(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】エンジンのシリンダブロック
(51)【国際特許分類】
F02F 7/00 20060101AFI20250701BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
F02F7/00 G
F02F7/00 J
F02F7/00 301C
F02B77/00 B
(21)【出願番号】P 2021188063
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2024-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 雄太郎
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-118131(JP,A)
【文献】実開昭60-082556(JP,U)
【文献】実開昭56-167749(JP,U)
【文献】米国特許第5676105(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 7/00
F02B 77/00 ~ 77/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒が直列に配置されるシリンダ部と、
クランク軸を側方から囲むように前記シリンダ部の下部に設けられ、その下端にオイルパン取付フランジ部を有するスカート部と、
前記シリンダ部および前記スカート部の気筒列方向一端部に設けられる第1端壁部と、
前記シリンダ部および前記スカート部の気筒列方向他端部に設けられる第2端壁部と、を有するエンジンのシリンダブロックにおいて、
前記スカート部の外側面に、
前記スカート部の気筒列方向中央部でX字状に交差して配置され、前記第1端壁部と前記第2端壁部とに連結される第1補強リブおよび第2補強リブと、
前記第1補強リブおよび前記第2補強リブの下方にV字状に配置され、前記第1補強リブおよび前記第2補強リブと前記オイルパン取付フランジ部の気筒列方向中央部とに連結される第3補強リブおよび第4補強リブと、が形成され、
前記第3補強リブおよび第4補強リブは、前記V字の底部が前記オイルパン取付フランジ部の気筒列方向中央部に連結され、前記V字の上端部がそれぞれ前記第1補強リブと前記第2補強リブとに連結されることを特徴とするエンジンのシリンダブロック。
【請求項2】
前記スカート部は、前記クランク軸を支持する複数の隔壁を複数の前記気筒の間に有しており、
前記第3補強リブの上端および前記第4補強リブの上端は、前記スカート部の外側面における前記隔壁の外方側の部位で、前記第1補強リブまたは前記第2補強リブと連結されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのシリンダブロック。
【請求項3】
前記第3補強リブおよび前記第4補強リブは、前記第3補強リブと前記第4補強リブとの交点を通り気筒軸と平行な仮想線に対する傾斜角度が互いに異なるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのシリンダブロック。
【請求項4】
前記仮想線に対する前記第4補強リブの傾斜角度は、前記仮想線に対する前記第3補強リブの傾斜角度よりも大きく設定され、
前記第3補強リブが前記第1補強リブに連結され、
前記第4補強リブは前記第2補強リブに連結され、
前記第2補強リブは、前記第4補強リブとの連結部より気筒列方向で端部寄りに位置する屈曲部から前記オイルパン取付フランジ部と平行に延びるように屈曲していることを特徴とする請求項3に記載のエンジンのシリンダブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンのシリンダブロックとして、スカート部がクランク軸の下方の側面まで伸びるように形成されたディープスカート式のシリンダブロックがある。従来のこの種のシリンダブロックとして、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のシリンダブロックにおいて、シリンダブロックの前側面には、第2の補強リブと第3の補強リブとがX字形状に配置されている。これにより、特許文献1に記載のシリンダブロックは、変形するクランク軸によってスカート部がクランク軸周りに捩じられるように振動することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、スカート部におけるX字状のリブより下側の三角形状の領域が、クランク軸からの荷重によって変形して騒音が発生する場合があるため、検討の余地があった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、シリンダブロックの軽量化を図りつつ、エンジンの運転中にシリンダブロックの変形に伴って発生する騒音を抑制することができるエンジンのシリンダブロックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の気筒が直列に配置されるシリンダ部と、クランク軸を側方から囲むように前記シリンダ部の下部に設けられ、その下端にオイルパン取付フランジ部を有するスカート部と、前記シリンダ部および前記スカート部の気筒列方向一端部に設けられる第1端壁部と、前記シリンダ部および前記スカート部の気筒列方向他端部に設けられる第2端壁部と、を有するエンジンのシリンダブロックにおいて、前記スカート部の外側面に、前記スカート部の気筒列方向中央部でX字状に交差して配置され、前記第1端壁部と前記第2端壁部とに連結される第1補強リブおよび第2補強リブと、前記第1補強リブおよび前記第2補強リブの下方にV字状に配置され、前記第1補強リブおよび前記第2補強リブと前記オイルパン取付フランジ部の気筒列方向中央部とに連結される第3補強リブおよび第4補強リブと、が形成され、前記第3補強リブおよび第4補強リブは、前記V字の底部が前記オイルパン取付フランジ部の気筒列方向中央部に連結され、前記V字の上端部がそれぞれ前記第1補強リブと前記第2補強リブとに連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように上記の本発明によれば、シリンダブロックの軽量化を図りつつ、エンジンの運転中にシリンダブロックの変形に伴って発生する騒音を抑制することができるエンジンのシリンダブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るエンジンのシリンダブロックの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るエンジンのシリンダブロックの側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るエンジンのシリンダブロックの底面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すエンジンのシリンダブロックのIV-IV方向の矢視断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係るエンジンのシリンダブロックの変形状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、比較例に係るエンジンのシリンダブロックの変形状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係るエンジンのシリンダブロックは、複数の気筒が直列に配置されるシリンダ部と、クランク軸を側方から囲むようにシリンダ部の下部に設けられ、その下端にオイルパン取付フランジ部を有するスカート部と、シリンダ部およびスカート部の気筒列方向一端部に設けられる第1端壁部と、シリンダ部およびスカート部の気筒列方向他端部に設けられる第2端壁部と、を有するエンジンのシリンダブロックにおいて、スカート部の外側面に、スカート部の気筒列方向中央部でX字状に交差して配置され、第1端壁部と第2端壁部とに連結される第1補強リブおよび第2補強リブと、第1補強リブおよび第2補強リブの下方にV字状に配置され、第1補強リブおよび第2補強リブとオイルパン取付フランジ部の気筒列方向中央部とに連結される第3補強リブおよび第4補強リブと、が形成され、第3補強リブおよび第4補強リブは、V字の底部がオイルパン取付フランジ部の気筒列方向中央部に連結され、V字の上端部がそれぞれ第1補強リブと第2補強リブとに連結されることを特徴とする。
【0010】
これにより、本発明の一実施の形態に係るエンジンのシリンダブロックは、シリンダブロックの軽量化を図りつつ、エンジンの運転中にシリンダブロックの変形に伴って発生する騒音を抑制することができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係るエンジンのシリンダブロックについて、図面を用いて説明する。
図1から
図5は、本発明の一実施例に係るエンジンのシリンダブロックを示す図である。
図1から
図5において、前後左右の表示は、エンジンを搭載する車両の前後左右を表している。
【0012】
まず、構成を説明する。
図1、
図2において、エンジンのシリンダブロック1にはクランク軸9が設けられており、クランク軸9は前後方向に延びている。シリンダブロック1には、クランク軸9の軸心C(
図4参照)に沿って直列に配列された複数(本実施例では3つ)の気筒3が形成されており、各気筒3は上下方向に延びている。本実施例に係るエンジンは、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)式の縦置きエンジンである。
【0013】
シリンダブロック1は、複数の気筒3が直列に配置されるシリンダ部2と、クランク軸9を側方から囲むようにシリンダ部2の下部に設けられスカート部8と、を備えている。スカート部8の下端にはオイルパン取付フランジ部7が設けられている。
【0014】
シリンダブロック1の上側には図示しないシリンダヘッドが設けられている。シリンダヘッドは、空気を取り入れる吸気口と、排気ガスを排出する排気口と、吸気バルブおよび排気バルブ等を有する。吸気口はシリンダヘッドの右側壁に開口しており、排気口はシリンダヘッドの左側壁に開口している。
【0015】
シリンダヘッドの上側には図示しないシリンダヘッドカバーが設置されている。シリンダブロック1の下方には図示しないオイルパンが設置されており、オイルパンにはエンジンの潤滑用のオイルが貯留されている。
【0016】
スカート部8のオイルパン取付フランジ部7には、オイルパンがボルトによって連結されている。オイルパン取付フランジ部7は、オイルパンとの連結のための十分な剛性を有するように厚肉に形成されている。スカート部8の内部には、クランク室が形成されている。
【0017】
シリンダ部2の上面には、シリンダヘッドに連結される上部デッキ4が設けられている。上部デッキ4は、シリンダヘッドとの連結のための十分な剛性を有している。
【0018】
シリンダ部2およびスカート部8の気筒列方向一端部(前端部)には第1端壁部5が設けられている。シリンダ部2およびスカート部8の気筒列方向他端部(後端部)には第2端壁部6が設けられている。
【0019】
第1端壁部5は、シリンダブロック1の前端の外壁面を構成しており、シリンダ部2およびスカート部8よりも左右方向に突出している。第1端壁部5には、図示しない発電機等の補機がボルトによって連結される。
【0020】
第2端壁部6は、シリンダブロック1の後端の外壁面を構成しており、シリンダ部2およびスカート部8よりも左右方向に突出している。第2端壁部6には、図示しない変速機がボルトによって連結される。
【0021】
このように、第1端壁部5および第2端壁部6は、補機または変速機と連結されるフランジ部を構成しているため、補機または変速機との連結のための十分な剛性を有している。
【0022】
なお、本実施例では、シリンダブロック1の複数の気筒3の中心軸である気筒軸3C(
図2参照)が車両の上下方向と概ね平行になるようにエンジンが車両に搭載されているが、気筒軸3Cが左右の何れかの方向に傾斜するようにエンジンを車両に搭載してもよい。
【0023】
ここで、エンジンの運転中は、
図3に示すように、変形するクランク軸9がスカート部8を矢印Yの方向に捩じるように変形および振動させ、騒音を発生する。そこで、本実施例では、後述するX字状リブ17をスカート部8の外側面8Aに形成することによって、スカート部8の変形および振動を抑制している。
【0024】
図1、
図2において、スカート部8の左方の外側面8Aには、X字状のX字状リブ17が形成されている。X字状リブ17は、第1補強リブ11および第2補強リブ12から構成されており、スカート部8の左側の外側面8Aから外方(左方)に突出している。第1補強リブ11および第2補強リブ12は、スカート部8の気筒列方向中央部でX字状に交差して配置され、第1端壁部5と第2端壁部6とに連結されている。
【0025】
詳しくは、第1補強リブ11は、第1端壁部5から第2端壁部6に向かって斜め上方に伸びている。また、第2補強リブ12は、第1端壁部5から第2端壁部6に向かって斜め下方に伸びている。第1補強リブ11と第2補強リブ12とは、交点17Aにおいて交差している。気筒列方向中央部とは、気筒列の方向(前後方向)の中央部の付近の所定長さを有する領域である。したがって、第1補強リブ11および第2補強リブ12の交点17Aが配置されるスカート部8の気筒列方向中央部は、スカート部8の気筒列の方向(前後方向)の中央部の付近の所定長さを有する領域である。
【0026】
ここで、X字状リブ17によってスカート部8の外側面8Aの全体的な変形および振動が抑制されている状態であっても、外側面8AにおけるX字状リブ17より下側の三角形の領域Sがクランク軸9の径方向(
図2の手前または奥の方向)に変位して騒音を発生することがある。領域Sは、外側面8Aの一部の領域であり、第1補強リブ11と第2補強リブ12とオイルパン取付フランジ部7とに囲まれた領域である。エンジンの運転中にシリンダブロックの領域Sの変形に伴って発生する騒音を抑制することができるように、領域Sの剛性を高めることが好ましい。また、シリンダブロック1の軽量化を図りつつ、領域Sの剛性を高めることが好ましい。そこで、本実施例では、後述するV字状リブ18をスカート部8の外側面8Aに形成することによって、スカート部8の振動を抑制している。
【0027】
本実施例では、スカート部8の左方の外側面8Aにおける第1補強リブ11および第2補強リブ12の下方には、V字状のV字状リブ18が形成されている。V字状リブ18は、V字状に配置される第3補強リブ13および第4補強リブ14から構成されており、スカート部8の左側の外側面8Aから外方(左方)に突出している。第3補強リブ13および第4補強リブ14は、第1補強リブ11および第2補強リブ12とオイルパン取付フランジ部7の気筒列方向中央部とに連結されている。
【0028】
詳しくは、第3補強リブ13の上端部は、第2補強リブ12における交点17Aよりも前方かつ下方の部位に連結されている。第4補強リブ14は、第1補強リブ11における交点17Aよりも後方かつ下方の部位に連結されている。また、第3補強リブ13および第4補強リブ14の下端部は、オイルパン取付フランジ部7の気筒列方向中央部に連結されている。
【0029】
このように、第3補強リブ13および第4補強リブ14は、V字の底部となる交点18Aがオイルパン取付フランジ部7の気筒列方向中央部に連結されている。また、第3補強リブ13および第4補強リブ14は、V字の上端部がそれぞれ第1補強リブ11と第2補強リブ12とに連結されている。
【0030】
図3において、スカート部8は、クランク軸9を支持する複数(本実施例では2つ)の隔壁15、16を複数の気筒3の間に有している。隔壁15は、中央の気筒3と前端の気筒3との間に配置されており、左右方向に伸びている。隔壁16は、中央の気筒3と後端の気筒3との間に配置されており、左右方向に伸びている。隔壁15、16は、スカート部8の内面に連結されている。したがって、スカート部8における隔壁15、16と連結されている部位は、他の部位と比較して剛性が高い。
【0031】
図1、
図2において、第3補強リブ13の上端および第4補強リブ14の上端は、スカート部8の外側面8Aにおける隔壁15、16(
図3参照)の外方側の部位で、第1補強リブ11または第2補強リブ12と連結されている。詳しくは、第3補強リブ13の上端は、スカート部8の外側面8Aにおける隔壁15の外方側(左方側)の部位で、第1補強リブ11と連結されている。また、第4補強リブ14の上端は、スカート部8の外側面8Aにおける隔壁16の外方側(左方側)の部位で、第2補強リブ12と連結されている。したがって、スカート部8の外側面8Aにおける隔壁15によって剛性が高められた部位で、第3補強リブ13の上端と第1補強リブ11とが連結されている。また、スカート部8の外側面8Aにおける隔壁16によって剛性が高められた部位で、第4補強リブ14の上端と第2補強リブ12とが連結されている。
【0032】
なお、第1端壁部5、第2端壁部6、隔壁15、16の左右方向の中央部には、図示しないベアリングキャップが下方から装着される。ベアリングキャップは、クランク軸9を回転自在に支持する図示しないベアリングを保持している。したがって、第1端壁部5、第2端壁部6、隔壁15、16は、ベアリングを介してクランク軸9を支持している。
【0033】
図2において、第3補強リブ13および第4補強リブ14は、第3補強リブ13と第4補強リブ14との交点18Aを通り気筒軸3Cと平行な仮想線Lに対する傾斜角度A、Bが互いに異なるように傾斜している。詳しくは、仮想線Lに対する第4補強リブ14の傾斜角度Bは、仮想線Lに対する第3補強リブ13の傾斜角度Aよりも大きく設定されている。
【0034】
また、第3補強リブ13が第1補強リブ11に連結され、第4補強リブ14は第2補強リブ12に連結されている。そして、第2補強リブ12は、第4補強リブ14との連結部12Aより気筒列方向で端部寄りに位置する屈曲部12Bからオイルパン取付フランジ部7と平行に延びるように屈曲している。
【0035】
以上のように、本実施例では、スカート部8の外側面8Aに、スカート部8の気筒列方向中央部でX字状に交差して配置され、第1端壁部5と第2端壁部6とに連結される第1補強リブ11および第2補強リブ12と、第1補強リブ11および第2補強リブ12の下方にV字状に配置され、第1補強リブ11および第2補強リブ12とオイルパン取付フランジ部7の気筒列方向中央部とに連結される第3補強リブ13および第4補強リブ14と、が形成されている。そして、第3補強リブ13および第4補強リブ14は、V字の底部がオイルパン取付フランジ部7の気筒列方向中央部に連結され、V字の上端部がそれぞれ第1補強リブ11と第2補強リブ12とに連結されている。
【0036】
これにより、エンジンの運転中に、変形するクランク軸9がスカート部8を矢印Y(
図3参照)の方向に捩じるように振動させる際に、スカート部8に配置されたX字状に交差する第1補強リブ11と第2補強リブ12とによってスカート部8がクランク軸9周りに捩じれるように変形することを抑制できる。
【0037】
また、本実施例では、V字形状に配置される第3補強リブ13および第4補強リブ14を、V字の底部がオイルパン取付フランジ部7の気筒列方向中央部に連結され、V字の上端部が夫々第1補強リブ11と第2補強リブ12とに連結されるようスカート部8に配置したため、第1補強リブ11と第2補強リブ12とオイルパン取付フランジ部7とに囲まれた三角形状の領域Sの剛性を、第3補強リブ13と第4補強リブ14とによって向上させることができ、この領域Sの下部が外方に膨らんだり内方に凹んだりするように振動することを抑制できる。よって、シリンダブロック1から発生する振動騒音を抑制することができる。
【0038】
特に、エンジンの燃焼室内で発生する燃焼圧力振動の周波数やその回転に伴う加振力が、シリンダブロック1の固有振動数に共振することに起因する振動騒音の増大を防止でき、このシリンダブロック1から外部へ放射される騒音を効果的に軽減することができる。
【0039】
また、スカート部8に2つの第3補強リブ13および第4補強リブ14をV字状に配置する構成は、スカート部8に多数の補強リブを格子状に配置する構成と比較して、補強リブの数が少なくて済み、構造を簡素にできるため、シリンダブロック1の軽量化を図ることができる。
【0040】
この結果、シリンダブロック1の軽量化を図りつつ、エンジンの運転中にシリンダブロック1の変形に伴って発生する騒音を抑制することができる。
【0041】
なお、V字状リブ18を構成する第3補強リブ13および第4補強リブ14は、気筒軸3Cに対して傾斜しており、かつ、長さが短いため、シリンダブロック1を鋳造によって作成する際に、鋳型の第3補強リブ13および第4補強リブ14の部分に溶湯を行き渡らせることができ、生産性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施例では、スカート部8は、クランク軸9を支持する複数の隔壁15、16を複数の気筒3の間に有している。そして、第3補強リブ13の上端および第4補強リブ14の上端は、スカート部8の外側面8Aにおける隔壁15、16の外方側の部位で、第1補強リブ11または第2補強リブ12と連結されている。
【0043】
これにより、第3補強リブ13および第4補強リブ14の上端が、3つの気筒3の間に配置される隔壁15、16の外方側において第1補強リブ11または第2補強リブ12と連結されるため、第3補強リブ13および第4補強リブ14がクランク軸9と交差する方向へ振動することを抑制できる。
【0044】
また、本実施例では、第3補強リブ13および第4補強リブ14は、第3補強リブ13と第4補強リブ14との交点を通り気筒軸と平行な仮想線Lに対する傾斜角度が互いに異なるように傾斜している。
【0045】
これにより、
図5に示すように、オイルパン取付フランジ部7の最大変形部7Aがスカート部8の気筒列方向中央部から一方(前方)に偏った位置にある場合であっても、V字状リブ18のV字の底部の交点18Aを最大変形部7Aに近づけて配置でき、オイルパン取付フランジ部7の最大変形部7Aの振動を抑制できる。
【0046】
一方、
図6に示す比較例に係るシリンダブロック50は、本実施例に係るシリンダブロック1におけるシリンダ部2、第1端壁部5、第2端壁部6、オイルパン取付フランジ部7、スカート部8、第1補強リブ11および第2補強リブ12と同様の、シリンダ部52、第1端壁部55、第2端壁部56、オイルパン取付フランジ部57、スカート部58、第1補強リブ53および第2補強リブ54を備えているが、V字状リブ18を備えていない。このため、オイルパン取付フランジ部57の最大変形部57Aの振動を抑制することができない。
【0047】
また、本実施例では、仮想線Lに対する第4補強リブ14の傾斜角度は、仮想線Lに対する第3補強リブ13の傾斜角度よりも大きく設定されている。また、第3補強リブ13が第1補強リブ11に連結され、第4補強リブ14は第2補強リブ12に連結されている。そして、第2補強リブ12は、第4補強リブ14との連結部12Aより気筒列方向で端部寄りに位置する屈曲部12Bからオイルパン取付フランジ部7と平行に延びるように屈曲している。
【0048】
これにより、第3補強リブ13より大きな傾きを有する第4補強リブ14に連結される第2補強リブ12を屈曲部12Bで屈曲させることで、第2補強リブ12をスカート部8の上下方向の中央部の領域に収まるように配置でき、スカート部8の振動を抑制できる。
【0049】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0050】
1...シリンダブロック、2...シリンダ部、3...気筒、3C...気筒軸、5...第1端壁部、6...第2端壁部、7...オイルパン取付フランジ部、8...スカート部、8A...外側面、9...クランク軸、11...第1補強リブ、12...第2補強リブ、12A...連結部、12B...屈曲部、13...第3補強リブ、14...第4補強リブ、15,16...隔壁、17A...交点、A,B...傾斜角度、L...仮想線