度は、いずれも、4mPa・s以上6mPa・s以下の範囲内の値であった。なお、インクジェットインク組成物の粘度は、振動式粘度計(セニコック社製、VM-100)を用いたJIS Z8809に準拠した測定により求めた。
【0211】
【表1】
【0212】
【表2】
【0213】
[6]濃色インクの調製
(調製例DM1)
まず、分散染料であるC.I.ディスパースレッド60:15質量部と、分散剤であるナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物:15質量部と、イオン交換水:70質量部の割合で配合し、その後、混合、撹拌してスラリーとした。
【0214】
次に、このスラリーを、ビーズミルのミキシングタンクに移し、粉砕室容積の80体積%になるように0.3mmのジルコニアビーズを加えて、分散染料の比表面積が3.0m/gとなるように分散染料分散液を作製した。
【0215】
その後、上記の分散染料分散液に、シリコーン系界面活性剤であるシルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエタノールアミン、Proxel XL-2(S)(ロンザ社製)、および、イオン交換水を所定の割合で加え、マグネチックスターラーで2時間混合、攪拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過することのより、表3に示す組成の濃色インクであるマゼンタインクを調製した。
【0216】
(調製例DM2~DM6)
各成分の配合比率を変更し、表3に示すような組成となるようにした以外は、前記調製例DM1と同様にして濃色インクを調製した。
【0217】
(調製例DC1)
まず、分散染料であるC.I.ディスパースブルー359:15質量部と、分散剤であるナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物:15質量部と、イオン交換水:70質量部の割合で配合し、その後、混合、撹拌してスラリーとした。
【0218】
次に、このスラリーを、ビーズミルのミキシングタンクに移し、粉砕室容積の80体積%になるように0.3mmのジルコニアビーズを加えて、分散染料の比表面積が3.0m/gとなるように分散染料分散液を作製した。
【0219】
その後、上記の分散染料分散液に、シリコーン系界面活性剤であるシルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエタノールアミン、Proxel XL-2(S)(ロンザ社製)、および、イオン交換水を所定の割合で加え、マグネチックスターラーで2時間混合、攪拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過することのより、表3に示す組成の濃色インクであるシアンインクを調製した。
【0220】
(調製例DC2~DC5)
各成分の配合比率を変更し、表3に示すような組成となるようにした以外は、前記調製例DC1と同様にして濃色インクを調製した。
【0221】
前記各調製例の濃色インクの組成を表3にまとめて示す。なお、表3中、各成分の含有率についての数値は、質量%の単位で示しており、C.I.ディスパースレッド60を「DR60」、C.I.ディスパースブルー359を「DB359」、シルフェイスSAG503A(日信化学工業社製)を「SAG503A」、BYK-348(ビックケミー社製)を「BYK-348」、グリセリンを「GL」、プロピレングリコールを「PG」、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを「TGME」、トリエタノールアミンを「TEA」、Proxel XL-2(S)(ロンザ社製)を「XL-2」と示した。また、前記各実施例のインクジェットインク組成物は、いずれも、表面張力が23mN/m以上30mN/m以下の範囲内の値であった。なお、表面張力は、表面張力計(協和界面科学社製、CBVP-7)を用いて、25℃にて、ウィルヘルミー法により測定した。また、前記各実施例のインクジェットインク組成物の25℃における粘度は、いずれも、4mPa・s以上6mPa・s以下の範囲内の値であった。なお、インクジェットインク組成物の粘度は、振動式粘度計(セニコック社製、VM-100)を用いたJIS Z8809に準拠した測定により求めた。
【0222】
【表3】
【0223】
[7]評価
前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物としての淡色インクを用いて、以下のような評価を行った。
【0224】
[7-1]沈降性評価
まず、前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物としての淡色インクについて、製造直後に、最大値となる波長における吸光度W0を求めた。
【0225】
その後、各淡色インクを、それぞれ、所定のガラス瓶に100mL入れ、60℃の恒温室内に5日間静置後、25℃室内にて3週間静置した。その後、その上澄み液5mLを採取し、最大値となる波長における吸光度WAを求めた。
【0226】
各淡色インクについて、上記のようにして得られた吸光度W0、吸光度WAの値から、下記計算式により残存率Sを算出し、以下の基準に従い沈降性を評価した。残存率Sが高いほど、優れていると言える。B以上を良好なレベルとした。
【0227】
残存率S(%)=((吸光度WA)/(吸光度W0))×100
【0228】
A:残存率Sが90%以上である。
B:残存率Sが80%以上90%未満である。
C:残存率Sが80%未満である。
【0229】
[7-2]保存安定性評価
まず、前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物としての淡色インクを、それぞれ10mLだけ、所定のガラス瓶に入れ、気液界面が存在する状態で、30℃~60℃の環境下で7サイクル、計168時間放置した。その後、各淡色インクを孔径10μmの金属メッシュフィルターで濾過し、金属メッシュフィルター上に残留した固形物の1mm四方あたりの個数を数え、以下の基準に従い保存安定性を評価した。金属メッシュフィルター上に残留した固形物が少ないほど、保存安定性に優れていると言える。B以上を良好なレベルとした。
【0230】
A:1mm四方当たりの固形物個数が5個未満であった。
B:1mm四方当たりの固形物個数が5個以上30個未満であった。
C:1mm四方当たりの固形物個数が30個以上であった。
【0231】
[7-3]粒状性評価
前記実施例LM1~LM6および比較例LM1~LM4のインクジェットインク組成物としての淡色インクを用いて、以下のように、記録物を製造し、得られた記録物について粒状性評価を行った。
【0232】
まず、図1図7に示すようなインクジェット記録装置の収容体に淡色インクを収容した。
【0233】
次に、インクジェット記録装置の吐出ヘッドから、中間転写媒体であるTRANSJET Classic(Cham Paper社)に対して、解像度720×720dpiにて記録を行い、白からマゼンタDUTY100%出力に至るグラデーションのパターンを印刷した。なお、打ち込める最大インク量をDuty100%と定義する。
【0234】
その後、中間転写媒体のインク付着側を白色記録媒体である布帛(ポリエステル100%、アミーナ、東レ社製)と密着させ、この状態で、ヒートプレス機(TP-608M、太陽精機社製)を用いて、200℃で60秒の条件で加熱し、昇華転写を行い、記録物としての染色物を得た。
【0235】
また、前記実施例LC1~LC6および比較例LC1~LC4のインクジェットインク組成物としての淡色インクを用いて、白からシアンDUTY100%出力に至るグラデーションパターンを形成した以外は、上記と同様にして記録物としての染色物を得た。
【0236】
得られた各染色物の印刷面を目視にて観察し、以下の基準に従い粒状性を評価した。B以上を良好なレベルとした。
【0237】
A:印刷面から30cm離れた距離での目視観察では粒状感を認識できない。
B:印刷面から30cm離れた距離での目視観察において粒状感を認識できる。
C:印刷面から30cmを超える距離での目視観察においても粒状感を認識できる。
【0238】
[7-4]色間のつながりの評価
前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物としての淡色インクについて、濃色インクとの組み合わせであるインクジェットインクセットを用意して、以下のように、記録物を製造し、得られた記録物について色間のつながりの評価を行った。
【0239】
まず、C.I.ディスパースレッド60を含む淡色インクとC.I.ディスパースレッド60を含む濃色インクとの各種の組み合わせである2種のインクジェットインク組成物からなるインクジェットインクセット、C.I.ディスパースブルー359を含む淡色インクとC.I.ディスパースブルー359を含む濃色インクとの各種の組み合わせである2種のインクジェットインク組成物からなるインクジェットインクセットを用意した。
【0240】
次に、図1図7に示すようなインクジェット記録装置を用いて、インクジェットインクセットを構成する淡色インクおよび濃色インクにより、中間転写媒体であるTRANSJET Classic(Cham Paper社)に対して、解像度720×720dpiにて記録を行い、濃色インクを10%~50%DUTYで塗りつぶしパターンを出力し、淡色インクを10%~50%DUTYで塗りつぶしパターンを出力した。
【0241】
その後、中間転写媒体のインク付着側を白色記録媒体である布帛(ポリエステル100%、アミーナ、東レ社製)と密着させ、この状態で、ヒートプレス機(TP-608M、太陽精機社製)を用いて、200℃で60秒の条件で加熱し、昇華転写を行い、記録物としての染色物を得た。
【0242】
得られた各染色物の印刷面を、分光測色機(商品名「FD-7」、コニカミノルタ社製)を用いて光D65光源、視野角2度の条件で測定し、a値、b値を算出し、以下の基準に従い色間のつながり評価を行った。Aを良好なレベルとした。
【0243】
A:淡色インクの(a、b)の推移が濃色インクの(a、b)の推移と重なる。
C:淡色インクの(a、b)の推移が濃色インクの(a、b)の推移と重ならない。
【0244】
上記[7-1]~[7-3]の結果を表4にまとめて示し、上記[7-4]の結果を表5、表6にまとめて示す。
【0245】
【表4】
【0246】
【表5】
【0247】
【表6】
【0248】
表4~表6から明らかなように、本発明では優れた結果が得られた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
【0249】
また、上記のようにして調製した各種のインクについて、C.I.ディスパースレッド60を含む淡色インクと、C.I.ディスパースレッド60を含む濃色インクと、C.I.ディスパースブルー359を含む淡色インクと、C.I.ディスパースブルー359を含む濃色インクとの4種のインクの各種の組み合わせであるインクジェットインクセットについて、図1図7に示すようなインクジェット記録装置を用いて、所定のパターンの画像を形成し、記録物を製造したところ、本発明に係る淡色インクを備えるインクジェットインクセットでは、色間のつながりに優れた好適な画像を有する記録物を安定的に製造することができたのに対し、比較例に係るインクジェットインクセットでは、満足のいく結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0250】
1…インクジェット記録装置、10…液滴吐出装置、11…制御装置、12…脚台、13…筐体、20…繰出部、21…保持部、25…巻取部、26…保持部、30…支持部、31…第1支持部、32…第2支持部、33…第3支持部、35…ベース部材、40…印刷部、41…ガイド軸、42…キャリッジ、43…吐出ヘッド、50…搬送部、51…搬送ローラー対、52…搬送ローラー対、56…駆動ローラー、57…従動ローラー、100…インクジェットインク組成物供給装置、105…チューブ、106…保護チューブ、110…収容体、111…第1の収容体、112…第2の収容体、111LC,112LC…収容体、111LM,112LM…収容体、111K,112K…収容体、111C,112C…収容体、111M,112M…収容体、111Y,112Y…収容体、115…外装ケース、117…接続口、120…支持部、121…壁部、122…凸部、130…載置台、131…壁部、132,152…ラベル、140…コネクター、141…把持部、142…レバー、150…カバー、151…検出部、M…メディア、R…ロール体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7