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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】車両用サスペンション構造
(51)【国際特許分類】
   B60G 9/04 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
B60G9/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021158937
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049282
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2024-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】能島 良輝
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-025440(JP,A)
【文献】特開2013-071496(JP,A)
【文献】実開昭62-148408(JP,U)
【文献】特開2005-199740(JP,A)
【文献】特開2013-049353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるドライブシャフトが貫通配置され、車輪用のハブが取り付けられるハブキャリアと、車幅方向両側の前記ハブキャリアを繋ぐ連接部材と、を有している車軸懸架式の車両用サスペンション構造において、
前記連接部材の車幅方向外側部には、前記ハブキャリアに接続される接続部が設けられ、前記連接部材の車幅方向の中間部は、前記ドライブシャフトから車両後方にオフセットして車幅方向に延び、前記中間部の車幅方向外側部には、車両前方に屈曲して前記接続部に繋がる屈曲部が設けられており、
前記ハブキャリアは、車幅方向に延びる円筒部を有し、該円筒部の車幅方向外側端には、前記ドライブシャフトが貫通する貫通孔が設けられ、
前記円筒部の上部には、懸架スプリングが設置されるスプリング設置部が設けられ、
前記スプリング設置部に対応する前記円筒部の内側には、前記円筒部の内側と前記連接部材とを繋ぐように延びる補強部材が設けられ、
前記補強部材は、前記円筒部の上部の内側面の湾曲形状に対応し、該内側面に接合されており、
前記補強部材には、複数の面が形成され、隣り合う前記面の境界に形成された稜線の延長線は、前記連接部材の前記屈曲部の外表面に繋がっていることを特徴とする、車両用サスペンション構造。
【請求項2】
前記複数の面は、車両内側を臨む第1面と、車両前方を臨む第2面とを含み、
前記稜線は、前記第1面と前記第2面との境界となる第1の稜線を含み、
前記第1の稜線は、前記スプリング設置部から車両下方に向かうに従い車幅方向内側且つ車両後方に向かって傾斜して延び、
前記第1の稜線の延長線が延びる方向は、前記延長線が前記連接部材の外表面に接する点における接線方向であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用サスペンション構造。
【請求項3】
前記補強部材の上部における車幅方向内側の端部は、前記円筒部の上部の内側面における車幅方向内側の端部の形状に対応するように形成され、
前記補強部材の上部における車幅方向内側の端部と、前記円筒部の上部の内側面における車幅方向内側の端部とが接合されており、
前記補強部材の下部における車幅方向内側の端部は、前記屈曲部の外表面に連続するように接続されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンション構造。
【請求項4】
前記複数の面は、前記第1面の下部及び前記第2面の下部に沿って延びる第3面を含み、該第3面は、前記連接部材に接合されており、
前記稜線は、前記第3面と、前記第1面及び前記第2面との境界となる第2の稜線を含み、該第2の稜線は、前記屈曲部の長手方向に沿って延びていることを特徴とする、請求項2に記載の車両用サスペンション構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車軸懸架式のサスペンションの一例であるドディオン式リアサスペンションは、車両後部に配置される。このようなリアサスペンションは、例えば、特許文献1に開示されているように、アクスルビームと、該アスクルビームの両端に設けられ、ハブが取り付けられているキャリアと、を有している。ハブは、キャリアに設けられたハブベアリングを介して回転自在に支持されている。
【0003】
また、ハブキャリアには、リアサスペンションの懸架スプリングが取り付けられるスプリング設置部が設けられている。そのため、ハブキャリアは、車両上下方向の荷重に対して、所定の強度を必要とする。この例では、ハブキャリアの内側面には、ハブベアリングの着脱を可能とする着脱用開口が形成されている。また、ハブキャリアには、着脱用開口に対して上方及び下方に設けられた上方張出部及び下方張出部が設けられ、上方張出部及び下方張出部は、両側の張出部の間を上下方向に延びる連結部によって、連結されている。
【0004】
このように構成することで、着脱用開口を大きく形成したことによるハブキャリアの上下方向への強度低下を抑制しようとしている。また、リアサスペンションにおいては、車両がバンプすること等によりハブキャリアに対して上下方向への荷重が作用した場合であっても、ハブキャリアが破損することを抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-071496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記例のハブキャリアは、車両上下方向に作用する荷重に対して、一定の強度を維持している。上記したように、ハブキャリアの外周部材だけでなく、上方張出部及び下方張出部を設け、これらを繋ぐことにより補強構造を構成している。このため、上記例の構造は、ハブキャリアの重量が増加する。
【0007】
また、ハブキャリアの重量増加は、懸架スプリングの下方側の重量増加することになるため、車両の運動性能にも影響する可能性がある。また、ハブキャリアに上方張出部及び下方張出部を設けているので、ハブキャリアのレイアウトが限定され、設計自由度が低下する可能性もある。そのため、懸架スプリングからハブキャリアに入力される車両上下方向の荷重に対して、応力集中を低減させ、周囲の部材に効果的に分散させようとする上で、上記例の構造には、改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、懸架スプリングからハブキャリアに入力される車両上下方向の荷重に対して、応力集中を低減させ、周囲の部材に効果的に分散させることが可能な車両用サスペンション構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る車両用サスペンション構造は、車幅方向に延びるドライブシャフトが貫通配置され、車輪用のハブが取り付けられるハブキャリアと、車幅方向両側の前記ハブキャリアを繋ぐ連接部材と、を有している車軸懸架式の車両用サスペンション構造において、前記連接部材の車幅方向外側部には、前記ハブキャリアに接続される接続部が設けられ、前記連接部材の車幅方向の中間部は、前記ドライブシャフトから車両後方にオフセットして車幅方向に延び、前記中間部の車幅方向外側部には、車両前方に屈曲して前記接続部に繋がる屈曲部が設けられており、前記ハブキャリアは、車幅方向に延びる円筒部を有し、該円筒部の車幅方向外側端には、前記ドライブシャフトが貫通する貫通孔が設けられ、前記円筒部の上部には、懸架スプリングが設置されるスプリング設置部が設けられ、前記スプリング設置部に対応する前記円筒部の内側には、前記円筒部の内側と前記連接部材とを繋ぐように延びる補強部材が設けられ、前記補強部材は、前記円筒部の上部の内側面の湾曲形状に対応し、該内側面に接合されており、前記補強部材には、複数の面が形成され、隣り合う前記面の境界に形成された稜線の延長線は、前記連接部材の前記屈曲部の外表面に繋がっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、懸架スプリングからハブキャリアに入力される車両上下方向の荷重に対して、応力集中を低減させ、周囲の部材に効果的に分散させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る車両用サスペンション構造の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の右側のハブキャリア等を拡大して示す拡大斜視図である。
図3図2のハブキャリア等を車両前方から見た正面図である。
図4図2のハブキャリア等を車幅方向内側から見た側面図である。
図5図2のハブキャリア等を車両上方から見た上面図である。
図6図2のハブキャリア等を車両下方から見た下面図である。
図7図2の補強部材を拡大して示す拡大斜視図である。
図8図2のハブキャリア等を車幅方向内側の斜め下方から見た斜視図である。
図9図8のA-A線に沿って切断した斜視断面図である。
図10図8のB-B線に沿って切断した斜視断面図である。
図11図1のハブキャリア及び連接部材に、ドライブシャフト、懸架スプリング及びラテラルロッドが取り付けられた状態を車両内側から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両の車両用サスペンション構造の一実施形態について、図面(図1図11)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの右側及び左側を示している。
【0013】
本実施形態の車両用サスペンション構造は、後輪(車輪)11が取り付けられる車軸懸架式のリアサスペンション10の構造を例に挙げて説明する。本実施形態のリアサスペンション10は、図1および図11に示すように、車幅方向に延びるドライブシャフト12が貫通配置され、後輪11が固定されるハブ(図示せず)が設けられているハブキャリア30と、車幅方向両側のハブキャリア30を繋ぐ連接部材20と、を有している。ハブは、図示しないハブベアリングを介して、ハブキャリア30に対して回転自在に取り付けられている。
【0014】
先ず、連接部材20について説明する。図1に示すように、連接部材20は、全体として車幅方向に延びる部材であり、連接部材20の車幅方向外側部には、ハブキャリア30に接続される接続部21が設けられている。また、連接部材20の車幅方向の中間部22は、駆動力を後輪11に伝達するドライブシャフト12から車両後方にオフセットして車幅方向に延びている。中間部22には、ラテラルロッド17(図11)が取り付けられるロッド取付ブラケット15が接合されている。また、中間部22の車幅方向外側部には、車両後方に屈曲して接続部21に繋がる屈曲部23が設けられている。
【0015】
屈曲部23は、車両前方に向かうに従い車幅方向外側に屈曲している。さらに、屈曲部23は、車両前方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜して延び、接続部21の車幅方向内側端に接続される。接続部21は、車幅方向に延び、接続部21の車幅方向外側端は、ハブキャリア30の後述する第2の貫通孔35bに挿入され固定される。
【0016】
次に、ハブキャリア30について説明する。図2図6に示すように、本実施形態のハブキャリア30は、上側部材31と、下側部材33と、外側部材35と、アブソーバ受部材49と、前側ブラケット41と、後側ブラケット45と、補強部材50と、を有している。上側部材31、下側部材33、外側部材35及び補強部材50は、ハブキャリア30の本体を構成し、上側部材31及び下側部材33によって、車幅方向に延びる円筒部30aを構成している。補強部材50は、円筒部30aの内側と連接部材20とを繋ぐように延びている。なお、図2図11には、右側のハブキャリア30及びその周辺の構成が示されている。左側のハブキャリア30及びその周辺の構成については、右側のハブキャリア30及びその周辺の構成と同様であるためここでの説明を省略する。以下、右側のハブキャリア30の各部材について説明する。
【0017】
上側部材31は、金属材料により形成されており、車幅方向に所定の長さを有し、車両上方に凸となるように湾曲し、車幅方向視で、車両上方に凸の略半円を形成している。また、上側部材31の上部には、懸架スプリング19が設置されるスプリング設置部31aが設けられている。スプリング設置部31aは、上側部材31の上部から車両上方に突出し、車両上方を臨む略円形の平坦な面を有している。当該面の上に懸架スプリング19が設置される(図11)。
【0018】
また、上側部材31の前側部における下端部は、車幅方向に延びており、この部分には、下側部材33が、例えば、溶接等により接合されている。また、図2に示すように、上側部材31の車幅方向外側端部は、上記したように略半円状に形成され、この部分には、外側部材35が溶接等により接合されている。
【0019】
また、上側部材31の後部には、図2図6に示すように、車幅方向内側に突出する拡張部31bが設けられている。拡張部31bは、円筒部30aの後部において、車幅方向内側に突出しており、拡張部31bの車幅方向内側端は、連接部材20の屈曲部23の長手方向に沿って延びている。すなわち、拡張部31bの車幅方向内側端は、車両後方に向かうに従い車幅方向内側に傾斜している。拡張部31bの車幅方向内側端と、連接部材20の屈曲部23とは、傾斜方向に沿って連続するように形成されている。また、上記したように拡張部31bの下部は、連接部材20に接合されている。さらに、この例では、スプリング設置部31aの一部は、拡張部31bに配置されている。
【0020】
また、上側部材31の後側部における下端部、及び拡張部31bの後側部における下端部は、車幅方向に連続するように延びており、この部分は、連接部材20の接続部21及び屈曲部23の上面に溶接等により接合されている。さらに、上側部材31の内側には、補強部材50が設けられている。補強部材50の詳細は後述する。
【0021】
下側部材33は、図2図6に示すように、上側部材31の車両下方側に配置される部材であり、金属材料により形成される部材である。下側部材33は、上側部材31と同様に車幅方向に所定の長さを有している。また、下側部材33は、車幅方向視で車両上方に開口する略半円を形成している。下側部材33の前側部における上端部は、車幅方向に延びており、この部分には、上記したように、上側部材31の前側部における下端部が接合されている。また、下側部材33の車幅方向外側端部は、上記したように略半円状に形成され、この部分には、上側部材31と同様に、外側部材35が溶接等により接合されている。さらに、下側部材33の後側部における上端部は、車幅方向に延びており、この部分は、連接部材20の接続部21の下面が溶接等により接合されている。
【0022】
図2及び図4に示すように、上側部材31と下側部材33とが接合され、いわゆるモナカ構造の中空の本体が構成される。該本体には、車幅方向に延びる円筒部30aが形成されている。円筒部30aと、連接部材20の接続部21は、車幅方向に延び、互いに平行である。当該円筒部30aの後部には、車幅方向に延びる幅方向開口30bが設けられている。この例では、上側部材31と下側部材33とが接合された状態で、車幅方向内側から見たときに、図2に示すように、車両後方に開口するいわゆるC字形状が形成されている。
【0023】
本実施形態では、上側部材31の後側部における下端部と、下側部材33の後側部における上端部とが、車両上下方向に互いに間隔を空けて配置されており、この間隔が、幅方向開口部30bとなる。また、連接部材20の接続部21は、幅方向開口30b内に配置された状態で、円筒部30aの後部に固定されている。この例では、連接部材20の接続部21の上面と下面が幅方向開口30b部の開口縁に接合されている。
【0024】
上記したように円筒部30aの上部(上側部材31)の内側には、補強部材50が設けられている。補強部材50は、図2図7に示すように、上側部材31の内側面31cと連接部材20の屈曲部23とを繋ぐように延びている。補強部材50は、上側部材31の内側面31cの湾曲形状に対応するように形成されている。該湾曲形状は、車両側方視(図4)で、上側部材31の内側面31cの円弧状の形状に対応している。本実施形態では、補強部材50の上部における車幅方向内側の端部が、上側部材31の内側面31cにおける車幅方向内側の端部(拡張部31b)の形状に対応するように形成されている。つまり、補強部材50の上部における車幅方向内側の端部は、車両後方に向かうに従い車幅方向内側且つ車両下方に傾斜している。このように形成された補強部材50の上部における車幅方向内側の端部と、上側部材31の内側面31cにおける車幅方向内側の端部(拡張部31b)とが溶接等により接合されている。補強部材50の下部は、連接部材20の屈曲部23の外表面に溶接等により接合されている。
【0025】
具体的に、補強部材50は、図7の拡大斜視図に示すように、金属材料により形成された板状の部材であり、複数(ここでは例えば3つ)の面51,52,53を有している。補強部材50の第1面51は、車両内側を臨むように形成され、第2面52は、車両前方の臨むように形成されている。第1面51と第2面52との境界には、第1の稜線50aが設けられている。第1の稜線50aは、上側部材31の内側面31cでスプリング設置部31aに対応する位置から車両下方に向かうに従い車幅方向内側且つ車両後方に向かって傾斜して延びている。第1の稜線50aの延長線が延びる方向は、図9図8のA-A線に沿って切断した斜視断面図)に示すように、該延長線が連接部材20の外表面に接する点Pにおける接線方向になっている。つまり、第1の稜線50aの延長線は、連接部材20の屈曲部23における外表面に滑らかに連続している。なお、図8のA-A線は、第1の稜線50aに沿った線である。第1面51の上部後側の端部は、第1溶接部W1(図7)によって、上側部材31の内側面31cにおける車幅方向内側の端部に接合されている。
【0026】
補強部材50の第3面53は、図7に示すように、第1面51の下部及び第2面52の下部に沿って延びている。第3面53の車幅方向内側の端部は、連接部材20の屈曲部23の外表面に連続するように接続されている。本実施形態における第3面53は、屈曲部23の外表面に沿うように延びている(図6)。第3面53と第1面51及び第2面52との境界には、第2の稜線50bが設けられている。第2の稜線50bは、第1の稜線の延長線と交差する位置付近で車両後方に緩やかに曲がっている。第2の稜線50bは、図10図8のB-B線に沿って切断した斜視断面図)に示すように、連接部材20の屈曲部23の長手方向に沿って延びている。なお、図8のB-B線は、第2の稜線50bに沿った線である。第3面53の車幅方向内側に位置する下端部は、第2溶接部W2(図7)によって、連接部材20の屈曲部23の外表面に接合されている。また、第3面53の車幅方向外側に位置する下端部は、第3溶接部W3によって、連接部材20の屈曲部23の外表面に接合されている。第3溶接部W3は、第3面53の下端部から車幅方向外側の角部に回り込むように形成されている。
【0027】
外側部材35は、図2図6に示すように、金属材料により形成され、上側部材31及び下側部材33の車幅方向外側に取り付けられる部材であり、円筒部30aの車幅方向端を塞いでいおり、車両前後方向に延びる板状の部材である。外側部材35には、ドライブシャフト12が貫通配置される第1の貫通孔(貫通孔)35aと、連接部材20が取り付けられる第2の貫通孔35bと、を有している。第1の貫通孔35aの周囲には、固定部材37が固定されている。固定部材37は、中央に貫通孔が形成される板状の部材で、当該貫通孔は、第1の貫通孔35aに連通している。
【0028】
本実施形態の円筒部30aには、車両前後方向に延びるトレーリングアーム14が取り付けられるアーム取付部30dが設けられている(図11)。アーム取付部30dは、前側ブラケット41及び後側ブラケット45を有しており、これらのブラケットは、円筒部30aの一部を車両下方側から取り囲むように構成されている。後側ブラケット45には、ショックアブソーバ18(図11)が設置されるアブソーバ受部材49(図2図6)が接合されている。アブソーバ受部材49は、連接部材20の屈曲部23の後面にも接合されている。
【0029】
また、本実施形態では、円筒部30aの車幅方向外側部には、ハブ固定部38が設けられている。この例では、ハブ固定部38は、上記したように外側部材35に固定された固定部材37に設けられている。また、ハブ固定部38は、円筒部30aの車幅方向外側の円筒内側の領域に、ハブが固定されている。
【0030】
次に、本実施形態の車両用サスペンション構造による作用について説明する。
上記のように構成された本実施形態の車両用サスペンション構造では、スプリング設置部31aが、上側部材31及び下側部材33により構成される円筒部30aの上部に設けられている。また、上側部材31の後側部における下端部が、連接部材20の接続部21に接合されている。すなわち、本実施形態では、スプリング設置部31aは、上側部材31の円筒状の後壁部を介して、連接部材20に接続されている。ハブキャリア30を円筒形状に形成することで、図11の白抜き矢印に示すように、懸架スプリング19から入力される荷重に対して、応力集中を低減し、当該荷重による応力を剛性の高いトレーリングアーム14や連接部材20に分散させることが可能となり、その結果、ハブキャリア30の剛性及び強度を向上させることが可能なる。
【0031】
加えて、本実施形態では、補強部材50が、スプリング設置部31aに対応する上側部材31の内側と連接部材20とを繋ぐように延びている。このような補強部材50を設けたことにより、懸架スプリング19から入力される荷重による応力が、ハブキャリア30の上側部材31だけでなく補強部材50も介して連接部材20に伝達されるようになる。これにより、ハブキャリア30の変形を抑えることができ、リアサスペンション10の性能低下を防ぐことが可能になる。また、補強部材50には、上側部材31及び連接部材20の間に架設される複数の面51~53及び稜線50a,50bが形成されていることで、補強部材50の強度が高まり、応力伝達効率を向上させることができる。さらに、補強部材50の稜線50a,50bの延長線が、連接部材20の屈曲部23の外表面に繋がっていることで、応力集中を防ぐことができ、連接部材20に対して応力を効率的に分散させることが可能になる。
【0032】
また、本実施形態の車両用サスペンション構造では、補強部材50の第1面51及び第2面52の間の第1の稜線50aが、スプリング設置部31aから車両下方に向かうに従い車幅方向内側且つ車両後方に向かって傾斜して延びているとともに、第1の稜線50aの延長線が延びる方向が、該延長線が連接部材20の外表面に接する点における接線方向となるように構成されている。このような補強部材50の構成では、第1の稜線50aの延長線が連接部材20の外表面に滑らかに連続するようになるので、円筒形のハブキャリア30の上側部材31の変形を効果的に抑えることができ、かつ、補強部材50の車幅方向内側に位置する下端部と連接部材20との接合部(第2溶接部W2)での応力集中を防ぐことができる。
【0033】
また、本実施形態の車両用サスペンション構造では、補強部材50の上部における車幅方向内側の端部(第1面51の上部後側の端部)が、円筒部30aの上部(上側部材31)の内側面31cにおける車幅方向内側の端部(拡張部31b)の形状に対応するように形成されて、各々の端部が接合されている。さらに、補強部材50の下部における車幅方向内側の端部は、連接部材20の屈曲部23の外表面に連続するように接続されている。このような補強部材50によれば、懸架スプリング19から入力される荷重による応力が、上側部材31及び補強部材50の接合部(第1溶接部W1)を介して補強部材50に効率的に分散されて連接部材20に伝達されるようになるので、円筒形のハブキャリア30の上側部材31の変形を更に効果的に抑えることができる。加えて、上側部材31及び補強部材50の接合部(第1溶接部W1)、並びに、補強部材50の接合部(第2及び第3溶接部W2,W3)での応力集中を防ぐことができる。
【0034】
また、本実施形態の車両用サスペンション構造では、補強部材50が第3面53及び第2の稜線50bを有し、第3面53が連接部材20に接合されており、第2の稜線50bが連接部材20の屈曲部23の長手方向に沿って延びている。このような補強部材50によれば、補強部材50の第1面51、第2面52及び第1の稜線50aに伝達された応力を、第3面53及び第2の稜線50bを介して連接部材20に一層効率的に伝達することができ、ハブキャリア30や補強部材50での応力集中をより効果的に防ぐことが可能になる。
【0035】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0036】
本実施形態では、ハブキャリア30の円筒部30aを、上下に並ぶ上側部材31及び下側部材33で構成しているが、これに限らない。円筒部30aを1つの部材で構成してもよい。また、補強部材50が3つの面51~53を有する一例を示したが、補強部材50に2つの面または4つ以上の面が形成されていてもよく、当該面の数に応じて稜線の本数も適宜に設定することが可能である。さらに、上側部材31の内側面31cにおける車幅方向内側の端部に補強部材50が接合される一例を示したが、上側部材31の内側面31cと補強部材50との接合位置は上記の一例に限定されず、スプリング設置部31aに対応する内側面31cの任意の位置に補強部材50を接合することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 リアサスペンション
11 後輪
12 ドライブシャフト
14 トレーリングアーム
15 ロッド取付ブラケット
17 ラテラルロッド
18 ショックアブソーバ
19 懸架スプリング
20 連接部材
21 接続部
22 中間部
23 屈曲部
30 ハブキャリア
30a 円筒部
30b 幅方向開口
30d アーム取付部
31 上側部材
31a スプリング設置部
31b 拡張部
33 下側部材
35 外側部材
35a 第1の貫通孔(貫通孔)
35b 第2の貫通孔
37 固定部材
38 ハブ固定部
41 前側ブラケット
45 後側ブラケット
49 アブソーバ受部材
50 補強部材
50a 第1の稜線
50b 第2の稜線
51 第1面
52 第2面
53 第3面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11