(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】メモリー、および、カートリッジ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
B41J2/175 175
B41J2/175 119
B41J2/175 131
(21)【出願番号】P 2021132523
(22)【出願日】2021-08-17
【審査請求日】2024-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 伴雄
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038207(JP,A)
【文献】特開2016-155278(JP,A)
【文献】特開2015-020315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21 -2/215
29/00 -29/70
G06K 7/00 -7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の消費完了後に再び前記液体を充填して再使用可能なカートリッジに取り付けられるメモリーであって、
前記カートリッジに前記液体が充填されてから前記液体の消費が完了するまでの1回分の使用期間において使用される第1種記憶領域と、
前記1回分の使用期間の集合である前記カートリッジの全使用期間において使用される第2種記憶領域と、を備え、
前記第1種記憶領域は、前記1回分の使用期間ごとに異なる領域が使用される複数の個別領域を有
し、
前記第2種記憶領域は、
前記カートリッジに前記液体を再充填する場合において、既に書き込まれていた第1過去データを消去した後に新たな第1データを書き込む第1書き込み領域と、
前記再充填する場合において、既に書き込まれていた第2過去データを元に新たな第2データを書き込んで更新する第2書き込み領域と、を有し、
前記第2種記憶領域は、前記カートリッジへの前記液体の充填毎に生成される製造に関する製造データと、前記全使用期間における前記カートリッジの印刷装置への総装着回数データと、を記憶し、
前記製造データは、前記第1データとして前記第1書き込み領域に記憶されており、
前記総装着回数データは、前記第2データとして前記第2書き込み領域に記憶されている、メモリー。
【請求項2】
請求項
1に記載のメモリーであって、
前記第2書き込み領域は、さらに、最初に前記液体を前記カートリッジに充填して製造した日を表す初回製造日からの経過の程度を表す経過データを記憶する、メモリー。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載のメモリーであって、
前記複数の個別領域の数は、カートリッジへの前記液体の想定される充填回数以上に設定されている、メモリー。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載のメモリーであって、
前記複数の個別領域のうちで使用する使用個別領域を決定するために用いる使用制御データを記憶する、メモリー。
【請求項5】
請求項
4に記載のメモリーであって、
前記使用制御データは、前記第2種記憶領域に記憶された前記液体の前記カートリッジへの再充填の回数を表す再充填回数データである、メモリー。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載のメモリーであって、
前記複数の個別領域はそれぞれ、前記1回分の使用期間における前記カートリッジに充填された前記液体の消費量に関する消費データを記憶する、メモリー。
【請求項7】
カートリッジであって、
液体を収容する液体収容部と、
前記液体収容部の前記液体を供給する液体供給部と、
請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載のメモリーと、を備える、カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カートリッジに取り付けられるメモリーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再利用が可能なカートリッジにおいて、メモリーを有する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、カートリッジの未使用時にメモリーに記憶されていた初期値データをカートリッジ再生システムの記憶部から読み出して、カートリッジの再利用を行う際に、メモリーに書き込んでいる。この初期値データは、記録装置によって変更される可能性のあるデータ、例えばトナー残量などである。メモリーに記憶されたデータがカートリッジの使用状況に応じて記録装置によって書き換えられる場合、再利用可能なカートリッジに取り付けられるメモリーでは、データのメモリーへの書き換え回数は多くなる。これにより、メモリーが劣化する可能性が生じ得る。メモリーが劣化した場合、データを正しく記憶できない不具合が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示の第1形態によれば、液体の消費完了後に再び前記液体を充填して再使用可能なカートリッジに取り付けられるメモリーが提供される。このメモリーは、前記カートリッジに前記液体が充填されてから前記液体の消費が完了するまでの1回分の使用期間において使用される第1種記憶領域と、前記1回分の使用期間の集合である前記カートリッジの全使用期間において使用される第2種記憶領域と、を備え、前記第1種記憶領域は、前記1回分の使用期間ごとに異なる領域が使用される複数の個別領域を有する。
【0006】
(2)本開示の第2形態によれば、カートリッジが提供される。このカートリッジは、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部の前記液体を供給する液体供給部と、上記形態に記載のメモリーと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】本実施形態に係る回路基板の構成を示す第1図。
【
図6】カートリッジがキャリッジの装着部4に装着される様子を示す図。
【
図9】印刷装置の構成を一つのカートリッジと共に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
図1は、本開示の実施形態としての印刷システム1000の概略構成を示す説明図である。印刷システム1000は、印刷装置20と、印刷装置20に着脱可能に装着される複数のカートリッジ100と、コンピューター90と、を備えている。印刷装置20は、液体としてのインクを印刷媒体PAに吐出して印刷を行うインクジェットプリンターである。印刷装置20は、コネクター80を介して、コンピューター90とデータ通信可能に接続されている。
【0009】
印刷装置20は、副走査送り機構と、主走査送り機構と、ヘッド駆動機構と、装置制御部40と、を備えている。副走査送り機構は、紙送りモーター22とプラテン26とを備えており、紙送りモーター22の回転をプラテン26に伝達することによって印刷媒体PAを副走査方向に搬送する。主走査送り機構は、キャリッジモーター32と、プーリー38と、キャリッジモーター32とプーリー38との間に張設された駆動ベルト36と、プラテン26の軸と並行に設けられた摺動軸34と、を備えている。摺動軸34は、駆動ベルト36に固定されたキャリッジ30を摺動可能に保持している。キャリッジモーター32の回転は、駆動ベルト36を介してキャリッジ30に伝達され、キャリッジ30は、摺動軸34に沿ってプラテン26の軸方向である主走査方向に往復動する。ヘッド駆動機構は、キャリッジ30を備えている。キャリッジ30は、カートリッジ100を装着可能な装着部4と、インクを吐出する印刷ヘッド5と、後述する
図6に示す液体導入部6と、後述する
図6に示す接続機構400と、後述する
図6に示す副制御基板500と、を備えている。ヘッド駆動機構は、キャリッジ30の印刷ヘッド5を駆動して印刷媒体PA上にインクを吐出させる。
【0010】
装置制御部40は、上述した各機構を制御して印刷処理を実現する。装置制御部40はバス46を介してキャリッジ30の後述する副制御基板500と電気的に接続されている。装置制御部40は、例えば、コンピューター90を介してユーザーの印刷ジョブを受信し、受信した印刷ジョブの内容に基づき、上述した各機構を制御して印刷動作を実行する。また装置制御部40は、カートリッジ100が装着部4に装着されたか否かの装着判定や、回路基板120との間でデータ通信を行う。
【0011】
キャリッジ30の装着部4は、複数のカートリッジ100を着脱自在に装着できる。すなわち、印刷ヘッド5に液体としてのインクを供給するカートリッジ100が、ユーザーの操作により取り付け、取り外し可能に、キャリッジ30の装着部4に備えられる。本実施形態では、装着部4に装着できるカートリッジ100の数は4つである。4つのカートリッジ100には、異なる色または種類のインクが収容されている。複数のカートリッジ100を区別して用いる場合には、符号100A,100B,100C,100Dを用いる。4つのカートリッジ100A~100Dはそれぞれ、装着部4の予め定められた装着位置に装着される。なお、他の実施形態では、装着部4に装着できるカートリッジ100の数は4つに限定されるものではなく、4つより少なくても多くてもよい。印刷装置20は、さらに、ユーザーが印刷装置20の各種の設定を行ったり、印刷装置20のステータスを確認したりする操作部70を備えている。操作部70は、印刷装置20のステータスなどの各種情報を表示するための表示部72を有する。
【0012】
なお、本実施形態では、印刷システム1000は、カートリッジ100がキャリッジ30の装着部4に装着されるオンキャリッジと呼ばれるタイプであったが、これに限定されるものではない。例えば、印刷システム1000は、カートリッジ100がキャリッジ30と異なる他の場所に位置する装着部に装着されるオフキャリッジと呼ばれるタイプであってもよい。
【0013】
図2および
図3を用いて、カートリッジ100の構成について説明する。
図2は、カートリッジ100の構成を示す第1斜視図である。
図3は、カートリッジ100の構成を示す第2斜視図である。
図2以降には必要に応じて、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を付している。
図2では、X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X方向,+Y方向,+Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向と逆の方向が、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ-X方向,-Y方向,-Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX方向,Y方向,Z方向とよぶ。これ以降に示す図及び説明についても同様である。他の図に描かれたXYZ軸は、
図2のXYZ軸に方向が対応している。カートリッジ100についてのX軸、Y軸、Z軸の向きは、X方向とY方向とに平行な水平面に印刷装置20が配置され、かつ、印刷装置20にカートリッジ100が装着された状態を基準としている。
【0014】
図2および
図3に示すように、カートリッジ100の外観形状は略直方体形状である。
図2に示すように、カートリッジ100は、外殻を形成する本体101と、本体101に取り付けられた回路基板120と、を備えている。本体101は、-Y方向側の壁である前壁101wfと、+Z方向側の壁である底壁101wbを含む。また本体101は、液体としてのインクを収容するための液体収容部150を有する。前壁101wfは、底壁101wbと交差、本実施形態では実質的に直交している。本体101の底壁101wbは、キャリッジ30の装着部4に装着されたときに、キャリッジ30に対して液体収容部150の液体を供給する液体供給部104を備える。液体供給部104は、液体収容部150と連通している。液体供給部104の開口104opは、フィルム104fによって封止されている。カートリッジ100をキャリッジ30に装着することによって、フィルム104fが破られ、
図6に示すキャリッジ30が有する液体導入部6が液体供給部104に挿入される。液体収容部150に収容されているインクは、液体導入部6を介して、印刷装置20の印刷ヘッド5に供給される。液体収容部150のインクが消費されるに伴って、液体収容部150には、図示しない大気開放孔から空気が導入される。
【0015】
ここで、フィルム104fによって封止されているフィルム面を液体供給部104の開口端とする。Z方向は、液体供給部104の開口端に垂直な方向である。また、+Z方向は、液体供給部104の開口方向と同じである。また、X方向は、キャリッジ30に装着される複数のカートリッジ100A~100Dの配列方向であり、カートリッジ100の幅方向である。また本実施形態では、Z方向は、重力方向に沿った方向であり、+Z方向は重力方向であり、-Z方向は反重力方向である。また、カートリッジ100を印刷装置20のキャリッジ30に装着する方向は装着方向MDであり、装着方向MDの成分を含む方向を第1方向FDとする。本実施形態では、装着方向MDと第1方向FDは同一方向であり、+Z方向である。なお、他の実施形態では、装着方向MDと第1方向FDとは同一方向でなくてもよい。第1方向FDは真っ直ぐにのびる方向であり、本実施形態では液体供給部104の開口方向である。第1方向FDは、回路基板120の表面120faに実質的に沿った方向である。他の実施形態において、表面120faが装着方向MDに対して傾斜している場合には、装着方向MDと第1方向FDとは同一方向ではなく、異なる方向となる。
【0016】
回路基板120は、本体101の前壁101wfに取り付けられている。回路基板120は、複数の端子から構成される端子群290を備えている。本実施形態では、端子群290を構成する端子は9つ設けられている。端子群290の詳細については後述する。
【0017】
カートリッジ100は再利用可能である。つまり、カートリッジ100は、収容された液体が印刷装置20によって消費され、ゼロまたは所定の閾値以下となった消費完了後に、例えば業者によって回収されて液体が再び液体収容部150に充填されることで製造、すなわち再利用される。カートリッジ100の液体収容部150に液体が再充填される際には、回路基板120のメモリーに記憶される情報の少なくとも一部も書き換えられる。メモリーの詳細は後述する。
【0018】
図4は、本実施形態に係る回路基板120の構成を示す第1図である。
図5は、回路基板120の構成を示す第2図である。回路基板120は、
図4に示すように表面120faに端子群290と、
図5に示すように裏面120fbに不揮発性のメモリー130とを有する。
図4に示すように、端子群290は、メモリー端子群230と装着検出端子群210とを備える。
【0019】
メモリー端子群230は、メモリー130用の端子である。メモリー端子群230は、データ端子235と、クロック端子232と、電源端子233と、リセット端子231と、接地端子234とを含む。データ端子235は、メモリー130と印刷装置20との間でインク色データや各カートリッジ100に収容された液体の消費量に関する消費データなどの各種データを送受信するために用いられる。
【0020】
装着検出端子群210は、第1検出端子211と、第2検出端子212と、第3検出端子213と、第4検出端子214とを備える。4つの検出端子211~214は、メモリー端子群230の集合の4隅に配置されている。
【0021】
各端子211,212,213,214,231,232,233,234,235は、略矩形状に形成され、第1方向FDと垂直な列を2列形成するように配置されている。つまり、2列の方向は、第1方向FDと垂直な第2方向SDに平行である。2つの列同士が並ぶ方向は、第1方向FDに沿った方向である。2つの列のうち、第1方向FD側に位置する列を第1列R1と呼び、第1方向FDとの反対側に位置する列を第2列R2と呼ぶ。各端子211,212,213,214,231,232,233,234,235の中央には、後述する装置端子と接触する接点cpが存在する。
【0022】
端子群290の各端子211,212,213,214,231,232,233,234,235はそれぞれ、図示しない回路基板120の表裏面の配線パターン層や回路基板120に配置されたスルーホールを介して、メモリー130に接続されている。
【0023】
図5に示すメモリー130は、NAND型のフラッシュメモリーである。なお、他の実施形態では、メモリー130は、NOR型のフラッシュメモリーやEEPROMなどのメモリーであってもよい。メモリー130は、メモリー制御部136と、複数のメモリーセルによって構成された記憶部138と、を有する。記憶部138を構成する各メモリーセルは、1ビットのデータを記憶可能である。また、メモリー130は印刷装置20の装置制御部40とデータ通信が可能である。
【0024】
図6は、カートリッジ100がキャリッジ30の装着部4に装着される様子を示す図である。
図7は、接続機構400を示す第1の図である。
図8は、接続機構400を示す第2の図である。
【0025】
図6に示すように、キャリッジ30は、装着部4と、印刷ヘッド5と、液体導入部6と、接続機構400と、副制御基板500とを備える。装着部4は、カートリッジ100を装着する装着室65を形成する。印刷ヘッド5は、複数のノズルと、複数の圧電素子と、を含み、各圧電素子に印加される電圧に応じて各ノズルからインク滴を吐出し、印刷媒体PA上にドットを形成する。液体導入部6は、印刷ヘッド5上に配置され、カートリッジ100から印刷ヘッド5にインクを供給する。本実施形態では、液体導入部6は、カートリッジ100A~100Dの数に対応して6つ設けられている。接続機構400は、副制御基板500と、カートリッジ100の回路基板120とを電気的に接続する。接続機構400は、カートリッジ100A~100Dの数に対応して4つ設けられている。
図8に示すように、副制御基板500は中継部50を有する。中継部50は、装置制御部40と協働してカートリッジ100に関連する制御を行う。
【0026】
図6に示すように、カートリッジ100は、装着方向MDに挿入されることにより、印刷装置20の装着部4に装着される。このようにして、カートリッジ100は、印刷装置20に着脱可能に装着される。また、カートリッジ100が印刷装置20に正しく装着されたときには、回路基板120は、接続機構400や副制御基板500やバス46を介して印刷装置20の装置制御部40に電気的に接続される。
【0027】
図7に示すように、接続機構400は、端子保持部405と、端子保持部405に保持された、導電性と弾性とを備えた複数の接点形成部材403と、を備える。端子保持部405は、複数のスリット301を有する。接点形成部材403は、スリット301に嵌め込まれる。本実施形態では、各接続機構400について、接点形成部材403は、端子群290の端子の数と同じ9つ設けられている。
【0028】
図8に示すように、接点形成部材403は、端子群290と副制御基板500の基板端子590とを電気的に接続する部材である。基板端子590は、装着室65ごとに設けられている。また各基板端子590は、端子群290の数に対応して9つ設けられている。9つの基板端子590を区別して用いる場合には、符号「511」、「512」、「513」、「514」、「531」、「532」、「533」、「534」、「535」を用いる。接点形成部材403のうち、装着室65側に突出した部分は、端子群290と接触する装置端子490を形成する。また接点形成部材403のうち、副制御基板500側に突出した部分は、基板端子590と接触する中継端子439を形成する。9つの接点形成部材403を区別して用いる場合には末尾に「A」~「I」を付す。また9つの装置端子490を区別して用いる場合には、符号「411」、「412」、「413」、「414」、「431」、「432」、「433」、「434」、「435」を用いる。また、9つの中継端子439を区別して用いる場合には、符号「411a」、「412a」、「413a」、「414a」、「431a」、「432a」、「433a」、「434a」、「435a」を用いる。また、9つの基板端子590を区別して用いる場合には、符号「511」、「512」、「513」、「514」、「531」、「532」、「533」、「534」、「535」を用いる。
【0029】
装置端子411と中継端子411aとを有する接点形成部材403Aは、第1検出端子211と基板端子511とを電気的に接続する。装置端子412と中継端子412aとを有する接点形成部材403Bは、第2検出端子212と基板端子512とを電気的に接続する。装置端子413と中継端子413aとを有する接点形成部材403Cは、第3検出端子213と基板端子513とを電気的に接続する。装置端子414と中継端子414aとを有する接点形成部材403Dは、第4検出端子214と基板端子514とを電気的に接続する。装置端子431と中継端子431aとを有する接点形成部材403Eは、リセット端子231と基板端子531とを電気的に接続する。装置端子432と中継端子432aとを有する接点形成部材403Fは、クロック端子232と基板端子532とを電気的に接続する。装置端子433と中継端子433aとを有する接点形成部材403Gは、電源端子233と基板端子533とを電気的に接続する。装置端子434と中継端子434aとを有する接点形成部材403Hは、接地端子234と基板端子534とを電気的に接続する。装置端子435と中継端子435aとを有する接点形成部材403Iは、データ端子235と基板端子535とを電気的に接続する。
【0030】
図9は、印刷装置20の構成を一つのカートリッジ100と共に示す図である。
図10は、記憶部138を説明するための図である。
図11は、装着判定について説明するための図である。
【0031】
図9に示すように、回路基板120のメモリー130は、メモリー制御部136と、記憶部138と、を備える。メモリー制御部136は、メモリー130の動作を制御する。例えば、メモリー制御部136は、印刷装置20から送信されたコマンドに応じて記憶部138へのデータの書き込み動作や読み出し動作を行う。
【0032】
図10に示すように、記憶部138は、アドレスA0~Anにより指定される複数のメモリーセルにより構成された記憶領域SAを有する。記憶領域SAは、アドレスA0~A5により指定される第1種記憶領域SA1と、アドレスA6~Axにより指定される第2種記憶領域SA2とを備える。第1種記憶領域SA1と第2種記憶領域SA2とはそれぞれ、書換可能領域であり、データの読み出しに加え、既に記憶されていたデータを消去して新たなデータを書き込むデータの書き換えが可能なように設定されている。なお、メモリー制御部136によって、書換可能領域のアドレスと、読み出しのみが可能なリードオンリー領域のアドレスの指定を予め行うことで、書換可能領域とリードオンリー領域の設定が行われる。
【0033】
第1種記憶領域SA1は、異なるアドレスにより指定された複数の個別領域IR1~IR6を有する。複数の個別領域IR1~IR6は、カートリッジ100の1回分の使用期間ごとに異なる領域が使用される。1回分の使用期間とは、カートリッジ100に液体が充填されてから、印刷装置20に装着されて液体が消費されてカートリッジ100の液体残量がゼロまたは所定の閾値以下となる、すなわち液体の消費が完了するまでの期間である。各個別領域IR1~IR6の数は、想定される液体のカートリッジ100への充填回数以上に設定されている。本実施形態では、カートリッジ100は、初期充填の1回分の充填回数と、再利用のための5回分の再充填回数の合計6回の充填回数を想定している。よって、個別領域IR1~IR6の数は、6つに設定されている。想定される液体のカートリッジ100への再充填回数は、例えば、カートリッジ100の装着部4への着脱による摩耗などや経年劣化などを元に予想されるカートリッジ100の製品としての寿命までの期間を考慮して設定される。
【0034】
第1個別領域IR1は、アドレスA0で指定される。第2個別領域IR2は、アドレスA1で指定される。第3個別領域IR3は、アドレスA2で指定される。第4個別領域IR4は、アドレスA3で指定される。第5個別領域IR5は、アドレスA4で指定される。第6個別領域IR6は、アドレスA5で指定される。各個別領域IR1~IR6はそれぞれ、カートリッジの1回分の使用期間におけるカートリッジ100に充填された液体の消費量に関する消費データを記憶する。消費データは、例えば、消費される前の初期充填量[mg]に対する消費されたインク量[mg]の割合[%]を示す値である。消費データは、液体が充填されたカートリッジ100の初期状態では「0」を示す値であり、カートリッジ100の液体が消費されて残量がゼロになった場合には「100」を示す値となる。カートリッジ100の使用回数に応じて指定されるアドレスA0~A5の個別領域IR1~IR6に記憶されたいずれかの消費データは、印刷装置20が印刷動作やクリーニング動作によって、予め定めた量以上の液体がカートリッジ100から消費される毎に、印刷装置20の制御装置85から消費データを書き込むコマンドが書き込み対象のカートリッジ100のメモリー制御部136に送信されることで、更新される。
【0035】
個別領域IR1~IR6において、カートリッジ100の初回使用時や再使用時の異なる使用回数番目において、異なるアドレス、すなわち異なる領域が使用される。本実施形態では、初回使用期間から5回目の再充填が完了した後の6回目の使用期間の順に、第1個別領域IR1~第6個別領域IR6の順に使用される。第1個別領域IR1は、初回使用期間の消費データである第1消費データを記憶する。第2個別領域IR2は、2回目の使用期間の消費データである第2消費データを記憶する。第3個別領域IR3は、3回目の使用期間の消費データである第3消費データを記憶する。第4個別領域IR4は、4回目の使用期間の消費データである第4消費データを記憶する。第5個別領域IR5は、5回目の使用期間の消費データである第5消費データを記憶する。第6個別領域IR6は、6回目の使用期間の消費データである第6消費データを記憶する。上記のように、第1種記憶領域SA1のデータについて、同じ種類のデータ、本実施形態では同じ消費データであっても、カートリッジ100に液体が充填されるごとに異なるアドレスの領域に記憶されて、書き換えが行われる。
【0036】
第2種記憶領域SA2は、カートリッジ100の1回分の使用期間の集合であるカートリッジ100の全使用期間において使用される複数の書き込み領域WRを有する。詳細には、第2種記憶領域SA2は、第1書き込み領域WR1と、第2書き込み領域WR2とを有する。
【0037】
第1書き込み領域WR1は、カートリッジ100に液体を再充填する場合において、既に書き込まれていた第1過去データを消去した後に、新たな第1データを書き込む領域である。つまり、第1書き込み領域WR1は、過去に書き込まれていたデータをゼロにクリアして再利用する領域である。第1書き込み領域WR1に書き込まれる第1過去データや第1データとしてのデータは、第1種記憶領域SA1におけるデータの書き込み頻度よりも書き込み頻度が少ないデータであって、カートリッジ100に液体が充填される毎に、過去のデータと関連なく生成されるデータを含む。例えば、本実施形態では、第1書き込み領域WR1に書き込まれるデータは、カートリッジ100の製造に関する製造データである。製造データは、過去のデータと関連なく生成されるデータであり、カートリッジ100への液体の充填毎に生成される製造に関するデータである。製造データは、例えば、カートリッジ100に充填される液体の色を示す液体色データと、カートリッジ100の製造日を示すデータと、カートリッジ100に充填された液体の量を示すデータと、カートリッジ100を識別するためのシリアル番号を示すデータとを有する。カートリッジ100の製造日は、本実施形態では、初回にカートリッジ100に液体が充填されてカートリッジ100が製造された初回製造日、詳細には初回製造年月日であるが、これに代えて、またはこれに加えて再充填して再びカートリッジ100を製造した日であってもよい。なお、製造データは、上記項目に限定されるものはなく、上記項目の一部を省略してもよいし、他の項目を含んでいてもよい。なお、製造日を示すデータが初回製造日を示すデータのみである場合には、製造日を示すデータは、カートリッジの充填回数にかかわらず固定値であるため、第1書き込み領域WR1とは異なる領域に書き込まれてもよい。また、第1書き込み領域WR1が複数のアドレスによって指定される複数の個別第1書き込み領域を有し、複数の個別第1書き込み領域ごとに、製造データの各項目が割り当てられて書き込まれてもよい。
【0038】
第2書き込み領域WR2は、カートリッジ100に液体を再充填する場合において、既に書き込まれていた第2過去データを元に新たな第2データを書き込んで更新する領域である。つまり、第2書き込み領域WR2は、カートリッジ100の再充填時に、データを累積して使用する領域である。第2書き込み領域WR1に書き込まれる第2過去データや第2データとしてのデータは、第1種記憶領域SA1におけるデータの書き込み頻度よりも書き込み頻度が少ないデータであって、カートリッジ100の寿命に関連する寿命データである。例えば、本実施形態では、第2書き込み領域WR2に書き込まれる寿命データは、再充填の回数である再充填回数を示す再充填回数データと、初回に製造されてから現在までのカートリッジ100の装着部4への装着回数の合計値である総装着回数を示す総装着回数データと、最初に液体をカートリッジ100に充填して製造した日を表す初回製造日からのカートリッジ100の経過の程度を示す経過データである。
【0039】
再充填回数データは、カートリッジ100への液体の初回充填時、すなわちカートリッジ100の初回製造時にはゼロを示す値が記憶され、液体の再充填がされるごとに値が1つずつ増えるように再製造時ごとに製造者によって更新される。再充填回数データは、上述のごとくカートリッジ100の製品としての寿命までの期間を考慮して設定されていることから、寿命に関連するデータである。
【0040】
総装着回数データは、カートリッジ100の全使用期間において、装着判定部419によってカートリッジ100が装着部4に装着されたと判定される毎に、印刷装置20の装置制御部40から書き込みコマンドが対象となるカートリッジ100のメモリー130に送信されることで、1ずつ加算されて更新される。カートリッジ100が装着部4に装着されたり取り外されたりすることで、カートリッジ100の構成要素、例えば回路基板120などが、装着部4に擦れたりするなどして劣化していく。よって、総装着回数を示すデータは、寿命に関連するデータである。
【0041】
経過データは、記憶部138に記憶されている初回製造日から一定期間経過する毎に、更新されるデータであり、例えば初回製造日からの経過年数を示すデータである。経過データは、例えば、以下のステップによって印刷装置20の装置制御部40によって更新される。まず、装置制御部40は、メモリー130から初回製造日と経過の程度を示すデータを取得する。そして装置制御部40は、タイマーによって初回製造日と現在の年月日を比較して、現在の経過の程度を示すデータから更新が必要な場合、例えば前回更新した日より1年以上経過している場合に、メモリー130に書き込みコマンドを送信することで、記憶部138の経過データが更新される。経過データは、カートリッジ100の経年劣化と相関を有するため、寿命に関するデータである。なお、第2書き込み領域WR2が複数のアドレスによって指定される複数の個別第2書き込み領域を有し、複数の個別第2書き込み領域ごとに、再充填回数を示すデータ、総装着回数データ、経過の程度を示すデータが割り当てられて書き込まれてもよい。
【0042】
上記のように、第2種記憶領域SA2に記憶されるデータにおいて、同じ種類のデータは、カートリッジ100の全使用期間において同じアドレスの領域に記憶されて、書き換えられる。また、上記のように、第2種記憶領域SA2は、カートリッジ100への液体の充填毎に生成される製造に関する製造データと、カートリッジ100の印刷装置への総装着回数データを含む寿命データと、を記憶する。また上記のように、第2種記憶領域SA2に書き込みデータの種類に応じて、第1書き込み領域WR1と第2書き込み領域WR2とを使い分けることができる。具体的には、製造データは、第1データとして第1書き込み領域WR1に記憶されており、総装着回数データや経過データを含む寿命データは第2データとして第2書き込み領域WR2に記憶されている。
【0043】
メモリー130の記憶部138は、さらに、複数の個別領域IR1~IR6のうちで、1回分の使用期間において使用する使用個別領域を印刷装置20によって決定するために用いる使用制御データを記憶する。使用制御データは、カートリッジ100に液体が充填される毎に製造者によって更新される。本実施形態では、使用制御データは、再充填回数データである。使用制御データの値と、使用する個別領域IR1~IR6とは対応付けられている。例えば、使用制御データとしての再充填回数データがゼロを示す値である場合、印刷装置20はアドレスA0で指定される第1個別領域IR1を用いて消費データを書き込む。また例えば、使用制御データとしての再充填回数データが「1」を示す値である場合、印刷装置20はアドレスA1で指定される第2個別領域IR2を用いて消費データを書き込む。なお、消費データの書き込み領域の決定処理の詳細は後述する。なお、他の実施形態では、使用制御データは、再充填回数データとは異なるデータであってもよく、また、第1種記憶領域SA1、第2種記憶領域SA2、またはこれらの領域以外の領域に記憶されていてもよい。
【0044】
図9に示すように、副制御基板500は、リセット信号線LRSTと、クロック信号線LSCKと、電源信号線LVDDと、データ信号線LSDAと、接地信号線LVSSと、第1検出信号線LM1と、第2検出信号線LM2と、第3検出信号線LM3と、第4検出信号線LM4とを有する。リセット信号線LRSTは、中継部50と基板端子531とを電気的に接続する。クロック信号線LSCKは、中継部50と基板端子532とを電気的に接続する。電源信号線LVDDは、中継部50と基板端子533とを電気的に接続する。接地信号線LVSSは、中継部50と基板端子534とを電気的に接続する。データ信号線LSDAは、中継部50と基板端子535とを電気的に接続する。第1検出信号線LM1~第4検出信号線LM4は、中継部50と基板端子511~514とを電気的に接続する。中継部50は、CPUや記憶装置などによって構成され、バス46や電源ラインを介して供給されたデータや電力を中継してカートリッジ100に送信する。なお、他の実施形態では、中継部50に装置制御部40の後述する一部の機能を有させてもよい。
【0045】
印刷装置20は、上述の表示部72と、電源440と、制御装置85と、を備える。制御装置85は、装置制御部40と、中継部50とを有する。電源440は、第1電源電圧VDDを生成する第1電源441と、第2電源電圧VHVを生成する第2電源442とを有する。第1電源電圧VDDは、ロジック回路に用いられる通常の電源電圧であり、定格3.3Vである。第2電源電圧VHVは、印刷ヘッド5を駆動してインクを吐出させるために用いられる高い電圧、例えば定格42Vである。これらの電圧VDD、VHVは、副制御基板500に供給され、また、必要に応じて他の回路などの構成要素にも供給される。
【0046】
装置制御部40は、CPU415と、装置記憶部420とを有している。CPU415は、装置記憶部420に記憶された各種プログラムを実行することで、印刷装置20の動作を制御する。例えば、装置制御部40は、表示部72の動作を制御したり、中継部50の動作を制御したりする。また、CPU415は、装置記憶部420に記憶された各種プログラムを実行することで、通信制御部416と、消費量カウント部417と、装着判定部419として機能する。なお、CPU415の機能の少なくとも一部はソフトウェアに限らず、回路などのハードウェアによって構成されていてもよい。
【0047】
通信制御部416は、バス46およびデータ信号線LSDAを介してメモリー130のメモリー制御部136との間でデータのやり取りを行う。例えば、通信制御部416は、メモリー130からデータを読み出す読み出しコマンドを対象となるメモリー制御部136に送信したり、メモリー130にデータを書き込む書き込みコマンドを対象となるメモリー制御部136に送信したりすることで、データのやり取りをメモリー制御部136との間で行う。
【0048】
消費量カウント部417は、4つのカートリッジ100A~100Dのそれぞれの液体の消費量を算出する。例えば、消費量カウント部417は、印刷ジョブに応じた印刷動作が実行される場合には、ドットカウント、すなわち印刷ヘッド5の各ノズルを用いたインクの吐出動作をカウントすることで消費量[mg]を算出する。1回の吐出動作でのインクの吐出量は予め定められている。また例えば、消費量カウント部417は、印刷ヘッド5の各ノズルからインクを吸引するクリーニング動作が行われる場合には、クリーニング動作に応じた予め対応付けられたインクの吸引量をインクの消費量[mg]として算出する。また消費量カウント部417は、カートリッジ100の1回分の使用期間における、インクの累積消費量[mg]を算出し、カートリッジ100の充填量[mg]に対する累積消費量[mg]の割合を百分率で算出する。そして、消費量カウント部417は予め定めた量以上の液体がカートリッジ100から消費される毎に、算出した割合を示すデータと、使用制御データに応じて決定された使用個別領域を指定するアドレスとを含む消費データ書き込みコマンドを対象となるメモリー130に送信する。これにより、消費データ書き込みコマンドを受信したメモリー制御部136は、指定されたアドレスの使用個別領域に消費データを書き込んで更新する。
【0049】
装着判定部419は、カートリッジ100が装着部4に装着されているか否かを判定する。回路基板120の第1検出端子211~第4検出端子214は、対応する接続機構400や基板端子511~514などを介して装着判定部419に電気的に接続される。
図11に示すように回路基板120の第1検出端子211~第4検出端子214は接地されている。基板端子511~514と装着判定部419とを接続する電気配線は、プルアップ抵抗を介して定格3.3Vの第1電源電圧VDDにそれぞれ接続されている。
【0050】
図11に示す例では、回路基板120の第1検出端子211~第4検出端子214のうちの第1検出端子211~第3検出端子213は、対応する基板端子511~513と良好な接続状態にある。一方、第4検出端子214は、対応する装置端子414と接触不良の状態にある。接続状態が良好な3つの装置端子411,412,413の配線の電圧はローレベルになり、一方、接続状態が不良である装置端子414の配線の電圧はハイレベルとなる。従って、装着判定部419は、これらの各配線の電圧レベルを調べることによって、4つの検出端子211,212,213,214のそれぞれについて、接触状態の良否を判定することが可能である。本実施形態では、装着判定部419は、4つの装置端子411~414のそれぞれの配線の電圧レベルがローレベルである場合には、カートリッジ100が正しく装着されていると判定し、それ以外の状態の場合にはカートリッジ100が正しく装着されていないと判定する。
【0051】
図12は、複数の個別領域IR1~IR6の中から消費データを書き込む使用個別領域を決定する決定処理を示すフローチャートである。この決定処理は、装着判定部419によってカートリッジ100が装着部4に装着されたと判定したことをトリガーに開始される。まず装置制御部40は、ステップS10において、装着部4に装着されたと判定されたカートリッジ100のメモリー130に対して、初回データ読み出しコマンドを送信する。初回データ読み出しコマンドは、メモリー130から製造データおよび寿命データを読み出すコマンドである。なお、初回データ読み出しコマンドは、少なくとも使用制御データとしての再充填回数データを読み出すコマンドであればよい。
【0052】
初回データ読み出しコマンドを受信したメモリー130のメモリー制御部136は、ステップS20において、初回データ読み出しコマンドによって指定されたアドレスの初回データとしての製造データおよび寿命データを装置制御部40に送信する。
【0053】
ステップS30において初回データを受信した装置制御部40は、初回データに含まれる使用制御データとしての再充填回数データの値をもとに消費データを書き込む記憶部138の使用個別領域を決定する。決定した使用個別領域を特定するためのアドレスは、装置記憶部420に記憶されて、カートリッジ100の1回分の使用期間において、メモリー130の記憶部138に記憶された消費データを更新する際に、書き込みコマンドに付加される。
【0054】
上記実施形態によれば、メモリー130は、カートリッジ100の1回分の使用期間ごとに異なる領域が使用される複数の個別領域IR1~IR6を有するので、書き換え回数が多いデータ、例えば消費データであっても、異なる使用期間ごとに異なる領域の個別領域IR1~IR6を使用してデータが書き込まれて更新される。これにより、カートリッジ100に液体が再充填される際に、メモリー130を新たに取り換えなくてもメモリー130が劣化する可能性を低減できる。また上記実施形態によれば、複数の個別領域IR1~IR6の数は、カートリッジ100への液体の想定される充填回数以上に設定されている。これにより、カートリッジ100の全使用期間にわたるそれぞれの1回分の使用期間において、データを書き込んで更新する異なる個別領域IR1~IR6を割り当てることができる。また、記憶部138に記憶された使用制御データとしての再充填回数を用いて複数の個別領域IR1~IR6のうちで使用する使用個別領域を容易に決定できる。
【0055】
また上記実施形態によれば、
図10に示すように、第2書き込み領域WR2は経過の程度を示す経過データを記憶する。これにより、経過データを用いてメモリー130やメモリー130が取り付けられたカートリッジ100の寿命に関する情報を生成できる。例えば、印刷装置20の装置制御部40が、メモリー130から経過データを取得し、経過データが予め定めた期間以上を示す場合には、カートリッジ100が劣化している、または劣化が近いことを示す情報を生成する。そして生成した情報は、表示部72に表示される。また、上記実施形態によれば、第2書き込み領域WR2は総装着回数データを記憶する。これにより、総装着回数データを用いてもメモリー130やメモリー130が取り付けられたカートリッジ100の寿命に関する情報を生成できる。例えば、印刷装置20の装置制御部40が、メモリー130から総装着回数データを取得し、総装着回数データが予め定めた回数以上を示す場合には、カートリッジ100が劣化しているまたは劣化が近いことを示す情報を生成する。そして生成した情報は、表示部72に表示される。
【0056】
B.他の実施形態:
B-1.他の実施形態1:
上記実施形態において、複数の個別領域IR1~IR6は、消費データが書き込まれる領域であったがこれに限定されるものではなく、カートリッジ100の1回分の使用期間において書き込み回数が多いデータであれば他のデータであってもよい。例えば、複数の個別領域IR1~IR6に書き込まれるデータは、消費データに代えて、または加えて、印刷装置20との通信回数を示すデータであってもよい。
【0057】
B-2.他の実施形態2:
本開示は、インクジェットプリンター及びそのカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の印刷装置に装着されるカートリッジにも適用することができる。例えば、以下のような各種の印刷装置及びそのカートリッジに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材を噴射する印刷装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材を噴射する印刷装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する印刷装置
(5)精密ピペットとしての試料印刷装置
(6)潤滑油の印刷装置
(7)樹脂液の印刷装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する印刷装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する印刷装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する印刷装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える印刷装置
【0058】
なお、「液滴」とは、印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【0059】
C.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0060】
(1)本開示の第1形態によれば、液体の消費完了後に再び前記液体を充填して再使用可能なカートリッジに取り付けられるメモリーが提供される。このメモリーは、前記カートリッジに前記液体が充填されてから前記液体の消費が完了するまでの1回分の使用期間において使用される第1種記憶領域と、前記1回分の使用期間の集合である前記カートリッジの全使用期間において使用される第2種記憶領域と、を備え、前記第1種記憶領域は、前記1回分の使用期間ごとに異なる領域が使用される複数の個別領域を有する。液体の消費完了後に再び前記液体を充填して再使用可能なカートリッジに取り付けられるメモリーが提供される。上記形態によれば、1回分の使用期間ごとに異なる領域が使用される複数の個別領域を有するので、書き換え回数が多いデータであっても、異なる使用期間ごとに異なる領域の個別領域を使用してデータが書き込まれて更新される。これにより、カートリッジに液体が再充填する際に、メモリーを新たに取り換えなくてもメモリーが劣化する可能性を低減できる。
【0061】
(2)上記形態において、前記第2種記憶領域は、前記カートリッジに前記液体を再充填する場合において、既に書き込まれていた第1過去データを消去した後に新たな第1データを書き込む第1書き込み領域と、前記再充填する場合において、既に書き込まれていた第2過去データを元に新たな第2データを書き込んで更新する第2書き込み領域と、を有していてもよい。上記形態によれば、第2種記憶領域に書き込むデータの種類に応じて、第1書き込み領域と第2書き込み領域とを使い分けることができる。
【0062】
(3)上記形態において、前記第2種記憶領域は、前記カートリッジへの前記液体の充填毎に生成される製造に関する製造データと、前記全使用期間における前記カートリッジの印刷装置への総装着回数データと、を記憶し、前記製造データは、前記第1データとして前記第1書き込み領域に記憶されており、前記総装着回数データは、前記第2データとして前記第2書き込み領域に記憶されていてもよい。上記形態によれば、液体の充填ごとに生成される製造データを第1書き込み領域に記憶でき、回数を累積する総装着回数データは第2書き込み領域に記憶できる。
【0063】
(4)上記形態において、前記第2書き込み領域は、さらに、最初に前記液体を前記カートリッジに充填して製造した日を表す初回製造日からの経過の程度を表す経過データを記憶してもよい。上記形態によれば、経過データを用いてメモリーやメモリーが取り付けられたカートリッジの寿命に関する情報を生成できる。
【0064】
(5)上記形態において、前記複数の個別領域の数は、カートリッジへの前記液体の想定される充填回数以上に設定されていてもよい。上記形態によれば、カートリッジの全使用期間にわたるそれぞれの1回分の使用期間において、データを書き込んで更新する異なる個別領域を割り当てることができる。
【0065】
(6)上記形態において、前記複数の個別領域のうちで使用する使用個別領域を決定するために用いる使用制御データを記憶してもよい。上記形態によれば、使用制御データを用いて使用個別領域を容易に決定できる。
【0066】
(7)上記形態において、前記使用制御データは、前記第2種記憶領域に記憶された前記液体の前記カートリッジへの再充填の回数を表す再充填回数データであってもよい。上記形態によれば、再充填回数データを使用制御データとして用いることができる。
【0067】
(8)前記複数の個別領域はそれぞれ、前記1回分の使用期間における前記カートリッジに充填された前記液体の消費量に関する消費データを記憶してもよい。上記形態によれば、個別領域に消費データを記憶できる。
【0068】
(9)本開示の第2形態によれば、カートリッジが提供される。このカートリッジは、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部の前記液体を供給する液体供給部と、上記形態に記載のメモリーと、を備える。上記形態によれば、メモリーは1回分の使用期間ごとに異なる領域が使用される複数の個別領域を有するので、書き換え回数が多いデータであっても、異なる使用期間ごとに異なる領域の個別領域を使用してデータが書き込まれて更新される。これにより、カートリッジに液体が再充填する際に、メモリーを新たに取り換えなくてもメモリーが劣化する可能性を低減できる。
【0069】
本開示は、上記形態の他に、メモリーの製造方法、カートリッジと印刷装置とを印刷システム、印刷システムの制御方法などの形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0070】
4…装着部、5…印刷ヘッド、6…液体導入部、20…印刷装置、22…モーター、26…プラテン、30…キャリッジ、32…キャリッジモーター、34…摺動軸、36…駆動ベルト、38…プーリー、40…装置制御部、46…バス、50…中継部、65…装着室、70…操作部、72…表示部、80…コネクター、85…制御装置、90…コンピューター、100,100A~100D…カートリッジ、101…本体、101wb…底壁、101wf…前壁、104…液体供給部、104f…フィルム、104op…開口、120…回路基板、120fa…表面、120fb…裏面、130…メモリー、136…メモリー制御部、138…記憶部、150…液体収容部、210…装着検出端子群、211…第1検出端子、212…第2検出端子、213…第3検出端子、214…第4検出端子、230…メモリー端子群、231…リセット端子、232…クロック端子、233…電源端子、234…接地端子、235…データ端子、290…端子群、301…スリット、400…接続機構、403,403A~403I…接点形成部材、405…端子保持部、411~414,431~435…装置端子、411a~414a,431a~435a…中継端子、415…CPU、416…通信制御部、417…消費量カウント部、419…装着判定部、420…装置記憶部、431~435,439…装置端子、431a~435a…中継端子、440…電源、441…第1電源、442…第2電源、500…副制御基板、511~514,531~535,590…基板端子、1000…印刷システム、FD…第1方向、IR1~IR6…個別領域、LM1…第1検出信号線、LM2…第2検出信号線、LM3…第3検出信号線、LM4…第4検出信号線、LRST…リセット信号線、LSCK…クロック信号線、LSDA…データ信号線、LVDD…電源信号線、LVSS…接地信号線、MD…装着方向、PA…印刷媒体、R1…第1列、R2…第2列、SA…記憶領域、SA1…第1種記憶領域、SA2…第2種記憶領域、SD…第2方向、VDD…第1電源電圧、VHV…第2電源電圧、WR…書き込み領域、WR1…第1書き込み領域、WR2…第2書き込み領域、cp…接点