(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250701BHJP
B60R 21/0132 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R21/0132 320
(21)【出願番号】P 2021073750
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 康太
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 21/0132
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する車線の右側及び左側に敷設されている車両区画線を検出する白線検出部と、
前記車両区画線に沿って敷設されている路側物を検出する路側物検出部と、
前記白線検出部によって検出された前記車両区画線の位置及び前記路側物検出部によって検出された前記路側物の位置に基づいて前記車線からの前記車両の逸脱を防止するための情報である運転支援情報を出力する情報出力部と、
を備える、車両制御装置であって、
前記情報出力部は、
前記白線検出部によって前記車両区画線が検出されており且つ前記路側物検出部によって前記路側物が検出されている状態である第1状態において、前記路側物と前記車両とが接触する可能性である接触可能性が所定の閾値である第1閾値以上である場合は、前記路側物検出部によって検出された前記路側物の位置に基づいて前記運転支援情報を出力し、
前記白線検出部によって前記車両区画線が検出されており且つ前記路側物検出部によって前記路側物が検出されていない状態である第2状態において、前記車線から前記車両が逸脱する可能性である逸脱可能性が所定の閾値である第2閾値以上である場合は、前記白線検出部によって検出された前記車両区画線の位置に基づいて前記運転支援情報を出力し、
前記白線検出部によって前記車両区画線が検出されておらず且つ前記路側物検出部によって前記路側物が検出されている状態である第3状態において、前記路側物と前記車両とが接触する可能性である接触可能性が所定の閾値である第3閾値以上である場合は、前記路側物検出部によって検出された前記路側物の位置に基づいて前記運転支援情報を出力する、
ように構成されている、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。より具体的には、本発明は、運転者による意図的な車線からの逸脱時等において車線逸脱防止機能が過剰に働くことを防止することが可能な車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両が走行する車線からの車両の逸脱の防止等を目的として、当該車線の右側及び左側に敷設された車両区画線を例えばCCDカメラ等を用いて検出し、検出された車両区画線に基づいて運転支援情報を運転者に報知する技術が知られている。運転支援情報とは、車両が走行している車線からの車両の逸脱を防止することを目的として運転者に対して報知される情報である。また、車両区画線とは、車線の右側及び左側に敷設されている線であり、単に「白線」と称呼される場合がある。
【0003】
しかしながら、例えば縁石、ガードレール及び/又はコンクリート製の側壁等、車両が接触すると甚大な損傷を受けると想定される路側物が車両区画線の外側に配設されている場合は、検出された車両区画線に基づく場合よりも車線の内側を車両が走行するように運転支援情報を運転者に報知した方が好ましい場合がある。
【0004】
そこで、車両区画線を検出する手段と、車両が走行する車線の右側及び左側に敷設されている路側物を検出する手段と、仮想区画線の位置を推定する手段と、仮想区画線の位置に基づいて運転支援情報を出力する手段と、を備える運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。仮想区画線とは、検出された車両区画線及び路側物に基づいて推定される仮想的な車両区画線であり、検出された車両区画線よりも車線の内側の位置が仮想区画線の位置として推定される。当該運転支援装置によれば、実際に検出された車両区画線よりも車線の内側に設定された仮想区画線に基づく運転支援情報が運転者に報知されるので、適正な運転支援情報を出力することができるとされている。
【0005】
しかしながら、走行する車線からの車両の逸脱の防止等を目的とする運転支援情報の報知及び/又は操舵制御等の機能(以降、「車線逸脱防止機能」と称呼される場合がある)が上記のような仮想区画線に基づいて実行される場合、煩わしさ及び/又は違和感等を運転者に覚えさせてしまう場合がある。例えば、路側物と車両との間に障害物が存在しておらず且つ路側物と車両との間に十分な距離がある状況においては車線から車両が逸脱することに伴う危険性は高くはない。にもかかわらず、実際に検出された車両区画線よりも車線の内側に設定された仮想区画線に基づく車線逸脱防止機能が実行されると、煩わしさ及び/又は違和感等を運転者に覚えさせてしまうこととなる。ましてや、例えば隣接車両等の障害物を回避するために運転者が意図的に車線から車両を逸脱させる際に仮想区画線に基づく車線逸脱防止機能が実行されると、著しい煩わしさ及び/又は違和感等を運転者に覚えさせてしまうこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、当該技術分野においては、運転者による意図的な車線からの逸脱時等において車線逸脱防止機能が過剰に働くことを防止することが可能な車両制御装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、車両区画線が検出されており且つ路側物が検出されている状態において路側物と車両とが接触する可能性が高い場合は車両区画線の位置ではなく路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0009】
具体的には、本発明に係る車両制御装置(以降、「本発明装置」と称呼される場合がある。)は、白線検出部と路側物検出部と情報出力部とを備える車両制御装置である。白線検出部は、車両が走行する車線の右側及び左側に敷設されている車両区画線を検出する。路側物検出部は、車両区画線に沿って敷設されている路側物を検出する。情報出力部は、白線検出部によって検出された車両区画線の位置及び路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力する。運転支援情報は、車線からの車両の逸脱を防止するための情報である。
【0010】
更に、本発明装置が備える情報出力部は、車両と車両区画線と路側物との状態に応じて運転支援情報を出力するための条件及び基礎となる対象を使い分けるように構成されている。具体的には、情報出力部は、以下に列挙する第1状態乃至第3状態のそれぞれにおいて、所定の条件が成立する場合に、所定の対象に基づいて運転支援情報を出力するように構成されている。
【0011】
第1状態とは、白線検出部によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部によって路側物が検出されている状態である。このような第1状態において、情報出力部は、路側物と車両とが接触する可能性である接触可能性が所定の閾値である第1閾値以上である場合、路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力する。
【0012】
第2状態とは、白線検出部によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部によって路側物が検出されていない状態である。このような第2状態において、情報出力部は、車線から車両が逸脱する可能性である逸脱可能性が所定の閾値である第2閾値以上である場合、白線検出部によって検出された車両区画線の位置に基づいて運転支援情報を出力する。
【0013】
第3状態とは、白線検出部によって車両区画線が検出されておらず且つ路側物検出部によって路側物が検出されている状態である。このような第3状態において、情報出力部は、路側物と車両とが接触する可能性である接触可能性が所定の閾値である第3閾値以上である場合、路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力する。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明装置においては、路側物検出部によって路側物が検出されている状態においては、白線検出部によって車両区画線が検出されていても、車両区画線の位置ではなく路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力するように情報出力部が構成されている。従って、前述した従来技術に係る運転支援装置(以降、「従来装置」と称呼される場合がある)のように実際に検出された車両区画線よりも車線の内側に設定された仮想区画線に基づく車線逸脱防止機能が実行されて煩わしさ及び/又は違和感等を運転者に覚えさせてしまう可能性を低減することができる。
【0015】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態及び実施例についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両制御装置(第1装置)の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1装置に相当する運転支援ECU1の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る車両制御装置(第2装置)に相当する運転支援ECU1の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例に係る車両制御装置(実施例装置)の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置(以降、「第1装置」と称呼される場合がある)について詳しく説明する。第1装置は、車両に搭載され、運転者に対して運転支援情報を出力する装置である。先ず、
図1を用いて、車両に搭載された第1装置の構成の一例について説明する。
【0018】
〈構成〉
図1は、第1装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る運転支援ECU(Electronic Control Unit)1(第1装置に相当する)は、周辺機器としての入力機器2及び出力機器3と通信可能に接続されている。
【0019】
入力機器2は、例えばCDDカメラ等の撮像装置を備え、運転支援ECU1へ画像情報を送信する機能部である。本発明の実施例について後述するように、入力機器2は、撮像装置に加えて、ナビゲーションシステム、操舵トルク検出センサ及びターンシグナル検出スイッチ等を備えていてもよい。これらから取得された情報は入力機器2から運転支援ECU1へと出力され、運転支援ECU1において、当該情報に基づいて、車両区画線及び路側物等の検出が行われる。
【0020】
尚、運転支援ECU1は、上記以外の方法により車両区画線及び路側物等を検出してもよい。例えば、運転支援ECU1は、入力機器2が備えるレーダ装置を用いて路側物等を検出してもよい。また、入力機器2が備える撮像装置は、CDDカメラに限定されるものではなく、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等、CCDカメラとは異なる方式を採用するカメラであってもよい。
【0021】
車両区画線とは、車両が走行する車線の右側及び左側に敷設されて車線を区切る物標である。車両区画線には、線状に連続して描かれる白線等の他に、例えば所定間隔をあけて間欠的に配置されて互いに隣り合うもの同士を結ぶことにより線状となる白色又は黄色の破線、ボッツドッツ(直径10cm程度の点)、及びキャッツアイ(反射板)等もまた含まれる。また、路側物とは、車両区画線に沿って敷設されている物体であり、例えばガードレール、側壁、中央分離帯、縁石、街路樹等が含まれる。
【0022】
出力機器3は、例えばディスプレイ及びスピーカ等の出力装置を備え、運転支援ECU1からの指示に従って、画像、文字及び音響等によって、運転支援情報を運転者に報知する。例えば、走行している車線から車両が右側に逸脱する可能性が高いと運転支援ECU1によって判定された場合、運転支援ECU1からの指示に基づいて、走行している車線から車両が右側に逸脱する旨の警報画面等がディスプレイに表示されたり、警告音及び/又は音声ガイダンス等がスピーカから出力されたりする。
【0023】
出力機器3は、上記に加えて、ステアリング制御ECUを含むステアリング制御装置を備えていてもよい。ステアリング制御ECUは、操舵制御を実行するECUであって、ここでは、運転支援ECU1からの指示に従って、ステアリングホイールに対して、予め設定された所定のトルクを付与する。例えば、走行している車線から車両が右側に逸脱する可能性が高いと運転支援ECU1によって判定された場合、運転支援ECU1からの指示に基づいて、ステアリング制御装置により、ステアリングホイールに対して、左側への操舵を促すトルクが付与される。
【0024】
図1に例示するように、第1装置に相当する運転支援ECU1は、白線検出部11と路側物検出部12と情報出力部13とを備える車両制御装置である。白線検出部11は、車両が走行する車線の右側及び左側に敷設されている車両区画線を検出する。より具体的には、白線検出部11は、例えばCCDカメラ等の入力機器2によって取得された情報に基づいて、車両が走行する車線の右側及び左側に敷設されている車両区画線を検出する。路側物検出部12は、車両区画線に沿って敷設されている路側物を検出する。より具体的には、路側物検出部12は、例えばCCDカメラ等の入力機器2によって取得された情報に基づいて、車両区画線に沿って敷設されている路側物を検出する。情報出力部13は、白線検出部11によって検出された車両区画線の位置及び路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力する。
【0025】
運転支援情報は、車線からの車両の逸脱を防止するための情報であり、当該情報に基づいて、例えば出力機器3としての出力装置によって警報画面、警告音及び/又は音声ガイダンス等が運転者に報知されたり、ステアリング制御装置によってステアリングホイールに対して所定のトルクが付与されたりする。
【0026】
尚、運転支援ECU1は、運転支援ECU1の適所に配設されたROM(Read Only Memory)等に予め格納された制御プログラムを運転支援ECU1の適所に配設されたマイクロコンピュータに実行させる。これにより、運転支援ECU1は、白線検出部11、路側物検出部12、情報出力部13として当該マイクロコンピュータを機能させる。
【0027】
〈動作〉
次に、第1装置の動作について以下に説明する。第1装置に相当する運転支援ECU1においては、車両と車両区画線と路側物との状態に応じて運転支援情報を出力するための条件及び基礎となる対象を使い分けるように、情報出力部13が構成されている。具体的には、情報出力部13は、以下に列挙する第1状態乃至第3状態のそれぞれにおいて、所定の条件が成立する場合に、所定の対象に基づいて運転支援情報を出力するように構成されている。
【0028】
第1状態とは、白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態である。このような第1状態において、情報出力部13は、路側物と車両とが接触する可能性である接触可能性が所定の閾値である第1閾値以上である場合、路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力する。
【0029】
第2状態とは、白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されていない状態である。このような第2状態において、情報出力部13は、車線から車両が逸脱する可能性である逸脱可能性が所定の閾値である第2閾値以上である場合、白線検出部11によって検出された車両区画線の位置に基づいて運転支援情報を出力する。
【0030】
第3状態とは、白線検出部11によって車両区画線が検出されておらず且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態である。このような第3状態において、情報出力部13は、路側物と車両とが接触する可能性である接触可能性が所定の閾値である第3閾値以上である場合、路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力する。
【0031】
尚、上述した第1閾値及び第3閾値は何れも「路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力するか否か」についての判断における接触可能性の比較対象である。これら2つの閾値は同じ値であってもよく或いは異なる値であってもよい。
【0032】
図2は、運転支援ECU1の動作の一例を示すフローチャートである。先ず、ステップS11において、運転支援ECU1により、入力機器2から取得された情報に基づき、第1状態が成立しているか否かが判定される。より具体的には、白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態にあるか否かが判定される。
【0033】
上記ステップS11において「第1状態が成立している」と判定された場合、次のステップS12において、運転支援ECU1により、路側物と車両とが接触する可能性である接触可能性Pcが算出される。この際、接触可能性Pcは、例えば路側物に関する情報(例えば、路側物の位置、形状、大きさ及び材質等)及び車両に関する情報(例えば、車両の位置、形状、大きさ、速度及び進行方向等)に基づいて算出される。
【0034】
次に、ステップS13において、運転支援ECU1により、路側物と車両とが接触する可能性が高く、両者の接触を回避する必要性が高いか否かが判定される。より具体的には、上記ステップS12において算出された接触可能性Pcが所定の閾値である第1閾値Th1以上であるか否かが判定される。
【0035】
上記ステップS13において「接触可能性Pcが第1閾値Th1以上である」と判定された場合は、路側物と車両とが接触する可能性が高く、両者の接触を回避する必要性が高い。従って、次のステップS14において、情報出力部13により、白線検出部11によって検出された車両区画線に基づく運転支援情報ではなく、路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づく運転支援情報が出力され、当該運転支援情報に基づき、出力機器3により、車線逸脱防止機能が実行される。その結果、路側物と車両とが接触する可能性が低減される。
【0036】
一方、上記ステップS13において「接触可能性Pcが第1閾値Th1未満である」と判定された場合は、路側物と車両とが接触する可能性が低く、両者の接触を回避する必要性が低い。従って、次のステップS14はスキップされる。
【0037】
上記のように、第1状態(白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態)においては、白線検出部11によって検出された車両区画線の位置ではなく路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づく運転支援情報が情報出力部13から出力機器3へと出力される。これにより、第1状態においては、路側物と車両とが接触する可能性が低減されると共に、前述した従来技術に係る運転支援装置(従来装置)のように実際に検出された車両区画線よりも車線の内側に設定された仮想区画線に基づく車線逸脱防止機能が実行されて煩わしさ及び/又は違和感等を運転者に覚えさせてしまう可能性が低減される。
【0038】
一方、上記ステップS11において「第1状態が成立していない」と判定された場合、次のステップS21において、運転支援ECU1により、入力機器2から取得された情報に基づき、第2状態が成立しているか否かが判定される。より具体的には、白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されていない状態にあるか否かが判定される。
【0039】
上記ステップS21において「第2状態が成立している」と判定された場合、次のステップS22において、運転支援ECU1により、車線から車両が逸脱する可能性である逸脱可能性Pdが算出される。この際、逸脱可能性Pdは、例えば車両区画線に関する情報(例えば、車両区画線の位置及び形状等)及び車両に関する情報(例えば、車両の位置、形状、大きさ、速度及び進行方向等)に基づいて算出される。
【0040】
次に、ステップS23において、運転支援ECU1により、車線から車両が逸脱する可能性が高いか否かが判定される。より具体的には、上記ステップS22において算出された逸脱可能性Pdが所定の閾値である第2閾値Th2以上であるか否かが判定される。
【0041】
上記ステップS23において「逸脱可能性Pdが第2閾値Th2以上である」と判定された場合、次のステップS24において、情報出力部13により、白線検出部11によって検出された車両区画線に基づく運転支援情報が出力され、当該運転支援情報に基づき、出力機器3により、車線逸脱防止機能が実行される。
【0042】
一方、上記ステップS23において「逸脱可能性Pdが第2閾値Th2未満である」と判定された場合は、車線から車両が逸脱する可能性が低い。従って、次のステップS24はスキップされる。
【0043】
上記のように、第2状態(白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されていない状態)においては、白線検出部11によって検出された車両区画線の位置に基づく運転支援情報が情報出力部13から出力機器3へと出力される。これにより、第2状態においては、従来装置と同様の車線逸脱防止機能が実行されて、車線から車両が逸脱する可能性が低減される。
【0044】
一方、上記ステップS21において「第2状態が成立していない」と判定された場合、次のステップS31において、運転支援ECU1により、入力機器2から取得された情報に基づき、第3状態が成立しているか否かが判定される。より具体的には、白線検出部11によって車両区画線が検出されておらず且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態にあるか否かが判定される。
【0045】
上記ステップS31において「第3状態が成立している」と判定された場合、次のステップS32において、運転支援ECU1により、路側物と車両とが接触する可能性である接触可能性Pcが算出される。この際、接触可能性Pcは、例えば路側物に関する情報(例えば、路側物の位置、形状、大きさ及び材質等)及び車両に関する情報(例えば、車両の位置、形状、大きさ、速度及び進行方向等)に基づいて算出される。
【0046】
次に、ステップS33において、運転支援ECU1により、路側物と車両とが接触する可能性が高く、両者の接触を回避する必要性が高いか否かが判定される。より具体的には、上記ステップS32において算出された接触可能性Pcが所定の閾値である第3閾値Th3以上であるか否かが判定される。尚、上述したように、第3閾値Th3は第1閾値Th1と同じ値であってもよく或いは異なる値であってもよい。
【0047】
上記ステップS33において「接触可能性Pcが第3閾値Th3以上である」と判定された場合は、路側物と車両とが接触する可能性が高く、両者の接触を回避する必要性が高い。従って、次のステップS34において、情報出力部13により、路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づく運転支援情報が出力され、当該運転支援情報に基づき、出力機器3により、車線逸脱防止機能が実行される。その結果、路側物と車両とが接触する可能性が低減される。
【0048】
一方、上記ステップS33において「接触可能性Pcが第3閾値Th3未満である」と判定された場合は、路側物と車両とが接触する可能性が低く、両者の接触を回避する必要性が低い。従って、次のステップS34はスキップされる。
【0049】
上記のように、第3状態(白線検出部11によって車両区画線が検出されておらず且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態)においては、路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づく運転支援情報が情報出力部13から出力機器3へと出力される。これにより、第3状態においては、従来装置と同様の車線逸脱防止機能が実行されて、路側物と車両とが接触する可能性が低減される。
【0050】
〈効果〉
以上のように、第1装置によれば、第1状態(白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態)において、白線検出部11によって検出された車両区画線の位置ではなく路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づく運転支援情報が情報出力部13から出力機器3へと出力される。これにより、第1状態において、路側物と車両とが接触する可能性が低減されると共に、前述した従来技術に係る運転支援装置(従来装置)のように実際に検出された車両区画線よりも車線の内側に設定された仮想区画線に基づく車線逸脱防止機能が実行されて煩わしさ及び/又は違和感等を運転者に覚えさせてしまう可能性が低減される。
【0051】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る車両制御装置(以降、「第2装置」と称呼される場合がある)について詳しく説明する。上述したように、第1装置によれば、第1状態(白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態)においては、白線検出部11によって検出された車両区画線の位置ではなく路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づく運転支援情報が情報出力部13から出力機器3へと出力される。
【0052】
しかしながら、走行している車線を画定する車両区画線と路側物との間に障害物が存在している場合、路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づく運転支援が行われると、当該障害物に車両が接触してしまう可能性がある。また、路側物と車両との間に十分な距離がある場合、例えば他の車両等の他の物体が路側物と車両との間を通過する可能性がある。従って、このような場合において路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づく運転支援が行われると、路側物と車両との間を通過する物体(以降、「通過物」と称呼される場合がある)に車両が接触してしまう可能性がある。従って、上記のような場合は、第1状態が成立している場合であっても、白線検出部によって検出された車両区画線の位置に基づく運転支援情報が出力機器に提供されるべきである。
【0053】
〈構成〉
そこで、第2装置においては、たとえ第1状態が成立していても、車両区画線と路側物との間に障害物が存在している場合及び路側物と車両との間に十分な距離がある場合においては、上述した第2状態が成立している場合と同様に、白線検出部によって検出された車両区画線の位置に基づく運転支援情報を出力するように情報出力部が構成されている。
【0054】
より具体的には、第2装置は、上述した第1装置であって、第1状態においても、第4状態においては、車線から車両が逸脱する可能性である逸脱可能性が所定の閾値である第2閾値以上である場合は、白線検出部によって検出された車両区画線の位置に基づいて運転支援情報を出力するように、情報出力部が構成されている、車両制御装置である。
【0055】
第4状態とは、車両区画線と路側物との間に車両の進行の妨げとなり得る物体である障害物が存在しているか又は路側物と車両との間の距離が所定の閾値である第4閾値以上である状態である。即ち、第4状態においては、路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づく運転支援が行われると、上述した障害物及び/又は通過物に車両が接触してしまう可能性がある。
【0056】
従って、第2装置によれば、第1状態が成立している場合であっても第4状態が成立している場合は、車線から車両が逸脱する可能性(逸脱可能性Pd)の高さに応じて運転支援情報が情報出力部13から出力機器3へと出力される。
【0057】
図3は、第2装置に相当する運転支援ECU1の動作の一例を示すフローチャートである。
図3に例示するフローチャートは、ステップS11とステップS12との間にステップS41及びステップS42が追加されている点を除き、
図2に例示したフローチャートと同様である。従って、以下の説明においては、主としてステップS41及びステップS42の前後における処理の流れについて詳しく述べる。
【0058】
第2装置においても、上述した第1装置と同様に、先ず、ステップS11において、運転支援ECU1により、入力機器2から取得された情報に基づき、白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態にあるか否かが判定される。
【0059】
上記ステップS11において「第1状態が成立している」と判定された場合、上述した第1装置においては、次のステップS12において、運転支援ECU1により、路側物と車両とが接触する可能性である接触可能性Pcが算出される。しかしながら、第2装置においては、上記ステップS11において「第1状態が成立している」と判定された場合、次のステップS41において、車両区画線(白線)と路側物との間がフリースペースであるか否かが判定される。換言すれば、ステップS41においては、車両区画線と路側物との間に障害物が存在していない状態であるか否かが判定される。
【0060】
上記ステップS41において「車両区画線(白線)と路側物との間がフリースペースではない」と判定された場合は、車両区画線と路側物との間に何等かの障害物が存在する。この場合、路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づく運転支援が行われると当該障害物に車両が接触してしまう可能性がある。従って、この場合は、白線検出部11によって検出された車両区画線に基づく運転支援を行うことが望ましい。そこで、上述したステップS22へと進み、運転支援ECU1により、車線から車両が逸脱する可能性である逸脱可能性Pdが算出される。そして、次のステップS23において「逸脱可能性Pdが第2閾値Th2以上である」と判定された場合、次のステップS24において、情報出力部13により、白線検出部11によって検出された車両区画線に基づく運転支援情報が出力され、当該運転支援情報に基づき、出力機器3により、車線逸脱防止機能が実行される。
【0061】
一方、上記ステップS41において「車両区画線(白線)と路側物との間がフリースペースである」と判定された場合は、次のステップS42において、路側物と車両との間隔が通過物に対して十分に狭いか否かが判定される。換言すれば、ステップS42においては、路側物と車両との間の距離Dが所定の閾値である第4閾値Th4未満であるか否かが判定される。
【0062】
上記ステップS42において「路側物と車両との間の距離Dが所定の閾値である第4閾値Th4未満ではない」と判定された場合は、路側物と車両との間に十分な大きさの空間が存在する。この場合は、例えば他の車両等の他の物体が路側物と車両との間を通過する可能性がある。従って、このような場合において路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づく運転支援が行われると、路側物と車両との間を通過する物体(以降、「通過物」と称呼される場合がある)に車両が接触してしまう可能性がある。従って、この場合もまた、上述したステップS22へと進み、運転支援ECU1により、車線から車両が逸脱する可能性である逸脱可能性Pdが算出される。そして、次のステップS23において「逸脱可能性Pdが第2閾値Th2以上である」と判定された場合、次のステップS24において、情報出力部13により、白線検出部11によって検出された車両区画線に基づく運転支援情報が出力され、当該運転支援情報に基づき、出力機器3により、車線逸脱防止機能が実行される。
【0063】
一方、上記ステップS42において「路側物と車両との間の距離Dが所定の閾値である第4閾値Th4未満である」と判定された場合は、路側物と車両との間に十分な大きさの空間が存在しない。この場合は、路側物と車両との間を通過物が通過する可能性は低いので、路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づく運転支援を行っても差し支え無い。従って、この場合は、次のステップS12へと進み、運転支援ECU1により、路側物と車両とが接触する可能性である接触可能性Pcが算出される。そして、次のステップS13において「接触可能性Pcが第1閾値Th1以上である」と判定された場合、次のステップS14において、情報出力部13により、白線検出部11によって検出された車両区画線に基づく運転支援情報ではなく、路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づく運転支援情報が出力され、当該運転支援情報に基づき、出力機器3により、車線逸脱防止機能が実行される。
【0064】
〈効果〉
以上のように、第2装置においては、第1状態(白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態)が成立している場合であっても第4状態(車両区画線と路側物との間に車両の進行の妨げとなり得る物体である障害物が存在しているか又は路側物と車両との間の距離が所定の閾値である第4閾値以上である状態)が成立している場合は、白線検出部によって検出された車両区画線の位置に基づく運転支援情報が出力機器に提供される。従って、第2装置によれば、第4状態が成立している場合において路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づく運転支援が行われて通過物(路側物と車両との間を通過する物体)に車両が接触してしまう可能性を低減することができる。
【実施例】
【0065】
本発明の1つの実施例に係る車両制御装置(以降、「実施例装置」と称呼される場合がある)について図面を参照しながら詳しく説明する。
図4は、実施例装置の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、本実施例に係る運転支援ECU1(実施例装置に相当する)は、周辺機器としての入力機器2及び出力機器3と通信可能に接続されている。
【0066】
入力機器2は、CDDカメラ21、ナビゲーションシステム22、操舵トルク検出センサ(以降、「操舵センサ」と略称する)23及びターンシグナル検出スイッチ(以降、「ターンシグナルSW」と略称する)24を備える。
【0067】
CDDカメラ21は、CDD(Charge Coupled Device)を備え、車両の前方及び側方等の画像情報を生成する。ナビゲーションシステム22は、地図情報を備え、GPS(Global Positioning System)等を利用して、車両の地図上の位置である車両位置を検出し、地図上の車両位置をディスプレイに表示する。操舵センサ23は、運転者によってステアリングホイールを介して操舵された結果として発生する操舵トルクを検出する。ターンシグナルSW24は、運転者によってターンシグナルレバーを介して操作されたターンシグナルランプの点滅指示操作の結果を検出する。
【0068】
入力機器2を構成するこれらの装置から取得された情報は、入力機器2から運転支援ECU1へと出力され、運転支援ECU1において、当該情報に基づいて、車両区画線及び路側物等の検出が行われる。車両区画線及び路側物については、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置(第1装置)に関する説明において既に述べたので、ここでの説明は省略する。
【0069】
出力機器3は、ディスプレイ31、スピーカ32及びステアリング制御装置33を備える。ディスプレイ31は、運転席の前方等に配設されたLCD(Liquid Crystal Display)等を含んでなり、運転支援ECU1からの指示に従って、運転者から視認可能に画像及び文字等(警報画面)を表示する。スピーカ32は、運転席の側方等に配設され、運転支援ECU1からの指示に従って、音声ガイダンス及び/又は音響等を運転者に対して出力する。ステアリング制御装置33は、操舵を制御するための図示しないステアリング制御ECUを備え、運転支援ECU1からの指示に従って、ステアリングホイールに対して予め設定された所定のトルクを付与する。
【0070】
図4に示すように、実施例装置に相当する運転支援ECU1は、白線検出部11と路側物検出部12と情報出力部13とを備える車両制御装置である。白線検出部11は、入力機器2が備えるCCDカメラ21から取得された画像情報に基づいて、車両が走行する車線の右側及び左側に敷設されている車両区画線を検出する。路側物検出部12は、CCDカメラ21から取得された画像情報に基づいて、車両区画線に沿って敷設されている路側物を検出する。情報出力部13は、白線検出部11によって検出された車両区画線の位置及び路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づいて運転支援情報を出力する。
【0071】
上述したように、運転支援情報は、車線からの車両の逸脱を防止するための情報であり、当該情報に基づいて、出力機器3としての出力装置によって警報画面、警告音及び/又は音声ガイダンス等が運転者に報知されたり、ステアリング制御装置によってステアリングホイールに対して所定のトルクが付与されたりする。
【0072】
実施例装置の動作については、第1装置及び第2装置の動作に関する説明において
図2及び
図3に例示したフローチャートを参照しながら述べたものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0073】
実施例装置によれば、上述した第1装置と同様に、第1状態(白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態)において、白線検出部11によって検出された車両区画線の位置ではなく路側物検出部12によって検出された路側物の位置に基づく運転支援情報が情報出力部13から出力機器3へと出力される。これにより、第1状態において、路側物と車両とが接触する可能性が低減されると共に、前述した従来技術に係る運転支援装置(従来装置)のように実際に検出された車両区画線よりも車線の内側に設定された仮想区画線に基づく車線逸脱防止機能が実行されて煩わしさ及び/又は違和感等を運転者に覚えさせてしまう可能性が低減される。
【0074】
また、上述した第2装置と同様に、実施例装置においても、第1状態(白線検出部11によって車両区画線が検出されており且つ路側物検出部12によって路側物が検出されている状態)が成立している場合であっても第4状態(車両区画線と路側物との間に車両の進行の妨げとなり得る物体である障害物が存在しているか又は路側物と車両との間の距離が所定の閾値である第4閾値以上である状態)が成立している場合は、白線検出部によって検出された車両区画線の位置に基づく運転支援情報が出力機器に提供される。従って、実施例装置によれば、第4状態が成立している場合において路側物検出部によって検出された路側物の位置に基づく運転支援が行われて通過物(路側物と車両との間を通過する物体)に車両が接触してしまう可能性を低減することができる。
【0075】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0076】
1…運転支援ECU
11…白線検出部
12…路側物検出部
13…情報出力部
2…入力機器
21…CCDカメラ
22…ナビゲーションシステム
23…操舵センサ
24…ターンシグナルSW
3…出力機器
31…ディスプレイ
32…スピーカ
33…ステアリング制御装置