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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】車両温度管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20250701BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20250701BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20250701BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20250701BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20250701BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20250701BHJP
【FI】
G06Q50/40
B60L3/00 H
B60L58/26
G16Y40/30
G16Y10/40
G16Y20/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022036590
(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公開番号】P2023131692
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄二
【審査官】北元 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-97542(JP,A)
【文献】特開2016-5304(JP,A)
【文献】特開2010-273520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
B60L 1/00 - 58/40
G16Y 10/00 - 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地域を走行する複数の車両を管理する車両温度管理装置であって、
前記複数の車両と通信可能に接続する通信装置と、
前記通信装置に接続されており、前記複数の車両との間で送受信されるデータを処理する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記複数の車両のそれぞれと通信して、車両に搭載されたモータ関連部品の温度を示す温度情報を、前記車両の位置情報に関連付けて取得する処理と、
前記対象地域を複数のエリアに区分したエリア毎に、当該エリアに位置する車両から取得した前記温度情報について所定の統計値を算出する処理と、
前記複数のエリアのなかから、前記統計値が所定の条件を満たす特定エリアを特定する処理と、
を実行可能であり、
前記複数の車両のそれぞれは、前記特定エリアから所定の範囲内に位置するときに、前記モータ関連部品の温度上昇を抑制するための所定の温度制御動作を実行するように構成されており、
前記処理装置は、前記統計値を算出する処理において、前記複数の車両のそれぞれから取得した前記温度情報を、当該車両の外気温に基づいて補正するとともに、当該車両が前記温度制御動作を実行しているのか否かに応じて補正する、
車両温度管理装置。
【請求項2】
前記温度情報は、モータの温度、前記モータのコイルの温度、前記モータに電力を供給する電池の温度、及び、前記モータへの供給電力を調節するインバータの素子の温度のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の車両温度管理装置。
【請求項3】
前記温度制御動作は、モータの冷却ユニットに設けられたポンプの回転数を増加させること、前記モータの前記冷却ユニットに設けられたラジエータファンの回転数を増加させること、電池の冷却ユニットに設けられたファンの回転数を増加させること、及び、インバータの冷却ユニットに設けられたポンプの回転数を増加させることの少なくとも一つを含む、請求項1又は2に記載の車両温度管理装置。
【請求項4】
前記処理装置は、外部から提供される気象に関するデータに基づいて、前記統計値を算出する処理において前記温度情報の補正に用いる前記外気温を、前記複数のエリア毎に取得する、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両温度管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両温度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両温度管理装置が記載されている。この車両温度管理装置は、複数の車両と通信可能に接続する通信装置と、通信装置に接続されている処理装置と、を備える。処理装置は、車両に搭載されたモータ関連部品の温度を、車両の位置情報に関連付けて取得する処理と、取得したモータ関連部品の温度の温度分布マップを作成する処理と、温度分布マップに基づいて、モータ関連部品の過熱が予期される特定エリアを特定する処理とを実行可能である。そして、複数の車両のそれぞれは、特定エリアから所定の範囲内に位置するときに、モータ関連部品の温度の上昇を抑制するための所定の温度制御動作を実行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-097542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載されるモータ関連部品(例えばモータやインバータ)の温度は、その動作状態だけでなく、車両の外気温に応じても変化する。そのため、上記のように、単にモータ関連部品の温度に基づいて特定エリアが特定されるときには、特定エリアが正確に特定されないおそれがある。また、上記した温度制御動作を実行している車両から取得されるモータ関連部品の温度は、温度制御動作を実行していない車両から取得されるモータ関連部品の温度よりも、有意に低いことが想定される。そのため、車両が温度制御動作を実行しているのか否かに関わらず、車両から取得したモータ関連部品の温度に基づいて特定エリアが特定されるときにも、特定エリアが正確に特定されないおそれがある。これらの結果、実際には特定エリアではないエリアから所定の範囲内に位置する車両について、温度制御動作が実行されるおそれがある。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、モータ関連部品の過熱が予期される特定エリアを、精度よく特定するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、対象地域を走行する複数の車両を管理する車両温度管理装置に具現化される。この車両温度管理装置は、前記複数の車両と通信可能に接続する通信装置と、前記通信装置に接続されており、前記複数の車両との間で送受信されるデータを処理する処理装置と、を備える。前記処理装置は、前記複数の車両のそれぞれと通信して、車両に搭載されたモータ関連部品の温度を示す温度情報を、前記車両の位置情報に関連付けて取得する処理と、前記対象地域を複数のエリアに区分したエリア毎に、当該エリアに位置する車両から取得した前記温度情報について所定の統計値を算出する処理と、前記複数のエリアのなかから、前記統計値が所定の条件を満たす特定エリアを特定する処理と、を実行可能である。前記複数の車両のそれぞれは、前記特定エリアから所定の範囲内に位置するときに、前記モータ関連部品の温度上昇を抑制するための所定の温度制御動作を実行するように構成されている。前記処理装置は、前記統計値を算出する処理において、前記複数の車両のそれぞれから取得した前記温度情報を、当該車両の外気温に基づいて補正するとともに、当該車両が前記温度制御動作を実行しているのか否かに応じて補正する。
【0007】
上記した車両温度管理装置では、複数の車両から取得したモータ関連部品の温度を示す温度情報が、各車両の外気温に基づいて補正されるとともに、各車両が温度制御動作を実行しているのか否かに応じて補正される。このような構成によると、外気温の影響及び温度制御動作の有無を排除したうえで、各車両から取得した温度情報に基づいて特定エリアを特定することができる。これにより、特定エリアを精度よく特定することができる。そのため、特定エリアから所定の範囲内に位置する車両について、モータ関連部品の温度上昇を抑制するための所定の温度制御動作を実行するように構成されているときでも、その温度制御動作が必要以上に実行されることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両温度管理装置10と複数の車両100とが、通信ネットワークNWを介して互いに通信可能に接続されていることを説明するための図。
図2】車両温度管理装置10及び車両100の概略図。なお、複数の車両100のうち一つの車両100を代表して記載している。
図3】処理装置14が実行する一連の処理動作を示すフロー図。
図4】対象地域TAを複数のエリアARmnに区分した様子を示す図。
図5】車両100の外気温に応じた各月の補正値の一例を示す。
図6】温度情報TDについて算出された所定の統計値の一例を示す。図6において、AVは平均値を意味し、AV+3σは平均値+3σを意味する。また、上限値UTも併せて示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、温度情報は、モータの温度、モータのコイルの温度、モータに電力を供給する電池の温度、及び、モータへの供給電力を調節するインバータの半素子の温度のうちの少なくとも一つを含んでもよい。但し、他の実施形態として、モータ関連部品の温度を示す温度情報に加えて、電池の充電状態(SOC:State of Charge)を、車両の位置情報に関連付けて取得してもよい。この場合、各車両から取得した電池のSOCについて、車両の外気温及び温度制御動作の有無に応じた補正をしたうえで、電池のSOCに基づいて、特定エリアが特定されてもよい。
【0010】
本技術の一実施形態において、温度制御動作は、モータの冷却ユニットに設けられたポンプの回転数を増加させること、モータの冷却ユニットに設けられたラジエータファンの回転数を増加させること、電池の冷却ユニットに設けられたファンの回転数を増加させること、及び、インバータの冷却ユニットに設けられたポンプの回転数を増加させることの少なくとも一つを含んでもよい。このように、温度制御動作には、モータ関連部品を冷却する冷却ユニットを制御することが含まれてもよい。
【実施例
【0011】
図面を参照して、実施例の車両温度管理装置10について説明する。図1に示すように、車両温度管理装置10は、対象地域TAを走行する複数の車両100を管理することができる。車両温度管理装置10は、インターネット等の通信ネットワークNWを介して、複数の車両100の各々に接続されている。これにより、車両温度管理装置10と複数の車両100とは、通信ネットワークNWを介して相互に通信することができる。ここで、車両100は、いわゆる自動車であって、路面を走行する車両である。車両100は、例えば、エンジン車、ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車、ソーラーカー等である。対象地域TAは、例えば、都市単位、国単位、又は大陸単位等として定められてもよいし、同一仕様の車両100が走行する地域として定められてもよい。
【0012】
図2に示すように、車両100は、モータ102と、電池104と、インバータ106とを備える。モータ102は、車両100の車輪を駆動する走行用モータである。一例ではあるが、モータ102は、U相、V相、W相を有する三相モータジェネレータである。電池104は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力やモータ102の回生電力によって、繰り返し充電可能に構成されている。インバータ106は、モータ102と電池104との間で、直流-交流間の電力変換を行うことができる。インバータ106は、モータ102と電池104との間に設けられており、電池104からの直流電力を三相交流電力に変換して、モータ102へ供給することができる。また、インバータ106は、モータ102からの三相交流電力を直流電力に変換して、電池104へ供給することもできる。なお、本明細書でいうモータ関連部品とは、モータ102、モータ102に電力を供給する電池104、及び、モータ102への供給電力を調整するインバータ106を含み、それらを構成する部品(例えば、モータ102のコイル)も含まれるものとする。特に限定されないが、モータ102の定格電圧と電池104の定格電圧とが異なる場合には、モータ102と電池104との間に、DC-DCコンバータがさらに設けられてもよい。
【0013】
図2に示すように、車両100は、制御装置(Electronic Control Unit:以下、ECUと称する)108をさらに備える。ECU108は、プロセッサやメモリ等を有するコンピュータ装置である。ECU108は、例えばCAN(Controller Area Network)を介して、モータ102、電池104及びインバータ106と通信可能に接続されており、それらの動作を制御及び監視することができる。ECU108には、例えばユーザによる操作情報や、車両100の状態を示す車両情報が入力される。ECU108は、入力された操作情報や車両情報に応じて、上述した車両100の各部の動作を制御することができる。また、本実施例のECU108は、GPS(Global Positioning System)から、車両100の現在位置、即ち、車両100が位置する緯度及び経度を取得することができる。なお、ECU108は、単一のコンピュータ装置で構成されてもよいし、複数のコンピュータ装置の組み合わせで構成されてもよい。
【0014】
図2に示すように、車両100は、モータ冷却ユニット110と、モータ温度センサ112とをさらに備える。モータ冷却ユニット110は、オイル等の熱媒体をモータ102とラジエータ(不図示)等との間で循環させることによって、モータ102を冷却する。モータ温度センサ112はモータ102に設けられており、モータ102の温度TMを検出する。ECU108は、モータ温度センサ112の検出温度、即ち、モータ102の温度TMを取得可能に構成されており、モータ102の温度TMを監視することができる。ECU108は、モータ温度センサ112の検出温度に応じて、オイルポンプ(不図示)の回転数を調整したり、ラジエータファン(不図示)の回転数を調整したりするといった、モータ冷却ユニット110の動作を制御することができる。
【0015】
図2に示すように、車両100は、電池温度センサ114と、インバータ温度センサ116と、モータコイル温度センサ118とをさらに備える。電池温度センサ114は、電池104に設けられており、電池104の温度TBを検出する。インバータ温度センサ116は、インバータ106の半導体素子に設けられており、インバータ106の半導体素子の温度TSを検出する。モータコイル温度センサ118は、モータ102のコイルに設けられており、モータ102のコイルの温度TCを検出する。ECU108は、各温度センサ114、116、118の検出温度を取得可能に構成されており、電池104の温度TB、インバータ106の半導体素子の温度TS、及び、モータ102のコイルの温度TCを監視することができる。ECU108は、各温度センサ114、116、118の検出温度に応じて、電池104の冷却ユニット(不図示)、インバータ106の冷却ユニット(不図示)、及び、モータ冷却ユニット110の動作を制御することができる。但し、車両100は、モータ温度センサ112、電池温度センサ114、インバータ温度センサ116、及び、モータコイル温度センサ118の全てを備える必要はなく、モータ関連部品の温度を検出する温度センサを少なくとも一つ備えていればよい。なお、ここでいうモータ関連部品の温度を検出するとは、モータ関連部品の温度を直接的に検出することに限られず、例えばモータ関連部品を冷却する熱媒体の温度を検出するといったように、モータ関連部品の温度を間接的に検出することを含む。
【0016】
図2に示すように、車両100は、データ通信モジュール(Data Comumunitation Module:以下、DCMと称する)120をさらに備える。DCM120は、後述する車両温度管理装置10の通信装置12と、通信ネットワークNWを介して、相互に通信するための装置である。DCM120は、ECU108と通信可能に接続されており、ECU108から、車両100の状態を示す車両情報や車両100の現在位置等を取得することができる。
【0017】
図2に示すように、車両温度管理装置10は、通信装置12と、処理装置14とを備える。通信装置12は、通信ネットワークNWを介して、各車両100のDCM102と通信可能に接続されている。処理装置14は、プロセッサやメモリ等を有するコンピュータ装置である。処理装置14は、通信装置12に接続されており、通信装置12が各車両100から受信したデータを取得することができる。処理装置14は、通信装置12から取得したデータを処理して、通信装置12に送信することができる。通信装置12に送信された処理済みデータは、各車両100のDCM102に送信されることができる。なお、処理装置14は、単一のコンピュータ装置で構成されてもよいし、複数のコンピュータ装置の組み合わせで構成されてもよい。
【0018】
図3-6を参照して、処理装置14が実行する一連の処理動作について説明する。ここで、処理装置14は、対象地域TA(図4参照)を走行する複数の車両100に対して、図3に示す一連の処理動作を繰り返し実行する。
【0019】
図3に示すように、ステップS10において、処理装置14は、複数の車両100のそれぞれと通信して、各車両100に搭載されたモータ関連部品の温度を示す温度情報TDを、その車両100の位置情報PDに関連付けて取得する。モータ関連部品の温度を示す温度情報TDには、モータ102の温度TM、モータ102のコイルの温度TC、モータ102に電力を供給する電池104の温度TB、及び、モータ102への供給電力を調節するインバータ106の半導体素子の温度TSのうちの少なくとも一つが含まれる。各車両100におけるモータ関連部品の温度を示す温度情報TDは、前述したように、各モータ関連部品に対応する温度センサ112、114、116、118によって検出され、その温度情報TDはECU108によって取得される。また、各車両100の位置情報PDは、車両100に搭載されたECU108によって、GPSから取得される。そのため、各車両100において、DCM120は、車両100の位置情報PDに関連付けられたモータ関連部品の温度を示す温度情報TDをECU108から取得することができる。この温度情報TD及び位置情報PDは、通信ネットワークNWを介して、各車両100のDCM120から通信装置12に送信された後、処理装置14に送信される。なお、このステップS10において、処理装置14は、ステップS14の処理で必要とされる各車両100の外気温や、各車両100がステップS22の所定の温度制御動作を実行しているのか否かに関する情報も併せて取得することができる。
【0020】
ステップS12において、処理装置14は、対象地域TAを複数のエリアAR11、AR12、AR13、・・・、AR21、・・・、AR31、・・・(以下、ARmnと示し、m、n=1、2、3、4、5、6、7、・・・とする)に区分する。一例ではあるが、図4に示すように、処理装置14は、対象地域TAを、一辺の長さが等しくなる正方形形状に区分することで複数のエリアARmnを画定する。このとき、特に限定されないが、対象地域TAを区分して得られる複数のエリアARmnの一辺の長さは、10キロメートル、1キロメートル等である。なお、処理装置14が対象地域TAを区分することによって、画定される各エリアARmnは、必ずしも正方形形状である必要はない。例えば、他の実施形態として、処理装置14は、対象地域TAを矩形形状に区分することで複数のエリアARmnの各々を画定してもよい。
【0021】
ステップS14において、処理装置14は、複数の車両100のそれぞれから取得した温度情報TDを、当該車両100の外気温に基づいて補正するとともに、当該車両100がステップS22の処理により所定の温度制御動作を実行しているのか否かに応じて補正する。一例ではあるが、処理装置14は、各車両100から取得した温度情報TDを、その車両100の外気温が一律に30度であるとみなして補正する。図5に示すように、例えば、車両100の外気温が11度であるときには、基準温度(即ち、30度)との差分である19度が、温度情報TDに加算される。同様に、車両100の外気温が35度であるときは、基準温度(即ち、30度)との差分である5度が、温度情報TDから減算される。なお、各車両100の外気温度は、各月の最高気温として月単位で定めされてもよいし(図5参照)、車両100から取得する温度情報TDを検出したときの外気温として定められてもよい。また、各車両100の外気温は、各車両100に設けられた温度センサによって車両100毎に取得されてもよいし、気象庁のコンピュータ装置等の気温に関するデータを提供しているコンピュータ装置を用いて、エリアARmn毎に取得されてもよい。
【0022】
上記に加えて、処理装置14は、車両100が所定の温度制御動作を実行している場合には、モータ関連部品の温度上昇の抑制量に応じた温度上昇抑制量を温度情報TDに加算する。即ち、温度制御動作を実行していない車両100から取得した温度情報TDは、そのままステップS16の統計値の算出に用いられるのに対して、温度制御動作を実行している車両100から取得した温度情報TDは、温度上昇抑制量分が加算されたものがステップS16の統計値の算出に用いられる。この場合、温度上昇抑制量は、実験的に算出されてもよいし、シミュレーション等により算出されてもよい。特に限定されないが、温度上昇抑制量は、例えば10度である。
【0023】
ステップS16において、処理装置14は、各エリアARmnに位置する車両100から取得した温度情報TDについて、所定の統計値を算出する。一例ではあるが、図6に示すように、処理装置14は、同一のエリアARmnに位置する車両100の各々から取得した温度情報TDについて、平均値AV±3σを算出する。但し、所定の統計値は、必ずしも平均値AV±3σである必要はない。他の実施形態として、所定の統計値は、同一のエリアARmnに位置する車両100の各々から取得した温度情報TDの最大値等であってもよい。
【0024】
ステップS18において、処理装置14は、複数のエリアARmnのなかから、統計値が所定の条件を満たす特定エリアSAを特定する。例えば、処理装置14は、ステップS14で算出された平均値AV±3σが、上限値UTを上回る場合には、当該エリアARmnを特定エリアSAとして特定する(図6参照)。一例ではあるが、モータ102の温度TMに対する上限値UTは160度であり、モータ102のコイルの温度TCに対する上限値UTは168度であり、電池104の温度TBに対する上限値UTは40度であり、インバータ106の半導体素子の温度TSに対する上限値UTは120度である。なお、特に限定されないが、処理装置14は、ステップS10からステップS14の処理を所定の期間(例えば、数か月単位)毎に繰り返すことで、特定エリアSAを定期的に更新してもよい。
【0025】
ステップS20において、処理装置14は、複数の車両100のそれぞれについて、特定エリアSAから所定の範囲内に位置するのか否かを判定する。ここで、所定の範囲とは、例えば1、5、10キロメートルの範囲である。ステップS20でNOの場合、処理装置14は、図3に示す一連の処理動作を終了する。
【0026】
ステップS20でYESの場合、処理装置14は、特定エリアSAから所定の範囲内に位置する車両100に、モータ関連部品の温度上昇を抑制するための所定の温度制御動作を実行することを指示する通知をする。当該通知は、車両温度管理装置10の処理装置14から、通信装置12、車両100のDCM120を順に介して、ECU108に送信される。これにより、当該通知を受けた車両100では、ECU108が車両100の各部を制御することで所定の温度制御動作を実行する(ステップS22)。ここで、所定の温度制御動作には、モータ102の冷却ユニット110に設けられたポンプの回転数を増加させること、モータ102の冷却ユニット110に設けられたラジエータファンの回転数を増加させること、電池104の冷却ユニットに設けられたファンの回転数を増加させること、及び、インバータ106の冷却ユニットに設けられたポンプの回転数を増加させることの少なくとも一つが含まれる。また、モータ102の冷却ユニット110に設けられたポンプの回転数には、モータ102の冷却ユニット110に設けられたポンプを駆動させるためのモータの回転数が含まれる。処理装置14からの通知を受け、所定の温度制御動作を実行している車両100は、前述したステップS10において、温度情報TDや位置情報PDと共に、所定の温度制御動作を実行している旨を処理装置14に通知する。
【0027】
ステップS24において、処理装置14は、温度制御動作を実行している車両100の温度情報TDが許容範囲内であるのか否かを判定する。前述したように、処理装置14は、各車両100の温度情報TDをECU108から取得する。また、上記した温度制御動作では、モータ関連部品の温度上昇が抑制されることから、当該温度制御動作を実行している車両100から取得される温度情報TDは、経時的に低くなると考えられる。そのため、温度制御動作を実行している車両100の温度情報TDが許容範囲内に達すると(ステップS24でYES)、処理装置14は、その車両100に対して、所定の温度制御動作の実行を中止することを指示する通知をする。これにより、車両100は、制限動作を中止して、通常の走行モードに復帰する(ステップS26)。その一方で、ステップS24でNOの場合、処理装置14は、ステップS20に戻る。
【0028】
上記した車両温度管理装置10では、複数の車両100から取得したモータ関連部品の温度を示す温度情報TDが、各車両100の外気温に基づいて補正されるとともに、各車両100が温度制御動作を実行しているのか否かに応じて補正される(ステップS14)。このような構成によると、外気温の影響及び温度制御動作の有無を排除したうえで、各車両100から取得した温度情報TDに基づいて特定エリアSAを特定することができる(ステップS18)。これにより、特定エリアSAを精度よく特定することができる。そのため、特定エリアSAから所定の範囲内に位置する車両100について、モータ関連部品の温度上昇を抑制するための所定の温度制御動作を実行するように構成されているときでも、その温度制御動作が必要以上に実行されることを回避することができる。
【0029】
上記した実施形態では、図3に示す一連の処理動作が、主に、車両温度管理装置10によって実行される。これに代えて、図3に示す一連の処理動作の一部が、車両100のECU108等によって実行されてもよい。例えば、ステップS18で特定された特定エリアSAが、対象地域TAを走行する複数の車両100の各々に通知され、各車両100において、ステップS20-S26の処理が実行されてもよい。この場合、各車両100のECU108は、通知された特定エリアSAに基づいて、その車両100が特定エリアSAから所定の範囲内に位置するのか否かを判定する(ステップS20)。車両100が特定エリアSAから所定の範囲内に位置する場合には(ステップS20でYES)、処理装置14からの通知を受けなくても、ECU108は所定の温度制御動作を実行することができる(ステップS22)。そして、当該車両100の温度情報TDが許容範囲内に達すると(ステップS24でYES)、ECU108は、温度制御動作の実行を中止して、通常の走行モードに復帰する(ステップS26)。
【0030】
特に限定されないが、他の実施形態として、各車両100のモータ関連部品の温度を示す温度情報TDに加えて、電池104のSOCにも基づいて特定エリアSAが特定されてもよい。この場合、処理装置14は、各車両100の位置情報に関連付けて、電池104のSOCを取得して(ステップS10)、車両100の外気温及び温度制御動作の有無に応じた補正をしたうえで(ステップS14)、複数のエリアARmnの各々について所定の統計値を算出する(ステップS16)。この統計値が、所定の下限値を下回るエリアが、特定エリアSAとして特定される(ステップS18)。特に限定されないが、所定の温度制御動作には、車両100のエンジンからの出力を増加させる等により、電池104のSOCを増加させることも含まれる。
【0031】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0032】
10 :車両温度管理装置
12 :通信装置
14 :処理装置
100 :車両
102 :モータ
104 :電池
106 :インバータ
108 :ECU
110 :モータ冷却ユニット
112 :モータ温度センサ
114 :電池温度センサ
116 :インバータ温度センサ
118 :モータコイル温度センサ
ARmn:エリア
AV :平均値
NW :通信ネットワーク
PD :位置情報
SA :特定エリア
TA :対象地域
TD :温度情報
UT :上限値
図1
図2
図3
図4
図5
図6