(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20250701BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250701BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20250701BHJP
H04W 4/48 20180101ALI20250701BHJP
【FI】
H04W48/16 130
G08G1/09 F
H04W4/44
H04W4/48
(21)【出願番号】P 2021052265
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 宏和
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/158117(WO,A1)
【文献】特開2006-088829(JP,A)
【文献】特開2017-092534(JP,A)
【文献】特開2011-089839(JP,A)
【文献】特開2015-130591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵された通信モジュールを介して通信を行う第一の車載装置と、
前記第一の車載装置と車載ネットワークを介して接続しており、前記第一の車載装置を介して
外部の広域ネットワークと通信を行う第二の車載装置と、を含む通信システムであって、
前記第一の車載装置が、前記第一の車載装置を搭載する車両の内部からのデータである第一データを受信した場合、
前記第一の車載装置は、前記第一データの発信元が前記第一の車載装置内のモジュールであるか、または、前記第一データの発信元が前記第二の車載装置であるかを判定し、
前記第一の車載装置は、
前記第一データの発信元が前記第一の車載装置内の前記モジュールであった場
合、前記広域ネットワークへのアクセスを提供する複数のアクセスポイントのうちの第一のアクセスポイントを介して前記
広域ネットワークとの通信を確立して、前記第一データの中継を行い、
前記第一データの発信元が前記第二の車載装置であった場合に、前記第一のアクセスポイントとは異なる第二のアクセスポイントを介して
前記広域ネットワークとの通信を確立して、前記第一データの中継を行い、
前記第一の車載装置が、前記広域ネットワークから前記車両へ向けて送信されたデータである第二データを受信した場合、
前記第一の車載装置は、前記第二データを前記第一のアクセスポイントを介して受信したか、または、前記第二データを前記第二のアクセスポイントを介して受信したかを判定し、
前記第一の車載装置は、
前記第二データが前記第一のアクセスポイントを介して受信された場合に、前記第二データを前記第一の車載装置内で処理し、
前記第二データが前記第二のアクセスポイントを介して受信された場合に、前記第二データを前記第二の車載装置に送信する、
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載されたコンピュータが無線通信を行うシステムが普及している。例えば、特許文献1には、車載された複数の送受信アンテナを有し、第1の送受信アンテナが使用不能となった場合に、第2の送受信アンテナを用いて緊急データの送信制御を行う車両通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、車両が行う通信の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一の態様は、内蔵された通信モジュールを介して通信を行う第一の車載装置と、前記第一の車載装置を介して通信を行う第二の車載装置と、を含む車両通信システムである。具体的には、前記第一の車載装置は、前記第一の車載装置が単独で通信を行う場合に、広域ネットワークへのアクセスを提供する複数のアクセスポイントのうちの第一のアクセスポイントを介して通信を行い、 前記第二の車載装置の要求に基づいて通信を行
う場合に、前記第一のアクセスポイントとは異なる第二のアクセスポイントを介して通信を行う。
【0006】
また、他の態様として、第一または第二の車載装置が実行する情報処理方法、当該情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両が行う通信の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車両システムのシステム構成図。
【
図3】DCMが有する制御部のモジュール構成を示したブロック図。
【
図4】空調ECUが有する制御部のモジュール構成を示したブロック図。
【
図5】センタサーバが有する構成要素を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一態様は、内蔵された通信モジュールを介して通信を行う第一の車載装置と、前記第一の車載装置を介して通信を行う第二の車載装置と、を含む車両通信システムである。
具体的には、前記第一の車載装置は、前記第一の車載装置が単独で通信を行う場合に、広域ネットワークへのアクセスを提供する複数のアクセスポイントのうちの第一のアクセスポイントを介して通信を行い、前記第二の車載装置の要求に基づいて通信を行う場合に、前記第一のアクセスポイントとは異なる第二のアクセスポイントを介して通信を行うことを特徴とする。
【0010】
第一の車載装置は、通信モジュールを内蔵した車載装置である。第一の車載装置は、例えば、DCM(データコミュニケーションモジュール)とも称される。第一の車載装置は、内蔵された通信モジュールを用いて、単独で通信を行うことができる。
第二の車載装置は、通信モジュールを内蔵しない車載装置である。第二の車載装置は、例えば、カーナビゲーション装置、インフォテイメント装置、ヘッドユニットなどである。また、第二の車載装置は、ECU(Electric Control Unit)であってもよい。第二の
車載装置は、第一の車載装置を介して、車両の外部と通信を行うことができる。
【0011】
通信モジュールが、移動体通信ネットワークを介して、インターネット等の広域ネットワークへの接続を提供する場合、アクセスポイント名を指定する必要がある。アクセスポイントとは、移動体通信ネットワークと広域ネットワークとを接続するゲートウェイである。
しかし、単独のアクセスポイントを利用した場合、信頼性や、負荷分散において課題が生じる場合がある。例えば、ネットワークを利用する車両機能には、緊急通報機能やセキュリティ機能など、高い信頼性が求められるものと、交通情報の提供機能など、そうでないものがある。これらの通信をすべて同じ経路で行うと、通信の輻輳や、通信障害等が発生した場合に、必要な機能が利用できなくなるおそれがある。
【0012】
これに対応するため、本開示に係る車両通信システムでは、第一の車載装置が単独で通信を行う場合と、第二の車載装置が第一の車載装置経由で通信を行う場合とで、異なるアクセスポイントを利用する。例えば、より高い信頼度が求められる通信は第一の車載装置が単独で行い、それ以外の通信を第二の車載装置に行わせることで、通信経路を分散させることができる。これにより、負荷を軽減させることができ、高い信頼度を得ることができる。
【0013】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0014】
実施形態に係る車両システムの概要について、
図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る車両システムは、車両1と、センタサーバ100を含んで構成される。
【0015】
車両1は、通信機能を有するコネクティッドカーである。車両1は、通信モジュールであるDCM10と、ECU20と、車載装置30を含んで構成される。なお、図には単一のECU20が例示されているが、車両に搭載されるECU20は複数あってもよい。車両が有する複数のECUとして、例えば、エンジンECU、ボディECU、パワートレインECU、または、ハイブリッドECUなどを挙げることができる。
車載装置30は、車両の乗員に情報を提供する装置(例えば、カーナビゲーション装置)である。
【0016】
センタサーバ100は、車両1と通信可能なサーバ装置である。センタサーバ100は、車両1と通信することで、各種のリモートサービスを提供する。リモートサービスの一例として、車両1が有する空調装置を遠隔で制御するサービスがある。斯様なサービスを利用することで、ユーザは、車両に乗車する前に、当該車両の暖房や冷房を動作させ、車内を適温にすることができる。
【0017】
システムの構成要素について、詳しく説明する。
図2は、
図1に示した車両1の構成の一例を概略的に示したブロック図である。車両1は、DCM10、ECU20、および、車載装置30を含んで構成される。これらの構成要素は、CANバス40によって相互に接続される。なお、本例では、車両1に搭載されたECU(Electronic Control Unit)20として空調ECU20Aを例示する。空調E
CU20Aは、車両が有する複数の空調装置を制御するECUであって、複数のECU20のうちの一つである。車両が有する複数の空調装置として、例えば、エアコン、デフォッガ、シートヒーター、ステアリングヒーターなどが例示できる。CANバス40には、これ以外の車両コンポーネントを管轄する他のECU20が接続されていてもよい。
以降の説明において、車両が有する複数のECUを総称する場合、ECU20という語を用いる。
【0018】
DCM10は、車載ネットワークと、車両1の外部の通信ネットワーク(以下、外部ネットワーク)とを接続するインタフェースユニットである。DCM10は、無線通信によって移動体通信ネットワークと通信可能に構成される。移動体通信ネットワークは、広域ネットワーク(例えば、インターネット)と相互に接続されており、これにより、DCM10は、広域ネットワーク上の装置と通信を行うことができる。
【0019】
DCM10は、外部ネットワークと車両1との通信を仲介する機能を実行する。例えば、車両1が有するECU20や車載装置30が、外部ネットワークとの通信を必要とする場合、DCM10は、ECU20や車載装置30から送信されたデータを外部ネットワークに中継する。また、外部ネットワークから送信されたデータを受信し、当該データを適切なECU20または車載装置30に転送する。
例えば、DCM10は、センタサーバ100から、車両1の空調を動作させるリクエスト(空調リクエスト)を受信し、当該空調リクエストを、空調ECU20に転送する処理を実行する。
【0020】
さらに、DCM10は、自装置に固有な機能を実行することができる。例えば、DCM10は、セキュリティ監視機能や通話機能を有しており、車内で発生したトリガに基づいて、セキュリティ通報や緊急通報等を行うことができる。
【0021】
DCM10は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROMやディスクドライブ
、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0022】
DCM10は、制御部11と、記憶部12と、CANバス40と通信を行うインタフェースである通信部13Aと、外部ネットワークと通信を行うインタフェースである通信部13Bと、入出力部14を含んで構成される。
【0023】
制御部11は、所定のプログラムを実行することで、DCM10の各種機能を実現する演算ユニット(プロセッサ)である。
図3は、DCM10が有する制御部11の論理構成を示した図である。
制御部11は、機能モジュールとして、データ中継部111、緊急通報部112、セキュリティ部113の3つのモジュールを有している。各機能モジュールは、ROM等の記憶手段に記憶されたプログラムを制御部11(すなわち、CPU等)によって実行することで実現してもよい。
【0024】
データ中継部111は、例えば、車載ネットワークに接続された第一の装置によって送出されたメッセージを受信し、必要に応じて、当該メッセージを、車載ネットワークに接続された第二の装置に転送する処理を実行する。なお、車両1が複数のCANバスを有している場合、データ中継部111は、メッセージを適切なCANバスに送出してもよい。第一および第二の装置は、ECU20であってもよいし、車載装置30であってもよい。
また、データ中継部111は、ECU20や車載装置30から、外部ネットワークを宛先とするメッセージを受信した場合に、当該メッセージを外部ネットワークに中継する。また、外部ネットワークから送信されたデータを受信し、当該データを適切なECU20または車載装置30に転送する。
【0025】
緊急通報部112は、車両1に異常事態が発生した場合に、車外のオペレータに対して緊急通報を行う。異常事態の一例として、交通事故や車両故障の発生が挙げられる。緊急通報部112は、例えば、車内に設けられたコールボタンの押下、エアバッグの展開といった所定のトリガが発生した場合に、オペレータとの接続を開始し、車両の乗員とオペレータとの間での通話を可能にする。
【0026】
セキュリティ部113は、セキュリティ監視処理を行う。セキュリティ部113は、例えば、車両の電子ロックを管轄するECU20から受信したデータに基づいて、正規の手順によらずに車両が解錠されたことを検知し、所定の装置に対してセキュリティ通報を送信する。なお、セキュリティ通報には、車両の位置情報が含まれていてもよい。この場合、セキュリティ部113は、車両1が有する他のコンポーネントから位置情報を取得可能に構成されてもよい。
【0027】
図2に戻って説明を続ける。
記憶部12は、主記憶装置および補助記憶装置を含むメモリ装置である。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置にロードして実行することによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。
【0028】
通信部13Aは、DCM10を車載ネットワーク(CANバス40)に接続する通信インタフェースである。通信部13Aは、制御部11によって生成された所定形式のメッセージをCANデータに変換する処理と、受信したCANデータを所定形式のメッセージに変換し、制御部11に送信する処理を実行する。
通信部13Bは、DCM10を移動体通信ネットワークに接続する通信インタフェースである。通信部13Bは、制御部11によって生成された所定形式のメッセージをパケットに変換する処理と、受信したパケットを所定形式のメッセージに変換し、制御部11に送信する処理を実行する。
【0029】
入出力部14は、車両の乗員との間で情報の入出力を行うユニットである。入出力部14は、例えば、マイクおよびスピーカを含む音声入出力ユニットとすることができる。入出力部14を利用して、DCM10は、通話機能などを提供することができる。
【0030】
次に、ECU20について説明する。ここでは、ECU20の一例として、空調ECU20Aを例示する。
空調ECU20Aは、車両1に搭載された空調装置を制御する電子制御ユニットである。空調ECU20には、複数の空調装置が接続されており、ユーザからの指示に基づいて、これらの空調装置に対する制御を行う。車両1が有する複数の空調装置として、例えば、カーエアコン、デフォッガ(デフロスタ)、シートヒーター、ステアリングヒーターなどが例示できる。
【0031】
空調ECU20Aは、車内に設置されたコントロールパネルに対して行われた操作に基づいて空調装置を動作させるほか、センタサーバ100から送信された空調リクエストに基づいてリモート空調を実行する。リモート空調を行うモードを、リモート空調モードと称する。車両1がリモート空調モードにある場合、走行が禁止される。車両1がリモート空調モードにある場合、例えば、シフトポジションの変更、パーキングブレーキの解除、ステアリングロックの解除などが禁止される。
【0032】
空調ECU20Aは、DCM10と同様に、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROMやディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。
【0033】
本実施形態では、空調ECU20Aは、制御部21、記憶部22、および、通信部23を有して構成される。
制御部21は、所定のプログラムを実行することで、空調ECU20Aの各種機能を実現する演算ユニット(プロセッサ)である。
【0034】
図4は、空調ECU20Aが有する制御部21の論理構成を示した図である。
制御部21は、機能モジュールとして、リモート空調部211を有している。当該機能モジュールは、ROM等の記憶手段に記憶されたプログラムを制御部21(すなわち、CPU等)によって実行することで実現してもよい。
【0035】
リモート空調部211は、受信した空調リクエストに基づいて、一つ以上の空調装置を動作させるためのコマンドを生成する。これにより、車両1のリモート空調が開始される。また、リモート空調部211は、所定の条件が成立した場合に、リモート空調を停止させる。例えば、リモート空調部211は、所定のタイマが満了した場合や、ユーザが車両1に乗車した場合にリモート空調を停止させる。
【0036】
記憶部22は、主記憶装置および補助記憶装置を含むメモリ装置である。これらの機能は、制御部11および記憶部12と同様であるため、詳細な説明は省略する。
通信部23は、空調ECU20Aを車載ネットワーク(CANバス40)に接続する通信インタフェースである。通信部23は、制御部21によって生成された所定形式のメッセージをCANデータに変換する処理と、受信したCANデータを所定形式のメッセージに変換し、制御部21に送信する処理を実行する。
【0037】
車載装置30は、車両の乗員に情報を提供する装置であって、カーナビゲーションシステム、インフォテインメントシステム、ヘッドユニットとも呼ばれる。車載装置30は、車両の乗員に対して、ナビゲーションや娯楽の提供を行うことができる。また、車載装置30は、車両1の外部ネットワークと通信することで、交通情報、道路地図データ、音楽や動画像などをダウンロードする機能を有している。
【0038】
車載装置30は、DCM10と同様に、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROMやディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。
【0039】
本実施形態では、車載装置30は、制御部31、記憶部32、通信部33、および、入出力部34を有して構成される。
制御部31は、所定のプログラムを実行することで、車載装置30の各種機能を実現する演算ユニット(プロセッサ)である。制御部31は、ナビゲーション機能や、オーディオ/ビジュアル機能、その他の情報提供機能などを実行する。
記憶部32は、主記憶装置および補助記憶装置を含むメモリ装置である。これらの機能
は、制御部11および記憶部12と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
通信部33は、車載装置30を車載ネットワーク(CANバス40)に接続する通信インタフェースである。
入出力部34は、ユーザが行った入力操作を受け付け、ユーザに対して情報を提示するユニットである。本実施形態では一つのタッチパネルディスプレイからなる。すなわち、液晶ディスプレイとその制御手段、タッチパネルとその制御手段から構成される。
【0041】
CANバス40は、CAN(Controller Area Network)プロトコルに基づく車載ネッ
トワークを構成する通信バスである。なお、本例では、一つのCANバス40が例示されているが、車載ネットワークは、複数の通信バスを有していてもよい。また、これらの複数の通信バスを相互に接続するゲートウェイを有していてもよい。この場合、DCM10がゲートウェイを兼ねていてもよい。また、CANバスの代わりに、イーサネット(登録商標)等のネットワークを利用してもよい。
【0042】
図5は、
図1に示したセンタサーバ100の構成の一例を概略的に示したブロック図である。
センタサーバ100は、車両1を遠隔制御するサーバ装置である。センタサーバ100は、例えば、車両1に対してリモート空調の動作を指示するためのプログラムを実行可能に構成される。センタサーバ100は、例えば、ユーザ端末から送信されたリクエストに基づいて、車両1に対してリモート空調の動作を指示してもよい。
【0043】
センタサーバ100は、汎用のコンピュータにより構成することができる。すなわち、センタサーバ100は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを実行することによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0044】
センタサーバ100は、制御部101、記憶部102、および、通信部103を有して構成される。
【0045】
制御部101は、センタサーバ100の制御を司る手段である。制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の情
報処理ユニットによって構成される。
制御部101は、機能モジュールとして、空調リクエスト部1011を有している。当該機能モジュールは、ROM等の記憶手段に記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0046】
空調リクエスト部1011は、ユーザ端末から送信されたデータに基づいて、指定された車両1のリモート空調を動作させるためのリクエスト(空調リクエスト)を生成し、車両1に送信する。空調リクエストは、例えば、動作させる空調装置、設定温度、動作時間の指定などを含む。生成された空調リクエストは、ネットワークを介して、対象車両に搭載されたDCM10に送信される。
【0047】
記憶部102は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部102には、制御部101にて実行される各種プログラム、当該プログラムが利用するデータ等が記憶される。また、記憶部102は
、車両1に関するデータ(例えば、車両1の識別子や、DCM10の識別情報など)を記憶する。
【0048】
通信部103は、センタサーバ100をネットワークに接続するためのインタフェースである。通信部103は、例えば、インターネットや移動体通信ネットワークなどを介して、車両1と通信することができる。
【0049】
次に、
図6を参照して、車両1と外部ネットワークとの間の論理的な通信経路について説明する。
本実施形態では、DCM10は、移動体通信ネットワークを介して広域ネットワーク(インターネット)へのアクセスを行う。移動体通信ネットワークを介してインターネット等の広域ネットワークにアクセスする場合、ネットワーク間の接続点であるゲートウェイ(アクセスポイントとも呼ばれる)を指定する必要がある。アクセスポイントの名称は、Access Point Name(APN)とも呼ばれる。
【0050】
本実施形態では、DCM10は、二種類のAPNを利用して広域ネットワークへの通信を行うことができる。
図6は、車両1から広域ネットワークへの通信経路を説明する図である。DCM10は、行おうとしている通信が、自装置単独によるものである場合に、第1APNを介して通信を行う。DCM10が単独で行う通信として、例えば、緊急通報部112が行う通信(緊急通報に関する通信)、セキュリティ部113が行う通信(セキュリティに関する通信)などがある。また、DCM10は、行おうとしている通信が、自装置以外からの要求によるものである場合に、第2APNを介して通信を行う。このような通信として、例えば、空調ECU20Aが行う、リモート空調に係る通信、および、車載装置30が行う通信が挙げられる。
【0051】
DCM10が単一のAPN(例えば、第1APN)のみによって通信を行う場合、利用中のアクセスポイントに障害が発生すると通信が途絶してしまう。また、当該アクセスポイントに高い負荷がかかった場合も、通信障害の原因となってしまう。一方、本実施形態のように、通信元に応じて複数のAPNを使い分けると、どちらか片方に通信障害や通信遅延が発生した場合であってもサービスの提供を続けることができる。さらに、複数のサービスで通信経路を切り分けることができるため、開発効率を向上させることができる。
【0052】
図7は、車両1の内部において、広域ネットワークに宛てたデータが発生した場合に、DCM10(データ中継部111)が実行する処理のフローチャートである。図示した処理は、車両システムの動作中において繰り返し実行される。
まず、ステップS11において、データを受信する。当該データは、自装置内のモジュール(すなわち、緊急通報部112またはセキュリティ部113)から送信されたものであってもよいし、ECU20または車載装置30から送信されたものであってもよい。
次に、ステップS12において、データの発信元を判定する。データの発信元が自装置内のモジュールであった場合、処理はステップS13へ遷移する。データの発信元が他の装置(すなわち、ECU20や車載装置30)であった場合、処理はステップS14へ遷移する。
【0053】
ステップS13では、第1APNを利用して外部ネットワークとの通信を確立し、データの中継を行う。また、ステップS14では、第2APNを利用して外部ネットワークとの通信を確立し、データの中継を行う。
【0054】
図8は、広域ネットワークから、車両1が有するコンポーネントに宛てたデータを受信した場合に、DCM10(データ中継部111)が実行する処理のフローチャートである。図示した処理は、車両システムの動作中において繰り返し実行される。
まず、ステップS21において、データを受信する。当該データは、自装置内のモジュール(すなわち、緊急通報部112またはセキュリティ部113)に宛てたものであってもよいし、車両1が有する複数のECU20のうちのいずれか、または、車載装置30に宛てたものであってもよい。
次に、ステップS22において、データを受信したチャネルを判定する。データを受信したチャネルが、第1APNを利用した通信チャネルである場合、処理はステップS23へ遷移する。データを受信したチャネルが、第2APNを利用した通信チャネルである場合、処理はステップS24へ遷移する。
【0055】
ステップS23では、受信したデータを自装置内にて処理する。具体的には、データの宛先であるモジュール(すなわち、緊急通報部112またはセキュリティ部113)に当該データを転送する。
ステップS24では、受信したデータを、当該データの宛先であるECU20(または車載装置30)に転送する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る車両システムでは、データ通信を行う主体が自装置(DCM10)であるか、他装置(ECU20,車載装置30)であるかによって、通信経路を動的に切り替える。かかる構成によると、通信負荷を分散させることが可能になり、障害に強い通信システムを提供することが可能になる。
【0057】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0058】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0059】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0060】
1・・・車両
10・・・DCM
20・・・ECU
30・・・車載装置
11,21,31・・・制御部
12,22,32・・・記憶部
13,23,33・・・記憶部
14,34・・・入出力部
100・・・センタサーバ
101・・・制御部
102・・・記憶部
103・・・通信部