(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20250701BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20250701BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20250701BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20250701BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250701BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
B60W10/08 900
F02D29/06 D
B60W10/10 900
B60K6/442 ZHV
B60L50/16
B60L15/20 S
(21)【出願番号】P 2022046095
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】新見 嘉崇
(72)【発明者】
【氏名】石本 学
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-120254(JP,A)
【文献】特開2018-83453(JP,A)
【文献】国際公開第2022/024273(WO,A1)
【文献】特開2021-123217(JP,A)
【文献】特開2021-124058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0232956(US,A1)
【文献】特許第3546408(JP,B2)
【文献】特許第6855986(JP,B2)
【文献】特許第4223205(JP,B2)
【文献】特許第5605505(JP,B2)
【文献】特許第4386171(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20,
B60W 10/00,20/00,
B60L 50/16,15/20,
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウント部材を介して車両に設けられるエンジンと、前記エンジンとは別個に設けられている駆動力源
である電動機と、を備え、前記エンジンは、前輪および後輪の一方の車輪に動力伝達可能に接続され、前記
電動機は、前記前輪および前記後輪の他方の車輪に動力伝達可能に接続され、前記エンジンと前記一方の車輪との間の動力伝達経路に変速機が設けられており、前記エンジンによって前記一方の車輪が駆動される二輪駆動走行と、前記エンジンによって前記一方の車輪が駆動されるとともに前記
電動機によって前記他方の車輪が駆動される四輪駆動走行と、に少なくとも切替可能な車両の制御装置であって、
前記制御装置は、
車両走行中において、前記エンジンの駆動要求量が前記マウント部材の特性に基づく所定値以上となった場合、前記電動機の駆動要求量を増加させる駆動力配分制御を実行する駆動力配分制御部と、
前記電動機から出力されるトルクが制限されていることに基づいて前記駆動力配分制御を行なえるか否かを判定する可否判定部と、
前記
可否判定部により、前記電動機の出力が制限されて
前記駆動力配分制御を行なえないと判定された場合、前記エンジンの回転速度が所定回転速度以上で維持されるように前記変速機の変速を実施させる
変速制御部と、を含む
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪駆動走行および四輪駆動走行に切替可能な車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンおよびリヤモータに動力伝達可能に接続されている後輪と、フロントモータに動力伝達可能に接続されている前輪と、を備える後輪駆動をベースとする四輪駆動車両が開示されている。また、特許文献1には、エンジンがマウント部材によって支持される構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二輪駆動走行と四輪駆動走行とに切替可能な車両において、通常の走行状態では、エンジンの動力によって前輪および後輪の一方の車輪を駆動させる二輪駆動走行が燃費の観点で望ましいが、エンジンの要求駆動力が大きくなるほどエンジンを支持するエンジンマウントのインシュレータ(ゴムなど)が潰れてしまい、エンジンからの振動を低減しづらくなる虞がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンの動力によって駆動させられる一方の車輪と、エンジンとは別個の駆動力源の動力によって駆動させられる他方の車輪を備える車両において、エンジンを支持するマウント部材の潰れによる車両(車体)への振動伝達を低減できる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、(a)マウント部材を介して車両に設けられるエンジンと、前記エンジンとは別個に設けられている駆動力源である電動機と、を備え、前記エンジンは、前輪および後輪の一方の車輪に動力伝達可能に接続され、前記電動機は、前記前輪および前記後輪の他方の車輪に動力伝達可能に接続され、前記エンジンと前記一方の車輪との間の動力伝達経路に変速機が設けられており、前記エンジンによって前記一方の車輪が駆動される二輪駆動走行と、前記エンジンによって前記一方の車輪が駆動されるとともに前記電動機によって前記他方の車輪が駆動される四輪駆動走行と、に少なくとも切替可能な車両の制御装置であって、(b)前記制御装置は、車両走行中において、前記エンジンの駆動要求量が前記マウント部材の特性に基づく所定値以上となった場合、前記電動機の駆動要求量を増加させる駆動力配分制御を実行する駆動力配分制御部と、(c)前記電動機から出力されるトルクが制限されていることに基づいて前記駆動力配分制御を行なえるか否かを判定する可否判定部と、(d)前記可否判定部により、前記電動機の出力が制限されて前記駆動力配分制御を行なえないと判定された場合、前記エンジンの回転速度が所定回転速度以上で維持されるように前記変速機の変速を実施させる変速制御部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動機の出力が制限されて前記駆動力配分制御を行なえないと判定された場合、エンジンの回転速度が所定回転速度以上で維持されるように変速機の変速が実施されるため、エンジンの回転速度が所定回転速度以上で維持され、エンジンの振動の車両への伝達感度が低下した状態で走行を継続することができる。その結果、マウント部材を介して伝達されるエンジンからの振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明が適用されるハイブリッド車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を説明する図である。
【
図2】エンジンの駆動中のマウント変位とエンジンマウント荷重との関係を示す図である。
【
図3】エンジンマウント荷重とマウント変位の傾きとの関係を示す図である。
【
図4】車両要求駆動力と後輪への駆動力配分比との関係マップの一態様を示す図である。
【
図5】電子制御装置の制御機能の要部を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1の電子制御装置の制御作動に基づく制御結果を示すタイムチャートである。
【
図7】本発明他の実施例に対応する電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【
図8】エンジンの爆発一次におけるエンジンの周波数とマウント伝達力との関係を示す図である。
【
図9】自動変速機の車速とエンジン回転速度との関係を示す図である。
【
図10】電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートである。
【
図11】本発明のさらに他の実施例に対応する電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【
図12】本実施例における車速とエンジン回転速度との関係を示す図である。
【
図13】サスペンションメンバで発生する共振を考慮した場合の駆動力配分比を示す図である。
【
図14】電子制御装置の制御機能の要部を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両10(以下、車両10)の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を説明する図である。
図1において、車両10は、前輪14の駆動力源であるエンジン12およびフロント電動機FrMGと、後輪16の駆動力源であるリヤ電動機RrMGと、を備えた、前輪駆動をベースとする四輪駆動形式のハイブリッド車両である。車両10は、エンジン12と前輪14との間の動力伝達経路に設けられたフロントユニット18と、後輪16を駆動させるためのリヤユニット20と、を備えている。
【0019】
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置100によって、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置22が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
【0020】
エンジン12は、エンジンマウント62を介して車体を構成する車両メンバ64に接続されている。言い換えれば、エンジン12は、エンジンマウント62を介して車両10に設けられている。エンジンマウント62は、エンジン12を支持する支持部材であり、エンジン12の振動が車体側に伝達されにくくなるように、ゴム66などのインシュレータが介挿されている。なお、エンジンマウント62は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0021】
フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGは、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能、および、機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有するモータジェネレータである。
【0022】
フロント電動機FrMGは、フロントインバータ24(FrPCU)およびシステムメインリレー26(SMR)を介して、HEVバッテリ28に接続されている。フロント電動機FrMGは、後述する電子制御装置100によってフロントインバータ24が制御されることにより、フロント電動機FrMGの出力トルクであるFrMGトルクTmFrが制御される。FrMGトルクTmFrは、例えばフロント電動機FrMGの回転方向がエンジン12の運転時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側の正トルクは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。
【0023】
フロント電動機FrMGは、エンジン12に代えて或いはエンジン12に加えて、フロントインバータ24およびシステムメインリレー26を介してHEVバッテリ28から供給される電力により走行用の動力を発生する。また、フロント電動機FrMGは、エンジン12の動力や前輪14側から入力される被駆動力によって発電可能に構成されている。フロント電動機FrMGの発電により発生させられた電力は、フロントインバータ24およびシステムメインリレー26を介してHEVバッテリ28に蓄電される。もしくは、フロント電動機FrMGの発電により発生させられた電力がリヤ電動機RrMGに供給され、リヤ電動機RrMGが駆動させられる。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギも同意である。また、前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
【0024】
リヤ電動機RrMGは、リヤインバータ30(RrPCU)およびシステムメインリレー26(SMR)を介して、HEVバッテリ28に接続されている。リヤ電動機RrMGは、後述する電子制御装置100によってリヤインバータ30が制御されることにより、リヤ電動機RrMGの出力トルクであるRrMGトルクTmRrが制御される。RrMGトルクTmRrは、例えばリヤ電動機RrMGの回転方向が前進走行時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側の正トルクは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。リヤ電動機RrMGは、HEVバッテリ28からの電力およびフロント電動機FrMGによって発電された電力の少なくとも一方の電力によって駆動させられる。
【0025】
リヤ電動機RrMGは、リヤインバータ30およびシステムメインリレー26を介してHEVバッテリ28から供給される電力、および、フロント電動機FrMGによって発電された電力、の少なくとも一方の電力によって駆動力を発生させる走行用の電動機として機能する。また、リヤ電動機RrMGは、後輪16側から入力される被駆動力により発電を行う。リヤ電動機RrMGの発電により発生させられた電力は、リヤインバータ30およびシステムメインリレー26を介してHEVバッテリ28に蓄電される。HEVバッテリ28は、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGに対して電力を授受する蓄電装置である。なお、HEVバッテリ28が本発明のバッテリに対応し、リヤ電動機RrMGが本発明のエンジンとは別個に設けられている駆動力源に対応する。
【0026】
フロントユニット18は、エンジン12およびフロント電動機FrMGの動力を前輪14に伝達可能に構成されている。フロントユニット18は、エンジン12、K0クラッチ34(K0)、入力クラッチ36(WSC)、および自動変速機38等を備えている。K0クラッチ34(K0)、入力クラッチ36(WSC)、および自動変速機38は、それぞれ車体に取り付けられる非回転部材であるケース32内に収容されている。K0クラッチ34は、エンジン12と前輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12とフロント電動機FrMGとの間に設けられたクラッチである。入力クラッチ36は、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路上におけるK0クラッチ34と自動変速機38との間に設けられたクラッチである。なお、前輪14が本発明の一方の車輪に対応し、フロント電動機FrMGが本発明の第2の電動機に対応している。
【0027】
自動変速機38は、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路に設けられている。また、フロントユニット18は、自動変速機38の変速機出力軸40に連結されたデファレンシャル装置42(DIFF)、および、前輪14に連結された左右一対の前輪車軸44等を備えている。また、フロントユニット18は、エンジン12とK0クラッチ34との間を連結するエンジン連結軸46、K0クラッチ34と入力クラッチ36との間を連結する電動機連結軸48を、備えている。なお、自動変速機38が、本発明の変速機に対応している。
【0028】
フロント電動機FrMGは、ケース32内において、電動機連結軸48に動力伝達可能に連結されている。フロント電動機FrMGは、エンジン12と前輪14との間の動力伝達経路、特にはK0クラッチ34と入力クラッチ36との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結されている。従って、フロント電動機FrMGは、K0クラッチ34を介することなく、入力クラッチ36および自動変速機38に動力伝達可能に接続されている。
【0029】
自動変速機38は、例えば不図示の1組または複数組の遊星歯車装置と、複数個の係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、例えば油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路52から供給される調圧されたCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。自動変速機38は、係合装置CBの係合状態に応じて動力伝達状態が切り替えられるため、係合装置CBは、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路に介挿され、前記動力伝達経路における動力伝達を断接する機能を有する。
【0030】
自動変速機38は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかの変速段が形成される有段変速機である。本実施例の自動変速機38は、前進6速後進1速のギヤ段に変速可能に構成されている。自動変速機38は、後述する電子制御装置100によって、ドライバ(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成される変速段が切り替えられる、すなわち複数の変速段が選択的に形成される。AT入力回転速度Niは、自動変速機38の変速機入力軸50の回転速度であり、自動変速機38の入力回転速度である。AT出力回転速度Noは、自動変速機38の変速機出力軸40の回転速度であり、自動変速機38の出力回転速度である。
【0031】
K0クラッチ34は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される、湿式または乾式の摩擦係合装置である。K0クラッチ34は、後述する電子制御装置100により係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。K0クラッチ34は、油圧制御回路52から供給されるK0油圧PRk0によりK0クラッチ34のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、制御状態が切り替えられる。
【0032】
入力クラッチ36は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される、湿式または乾式の摩擦係合装置である。入力クラッチ36は、後述する電子制御装置100により係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。入力クラッチ36は、油圧制御回路52から供給されるWSC油圧PRwscにより入力クラッチ36のトルク容量であるWSCトルクTwscが変化させられることで、制御状態が切り替えられる。
【0033】
K0クラッチ34の係合状態では、エンジン連結軸46および電動機連結軸48を介して、エンジン12とフロント電動機FrMGとが動力伝達可能に接続される。すなわち、K0クラッチ34は、係合されることにより、エンジン12とフロント電動機FrMGとを動力伝達可能に接続する。一方、K0クラッチ34の解放状態では、エンジン12とフロント電動機FrMGとの間の動力伝達が遮断される。すなわち、K0クラッチ34は、解放されることにより、エンジン12とフロント電動機FrMGとの間の連結を切り離す。つまり、K0クラッチ34は、係合されることによってエンジン12とフロント電動機FrMGとを連結する一方で、解放されることによってエンジン12とフロント電動機FrMGとの間を遮断する断接クラッチである。
【0034】
入力クラッチ36の係合状態では、電動機連結軸48と変速機入力軸50とが接続される。このとき、フロント電動機FrMGが、電動機連結軸48、入力クラッチ36、変速機入力軸50、変速機出力軸40、デファレンシャル装置42、および前輪車軸44を介して前輪14に動力伝達可能に接続される。また、K0クラッチ34および入力クラッチ36の係合状態では、フロント電動機FrMGに加えて、エンジン12が、電動機連結軸48、入力クラッチ36、変速機入力軸50、変速機出力軸40、デファレンシャル装置42、および前輪車軸44を介して前輪14に動力伝達可能に接続される。一方で、入力クラッチ36の解放状態では、電動機連結軸48と変速機入力軸50との間が遮断される。すなわち、入力クラッチ36は、係合されることによりエンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間を接続する一方、解放されることによりエンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間を遮断する断接クラッチである。
【0035】
フロントユニット18において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ34および入力クラッチ36が係合されている場合には、エンジン連結軸46、電動機連結軸48、変速機入力軸50、自動変速機38、変速機出力軸40、デファレンシャル装置42、および前輪車軸44を順次経由して前輪14に伝達される。また、フロント電動機FrMGから出力される動力は、入力クラッチ36が係合されている場合には、電動機連結軸48、変速機入力軸50、自動変速機38、変速機出力軸40、デファレンシャル装置42、および前輪車軸44を順次経由して前輪14に伝達される。
【0036】
一方、入力クラッチ36が解放されている場合、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路が遮断され、エンジン12およびフロント電動機FrMGの動力が前輪14に伝達されなくなる。また、K0クラッチ34が解放される一方で、入力クラッチ36が係合されている場合、フロント電動機FrMGの動力が自動変速機38等を介して前輪14に伝達される一方で、エンジン12の動力が前輪14に伝達されなくなる。また、K0クラッチ34が係合される一方で、入力クラッチ36が解放されている場合、エンジン12およびフロント電動機FrMGの動力が前輪14に伝達されないものの、エンジン12とフロント電動機FrMGとが動力伝達可能に連結される。このとき、エンジン12の動力によってフロント電動機FrMGで発電することができる。
【0037】
リヤユニット20は、リヤ電動機RrMGの動力を後輪16に伝達可能に構成されている。リヤユニット20は、後述する電子制御装置100によって制御されるリヤインバータ30、リヤ電動機RrMG、および左右の後輪16に連結されている左右一対の後輪車軸54等を備えている。リヤ電動機RrMGは、直接または図示しない減速機等を介して左右一対の後輪車軸54に連結されている。従って、リヤ電動機RrMGは、後輪車軸54等を介して後輪16に動力伝達可能に接続されることで、リヤ電動機RrMGから出力される動力が、後輪車軸54等を介して後輪16に伝達される。なお、後輪16が本発明の他方の車輪に対応し、リヤ電動機RrMGが本発明の電動機に対応している。
【0038】
車両10は、機械式オイルポンプ58(MOP)および電動オイルポンプ60(EOP)を備えている。機械式オイルポンプ58は、例えば電動機連結軸48に歯車、ベルト、またはチェーン等を介して動力伝達可能に接続されており、エンジン12およびフロント電動機FrMGの少なくとも一方により駆動させられてフロントユニット18にて用いられる作動油を吐出する。電動オイルポンプ60は、図示しないポンプ用モータにより回転駆動させられて作動油を吐出する。機械式オイルポンプ58および電動オイルポンプ60が吐出した作動油は、油圧制御回路52に供給される。油圧制御回路52は、機械式オイルポンプ58および電動オイルポンプ60が吐出した作動油を元にして、各々調圧したCB油圧PRcb、K0油圧PRk0、WSC油圧PRwscなどを供給する。
【0039】
車両10は、さらに、走行制御などに関連する車両10の制御装置を含む電子制御装置100(制御装置)を備えている。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置100は、必要に応じてエンジン制御用、電動機制御用、油圧制御用等の各ECUを含んで構成される。
【0040】
電子制御装置100には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、入力回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、FrMG回転速度センサ76、RrMG回転速度センサ78、アクセル開度センサ80、スロットル弁開度センサ82、ブレーキスイッチ84、バッテリセンサ86、油温センサ88など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne、自動変速機38の変速機入力軸50の回転速度であるAT入力回転速度Ni、自動変速機38の変速機出力軸40の回転速度であり、車速Vに対応するAT出力回転速度No、フロント電動機FrMGの回転速度であるFrMG回転速度NmFr、リヤ電動機RrMGの回転速度であるRrMG回転速度NmRr、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、HEVバッテリ28のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、油圧制御回路52内の作動油の温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。
【0041】
電子制御装置100からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置22、フロントインバータ24、リヤインバータ30、油圧制御回路52、システムメインリレー26など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、フロント電動機FrMGを制御する為のFrMG制御指令信号SmFr、リヤ電動機RrMGを制御する為のRrMG制御指令信号SmRr、係合装置CBを制御する為のCB油圧制御指令信号Scb、K0クラッチ34を制御する為のK0油圧制御指令信号Sk0、入力クラッチ36を制御する為のWSC油圧制御指令信号Swsc、システムメインリレー26の断接状態を切り替える為のリレー切替指令信号Ssmrなど)が、それぞれ出力される。システムメインリレー26は、例えば車両10の電源スイッチがオン状態に切り替えられるとリレー切替指令信号Ssmrによって接続状態に切り替えられ、HEVバッテリ28からの電力供給が可能になる。
【0042】
電子制御装置100は、車両10における各種走行制御を実現する為に、ハイブリッド制御手段として機能するハイブリッド制御部102、クラッチ制御手段として機能するクラッチ制御部104、および変速制御手段として機能する変速制御部106を、機能的に備えている。
【0043】
ハイブリッド制御部102は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段として機能するエンジン制御部102aと、フロントインバータ24を介してフロント電動機FrMGの作動を制御するFr電動機制御手段として機能するFr電動機制御部102bと、リヤインバータ30を介してリヤ電動機RrMGの作動を制御するRr電動機制御手段として機能するRr電動機制御部102cと、を機能的に含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12、フロント電動機FrMG、およびリヤ電動機RrMGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
【0044】
ハイブリッド制御部102は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θaccおよび車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量を算出する。前記駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である。前記駆動要求量は、例えば車両要求駆動力Frdemである。前記駆動要求量としては、要求駆動トルクTrdem、自動変速機38の変速機出力軸40における要求AT出力トルク等を用いることもできる。また、前記駆動要求量の算出において、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良い。
【0045】
ハイブリッド制御部102は、伝達損失、補機負荷、自動変速機38の変速比γat、HEVバッテリ28の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Seと、フロント電動機FrMGを制御する為のFrMG制御指令信号SmFrと、リヤ電動機RrMGを制御する為のRrMG制御指令信号SmRrと、を出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。FrMG制御指令信号SmFrは、例えばそのときのFrMG回転速度NmFrにおけるFrMGトルクTmFrを出力するフロント電動機FrMGの消費電力WmFrの指令値である。また、RrMG制御指令信号SmRrは、例えばそのときのRrMG回転速度NmRrにおけるRrMGトルクTmRrを出力するリヤ電動機RrMGの消費電力WmRrの指令値である。
【0046】
HEVバッテリ28の充電可能電力Winは、HEVバッテリ28の入力電力の制限を規定する入力可能な最大電力であり、HEVバッテリ28の入力制限を示している。HEVバッテリ28の放電可能電力Woutは、HEVバッテリ28の出力電力の制限を規定する出力可能な最大電力であり、HEVバッテリ28の出力制限を示している。HEVバッテリ28の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbatおよびHEVバッテリ28の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置100により算出される。HEVバッテリ28の充電状態値SOCは、HEVバッテリ28の充電状態を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibatおよびバッテリ電圧Vbatなどに基づいて電子制御装置100により算出される。
【0047】
ハイブリッド制御部102は、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGの少なくとも一方の出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合には、走行モードをモータ走行(=BEV走行)モードとする。ハイブリッド制御部102は、BEV走行モードでは、K0クラッチ34の解放状態および入力クラッチ36の係合状態で、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGの少なくとも一方を駆動力源として走行するBEV(Battery Electric Vehicle)走行を行う。
【0048】
一方で、ハイブリッド制御部102は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求駆動トルクTrdemを賄えない場合には、走行モードをエンジン走行モードすなわちハイブリッド走行(=HEV走行)モードとする。ハイブリッド制御部102は、HEV走行モードでは、K0クラッチ34および入力クラッチ36の係合状態で、少なくともエンジン12を駆動力源として走行するエンジン走行すなわちHEV(Hybrid Electric Vehicle)走行を行う。また、ハイブリッド制御部102は、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGの少なくとも一方の出力で要求駆動トルクTrdemを賄える場合であっても、HEVバッテリ28の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12の暖機が必要な場合などには、HEV走行モードを成立させる。前記エンジン始動閾値は、エンジン12を強制的に始動してHEVバッテリ28を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。このように、ハイブリッド制御部102は、要求駆動トルクTrdemや要求駆動パワーPrdem等に基づいて、HEV走行中にエンジン12を自動停止したり、そのエンジン停止後にエンジン12を再始動したり、BEV走行中にエンジン12を始動したりして、BEV走行モードとHEV走行モードとを切り替える。
【0049】
また、HEV走行モードで走行中において、エンジン12の動力を駆動力として前輪14に伝達するとともに、エンジン12の動力の一部をフロント電動機FrMGに伝達することで、フロント電動機FrMGによる発電が可能になる。さらに、フロント電動機FrMGで発電された発電電力WgFrをリヤ電動機RrMGに供給することで、リヤ電動機RrMGを駆動させて車両10を四輪駆動走行させることができる。従って、車両10は、専らエンジン12の動力によって前輪14を駆動させる二輪駆動走行と、エンジン12の動力によって前輪14を駆動させるとともにリヤ電動機RrMGの動力によって後輪16を駆動させる四輪駆動走行とに、切替可能に構成されている。
【0050】
ハイブリッド制御部102は、車両10の走行状態に応じて、前後輪(前輪14および後輪16)の駆動力を適宜配分して適切な走行性能が得られるように制御する、駆動力配分制御手段としての駆動力配分制御部102dを機能的に備えている。駆動力配分制御部102dは、車両10の走行状態に基づく適切な前後輪の駆動力配分比Rを算出する。また、駆動力配分制御部102dは、算出された駆動力配分比Rとなる、エンジン12、フロント電動機FrMG、およびリヤ電動機RrMGの出力を算出する。ハイブリッド制御部102は、算出されたエンジン12、フロント電動機FrMG、およびリヤ電動機RrMGの出力が実現されるように、エンジン12、フロント電動機FrMG、およびリヤ電動機RrMGを制御する。その結果、算出された駆動力配分比Rとなるように、エンジン12、フロント電動機FrMG、およびリヤ電動機RrMGの出力が制御されることで、前後輪の駆動力配分が行われる。このように、車両10は、前後輪の駆動力配分を調整可能に構成されている。本実施例では、駆動力配分比Rは、車両要求駆動力Frdemのうち後輪16に伝達される駆動力の割合で規定されている。例えば、駆動力配分比Rがゼロの場合、前輪14のみが駆動する二輪駆動走行になる。また、駆動力配分比Rが0.2の場合、前輪14と後輪16との駆動力の割合が80:20である四輪駆動走行になる。
【0051】
駆動力配分制御部102dは、例えば走行中の負荷が小さい低車速時などでは、駆動力配分比Rをゼロにする。すなわち、駆動力配分制御部102dは、走行中の負荷が小さい低車速時などでは、リヤ電動機RrMGを停止させ、専らエンジン12の動力によって前輪14を駆動させる二輪駆動走行を実行する。また、駆動力配分制御部102dは、例えば車両発進時、加速時、滑りやすい低μ路の走行時などにおいては、駆動力配分比Rをゼロよりも大きい値とすることで、前輪14の駆動に加えて後輪16を駆動させる四輪駆動走行を実行する。
【0052】
ところで、フロント電動機FrMGで発電された発電電力WgFrがリヤ電動機RrMGに供給される場合、エンジン12の動力が電気エネルギに変換されてリヤ電動機RrMGに送電され、リヤ電動機RrMGによって駆動力に再度変換されるため、エネルギの効率が悪くなる。従って、燃費の観点では、専らエンジン12の動力を用いて前輪14を駆動させることが望ましい。一方で、エンジン12の駆動力で車両10を走行させる場合、エンジン12の駆動力に対する反力によって、エンジンマウント62を構成するゴム66の変位量(すなわちゴム66の潰れ量)が大きくなる。このとき、ゴム66が固くなるため、エンジンマウント62を介して車体側(車両側)にエンジン12の振動(エンジン振動)が伝わりやすくなる。なお、エンジンマウント62が、本発明のマウント部材に対応している。
【0053】
図2は、エンジン12の駆動中のマウント変位L[mm]とエンジンマウント荷重Fmt[N]との関係を示している。マウント変位Lは、エンジンマウント62を構成するゴム66の変形量(すなわち潰れ量)に相当する。また、エンジンマウント荷重Fmtは、エンジン駆動中にエンジンマウント62にかかる荷重であり、エンジン12の駆動力に対する反力に相当する。エンジンマウント荷重Fmtは、エンジン12の駆動力に比例して増加する。
図2に示すように、マウント変位Lが大きくなるほどエンジンマウント荷重Fmtの増加の傾きが急になっている。これより、エンジンマウント荷重Fmtが大きくなるほどゴム66が固くなり、ゴム66が変形しにくくなるため、エンジン振動の伝達感度が高くなる。すなわち、エンジンマウント荷重Fmtが大きくなるほど、エンジンマウント62を介して車体側にエンジン振動が伝わりやすくなる。
【0054】
これに対して、駆動力配分制御部102dは、車両走行中において、エンジンの要求駆動力Fedemが予め設定されている所定値Fcri以上となった場合、駆動力配分比Rを現在の値よりも大きくする。すなわち、駆動力配分制御部102dは、車両走行中において、エンジン12の駆動要求量である要求駆動力Fedemが予め設定されている所定値Fcri以上となった場合、リヤ電動機RrMGの駆動要求量であるRrMGトルクTmRrを増加させる。
【0055】
ここで、エンジン12の所定値Fcriは、予め実験的または設計的に求められ、エンジンマウント62の特性に基づいて設定される。
図3は、エンジンマウント荷重Fmtとマウント変位Lの傾きMとの関係を示している。
図3に示すように、エンジンマウント荷重Fmtが小さい領域では、マウント変位Lの傾きMが一定値M1となるが、エンジンマウント荷重Fmtが所定値を超えると、エンジンマウント荷重Fmtが増加するに伴いマウント変位Lの傾きMが低下している。すなわち、エンジンマウント荷重Fmtが所定値を超えるとエンジンマウント62のゴム66が固くなり、ゴム66が弾性変形することによるエンジン振動の伝達感度を抑える機能が低下する。
【0056】
これより、エンジン12の所定値Fcriは、マウント変位Lの傾きMが一定値M1よりも小さい傾きMαとなる、エンジンマウント荷重Fmtの荷重Fαに対応する値に設定されている。この荷重Fαは、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が許容範囲となる閾値に設定されている。また、エンジン12の駆動力とエンジンマウント荷重Fmtとは、一対一の関係にあるため、エンジンマウント荷重Fmtが決定されると、それに対応するエンジン12の駆動力が一義的に決定される。
【0057】
駆動力配分制御部102dは、エンジン12の駆動力が所定値Fcriに到達すると、
図4に示すような関係マップに基づいて前後輪の駆動力配分(すなわち駆動力配分比R)を決定する。
【0058】
図4は、車両要求駆動力Frdem[N]と後輪16への駆動力配分すなわち駆動力配分比Rとの関係マップの一例を示している。
図4では、二輪駆動走行中に適用される関係マップが一例として示されている。二輪駆動走行中にあっては、車両要求駆動力Frdemはエンジン12の要求駆動力Fedemと等価になる。
図4に示すように、車両要求駆動力Frdem(すなわちエンジン12の要求駆動力Fedem)が所定値Fcri未満では、駆動力配分比Rがゼロとされ、二輪駆動走行が許容される。一方、二輪駆動走行中において、車両要求駆動力Frdem(すなわちエンジン12の要求駆動力Fedem)が所定値Fcri以上になると、車両要求駆動力Frdemが増加するほど駆動力配分比Rが増加している。車両要求駆動力Frdemが所定値Fcri以上の領域における、車両要求駆動力Frdemに対する駆動力配分比Rは、エンジンマウント62の特性を考慮して設定され、車両要求駆動力Frdemが増加してもエンジン12の要求駆動力Fedemが所定値Fcriを超えないように設定されている。これより、
図4に示すように、車両要求駆動力Frdemに応じて駆動力配分比Rが曲線的に変化したり、車両要求駆動力Frdemに応じて駆動力配分比Rが直線的に変化したりする。
【0059】
また、
図4は、二輪駆動走行中に適用される関係マップであったが、四輪駆動走行中においても
図4の関係マップを用いて駆動力配分比Rを決定しても構わない。例えば、現時点で設定されている駆動力配分比Rに、
図4の関係マップから求められる駆動力配分比Rを加算することで、新たな駆動力配分比Rを決定することができる。或いは、現在の駆動力配分比Rを考慮した、車両要求駆動力Frdemに対する駆動力配分比Rの関係マップを求め、四輪駆動走行中には、その関係マップに基づいて駆動力配分比Rを設定するものであっても構わない。
【0060】
図5は、電子制御装置100の制御機能の要部を説明するためのフローチャートであり、エンジンマウント62を介して車体側(車両側)に伝達されるエンジン振動を効果的に低減できる制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両走行中において繰り返し実行される。
【0061】
先ず、駆動力配分制御部102dの制御機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10では、エンジン12の要求駆動力Fedemが算出される。例えば、車両10の走行状態(登坂走行や旋回走行)などに基づいて駆動力配分比Rが決定され、さらに、決定された駆動力配分比R、およびアクセル開度θacc等から求められる車両要求駆動力Frdemなどに基づいて、求められた駆動力配分比Rを実現する、エンジン12の要求駆動力Fedemが算出される。次いで、駆動力配分制御部102dの制御機能に対応するS20では、S10で算出されたエンジン12の要求駆動力Fedemが予め設定されている所定値Fcri未満であるか否かが判定される。S20の判定が肯定された場合、本ルーチンが終了させられる。
【0062】
一方、S20の判定が否定された場合、エンジン12の要求駆動力Fedemが所定値Fcri以上となり、このとき駆動力配分制御部102dの制御機能に対応するS30において、
図4に示す関係マップに基づいて、駆動力配分比Rが増加させられる。従って、後輪16への駆動力配分が増加する一方で、前輪14への駆動力配分が減少するため、エンジン12の要求駆動力Fedemが減少し、要求駆動力Fedemが所定値Fcri以下になる。その結果、エンジンマウント62にかかるエンジンマウント荷重Fmtが荷重Fαよりも小さくなるため、エンジンマウント62の状態が良好となり、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が許容される範囲内になる。これに関連して、エンジン振動に起因する、こもり音やマウント振動などのNV特性の悪化が抑制される。
【0063】
図6は、電子制御装置100の制御作動に基づく制御結果を示すタイムチャートである。このタイムチャートは、車両停止状態から加速操作を行ったときの態様が一例として示されている。
【0064】
図6のt1時点にアクセルペダルが踏み込まれたことで、t1時点以降において車両要求駆動力Frdemが増加している。また、車両要求駆動力Frdemの増加に伴ってエンジン12の要求駆動力Fedemが増加することでエンジンマウント荷重Fmtが増加している。t2時点において、エンジンマウント荷重Fmtが荷重Fαに到達すると、その後は駆動力配分比Rが増加している。t2時点以降では、駆動力配分比Rの増加に伴って後輪16に伝達されるリヤ電動機RrMGのFrMGトルクTmFrが増加することで、エンジンマウント荷重Fmtが荷重Fαを超えないように制御されている。その結果、車両要求駆動力Frdemが増加しても、エンジンマウント荷重Fmtがエンジンマウント62の特性が良好となる荷重Fα以下で維持されるため、エンジン振動の伝達感度が許容される範囲内で維持される。従って、エンジン振動がエンジンマウント62を介して車体に伝達されることによるNV特性の悪化が抑制される。
【0065】
上述のように、本実施例によれば、エンジン12の要求駆動力Fedemがエンジンマウント62の特性を悪化させる所定値Fcri以上になると、リヤ電動機RrMGの駆動要求量としてのRrMGトルクTmRrが増加させられるため、エンジン12の要求駆動力Fedemを低減することができる。その結果、エンジン12を支持するエンジンマウント62の潰れが低減されるため、エンジンマウント62を介して車両10(車体)に伝達されるエンジン振動を低減することができる。
【0066】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0067】
前述の実施例1では、エンジンマウント62にかかるエンジンマウント荷重Fmtが荷重Fα以上になった場合には、リヤ電動機RrMGのRrMGトルクTmRrを増加させることで、エンジンマウント荷重Fmtの増加を抑えてNV性能の悪化を抑制するものであった。本実施例では、リヤ電動機RrMGの出力が制限され、前述した実施例1のような前後輪の駆動力配分が行えない場合について説明する。
図7は、本実施例に対応する電子制御装置200の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。なお、電子制御装置200によって制御される車両の構造については、前述した実施例の車両10と変わらないため、その説明を省略する。
【0068】
電子制御装置200は、ハイブリッド制御部202、クラッチ制御部104、および変速制御部206を機能的に備えている。なお、クラッチ制御部104は、前述した実施例とその機能が変わらないため、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0069】
ハイブリッド制御部202は、前述した実施例のハイブリッド制御部102が備える機能に加えて、駆動力可否判定手段として機能する駆動力配分可否判定部204(以下、可否判定部204)を機能的に備えている。
【0070】
可否判定部204は、前後輪の駆動力配分を適切に実現可能な状態であるか否かを判定する。可否判定部204は、例えば、リヤ電動機RrMGから出力されるRrMGトルクTmRrが制限されている場合、前後輪の駆動力配分を適切に実現できないと判定する。さらに、可否判定部204は、リヤ電動機RrMGがフロント電動機FrMGによって発電される電力によって駆動されている状態において、フロント電動機FrMGの発電量が制限されている場合に前後輪の駆動力配分を適切に実現できないと判定する。
【0071】
なお、リヤ電動機RrMGから出力されるRrMGトルクTmRrが制限される場合として、例えば、リヤ電動機RrMGに異常が検出された場合、リヤ電動機RrMGのモータ温度THmRrがリヤ電動機RrMGの出力が制限される閾値以上である場合、HEVバッテリ28の充電状態値SOCが放電可能電力Woutが所定値以下に規制される閾値未満である場合、HEVバッテリ28のバッテリ温度THbatがHEVバッテリ28の出力が規制される範囲などが該当する。また、フロント電動機FrMGによる発電量が制限される場合として、例えばフロント電動機FrMGのモータ温度THmFrが予め設定されている規定値以上である場合などが該当する。このとき、リヤ電動機RrMGから出力されるRrMGトルクTmRrが制限され、前後輪の駆動力配分を適切に制御することが困難になるため、リヤ電動機RrMGのRrMGトルクTmRrを制御してエンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動を抑えることが困難になる。
【0072】
このようなリヤ電動機RrMGの出力が制限されている場合、変速制御部206は、エンジン12のエンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以上で維持されるように自動変速機38の変速を実施させる。
【0073】
図8は、エンジン12の爆発による振動の周波数Fz[Hz]とマウント伝達力S[dB]との関係を示している。周波数Fzは、エンジン12の爆発による振動の周波数Fzであり、エンジン回転速度Neに比例する。また、マウント伝達力S[dB]は、エンジンマウント62を介して車体側に伝達される振動の大きさに対応し、マウント伝達力Sが大きいほどエンジンマウント62を介して車体側に伝達される振動が大きくなる。
図8に示すように、周波数Fzが高くなるほどマウント伝達力Sが低下している。言い換えれば、エンジン回転速度Neが高回転になるほどマウント伝達力Sが低下し、車体側に伝達される振動が小さくなる。
【0074】
そこで、変速制御部206は、リヤ電動機RrMGの出力が制限されている場合、エンジン回転速度Neが予め設定されている所定回転速度Nea以上で維持されるように、自動変速機38を変速させる。ここで、所定回転速度Neaは、予め実験的または設計的に求められ、マウント伝達力Sが予め設定されている許容値以下Saとなる周波数Fzaに対応する値に設定されている。また、マウント伝達力Sの許容値Saは、エンジンマウント62を介して車体側に伝達される振動が許容される範囲の閾値に設定されている。
【0075】
図9は、自動変速機38の車速Vとエンジン回転速度Neとの関係を示している。本実施例の自動変速機38は、前進6速のギヤ段に変速可能に構成されている。従って、
図9には、各ギヤ段(1速ギヤ段1st-6速ギヤ段6th)に対応する車速Vとエンジン回転速度Neとの関係を示す直線がそれぞれ描かれている。
【0076】
図9において、実線が通常時、すなわちリヤ電動機RrMGのRrMGトルクTmRrが制限されない場合(通常時)に適用される、車速Vとエンジン回転速度Neとの関係を示している。通常時では、実線に沿うようにして、車速Vに応じてエンジン回転速度Neが変化する。一方、一点鎖線が、リヤ電動機RrMGのRrMGトルクTmRrが制限される場合、すなわち駆動力配分が制限される場合(駆動力配分制限時)の車速Vとエンジン回転速度Neとの関係を示している。駆動力配分制限時では、一点鎖線に沿うようにして、車速Vに応じてエンジン回転速度Neが変化する。実線で示す通常時のエンジン回転速度Neおよび一点鎖線で示す駆動力配分制限時のエンジン回転速度Neともに、車速Vの上昇に伴って自動変速機38が順次アップシフトされることで、エンジン回転速度Neが折れ線状に変化している。
【0077】
実線で示す通常時では、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以下となる領域が使用されている。通常時では、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以下になると、リヤ電動機RrMGのRrMGトルクTmRrを増加させてエンジンマウント荷重Fmtを低下させることで、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動の伝達感度を抑えることができる。
【0078】
一方で、一点鎖線で示す駆動力配分制限時では、リヤ電動機RrMGの出力を制御してエンジンマウント荷重Fmtを減少することができないため、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以上で維持されるように自動変速機38が変速させられている。従って、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea未満になることが防止されるため、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が許容される範囲内になる。変速制御部206は、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以上で維持される、駆動力配分制限時に適用される変速マップ(駆動力配分制限時変速線)を記憶しており、駆動力配分が制限される場合には、その変速マップに基づいて自動変速機38の変速を実施することで、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以上で維持される。
【0079】
図10は、電子制御装置200の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであり、前後輪の駆動力配分を適切に実現できない場合であっても、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動を抑制できる制御作動を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、車両走行中において繰り返し実行される。
【0080】
先ず、可否判定部204の制御機能に対応するS100では、前後輪の駆動力配分を適切に実現できるか否かを判定する。S100が肯定された場合、変速制御部206の制御機能に対応するS110において、通常時に使用される変速マップ(通常時変速線)に基づいて自動変速機38の変速が実行される。一方、S100の判定が否定された場合、変速制御部206の制御機能に対応するS120において、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以上で維持される変速マップ(駆動力配分制限時変速線)に基づいて自動変速機38の変速が実行される。
【0081】
上述のように、本実施例によれば、リヤ電動機RrMGの出力が制限されている場合、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以上で維持されるように自動変速機38の変速が実施されるため、エンジン回転速度Neが所定回転速度Nea以上で維持され、エンジン振動の車体への伝達感度が低下した状態で走行を継続することができる。その結果、エンジンマウント62を介して伝達されるエンジン振動を低減することができる。
【実施例3】
【0082】
図11は、本発明のさらに他の実施例に対応する電子制御装置300の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。なお、電子制御装置300によって制御される車両の構造については、前述した実施例の車両10と変わらないため、その説明を省略する。
【0083】
電子制御装置300は、ハイブリッド制御部302、クラッチ制御部104、および変速制御部106を機能的に備えている。なお、クラッチ制御部104および変速制御部106については、前述した実施例と機能が変わらないため、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0084】
ハイブリッド制御部302は、エンジン制御部102a、Fr電動機制御部102b、Rr電動機制御部102c、および駆動力配分制御部304を機能的に備えている。エンジン制御部102a、Fr電動機制御部102b、およびRr電動機制御部102cは、前述した実施例と機能が変わらないため、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0085】
駆動力配分制御部304は、エンジン回転速度Neを検出し、エンジン回転速度Neが予め設定されている所定回転速度Neb未満である場合、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb以上である場合に設定される駆動力配分比Rと比較して、駆動力配分比Rを大きくする。すなわち、駆動力配分制御部304は、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb未満である場合、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb以上である場合と比較して、リヤ電動機RrMGの駆動要求量としてのRrMGトルクTmRrを増加させる。所定回転速度Nebは、予め実験的または設計的に求められ、エンジンマウント62の特性に基づいて設定される。所定回転速度Nebは、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が許容範囲となるエンジン回転速度Neの閾値に設定されている。
【0086】
図12は、本実施例における車速Vとエンジン回転速度Neとの関係を示している。
図12には、自動変速機38の各ギヤ段(1速ギヤ段1st-6速ギヤ段6th)毎に、車速Vとエンジン回転速度Neとの関係を示す直線が描かれている。
図12の実線に示すように、車速Vの上昇に伴って自動変速機38がアップシフトされるに伴い、エンジン回転速度Neが各ギヤ段の直線に沿いつつ別のギヤ段に遷移することで、エンジン回転速度Neが折れ線状に変化している。
【0087】
図12に示す、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb未満となる車速領域Xでは、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が大きくなる。これに対して、駆動力配分制御部304は、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb未満になる車速領域Xになると、後輪16の駆動力配分を増加させる。従って、エンジン12の要求駆動力Fedemが相対的に低下するため、エンジンマウント荷重Fmtの増加が抑えられ、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が抑えられる。このように、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb未満の車速領域Xでは、NVの低減を優先させた駆動力配分(NV優先配分)が実施される。
【0088】
また、
図12に示す、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb以上の車速領域Yでは、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が許容される範囲となる。このとき、駆動力配分制御部304は、燃費を優先させた駆動力配分(燃費優先配分)を実施する。具体的には、駆動力配分制御部304は、燃費の観点では効率が高くなるエンジン12の駆動力によって車両10が走行させられるように、駆動力配分比Rを低下させて前輪14の駆動力配分を増加させる。これより、
図12に示すように、NV優先配分(車速領域X)と燃費優先配分(車速領域Y)とが交互に実現されることとなる。ここで、車速Vの変化に応じてNV優先配分と燃費優先配分とが繰り返されると、車速領域が変わる毎に駆動力配分比Rが変更されるため、ドラビリが悪化する虞がある。これに対して、
図12に示す車速Vaを閾値として、車速Va未満の領域ではNV優先配分となるように制御し、車速Va以上になると燃費優先配分となるように制御しても構わない。なお、車速Vaは、エンジン回転速度Neが常に所定回転速度Neb以上となる下限閾値である。
【0089】
ここで、燃費優先配分に切り替えられる車速Vaは、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が抑えられる値に設定されていたが、例えばサスペンションメンバで発生する共振など、他の要因によって発生する振動を考慮に入れて車速Vaを設定することもできる。
図13は、例えばサスペンションメンバで発生する共振を考慮した場合の駆動力配分比Rを示している。サスペンションメンバで発生する共振を考慮しない場合には、車速Vaが例えば80km/hに設定される。ここで、サスペンションメンバの共振が85km/hの車速Vで発生している場合には、このサスペンションメンバの共振を考慮して、車速Vaが90km/hに変更される。従って、
図13に示すように、車速Vが90km/h以上になると駆動力配分比Rが漸減している。このように、車速Vaを、他の要因を考慮した適切な値をすることもできる。
【0090】
図14は、電子制御装置300の制御機能の要部を説明するためのフローチャートであり、燃費とNV特性とを両立させることができる制御機能を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、車両走行中において繰り返し実行される。
【0091】
先ず、駆動力配分制御部304の制御機能に対応するS200において、エンジン回転速度Neが検出される。次いで、駆動力配分制御部304の制御機能に対応するS210において、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb未満であるか否かが判定される。S210の判定が肯定される場合、駆動力配分制御部304の制御機能に対応するS220において、NV特性が優先されるように前後輪の駆動力配分が制御される。具体的には、リヤ電動機RrMGによる後輪16の駆動力配分が増加させられることで、エンジン12の駆動力が低減される。その結果、エンジンマウント62にかかるエンジンマウント荷重Fmtが減少するため、エンジンマウント62を介して伝達されるエンジン振動が低減される。一方、S210の判定が否定された場合、駆動力配分制御部304の制御機能に対応するS230において、燃費が優先されるように前後輪の駆動力配分が制御される。具体的には、専らエンジン12の駆動力で前輪14が駆動されるように制御される。その結果、エンジン12の動力のうち電気的な経路を経由して後輪16に伝達される動力の割合が低下するため、エネルギの損失が減少して燃費が向上する。
【0092】
上述のように、本実施例によれば、エンジン回転速度Neがエンジンマウント62の特性に基づいて設定される所定回転速度Neb未満である場合、エンジン回転速度Neが所定回転速度Neb以上である場合に比較して、リヤ電動機RrMGのRrMGトルクTmRrを増加させるため、エンジンマウント62を介して車体側に伝達されるエンジン振動が伝わりやすいときのみ、リヤ電動機RrMGのRrMGトルクTmRrが増加することで、エンジンマウント62の潰れが低減されて車体側に伝わるエンジン振動が低減される。その結果、NV特性と燃費とを両立させることができる。
【0093】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0094】
例えば、前述した実施例1から実施例3は、それぞれ独立して実施されていたが、各実施例1-3を適宜組み合わせて実施しても構わない。例えば、実施例1および実施例2を組み合わせ、前後輪の駆動力配分を実現できる場合には、実施例1の態様を実施し、前後輪の駆動力配分を適切に実現できなくなった場合、実施例2の態様を実施することもできる。同様に、実施例2および実施例3を組み合わせて実施することもできる。
【0095】
また、前述の実施例では、エンジン12およびフロント電動機FrMGが前輪14に動力伝達可能に接続され、リヤ電動機RrMGが後輪16に動力伝達可能に接続されるものであったが、エンジン12およびリヤ電動機RrMGが後輪16に動力伝達可能に接続され、フロント電動機FrMGが前輪14に動力伝達可能に接続されるものであっても構わない。この場合には、前輪14が本発明の他方の車輪に対応し、後輪16が本発明の一方の車輪に対応する。また、フロント電動機FrMGが本発明の電動機に対応し、リヤ電動機RrMGが本発明の第2の電動機に対応する。
【0096】
また、前述の実施例では、後輪16はリヤ電動機RrMGによって駆動されるものであったが、例えば油圧モータなど他の駆動力源によって駆動させられるものであっても構わない。すなわち、エンジン12に動力伝達可能に接続されている一方の車輪に対して、他方の車輪がエンジン12とは異なる駆動力源に動力伝達可能に接続されることで、前後輪の駆動力配分を実現できる構成であれば、本発明を適宜適用することができる。
【0097】
また、前述の実施例では、自動変速機38は、前進6速後進1速のギヤ段に変速可能に構成されていたが、本発明は、前進6速のギヤ段に限定されない。例えば10速のギヤ段に変速可能な変速機など、複数のギヤ段に変速可能な変速機であれば適宜適用することができる。
【0098】
また、前述の実施例では、エンジン12の要求駆動力Fedemの大きさに基づいて、前後輪の駆動力配分を変更するものであったが、エンジン12の要求エンジントルクTedemの大きさに基づいて、前後輪の駆動力配分を変更するものであっても構わない。すなわち、本発明の駆動要求量として、エンジン12の要求駆動力Fedemに代わって要求エンジントルクTedemが使用されても構わない。
【0099】
また、前述の実施例では、駆動力配分比Rが、車両要求駆動力Frdemのうち後輪16に伝達される駆動力の割合で規定されていたが、駆動力配分比Rが、車両要求駆動力Frdemのうち前輪14に伝達される駆動力の割合で規定されるものであっても構わない。
【0100】
また、前述の実施例における具体的な数値は一例であって、車両の形式や構造等に応じて適宜変更される。
【0101】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0102】
10:車両
12:エンジン
14:前輪(一方の車輪)
16:後輪(他方の車輪)
28:HEVバッテリ(バッテリ)
38:自動変速機(変速機)
62:エンジンマウント(マウント部材)
100、200、300:電子制御装置(制御装置)
FrMG:フロント電動機(第2の電動機)
RrMG:リヤ電動機(駆動力源、走行用の電動機)
Fedem:エンジンの要求駆動力
Fcri:所定値
Ne:エンジン回転速度(エンジンの回転速度)
Nea:所定回転速度
Neb:所定回転速度