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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】ハイブリッド式電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/30 20060101AFI20250701BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20250701BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20250701BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20250701BHJP
   F16H 61/12 20100101ALI20250701BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20250701BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
B60W10/30 900
B60K6/48 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F16H61/12
B60L50/16
B60L1/00 L
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021192560
(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公開番号】P2023079106
(43)【公開日】2023-06-07
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】小野本 敦
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/092856(WO,A1)
【文献】特開2015-074300(JP,A)
【文献】特開平09-286245(JP,A)
【文献】特開2021-178609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0171014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/30
B60K 6/48
B60W 10/06
B60W 10/08
F16H 61/12
B60L 50/16
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源として用いられるエンジンおよび電動機と、
前記エンジンと前記電動機との間の動力伝達を接続遮断する油圧式摩擦係合装置であるエンジン断接装置と、
前記駆動力源の少なくとも前記電動機によって回転駆動されることにより、前記エンジン断接装置を係合させる際に用いられる油圧を出力する機械式オイルポンプと、
ポンプ用電動機によって回転駆動されることにより、前記エンジン断接装置を係合させる際に用いられる油圧を出力する電動オイルポンプと、
を備えているハイブリッド式電動車両の制御装置において、
前記駆動力源が停止状態で該駆動力源による駆動走行が不能なレディOFF状態において、前記駆動力源による駆動走行を可能とするためのレディON操作が為された場合に、前記電動オイルポンプの駆動が制約されるポンプ駆動制約時か否かを判断し、前記ポンプ駆動制約時には、前記電動機を回転駆動することにより、前記機械式オイルポンプから出力される油圧により前記エンジン断接装置を係合させるとともに、該エンジン断接装置の係合制御により前記エンジンの回転速度を引き上げるプッシュ始動制御により前記エンジンをクランキングして始動し、該エンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするレディON制御部をし、
前記レディON制御部は、前記レディOFF状態において前記レディON操作が為された場合で前記ポンプ駆動制約時でない場合には、前記電動オイルポンプを駆動して前記エンジン断接装置を係合させた後に、前記電動機の回転速度を上昇させつつ前記エンジンの回転速度を上昇させる電動機始動制御により前記エンジンをクランキングして始動し、該エンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とし、
前記レディON制御部は、前記レディOFF状態において前記レディON操作が為された場合に、前記ポンプ駆動制約時には直ちに前記プッシュ始動制御により前記エンジンを始動して該エンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とする一方、前記ポンプ駆動制約時でない場合には、前記電動機始動制御により前記エンジンを始動して該エンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするか、前記エンジンを始動することなく前記電動機を駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするかを選択する
ことを特徴とするハイブリッド式電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド式電動車両の制御装置に係り、特に、レディON操作に従ってエンジンを始動してレディON状態とする制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 駆動力源として用いられるエンジンおよび電動機と、(b) 前記エンジンと前記電動機との間の動力伝達を接続遮断する油圧式摩擦係合装置であるエンジン断接装置と、(c) 前記駆動力源の少なくとも前記電動機によって回転駆動されることにより、前記エンジン断接装置を係合させる際に用いられる油圧を出力する機械式オイルポンプと、(d) ポンプ用電動機によって回転駆動されることにより、前記エンジン断接装置を係合させる際に用いられる油圧を出力する電動オイルポンプと、を備えているハイブリッド式電動車両が知られている。特許文献1に記載の車両はその一例で、エンジンの始動要求があった場合に、前記電動オイルポンプを駆動して前記エンジン断接装置を係合させた後に、前記電動機の回転速度を上昇させつつ前記エンジンをクランキングして始動する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-209790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、駆動力源による駆動走行が不能なレディOFF状態において、駆動力源による駆動走行を可能とするためのレディON操作が為された場合に、何らかの異常などで電動オイルポンプの駆動が制約されると、電動オイルポンプによりエンジン断接装置を係合させてエンジンを始動することができないため、走行性能が損なわれる可能性があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、電動オイルポンプの駆動が制約される場合でも、エンジン断接装置を係合させてエンジンを始動し、エンジン走行できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 駆動力源として用いられるエンジンおよび電動機と、(b) 前記エンジンと前記電動機との間の動力伝達を接続遮断する油圧式摩擦係合装置であるエンジン断接装置と、(c) 前記駆動力源の少なくとも前記電動機によって回転駆動されることにより、前記エンジン断接装置を係合させる際に用いられる油圧を出力する機械式オイルポンプと、(d) ポンプ用電動機によって回転駆動されることにより、前記エンジン断接装置を係合させる際に用いられる油圧を出力する電動オイルポンプと、を備えているハイブリッド式電動車両の制御装置において、(e) 前記駆動力源が停止状態でその駆動力源による駆動走行が不能なレディOFF状態において、前記駆動力源による駆動走行を可能とするためのレディON操作が為された場合に、前記電動オイルポンプの駆動が制約されるポンプ駆動制約時か否かを判断し、前記ポンプ駆動制約時には、前記電動機を回転駆動することにより、前記機械式オイルポンプから出力される油圧により前記エンジン断接装置を係合させるとともに、そのエンジン断接装置の係合制御により前記エンジンの回転速度を引き上げるプッシュ始動制御により前記エンジンをクランキングして始動し、そのエンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするレディON制御部をし、
前記レディON制御部は、前記レディOFF状態において前記レディON操作が為された場合で前記ポンプ駆動制約時でない場合には、前記電動オイルポンプを駆動して前記エンジン断接装置を係合させた後に、前記電動機の回転速度を上昇させつつ前記エンジンの回転速度を上昇させる電動機始動制御により前記エンジンをクランキングして始動し、そのエンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とし、
前記レディON制御部は、前記レディOFF状態において前記レディON操作が為された場合に、前記ポンプ駆動制約時には直ちに前記プッシュ始動制御により前記エンジンを始動してそのエンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とする一方、前記ポンプ駆動制約時でない場合には、前記電動機始動制御により前記エンジンを始動してそのエンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするか、前記エンジンを始動することなく前記電動機を駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするかを選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようなハイブリッド式電動車両の制御装置においては、レディOFF状態においてレディON操作が為された場合に、電動オイルポンプの駆動が制約されるポンプ駆動制約時には、電動機を回転駆動することにより、機械式オイルポンプから出力される油圧によりエンジン断接装置を係合させるとともに、そのエンジン断接装置の係合制御によりエンジンをクランキングするプッシュ始動制御を行なってエンジンを始動し、エンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするため、ポンプ駆動制約時でもエンジン発進できるなど走行性能を適切に確保できる。
また、レディOFF状態においてレディON操作が為された場合でポンプ駆動制約時でない場合には、電動オイルポンプを駆動してエンジン断接装置を係合させた後に、電動機の回転速度を上昇させつつエンジンをクランキングする電動機始動制御を行なってエンジンを始動し、エンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするため、エンジン断接装置の負荷を抑制しつつエンジンを始動して走行性能を適切に確保できる。
また、レディOFF状態においてレディON操作が為された場合において、ポンプ駆動制約時には直ちにプッシュ始動制御によりエンジンを始動してエンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とする一方、ポンプ駆動制約時でない場合には、電動機始動制御によりエンジンを始動してエンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするか、電動機を駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とするかを選択するため、ポンプ駆動制約時か否かに拘らず、エンジン始動により走行性能を適切に確保できる。また、電動機始動制御によれば、車両停止時でもエンジンの始動要求に応じて速やかにエンジンを始動することができるため、駆動力応答性を確保しつつエンジンの始動を抑制して燃費向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例である制御装置を備えているハイブリッド式電動車両の駆動系統を説明する概略構成図で、各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を併せて示した図である。
図2図1のハイブリッド式電動車両の電子制御装置が機能的に備えているレディON制御部の作動を具体的に説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、駆動力源としてエンジンおよび電動機を備えているパラレル型のハイブリッド式電動車両の制御装置に適用される。電動機としては、発電機としても用いることができるモータジェネレータが好適に用いられるが、発電機の機能が得られない電動機を採用することもできる。複数の電動機やモータジェネレータを備えていても良い。ハイブリッド式電動車両は、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型の後輪駆動車両や、途中に前輪側へ動力を分配するトランスファが設けられた前後輪駆動車両、トランスアクスル等のFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の前輪駆動車両など、種々の駆動型式の車両が対象となる。駆動力源と駆動輪との間の動力伝達経路には、必要に応じて流体式伝動装置や変速機等が設けられ、動力伝達を遮断することにより車両停止状態を保持したまま電動機を回転駆動できるように構成される。動力伝達を遮断するために、遊星歯車装置および差動制御用回転機を有する電気式差動部や、摩擦係合式の発進クラッチ等が設けられても良い。
【0014】
駆動力源による駆動走行を可能とするためのレディON操作は、例えばパワースイッチやイグニッションスイッチ、スタート/ストップスイッチ等の押圧操作や回転操作などで、車両の運転を開始する際の操作であり、シフトレバー位置やブレーキ操作の有無等の他の操作を条件として含んでも良い。イグニッションOFFやパワーOFFからのレディON操作に限らず、アクセサリ製品に電源供給されるアクセサリON状態なども、駆動力源による駆動走行が不能であればレディOFF状態であり、そのアクセサリON状態等からのレディON操作であっても良い。レディON状態とレディOFF状態とを切り換えるレディ切換スイッチ等が別個に設けられても良い。電動オイルポンプの駆動が制約されるポンプ駆動制約時は、例えばポンプ用電動機の断線等による電気系統の異常や電動オイルポンプの作動不良などのポンプ自体の異常の他、バッテリや作動油の油温などポンプ以外に起因する制約であっても良い。
【0015】
レディON操作が為された場合でポンプ駆動制約時には、常にプッシュ始動制御により直ちにエンジンを始動してエンジンを駆動力源とする駆動走行が可能なレディON状態とすることが望ましいが、エンジン始動要求等の始動条件を満たした場合にプッシュ始動制御によりエンジンを始動してレディON状態としても良いなど、種々の態様が可能である。ポンプ駆動制約時でない場合には、電動機始動制御によりエンジンを始動することが望ましいが、ポンプ駆動制約時と同様にプッシュ始動制御でエンジンを始動してレディON状態とすることも可能である。
【実施例
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比や角度、形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0017】
図1は、本発明の一実施例である制御装置として電子制御装置90を備えているハイブリッド式電動車両10(以下、単に電動車両10という。)の駆動系統の概略構成図で、電動車両10に関する各種制御のための制御機能および制御系統の要部を併せて示した図である。図1において、電動車両10は、走行用の駆動力源としてエンジン12および回転機MGを備えているパラレル型のハイブリッド式電動車両で、回転機MGは電動機に相当する。また、電動車両10は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16を備えている。駆動輪14は左右の後輪で、電動車両10は車両前側にエンジン12や回転機MGが搭載されたFR型の後輪駆動車両である。
【0018】
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン12は、スロットルアクチュエータや燃料噴射装置、点火装置等を含むエンジン制御機器50が電子制御装置90によって制御されることにより、エンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe が制御される。回転機MGは、電力から機械的な動力を発生させる電動機としての機能および機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有するモータジェネレータで、例えば三相交流同期モータ等であり、インバータ52を介してバッテリ54に接続されている。回転機MGは、電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、回転機MGのトルクであるMGトルクTmgや回転機MGの回転速度であるMG回転速度Nmgが制御される。回転機MGは、エンジン12に替えて或いはエンジン12に加えて、インバータ52を介してバッテリ54から供給される電力により走行用の動力を発生する。回転機MGはまた、エンジン12の動力や駆動輪14側から入力される被駆動力により回転駆動される際に、発電機として機能するように回生制御されることにより発電を行うとともに、駆動輪14に連結されている場合には回生ブレーキを発生する。回転機MGの発電により発生させられた電力は、インバータ52を介してバッテリ54に蓄積される。バッテリ54は、回転機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。
【0019】
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内において、エンジン12側からK0クラッチ20、トルクコンバータ22、および自動変速機24を直列に備えており、K0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の動力伝達経路に回転機MGが連結されている。K0クラッチ20は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12と回転機MGとの間に設けられたエンジン断接装置で、回転機MGとエンジン12との間の動力伝達を接続遮断する油圧式の摩擦係合装置である。トルクコンバータ22は、回転機MGと自動変速機24との間に設けられ、流体である作動油OIL を介して動力伝達する流体式伝動装置であり、K0クラッチ20を介してエンジン12に連結されている。自動変速機24は、トルクコンバータ22に連結されており、エンジン12および回転機MGと駆動輪14との間にトルクコンバータ22と直列に設けられた変速機である。動力伝達装置16は、自動変速機24の出力回転部材である出力軸26に連結されたプロペラシャフト28、プロペラシャフト28に連結されたディファレンシャルギヤ30、ディファレンシャルギヤ30に連結された一対のドライブシャフト32等を備えている。また、動力伝達装置16は、エンジン12とK0クラッチ20とを連結するエンジン連結軸34、K0クラッチ20とトルクコンバータ22とを連結するMG連結軸36等を備えており、MG連結軸36に回転機MGのロータが連結されている。
【0020】
K0クラッチ20は、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチにより構成される湿式または乾式(実施例では湿式)の摩擦係合装置である。K0クラッチ20は、油圧制御回路56から供給される調圧されたK0油圧PRk0によりK0クラッチ20のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、係合状態や開放状態などの制御状態が切り替えられる。K0クラッチ20の制御状態としては、例えばK0クラッチ20が完全に開放された開放状態、K0クラッチ20が滑りを伴って係合された状態であるスリップ係合状態、およびK0クラッチ20が完全に係合された状態である完全係合状態がある。K0クラッチ20の完全係合状態では、エンジン連結軸34を介して回転機MGのロータおよびポンプ翼車22aとエンジン12とが一体的に回転させられる。K0クラッチ20の開放状態では、回転機MGのロータおよびポンプ翼車22aとエンジン12との間の動力伝達が遮断され、エンジン12を停止させることができる。
【0021】
トルクコンバータ22は、MG連結軸36と連結されたポンプ翼車22a、および自動変速機24の入力回転部材である入力軸38と連結されたタービン翼車22bを備えている。ポンプ翼車22aは、K0クラッチ20を介してエンジン12と連結されていると共に、直接的に回転機MGと連結されている。ポンプ翼車22aはトルクコンバータ22の入力部材であり、タービン翼車22bはトルクコンバータ22の出力部材である。MG連結軸36は、トルクコンバータ22の入力回転部材でもある。入力軸38は、タービン翼車22bによって回転駆動されるタービン軸と一体的に形成されたトルクコンバータ22の出力回転部材でもある。トルクコンバータ22は、ポンプ翼車22aとタービン翼車22bとを連結するLUクラッチ40を備えている。LUクラッチ40は、トルクコンバータ22の入出力回転部材を連結する直結クラッチ、すなわちロックアップクラッチである。
【0022】
LUクラッチ40は、油圧制御回路56から供給される調圧されたLU油圧PRluによりLUクラッチ40のトルク容量であるLUクラッチトルクTluが変化させられることで、作動状態つまり制御状態が切り替えられる。LUクラッチ40の制御状態としては、LUクラッチ40が開放された状態である完全開放状態、LUクラッチ40が滑りを伴って係合された状態であるスリップ状態、およびLUクラッチ40が係合された状態である完全係合状態がある。LUクラッチ40が完全開放状態とされることにより、トルクコンバータ22はトルク増幅作用が得られるトルクコンバータ状態とされる。また、LUクラッチ40が完全係合状態とされることにより、トルクコンバータ22はポンプ翼車22aおよびタービン翼車22bが一体回転させられるロックアップ状態とされる。
【0023】
自動変速機24は、例えば1組または複数組の遊星歯車装置と、複数の係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路56から供給される調圧されたCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や開放状態などの制御状態が切り替えられる。
【0024】
自動変速機24は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合させられることによって、変速比γ(=入力回転速度Ni /出力回転速度No )が異なる複数の前進ギヤ段および後進ギヤ段を形成することができる有段変速機である。自動変速機24は、電子制御装置90によって、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等の運転状態に応じて形成されるギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のギヤ段が選択的に形成される。また、複数の係合装置CBが総て開放されると、動力伝達を遮断するニュートラルになる。入力回転速度Ni は、入力軸38の回転速度であり、自動変速機24の入力回転速度である。入力回転速度Ni は、トルクコンバータ22の出力回転速度であるタービン回転速度Nt と同値である。出力回転速度No は、出力軸26の回転速度であり、自動変速機24の出力回転速度である。
【0025】
動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ20が係合させられた場合に、エンジン連結軸34から、K0クラッチ20、MG連結軸36、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、およびドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。また、回転機MGから出力される動力は、K0クラッチ20の制御状態に拘わらず、MG連結軸36から、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、およびドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
【0026】
電動車両10は、機械式オイルポンプであるMOP58、電動オイルポンプであるEOP60、ポンプ用電動機62等を備えている。MOP58は、ポンプ翼車22aに連結されており、駆動力源(エンジン12、回転機MG)によって回転駆動されることにより、動力伝達装置16で用いられる作動油OIL を吐出する。ポンプ用電動機62は、EOP60を回転駆動するためのEOP60専用の電動機である。EOP60は、ポンプ用電動機62により回転駆動されて作動油OIL を吐出するもので、電動車両10の停止時を含めた任意のタイミングで作動油OIL を吐出することができる。MOP58やEOP60が吐出した作動油OIL は、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、MOP58および/またはEOP60が吐出した作動油OIL を元にして各々調圧した、CB油圧PRcb、K0油圧PRk0、LU油圧PRluなどを出力する。作動油OIL は、トルクコンバータ22に供給されて動力伝達に用いられる他、各部の潤滑や冷却にも用いられる。作動油OIL は、ケース18の下部に設けられたオイルパン等の油溜に蓄積されるとともに、MOP58および/またはEOP60により汲み上げられて油圧制御回路56へ供給される。
【0027】
電動車両10は、各種の制御を実行する制御装置として電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより電動車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、MG制御用、油圧制御用等の複数のコンピュータを含んで構成される。
【0028】
電子制御装置90には、電動車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、MG回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、ブレーキスイッチ82、バッテリセンサ84、油温センサ86、レバーポジションセンサ88、パワースイッチ89など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne 、入力回転速度Ni と同値であるタービン回転速度Nt 、車速Vに対応する出力回転速度No 、回転機MGの回転速度であるMG回転速度Nmg、アクセルペダル等のアクセル操作部材79の操作量で運転者の出力要求量を表すアクセル開度θacc 、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキON信号Bon、バッテリ54のバッテリ温度THbat やバッテリ充放電電流Ibat やバッテリ電圧Vbat 、油圧制御回路56内の作動油OIL の温度である油温THoil 、電動車両10に備えられたシフトレバー64の操作ポジションPOSshを表す信号、パワースイッチ押圧信号Spwなど)が、それぞれ供給される。パワースイッチ89は運転席近傍に配置された自動復帰型の押釦スイッチで、電動車両10の運転開始時や運転終了時等に運転者によって押圧操作されることによりパワースイッチ押圧信号Spwが出力され、駆動力源(エンジン12、回転機MG)による駆動走行が不能なレディOFFとその駆動走行が可能なレディONとを切り替えたり、各部の電源のON、OFFを切り替えたりする各種の制御に用いられる。
【0029】
シフトレバー64は運転席の近傍に配置され、自動変速機24の動力伝達状態であるシフトレンジを切り替えるために運転者によって操作されるシフト操作部材で、複数の操作ポジションPOSshを備えている。操作ポジションPOSshとして、例えばP、R、N、Dの複数のポジションが設けられており、シフトレンジとしてP、R、N、Dの各レンジを選択することができる。Pポジションは、自動変速機24が動力伝達を遮断するニュートラル状態とされ且つ機械的に出力軸26の回転が阻止される駐車用のP(パーキング)レンジを選択する操作ポジションである。ニュートラル状態は、自動変速機24の総ての係合装置CBが開放された状態である。Rポジションは、自動変速機24が後進ギヤ段とされる後進走行用のR(リバース)レンジを選択する操作ポジションである。Nポジションは、Pポジションと同様に自動変速機24がニュートラル状態とされるN(ニュートラル)レンジを選択する操作ポジションである。Dポジションは、例えば自動変速機24の複数の前進ギヤ段を車速Vやアクセル開度θacc 等の運転状態に応じて自動的に切り替えて走行する前進走行用のD(ドライブ)レンジを選択する操作ポジションである。シフトレバー64は、P、R、N、Dの各操作ポジションPOSshに位置決め保持されるものでも良いが、所定のホームポジションへ自動的に戻される自動復帰型でも良い。また、シフト操作部材として、上記各シフトレンジを選択する押釦スイッチ等が用いられても良い。
【0030】
電子制御装置90からは、電動車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御機器50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用電動機62など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御指令信号Se 、回転機MGを制御するためのMG制御指令信号Smg、係合装置CBを制御するためのCB油圧制御指令信号Scb、K0クラッチ20を制御するためのK0油圧制御指令信号Sk0、LUクラッチ40を制御するためのLU油圧制御指令信号Slu、EOP60を制御するためのEOP制御指令信号Seop など)が、それぞれ出力される。油圧制御回路56には、CB油圧制御指令信号Scb、K0油圧制御指令信号Sk0、およびLU油圧制御指令信号Sluに従って油路を切り替えたり油圧を制御したりする複数のソレノイドバルブが設けられている。
【0031】
電子制御装置90は、電動車両10における各種制御を実現する為に、ハイブリッド制御部92、変速制御部94、EOP異常検出部96、およびレディON制御部98を機能的に備えている。
【0032】
ハイブリッド制御部92は、エンジン12および回転機MGの作動を協調して制御する機能を有し、エンジン12を制御するエンジン制御部92a、および回転機MGを制御するMG制御部92bを備えている。ハイブリッド制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc および車速Vを適用することで、運転者による電動車両10に対する駆動要求量を算出する。駆動要求量は、例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdem等である。ハイブリッド制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機24の変速比γ、トルクコンバータ22のトルク比、バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout 等を考慮して、例えば上記要求駆動トルクTrdemを実現するために必要なトルクコンバータ22の入力トルクである要求TC入力トルクTtcdem を求め、その要求TC入力トルクTtcdem が得られるように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Se を出力するとともに、回転機MGを制御するMG制御指令信号Smgを出力する。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout は、例えばバッテリ温度THbat およびバッテリ54の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置90により算出される。バッテリ54の充電状態値SOCは、バッテリ54の充電状態すなわち蓄電残量を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat およびバッテリ電圧Vbat などに基づいて算出できる。
【0033】
ハイブリッド制御部92は、回転機MGの出力のみで要求TC入力トルクTtcdem を賄える場合には、バッテリ54からの電力のみで回転機MGを駆動して走行するモータ走行モードであるBEV(Battery Electric Vehicle)走行モードとする。BEV走行モードでは、K0クラッチ20を開放状態としてエンジン12を停止させ、回転機MGのみを駆動力源として用いて走行するBEV走行を行う。このBEV走行モードにおいては、要求TC入力トルクTtcdem を実現するようにMGトルクTmgを制御する。一方で、ハイブリッド制御部92は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求TC入力トルクTtcdem を賄えない場合には、エンジン走行モードであるHEV(Hybrid Electric Vehicle )走行モードとする。HEV走行モードでは、K0クラッチ20を係合状態として少なくともエンジン12を駆動力源として用いて走行するエンジン走行すなわちHEV走行を行う。このHEV走行モードにおいては、要求TC入力トルクTtcdem の全部または一部を実現するようにエンジントルクTe を制御し、要求TC入力トルクTtcdem に対してエンジントルクTe では不足するトルク分を補うようにMGトルクTmgを制御する。他方で、ハイブリッド制御部92は、回転機MGの出力のみで要求TC入力トルクTtcdem を賄える場合であっても、エンジン12等の暖機が必要な場合などには、HEV走行モードを成立させる。このように、ハイブリッド制御部92は、要求TC入力トルクTtcdem 等に基づいて、HEV走行中にエンジン12を自動停止したり、そのエンジン停止後にエンジン12を再始動したり、BEV走行中にエンジン12を始動したり、停車中にエンジン12を自動停止したり、エンジン12を始動したりして、BEV走行モードとHEV走行モードとを切り替える。
【0034】
変速制御部94は、Dレンジが選択された場合に、例えば車速Vやアクセル開度θacc 等の運転状態を変数として予め定められた変速マップ等を用いて自動変速機24の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機24の複数の前進ギヤ段を自動的に切り替えるためのCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力する自動変速制御を実行する。また、シフトレバー64または運転席の近傍に設けられたマニュアル変速操作部材が運転者によって操作され、変速指示信号が供給された場合には、その変速指示に従って自動変速機24の前進ギヤ段を切り替えるマニュアル変速制御を実行する。
【0035】
変速制御部94はまた、シフトレバー64が操作されて操作ポジションPOSshが切り替えられた場合に、その切り替えられた操作ポジションPOSshに応じて自動変速機24のシフトレンジを切り替えるガレージ制御を実行する。ガレージ制御は、シフトレバー64がDポジションおよびRポジションの一方から他方へ切り替える反転シフト操作が行なわれた場合に、その反転シフト操作に従って自動変速機24をDレンジおよびRレンジの一方から他方へ切り替える反転レンジ切替を実行する他、PレンジおよびNレンジの非走行レンジとDレンジおよびRレンジの走行レンジとの間でシフトレンジを切り替える各種のレンジ切替を実行する。
【0036】
EOP異常検出部96は、ポンプ用電動機62の断線等による電気系統の異常を含むEOP60の作動不良を検出するもので、例えばEOP制御指令信号Seop に対するポンプ用電動機62の回転速度や各部の油圧、油圧アクチュエータの作動状態等に基づいて、EOP異常か否かを判断することができる。
【0037】
レディON制御部98は、駆動力源であるエンジン12および回転機MGが何れも停止状態で、その駆動力源による駆動走行が不能なレディOFF状態において、走行要求に応じた駆動力源による駆動走行を可能とするためのレディON操作が為された場合に、図2のフローチャートのステップS1~S6(以下、ステップを省略して単にS1~S6と言う。)に従ってレディON状態とするレディON制御を実行する。走行要求は、電動車両10を走行させるための要求で、運転者がアクセル操作部材79を操作するアクセルON操作などであり、レディON状態では、その走行要求に応じて駆動力源による駆動走行を行なうことが可能となる。駆動力源による駆動走行が不能なレディOFF状態は、例えば電動車両10の殆どの電源がOFFとなるパワーOFF状態や、オーディオ機器やナビゲーション装置等のアクセサリ製品に電源供給されるアクセサリON状態などである。
【0038】
図2のS1では、レディOFF状態においてレディON操作が為されたか否かを判断し、レディON操作を検出した場合はS2以下を実行するが、レディON操作を検出できない場合はそのまま終了する。駆動力源による駆動走行を可能とするためのレディON操作は、例えばシフトレバー64の操作ポジションPOSshがPで、且つブレーキペダルが踏込み操作されてブレーキスイッチ82からブレーキON信号Bonが供給されている状態において、パワースイッチ89が押圧操作されてパワースイッチ押圧信号Spwが供給されることである。
【0039】
レディON操作が検出されてS1の判断がYES(肯定)になると、S2を実行し、EOP60の駆動が制約されるポンプ駆動制約時か否かを判断する。ポンプ駆動制約時は、本実施例では油圧制御回路56内の作動油OIL の温度である油温THoil が予め定められた高油温閾値thoils以上、または前記EOP異常検出部96によってEOP異常と判断された場合であり、その何れか一方を満たした場合はポンプ駆動制約時と判断してS3を実行する一方、何れも該当しない場合はS5を実行する。ポンプ駆動制約時として、EOP異常だけが定められても良いし、バッテリ54の出力制限や異常等によりEOP60の駆動が制限される場合など、他の要件が定められても良い。
【0040】
S3では、EOP60の駆動が制約されて、そのEOP60による油圧でK0クラッチ20を係合させることができないため、プッシュ始動制御によりエンジン12を始動する。プッシュ始動制御は、回転機MGを回転駆動することにより、前記MOP58から出力される油圧によりK0クラッチ20を係合させるとともに、そのK0クラッチ20の係合制御によりエンジン12をクランキングして始動する制御で、例えば前記エンジン制御部92aやMG制御部92b、油圧制御に関与する変速制御部94等を介して各種の制御を実行する。具体的には、エンジン12を始動可能な予め定められたクランク回転速度Necrank以上の回転速度で回転機MGを回転駆動し、回転機MGにより回転駆動されるMOP58から出力される油圧によりK0クラッチ20をスリップ係合制御してエンジン回転速度Ne を引き上げる。そして、エンジン回転速度Ne がクランク回転速度Necrankに達したら、K0クラッチ20を完全係合させてエンジン12をMG連結軸36に連結し、その状態で燃料噴射および点火等の始動処理を行なってエンジン12を始動する。エンジン12が自力回転する完爆状態になったら、S4で始動完了の判断を行い、例えばエンジン回転速度Ne をアイドル回転速度等に保持して、そのエンジン12を駆動力源とするHEV走行が可能なHEVレディON状態とする。このHEVレディON状態は、エンジン走行レディON状態と言い替えることもできる。
【0041】
S2の判断がNO(否定)の場合に実行するS5では、通常の選択判定条件に従ってエンジン12を駆動力源として走行するHEVレディONか、回転機MGを駆動力源として走行するBEVレディONかを選択する。選択判定条件は、例えばエンジン12の暖気要求やバッテリ54の充電要求などによるエンジン始動要求の有無に基づいて判定し、エンジン始動要求が有る場合はHEVレディONを選択し、エンジン始動要求が無ければBEVレディONを選択する。そして、HEVレディONを選択した場合は、MG始動制御によりエンジン12を始動する。MG始動制御は、EOP60を駆動して油圧を発生させることによりK0クラッチ20を係合させた後に、回転機MGの回転速度Nmgを上昇させるとともにエンジン回転速度Ne を上昇させてクランキングし、エンジン回転速度Ne がクランク回転速度Necrankに達したら、燃料噴射および点火等の始動処理を行なってエンジン12を始動する。このMG始動制御は電動機始動制御に相当し、例えばエンジン制御部92aやMG制御部92b、油圧制御に関与する変速制御部94等を介して各種の制御を実行する。そして、エンジン12が自力回転する完爆状態になったら、S6で始動完了の判断を行い、例えばエンジン回転速度Ne をアイドル回転速度等に保持して、そのエンジン12を駆動力源とするHEV走行が可能なHEVレディON状態とする。S5でBEVレディONを選択した場合は、直ちにS6を実行して回転機MGを駆動力源とするBEV走行が可能なBEVレディON状態とすれば良い。このBEVレディON状態は、電動機走行レディON状態と言い替えることもできる。なお、エンジン始動要求以外の要因でHEVレディONが選択されても良く、選択判定条件は任意に定めることができる。
【0042】
このように本実施例の電動車両10の電子制御装置90が備えるレディON制御部98によれば、レディOFF状態においてレディON操作が為された場合に、EOP60の駆動が制約されるポンプ駆動制約時には、回転機MGを回転駆動することにより、MOP58から出力される油圧によりK0クラッチ20を係合させるとともに、そのK0クラッチ20の係合制御によりエンジン12をクランキングするプッシュ始動制御を行なってエンジン12を始動し、エンジン12を駆動力源とするHEV走行が可能なHEVレディON状態とするため、ポンプ駆動制約時でもエンジン発進できるなど走行性能を適切に確保できる。
【0043】
また、レディOFF状態においてレディON操作が為された場合でポンプ駆動制約時でない場合には、EOP60を駆動してK0クラッチ20を係合させた後に、回転機MGの回転速度Nmgを上昇させつつエンジン12をクランキングするMG始動制御を行なってエンジン12を始動し、エンジン12を駆動力源とする駆動走行が可能なHEVレディON状態とするため、K0クラッチ20の負荷を抑制しつつエンジン12を始動して走行性能を適切に確保できる。
【0044】
また、レディOFF状態においてレディON操作が為された場合において、ポンプ駆動制約時には直ちにプッシュ始動制御によりエンジン12を始動してHEV走行が可能なHEVレディON状態とする一方、ポンプ駆動制約時でない場合には、MG始動制御によりエンジン12を始動してエンジン12を駆動力源とするHEV走行が可能なHEVレディON状態とするか、回転機MGを駆動力源とするBEV走行が可能なBEVレディON状態とするかを選択するため、ポンプ駆動制約時か否かに拘らず、エンジン始動により走行性能を適切に確保できる。また、MG始動制御によれば、車両停止時でもエンジン12の始動要求に応じて速やかにエンジン12を始動することができるため、駆動力応答性を確保しつつエンジン12の始動を抑制して燃費向上を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
10:ハイブリッド式電動車両 12:エンジン(駆動力源) 20:K0クラッチ(エンジン断接装置) 58:MOP(機械式オイルポンプ) 60:EOP(電動オイルポンプ) 62:ポンプ用電動機 90:電子制御装置(制御装置) 98:レディON制御部 MG:回転機(電動機、駆動力源)
図1
図2