(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】転写ベルト及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2021177251
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2024-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津川 栞
(72)【発明者】
【氏名】福田 伊都
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-197571(JP,A)
【文献】特開2019-148729(JP,A)
【文献】特開2020-056928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層上に積層された表層と、を有する転写ベルトであって、
前記基材層の比誘電率が20~100の範囲内、
前記表層側の表面から深さ15μmまでの領域における比誘電率が5~10の範囲内であり、かつ
前記表層側の表面のマルテンス硬さが300~700N/mm
2の範囲内にあることを特徴とする転写ベルト。
【請求項2】
前記表層が、アルコキシシランを含む組成物の硬化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の転写ベルト。
【請求項3】
さらに、前記基材層と前記表層の間に中間層を有し、
前記中間層が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選ばれる樹脂を含有し、
前記中間層と前記表層の合計層厚が、10~20μmの範囲内にあり、かつ
前記基材層の層厚が、40~100μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転写ベルト。
【請求項4】
前記表層側の表面のマルテンス硬さが、500~600N/mm
2の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の転写ベルト。
【請求項5】
前記基材層の比誘電率が、40~100の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の転写ベルト。
【請求項6】
前記中間層の比誘電率が、5~10の範囲内にあることを特徴とする請求項3に記載の転写ベルト。
【請求項7】
前記表層の比誘電率が、2~5の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の転写ベルト。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の転写ベルトを具備することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ベルト及び電子写真画像形成装置に関し、より詳しくはトナー像や転写材を保持する機能を損なうことなく、転写性、クリーニング性、及び耐久性が付与された転写ベルト及び当該転写ベルトを具備する電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、例えば、像担持体(感光体)上に形成された潜像をトナーにより現像し、得られたトナー像をベルト状の転写部材である中間転写ベルト上に転写(一次転写)して一時的に保持させる。次いで、中間転写ベルト上のトナー像を紙等の転写材上に転写(二次転写)することが行われている。二次転写時には、転写材は二次転写ベルト(「用紙搬送ベルト」又は「転写搬送ベルト」とも呼ばれる。)上に載置されて、中間転写ベルトの位置まで搬送され、中間転写ベルトから転写材へのトナー像の転写(二次転写)は、二次転写ベルト上で行われる。
【0003】
この画像形成方法に用いる中間転写ベルト及び二次転写ベルト等の転写ベルトには、静電潜像担持体から中間転写ベルトへの、及び中間転写ベルトから二次転写ベルト上の転写材への良好なトナー転写性と、転写後の残留トナーをきれいに除去するクリーニング性が求められている。
【0004】
近年の電子写真画像形成装置においては、種々の転写材が用いられ、普通紙やOA専用紙だけでなく、厚紙やコート紙、さらには表面に凹凸のある紙等の紙種への対応が求められている。特に、中間転写ベルト及び二次転写ベルト等の転写ベルトの改良が求められている。
【0005】
ここで、一般的に、転写ベルトの静電容量が大きい方が転写率、転写材やトナー像の保持等の面で有利であることが知られている。しかし、静電容量を大きくすることで、転写ベルトに、紙粉や残留トナーといった異物を付着させやすくなってしまうといった問題が発生する。このような問題に対して、例えば、特許文献1には、二次転写ベルト(転写搬送ベルト)表面の表面エネルギーを小さくすることで、転写ベルトの汚染を軽減させる技術が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、帯電しているトナーが転写ベルトの表面に付着した場合には、汚染を軽減させる効果は不十分であり、電気的な力を低減する手段が必要になる。
【0006】
また、特許文献2には、表層の比誘電率が低い方がトナーと転写ベルトとの鏡像力が小さくなるとの技術思想から、転写ベルト全体の比誘電率が15以上であり、表層の比誘電率が6以下であるとともに、体積抵抗率が特定の範囲内にある中間転写ベルトの技術が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の中間転写ベルトでは、耐久性の観点から表層の硬度が低く設定された態様が好ましいとされており、その場合、トナー離形性は十分とは言えない。
【0007】
さらに、特許文献3には、表層として硬度が高いハードコート層を具備する中間転写ベルトの技術が記載され、当該構成により、トナーが中間転写ベルトへめり込むのを減らし、トナー離形性が向上されたとされている。ここで、特許文献3でハードコート層の構成材料として具体的に記載されている紫外線硬化樹脂等は、一般に用いられている基層材料に比べて比誘電率が低く、鏡像力低減効果もあると考えられる。しかし、鏡像力低減効果を得るためにはトナー層厚み程の低比誘電率のハードコート層が必要となるが、上記紫外線硬化樹脂等からなるハードコート層では割れ等の耐久性で問題が生じる。
【0008】
一方、中間転写ベルトにおいてトナー離形性を上げることで、トナー像の保持が困難になることが想定される。このような技術思想に基づいて、トナー像や転写材を十分に保持するという観点から、転写ベルトの表層の比誘電率を高くする技術が知られている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0009】
このように、中間転写ベルト及び二次転写ベルト等の転写ベルトにおいて、トナー像や転写材を十分に保持する機能を有しながら、トナー像の転写性、紙粉や残留トナー等の除去性能を示すクリーニング性、及び耐久性を十分に備えた転写ベルトが得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-53319号公報
【文献】特開2019-148729号公報
【文献】特開2009-192901号公報
【文献】特開2005-99181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、トナー像や転写材を保持する機能を損なうことなく、転写性、クリーニング性、及び耐久性が付与された転写ベルト及び当該転写ベルトを具備する電子写真画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、基材層と前記基材層上に積層された表層とを有する転写ベルトについて、前記基材層の比誘電率と、表層側の表面から深さ15μmまでの領域における比誘電率を、それぞれ特定の範囲内とし、かつ表層側の表面のマルテンス硬さを特定の範囲内とすることで、トナー像や転写材を保持する機能を損なうことなく、転写性、クリーニング性、及び耐久性が付与された転写ベルトを提供できることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0013】
1.基材層と、前記基材層上に積層された表層と、を有する転写ベルトであって、
前記基材層の比誘電率が20~100の範囲内、
前記表層側の表面から深さ15μmまでの領域における比誘電率が5~10の範囲内であり、かつ
前記表層側の表面のマルテンス硬さが300~700N/mm2の範囲内にあることを特徴とする転写ベルト。
【0014】
2.前記表層が、アルコキシシランを含む組成物の硬化物を含むことを特徴とする第1項に記載の転写ベルト。
【0015】
3.さらに、前記基材層と前記表層の間に中間層を有し、
前記中間層が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選ばれる樹脂を含有し、
前記中間層と前記表層の合計層厚が、10~20μmの範囲内にあり、かつ
前記基材層の層厚が、40~100μmの範囲内にあることを特徴とする第1項又は第2項に記載の転写ベルト。
【0016】
4.前記表層側の表面のマルテンス硬さが、500~600N/mm2の範囲内にあることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の転写ベルト。
【0017】
5.前記基材層の比誘電率が、40~100の範囲内にあることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の転写ベルト。
【0018】
6.前記中間層の比誘電率が、5~10の範囲内にあることを特徴とする第3項に記載の転写ベルト。
【0019】
7.前記表層の比誘電率が、2~5の範囲内にあることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の転写ベルト。
【0020】
8.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の転写ベルトを具備することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記手段により、トナー像や転写材を保持する機能を損なうことなく、転写性、クリーニング性、及び耐久性が付与された転写ベルト及び当該転写ベルトを具備する電子写真画像形成装置を提供することである。
【0022】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0023】
本発明の転写ベルトは、比誘電率が20~100の基材層と当該基材層上に積層された表層を有する構成であって、表層側の表面から深さ15μmまでの領域における比誘電率が5~10の範囲内である。当該領域の比誘電率が5~10の範囲内であるということは、十分に比誘電率が低く、かつ十分な厚さの層状の領域を有することを意味する。なお、本発明の転写ベルトにおいて、当該層状の領域は表層のみで構成されてもよく、表層と中間層で構成されてもよい。さらに、表層側の表面は、マルテンス硬さが300~700N/mm2の範囲内という十分に高い硬度を有する。
【0024】
本発明の転写ベルトを中間転写ベルトとして用いた場合、トナー像の一次転写及び二次転写が行なわれる表面側に、比誘電率が低く、トナー層の厚さに対応する厚さの層状の領域を有し、さらに当該表面が十分に高い硬度を有することで、二次転写におけるトナー像の離形性を向上させることができる。また、同様の作用機構により、二次転写後の残留トナーのクリーニング性も向上する。さらに、表層側の表面が高い硬度を有しながら、高硬度の表層を厚くしなくても、表層側の表面から比誘電率の低い領域が15μmの厚さで存在することで転写ベルトは耐久性にも優れる。
【0025】
また、本発明の転写ベルトは、比誘電率が低い層状の領域の内側に、20~100と十分に高い比誘電率を有する基材層を備えることで、中間転写ベルトとして用いた際に、トナーに働く電界を強くでき、上記比誘電率が低い層状の領域が存在することでトナーを引き寄せる力が弱くなったとしても、良好な一次転写を行うことができる。さらに、高い比誘電率の基材層には分極電荷が存在し、本発明の転写ベルトにおいては、一次転写から二次転写までの間、トナー像を十分に保持する能力を有する。加えて、二次転写時には逆バイアスがかかるため、上記分極電荷はすみやかに消失し逆極性に分極するため、中間転写ベルトから転写材への二次転写もスムーズに行える。
【0026】
本発明の転写ベルトは、二次転写ベルトとして用いた場合、比誘電率が低い層状の領域の内側に、20~100と十分に高い比誘電率を有する基材層を備えることで、良好な二次転写を行うことが可能であり、かつ、二次転写バイアスにより、転写ベルトが帯電し転写材を十分に吸着、保持することができる。また、二次転写ベルトにおいても、紙粉や残留トナーのクリーニング性及び耐久性に優れることは、中間転写ベルトの場合と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図3A】
図2に示す転写ベルトのX部分の拡大断面模式図
【
図3B】本発明の転写ベルトの別の一例における拡大断面模式図
【
図4】本発明の転写ベルトを作製するための装置の一実施形態
【
図5】本発明の転写ベルトを中間転写ベルトとして備えた電子写真画像形成装置の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の転写ベルトは、基材層と、前記基材層上に積層された表層と、を有する転写ベルトであって、前記基材層の比誘電率が20~100の範囲内、前記表層側の表面から深さ15μmまでの領域における比誘電率が5~10の範囲内であり、かつ前記表層側の表面のマルテンス硬さが300~700N/mm2の範囲内にあることを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0029】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、特に表層側の表面のマルテンス硬さを十分に高い硬度とする観点から、前記表層が、アルコキシシランを含む組成物の硬化物を含むことが好ましい。前記表層は、典型的には、アルコキシシランを含む組成物の硬化物からなることが、より好ましい。
【0030】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、さらに、前記基材層と前記表層の間に中間層を有し、前記中間層が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選ばれる樹脂を含有し、前記中間層と前記表層の合計層厚が、10~20μmの範囲内にあり、かつ前記基材層の層厚が、40~100μmの範囲内にあることが好ましい。
【0031】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記表層側の表面のマルテンス硬さが、500~600N/mm2の範囲内にあることが好ましい。また、前記基材層の比誘電率については、40~100の範囲内にあることが好ましい。前記中間層の比誘電率については、5~10の範囲内にあることが好ましい。前記表層の比誘電率については、2~5の範囲内にあることの少なくとも1つを満足することが好ましい。
【0032】
本発明の転写ベルトは、電子写真画像形成装置に好適に具備され得る。
【0033】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0034】
[転写ベルト]
本発明の転写ベルトは、基材層と、前記基材層上に積層された表層と、を有する転写ベルトであって、以下の(1)~(3)の要件を満足することを特徴とする。
(1)基材層の比誘電率が20~100の範囲内である。
(2)表層側の表面から深さ15μmまでの領域における比誘電率が5~10の範囲内である。
(3)表層側の表面のマルテンス硬さが300~700N/mm2の範囲内にある。
【0035】
本発明の転写ベルトは、基材層と基材層上に積層された表層を有する。本発明の転写ベルトは、上記(1)~(3)の要件を満たす限り、任意に基材層と表層以外のその他の層を有してもよい。その他の層としては、基材層と表層の間に配置される中間層が挙げられる。本発明の転写ベルトは、使用時には、例えば、中間転写ベルトの場合、表層側の表面にトナー像の転写等が行われる。また、二次転写ベルトの場合、使用時には、表層側の表面に転写材が載置される。
【0036】
本発明の転写ベルトの形状は、無端構造であることが、重畳による厚さ変化がなく、任意な部分を転写ベルトの回転の開始位置とすることができ、回転開始位置の制御機構を省略できる利点などを有し好ましい。
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の転写ベルトの実施形態について、無端構造の転写ベルトを例にして説明する。ただし、本発明の範囲は図示例に限定されない。
図1及び
図2は、本発明の転写ベルトの一例(無端構造の転写ベルト)が、2つの搬送用ローラーに張架されている状態における、平面図及びそのII-II線断面図である。
図3Aは、
図2に示す転写ベルトのX部分の拡大断面模式図である。
図3Bは、本発明の転写ベルトの別の一例における拡大断面模式図である。
【0038】
図1及び
図2において、本発明の転写ベルト1Aは2つの搬送用ローラーR1及びR2によりD方向に搬送可能に張架されている。転写ベルト1Aは、基材層2と基材層2上に積層された表層3からなる。転写ベルト1Aにおいて、搬送用ローラーR1及びR2に接する内周面が基材層2側の表面S2であり、外側に露出する外周面が表層3側の表面S1である。
【0039】
図3Bは、基材層2上に中間層4を有し中間層4上に表層3を有する転写ベルト1Bの拡大断面模式図を示す。転写ベルト1Bは、層構成が3層構成であること以外は、転写ベルト1Aと同様の無端構造の転写ベルトである。転写ベルト1Bを転写ベルト1Aの代わりに、
図1及び
図2に適用した場合、搬送用ローラーR1及びR2に接する内周面が基材層2側の表面S2であり、外側に露出する外周面が表層3側の表面S1である。
【0040】
図3A及び
図3Bを参照しながら、本発明の転写ベルトの(1)~(3)の要件について説明する。なお、
図3Aにおいて、転写ベルト1Aの厚さ、基材層2の層厚及び表層3の層厚をそれぞれ「Tt」、「Tb」及び「Ts」で示す。
図3Bにおいて、転写ベルト1Bの厚さ、基材層2の層厚、中間層4の層厚及び表層3の層厚をそれぞれ「Tt」、「Tb」、「Tm」及び「Ts」、で示す。
【0041】
転写ベルト1A及び1Bにおいて、(1)の要件により、基材層2の比誘電率は20~100の範囲内である。基材層2の比誘電率が上記範囲内であることで、転写ベルト1A及び1Bは、トナー像や転写材の保持性に優れる共に、転写性やクリーニング性の効果を低下させることもない。基材層2の比誘電率は、40~100の範囲内にあることが好ましく、60~80の範囲内にあることがより好ましい。なお、基材層2の比誘電率を上記範囲にするための構成材料については後述する。
【0042】
また、基材層2の層厚Tbは、20~300μmの範囲内が好ましく、30~200μmの範囲内がより好ましく、40~100μmの範囲内がさらに好ましい。基材層2の層厚Tbが上記範囲にあることで、転写ベルト1A及び1Bは、基材層2が高い比誘電率を有することの利点を享受し易く、トナー像や転写材の保持性、転写性、クリーニング性の効果を達成しやすい。
【0043】
転写ベルト1A及び1Bにおいて、(2)の要件により、表層3側の表面S1から深さ15μmまでの領域(以下、「領域L」ともいう。)における比誘電率が5~10の範囲内である。領域Lにおける比誘電率が上記範囲内であることで、転写ベルト1A及び1Bは、転写性やクリーニング性に優れる。領域Lにおける比誘電率は、5~8の範囲内にあることが好ましく、5~6の範囲内にあることがより好ましい。
【0044】
ここで、転写ベルト1Aは、転写ベルトが基材層と表層からなる2層構造の実施形態において、表層3の層厚Tsが15μm以上、すなわち領域Lの全てが表層3からなる例である。本発明の転写ベルトが基材層と表層からなる2層構造の場合、(2)の要件を満たす限り、領域Lにおける表層3の層厚と基材層2の厚さの割合は特に制限されず、例えば、15:0~10:5の範囲が適用できる。表層3の層厚Tsが15μm以上の場合、領域Lにおける基材層2の厚さは0μmであり、上記割合は15:0である。表層3の層厚Tsが10μmの場合、領域Lにおける基材層2の厚さは5μmであり上記割合は10:5である。
【0045】
なお、(1)~(3)の全要件を満たせば、基材層2の全てが領域L内に存在する、すなわち、表層3と基材層2の層厚の合計が15μmである態様も本発明に含まれる。ただし、転写ベルト1Aの厚さTt及び基材層2の層厚Tbを勘案すれば、領域Lの一部を構成しつつ領域Lを超えて基材層2が存在する又は領域Lの領域外に基材層2が存在する態様が好ましい。
【0046】
転写ベルト1Aにおいて、表層3の層厚Tsが15μm以上である場合、領域Lにおける比誘電率は表層3の比誘電率と同じである。表層3の層厚Tsが15μm未満の場合、領域Lは、表層3と基材層2の一部とからなる。その場合の領域Lにおける比誘電率は、以下の方法で測定される表層3の構成材料と基材層2の構成材料の一部とからなる混合材料の比誘電率に相当する。
【0047】
上記(2)の要件を満足させるために、転写ベルトが転写ベルト1Aのように基材層と表層の2層構造の場合には、表層3の比誘電率は、10以下であり、2~10の範囲内が好ましく、2~5がより好ましい。また、表層3の層厚Tsは、5μm以上であることが好ましく、5~20μmの範囲内がより好ましく、10~20μmの範囲内がさらに好ましい。表層3の比誘電率及び層厚が上記範囲にあることで、表層は低比誘電率かつトナー層の厚さに相当する層厚を有することとなり、トナー離形性がより向上する。なお、表層3の比誘電率を上記範囲にするための構成材料については後述する。
【0048】
また、転写ベルト1Bは、転写ベルトが基材層と中間層と表層からなる3層構造の実施形態において、表層3の層厚Tsと中間層4の層厚Tmの合計層厚が15μmである例である。転写ベルトが基材層と表層からなる2層構造の場合、基材層は(1)の要件により比誘電率が20~100と高く、表層は(2)の要件により比誘電率が10以下と低い関係である。転写ベルトが基材層と中間層と表層からなる3層構造の場合、基材層は(1)の要件により比誘電率が20~100と高いという要件は変わらないため、表層と中間層とで、上記2層構造の場合の表層と同様の機能を果たすことが好ましい。
【0049】
転写ベルト1Bにおいて、(2)の要件を満足する限り、領域Lにおける層構成は特に制限されない。例えば、領域Lが表層3のみからなってもよく、表層3と中間層4からなってもよく、表層3と中間層4と基材層2からなってもよい。領域Lは、表層3と中間層4からなる又は、表層3と中間層4と基材層2とからなる態様が好ましく、表層3と中間層4からなる態様がより好ましい。
【0050】
なお、転写ベルト1Bにおいても、(1)~(3)の全要件を満たせば、基材層2の全てが領域L内に存在する、すなわち、表層3と中間層4と基材層2の層厚の合計が15μmである態様も本発明に含まれる。ただし、転写ベルト1Bの厚さTt及び基材層2の層厚Tbを勘案すれば、領域Lの一部を構成しつつ領域Lを超えて基材層2が存在する又は領域Lの領域外に基材層2が存在する態様が好ましい。
【0051】
これらを勘案すると、転写ベルト1Bにおいて、表層3の層厚Tsと中間層4の層厚Tmの合計層厚は、10~20μmの範囲内にあることが好ましく、15~20μmの範囲内がより好ましい。転写ベルトが転写ベルト1Bのように基材層と中間層と表層の3層構造の場合には、上記(2)の要件を満足させるために、表層3と中間層4の比誘電率及び層厚が以下の組合せとなる態様が好ましい。
【0052】
表層3の比誘電率は、2~10の範囲内が好ましく、2~5がより好ましい。中間層4の比誘電率は、5~20の範囲内が好ましく、5~10がより好ましい。また、表層3の層厚Tsは、1~15μmの範囲内が好ましく、1~10μmの範囲内がより好ましい。中間層4の層厚Tmは、5~15μmの範囲内が好ましく、10~15μmの範囲内がより好ましい。表層3及び中間層4の合計層厚、各比誘電率及び各層厚が上記範囲にあることで、表層3及び中間層4は、低比誘電率かつトナー層の厚さに相当する層厚を有することとなり、トナー離形性がより向上する。なお、表層3及び中間層4の比誘電率を上記範囲にするための構成材料については後述する。
【0053】
また、転写ベルト1A及び1Bにおいて、(3)の要件により、表層3側の表面S1のマルテンス硬さは300~700N/mm2の範囲内にある。表層3側の表面S1のマルテンス硬さが上記範囲にあることで、転写ベルト1A及び1Bは、転写性、クリーニング性及び耐久性に優れる。表層3側の表面S1のマルテンス硬さは500~600N/mm2の範囲内にあることが好ましい。
【0054】
なお、表層3側の表面S1のマルテンス硬さを上記範囲にするためには、表層3の構成材料を適宜選択する。表層3の構成材料は、後述のとおり、(2)の要件を満たすような比誘電率を有し、かつ(3)の要件を満足させるものである。
【0055】
転写ベルト1A及び1Bの厚さTtは、上記(2)の要件を勘案すれば、15μm以上であり、その使用目的などに応じて適宜決定し得る。上記(2)の要件を満たす観点、及び一般には強度や柔軟性等の機械特性を満足する観点から、40~400μmが好ましく、65~300μmの範囲内がより好ましい。また、本発明の転写ベルトにおいて、上記(1)~(3)を満足する限り、転写ベルト自体の比誘電率は、特に制限されないが、20~100の範囲内が好ましく、40~80の範囲がより好ましい。
【0056】
転写ベルトにおける各構成層、領域L、及び転写ベルト自体の比誘電率は以下の方法で測定される比誘電率である。また、表層3側の表面S1のマルテンス硬さの測定方法を併せて以下に示す。
【0057】
<比誘電率>
本発明において、上記各測定対象の比誘電率は、温度23℃・湿度50%RHの環境下で測定される、周波数が1MHzにおける比誘電率をいう。比誘電率は、例えば、以下の方法によって算出することができる。
【0058】
転写ベルトの比誘電率を求めるために、まず、転写ベルトに対して、誘電率測定を行う。具体的には、転写ベルトの両面にスパッタ等で抵抗が1桁Ωの薄膜電極を形成し、10mmφの型で切り抜いて測定試料を作製し、インピーダンスアナライザー「12608W型」(Solartron Analytical社製)を用いて、周波数が1MHzの条件で、温度23℃・湿度50%RHの環境下、電極接触法にて、誘電率(F/m)を測定し、比誘電率に換算する。
【0059】
例えば、
図3Aに示す転送ベルト1Aの基材層2と表層3の各層の誘電率は、転送ベルト1Aの誘電率と、転写ベルト1Aから表層3を削り取って残った基材層2の誘電率を、上記同様にして測定し、その差分から表層3の誘電率を算出する。得られた誘電率を比誘電率に換算する。
【0060】
また、例えば、
図3Bに示す転送ベルト1Bは、基材層2と表層3の間に中間層4を有する構成である。この場合の、各層の誘電率は、転送ベルト1Bの誘電率と、転写ベルト1Aから表層3を削り取って残った中間層4と基材層2の積層体の誘電率、さらに当該積層体から中間層4を削り取って残った基材層2の誘電率を上記同様にして測定し、基材層3及び中間層4の誘電率を算出する。得られた誘電率を比誘電率に換算する。
【0061】
なお、転写ベルト及び各層の誘電率と厚さ、層厚の関係は、基材層と表層の2層構造の場合は、以下の式(I)で表すことができ、基材層と中間層と表層の3層構成の場合は、以下の式(II)で表すことができる。
【0062】
【0063】
式(I)及び式(II)中の各記号の意味は以下のとおりである。
ε:転写ベルトの誘電率
d:転写ベルトの厚さ(
図3A,3B中、「Tt」)
ε
1:表層の誘電率
ε
2:基材層の誘電率
ε
3:中間層の誘電率
d
1:表層の層厚(
図3A,3B中、「Ts」)
d
2:基材層の層厚(
図3A,3B中、「Tb」)
d
3:中間層の層厚(
図3B中、「Tm」)
【0064】
また、上記(2)要件における表層3側の表面S1から深さ15μmまでの領域(領域L)の誘電率は、
図3Aに示す転写ベルト1Aを用いて説明すると、転写ベルト1Aの誘電率と、転写ベルト1Aについて表層3側の表面S1から深さ15μmまでの領域(領域L)を削りとった残部の誘電率を上記同様にして測定し、その差分から領域Lの誘電率を算出する。得られた誘電率を比誘電率に換算する。
【0065】
<マルテンス硬さ>
本発明において、マルテンス硬さ(単位;N/mm2)とは、圧子を、荷重をかけながら測定対象物に押し込むことにより、下記式(III)として求められる。
式(III) マルテンス硬さ=(試験荷重[N])/(試験荷重下での圧子の測定対象物との接触表面積[mm2])
【0066】
マルテンス硬さの測定は、市販の硬度測定装置を用いて行うことができ、例えば、超微小硬度計「H-100V」(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定することができる。この測定装置では、四角錐形状の圧子を、試験荷重をかけながら被測定物に押し込み、所望の深さに達した時点でのその押し込み深さから圧子が被測定物と接触している表面積を求め、上記式(III)よりマルテンス硬さ[N/mm2]を算出する。
【0067】
(測定条件)
測定機:硬度計押し込み試験機「H-100V」(フィッシャー・インストルメンツ社製)
測定圧子:ビッカース圧子
測定環境:温度23℃・湿度50%RH
測定試料:5cm×5cmの大きさに転写ベルトを切断して測定試料を作製
最大試験荷重:1mN
荷重条件:最大試験荷重に10secで達する速度で、時間に比例して荷重を印可する。
荷重クリープ時間:5秒
なお、測定は各試料ともランダムに10点測定し、その平均値をマルテンス硬さ[N/mm2]とする。
【0068】
次に、本発明の転写ベルトが(1)~(3)の要件を満足させるための、本発明の転写ベルトの各層の構成材料等について説明する。
【0069】
(基材層)
基材層2は、(1)の要件を満足する、すなわち、比誘電率が20~100の範囲内である。基材層2は、(1)の要件を満足する限り、その構成材料は特に限定されない。
【0070】
転写ベルト1A及び1Bにおいて、基材層2は、典型的には、導電性を有する。基材層2の構成材料は、例えば、ベルト状、特に無端ベルトに成形するために、マトリックスとなる樹脂を含有し、かつ、導電性を付与するための導電剤を含有する。なお、当該構成材料において、導電剤が樹脂より比誘電率が高い場合には、導電剤は基材層2の導電性を調整する機能を有するとともに、比誘電率を調整する機能を兼ね備える。なお、導電剤を用いて、基材層2に導電性を付与する場合、転写ベルト1A及び1Bの印加電圧100Vの体積抵抗率が1.0×105~9.0×109Ω・cmの範囲内となるように、基材層2の導電性を調整することが好ましい。
【0071】
上記において、求められる導電性及び(1)の比誘電率の要件を満たす限り、基材層2は、樹脂と導電剤のみからなってもよい。ただし、基材層2に(1)のように高い比誘電率を付与するため、基材層2は、樹脂及び導電剤に加えて、比誘電率が100以上、好ましくは500以上の強誘電体を含有することが好ましい。なお、強誘電体は、通常、導電性を有しない。また、本明細書において、比誘電率は、温度23℃・湿度50%RHの環境下、周波数が1MHzにおける比誘電率をいう。
【0072】
基材層2は、(1)の要件を満たす限り、樹脂、導電剤及び強誘電体以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、導電剤及び強誘電体以外の無機充填剤、シリコーンオイル等のレベリング剤等が挙げられる。
【0073】
<樹脂>
基材層2に用いる樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
これらのうちでも、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の強度と耐久性をもつスーパーエンジニアリングプラスチックが好ましく、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂がより好ましい。中でもポリイミド樹脂は、耐熱性、耐屈曲性、柔軟性、寸法安定性等の特性に優れておりより好ましい。ポリイミド樹脂(以下、単に「ポリイミド」ともいう。)は、例えば、酸無水物とジアミン化合物からポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を合成し、当該ポリアミック酸を熱や触媒によってイミド化することにより得られる。
【0075】
ポリイミドの合成に使用される酸無水物としては、特に制限されないが、例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0076】
また、ポリイミドの合成に使用されるジアミン化合物としては、特に制限されないが、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4′-ジアミノジフェニルメタン、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、3,4′-ジアミノジフェニルエーテル、3,3′-ジメチル-4,4′-ジアミノビフェニル、2,2′-ビス(トリフルオロメチル)-4,4′-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5′-ジオキシド、4,4′-ジアミノベンゾフェノン、4,4′-ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4′-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0077】
なお、ポリイミドを含有する基材層を作製する際には、例えば、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を主成分とするポリイミドワニス等を用いることができる。ポリイミドワニスの市販品として、例えば、ユピア(登録商標)-AT(U-ワニス-A)、ユピア(登録商標)-ST(U-ワニス-S)いずれも宇部興産社製が挙げられる。
【0078】
ポリアミドイミド樹脂(以下、単に「ポリアミドイミド」ともいう。)は、分子骨格中に剛直なイミド基と柔軟性を付与するアミド基を有する樹脂であり、本発明に用いられるポリアミドイミドとしては一般的に知られている構造のものを使用することができる。
【0079】
一般的にポリアミドイミド樹脂を合成する方法としては、酸クロライド法(a):酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド、最も代表的には当該誘導体のクロライド化合物とジアミンとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭42-15637号公報参照。)が知られている。又は別な方法として、イソシアネート法(b):酸無水物基とカルボン酸を含む3価の誘導体と芳香族イソシアネートとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭44-19274号公報)等が知られており、いずれも使用することができる。
【0080】
例えば、トリメリット酸と芳香族ジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。この場合、芳香族ジアミンはポリイミドの原料と同じものを用いることができる。ジイソシアネートとしては、上記したジアミン成分におけるアミノ基がイソシアネート基に置換した化合物等が挙げられる。
【0081】
なお、ポリアミドイミドを含有する基材層を作製する際には、例えば、ポリアミドイミド前駆体を主成分とするポリイミドワニス等を用いることができる。ポリアミドイミドワニスの市販品として、例えば、HR-16NN(東洋紡社製)等を用いることができる。
【0082】
本発明に係る樹脂は、基材層2全体に対して、50~95体積%の範囲内で含有することが好ましい。50体積%以上であると、必要な機械的強度を有することができる。95体積%以下であると、強誘電体や導電剤を含有するスペースを確保することができる。
【0083】
<導電剤>
基材層2に用いる導電剤は、導電性を有する物質であれば特に限定されない。具体的には、公知の電子導電性物質、イオン導電性物質を用いることができ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト又はグラフェンであることが好ましく、カーボンブラック又はカーボンナノチューブであることが基材層に導電性を持たせることができる点、ハンドリングの容易さの点でより好ましい。
【0084】
本発明に用いられる導電剤の添加量としては、基材層2全体に対して、0.1~20体積%の範囲内で含有することが好ましい。0.1体積%以上であると、転写ベルト1A及び1Bの表層3側の表面S1におけるトナー汚染の発生を抑制し易く、20体積%以下であると、基材層2の強度やトナーの帯電量の低下が認められにくい。導電剤の添加量は、より好ましくは、0.5~15体積%の範囲内で、さらに好ましくは、1~10体積%の範囲内である。
【0085】
導電剤のうちカーボンブラックとしては、例えば、ガスブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。より少量の混合で所望の導電率を得るのに有効なものとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックとオイルファーネスブラックが挙げられる。なお、ケッチェンブラックとは、コンタクティブファーネス系のカーボンブラックである。
【0086】
カーボンブラックの平均一次粒径は、10~50nmの範囲内であることが好ましい。なお、平均一次粒径の測定はフォトンカウンティング方式を用いたFPAR-1000(大塚電子社製)の方法によって測定することができる。
【0087】
カーボンブラックとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、カーボンブラック「MA8」、「MA11」(いずれも、三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0088】
カーボンナノチューブ(以下、CNTと略記する。)とは、グラファイト六角網平面を筒状に丸めた状態の構造をもつ欠陥の無い単層、又はそれらが入れ子状に積層した多層のチューブ状物質である。CNTの平均管径は、10~150nmの範囲内であることが好ましく、CNTの長さは、5~12μmの範囲内であることが好ましい。CNTの直径及び長さを上記範囲にすることにより、基材層に適切な導電性を付与することができる。
【0089】
このCNTは、必要に応じて官能基を共有結合させてもよい。例えば、CNTを強酸処理することによって表面にカルボン酸が導入された酸化CNTを生成し、酸化CNTを塩化チオニルと反応させた後、アルキルアルコールなどと反応させることにより、有機溶媒に溶解する化学装飾CNTを生成することができる。このような化学装飾CNTを用いることにより、樹脂にCNTを均一に分散させることができる。また、樹脂にCNTを分散させた状態で外部から電界を印加することにより、CNTを所望の方向に配向することができ、基材層の比誘電率を向上させることができる。
【0090】
上記平均管系及び上記長さは、転写ベルトの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から求めることが可能であり、CNTの切断(粉砕)や2種以上のCNTの混合などによって調整することが可能である。
【0091】
<強誘電体>
基材層2に用いる強誘電体としては、比誘電率が20以上、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上である。これにより、基材層2に(1)の要件を満たす高い比誘電率(20~100)を付与しやすくなる。
【0092】
本発明に用いられる強誘電体の添加量は、基材層2の比誘電率を(1)の要件を満たすようにできる量であり、用いる強誘電体の種類によるが、例えば、基材層2全体に対して、5~40体積%の範囲内で含有することが好ましく、より好ましくは、10~30体積%の範囲内であり、さらに好ましくは、10~20体積%の範囲内である。
【0093】
強誘電体としては、強誘電体セラミックスが好ましく、チタン酸バリウム(比誘電率;1200)、チタン酸カルシウム(比誘電率;140)、チタン酸ストロンチウム(比誘電率;;200)、チタン酸マグネシウム(比誘電率;20)等が挙げられる。
【0094】
これらのうち、本発明に係る強誘電体としては、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム又はチタン酸ストロンチウムのうちの少なくとも1種の化合物を含有することが、誘電率の制御と耐久性の点で好ましい。
【0095】
強誘電体の形態は粒子であることが好ましい。本発明に係る強誘電体粒子は、平均一次粒径が、300nm以下であることが、分散性の点で好ましい。平均一次粒径の下限値は30nmであり、より好ましくは50nmであり、最適範囲は90~110nmの範囲内である。
【0096】
強誘電体粒子の平均一次粒径の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立ハイテク社製)による画像を解析することで測定できる。例えば、当該画像に存在する粒子のうち、無作為に200個以上の粒子を選択して粒子径を計測し、その平均値を求めればよい。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径と短径の平均値を個々の粒子の径として算出することができる。
【0097】
強誘電体粒子としては、市販品を用いることができる。市販品としては、チタン酸バリウム粒子「BT05」(堺化学工業社製)等が挙げられる。
【0098】
基材層2の、比誘電率及び層厚等の物性については上に説明したとおりである。
【0099】
(表層)
表層3は、転写ベルト1A及び1Bが(2)の要件を満足するために、上に説明したような、層厚及び比誘電率を有することが好ましい。また、表層3は、転写ベルト1A及び1Bが(3)の要件、すなわち、表層3側の表面S1におけるマルテンス硬さが300~700N/mm2の範囲内であるという要件を満たすように構成される。ここで、転写ベルト1A及び1Bにおける表層3側の表面S1は、表層3の主面のうち基材層2と反対側の主面を示す。以下、表層3側の表面S1を、「表層3の表面S1」ともいう。
【0100】
表層3の構成材料は、例えば、層の形態を保持するための成膜成分を必須成分として含有し、任意に比誘電率調整剤を含有する。成膜成分としては、表層3の表面S1のマルテンス硬さが上記範囲になるような材料が適宜選択される。成膜成分としては、例えば、それ単独で成膜した場合に表面のマルテンス硬さが300~700N/mm2の範囲に近い材料が好ましい。典型的には、このような成膜成分が表層3の構成材料の主成分となる。表層3は、転写ベルト1A及び1Bが(2)の要件を満足できるような、比誘電率を得るために、構成材料中に、上記成膜成分と比誘電率の異なる比誘電率調整剤を含有してもよい。
【0101】
転写ベルト1A及び1Bが(2)の要件を満足するために、表層3に対して設定された比誘電率が、成膜成分の比誘電率より小さい場合は、比誘電率調整剤として成膜成分の比誘電率より比誘電率が小さい材料が選択される。同様に、表層3に対して設定された比誘電率が、成膜成分の比誘電率より大きい場合は、比誘電率調整剤として成膜成分の比誘電率より比誘電率が大きい材料が選択される。なお、表層3に対して設定された比誘電率が、成膜成分の比誘電率と同じ場合は、比誘電率調整剤を用いる必要はない。
【0102】
表層3の成膜成分としては、例えば、表面のマルテンス硬さが、上記範囲に近い、有機材料、無機材料、及び有機無機複合材料が挙げられる。有機材料は典型的には樹脂であり、無機材料及び有機無機複合材料としてはゾルゲル材料を硬化して得られる硬化物が挙げられる。
【0103】
上記樹脂としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられ、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の強度と耐久性をもつスーパーエンジニアリングプラスチックが好ましい。これらの中でも、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂がより好ましい。中でもポリイミド樹脂は、耐熱性、耐屈曲性、柔軟性、寸法安定性等の特性に優れておりより好ましい。ポリイミド樹脂としては、基材層2で説明したのと同様のポリイミド樹脂を用いることができる。
【0104】
無機材料及び有機無機複合材料の原料となるゾルゲル材料としては、例えば、金属塩、金属アルコキシド等が挙げられ、本発明においては、転写性向上の理由から、アルコキシシランが好ましい。
【0105】
アルコキシシランは、より高いマルテンス硬さを得る観点から、4官能アルコキシシラン(「テトラアルコキシシラン」ともいう。)又は3官能アルコキシシラン(「トリアルコキシシラン」ともいう。)を含有することが好ましい。また、アルコキシシランは、硬化時の収縮を発生しにくくし、転写ベルトの端部の反りの発生を軽減する観点から、さらに、2官能アルコキシシラン(「ジアルコキシシラン」ともいう。)又は1官能アルコキシシラン(「モノアルコキシシラン」)ともいう。)を含有してもよい。
【0106】
アルコキシシランが、テトラアルコキシシラン又はトリアルコキシシランと、ジアルコキシシラン又はモノアルコキシシランとを含有する場合、全アルコキシシランに対して、テトラアルコキシシラン又はトリアルコキシシランを80~90質量%の範囲内で含有し、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを10~20質量%の範囲内で含有することが好ましい。
【0107】
アルコキシシランにおけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコール由来のアルコキシ基、フェノキシ基等の芳香族アルコール由来のアルコキシ基が挙げられる。
【0108】
また、1官能アルコキシシラン、2官能アルコキシシラン、3官能アルコキシシランが有する、ケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の一価有機基としては、炭素数1~18の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0109】
アルコキシシランとしては、例えば、1官能アルコキシシランとして、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン及びトリエチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0110】
2官能アルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン及びジエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0111】
3官能アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-テトラデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-テトラデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン及びn-オクタデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0112】
4官能アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-イソプロポキシシラン及びテトラフェノキシシラン等が挙げられる。
【0113】
上に例示した成膜成分の比誘電率は、例えば、ポリイミド樹脂の場合、3~10程度であり、アルコキシシランの硬化物の場合、2~5程度である。表層3の構成材料には、表層3の比誘電率の設定値に基づいて、成膜成分の種類に応じて、適宜比誘電率調整剤を含有させる。
【0114】
比誘電率調整剤としては、例えば、基材層2の項で説明した強誘電体及び導電剤を用いることができる。強誘電体としては、チタン酸バリウム等が挙げられ、導電剤としてはカーボンブラック等が挙げられる。
【0115】
表層3の構成材料における成膜成分に対する比誘電率調整剤の割合は、得られる表層3の表面S1におけるマルテンス硬さが300~700N/mm2となり、かつ、表層3の比誘電率が所定の値となる範囲に設定される。なお、表層3の構成材料は、必要に応じて、得られる表層3がマルテンス硬さ及び比誘電率の特性を損なわない範囲で、成膜成分及び比誘電率調整剤以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、基材層2の構成材料におけるその他の成分と同様の成分が挙げられる。
【0116】
表層3が成膜成分としてのゾルゲル材料の硬化物と比誘電率調整剤等の成分を含有する場合、表層3は、典型的には、ゾルゲル材料と比誘電率調整剤等の成分を含有する組成物を硬化させて得られる層である。本明細書において、「組成物の硬化物」とは、当該組成物が硬化性成分を含有し、当該硬化性成分が硬化することで組成物全体が硬化して得られる硬化物をいう。
【0117】
ここで、本発明の転写ベルトに係る(2)及び(3)の要件を満足させるための表層について、転写ベルト1Aのような基材層と表層とからなる2層構造の場合と、転写ベルト1Bのような基材層と中間層と表層とからなる3層構造の場合のそれぞれについて、好ましい態様を以下に説明する。なお、3層構造の場合、(2)の要件を満足させるための構成は、中間層と表層の対で考える必要がある。したがって、3層構造の場合は、表層と中間層を対にして説明した。
【0118】
<2層構造の場合の表層>
2層構造の場合の表層は、転写ベルト1Aを例にすると、表層3側の表面S1における硬さが(3)の要件、すなわち、マルテンス硬さが300~700N/mm2の範囲内であるという要件を満たすものである。また、上述したとおり、転写ベルト1Aが(2)の要件を満たすために、表層3は、例えば、層厚Tsが5μm以上であることが好ましく、5~20μmの範囲内がより好ましく、10~20μmの範囲内がさらに好ましい。また、表層3の比誘電率は、10以下であり、2~10の範囲内が好ましく、2~5がより好ましい。
【0119】
これらを勘案すると、転写ベルト1Aにおける表層3の構成材料は、成膜成分が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の強度と耐久性をもつスーパーエンジニアリングプラスチックから選ばれることが好ましく、ポリイミド樹脂であることがより好ましい。ポリイミド樹脂を用いた場合、表層3はポリイミド樹脂のみで構成され得る。ポリイミド樹脂を用いた場合、表層3は比誘電率調整剤を含有してもよく、例えば、比誘電率の設定値に応じて、表層3全体に対して、カーボンブラックを、1~15体積%の範囲内で含有することができる。また、表層3の比誘電率がポリイミド樹脂の比誘電率よりより高く設定される場合には、比誘電率調整剤としてチタン酸バリウムを用いてもよい。
【0120】
転写ベルト1Aにおける表層3は、成膜成分がポリイミド樹脂である場合、表面S1におけるマルテンス硬さを300~400N/mm2、比誘電率を3~10、層厚Tsを10~20μmとする態様が好ましい。
【0121】
<3層構造の場合の表層及び中間層>
3層構造の場合の表層は、転写ベルト1Bを例にすると、表層3側の表面S1における硬さが(3)の要件、すなわち、マルテンス硬さが300~700N/mm2の範囲内であるという要件を満たすものである。また、上述したとおり、転写ベルト1Bが(2)の要件を満たすようにするためには、例えば、表層3と中間層4の比誘電率及び層厚の組合せを適宜選択する。
【0122】
具体的には、上述したとおり、表層3の層厚Tsと中間層4の層厚Tmの合計層厚は、10~20μmの範囲内にあることが好ましく、15~20μmの範囲内がより好ましい。また、表層3の比誘電率は、2~10の範囲内が好ましく、2~5がより好ましい。中間層4の比誘電率は、5~20の範囲内が好ましく、5~10がより好ましい。さらに、表層3の層厚Tsは、1~15μmの範囲内が好ましく、1~10μmの範囲内がより好ましい。中間層4の層厚Tmは、5~15μmの範囲内が好ましく、10~15μmの範囲内がより好ましい。
【0123】
転写ベルト1Bにおける表層3の構成材料は、成膜成分が、上記した樹脂及びゾルゲル材料を硬化して得られる硬化物のいずれであってもよい。樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が好ましく、ポリイミド樹脂がより好ましい。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。マルテンス硬さを300~700N/mm2の内の高い範囲にできる観点からは、成膜成分は、ゾルゲル材料を硬化して得られる硬化物が好ましく、アルコキシシランの硬化物がより好ましい。
【0124】
転写ベルト1Bにおける表層3の構成材料において、成膜成分がポリイミド樹脂である場合、表層3はポリイミド樹脂のみで構成されてもよく、さらに、比誘電率調整剤を含有してもよい。成膜成分としてポリイミド樹脂を含有する、表層3の構成材料が比誘電率調整剤を含有する場合、例えば、比誘電率の設定値に応じて、表層3全体に対して、カーボンブラックを、1~15体積%の範囲内で含有することができる。また、表層3の比誘電率がポリイミド樹脂の比誘電率より、より高く設定される場合には、例えば、比誘電率調整剤としてチタン酸バリウムを、表層3全体に対して、1~15体積%の範囲内で用いてもよい。
【0125】
転写ベルト1Bにおける表層3は、成膜成分がポリイミド樹脂である場合、表面S1におけるマルテンス硬さを300~400N/mm2、比誘電率を6~8、層厚Tsを1~10μmとする態様が好ましい。
【0126】
転写ベルト1Bにおける表層3の構成材料において、成膜成分がアルコキシシランの硬化物である場合、表層3はアルコキシシランの硬化物のみで構成されてもよく、さらに、比誘電率調整剤を含有してもよい。成膜成分としてアルコキシシランの硬化物を含有する、表層3の構成材料が比誘電率調整剤を含有する場合、例えば、比誘電率の設定値に応じて、表層3全体に対して、チタン酸バリウムを、1~15体積%の範囲内で含有することができる。また、同様にカーボンブラックを、表層3全体に対して、1~15体積%の範囲内で含有することができる。
【0127】
転写ベルト1Bにおける表層3は、成膜成分がアルコキシシランの硬化物である場合、表面S1におけるマルテンス硬さを400~700N/mm2、比誘電率を2~6、層厚Tsを1~5μmとする態様が好ましい。
【0128】
転写ベルト1Bにおける中間層4は、転写ベルト1Bが(2)の要件を満足するために、上に説明したような、層厚及び比誘電率を有することが好ましい。中間層4の構成材料は、表層3の構成材料と同様に、例えば、層の形態を保持するための成膜成分を必須成分として含有し、任意に比誘電率調整剤を含有する。
【0129】
中間層4の成膜成分としては、基材層2に用いる樹脂と同様の樹脂が挙げられ、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が好ましく、ポリイミド樹脂がより好ましい。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
中間層4において、上記好ましい比誘電率を得るために、中間層4の構成材料は比誘電率調整剤を含有してもよい。例えば、転写ベルト1Bにおける中間層4の構成材料において、成膜成分がポリイミド樹脂である場合、上記好ましい比誘電率を得るために、中間層4はポリイミド樹脂のみで構成されてもよく、さらに、比誘電率調整剤を含有してもよい。
【0131】
成膜成分としてポリイミド樹脂を含有する、中間層4の構成材料が比誘電率調整剤を含有する場合、例えば、比誘電率の設定値に応じて、中間層4全体に対して、カーボンブラックを、1~15体積%の範囲内で含有することができる。また、中間層4の比誘電率がポリイミド樹脂の比誘電率より、より高く設定される場合には、例えば、比誘電率調整剤としてチタン酸バリウムを、中間層4全体に対して、1~40体積%の範囲内で用いてもよい。
【0132】
中間層4の、比誘電率及び層厚等の物性については上に説明したとおりである。
【0133】
[転写ベルトの製造方法]
本発明の転写ベルトの製造方法としては、転写ベルトを製造するための公知の方法が適用できる。例えば、無端構造の転写ベルトとする場合は、成形用金型として円筒状金型を用いて、金型の外周面又は内周面に、各層を順次成膜した後、金型から取り外すことで製造できる。成膜は、湿式法で行うことが好ましい。すなわち、まず、転写ベルトを構成する各層を成形するための塗布液を調製し、当該塗布液を用いて、塗布、乾燥、硬化により各層を、金型の外周面又は内周面に、所定の順番で形成する。
【0134】
以下、基材層2、中間層4、表層3の順に積層された3層構造の転写ベルト1Bを例にして、本発明の転写ベルトの製造方法を説明する。なお、以下の製造方法は例示であり、転写ベルトを製造できる任意の方法を用いることができる。
【0135】
(塗布液の調製)
塗布液として、基材層2、中間層4、表層3にそれぞれ対応した、基材層形成用塗布液、中間層形成用塗布液及び表層形成用塗布液が調製される。基材層2、中間層4、表層3の成膜成分が、樹脂である場合、塗布液は、樹脂自体を含有してもよく、ポリイミドワニスのように樹脂の前駆体を主成分とするワニス等を含有してもよい。
【0136】
基材層形成用塗布液は、樹脂又は樹脂前駆体以外に、導電剤を含有し、任意に強誘電体粒子を含有する。各成分の含有量は、例えば、得られる基材層において、上記の含有量となるように調整される。基材層形成用塗布液は、基材層を構成する固形分の他に、通常、乾燥・硬化の際に揮発して除去される揮発成分を含有する。揮発成分としては、例えば、溶媒等が挙げられる。基材層形成用塗布液の粘度は、塗布皮膜の厚さ、塗布方法、塗布条件、溶液温度等に応じて設定される。粘度の調整は、例えば、溶媒の種類又は含有量を調整することで行われる。
【0137】
なお、導電剤及び強誘電体粒子は、基材層形成用塗布液中での分散状態を良好なものにするために、予めこれら成分を分散媒に分散した分散液として調製し、これを基材層形成用塗布液の調製に用いてもよい。なお、分散液は、基材層の比誘電率や機械物性に影響を与えない程度に分散剤を含有してもよい。分散媒は、基材層形成用塗布液における溶媒と同じであることが好ましい。
【0138】
中間層4、表層3の成膜成分が樹脂である場合の中間層形成用塗布液及び表層形成用塗布液についても、基材層形成用塗布液と同様に調製できる。比誘電率調整剤として、導電剤又は強誘電体粒子を用いる場合は、上記同様に分散液を用いて各層形成用塗布液を調製することが好ましい。各成分の含有量は、例えば、得られる中間層及び表層において、上記の含有量となるように調整される。
【0139】
表層3の成膜成分がゾルゲル材料、例えば、アルコキシシランの硬化物である場合、表層形成用塗布液は、アルコキシシラン及び表層が含有する各成分を固形分として含有し、さらに揮発成分として溶媒等を含有する。使用する溶媒としては、アルコキシシラン及び有機成分を均一に分散、溶解できる溶媒であれば特に限定されることなく、例えば、メタノール、エタノール等の各種アルコールの他、アセトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。後述するアルコキシシランの加水分解は雰囲気中の水分により行うことができるが、表層形成用塗布液は、必要に応じて、アルコキシシランの加水分解のための水を含有してもよい。
【0140】
アルコキシシラン以外に導電剤、強誘電体粒子等の比誘電率調整剤を含有する場合は、上記同様に分散液を用いて表層形成用塗布液を調製することが好ましい。
【0141】
アルコキシシランは加水分解後、脱水縮合反応することにより硬化物を形成する。アルコキシシランの加水分解反応を促進させるために、表層形成用塗布液は、塩酸、リン酸、酢酸等の触媒を適宜含有してもよい。なお、表層形成用塗布液は、アルコキシシランを加水分解物として含有することもできる。加水分解物とすることで、脱水縮合反応が徐々に進行することがある。なお、塗布を円滑に行うための表層形成用塗布液の粘度は、10~100cPの範囲が好ましい。加水分解物とする際の加水分解の程度は、表層形成用塗布液の粘度が上記範囲を保持できる程度とすることが好ましい。
【0142】
(各層の形成)
次いで、円筒状金型の外周面又は内周面に、各層を順次形成(成膜)する。以下は、金型の外周面を用いて成膜を行う例である。金型の外周面に各層を成膜する順番は、各層の成膜成分が、全て樹脂、特には、ポリイミド樹脂である場合、基材層2、中間層4、表層3の順又は表層3、中間層4、基材層2の順である。表層3、中間層4、基材層2の順に成膜を行った場合、金型から取り外した後に、得られた積層体の内周面と外周面を反転させる。
【0143】
表層3の成膜成分が、アルコキシシランのようなゾルゲル材料の硬化物の場合、例えば、金型の外周面に基材層2、中間層4、表層3の順に成膜する方法、又は金型の外周面に中間層4、基材層2の順に積層体を成形し、金型から取り外した後に、得られた積層体を内周面と外周面を反転させた後、当該積層体に金型を嵌入し、当該積層体の外周面、すなわち中間層4の外周面に表層3を成膜する方法が挙げられる。
【0144】
以下、まず、各層の成膜成分が、全て樹脂であって、表層3、中間層4、基材層2の順に成膜を行う例を説明する。各層の成膜成分が、全て樹脂であって、基材層2、中間層4、表層3の順に成膜する場合は、層形成の順番を変える以外は同様である。
【0145】
円筒状金型の外周面への表層形成用塗布液の塗布は、例えば、
図4に示す装置により行うことができる。
図4は、本発明の転写ベルトを作製する際に用いる塗布装置の一例を示すものである。
図4に示されるように、塗布装置1bは、ノズルを有する塗布手段2b(例えば、ディスペンサノズル)と、金属製の円筒状金型5bとを備えている。
【0146】
塗布手段2bは、円筒状金型5bの外周面に対して表層形成用塗布液3bを霧状にして噴霧させ、円筒状金型5b上に塗布皮膜4bを形成させる。具体的には、円筒状金型5bは矢印7bの方向に所望の速度で回転させ、さらに矢印6bの方向に塗布手段2bを移動させながら、ノズルから表層形成用塗布液3bを流延させながら均一な塗布皮膜4bを形成させる。塗布皮膜4bの厚さは、乾燥、硬化後に得られる表層の厚さが所定の厚さとなるように調整される。
【0147】
円筒状金型5bの回転数は、表層形成用塗布液3bの粘度や円筒状金型5bの大きさ等に応じて適宜設定可能であり、例えば、30~100rpm程度が好適である。
【0148】
次いで外周面に形成された表層形成用塗布液からなる塗布皮膜は乾燥、硬化して表層3が形成される。塗布皮膜の乾燥は表層形成用塗布液中の溶媒等の揮発成分を除去する工程である。表層形成用塗布液が樹脂自体を含有する場合、乾燥により硬化が行なわれる。表層形成用塗布液が樹脂前駆体を含有する場合、硬化は表層形成用塗布液中の樹脂前駆体を硬化反応させ樹脂とする工程である。樹脂前駆体の硬化反応とは、例えば、ポリイミド前駆体のイミド化、又はポリアミドイミド前駆体のポリアミドイミド化である。
【0149】
乾燥は加熱により行われることが好ましく、硬化は反応温度に加熱することにより行われる。乾燥と硬化をともに加熱で行う場合、一段階の加熱処理で行ってもよいが、多段階加熱法で行ってもよい。多段加熱法を用いれば、硬化反応に伴い発生する閉環水や溶媒の蒸発に起因するシームレスベルトにおける微小ボイドの発生を防止することができる。
【0150】
第1段階の加熱は、低温加熱であり、例えば、加熱温度50~150℃程度の低温で加熱して溶媒を除去する。加熱時間は、表層形成用塗布液中の溶媒等の揮発成分の種類、含有量、及び加熱温度等に応じて適宜設定されるが、概ね30~90分程度が好ましい。なお、低温加熱は、低温加熱後の皮膜の状態が皮膜自身で支持できる状態、すなわち自己支持性を有する状態になるまで行うことが好ましい。また、低温加熱は、円筒状金型を軸周りに回転させながら行うことが好ましく、回転数としては、例えば、30~100rpm程度が好適である。さらに、この工程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。
【0151】
低温加熱後に行う硬化のための加熱は、高温加熱であり、樹脂前駆体の硬化反応の温度に応じて、例えば、加熱温度は250~450℃程度の高温とすることができる。加熱時間は、樹脂前駆体の種類、表層の厚さ及び加熱温度等に応じて適宜設定されるが、概ね30~120分程度が好ましい。なお、加熱処理に際しては、低温加熱及び高温加熱のいずれの場合も、昇温は段階的に行うことが好ましい。
【0152】
次いで、金型の外周面に形成された表層3の外周面に中間層形成用塗布液を塗布し、乾燥、硬化させ中間層4を形成する。中間層形成用塗布液の塗布、乾燥、硬化は、上記の表層形成用塗布液を用いて表層3を形成するのと同様の方法で行うことができる。さらに、金型の外周面に表層3、中間層4の順に積層された、中間層4の外周面に基材層形成用塗布液を塗布し、乾燥、硬化させ基材層2を形成する。基材層形成用塗布液の塗布、乾燥、硬化は、上記の表層形成用塗布液を用いて表層3を形成するのと同様の方法で行うことができる。
【0153】
なお、転写ベルト1Bの製造において、中間層3の形成(成膜)を省略することで、基材層2、表層3の順に積層された2層構造の転写ベルト1Aを製造することができる。
【0154】
次に、表層3の成膜成分が、アルコキシシランのようなゾルゲル材料の硬化物の場合について説明する。金型の外周面に基材層2、中間層4、表層3の順に成膜する場合、基材層2、中間層4の成膜は、上記各層の成膜成分が、全て樹脂である場合と同様に行うことができる。また、中間層4、基材層2の順に積層体を成形し、金型から取り外した後に、得られた積層体を内周面と外周面を反転させた後、当該積層体に金型を嵌入し、中間層4の外周面に表層3を成膜する方法において、中間層4、基材層2の順に積層体を成形する方法についても、上記各層の成膜成分が、全て樹脂である場合と同様に行うことができる。
【0155】
金型の外周面に、基材層2、中間層4の順に積層された積層体の外周面、すなわち中間層4の外周面に、成膜成分がゾルゲル材料、例えば、アルコキシシランの硬化物である表層3を形成するには、表層3を形成するための表層形成用塗布液として、上記アルコキシシラン又はその加水分解分物を含有する塗布液を用いる。
【0156】
具体的には、表層形成用塗布液を塗布して、塗布皮膜を形成し、この塗布皮膜中のアルコキシシランを加水分解、脱水縮合反応させることにより硬化させて、表層3を形成することができる。
【0157】
中間層4の外周面への表層形成用塗布液の塗布の方法は、例えば、スプレー塗布が好ましい。表層形成用塗布液の塗布皮膜はその後、乾燥、硬化処理が施されて表層3となる。塗布皮膜の乾燥は表層形成用塗布液中の溶媒等の揮発成分を除去する工程である。硬化処理は、アルコキシシランを加水分解、脱水縮合反応により硬化させる工程である。
【0158】
表層形成用塗布液の塗布皮膜の乾燥は、自然乾燥によって行ってもよいが、典型的には、加熱処理によって行う。ここで、乾燥のための加熱処理により、加水分解、脱水縮合反応による硬化も促進される。したがって、乾燥と硬化は、一段の加熱処理によって行うことができる。加熱処理の条件は、所定範囲の硬さを有する表層3を形成することができるのであれば特に限定されず、例えば、60~450℃、20秒~7時間の範囲で設定できる。塗布工程は、表層3の層厚に応じて、1回だけでなく、複数回行ってもよい。すなわち、表層3は、1コートからなるものであってもよいし、複数コートからなるものであってもよい。
【0159】
≪用途≫
本発明の転写ベルトは、電子写真画像形成装置において、像担持体(感光体)上に形成された潜像をトナーにより現像し、得られたトナー像を転写材に転写する中間転写ベルトとして用いることが好ましい。また、中間転写ベルト上のトナー像を紙等の転写材上に転写(二次転写)する際に、転写材が載置される二次転写ベルト(用紙搬送ベルト)として用いることも好ましい。
【0160】
[電子写真画像形成装置]
以上説明した本発明の転写ベルトは、モノクロの画像形成装置やフルカラーの画像形成装置など電子写真方式の公知の種々の画像形成装置における、中間転写ベルト又は二次転写ベルトとして好適に用いることができる。
【0161】
図3は、中間転写ベルトとして本発明の転写ベルトを備えた画像形成装置の構成の一例を示す断面図である。
【0162】
この画像形成装置は、複数組の画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkと、これらの画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkにおいて形成されたトナー像を転写材P上に転写する中間転写部10と、転写材Pに対して加熱しながら加圧してトナー像を定着させてトナー層を得る定着処理を行う定着装置30とを有する。
【0163】
画像形成ユニット20Yにおいてはイエローのトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Mにおいてはマゼンタ色のトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Cにおいてはシアン色のトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Bkにおいては黒色のトナー像形成が行われる。
【0164】
画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkは、静電潜像担持体である感光体11Y、11M、11C、11Bkと、当該感光体11Y、11M、11C、11Bkの表面に一様な電位を与える帯電手段23Y、23M、23C、23Bkと、一様に帯電された感光体11Y、11M、11C、11Bk上に所望の形状の静電潜像を形成する露光手段22Y、22M、22C、22Bkと、有彩色トナーを感光体11Y、11M、11C、11Bk上に搬送して静電潜像を顕像化する現像手段21Y、21M、21C、21Bkと、一次転写後に感光体11Y、11M、11C、11Bk上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段25Y、25M、25C、25Bkとを備えるものである。
【0165】
中間転写部10は、循環移動する中間転写ベルト16と、画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkによって形成されたトナー像を中間転写ベルト16に転写する、一次転写手段としての一次転写ローラー13Y、13M、13C、13Bkと、一次転写ローラー13Y、13M、13C、13Bkによって中間転写ベルト16上に転写された有彩色トナー像を転写材P上に転写する、二次転写手段としての二次転写ローラー13Aと、中間転写ベルト16上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段12とを有する。
【0166】
中間転写ベルト16として本発明の転写ベルトが用いられている。この中間転写ベルト16は、複数の支持ローラー16a~16dにより張架され、回動可能に支持された無端ベルト状のものである。
【0167】
画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkにより形成された各色のトナー像は、一次転写ローラー13Y、13M、13C、13Bkにより、回動する無端構造の中間転写ベルト16上に逐次転写されて、重畳されたカラー像が形成される。給紙カセット41内に収容された転写材Pは、給紙搬送手段42により給紙され、複数の中間ローラー44a~44d、レジストローラー46を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー13Aに搬送され、転写材P上にカラー像が一括転写される。カラー像が転写された転写材Pは、熱ローラー定着器が装着された定着装置30により定着処理され、排紙ローラーに挟持されて機外の排紙トレイ上に載置される。
【0168】
一方、二次転写ローラー13Aにより転写材Pにカラー像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端構造の中間転写ベルト16は、クリーニング手段12により残留トナーが除去される。
【0169】
以上のような画像形成装置によれば、中間転写ベルトが本発明の転写ベルトからなることにより、当該中間転写ベルトが、優れた転写性及びクリーニング性を有しながらも、高い耐久性を有するので、長期間にわたって画像品質の高い画像を形成することができる。
【0170】
〔現像剤〕
本発明の画像形成装置において用いられる現像剤は、磁性又は非磁性のトナーによる一成分現像剤であってもよく、トナーとキャリアとが混合された二成分現像剤であってもよい。現像剤を構成するトナーとしては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができる。例えば、体積基準のメジアン径が3~9μmであり、重合法によって得られた、いわゆる重合トナーを用いることが好ましい。重合トナーを用いることにより、形成される画像において高い解像力及び安定した画像濃度が得られるとともに画像カブリの発生が極めて抑制される。
【0171】
二成分現像剤を構成する場合のキャリアとしては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができる。例えば、体積基準のメジアン径が30~65μmであり、磁化量が20~70emu/gの磁性粒子からなるフェライトキャリアが好ましい。体積基準のメジアン径が30μm未満のキャリアを用いた場合は、キャリア付着が発生して白抜け画像が生じるおそれがあり、また、体積基準のメジアン径が65μmよりも大きなキャリアを用いた場合は、均一な画像濃度の画像が形成されない場合が生じうる。
【0172】
〔転写材〕
本発明の画像形成装置に使用される転写材Pとしては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本発明の転写ベルトを用いることで、転写材として凹凸紙を用いた場合においても、転写材へのトナー像の転写性が損なわれることなく、高画質の画像が形成できる。
【実施例】
【0173】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0174】
[実施例1]
図4に示すのと同様の装置により、ステンレス製の円筒状金型の外周面に表層及び基材層の順に各層を形成し、内周面と外周面を反転させることで、
図3Aに示す転写ベルト1Aと同様の基材層2と表層3からなる2層構造の無端ベルトとして、転写ベルト1を製造した。
【0175】
<分散液の調製>
以下の分散液A及び分散液Bを調製して、各層の形成用塗布液に用いた。
分散液A;チタン酸バリウム粒子「BT05」(堺化学工業株式会社製)を溶媒(N-メチル-2-ピロリドン)中に分散させた分散液。
分散液B;カーボンブラック「MA11」(三菱ケミカル社製)を溶媒(N-メチル-2-ピロリドン)中に分散させた分散液。
【0176】
<表層の形成>
分散液Bをポリイミドワニス「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)に、表層の固形分成分全体に対して、カーボンブラック5体積%となるように添加し、ミキサーを用いて混合して基材層形成用塗布液を調製した。
【0177】
次に、ステンレス製の円筒状金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから基材層形成用塗布液を乾燥後の層厚が20μmになるように吐出して、金型の外周面上にらせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0178】
次に、円筒状金型を回転させながら100℃で1時間加熱することによって、塗布皮膜から大部分の溶媒を揮発させ、その後、230℃で1時間加熱することにより、金型の外周面に無端ベルト状の表層を形成した。
【0179】
<基材層の形成>
分散液A及びBをポリイミドワニス「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)に、基材層の固形分成分全体に対して、チタン酸バリウム10体積%、カーボンブラック5体積%となるように添加し、ミキサーを用いて混合して基材層形成用塗布液を調製した。
【0180】
次に、上記で得られた、外周面に表層が形成された金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから基材層形成用塗布液を乾燥後の層厚が50μmになるように吐出して、金型の外周面に形成された表層の外周面に、らせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0181】
次に、上記金型を回転させながら100℃で1時間加熱することによって塗布皮膜から大部分の溶媒を揮発させ、その後、360℃で1時間加熱することにより、2層構造の無端ベルトを形成した。得られた無端ベルトを金型から取り外し、内周面と外周面を反転させて転写ベルト1とした。
【0182】
[実施例2]
実施例1と同様の装置により、ステンレス製の円筒状金型の外周面に表層、中間層及び基材層の順に各層を形成し、内周面と外周面を反転させることで、
図3Bに示す転写ベルト1Bと同様の基材層2と中間層4と表層3からなる3層構造の無端ベルトとして、転写ベルト2を製造した。
【0183】
<表層の形成>
「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)をステンレス製の円筒状金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから塗布液を乾燥後の層厚が5μmになるように吐出して、金型の外周面上にらせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0184】
次に、円筒状金型を回転させながら100℃で1時間加熱することによって塗布皮膜から大部分の溶媒を揮発させ、その後、230℃で1時間加熱することにより、金型の外周面に無端ベルト状の表層を形成した。
【0185】
<中間層の形成>
分散液Bをポリイミドワニス「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)に、中間層の固形分成分全体に対して、カーボンブラック5.5体積%となるように添加し、ミキサーを用いて混合して中間層形成用塗布液を調製した。
【0186】
上記で得られた、外周面に表層が形成された金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから中間層形成用塗布液を乾燥後の層厚が10μmになるように吐出して、金型の外周面に形成された表層の外周面に、らせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0187】
次に、上記金型を、回転させながら100℃で1時間加熱することによって塗布皮膜から大部分の溶媒を揮発させ、その後、230℃で1時間加熱することにより、金型の外周面に無端ベルト状の表層と中間層がその順に形成された積層体を得た。
【0188】
<基材層の形成>
分散液A及びBをポリイミドワニス「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)に、基材層の固形分成分全体に対して、チタン酸バリウム10体積%、カーボンブラック5体積%となるように添加し、ミキサーを用いて混合して基材層形成用塗布液を調製した。
【0189】
上記で得られた、外周面に表層と中間層が積層された金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから基材層形成用塗布液を乾燥後の層厚が50μmになるように吐出して、金型の外周面に形成された中間層の外周面に、らせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0190】
次に、上記金型を、回転させながら100℃で1時間加熱することによって塗布皮膜から大部分の溶媒を揮発させ、その後、360℃で1時間加熱することにより、金型の外周面に、無端ベルト状の表層、中間層及び基材層がその順に形成された積層体を得た。得られた無端ベルト状の積層体を金型から取り外し、内周面と外周面を反転させて転写ベルト2とした。
【0191】
[実施例3]
実施例1と同様の装置により、ステンレス製の円筒状金型の外周面に中間層及び基材層の順に各層を形成し、得られた積層体を金型から取り外す。さらに、内周面と外周面を反転させた積層体に金型を嵌入した後、中間層の外周面に表層を形成することで、
図3Bに示す転写ベルト1Bと同様の基材層2と中間層4と表層3からなる3層構造の無端ベルトとして、転写ベルト3を製造した。
【0192】
<中間層の形成>
分散液Bをポリイミドワニス「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)に、中間層の固形分成分全体に対して、カーボンブラック5.5体積%となるように添加し、ミキサーを用いて混合して中間層形成用塗布液を調製した。
【0193】
ステンレス製の円筒状金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから中間層形成用塗布液を乾燥後の層厚が12μmになるように吐出して、金型の外周面上にらせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0194】
次に、円筒状金型を回転させながら100℃で1時間加熱することによって大部分の溶媒を揮発させ、その後、230℃で1時間加熱することにより、金型の外周面に無端ベルト状の中間層を形成した。
【0195】
<基材層の形成>
分散液A及びBをポリイミドワニス「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)に、基材層の固形分成分全体に対して、チタン酸バリウム10体積%、カーボンブラック5体積%となるように添加し、ミキサーを用いて混合して基材層形成用塗布液を調製した。
【0196】
上記で得られた、外周面に中間層が形成された金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから基材層形成用塗布液を乾燥後の層厚が50μmになるように吐出して、金型の外周面に形成された中間層の外周面に、らせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0197】
次に、上記金型を回転させながら100℃で1時間加熱することによって大部分の溶媒を揮発させ、その後、360℃で1時間加熱することにより、金型の外周面に、無端ベルト状の中間層と基材層がその順に形成された積層体を得た。
【0198】
<表層の形成>
テトラエトキシシラン90g、トリエチルエトキシシラン10g及びブタノール100gを溶解し、さらに、チタン酸バリウムを表層の固形分成分全体に対して、3体積%となるように添加して表層形成用塗布液を調製した。
【0199】
中間層と基材層が積層された無端ベルト状の積層体を金型から外し、内周面と外周面を反転させた後、これに金型を嵌入した。金型を嵌入した積層体の中間層の外周面上に、表層形成用塗布液をコート層の乾燥層厚が3μmとなるように以下の塗布条件でスプレー塗布(スプレー装置:ワイディー・メカトロソリューションズ社製)して塗布皮膜を形成し、空気雰囲気下にて100℃で60分間焼成することで表層を形成し転写ベルト3を得た。
【0200】
<スプレー塗布条件>
ノズルスキャン速度:1~10mm/sec
ノズル距離:100~150mm
ノズル数:1
塗布液供給量:1~5mL/min
O2流量:2~6L/min、空気雰囲気
【0201】
[実施例4]
実施例3において、表層の層厚を4μm、中間層の層厚を11μmにする以外は同様にして、3層構造の転写ベルト4を製造した。
【0202】
[実施例5]
実施例3において、基材層のチタン酸バリウム添加量を基材層の固形分成分全体に対して20体積%とし、表層の層厚を4μm、中間層の層厚を11μmにする以外は同様にして、3層構造の転写ベルト5を製造した。
【0203】
[実施例6]
実施例3において、基材層のチタン酸バリウム添加量を基材層の固形分成分全体に対して20体積%にし、中間層のカーボンブラック添加量を中間層の固形分成分全体に対して5体積%とし、表層の層厚を2μm、中間層の層厚を13μmにする以外は同様にして、3層構造の転写ベルト6を製造した。
【0204】
[実施例7]
実施例3において、基材層のチタン酸バリウム添加量を基材層の固形分成分全体に対して20体積%、中間層のカーボンブラック添加量を中間層の固形分成分全体に対して5体積%、表層のチタン酸バリウム添加量を表層の固形分成分全体に対して2体積%、層厚を2μm、中間層の層厚を13μmにする以外は同様にして3層構造の転写ベルト7を製造した。
【0205】
[実施例8]
実施例1において、基材層のカーボンブラック添加量を基材層の固形分成分全体に対して10体積%、チタン酸バリウム添加量を基材層の固形分成分全体に対して30体積%、表層のカーボンブラック添加量を表層の固形分成分全体に対して3体積%にした以外は同様にして2層構造の転写ベルト8を製造した。
【0206】
[実施例9]
実施例3において、中間層のカーボンブラック添加量を8体積%、層厚を10μmにし、かつ、表層にチタン酸バリウムを添加せず、層厚を5μmにした以外は同様にして3層構造の転写ベルト9を製造した。
【0207】
[比較例1]
以下の方法で、2層構造の転写ベルト10を製造した。
【0208】
<基材層の形成>
分散液Bをポリイミドワニス「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)に、基材層の固形分成分全体に対して、カーボンブラック5体積%となるように添加し、ミキサーを用いて混合して基材層形成用塗布液を調製した。
【0209】
ステンレス製の円筒状金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから基材層形成用塗布液を乾燥後の層厚が50μmになるように吐出して、金型の外周面上にらせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0210】
次に、円筒状金型を回転させながら100℃で1時間加熱することによって大部分の溶媒を揮発させ、その後、360℃で1時間加熱することにより、金型の外周面に、無端ベルト状の基材層を形成した。
【0211】
<表層の形成>
特開2019-197147号公報に示されている方法で、次のようにして表層を形成した。すなわち、酸化亜鉛粒子100体積部に対して、表面処理剤である3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103;信越化学工業株式会社)8体積部と、溶媒(トルエン:メタノール=1:1(体積比)の混合溶媒)300体積部とを混合し、湿式メディア分散型装置を使用して45分間分散し、その後溶媒を除去した。続いて、150℃で10分間乾燥して、表面処理済みの酸化亜鉛1を得た。
【0212】
酸化スズ粒子100体積部に対して、表面処理剤である3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103;信越化学工業株式会社)20体積部と、溶媒(トルエン:イソプロピルアルコール=1:1(体積比)の混合溶媒)700体積部とを混合し、湿式メディア分散型装置を使用して40分間分散し、その後溶媒を除去した。続いて、150℃で10分間乾燥して、表面処理済みの酸化スズ1を得た。
【0213】
表面処理が施された酸化亜鉛1(第1粒子)10体積部と、表面処理が施された酸化スズ1(第2粒子)15体積部、モノマー1(KAYARAD DPEA-12;日本化薬株式会社)68体積部、光重合開始剤1(Irgacure OXE02;BASF社)5体積部、反応促進剤(KAYACURE EPA、日本化薬株式会社)2体積部とを、固形分濃度が15質量%となるように、溶剤であるメチルイソブチルケトン(MIBK)中に溶解、分散させることにより表層形成用の塗布液1を調製した
【0214】
基材層の外周面に、塗布液を、塗布装置を使用して浸漬塗布方法によって、20℃、相対湿度50%の環境において、乾燥層厚が1μmとなるように塗布して、塗布皮膜を形成した。次いで、形成した塗布皮膜に活性光線(活性エネルギー線)として紫外線を、下記の照射条件で照射することにより、塗布皮膜を硬化して基材層の外周面上に表層を形成した。なお、紫外線の照射は、光源を固定し、基材層の外周面上に塗布皮膜が形成された前駆体を周速度60mm/sで回転させながら行なった。
【0215】
(紫外線の照射条件)
光源の種類:LED光源(SPX-TA;アイグラフィックス社)
照射口から塗布皮膜の表面までの距離:50mm
雰囲気:窒素(酸素濃度;600ppm以下)
照射光量:3.3J/cm2
照射時間(前駆体の回転時間):240秒間
照射波長:365nm
【0216】
[比較例2]
基材層形成用 塗布液に分散液Aと分散液Bを基材層の固形分成分全体に対して、それぞれチタン酸バリウムの量が20体積%、カーボンブラック5体積%になるように添加した以外は実施例2と同様にして基材層を形成し、以下ように表層を形成して、2層構造の転写ベルト11を製造した。
【0217】
<表層の形成>
得られた基材層の外周面にポリフッ化ビニリデン「KYNAR 740」(東京材料株式会社製)のメチルエチルケトン溶液(固形分5質量%)を、浸漬塗布法による塗布装置を用いて、その乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布して塗布皮膜を形成し、60℃の熱風を10分間あてた後、120℃で20分間乾燥させた。
【0218】
[比較例3]
実施例3で中間層を形成せず、表層に添加するチタン酸バリウムの量を表層の固形分成分全体に対して2体積%にし、層厚を1μmにする以外は同様にして2層構造の転写ベルト12を製造した。
【0219】
[比較例4]
以下の方法で、3層構造の転写ベルト13を製造した。
<基材層の形成>
分散液Bをポリイミドワニス「ユピア-AT(U-ワニス-A)」(宇部興産社製)に、基材層の固形分成分全体に対して、カーボンブラック5体積%となるように添加し、ミキサーを用いて混合して基材層形成用塗布液を調製した。
【0220】
次に、ステンレス製の円筒状金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから基材層形成用塗布液を乾燥後の層厚が50μmになるように吐出して、金型の外周面上にらせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0221】
次に、円筒状金型を回転させながら100℃で1時間加熱することによって大部分の溶媒を揮発させ、その後、360℃で1時間加熱することにより、金型の外周面に、無端ベルト状の基材層を形成した。
【0222】
<中間層の形成>
分散液Bをカーボンブラックが中間層の固形分成分全体に対して5体積%となるようにし、弾性材料であるアクリロニトリルブタジエンゴム「Nipol(登録商標)1041」(NBR)(日本ゼオン社製)の38.5体積%と、弾性材料であるポリクロロプレンゴム「デンカクロロプレンDCR(登録商標)-66」(デンカ社製)の4体積%と、Al2O3の3体積%と、TiO2の1体積%と、SiO2の3体積%と、架橋剤である硫黄の10体積%とを、固形分濃度が20質量%となるよう、トルエン中に溶解、分散させることにより、中間層形成用塗布液を調製した。
【0223】
上記で得られた、外周面に基材層が形成された金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ当該ノズルから中間層形成用塗布液を乾燥後の層厚が15μmになるように吐出して、金型の外周面上にらせん状に塗布し、それらが繋がった塗布皮膜を形成した。
【0224】
次いで、上記金型を回転させながら50℃で1時間加熱することにより大部分の溶媒を揮発させ、その後、170℃で20分間加熱することで熱架橋処理を行うことにより、金型の外周面に、無端ベルト状の基材層と中間層がその順に形成された積層体を得た。
【0225】
<表層の形成>
比較例2において、表層に添加するチタン酸バリウムの量を表層の固形分成分全体に対して5体積%にし、表層の層厚を5μmとする以外は同様にして基材層と中間層がその順に形成された積層体の外周面上に表層を形成した。
【0226】
[比較例5]
実施例3において、中間層を形成せず以下のように表層を形成して、2層構造の転写ベルト14を製造した。
【0227】
<表層の形成>
ポリフッ化ビニリデン「KYNAR 740」(東京材料株式会社製)のメチルエチルケトン溶液(固形分5質量%)に表層の固形分成分全体に対して、チタン酸バリウムの添加量が10体積%になるように分散液Aを添加、ミキサーを用いて混合して表層形成用塗布液を調製した。
【0228】
得られた基材層の外周面に表層形成用塗布液を、浸漬塗布法による塗布装置を用いて、その乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布して塗布皮膜を形成し、60℃の熱風を10分間あてた後、120℃で20分間乾燥させた。
【0229】
[比較例6]
実施例1において、基材層に添加するチタン酸バリウムを40体積%にする以外は同様にして、2層構造の転写ベルト15を製造した。
【0230】
[物性測定・評価]
上記で得られた転写ベルト1~15を用いて以下の物性測定及び評価を行った。結果を転写ベルトの構成と共に表Iに示す。
【0231】
なお、表I中の略号については、PIはポリイミド樹脂、NBRはアクリロニトリルブタジエンゴム、CRはポリクロロプレンゴム、PVDFはポリフッ化ビニリデンを、CBはカーボンブラックをそれぞれ表す。
【0232】
<比誘電率及び層厚の測定>
転写ベルト1~15について、上記方法により、各層の比誘電率及び層厚を測定した。併せて表層側の表面から深さ15μmまでの領域における比誘電率を測定した。
【0233】
<マルテンス硬さの測定>
転写ベルト1~15について、上記方法により、表層側の表面におけるマルテンス硬さ[N/mm2]を測定した。
【0234】
<転写性評価>
以下の評価条件で、凹凸紙を用いた転写性評価を行い画質の優劣を比較した。レザック302g用紙を用い、凹部に対してトナーの転写状態をランク付けした。ランク3以上を合格とした。
【0235】
(評価条件)
環境:温度20℃、相対湿度50%
評価機:bizhub PRESS C1100(コニカミノルタ社製)
【0236】
(評価基準)
ランク5:完全に転写できている。
ランク4:2層部が数点抜けている。単色部は問題なし。
ランク3:2層部がまばらに抜けている。単色部は問題なし。
ランク2:単色部がまばらに抜けている。
ランク1:単色部が完全に抜けている。
【0237】
<クリーニング性評価>
以下の評価条件で、YMCKの各色の印字率が2.5%の画像を、A4サイズのコニカミノルタJペーパーに実写耐久印刷を行い、その後、MCハーフトーン画像を上記用紙に3枚印刷し、得られた3枚のハーフトーン画像を目視にて観察し、下記の基準で評価した。△、○及び◎が合格である。
【0238】
(評価条件)
環境:温度20℃、相対湿度50%
評価機:bizhub PRESS C1100(コニカミノルタ社製)
【0239】
(評価基準)
◎:200万枚実写後クリーニング不良なし(画像上にスジ等の不良が未発生)
○:100万枚実写後クリーニング不良なし(画像上にスジ等の不良が未発生)
△:100万枚実写後クリーニング不良あり(画像上にスジ等の不良が発生)
×:50万枚実写後クリーニング不良あり(画像上にスジ等の不良が発生)
【0240】
<耐久性評価>
以下の評価条件で、通紙耐久性試験を行い、ベルトの破損状況を比較した。△以上を合格とした。
(評価条件)
環境:温度20℃、相対湿度50%
評価機:bizhub PRESS C1100(コニカミノルタ社製)
通紙耐久試験:200万枚の通紙を行い、100万枚通紙時と200万枚通紙時のベルトの破損状況を比較した。
【0241】
(評価基準)
◎:200万枚耐久にて、割れなし。
○:100万枚耐久にて、割れなし。
△:100万枚耐久にて、端部に破損を確認。
×:100万枚耐久にて、端部に加え中央部に破損を確認。
【0242】
【0243】
表Iより、本発明の転写ベルトは、転写性、クリーニング性及び耐久性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0244】
1A、1B 転写ベルト
2 基材層
3 表層
4 中間層
10 中間転写部
11Y、11M、11C、11Bk 感光体
12 クリーニング手段
13Y、13M、13C、13Bk 一次転写ローラー
13A 二次転写ローラー
16 中間転写ベルト
16a~16d 支持ローラー
20Y、20M、20C、20Bk 画像形成ユニット
21Y、21M、21C、21Bk 現像手段
22Y、22M、22C、22Bk 露光手段
23Y、23M、23C、23Bk 帯電手段
25Y、25M、25C、25Bk クリーニング手段
30 定着装置
41 給紙カセット
42 給紙搬送手段
44a、44b、44c、44d 給紙ローラー
46 レジストローラー
N1 定着ニップ部
P 転写材