(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】研磨カセット
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
A63F7/02 351A
A63F7/02 301C
(21)【出願番号】P 2021155889
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2024-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】望月 賢太
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-188255(JP,A)
【文献】特開2016-030153(JP,A)
【文献】特開2002-283215(JP,A)
【文献】特開2001-178951(JP,A)
【文献】特開2015-073536(JP,A)
【文献】特開2013-220161(JP,A)
【文献】特開2008-132236(JP,A)
【文献】特開平08-001503(JP,A)
【文献】特開2023-047005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機に設けられたベースに取り付けられ、遊技に用いられる遊技媒体を帯状の研磨体により研磨するための研磨カセットであって、
前記研磨体を送り出す送出口と前記研磨体を巻き取る巻取口とが形成され
た箱体と、
前記箱体の外側において前記送出口と前記巻取口との間に前記研磨体が掛け渡され
、掛け渡されている部分が研磨領域である前記研磨体と、
前記箱体の内部に設けられた、
前記巻取口を介して前記研磨体を巻き取る巻取部、
巻き取られた前記研磨体が折り重なって収容される収容部
、および、
前記収容部の出口から送り出された前記研磨体を、一旦、前記巻取部が位置する側に引き回した後、前記送出口に向かう搬送経路にて搬送する搬送部と、を有し、
前記箱体は、当該箱体の外部から当該箱体の内部の前記研磨体の視認を可能にする透明部を有
し、
前記透明部は、前記箱体の前記研磨体が掛け渡されている側とは反対側に形成されている研磨カセット。
【請求項2】
前記搬送部は、前記搬送経路のコーナに搬送ローラを有する請求項
1に記載の研磨カセット。
【請求項3】
前記箱体は、前記収容部と前記搬送部とを仕切る壁部を有する請求項
1又は
2に記載の研磨カセット。
【請求項4】
前記箱体は、一方向に長い矩形形状に形成され、
前記研磨体は、前記箱体の長手方向に沿って掛け渡されており、
前記収容部は、前記箱体の前記研磨体が掛け渡されている側に位置し、
前記搬送部は、前記箱体の前記研磨体が掛け渡されている側とは反対側に、前記巻取部が位置する側に前記研磨体を一旦引き回す経路を有している請求項
1から
3の何れか1項に記載の研磨カセット。
【請求項5】
前記遊技媒体としての遊技球が盤面を通過する遊技盤と、
前記遊技球を移送する移送部と、
前記移送部に対向して配置された請求項1から
4の何れか1項に記載の研磨カセットと、を備えた遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機等の遊技機において用いられる研磨カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
遊技者が遊技球(以下、球と称する)を発射装置によって遊技領域に発射し、発射した球が遊技領域に設けられている入賞口などの入賞領域に入ると、所定数の球を賞球として遊技者に払い出す遊技機がある。
【0003】
球には、遊技者が触れたり、遊技機の内部を通過したりする間に汚れが付着する。この汚れは、球の外観を損ねるだけでなく、遊技機内で球を詰まらせるなどの原因となる虞がある。そのため、遊技機には、球の移送経路に球を研磨する研磨装置が備えられている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の遊技機は、移送される球に帯状の研磨材を押し当てて研磨する。
【0004】
また、研磨装置には、長い帯状で環状の研磨体(研磨材)を収容した研磨カセットが取り外し可能に組み込まれたものもある(例えば特許文献2)。研磨カセットの中には、巻取部(巻取手段)が設けられており、研磨体は研磨カセットの外側に送り出され、研磨領域において移送される球と当接され、研磨領域を通過した後、再び研磨カセットの内部に引き戻される。カセット内部は収容部となっており、巻き取られた帯状の研磨体は、カセット内部に折り重なって収容される。
【0005】
このような研磨カセットにおいて、研磨体と球とを確実に当接させるためには、研磨体は研磨領域において重なることなく、かつ弛むことなく支持されていることが望ましい。つまり、カセット内部で折り重なっている研磨体は、研磨カセットの外側に送り出された後は、重なりおよび弛みのない状態になっている必要がある。そのため、研磨体が送り出される出口の近傍に、研磨体を押さえる押え板等が設けられているものもある。押え板にて巻取り部との間でテンションをかけることで、研磨体を弛むことなく研磨カセットに掛け渡すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-185165号公報
【文献】特開2016-203027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような研磨カセットにおいては、研磨体が汚れると研磨効果が落ちるため、研磨体の汚れを確認して適宜交換する必要がある。しかしながら、研磨体がカセット外部に出ている部分(研磨領域)には、スクリュー等の球を移送する部材が位置している。そのため、遊技機に研磨カセットを取り付けた状態では研磨体の汚れを確認できず、汚れを確認するためには、その都度、遊技機から研磨カセットを取り外す必要があった。
【0008】
本発明の一態様は、研磨体の汚れを容易に確認できる研磨カセット、およびそれを備えた遊技機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る研磨カセットは以下の構成を採用する。
【0010】
すなわち、本発明の一側面に係る研磨カセットは、遊技機に設けられたベースに取り付けられ、遊技に用いられる遊技媒体を帯状の研磨体により研磨するための研磨カセットであって、前記研磨体を送り出す送出口と前記研磨体を巻き取る巻取口とが形成され、前記送出口と前記巻取口との間に前記研磨体が掛け渡される箱体と、前記箱体の内部に設けられた、前記巻取口を介して前記研磨体を巻き取る巻取部、および、巻き取られた前記研磨体が折り重なって収容される収容部と、を有し、前記箱体は、当該箱体の外部から当該箱体の内部の前記研磨体の視認を可能にする透明部を有する。
【0011】
上記構成によれば、箱体に、箱体の外部から箱体の内部の研磨体の視認を可能にする透明部が設けられているので、研磨カセットを遊技機に取り付けた状態で、研磨カセットの内部を視認することができる。これにより、遊技場の従業員等のユーザは、遊技機から研磨カセットを取り外すことなく、研磨体の汚れ具合を確認し、研磨体の交換のタイミングを見極めることができる。
【0012】
本発明の一側面に係る研磨カセットにおいて、前記透明部は、前記箱体の前記研磨体が掛け渡されている側とは反対側に形成されている構成としてもよい。
【0013】
研磨体が掛け渡されている側とは反対側に透明部を設けることで、研磨体が遊技球を研磨する面を視認することができるので、折り重なって収容されている研磨体をその上方から見るような構成に比べて汚れを正確に確認できる。
【0014】
本発明の一側面に係る研磨カセットにおいて、前記箱体の内部に設けられ、前記収容部の出口から送り出された前記研磨体を、一旦、前記巻取部が位置する側に引き回した後、前記送出口に向かう搬送経路にて搬送する搬送部を有する構成としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、箱体の内部に、収容部から送り出された研磨体を巻取部が位置する側に引き回した後、送出口に向けて搬送する搬送部が設けられている。このような搬送部を備えることで、研磨体における遊技球を研磨した面を、透明部のある方へ向けることができる。収容部にランダムに収容されている状態でも研磨体の汚れ度合いを確認できるが、重なっていない状態で研磨体における研磨した面を見ることで、研磨体の汚れ具合をより明確に確認することができる。
【0016】
本発明の一側面に係る研磨カセットにおいて、前記搬送部は、前記搬送経路のコーナに搬送ローラを有する構成としてもよい。これによれば、搬送経路に沿って搬送される研磨体の搬送を良好にすることができる。
【0017】
本発明の一側面に係る研磨カセットにおいて、前記箱体は、前記収容部と前記搬送部とを仕切る壁部を有する構成としてもよい。
【0018】
収容部と前記搬送部とを仕切る壁部を設けることで、研磨体における、収容部に収容された部分と、搬送部にて搬送される部分とが接触することを防いで、研磨体の送り出し動作をより安定化することができる。
【0019】
本発明の一側面に係る研磨カセットにおいて、前記箱体は、一方向に長い矩形形状に形成され、前記研磨体は、前記箱体の長手方向に沿って掛け渡されており、前記収容部は、前記箱体の前記研磨体が掛け渡されている側に位置し、前記搬送部は、前記箱体の前記研磨体が掛け渡されている側とは反対側に、前記巻取部が位置する側に前記研磨体を一旦引き回す経路を有している構成とすることができる。
【0020】
上記構成によれば、遊技球を研磨する研磨領域を遊技球の移送方向に長く確保しつつ、コンパクトに形成することができる。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る遊技機は、遊技球が盤面を通過する遊技盤と、前記遊技球を移送する移送部と、前記移送部に対向して配置された請求項1から6の何れか1項に記載の研磨カセットと、を備えている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、本発明の一態様は、研磨体の汚れを容易に確認できる研磨カセット、およびそれを備えた遊技機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る研磨カセットが搭載された遊技機の構成および球の流れのイメージを示す説明図であり、扉が開いている状態の遊技機の正面を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る研磨カセットが搭載された遊技機の構成および球の流れのイメージを示す説明図であり、扉が開いている状態の遊技機の裏面を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る研磨カセットの構成を示す斜視図であり、遊技機に取り付けられた状態で遊技機の正面側を向く研磨カセットの正面側の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る研磨カセットの構成を示す斜視図であり、遊技機に取り付けられた状態で遊技機の裏面側を向く研磨カセットの裏面側の斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る研磨カセットを分解して示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る研磨カセットの蓋部材を外して研磨カセットの内部を上方より見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。本実施形態では、本開示の研磨カセットの一態様として、研磨カセット1を例示する。
【0025】
§1 適用例
まず、
図1~4、
図6を用いて、研磨カセット1が適用される場面の一例について説明する。
図1、
図2に示すように、研磨カセット1は、遊技球(以下、球と称する)を用いる遊技機100の扉102の内側のベース103に、球60を搬送するスクリュー107と対向するように配置される。研磨カセット1は、スクリュー107を搬送される球60に当接し、球60の表面を研磨して球60に付着している汚れを取り除くものである。
【0026】
図3、
図4に示すように、研磨カセット1には、裏面に、長い帯状で環状の研磨体(研磨布)10を送り出す送出口5と研磨体10を巻き取る巻取口4とが形成されており、送出口5と巻取口4との間に研磨体10が掛け渡されている。研磨体10が掛け渡されているこの部分が球60と接触して研磨する研磨領域である。
【0027】
研磨カセット1の内部には、巻取口4を介して研磨体を巻き取る巻取部20と、巻き取られた研磨体10が折り重なって収容される収容部30と、収容部30から送り出された研磨体10を送出口5に向けて搬送する搬送部40と、が設けられている。搬送部40は、収容部30から送り出された研磨体10を、一旦、巻取部20が位置する側に引き回した後、送出口5に向かう搬送経路にて搬送するようになっている。
【0028】
研磨カセット1は、ケース部材11と蓋部材12とでケース部分が構成されている。このうち、正面の壁を有するケース部材11が透明に形成されているので、研磨カセット1を遊技機100に取り付けた状態で、研磨カセット1の内部を視認することができる。これにより、遊技場の従業員等のユーザは、遊技機100から研磨カセット1を取り外すことなく、研磨体10の汚れ具合を確認し、研磨体10の交換のタイミングを見極めることができる。
【0029】
§2 構成例
(1.遊技機100)
図1、
図2は、本実施形態に係る研磨カセット1が搭載された遊技機100の構成および球60の流れのイメージを示す説明図である。
図1は、扉102が開いている状態の遊技機100の正面を示す。
図2は、扉102が開いている状態の遊技機100の裏面を示す。
【0030】
図1、
図2に示すように、パチンコ台である遊技機100は、球60(
図2に仮想線で示す)を通過する遊技盤101と、遊技盤101を覆うガラス板102aが嵌め込まれた扉102とを備えている。遊技盤101の正面側の球60が通過する盤面が、遊技領域101aである。
【0031】
図1に示すように、遊技盤101の下方に位置するベース103の正面側には、球60を発射する発射装置104と、球60を遊技盤101に案内するレール105と、研磨カセット1とが設置されている。研磨カセット1は、長い帯状で環状の研磨体10にて球60を研磨して汚れを取り除くものであり、直方体箱状に形成されている。詳細については後述するが、研磨カセット1は、研磨体10(
図4参照)がカセット外部に掛け渡されている裏面が、ベース103に設けられた開口部103aに面するように、ベース103に着脱可能に取り付けられている。
【0032】
図2に示すように、ベース103の裏面側には、遊技領域101aから排出された球60を発射装置104に戻す球経路106が設けられている。球経路106には、スクリュー(移送部)107と、第1および第2の2つの経路部材108、109とが配設されている。
【0033】
スクリュー107は、スクリュー下部に到達した球60をスクリュー上部へ揚上する搬送装置である。スクリュー107は、ベース103の開口部103aに面する研磨カセット1と対向するように配置されている。スクリュー107にて揚上される球60が、研磨カセット1の裏面に掛け渡されている研磨体10と当接する。
【0034】
図1において矢印Yにて示すように、発射装置104から発射された球60は、レール105を伝って遊技領域101aへと導かれる。遊技領域101aに導かれた球60は、遊技領域101aを伝って遊技領域101aの下部に設けられた球出口101bから遊技盤101の裏面側に排出される。
【0035】
図2において矢印Yにて示すように、遊技盤101の裏面側に排出された球60は、第1経路部材108を通ってスクリュー下部へ搬送され、スクリュー107にて揚上される。揚上される間、球60は研磨カセット1の研磨体と当接して研磨される。スクリュー107と研磨カセット1とが対向しているこの部分が研磨領域に相当する。スクリュー上部に達した球60は、第2経路部材109を通って表面側にある発射装置104に戻される(
図1参照)。
【0036】
なお、
図1、
図2では、研磨カセット1の長手方向とスクリュー107の搬送方向である軸方向とを平行に配置しているが、スクリュー107の軸方向に対して研磨カセット1の長手方向が傾斜するように配置してもよい。
【0037】
(2.研磨カセット1の構成)
本実施形態では、研磨カセット1は上述したように、長手方向を上下方向として取り付けられる。しかしながら、研磨カセット1の長手方向の向きはこれに限らず、スクリュー等の移送部による移送方向に沿った方向であればよい。そのため、以下においては、
図1の状態から、研磨カセット1を90度左に回転させて、研磨カセット1の長手方向を左右方向として説明する。その場合、研磨カセット1の前後方向は、遊技機100の前後方向と同じであるが、研磨カセット1の左方向が遊技機100の上方向となり、研磨カセット1の右方向が遊技機100の下方向となる。同様に、研磨カセット1の上方向が遊技機100の右方向となり、研磨カセット1の下方向が遊技機100の左方向となる。
【0038】
図3、
図4は、研磨カセット1の構成を示す斜視図である。
図3は、遊技機100に取り付けられた状態で遊技機100の正面側を向く研磨カセット1の正面側の斜視図である。
図4は、遊技機100に取り付けられた状態で遊技機100の裏面側を向く研磨カセット1の裏面側の斜視図である。
【0039】
図3、
図4に示すように、研磨カセット1は、左右方向に長い直方体箱状に形成されており、裏面(後面)に研磨体10が長手方向(左右方向)に掛け渡されている。
【0040】
図4に示すように、研磨カセット1の裏面の短手方向の両縁には、後方に突出するガイド縁1aが形成されている。研磨体10は、このガイド縁1aによって、幅方向の両端がガイドされる。
【0041】
研磨カセット1における裏面右側の右側面との角部には、研磨体10が巻き取られる巻取口4が形成されている。また、研磨カセット1における裏面左側の左側面との角部には、研磨体10が送り出される送出口5が形成されている。
【0042】
図3に示すように、研磨カセット1の内部には、巻取部20が設けられている。研磨体10は巻取部20によって送出口5から引き出され、巻取口4から巻き取られる。巻き取られた研磨体10は、研磨カセット1の内部に折り重なるようにランダムに収容される(
図5参照)。
【0043】
図5は、研磨カセット1を分解して示す分解斜視図である。
図6は、研磨カセット1の蓋部材12を外して研磨カセット1の内部を上方より見た斜視図である。なお、
図5、
図6では、研磨体10が九十九折状に重なっている状態を示しているが、研磨体10はコシのない布であり、実際には、無造作にランダムに重なっている。
【0044】
図5に示すように、研磨カセット1のケース部分(箱体)は、ケース部材11と蓋部材12とが組み合わされて構成されている。ケース部材11と蓋部材12とは、それぞれの接合面の四隅に形成された取付孔1bを介してビスなどによって組み付けられる。
【0045】
ケース部材11は、研磨カセット1の正面、裏面、左側面、右側面および下面(底面)を構成する各壁を有し、蓋部材12は、研磨カセット1の上面の壁を構成する。本施形態では、ケース部材(透明部)11は、透明な樹脂材料等から形成されており、研磨カセット1の内部を視認できるようになっている。
【0046】
図5、
図6に示すように、送出口5において、研磨カセット1の裏面を構成する壁の一部は、研磨カセット1の内側に入り込んでいる。裏面と内側に入り込んでいる部分との間は、裏面と成す角度が鈍角に形成された傾斜面で繋がれている。これにより、研磨体10は、送出口5より鈍角にてスムースに送り出される(引き出される)。
【0047】
研磨カセット1の内部の送出口5の近傍には、送出口5から送り出される研磨体10を押さえる押え板9が設けられている。本実施形態では、押え板9は、
図6に示すように、研磨カセット1の左側面を構成する壁の内側に、ビスなどで取り付けられている。押え板9は、取り付け位置から後側(裏面側)右方に延出した形状に形成されており、先端側が送出口5の手前で鋭角な角度で研磨体10に当接する。
【0048】
押え板9の先端部は、押さえている研磨体10から離れる方向に曲げられており、この曲げによる丸みを帯びた角の部分と送出口5の近傍に位置する第4搬送ローラ41Dとの間に研磨体10を挟み込み押さえる。第4搬送ローラ41Dは、研磨カセット1の内部に複数設けられた搬送ローラのうちの1つであり、これについては後述する。
【0049】
図5に示すように、研磨カセット1の上面の壁となる蓋部材12には、巻取部20を軸支する軸支孔12a、12b、カバー部材25を取り付けるための固定孔12c、12dが形成されている。さらに、蓋部材12には、第1から第4の4つの搬送ローラ41A~41Dを軸支する軸支孔12e~12hが形成されている。
【0050】
同様に、研磨カセット1の下面の壁(底)となるケース部材11の下面には、巻取部20を軸支する軸支孔11a、11b、カバー部材22、23を取り付けるための固定孔11c、11dが形成されている。さらに、ケース部材11の下面には、第1から第4の4つの搬送ローラ41A~41Dを軸支する軸支孔11e~11hが形成されている(
図6参照)
巻取部20は、研磨カセット1のケース部材11と蓋部材12とに軸支された2つのローラ21A、21Bを有し、研磨カセット1の裏面に掛け渡された研磨体10を巻き取って更新する。本実施形態では、2つのローラ21A、21Bのそれぞれは、回転軸に複数の歯車部材が取り付けられて構成されている。複数の歯車部材のそれぞれは、外周面に歯車状の凹凸が形成されている。研磨体10は2つのローラ21A、21Bの間に挿通され、2つのローラ21A、21Bが回転することで、研磨カセット1の内部に送り込まれる。
【0051】
巻取部20の2つのローラ21A、21Bは、回転軸のそれぞれが、蓋部材12の軸支孔12a、12b、ケース部材11の軸支孔11a、11bに挿通して、研磨カセット1に軸支される。2つのローラ21A、21の回転軸は互いに平行に配置される。2つのローラ21A、21Bのうち、後側(巻取口4側)のローラ21Aには、ケース部材11の軸支孔11aより、回転軸に研磨カセット1の外部より駆動力が伝達される。
【0052】
カバー部材22、23は、研磨カセット1の内部に収容されており、巻取部20に研磨体10が巻き付くことを防止する。カバー部材22、23は、巻取部20の2つのローラ21A,21Bのそれぞれに対応する2つの部材であり、研磨カセット1の内部の裏面側と正面側とに取り付けられている。なお、カバー部材22,23は、研磨カセット1に取り付けられるものに限定されず、例えばケース部材11、または蓋部材12と一体に形成されてもよい。
【0053】
図6に示すように、研磨カセット1の内部には、収容部30と、搬送部40と、重なり解消部(第1搬送ローラ41A)とが設けられている。収容部30は、巻取部20にて巻き取られた研磨体10を収容する。巻き取られた研磨体10は、収容部30にランダムに重なり合いながら折り重なって収容され、巻取部20の位置する右側から収容部出口31が位置する左側に向かって移動する。
【0054】
搬送部40は、収容部出口31から送り出された研磨体10を、一旦、巻取部20が位置する側に引き回した後、送出口5に向かう搬送経路にて搬送する。重なり解消部は、収容部出口31の手前で研磨体10と接触して研磨体10の重なりを解消させるもので、本実施形態では、第1搬送ローラ41Aが該機能を有する。
【0055】
収容部30および搬送部40は何れも長手方向に沿って形成されており、収容部30は研磨カセット1の裏面側に位置し、搬送部40は研磨カセット1の正面側に位置している。収容部30と搬送部40との間は、ケース部材11の下面(底面)の内面に立設された、研磨カセット1の長手方向に延びる第1壁(壁部)15aによって仕切られている。第1壁15aは、巻取部20が位置する右側から左側に向かって裏面側に近づくように傾斜している。また、第1壁15aは上面視で逆L字状に形成され、右側が研磨カセット1の右側面と平行に前方(正面)に延出されて研磨カセット1の正面に達している。
【0056】
収容部出口31は、第1壁15aの左側に設けられている。収容部30の内部を左に向かって移動した研磨体10は、収容部出口31から搬送部40に送り出される。
【0057】
搬送部40は、収容部出口31より送り出された研磨体10を、一旦、巻取部20が位置する側に引き回す規定の搬送経路で搬送して送出口5に向かわせる。一旦、巻取部20が位置する側に引き回すことで、研磨体10における研磨領域を通過した方の面を、研磨カセット1の正面側に向かせることができる。
【0058】
本実施形態では、搬送経路のコーナに、研磨体10と接触する外周面が曲面の第1から第4の4つの搬送ローラ41A~41Dが配置されている。本実施形態では、第1から第4の4つの搬送ローラ41A~41Dは、POM(ポリアセタール樹脂)により構成されている。
【0059】
第1搬送ローラ41Aは、収容部出口31に配置されており、第1壁15aの左端部の左隣に配置されている。より詳細には、第1搬送ローラ41Aは、収容部出口31における収容部30と搬送部40との間の経路のコーナに位置している。
【0060】
第2搬送ローラ41Bは、搬送部40の右端部であって、第1搬送ローラ41Aよりも正面側に配置されている。第3搬送ローラ41Cは、搬送部40の左端部であって、第1搬送ローラ41Aよりも左側かつ第2搬送ローラ41Bよりも正面側に配置されている。第4搬送ローラ41Dは、前述したように、研磨カセット1の内部の送出口5の近傍に配置されており、第3搬送ローラ41Cよりも左側で研磨カセット1の送出口5の手前に配置されている。
【0061】
収容部出口31から送り出された研磨体10は、第2搬送ローラ41Bと第3搬送ローラ41Cとの間の搬送部において、研磨領域を通過した方の面を、研磨カセット1の正面側に向けて搬送される。
【0062】
第1から第4の4つの搬送ローラ41A~41Dをこのような配置とすることで、搬送部40に必要なスペースを小さくして、収容部30のスペースを広く確保することができる。
【0063】
第1から第4の4つの搬送ローラ41A~41Dのうち、第2から第4の3つの搬送ローラ41B~41Dは、回転可能に軸支された回転ローラである。これに対し、収容部出口31に位置する第1搬送ローラ41Aは、回転不能に設置されており、回転しない支柱部品となっている。第1搬送ローラ41Aを、回転不能に設置することで、収容部出口31の手前で研磨体10と接触して研磨体10の重なりを解消させる重なり解消部として機能させることができる。
【0064】
また、第2から第4の3つの搬送ローラ41B~41Dと同じローラ部材を用いて重なり解消部を構成することで、部材の共用を図ることができる。但し、重なり解消部として機能する構成であれば、必ずしもローラ形状である必要はなく、例えば、第1壁15aの左端部と対向する側が平坦に形成された、軸方向の断面形状がD字形状の支柱であってもよい。また、第1壁15aの左端部に、第1壁15aと一体、つまり、ケース部材11と一体に形成されていてもよい。
【0065】
また、搬送部40における第1壁15aの正面側には、研磨カセット1の長手方向に延びる第2壁15bが設けられている。第2壁15bにより、第1搬送ローラ41Aと第2搬送ローラ41Bとの間、および第2搬送ローラ41Bと第3搬送ローラ41Cとの間の搬送部が仕切られる。本実施形態では、第2壁15bは、第1壁15aとは逆に、右側から左側に向かって表面側に近づくように傾斜している。
【0066】
搬送部40における第2壁15aの左方には、正面側から裏面側の向かって延びる第3壁15cが設けられている。第3壁15cにより、収容部30と、搬送部40における送出口5に向かう経路が仕切られている。第1搬送ローラ41Aと第3壁15cとの間が、収容部出口31となる。
【0067】
(3.研磨カセット1の動作)
図6を用いて、上記構成の研磨カセット1の動作を説明する。巻取部20が回転すると、研磨カセット1の裏面に掛け渡されている研磨体10が、巻取口4から研磨カセット1の内部に巻き取られ、収容部30に収容されると共に、研磨カセット1の送出口5から研磨体10が送り出される。
【0068】
巻き取られた研磨体10は、収容部30の内部でランダムに重なり合いながら無造作に収容され、新たに巻き取られた研磨体10にて押し込まれるようにして収容部30を左側へ移動する。収容部出口31に達した研磨体10は、収容部出口31から送り出され、搬送部40にて研磨カセット1の送出口5に向かって搬送される。
【0069】
このとき、収容部出口31に位置する第1搬送ローラ41Aを回転不能に設置していない場合、重なった状態の研磨体10がそのまま滑らかに収容部出口31に送り込まれてしまい、収容部出口31を通過しようとして摺動負荷がかかる。摺動負荷が小さい場合は問題ないが、摺動負荷が大きい場合、研磨体10の送り出しが行えず、研磨カセット1は送り出し動作不良となる。
【0070】
これに対し、上記構成では、収容部出口31に位置する第1搬送ローラ41Aは回転不能に設置され、回転しない支柱となっている。したがって、重なった状態の研磨体10は、第1搬送ローラ41Aに接触することで、収容部出口31の手前で重なりが解消される。より具体的には、重なった状態の研磨体10が第1搬送ローラ41Aに接触し、重なっている研磨体10のうち、引き出す力が加わっている先頭部分の布のみが収容部出口31から送り出される。
【0071】
収容部出口31から送り出された研磨体10は、第2搬送ローラ41B、第3搬送ローラ41C、第4搬送ローラ41Dを経由して、送出口5に向かう。第4搬送ローラ41Dを通過する際に押え板9にて押さえられることで張りが付与される。送出口5から送り出された研磨体10は、研磨領域を通過した後、再び巻取口4を介して巻取部20に巻き取られ、収容部30に収容される。
【0072】
このような研磨体10の巻き取りは、例えば、一定数の球60がスクリュー107を通過するごと、あるいは所定時間ごと等、間欠的に行われるものとすることができる。研磨体10は、汚れると研磨カセット1から取り外されて交換される。
【0073】
(4.効果)
本実施形態では、研磨カセット1の正面の壁を有するケース部材11が透明に形成されているので、研磨カセット1を遊技機100に取り付けた状態で、研磨カセット1の内部を視認することができる。これにより、遊技場の従業員等のユーザは、遊技機100から研磨カセット1を取り外すことなく、研磨体10の汚れ具合を確認し、研磨体10の交換のタイミングを見極めることができる。
【0074】
しかも、上記構成では、搬送部40が、収容部出口31より送り出された研磨体10を、一旦、巻取部20が位置する側に引き回した後、送出口5に向かわせている。このような経路とすることで、研磨体10における研磨領域を通過した方の面を、研磨カセット1の正面側に向けることができる。収容部30にランダムに収容されている状態でも研磨体10の汚れ度合いを確認できるが、重なっていない状態で研磨体10における研磨領域を通過した面を見ることで、研磨体10の汚れ具合をより明確に確認することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、ケース部材11を透明材料で構成している。そのため、蓋部材12で構成される研磨カセット1の上面を除いて、研磨カセット1の正面、裏面、左側面、右側面および下面(底面)を構成する各壁が透明に形成されている。これにより、研磨カセット1の正面、裏面、左側面、右側面および下面(底面)からでも、内部の研磨体10を視認して、その汚れの度合いを確認することができる。
【0076】
しかしながら、研磨カセット1のケース部分(ケース部材11と蓋部材12)に、研磨カセット1の外部から研磨カセット内部の研磨体10の視認を可能にする透明部を有していればよい。そのため、透明部は、ケース部分に形成された開口であってもよいし、開口に透明材が嵌め込まれていてもよい。
【0077】
ケース部分の一部に透明部を設ける場合、研磨体10が掛け渡されている側とは反対側、つまり、正面側に透明部を設けることが好ましい。これにより、研磨体10が遊技球を研磨する面を視認することができる。研磨カセット1の上面や底面に透明部が形成されていた場合、収容部30に折り重なって収容されている研磨体をその上方から見るようになるので、正面側に透明部がある構成程には汚れを正確に確認できない。
【0078】
特に、
図1、
図2に示したように、遊技機100の正面側に、研磨カセット1の正面側を向けて配置される構成では、遊技機100の扉102を開くだけで、正面に位置する透明部より研磨体10の汚れを把握することができる。
【0079】
ところで、搬送部40を設けることで、収容部30のスペースは小さくなり、研磨体10は重なり易くなる。そこで、本実施形態では、収容部出口31のコーナに設置される第1搬送ローラ41Aを回転不能に設置して円柱状の支柱部品(重なり解消部)としている。これにより、収容部出口31の手前で研磨体10と接触して研磨体10の重なりを解消させることができる。
【0080】
これにより、収容部30の限られたスペースに長い研磨体10を収容した場合でも、収容部出口31を研磨体10が重なった状態で通過することを防ぐ、あるいは効果的に抑制して、研磨体10の送り出し動作を良好にできる。そして、研磨体10の交換頻度を抑えるために、できるだけ研磨体10の全長を長くしたいといった要望に応えることもできる。
【0081】
また、第1壁部15aにて収容部30と搬送部40とを仕切ることで、研磨体10における、収容部30に収容された部分と、搬送部40にて搬送される部分とが接触することを防いで、研磨体10の送り出し動作をより安定化することができる。
【0082】
また、第2壁部15bにて、第1搬送ローラ41Aと第2搬送ローラ41Bとの間、および第2搬送ローラ41Bと第3搬送ローラ41Cとの間を仕切ることで、各経路を搬送される研磨体が撓んだとしても接触することを防いで、研磨体10の送り出し動作をより安定化することができる。
【0083】
また、研磨カセット1は、一方向に長い矩形形状に形成され、研磨体10は、研磨カセット1の長手方向に沿って掛け渡されている。そして、収容部30は、研磨体10が掛け渡されている側に位置し、搬送部40は、研磨体10が掛け渡されている側とは反対側に、巻取部20が位置する側に研磨体10を一旦引き回す経路を有している。このような構成とすることで、球60を研磨する研磨領域を球60の移送方向に長く確保しつつ、研磨カセット1をコンパクトに形成することができる。
【0084】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 研磨カセット
4 巻取口
5 送出口
10 研磨体
11 ケース部材(箱体、透明部)
12 蓋部材(箱体)
15a 第1壁部
15b 第2壁部
20 巻取部
30 収容部
31 収容部出口
40 搬送部
41A 第1搬送ローラ
41B 第2搬送ローラ
41C 第3搬送ローラ
41D 第4搬送ローラ
100 遊技機
101 遊技盤
103 ベース
103a 開口部
104 発射装置
105 レール
106 球経路
107 スクリュー(移送部)